説明

温度調節機構および温度調節機構を用いた半導体製造装置

【課題】精密かつ高速に温度を制御して、温度調節機構に接する部分の温度の偏差を小さく保つことができる温度調節機構および温度調節機構を用いた半導体製造装置を提供する。
【解決手段】冷却ジャケット6は、冷却流路61と、ヒートレーン62とを備える。ヒートレーン62は、受熱部63と、放熱部64と、その間を折り返しながら往復する環状の細管に2相凝縮性作動流体(以下、作動液と称する)を封入して構成される。放熱部64は冷却流路61で冷却される部分、受熱部63は放熱部64より温度が高い部分である。受熱部63では熱を受け作動液が核沸騰により自励振動し、循環しながら顕熱を輸送する。また、受熱部63では液相が熱を吸収し気相へ相が転移し、放熱部64では気相が熱を放し冷却され凝縮し液相へ相が転移し、気液の相転移により潜熱を輸送する。受熱部63と放熱部64の間で熱の輸送が行われ、短時間で温度を均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節機構および温度調節機構を用いた半導体製造装置に関し、特に、半導体製造装置はプラズマ処理に関するものを含む。
【背景技術】
【0002】
半導体産業が発展するに従い、ウェハの大口径化や集積回路(IC)の高度化・複雑化・高集積化が求められている。半導体製造装置においては、コストメリットをより高いものにするために品質の安定化が求められ、例えば課題の1つとして、ウェハ面内の均一性の向上が挙げられる。
【0003】
集積回路や液晶、太陽電池など多くの半導体デバイスの製造にプラズマ技術が広く用いられている。プラズマ技術は半導体製造過程の薄膜の堆積やエッチング工程などで利用されているが、より高性能かつ高機能な製品のために、例えば超微細加工技術など高度なプラズマ処理が求められる。特に、比較的圧力が低い高真空状態でも安定して高密度なプラズマをたてることができるマイクロ波プラズマ処理装置が使用されることが多い。しかしプラズマ処理装置は、マイクロ波を伝播する誘電体窓などが比較的高温になりやすく、安定してプラズマを発生させるために、温度制御が必要となる。
【0004】
特許文献1には、ラジアルスロットラインアンテナを使ったマイクロ波プラズマ処理装置において、シャワープレートの冷却効率を最適化し、同時にマイクロ波の励起効率を最適化することが記載されている。ラジアルラインスロットアンテナの放射面を、処理室外壁の一部を構成し、シャワープレートに密接したカバープレートに密接させ、さらにラジアルラインスロットアンテナ上に、処理室外壁中を厚さ方向に流れる熱流を吸収するように冷却器を設ける。
【0005】
特許文献2には、半導体ウェハを均熱に加熱・冷却するための均熱板を、ペルチェ素子が熱移送器を通して冷却することで、小型、薄型化し、かつ、設定温度への応答を早くしかも精度よくできる半導体装置の昇降温装置が記載されている。熱移送器をヒートパイプ或はヒートレーンとすることにより、更に効率よく熱移送し、均熱化することができる。
【0006】
特許文献3には、熱移送能力が極めて良好な細孔トンネル型ヒートパイプが記載されている。熱輸送原理として、作動液の顕熱による熱輸送(作動液の振動およびまたは循環による熱輸送)と、作動液の潜熱による熱輸送(作動液の蒸気移動時の蒸発および凝縮による熱輸送)とを利用している。
【特許文献1】特開2002−299330号公報
【特許文献2】特開2004−134475号公報
【特許文献3】特開2005−337691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の二相凝縮性作動液の、作動液の顕熱による熱輸送(作動液の振動およびまたは循環による熱輸送)と、作動液の潜熱による熱輸送(作動液の蒸気移動時の蒸発および凝縮による熱輸送)とを利用した熱輸送原理は知られている。
【0008】
特許文献2の半導体装置の昇降温装置は、設定温度は主に室温付近を目的としており、プラズマ処理装置などの高い温度条件下について、記載がされていない。
【0009】
特許文献1のプラズマ処理装置においては、誘電体窓(もしくはシャワープレート)の過熱を抑制するため、誘電体窓の周辺(例えば当該装置の上部)を熱媒体を用いて冷却する方法が採られていた。しかしこの方法では、循環流路の入口付近と出口付近とで熱媒体に温度差が生じた。特に被冷却対象物の面積が大きくなるにつれて、温度差が大きくなる傾向にあった。循環に用いる流路を密に形成し、もしくは流路を長く形成することにより、冷却の応答性や冷却能力を挙げることは可能になるが、温度の制御に限界があった。
【0010】
さらに、当該プラズマ処理装置のプラズマ処理特性に影響するものは、こうした誘電体窓やシャワープレート等の板状部材の過熱に限られず、当該装置の処理特性を向上させるためには、これら板状部材の温度分布をより精密に制御することが重要であることが、発明者の実験等により分かってきた。
【0011】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、精密かつ高速に温度を制御して、温度調節機構に接する部分の温度の偏差を小さく保つことができる温度調節機構および温度調節機構を用いた半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る温度調節機構は、
