説明

減圧処理容器

【課題】耐熱性に優れ、かつ高強度でありながら、低熱容量で持ち運びがし易い減圧処理容器を提供する。
【構成】ステンレススティールにより円筒状に成形された薄肉の内容器体11と、内容器体11との間に真空の断熱空間13を形成し、ステンレススティールにより円筒状に成形され、その外周面にリブ状の起伏部15を多数形成してなる薄肉の外容器体17aと、を接合して二重構造とし、内容器体11の肉厚以下とし、かつ、内容器体11と外容器体17aとの隙間変化を吸収する、金属材料、特にはステンレス製の、例えば、断面をU字型とした底板19を用いた構造として低熱容量、かつ耐熱性に優れ、高強度とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低熱容量、かつ耐熱性に優れ、高強度な減圧処理容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、減圧処理装置、例えば半導体ウエハに膜付け処理を行う装置において、ウエハを多数枚搭載したボートを搬入して密閉し、所定真空度に真空引きを行い、その後プロセスガスを流入させて加熱下で膜付け処理を行っている。
【0003】
ここで、この種のウエハを密閉する減圧処理室(容器)は、石英等の石材により円筒状に成形され、この減圧処理室外方に、断熱材を配したケーシングを、被設させてある(特許文献1参照)。
【0004】
この石英等の石材により円筒状に形成された減圧処理室は、耐熱性を向上させ、高強度となるよう、厚みのある均一な一体構造物であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3056776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来の減圧処理室によれば、減圧処理室の外側を、断熱材を配したケーシングにより被覆する必要がある。更に、減圧処理室が厚みのある石英等の石材による一体構造物であるため、熱容量が非常に大きくなる。熱容量が大きいと、熱しにくく冷めにくい特性となる。ウェハを処理するために、減圧処理室内部の空間の温度を均一に昇温するには、まず、減圧処理室自体の温度を上昇させる必要がある。しかし、熱容量が大きいため、温度上昇に時間がかかる。温度上昇を急速に行うためには、大電力を投入する必要があり、ランニングコストが上昇する。
【0007】
また、ウェハの処理が終了した後、ウェハを取り出すためには、減圧処理室の温度を低下させる必要がある。こちらも、熱容量が大きいため、温度の低下に時間がかかる。急速に温度を低下させるには、水冷設備が必要となり、設備コストと共に、ランニングコストも上昇する。
【0008】
また、石英等の石材により成形してあるため、高コストとなり、加えてメンテナンスにおいても大掛かりとなり、その管理が非常に煩雑であった。
【0009】
本発明はこのような欠点に鑑み、耐熱性に優れ、かつ高強度でありながら、低熱容量の減圧処理容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る減圧処理容器は、金属材料により円筒状に成形された薄肉の内容器体と、内容器体との間に真空の断熱空間を形成し、金属材料により円筒状に成形され、その外周面にリブ状の起伏部を多数形成してなる薄肉の外容器体と、を接合して二重構造としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る減圧処理容器によれば、内容器体と外容器体とが金属材料により薄肉の円筒状に成形されているため、耐熱性に優れ、低熱容量で持ち運び易く、取り扱いが極めて容易となる。
【0012】
さらに、外容器体の外周面にはリブ状の起伏部が多数形成された状態で一体成形されているため、高強度で、耐久性に優れる。
【0013】
加えて、内容器体と外容器体とを接合して二重構造とし、その内部断熱空間を真空としてあるため、高断熱効果を奏し、高温、減圧下で半導体ウエハに膜付けする等の工程での使用に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る一実施例の減圧処理容器の要部縦断面図である。
【図2】本発明に係る実施例の減圧処理容器の使用態様を示す要部縦断面図である。
【図3】本発明に係る他の実施例の減圧処理容器の様々な態様を示す要部縦断面図である。
【図4】本発明に係るさらに他の実施例の減圧処理容器の様々な態様を示す要部縦断面図である。
【図5】本発明に係る一実施例の減圧処理容器の別の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
低熱容量、かつ耐熱性に優れ、高強度とし、種々の用途に転用可能とする目的を、金属材料により円筒状に成形された薄肉の内容器体と、内容器体との間に断熱空間を形成し、金属材料により円筒状に成形され、その外周面にリブ状の起伏部を多数形成してなる薄肉の外容器体と、を接合して二重構造とすること、により実現した。
