説明

液状物質の計量供給方法及び装置

【課題】液状物質200 の定量計測を高精度に行うと共に、この定量液状物質を所定の供給個所へ効率良く且つ確実に供給する。
【解決手段】液状物質の貯溜部100 と、液状物質の計量部300 と、計量した定量液状物質の吐出部400 と、液状物質の吐出部400 への圧縮エア給気部500 及び通路切替部600 とを備えると共に、通路切替部600 を介して液状物質の貯溜部100 と計量部300 、計量部300 と吐出部400 、吐出部400 と圧縮エア給気部500 との各連通路601 を接続又は遮断することにより、貯溜部100 内の液状物質200 を計量部300 に移送して計量し、次に、計量した定量の液状物質201 を吐出部400 を経て所定の個所へ供給し、次に、通路切替部600 及び吐出部400 へ圧縮エア502 を給気して当該部位に定量液状物質201 の一部が滞溜するのを効率良く防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂成形材料やその他の流動性を有する液体等の液状物質を計量すると共に、その液状物質の定量(計量した所定の一定量)を所定の供給個所へ確実に供給する液状物質の計量供給方法とこれを実施するための装置の改良に係り、より詳細には、液状物質の定量計測を高精度に行い且つその定量の液状物質の供給を確実に行うことができる液状物質の計量供給方法と、この方法を実施するための装置の構成簡略化及び小型化を図るように改善したものに関する。
【背景技術】
【0002】
小形の樹脂成形品、例えば、樹脂製レンズを成形する場合において、樹脂材料の有効利用率を向上させる目的で、予め、レンズの成形に必要な樹脂量を計量して予備的な成形品を形成し、この予備的な成形品を成形型内に供給して所定形状のレンズを成形することが行われている。
例えば、図6に示すように、まず、可塑化機構1にて可塑化した液状樹脂材料2を該可塑化機構内のスクリュー11にて撹拌しながら押出して上下方向に設けられたシリンダ3内に注入・充填し、次に、このシリンダ3内の液状樹脂材料21をピストン30にて加圧しながら上方へ移送して該シリンダ上端部に設けた吐出口31からプレート4の上面位置に吐出し、次に、このプレート4の上面に吐出された樹脂材料22をカッター5にて切断することにより、この定量の樹脂材料22(予備的な成形品)を図外の成形型内に供給するように構成した樹脂材料計量装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−190996号公報(図1・図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した樹脂材料計量装置の構成によれば、プレート4の上面位置に吐出された樹脂材料22の量は、上下シリンダ3内におけるピストン30の上方移動長さによって決定されるので高精度な計量を行うことが期待できる。
一方、このような計量装置の構成においては可塑化機構1等を備える必要があるため、必然的に、全体的な装置形状が大型化されると云った問題がある。
また、この装置の構成においては、上記したように、まず、樹脂材料をスクリュー11で撹拌しながら加熱と摩擦熱により溶融化して流動性を有する液状樹脂材料2を生成し、次に、該液状樹脂材料を上下シリンダ3内に注入・充填し、次に、該上下シリンダ内の液状樹脂材料21をプレート4の上面位置に吐出し、次に、該吐出樹脂材料をカッター5にて切断して予備的な成形品(22)を形成し、更に、この予備的な成形品を成形型内に供給することになるため、樹脂材料の加熱溶融化工程から液状樹脂材料の計量工程を経て吐出樹脂材料の切断工程を行い、更に、切断した吐出樹脂材料を成形型内に供給する工程と云った一連の樹脂材料計量とその供給の各工程における樹脂材料の温度管理が面倒になると云った問題がある。
更に、上記樹脂材料計量装置は、上記したように、まず、成形に必要な樹脂量を計量して予備的な成形品を形成し、その後に、この予備的な成形品を成形型内に供給して所定形状の樹脂成形を行う場合に用いられるものであるから、液状樹脂材料の定量を計測してその定量の液状樹脂材料を流動性を有する液体の状態で所定の供給個所へ供給するような場合には不向きであり、実質的にはこれを採用することができないと云った問題がある。
【0004】