半導体製造工程の処理が可能な処理容器の、該処理容器の被処理対象物を収容する空間を囲む部材に接する温度調節機構であって、
前記被処理対象物を収容する空間の外面の方向に沿って配置される環状の細管と、
前記環状の細管に封入された気体と液体との2相凝縮性作動流体と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記環状の細管は蛇行して設置され、
該環状の細管の少なくとも1部分に接して熱交換器を備える
ことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記熱交換器と前記被処理対象物を収容する空間との最小の距離は、少なくとも前記熱交換器の前記最小の距離の範囲における、前記環状の細管と前記被処理対象物を収容する空間との距離よりも大きい、ことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記被処理対象物を収容する空間を囲む部材に接する温度調節機構を複数の部分に分割した該部分ごとに、それぞれ独立の前記環状の細管を備えることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記温度調節機構を複数の部分に分割した該部分ごとに、それぞれ独立に設定された温度で温度調節が可能であることを特徴とする。
【0017】
さらに好ましくは、前記温度調節機構を複数の部分に分割した該部分ごとに、前記環状の細管に接して前記熱交換器を備えることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記半導体製造工程の処理はプラズマ処理であって、
前記部材は、前記プラズマを前記処理容器に封止し、該プラズマを挟んで前記被処理対象物と対向する板状部材である
ことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記板状部材の、前記処理容器の外側に向かう面の側に、前記環状の細管を備えることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記環状の細管を、前記板状部材の中心と外周との間を折り返して蛇行するように配置させ、
前記板状部材の周縁部近傍に前記熱交換器を備える
ことを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記環状の細管を、前記板状部材の中心から外周に向かう線を横切って折り返して蛇行するように配置させ、
前記板状部材の中心から外周に向かう方向に沿って前記熱交換器を備える
ことを特徴とする。
【0022】
さらに好ましくは、前記板状部材の主面の延長方向の周囲に、前記気体と液体との2相凝縮性作動流体を封入した環状の細管を備えることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、前記半導体製造工程の処理はプラズマ処理であって、
前記部材は、該処理容器の被処理対象物を収容する空間にあって、前記プラズマ処理に用いるガスを該被処理対象物に向かって導入するシャワープレートであり、
該シャワープレートの内部に前記環状の細管と、前記プラズマ処理に用いるガスのガス通路を備える
ことを特徴とする。
【0024】
本発明の第2の観点に係る半導体製造装置は、
上記第1の観点にかかる温度調節機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の温度調節機構および温度調節機構を用いた半導体製造装置によれば、精密かつ高速に温度を制御して、温度調節機構に接する部分の温度の偏差を小さく保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。図1は、本発明の実施の形態に係る半導体製造装置であるプラズマ処理装置の構成概略図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る温度調節機構である冷却ジャケットの構成図である。図2では説明の為に、冷却ジャケットの一部分について(部分60aのみ)内部の様子を示す。
【0027】
プラズマ処理装置1は、処理容器(チャンバ)2、誘電体窓3、アンテナ4、導波管5、冷却ジャケット6、基板保持台7、排気ポート8a、真空ポンプ8b、高周波電源9、温度センサ12、ガス源13を備える。処理容器2は、排気ポート8aと、真空ポンプ8bを備え、上部開口部を封止した処理容器2内を所定の圧力に保つことができる。
【0028】
処理容器2の壁を構成する一部として、下部容器2bの上部に、保持リング2aが組み付けられる。保持リング2aは、処理容器2の天井側へ向かってリング径(内径)が拡大する同心円状の段差を有して構成され、誘電体窓3の側面を覆うように保持しながら、誘電体窓3の処理容器2側に向かう面を係止する。保持リング2aおよび下部容器2bは、例えばアルミニウム(Al)などからなるものであり、その内壁面には、例えば酸化処理により酸化アルミニウム等からなる保護膜が形成されている。
【0029】