【実施例1】
【0016】
図1を参照して本発明に係る実施例1の減圧処理容器について説明する。
本発明に係る実施例1の減圧処理容器の形状は、上下方向の上部を排気口とし、上下方向の下部をウェハ出入口、プロセスガス等の気体流入口とするため、下部が大きく開口し、上部には小孔が開口する形状の略円筒体である。
【0017】
この減圧処理容器は、内容器体11と、外容器体17aと、からなる二重構造の容器体17である。金属材料、特にはステンレスにより円筒状に成形された薄肉の内容器体11と、金属材料、特にはステンレスにより円筒状に成形され、その外周面にリブ状の起伏部15を多数形成してなり、内容器体11との間に真空の断熱空間13を形成する薄肉の外容器体17aと、を接合して二重構造としてある。
【0018】
本例において、内容器体11の厚さは約1mm、外容器体17aの厚さは約1.5mmである。内外容器体11,17の厚さを1mm、1.5mmの薄肉とすることにより、材料コストを大幅に削減することができる。
【0019】
また、内容器体11の外径はφ650(直径650mm)、外容器体17aの外径は、ほぼφ730(直径730mm)としてある。内容器体11の外径をφ650としてあるのは、容器内部での半導体ウエハの膜付工程が行える最小の大きさであり、この大きさとすることにより材料コスト削減、最軽量化が実現できる。
【0020】
内容器体11は、内側が大気圧、外側が真空の環境となるため、内側から外側に1気圧で押し広げられる力を受ける。内容器体11は、この力に耐える必要がある。また、内容器体11は高温になるため、耐力の低下を考慮して板厚を選定する必要がある。
外容器体17aは、内側が真空、外側が大気圧の環境となるため、外側から内側に1気圧で押し潰す力を受ける。外容器体17aは、この力に耐える必要がある。
【0021】
また、起伏部15の形状は外容器体17a外周面から外側へ突出する凸型または波型としてある。
この起伏部15により、外容器体17aを高強度とすることができ、このため外容器体17aが薄肉な約1.5mm厚としても十分な強度を維持することが可能となる。
ウェハ処理時、内容器体11は高温になるが、外容器体17aは真空断熱の効果で、あまり温度が上昇しない。このため、内容器体11には大きな熱伸びが発生し、外径寸法が増加する。外容器体17aは、小さな熱伸びのため、外径寸法はあまり増加しない。このため、内容器体11と外容器体17aとの隙間は、小さくなる。
【0022】
内容器体11と外容器体17aを接続する底板19は、この隙間の変化に耐えられる強度が必要になる。このため、図1(b)に示すように内容器体11や外容器体17aよりも肉厚な金属材料、特にはステンレス製の底板19により、強固に接合することが考えられる。しかし、底板19を肉厚にすると、内容器体11から外容器体17aに、底板19を通じて熱が大量に伝導してしまい、断熱効果が著しく低下する。
このため、図1(a)に示すように底板19は、内容器体11の肉厚以下とし、かつ、内容器体11と外容器体17aとの隙間変化を吸収する、金属材料、特にはステンレス製の、例えば、断面をU字型とした底板19を用いた構造とすることが望ましい。
【0023】
本発明に係る減圧処理容器を使用して被加工物に熱酸化処理を行う工程を図2を参照して説明する。
まず、減圧処理容器の上部ポートに、図示しない真空排気用のポンプを設置し、下部開口Oの一部に、プロセスガスを流入させるための流入チューブ(図示略)、真空ポンプ(図示略)、空冷用ポート(図示略)、ゲートバルブ(図示略)などを設置する。
【0024】
次に、減圧処理容器内に、被加工物Wを搬入した後、一旦、減圧処理容器内を真空にして不要なガスを除去し、減圧処理容器内に配置した加熱機構(図示略)により加熱し、内容器体11内部へプロセスガスを流入させることにより、減圧処理容器内に搬入した作業テーブルT上の被加工物Wへの熱酸化処理を行う。
【0025】
この際、本発明に係る減圧処理容器の内容器体11の熱容量が小さいため、短時間で減圧処理容器内の温度が均一となる。同時に、真空断熱により減圧処理容器内の温度も維持されるため、ウェハの処理作業を確実に行うことが可能となる。
また、ウェハ処理終了後、減圧処理容器内に冷却ガスを導入することで、短時間にウェハと減圧処理容器の内容器体11の温度を下げることができる。ここで使用する冷却ガスは、ウェハに対して影響のないガスにする必要がある。例えば、アルゴンなどの不活性ガスにしてもよい。
【実施例2】
【0026】
図3に底板19の様々な態様を実施例2として示す。