本発明は、液状物質の定量計測を高精度に行うと共に、その定量の液状物質の供給を確実に行うことができる液状物質の計量供給方法とその装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、液状物質の計量供給装置の全体的な形状を簡略化及び小型化することによって該装置の操作性を向上させると共に、装置構成部品の交換作業を容易化することによって被計量液状物質の変更に即応させることができ、また、液状物質の定量計測及び定量液状物質の供給時間を短縮化して液状物質に対する温度管理を効率良く且つ確実に行うことができ、更に、液状物質の装置内残溜を確実に防止することができる液状物質の計量供給方法とその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するための請求項1に係る発明は、液状物質を計量して定量を計測すると共に、この定量液状物質を所定個所へ供給するための液状物質の計量供給方法であって、貯溜部に液状物質を貯溜する液状物質の貯溜工程を行い、
次に、通路切替部を介して、前記貯溜部に貯溜された液状物質を計量部に移送し且つこれを計量して定量を計測する液状物質の定量計測工程を行い、
次に、前記通路切替部を介して、前記定量計測工程を経た定量の液状物質を吐出部に移送する定量液状物質の吐出工程を行い、
次に、前記通路切替部及び吐出部へ圧縮エアを給気して前記通路切替部内及び吐出部内の滞溜液状物質を外部へ排出する滞溜液状物質の排出工程を行うことを特徴とする。
【0006】
また、前記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明における前記した液状物質の貯溜工程と前記した液状物質の定量計測工程との間に、前記貯溜部に貯溜された液状物質を加圧した状態で前記計量部側に移送する液状物質の加圧移送工程を行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明における前記した液状物質の貯溜工程、液状物質の定量計測工程、定量液状物質の吐出工程及び滞溜液状物質の排出工程の全工程或はその一部の工程において、前記液状物質を冷却又は加熱する液状物質の温度管理工程を行うことを特徴とする。
【0008】
また、前記の課題を解決するための請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2又は請求項3に係る発明における前記した液状物質が、電子部品の封止成形に用いられる液状樹脂材料であることを特徴とする。
【0009】
また、前記の課題を解決するための請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項2又は請求項3に係る発明における前記した液状物質が、電子部品の封止成形に用いられる液状熱硬化性樹脂材料であることを特徴とする。
【0010】
また、前記した課題を解決するための請求項6に係る発明は、液状物質を計量して定量を計測すると共に、この定量液状物質を所定個所へ供給するための液状物質の計量供給装置であって、
液状物質を貯溜する液状物質の貯溜部と、
前記貯溜部に貯溜された液状物質を計量して定量を計測する液状物質の計量部と、
前記計量部にて計量した液状物質を供給先に移送する定量液状物質の吐出部と、
前記吐出部への圧縮エア給気部と、
前記液状物質の貯溜部と液状物質の計量部、又は、前記液状物質の計量部と定量液状物質の吐出部、又は、前記定量液状物質の吐出部と圧縮エア給気部とを連通接続させるための連通路を形成した通路切替部とが備えられていることを特徴とする。
【0011】
また、前記の課題を解決するための請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明における前記した液状物質の貯溜部に、前記貯溜部に貯溜された液状物質を加圧して前記計量部側に移送する液状物質の加圧移送手段を配設して構成したことを特徴とする。
【0012】
また、前記の課題を解決するための請求項8に係る発明は、請求項6に係る発明における前記した液状物質の計量部が、前記通路切替部の連通路に連通接続されたシリンダと、このシリンダ内に密に嵌装されたプランジャと、このプランジャを往復駆動させるための往復駆動機構とから構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記の課題を解決するための請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明における前記液状物質の計量部にて計量される液状物質の定量が、前記シリンダ内に密に嵌装されたプランジャの往復移動ストローク長に基づいて設定されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記の課題を解決するための請求項10に係る発明は、請求項6に係る発明における前記した液状物質の貯溜部、液状物質の計量部、定量液状物質の吐出部、圧縮エア給気部の全部位或はその一部の部位に、前記液状物質を冷却又は加熱する液状物質の温度管理手段を配設して構成したことを特徴とする。