誘電体窓3は、SiOやAlなどのマイクロ波を伝播する誘電体材料から形成され、保持リング2aに周縁部を保持され、処理容器2の開口部を蓋することができる。誘電体窓3は、アッパープレート3a、シャワープレート3bを備える。シャワープレート3bは、多数のノズル開口部3cと、凹状の溝3dと、開口部につながる流路3eと、を備えており、アッパープレート3aを組み付けることで連通する。このように連通した流路は、プラズマガスの流路として機能し、ガス源13より誘電体窓3に導入したガスは誘電体窓3直下の空間S中に一様に供給される。
【0030】
アンテナ4は導波部4a、ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)4b、遅波板4cからなる。遅波板4cは、導波部4aとラジアルラインスロットアンテナ4bとの間にありマイクロ波波長を圧縮する。導波部4aは冷却ジャケット6と一体となるようにシールド部材で構成され、遅波板4cはSiOやAlなどの誘電体材料から構成される。導波管5は外側導波管5aと内側導波管5bからなる同軸導波管である。
【0031】
誘電体窓3上には、アンテナ4が結合されている。より具体的には、アンテナ4のラジアルラインスロットアンテナ4bが、誘電体窓3のアッパープレート3aに密接している。アンテナ4には、導波管5が接続されている。導波部4aは外側導波管5aに接続され、ラジアルラインスロットアンテナ4bは内側導波管5bに結合される。
【0032】
アンテナ4の上には、誘電体窓3の温度調節を補助する冷却ジャケット6が設けられている。冷却ジャケット6は、アンテナ4の導波部4aと一体となるように形成されることで、効率よく伝熱することができる。冷却ジャケット6は、誘電体窓3に向かう面を、面積が等しい同じ形の4つの扇形に分割されている(冷却ジャケット6の分割した扇形の部分60a、60b、60c、60d)。また、アンテナ4近傍、もしくは導波管5の周囲には、必要な数だけの温度センサ12が設けられている。温度センサ12は、アンテナ4等の温度を検出するものであり、例えばファイバセンサ等からなる。
【0033】
冷却ジャケット6は、冷却流路61と、ヒートレーン62とを備える。冷却流路61は冷却ジャケット6の周縁部に備えられ、ヒートレーン62は、冷却ジャケット6の中心部と周縁部の間を蛇行して備えられる。
【0034】
冷却流路61は、冷却流路61の内部に熱媒体を流すことで冷却ジャケット6を冷却することができる。図中の太矢印は、冷却流路61内を流れる熱媒体の流れ方向を示す。例えば誘電体窓3の上方を冷却したい温度に合わせて、予めチラー(図示せず)の温度を設定しておき、チラーから所定の温度の熱媒体を供給する。熱媒体で熱を奪うことで冷却ジャケット6を冷却し、冷却ジャケット6に対向した誘電体窓3を冷却することができる。熱媒体は、チラーから供給され、流路入口61aより入り、冷却流路61を介して流路出口61bから排出し、再度チラーに戻される。冷却に用いる熱媒体としては、例えばシリコンオイル、フッ素系液体、またはエチレングリコールなどの液体の熱交換媒体を用いることができる。
【0035】
ヒートレーン62は、受熱部(蒸発部)63と、放熱部(凝縮部)64と、受熱部63と放熱部64の間を交互に、何度も折り返すように往復する環状の細管に、2相凝縮性作動流体(以下、作動液と称する)を封入して構成される。環状とは、間断なく管が形成された様子を意味し、ヒートレーン62の内部に封入した流体がとぎれることなく循環できることを示す。このときヒートレーン62の中の作動液は、目的の温度範囲で作動流体が液相から気相に相転移する圧力で封入される。
【0036】
放熱部64は、冷却ジャケット6の周縁部の冷却流路61で冷却される部分で、図中の1点鎖線囲み部分を示す。受熱部63は、放熱部64と離れた位置、ここでは冷却ジャケット6の中心部付近に設定され、図中の点線囲み部分を示す。ヒートレーン62に備えた熱交換器が冷却を行う冷却流路61であるため、熱交換器のある部分を放熱部64としたが、熱交換器が加熱するタイプの場合は、熱交換器がある部分が受熱部63となる。図中では、分かりやすく説明するために受熱部63および放熱部64を線で囲み、示している。実際は、ヒートレーン62の冷却される部分であって、温度の低い部分が放熱部64として機能し、放熱部64と比較して温度が高い部分が受熱部63として機能する。
【0037】
受熱部63では熱を受け作動液が核沸騰し、作動液が自励振動し、循環しながら顕熱を輸送する。図中の細矢印は作動液の循環する様子を表し、実線の矢印は受熱部63から放熱部64へ、点線の矢印は放熱部64から受熱部63への移動を示す。また、受熱部63では作動液が熱を吸収し液相から気相への相転移が起こり、放熱部64では熱を放し冷却され気相が凝縮し気相から液相への相転移が起こり、これら気液の相転移により、潜熱を輸送する。このようにヒートレーン62は、顕熱輸送と潜熱輸送により、受熱部63と放熱部64の間で熱の輸送が行われる。さらに、ヒートレーン62は、受熱部63と放熱部64との間に限らず、温度差があればその間で常に熱輸送が行われるので、温度差が小さくなり、短時間で温度を均一にすることが可能となる。
【0038】