図3(a)に示す底板19は、内容器体11の肉厚以下の肉厚の断面をU字型とした底板19を内容器体11と外容器体17aとの隙間の外方に向けて凸として配設した例である。図3(b)に示す底板19は、相互に一端を接合した底板片19aと底板片19bそれぞれの他端を、底板片19aは外容器体17a下端部側面に、底板片19bは内容器体11下端部側面に接合してなる。図3(c)に示す底板19は、一端を内容器体11下端部に接合した底板19の他端を、外容器体17a下端部側面に接合してなる。図3(d)に示す底板19は、一端を外容器体17a下端部に接合した底板19の他端を、内容器体11下端部側面に接合してなる。
【実施例3】
【0027】
図4に外容器体17aの他の態様を実施例3として示す。
この態様では外容器体17aは外容器体17aの内側に向けて凸となる形状の天井部17bを有する。外容器体17aと天井部17bとは別体に成形されて相互にその縁部が接合される。そのため天井部も含めて一体な外容器体17aに比べ効率よく製造することができる。
【実施例4】
【0028】
図5に本発明に係る減圧処理容器の他の使用例を示す。
本例は、減圧処理容器内に、被加工物Wを搬入した後、減圧処理容器外側に配した加熱機構Hにより加熱し、容器内部へプロセスガスを流入させることにより、減圧処理容器内に搬入した作業テーブルT上の被加工物Wへの熱酸化処理を行うものであり、減圧処理容器の構成、作用は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0029】
本例は、内容器体11と外容器体17aとの間に形成される断熱空間13を真空とするのではなく、空気より熱伝導率が低いアルゴン、キセノン等の気体層としてある。
【0030】
この断熱空間13を気体層としても、真空とした場合と同等の高断熱効果が得られる。
このため、断熱空間13を真空とすることに比し、作業効率、作業コストを低減することが可能となる。
【0031】
なお、両例において、内容器体11と外容器体17aの形状は、下部が大きく開口し、上部には小孔が開口する形状であるが、上下部の開口を同一径としてもよく、種々の径を組合せ使用する形態とすることは自明である。
【0032】
また、内容器体11の厚さを約1mm、外容器体17aの厚さを約1.5mmとしてあるが、必ずしもこの厚さに限定されることはない。
【0033】
また、外容器体17aの起伏部15の形状は外容器体17a外周面から外側へ突出する凸型または波型としてあるが、鋸刃型、螺旋型、その他の形状とすることは自明である。
【0034】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は実施例1−実施例5に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る減圧処理容器は、被加工物の熱酸化処理のみならず、半導体ウエハの膜付け処理、その他の処理工程並びに製品、溶剤等を封入してクリーンルーム内を移送するための移送用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
17 容器体
17a 外容器体
11 内容器体
13 断熱空間
15 起伏部
19 底板
T 作業テーブル
W 被加工物
H 加熱機構



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料により円筒状に成形された薄肉の内容器体と、内容器体との間に真空の断熱空間を形成し、金属材料により円筒状に成形され、その外周面にリブ状の起伏部を多数形成してなる薄肉の外容器体と、を接合して二重構造としたことを特徴とする減圧処理容器。
【請求項2】
内容器体の肉厚は、外容器体の肉厚以下であることを特徴とする請求項1に記載の減圧処理容器。
【請求項3】
内容器体と外容器体とを接合する底板は、内容器体と外容器体の隙間の変化を吸収する構造とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の減圧処理容器。
【請求項4】
前記の底板19は、内容器体の肉厚以下の厚みを持つ、U字型の部材を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の減圧処理容器。
【請求項5】
外容器体の金属材料がステンレススティールである請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の減圧処理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234981(P2012−234981A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102823(P2011−102823)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(597100538)株式会社ミラプロ (22)
【Fターム(参考)】