【0015】
また、前記の課題を解決するための請求項11に係る発明は、請求項6に係る発明における前記した液状物質の貯溜部と液状物質の計量部及び定量液状物質の吐出部が装置本体に対して着脱自在となるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液状物質の定量計測を高精度に行うことができると共に、その定量の液状物質を所定位置へ確実に移送供給することができる。
特に、装置形状の簡略化及び小型化が図れるため、装置の取り扱いや操作性を向上させることができると共に、液状物質の定量計測と所定位置への移送供給作業を容易に行うことができる。
また、装置構成部品の交換作業が容易となるため被計量液状物質の変更に即応させることができると共に、装置の保守点検作業を簡略化することができる。
また、液状物質の定量計測及び定量液状物質の供給時間を短縮化することができるため液状物質に対する温度管理を効率良く且つ確実に行うことができる。
更に、液状物質の装置内残溜を効率良く且つ確実に防止することができるため装置内に残溜した液状物質に基因する計量上の不具合や液状物質の移送供給上の不具合等の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明に係る液状物質の計量供給装置の全体形状を概略的に示しており、また、図2は該液状物質の計量供給装置を拡大して示す縦断面図、図3乃至図5は該液状物質の計量供給装置を用いた計量及び供給各工程の説明図である。
【0019】
まず、図1及び図2を参照して、本発明に係る液状物質の計量供給装置Aの全体構成について説明する。
【0020】
上記した液状物質の計量供給装置Aには、流動性を有する液状物質200 を貯溜するための貯溜部100 と、該液状物質の貯溜部に貯溜された液状物質200 を計量してその定量を計測する液状物質の計量部300 と、該液状物質の計量部にて計量した定量液状物質の吐出部400 と、該定量液状物質の吐出部への圧縮エア給気部500 と、図2(2) に拡大して図示するように、液状物質の貯溜部100 と液状物質の計量部300 、又は、液状物質の計量部300 と定量液状物質の吐出部400 、又は、定量液状物質の吐出部400 と圧縮エア給気部500 とを連通状態として各別に接続させるための連通路601 を形成した通路切替部600 とが備えられている。
【0021】
また、上記した液状物質の貯溜部100 、液状物質の計量部300 及び定量液状物質の吐出部400 は、後述するように、計量供給装置Aの本体を構成するインサートプレート700 に対して着脱自在(容易に着脱できる状態)となるように装着されている。
【0022】
また、上記通路切替部600 は、インサートプレート700 の中心部に配設されている。
この通路切替部600 には、図2(2) に示すように、図において前後方向に配設されている筒状の装着部材701 と、該筒状装着部材内において回転可能に且つ密に(両者が密接している状態)として嵌装された分岐バルブ部材602 と、該分岐バルブ部材を所定の回転角度位置に回転制御させるためのサーボ機構等の回転制御機構603 (図1(2) 参照)が設けられている。
なお、上記筒状装着部材701 は、適宜な回止部材(図示なし)にてインサートプレート700 に対して固定されており、従って、該筒状装着部材はインサートプレート700 に対して回転しないように設けられている。
また、上記筒状装着部材701 の仮想同一円周線上における上方位置には上記貯溜部100 側との連通口702 が、また、その下方位置には上記吐出部400 側との連通口703 が、また、その一方の横位置(図では、右横)には上記計量部300 側との連通口704 が、また、その他方の横位置(図では、左横)には上記圧縮エア給気部500 側との連通口705 が形成されている。
更に、制御部(図示なし)からの指示を受けて上記した分岐バルブ部材602 を回転させると、上記したように、分岐バルブ部材602 に形成した連通路601 の位置が、上記貯溜部100 と計量部300 、又は、上記計量部300 と吐出部400 、又は、上記吐出部400 と圧縮エア給気部500 とのいずれかと連通接続されるように構成されている。
【0023】