ヒートレーン62は、冷却ジャケット6内を、誘電体窓3の中心と外周との間を折り返して蛇行するように、かつ、どの部分においても、受熱部63から放熱部64までの距離が等しくなるように形成される。そのため、冷却ジャケット6の中心部と周縁部の温度分布は等しく、また、どの径方向においても温度分布は等しくなるので、冷却ジャケット6内の温度分布を均一にすることができる。
【0039】
冷却ジャケット6は、プラズマ形成時において、導波管5付近が最も温度が高く、周縁部分に向かうにつれ温度が低くなることから、ヒートレーン62の受熱部63は温度が高い部分に置かれることになる。ヒートレーン62により、受熱部63と放熱部64の間の温度が均一になるように熱輸送が行われるが、同時に、受熱部63で受け取った熱が放熱部64に蓄積されていく。冷却ジャケット6に備えられた冷却流路61で、放熱部64に蓄積された熱を奪い、ヒートレーン62の熱の蓄積を防止することができる。さらに、冷却流路61により奪う熱量を蓄積された熱量より多くすることで、冷却ジャケット6を冷却することができる。このように、ヒートレーン62を備えた冷却ジャケット6は、その面内において、所定の温度で冷却を行いながら、短時間で温度分布を均一にすることができる。
【0040】
また、冷却ジャケット6は、誘電体窓3に向かう面を、面積が等しい同じ形の4つの扇形に分割されている。この分割した扇形の部分60a、60b、60c、60d(以下部分60nと称する)毎に、温度調節を行うことも可能である。複数の温度センサ12で検出したアンテナ4の温度に合わせて、部分60nに備えている冷却流路61を制御し、所定の温度に設定した熱媒体を流すことで、冷却ジャケット6の部分60nを所望の温度に冷却することができる。熱媒体の温度調節は、例えばチラーに備えた温度調節手段をもって行い、流路入口61aから所定の温度で冷却流路61へ熱媒体を供給する。冷却ジャケット6の部分60nは、分割した部分毎に所定の温度に制御でき、かつ、ヒートレーン62でその部分60nにおける温度分布を均一化できる。
【0041】
以下、簡単に、プラズマ処理の方法について説明する。プラズマ処理装置1の処理容器2は誘電体窓3により塞がれている。このとき処理容器2内は、排気ポート8aおよび真空ポンプ8bで排気、減圧し、真空状態にする。
【0042】
マイクロ波源から導波管5を通してマイクロ波を供給する。マイクロ波は導波部4aとラジアルラインスロットアンテナ4bとの間を径方向に伝播し、ラジアルラインスロットアンテナ4bのスロットより放射される。
【0043】
処理容器2内にマイクロ波が給電されプラズマを生成するときに、アルゴン(Ar)またはキセノン(Xe)、および窒素(N)などの不活性ガスと、必要に応じて水素などのプロセスガスを、ガス源13よりガス流路へ供給する。ガスは誘電体窓3直下へ均一に放射し、処理容器2内へ導入する。高周波電源9に電圧を印加し、空間Sに形成されたアルゴン(Ar)またはキセノン(Xe)プラズマを誘導し、基板保持台7に設置した被処理基板Wにプラズマ処理を施すことができる。例えば被処理基板W上に絶縁膜などの成膜、いわゆるCVD(Chemical Vapor Deposition)を行う。被処理基板Wを搬入しプラズマ処理後に搬出するという一連の流れを繰り返し、所定枚数の基板に対して所定の基板処理を行う。
【0044】
プラズマを形成する際の発熱により誘電体窓3付近は高温になり、かつ、誘電体窓3自体に熱が蓄積するので温度分布が生じやすい。冷却ジャケット6に備えた冷却流路61により、誘電体窓3を冷却することができる。冷却ジャケット6は、プラズマ処理装置1における発熱部位付近のアンテナ4上に設置でき、誘電体窓3に蓄積された熱を、ラジアルラインスロットアンテナ4bを介して吸収し、効率よく冷却でき、装置内の他の部分へ温度影響を与えにくい。
【0045】
導波管5付近に位置する誘電体窓3の中心部と、周縁部とにおいても、温度分布が生じやすい。ヒートレーン62により、冷却ジャケット6の中心部と周縁部の温度差を、短時間で解消できる。さらに、どの径方向においてもヒートレーン62が同じ長さで備えられていることで、冷却ジャケット6の面内の温度分布を均一にすることができる。従って、冷却ジャケット6に対向する誘電体窓3を短時間で所定の温度に保ち、かつ、温度分布を均一にすることが可能となり、安定してプラズマを形成することができる。
【0046】
さらに、被処理基板Wにプラズマ処理を施すとき、プラズマモードに合わせた温度調節を行うことで、より安定してプラズマを形成することが可能となる。冷却ジャケット6の誘電体窓3に向かう面を分割した部分60nの、冷却流路61を流れる熱媒体の温度を設定することができる。部分60n毎に、所定の温度に冷却し、かつ、ヒートレーン62でその部分60n内の温度分布を均一にすることで、プラズマ形成の好適条件を保つことが可能となる。
【0047】
(実施の形態1の変形例)
図3は、本発明の実施の形態1に係る温度調節機構である冷却ジャケットの構成図である。図3では説明の為に、冷却ジャケットの一部分について(部分65aのみ)内部の様子を示す。冷却ジャケット6を備える半導体製造装置は、図1に示すプラズマ処理装置1を用いており、冷却ジャケット6の構造以外は、実施の形態1に示した通りである。
【0048】
冷却ジャケット6は、誘電体窓3に向かう面を、面積が等しい同じ形の3つの扇形に分割されている(冷却ジャケット6の分割した扇形の部分65a、65b、65c)。図3では、説明の為に、部分65aのみ内部の様子を示す。
【0049】
冷却ジャケット6は、分割した部分ごとに、冷却流路66と、ヒートレーン67a、67bとを備える。冷却流路66は、分割した扇形の部分65aを真ん中から区切るように、中心と外周を結ぶ線上に備えられる。その冷却流路66を挟んで鏡面対称となるように、ヒートレーン67a、67bは形成される。以下、ヒートレーン67aとヒートレーン67bは鏡面対称の関係であり、機能などは等しいので、ヒートレーン67bの説明を省略する。ヒートレーン67aは、分割した部分65a内で、扇形の円弧に沿って、折り返す度にその円弧の径を大きくしながら、連続した1つの環状に形成される。ヒートレーン67aは、円弧に沿って曲線とは限らず、中心から外周に向かう線を横切るように直線に形成されてもよく、分割した部分65a内で密になるように形成される。
【0050】
冷却流路66は、その内部に熱媒体を流すことで冷却ジャケット6を冷却することができる。図中の太矢印は、冷却流路66内を流れる熱媒体の流れ方向を示す。高温となりやすい導波管5付近の流路入口66aから冷却流路66内部に熱媒体を供給し、比較的低温である誘電体窓3周縁部近傍の流路出口66bから熱媒体を排出することで、効率よく誘電体窓3近傍を冷却することができる。熱媒体は、予めチラーの温度を設定しておき、チラーを起点・終点として熱媒体を冷却流路66内に循環させることで、所定の温度に誘電体窓3を冷却することができる。冷却に用いる熱媒体としては、例えばシリコンオイル、フッ素系液体、またはエチレングリコールなどの液体の熱交換媒体を用いることができる。
【0051】
ヒートレーン67aは、受熱部(蒸発部)68aと、放熱部(凝縮部)69と、受熱部68aと放熱部69の間を交互に、何度も折り返すように往復する環状の細管に2相凝縮性作動流体(以下、作動液と称する)を封入して構成される。環状とは、間断なく管が形成された様子を意味し、ヒートレーン67aの内部に封入した流体がとぎれることなく循環できることを示す。このときヒートレーン67aの中の作動液は、目的の温度範囲で作動流体が液相から気相に相転移する圧力で封入される。
【0052】
放熱部69は、冷却ジャケット6の中心から外周に向かう線上に備えた冷却流路66で冷却される部分で、図中の1点鎖線囲み部分を示す。受熱部68aは、放熱部69と離れた位置、ここでは冷却ジャケット6の分割した部分65aの扇形の一端に設定され、図中の点線囲み部分を示す。ヒートレーン67aに備えた熱交換器が冷却を行う冷却流路66であるため、熱交換器のある部分を放熱部69としたが、熱交換器が加熱するタイプの場合は、熱交換器がある部分が受熱部68aとなる。図中では、分かりやすく説明するために受熱部68aおよび放熱部69を線で囲み、示している。実際は、ヒートレーン67aの冷却される部分であって、温度の低い部分が放熱部69として機能し、放熱部69と比較して温度が高い部分が受熱部68aとして機能する。
【0053】
受熱部68aでは熱を受け作動液が核沸騰し、作動液が自励振動し、循環しながら顕熱を輸送する。図中の細矢印は作動液の循環する様子を表し、実線の矢印は受熱部68aから放熱部69へ、点線の矢印は放熱部69から受熱部68aへの移動を示す。また、受熱部68aでは作動液が熱を吸収し液相から気相への相転移が起こり、放熱部69では熱を放し冷却され気相が凝縮し気相から液相への相転移が起こり、これら気液の相転移により、潜熱を輸送する。このようにヒートレーン67aは、顕熱輸送と潜熱輸送により、受熱部68aと放熱部69の間で熱の輸送が行われる。さらに、ヒートレーン67aは、受熱部68aと放熱部69との間に限らず、温度差があればその間で常に熱輸送が行われるので、温度差が小さくなり、短時間で温度を均一にすることが可能となる。
【0054】
また、受熱部68aで受け取った熱は、熱輸送により放熱部69へ運ばれ、放熱部69に熱が蓄積されていくが、冷却流路66の熱媒体を用いて、この蓄積される熱を奪い、冷却ジャケット6の冷却を行う。そのため、ヒートレーン67aを備えた冷却ジャケット6は、その面内において、所定の温度で冷却を行いながら、短時間で温度分布を均一にすることができる。
【0055】
また、冷却ジャケット6は、誘電体窓3に向かう面を、面積が等しい同じ形の3つの扇形に分割されている。この分割した扇形の部分65a、65b、65cそれぞれの温度調節を行うことも可能である。部分65a、65b、65cに備えている冷却流路66の中を、所定の温度に設定した熱媒体を流すことで、分割した部分毎に所望の温度に冷却することができる。熱媒体の温度は、チラーによる温度調節をもって行い、流路入口66aから所定の温度で冷却流路66へ熱媒体を供給する。冷却ジャケット6は、短時間で、分割した部分65a、65b、65cそれぞれを所定の温度に制御でき、かつ、ヒートレーン67でその部分における温度分布を均一化できる。
【0056】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2にかかる温度調節機構である保持リングの構成図である。図4(a)は誘電体窓3側から見た平面図、図4(b)は図4(a)の囲み部分Kの内部の様子を示す図、図4(c)は保持リング2aの一部分について(複数に分割した部分の部分20aのみ)の斜視図を示す。保持リング2aを備える半導体製造装置は、図1に示すプラズマ処理装置1を用いており、基本的な構造は、実施の形態1と同じである。