また、上記液状物質の貯溜部100 は、インサートプレート700 に嵌着した筒状装着部材701 における上方連通口702 との接続孔706 に対して着脱自在となるように装着されている。
図例においては、一端(上端)が開口された樹脂製シリンダ101 を用いると共に、その他端(下端)の接続部位101a は上記接続孔706 に対して密に嵌合されている。
また、通常の場合、このシリンダ101 はシリンダガイド102 及び該シリンダガイドの固定部材103 を介してインサートプレート700 の上面に保持されているが、交換時等においては、シリンダ101 のみをシリンダガイド102 から抜き出すことができるように設けられている。
なお、このシリンダ101 の大きさは、液状物質200 の少量を、若しくは、数回の計量を行うのに必要な量を貯溜することができる小形のものを例示しているが、液状物質の計量供給を繰り返して行うような場合は、例えば、このシリンダ101 の上端開口部に液状物質の収容タンク104 等を直接的に取り付けるようにしてもよく(図2(1) 参照)、また、このシリンダ101 の上端開口部と液状物質の収容部とを適宜な給送経路(図示なし)を介して連通接続させる構成を採用しても差し支えない。
【0024】
また、上記液状物質の計量部300 は、インサートプレート700 に嵌着した筒状装着部材701 における連通口704 と連通するように設けられた装着孔707 に対して着脱自在となるように装着されている。
図例においては、一端(右端)が開口された樹脂製シリンダ301 を用いると共に、その他端(左端)の接続部位301a は上記装着孔707 に対して密に嵌合されている。
また、通常の場合、このシリンダ301 は固定部材302 を介してインサートプレート700 の一端面(右側面)に止着・保持されているが、交換時等においては、該固定部材302 を取り外すことによってシリンダ301 を上記装着孔707 から抜き出すことができるように設けられている。
また、このシリンダ301 内には、先端(左端)部に弾性ゴム等のシール部材303 が止着された樹脂製プランジャ304 が密に嵌装されている。
更に、このプランジャ304 はシリンダ301 内を往復動(左右移動)可能な状態に嵌装されると共に、サーボ機構等の往復駆動機構305 を介して該プランジャの往復移動位置を制御することができるように設けられている。
このプランジャ304 に対する位置制御は、後述するように、該プランジャを、図において右方向へ移動させるプランジャ移動ストローク長に対応してシリンダ301 内に吸入移送される液状物質の量を計測するものであり、従って、該プランジャの移動ストローク長を適宜に変更することによって、シリンダ301 内に吸入移送される液状物質の量を適宜に変更・選択することができるように設定されている。
なお、上記したシール部材303 の先端形状を上記したシリンダの接続部位301a の内面形状に対応して形成するようにしてもよい。このようなシール部材を用いる場合は、上記シリンダ301 内に吸入移送された液状物質の全量を該シリンダの外部へ移送することができると云った利点がある。
【0025】
また、上記定量液状物質の吐出部400 は、インサートプレート700 に対して着脱自在となるように装着されている。
図例においては、上記計量部300 にて計量された定量の液状物質を容器401 (図1(1) 参照)内や、定量液状物質の次の処理工程側へ移送供給するためのノズル構造体から構成されている場合を示している。
また、上記吐出部400 の一端(上端)には定量液状物質の導入口402 が開口されると共に、この導入口402 は、上記筒状装着部材701 に形成した下方連通口703 及び該下方連通口に連通するように形成したインサートプレート700 の接続孔708 と連通接続されるように設けられている。
更に、該吐出部の導入口402 は他端(下端)に開口された吐出口403 と連通接続されており、従って、この導入口402 から導入された定量液状物質は、直ちに、吐出口403 から下方へ移送・供給されるように設けられている。
【0026】
また、上記した圧縮エア給気部500 は、筒状装着部材701 に形成した連通口705 と、この連通口705 に連通するように形成したインサートプレート700 の接続孔709 と、この接続孔709 と圧縮エアタンク(図示なし)側とを連通接続させた圧縮エア給気経路501 等から構成されている場合を示している。
【0027】
以下、上記実施例の構成に基づく作用について説明する。
【0028】