【0057】
誘電体窓3を係止する保持リング2aは、誘電体窓3の円周部分を3等分するように分割した部分20a、20b、20c毎に、ヒートレーン21a、21bと、冷却流路24とを備え、誘電体窓3を側方より冷却することができる。ヒートレーン21a、21bは、冷却流路24を中心に対称に配置される。冷却流路24は、その内部に熱媒体を流すことで、保持リング2aの熱を奪い冷却を行う。具体的には、チラーから供給された熱媒体は、流路入口24aから入り、保持リング2a内に設けられた冷却流路24を介して、流路出口24bから排出され、再度チラーに戻される。冷却流路24を通るときに、熱媒体で保持リング2aの熱を奪い、冷却を行う。予めチラーの温度を設定しておくことで、所定の温度で保持リング2aを冷却することができる。冷却に用いる熱媒体としては、例えばシリコンオイル、フッ素系液体、またはエチレングリコールなどの液体の熱交換媒体を用いることができる。
【0058】
ヒートレーン21aは、分割した部分20aに、受熱部(蒸発部)22aと、放熱部(凝縮部)23と、受熱部22aと放熱部23の間を交互に、誘電体窓3の外周を周方向に何度も折り返すように往復する環状の細管に2相凝縮性作動流体(以下、作動液と称する)を封入して構成される。環状の細管とは、間断なく管が形成され、ヒートレーン21aに所定の圧力で封入した作動液が循環できる細管を意味する。ヒートレーン21aに作動液を封入するときの圧力は、目的の温度範囲で作動流体が液相から気相へ相転移可能な圧力とする。
【0059】
放熱部23は、保持リング2aの冷却流路24で冷却される部分で、部分20aの一端にあり、図中の1点鎖線囲み部分を示す。受熱部22aは、部分20aの放熱部23に対向する他端に設定され、図中の点線囲み部分を示す。保持リング2aの部分20a、20b、20c毎に、冷却流路24を中心として、左右対称に、ヒートレーン21a、21bが形成される。放熱部23を共用し、その両端に、各々のヒートレーン21a、21bに対応する受熱部22a、22bが備えられる。図中では、分かりやすく説明するために受熱部22aおよび放熱部23を線で囲み、示している。実際は、ヒートレーン21の冷却される部分であって、温度の低い部分が放熱部23として機能し、放熱部23と比較して温度が高い部分が受熱部22として機能する。
【0060】
受熱部22aでは熱を受け作動液が核沸騰し、作動液が自励振動し、循環しながら顕熱を輸送する。図中の細矢印は作動液の循環する様子を表し、実線の矢印は受熱部22aから放熱部23へ、点線の矢印は放熱部23から受熱部22aへの移動を示す。また、受熱部22aでは作動液が熱を吸収し液相から気相への相転移が起こり、放熱部23では熱を放し冷却され気相が凝縮し気相から液相への相転移が起こり、これら気液の相転移により、潜熱を輸送する。このようにヒートレーン21aは、顕熱輸送と潜熱輸送により、受熱部22aと放熱部23の間で熱の輸送が行われる。さらに、ヒートレーン21aは、受熱部22aと放熱部23との間に限らず、温度差があればその間で常に熱輸送が行われるので、温度差が小さくなり、短時間で温度を均一にすることが可能となる。
【0061】
同時に、ヒートレーン21aの受熱部22aで受けた熱を放熱部23へ輸送し、放熱部23に熱が蓄積されていく。保持リング2aに備えられた冷却流路24により、放熱部23に蓄積された熱を奪い熱の上昇を防止し、さらに所定の熱量を奪うことで、所望の温度に冷却することができる。
【0062】
ヒートレーン21bにおいても、ヒートレーン21aと同様に熱輸送が行われ、温度分布が均一となり、また、ヒートレーン21bが備えられた部分の冷却が可能である。さらに、保持リング2aの部分20aだけでなく、部分20b、20c毎においても同様であり、その結果、保持リング2aは、ヒートレーン21および冷却流路24を備えることで、誘電体窓3を側方から所定の温度に冷却し、かつ、温度分布を均一に保つことが可能となる。
【0063】
また、保持リング2aは、プラズマで発生する熱を空間Sの側方に伝えて冷却する。このとき発生する保持リング2a内での温度差は、プラズマを発生する空間Sに直接触れる部分の、ヒートレーン21a、21bではきわめて小さく、プロセス処理(プラズマ発生のための条件など)に温度の影響をほとんど与えない。保持リング2aの温度差は主に、ヒートレーン21a、21bと冷却流路24との間で発生し、特に放熱部23である冷却流路24付近で発生するが、冷却流路24を保持リング2aから外側に突出させた部分に配置することで、空間Sに直接触れることがない。そのため、プロセス処理を行う空間Sに温度の影響を与えることなく、保持リング2aの内面をほぼ均一な温度に保つことができる。
【0064】
さらに、保持リング2aは、誘電体窓3の円周部分を3等分するように分割した部分20a、20b、20cから構成されており、その部分毎にヒートレーン21a、bおよび冷却流路24を備え、各々の冷却流路24は流路入口24aと流路出口24bを備える。流路入口24aに入る前の熱媒体の温度を、チラーで個別に温度を制御することで、部分20a、20b、20c毎に冷却する温度を変えることができる。部分20a、20b、20c毎に温度設定は異なるが、その部分20a、20b、20cに冷却される面内の温度分布はヒートレーン21部分20a、bにより均一化される。温度分布を均一にし、部分ごとに所定の温度に設定することで、プラズマモードを保つためにより最適な温度条件を保つことができる。
【0065】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態に係る半導体製造装置であるプラズマ処理装置の変形例を示す構成概略図である。図6(a)は、本発明の実施の形態3に係る温度調節機構である下段シャワープレートの構成図であり、図5に示すプラズマ処理装置51に備えた下段シャワープレート10を処理容器2側から見た平面図を示す。図6(b)は図6(a)の部分拡大図で、誘電体窓3から見た図である。図6(c)は図6(a)のM−M線断面図、図6(d)は図6(a)のN−N線断面図を示す。
【0066】
プラズマ処理装置51の構成は、実施の形態1で示したプラズマ処理装置1とほとんど同じである。処理容器2の保持リング2aと下部容器2bとの間に、処理ガス供給構造体である下段シャワープレート10を備える。処理容器2内の空間Sを、下段シャワープレート10で区切り、下部空間を空間S1、上部空間を空間S2とする。
【0067】
下段シャワープレート10は、フレーム100、開口部101、ガス供給ポート102、ガス通路103、複数のガス噴射口104、ヒートレーン105を備える。フレーム100は、円板の形状でその内部が格子状で形成される。フレーム100は内部にガス通路103、ヒートレーン105を備え、内部の被処理基板W側(すなわち空間S1側)にガス通路103が、誘電体窓3側(すなわち空間S2側)にヒートレーン105が形成される。
【0068】
下段シャワープレート10のフレーム100の格子でできた空間の開口部101から、空間S1で形成されたプラズマやプラズマ中に含まれる処理ガスを通過させることができる。ガス供給ポート102、ガス通路103、複数のガス噴射口104は連通しており、処理ガス源14から供給されたガスを、下段シャワープレート10を介して空間S1に放出し、被処理基板Wに対応する範囲全域に均一に分布する役割を有する。
【0069】
下段シャワープレート10は、処理容器2の保持リング2aと下部容器2bとの間に備えられており、下段シャワープレート10の周縁部分(ガス通路周縁部103bより外側)は、処理容器2の壁に組み込まれる。プラズマを形成するときに発生する熱が下段シャワープレート10に蓄積するのを防止するために、周縁部分に冷却流路106を備える。冷却流路106は、その内部に熱媒体を流すことで、下段シャワープレート10の熱を奪い冷却を行う。具体的には、チラーから供給された熱媒体は、流路入口106aから入り、冷却流路106を介して、流路出口106bから排出され、再度チラーに戻される。冷却流路106を通るときに、熱媒体で下段シャワープレート10の周縁部分から熱を奪い冷却を行う。予めチラーの温度を設定しておくことで、所定の温度で保持リング2aを冷却することができる。冷却に用いる熱媒体としては、例えばシリコンオイル、フッ素系液体、またはエチレングリコールなどの液体の熱交換媒体を用いることができる。冷却流路106を周縁部分に備えることで、直接、空間S1やS2に触れることがなく、プラズマの形成条件(ここでは温度条件)に影響することなく、冷却することが可能となる。
【0070】
ヒートレーン105は、フレーム100の格子状部分に受熱部(蒸発部)100aを、フレーム100の周縁部分に放熱部(凝縮部)100bを備え、それらの間を交互に通る環状の細管に、2相凝縮性作動流体(以下、作動液と称する)を封入して構成される。このヒートレーン105は、1つ、もしくは複数の間断ない環状の細管から形成され、それぞれの細管で作動液が循環する。このときヒートレーン105の中の作動液は、目的の温度範囲で作動流体が液相から気相に相転移する圧力で封入される。
【0071】
放熱部100bは、冷却流路106で冷却される部分で、フレーム100の周縁部分(ガス通路周縁部103bより外側)にある。受熱部100aは、空間S1に触れる部分の、フレーム100の格子部分である。冷却流路106を備えない場合であっても、フレーム100の周縁部分は、処理容器2の外部空間に近く、また、プラズマを形成するときに発生する熱などに直接触れることがなく中心の格子状部分より温度が低いので、フレーム100の周縁部分は放熱部100b、格子状部分は受熱部100aとなる。
【0072】
ヒートレーン105の受熱部100aでは熱を受け作動液が核沸騰し、作動液が自励振動し、循環しながら顕熱を輸送する。また、受熱部100aでは作動液が熱を吸収し液相から気相への相転移が起こり、放熱部100bでは熱を放し冷却され気相が凝縮し気相から液相への相転移が起こり、これら気液の相転移により、潜熱を輸送する。このように顕熱輸送と潜熱輸送により、受熱部100aと放熱部100bの間で熱の輸送が行われる。さらに、ヒートレーン105は、受熱部100aと放熱部100bとの間に限らず、温度差があればその間で常に熱輸送が行われるので、温度差が小さくなり、短時間で温度を均一にすることが可能となる。