まず、図3を参照して、上記した貯溜部100 に液状物質200 を貯溜する液状物質の貯溜工程と、通路切替部600 を介して貯溜部100 に貯溜された液状物質200 を計量部300 に移送し且つこれを計量して定量を計測する液状物質の定量計測工程について詳述する。
【0029】
液状物質の貯溜工程を行うには、例えば、図3(1) に示すように、計量部300 における往復駆動機構305 を介して、予め、プランジャ304 を左側に移動させ且つその先端シール部材303 をシリンダ301 内の左端部にまで移動させておく。
上記した状態で、貯溜部100 のシリンダ101 内に液状物質200 を供給充填させることにより、液状物質の貯溜工程を行うことができる。
なお、上記液状物質の貯溜工程は、図においては、シリンダ101 内に液状物質200 の少量を、若しくは、複数回の計量を行うのに必要な量を貯溜しておく小形のものを示しているが、上記したように、常時、シリンダ101 内に液状物質200 を供給充填させておくことによって液状物質200 の計量供給を繰り返し継続して行うことができる。
【0030】
次に、上記通路切替部600 の回転制御機構603 を介して分岐バルブ部材602 を回転させると共に、該分岐バルブ部材における連通路601 の一方側を、図3(1) 及び図3(2) に示すように、インサートプレート700 に嵌着した筒状装着部材701 の上方連通口702 に接続させ且つその他方側を該筒状装着部材の右横側連通口704 に接続させることにより、貯溜部のシリンダ101 と計量部のシリンダ301 とを連通接続させることができる。
液状物質の定量計測工程は、計量部300 における往復駆動機構305 を介してプランジャ304 を右側に所定のストローク長の位置にまで移動させることによって行われる。
即ち、液状物質の定量は、上記した分岐バルブ部材602 における連通路601 内部及び筒状装着部材701 における連通口704 内部に収容される液状物質の容量と、計量部300 におけるシリンダ301 内のプランジャ304 を右側に移動させることによって該シリンダ内に吸引移送される液状物質の容量との総和によって決定することができる。
また、上記した連通路601 及び連通口704 内部に収容される液状物質の容量は一定となるため、例えば、所望する定量からこの一定量を差し引いた分量をシリンダ301 内に移送することができればよく、従って、このためのプランジャ移動位置をプランジャ304 の移動ストローク長として設定すればよい。
図3(2) に示すように、プランジャ304 を予め設定した上記ストローク長だけ移動させて、貯溜部のシリンダ101 内の液状物質200 を計量部のシリンダ301 内に吸引移送することにより、上記した連通路601 と連通口704 及びシリンダ301 内には計測された定量液状物質201 が収容されることになる。
【0031】
次に、図4を参照して、上記した通路切替部600 を介して、定量計測工程を経た定量の液状物質201 を吐出部400 に移送する定量液状物質の吐出工程について詳述する。
図4(1) には、上記した液状物質の定量計測工程によって、シリンダ101 内の液状物質200 を計量部のシリンダ301 内に吸引移送して連通路601 と連通口704 及びシリンダ301 内に計測された定量液状物質201 が収容されている状態を示している。
この状態において、上記前工程と同様に、通路切替部600 の分岐バルブ部材602 を回転させると共に、該分岐バルブ部材における連通路601 の一方側を筒状装着部材701 の右横側連通口704 に接続させ且つその他方側を該筒状装着部材の下方連通口703 に接続させることにより、計量部のシリンダ301 内と定量液状物質の吐出部400 側とを連通接続させることができる。このとき、上記シリンダ下端の接続部位101a は分岐バルブ部材602 によって確実に閉じられることになる。
定量液状物質の吐出工程は、図4(2) に示すように、計量部300 における往復駆動機構305 を介してプランジャ304 を左側の元位置にまで移動させることによって行われる。
即ち、プランジャ304 が元の左側位置にまで復帰移動されることにより、シリンダ301 内と連通路601 内及び連通口704 内の定量液状物質201 が上記した下方連通口703 及びインサートプレートの接続孔708 を通して吐出部の導入口402 内に導入されると共に、この導入口402 内に導入された定量液状物質は下端の吐出口403 を通して、直ちに、下方へ移送・供給されるように設けられている。この吐出口403 を通して移送された定量液状物質201 は、下方に配置した容器401 (図1(1) 参照)内や、定量液状物質の次の処理工程側(図示なし)へ供給することができる。
なお、図例に示したプランジャ304 の先端シール部材303 は、上記したプランジャ304 の復帰移動時において、シリンダ301 の接続部位301a の内面には嵌合されないことになる(図2(3) 参照)。このため、上記した吐出工程時に、この接続部位301a 内には定量液状物質201 の一部が残溜することがある。そこで、この接続部位301a 内に残溜する液状物質を含むシリンダ301 内の液状物質の全量を吐出部400 側へ移送する必要がある場合には、例えば、前記したように、シール部材303 の先端形状をシリンダ301 の接続部位301a の内面形状に対応して形成しておくことにより、上記したプランジャ304 の復帰移動時にそのシール部材303 の先端部をこのシリンダ接続部位301a の内面に嵌合させて、該接続部位内の液状物質を外部へ積極的に排出するようにしてもよい。
また、上記した右横側連通口704 内についても同様に液状物質の一部が残溜することがあるが、例えば、シール部材303 の先端を該連通口内にまで嵌入させることによって、同様に、これを外部へ排出することができる。
【0032】
次に、図5を参照して、上記した通路切替部600 及び吐出部400 へ圧縮エア502 を給気して通路切替部600 内及び吐出部400 内の滞溜液状物質を外部へ排出する滞溜液状物質の排出工程について詳述する。
図5(1) 及び図5(2) には、上記した定量液状物質の吐出工程が終了した後に、上記前工程と同様に、通路切替部600 の分岐バルブ部材602 を回転させると共に、該分岐バルブ部材における連通路601 の一方側を筒状装着部材701 の下方連通口703 に接続させ且つその他方側を該筒状装着部材の左横側連通口705 に接続させることにより、定量液状物質の吐出部400 側と圧縮エア給気部500 側とを連通接続させた状態を示している。なお、このとき、上記した両シリンダの接続部位101a・301aは分岐バルブ部材602 によって確実に閉じられることになる。
滞溜液状物質の排出工程は、図5(1) 及び図5(2) に示すように、圧縮エアの給気経路501 を通してインサートプレート700 の接続孔709 内に圧縮エア502 を給気することによって行われる。
即ち、上記吐出部400 側と圧縮エア給気部500 側とは連通接続されており、また、上記両シリンダの接続部位101a・301aは分岐バルブ部材602 によって確実に閉じられているため、この状態で、図5(2) に示すように、インサートプレートの接続孔709 内に図外の圧縮エアタンクからの圧縮エア502 を給気することにより、通路切替部(連通路601 )と下方連通口703 と接続孔708 及び吐出部(導入口402 から吐出口403 までの流路)内の滞溜液状物質202 を外部へ排出することができる。
この滞溜液状物質の排出工程によって、液状物質の定量を下方の容器401 内や、次の処理工程側へ効率良く供給することができるのみならず、液状物質が流動する通路切替部から吐出部までの流路内を効率良く清掃することができるので、例えば、滞溜液状物質が吐出部から漏れ出す、所謂、液漏れ現象を防止することができ、また、この滞溜液状物質が他の被計量液状物質と混合する等の不具合の発生を回避することができる。
【0033】
なお、上記した液状物質の貯溜部100 に、該貯溜部に貯溜された液状物質200 を加圧して上記した計量部300 側に移送する適宜な液状物質の加圧移送手段(図示なし)を配設して構成してもよい。そして、この構成によって、上記した液状物質の貯溜工程と液状物質の定量計測工程との間に、貯溜部100 に貯溜された液状物質200 を加圧した状態で計量部300 側に移送する液状物質の加圧移送工程を行うようにしてもよい。
上記したように、貯溜部シリンダ101 内の液状物質200 を計量部シリンダ301 内に移送する作用は、プランジャ304 が計量部シリンダ301 内を移動する際に生ずる負圧に基づく吸引力によるものであるが、上記した液状物質の加圧移送手段を併用することにより、液状物質200 の計量部シリンダ301 側への移送作用を効率良く補助することができる。
具体的には、例えば、貯溜部シリンダ101 内に液状物質加圧用のプランジャを密に嵌装させると共に、該加圧用プランジャを計量部プランジャ304 による吸引移送作用に追従させながら、或は、該吸引移送作用と連携させながら貯溜部シリンダ101 内の液状物質200 を加圧するように設定・構成すればよい。
このような加圧移送手段を併設するときは、液状物質を計量部シリンダ301 側へ効率良く移送することができるので、例えば、高粘度又は流動性が低い性状を有する液状物質を計量供給するような場合においても、これに好適に即応することができる。
【0034】
また、上記した実施例における被計量液状物質は、例えば、電子部品の封止成形に用いられる液状樹脂材料であってもよい。
また、同じく、上記した実施例における被計量液状物質は、電子部品の封止成形に用いられる液状熱硬化性樹脂材料であってもよい。
【0035】
また、上記した実施例においては、被計量液状物質の性状に応じて、該液状物質を冷却又は加熱する液状物質の温度管理工程を行うようにしてもよい。
即ち、上記液状物質の貯溜工程、液状物質の定量計測工程、定量液状物質の吐出工程及び滞溜液状物質の排出工程の全工程或はその一部の工程において、例えば、被計量液状物質の流動性を高めるために、該液状物質を適正温度にまで加熱する工程を行うようにしてもよい。
また、被計量液状物質が液状熱硬化性樹脂材料等のように、常温においても硬化が促進されるような液状物質である場合には、上記した全工程或はその一部の工程において、該液状物質を適正温度にまで冷却する工程を行うようにしてもよい。
なお、この液状物質の温度管理工程は、液状物質の貯溜部、液状物質の計量部、定量液状物質の吐出部、圧縮エア給気部の全部位或はその一部の部位に、適宜な液状物質の冷却機構又はその加熱機構を併設することによって容易に実施することができる。
【0036】
また、上記した実施例のインサートプレート700 における筒状装着部材701 は、上記通路切替部600 における分岐バルブ部材602 をインサートプレート700 に対して密に嵌合装着することによって省略することができる。
この場合は、全体的な構成部品の減少化と構成の簡略化を図ることができると云った利点がある。
【0037】
また、上記した実施例における液状物質の貯溜工程、液状物質の定量計測工程、定量液状物質の吐出工程、滞溜液状物質の排出工程、プランジャの移動制御及び分岐バルブ部材の回転制御と云った一連の工程を、予め設定した制御部からの指示に基づいて自動化する構成を採用することができる。
【0038】
また、上記した実施例おける両シリンダ(101・301)は、樹脂製によるものを示しているが、該両シリンダの材質は、例えば、金属製や耐熱性・耐久性を備えたガラス製等であっても差し支えない。
【0039】
本発明は上記した実施例のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、必要に応じて任意に且つ適宜に変更または選択して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は装置形状を小型化・軽量化した卓上型の電子部品の樹脂封止成形装置に併設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る液状物質の計量供給装置の全体形状を概略的に示しており、図1(1) はその正面図、図1(2) はその平面図である。
【図2】図1に対応する液状物質の計量供給装置で、図2(1) は図1(2) のB−B線における一部切欠拡大縦断正面図、図2(2) は通路切替部を拡大して示す縦断正面図、図2(3) は液状物質の計量部を拡大して示す一部切欠縦断正面図である。
【図3】図2(1) に対応する液状物質の計量供給装置の縦断正面図で、図3(1) は液状物質の貯溜工程を、図3(2) は液状物質の定量計測工程を示している。
【図4】図3に対応する液状物質の計量供給装置の縦断正面図で、図4(1) 及び図4(2) はいずれも定量液状物質の吐出工程を示している。
【図5】図3に対応する液状物質の計量供給装置の縦断正面図で、図5(1) 及び図5(2) はいずれも滞溜液状物質の排出工程を示している。
【図6】従来の液状物質の計量供給装置の要部を示す一部切欠縦断正面図である。
【符号の説明】
【0042】
A 液状物質の計量供給装置
100 貯溜部
101 樹脂製シリンダ
101a 先端接続部位
102 シリンダガイド
103 固定部材
104 収容タンク
200 液状物質
201 定量液状物質
202 滞溜液状物質
300 計量部
301 樹脂製シリンダ
301a 接続部位
302 固定部材
303 シール部材
304 プランジャ
305 往復駆動機構
400 吐出部
401 容器
402 導入口
403 吐出口
500 圧縮エア給気部
501 給気経路
502 圧縮エア
600 通路切替部
601 連通路
602 分岐バルブ部材
603 回転制御機構
700 インサートプレート
701 筒状装着部材
702 上方連通口
703 下方連通口
704 右横側連通口
705 左横側連通口
706 接続孔
707 装着孔
708 接続孔
709 接続孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物質を計量して定量を計測すると共に、この定量液状物質を所定個所へ供給するための液状物質の計量供給方法であって、
貯溜部に液状物質を貯溜する液状物質の貯溜工程を行い、
次に、通路切替部を介して、前記貯溜部に貯溜された液状物質を計量部に移送し且つこれを計量して定量を計測する液状物質の定量計測工程を行い、
次に、前記通路切替部を介して、前記定量計測工程を経た定量の液状物質を吐出部に移送する定量液状物質の吐出工程を行い、
次に、前記通路切替部及び吐出部へ圧縮エアを給気して前記通路切替部内及び吐出部内の滞溜液状物質を外部へ排出する滞溜液状物質の排出工程を行うことを特徴とする液状物質の計量供給方法。
【請求項2】
前記した液状物質の貯溜工程と前記した液状物質の定量計測工程との間に、前記貯溜部に貯溜された液状物質を加圧した状態で前記計量部側に移送する液状物質の加圧移送工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の液状物質の計量供給方法。
【請求項3】
前記した液状物質の貯溜工程、液状物質の定量計測工程、定量液状物質の吐出工程及び滞溜液状物質の排出工程の全工程或はその一部の工程において、前記液状物質を冷却又は加熱する液状物質の温度管理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の液状物質の計量供給方法。
【請求項4】
前記した液状物質が、電子部品の封止成形に用いられる液状樹脂材料であることを特徴とする請求項1、又は、請求項2、又は、請求項3に記載の液状物質の計量供給方法。
【請求項5】
前記した液状物質が、電子部品の封止成形に用いられる液状熱硬化性樹脂材料であることを特徴とする請求項1、又は、請求項2、又は、請求項3に記載の液状物質の計量供給方法。
【請求項6】
液状物質を計量して定量を計測すると共に、この定量液状物質を所定個所へ供給するための液状物質の計量供給装置であって、
液状物質を貯溜する液状物質の貯溜部と、
前記貯溜部に貯溜された液状物質を計量して定量を計測する液状物質の計量部と、
前記計量部にて計量した液状物質を供給先に移送する定量液状物質の吐出部と、
前記吐出部への圧縮エア給気部と、
前記液状物質の貯溜部と液状物質の計量部、又は、前記液状物質の計量部と定量液状物質の吐出部、又は、前記定量液状物質の吐出部と圧縮エア給気部とを連通接続させるための連通路を形成した通路切替部とが備えられていることを特徴とする液状物質の計量供給装置。
【請求項7】
前記した液状物質の貯溜部に、前記貯溜部に貯溜された液状物質を加圧して前記計量部側に移送する液状物質の加圧移送手段を配設して構成したことを特徴とする請求項6に記載の液状物質の計量供給装置。
【請求項8】
前記した液状物質の計量部が、前記通路切替部の連通路に連通接続されたシリンダと、このシリンダ内に密に嵌装されたプランジャと、このプランジャを往復駆動させるための往復駆動機構とから構成されていることを特徴とする請求項6に記載の液状物質の計量供給装置。
【請求項9】
前記液状物質の計量部にて計量される液状物質の定量が、前記シリンダ内に密に嵌装されたプランジャの往復移動ストローク長に基づいて設定されていることを特徴とする請求項8に記載の液状物質の計量供給装置。
【請求項10】
前記した液状物質の貯溜部、液状物質の計量部、定量液状物質の吐出部、圧縮エア給気部の全部位或はその一部の部位に、前記液状物質を冷却又は加熱する液状物質の温度管理手段を配設して構成したことを特徴とする請求項6に記載の液状物質の計量供給装置。
【請求項11】
前記した液状物質の貯溜部と液状物質の計量部及び定量液状物質の吐出部が装置本体に対して着脱自在となるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の液状物質の計量供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−139347(P2010−139347A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315186(P2008−315186)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】