【0073】
下段シャワープレート10の温度差は主に、ヒートレーン105と、冷却流路106との間、すなわち、フレーム100の周縁部分にあるヒートレーン105付近で発生する。また、ヒートレーン105内、すなわち、フレーム100の格子状部分内での温度差は小さい。フレーム100は、格子状部分において空間S1、S2に触れるため、温度差が発生すると、プロセス処理(プラズマ発生のための条件など)に温度の影響を与えるおそれがある。しかし、主に、冷却流路106を備えるフレーム100の周縁部分において温度差は発生する。そのため、プロセス処理を行う空間S1、S2に温度の影響を与えることなく、フレーム100の格子状部分をほぼ均一な温度に保つことができる。
【0074】
したがって温度差が解消し、下段シャワープレート10の被処理基板Wに対する面内の温度分布を短時間で均一にすることが可能である。さらに、受熱部100aで受け取った熱は、熱輸送により放熱部100bへ運ばれ蓄積されていくが、冷却流路106の熱媒体を用いてこの蓄積される熱を奪い、下段シャワープレート10の冷却を行う。そのため、ヒートレーン105を備えた下段シャワープレート10は、その面内において、所定の温度で冷却を行いながら、短時間で温度分布を均一にすることができる。
【0075】
以下、簡単に、プラズマ処理の方法について説明する。プラズマ処理装置51の処理容器2は誘電体窓3により塞がれている。このとき処理容器2内は、排気ポート8aおよび真空ポンプ8bで排気、減圧し、真空状態にする。
【0076】
マイクロ波源から導波管5を通してマイクロ波を供給する。マイクロ波は導波部4aとラジアルラインスロットアンテナ4bとの間を径方向に伝播し、ラジアルラインスロットアンテナ4bのスロットより放射される。
【0077】
マイクロ波によりプラズマ化する際に、ガス源13より誘電体窓3を介して、アルゴン(Ar)またはキセノン(Xe)などのプラズマガスを空間S2に供給する。空間S2で形成されたプラズマやプラズマ中に含まれる処理ガスは、下段シャワープレート10の開口部101から空間S1へ通過する。
【0078】
処理ガス源14より下段シャワープレート10を介して、解離しやすいフルオロカーボンガス(C)やエッチングガスなどの処理ガスを、空間S1の被処理基板Wに対応する範囲全域に均一に分布する。プラズマのマイクロ波励起は空間S2においてのみ生じるようになり、被処理基板Wの表面を含む空間S1においては空間S2から拡散してきたプラズマにより処理ガスが活性化され、基板保持台7に設置した被処理基板Wにプラズマ処理を施すことができる。また、プラズマ着火時に被処理基板Wが直接マイクロ波に曝されなくなるので、不良率を低減できる。プラズマ処理とは例えば被処理基板W上に絶縁膜などの成膜、いわゆるCVD(Chemical Vapor Deposition)を行う。被処理基板Wを搬入しプラズマ処理後に搬出するという一連の流れを繰り返し、所定枚数の基板に対して所定の基板処理を行う。
【0079】
プラズマを形成する際、誘電体窓3および誘電体窓3付近は高温になり、Alなどの材料、もしくはセラミックなどの材料からなる下段シャワープレート10も高温となり、また、熱が蓄積するので温度分布が生じやすい。プラズマを形成する空間S1付近に温度分布が生じると、プラズマの形成を不安定にさせる要因となる。下段シャワープレート10に備えられたヒートレーン105により、短時間で温度分布を均一にすることができ、かつ、冷却により所定の温度に維持することができるので、プラズマの形成の好適条件を保つことが可能である。
【0080】
実施の形態1または実施の形態2に示したプラズマ処理装置1の誘電体窓3は、板状部材であり、プラズマ処理容器の天井部分を覆い、処理容器を封止することができる。また、誘電体窓3は誘電体材料から成り、マイクロ波を伝播することが可能なだけでなく、ガスを連通することができる通路を備え、処理容器の内部にプラズマ処理に用いるガスを放射するシャワープレートとして機能してもよい。
【0081】
実施の形態3に示したプラズマ処理装置51の下段シャワープレート10は、雰囲気を遮断することなく空間を区切ることができれば、開口部は格子状とは限らず、円やひし形などであってもよい。下段シャワープレート10の内部の、被処理対象物側の面内にプラズマガスのガス通路を備え、ガス通路に近接しながら被処理対象物の外側の面内に、温度調節機構である作動液を封入した細管を備えることが望ましい。下段シャワープレート10を備えることで、プラズマ雰囲気を被処理対象物に晒すおそれがなく、解離しやすいプラズマガスであっても効率よく噴射でき、プラズマ側の温度分布を均一にし、プラズマ形成の好適条件を保つことができる。実施の形態3においては、下段シャワープレート10のみに温度調節機構を備えているが、実施の形態1または2で示した温度調節機構と組み合わせて備えてもよい。
【0082】
なお、実施の形態で説明したプラズマ処理装置および温度調節機構は一例であり、これらに限定されるものではない。温度調節機構(冷却ジャケット、保持リング、シャワープレートなど)を幾つかの部分に分割する場合の分割する数や面積の配分についてや、各々に備えるヒートレーンの形状や配置の仕方および冷却流路の備え方など、任意に設定できる。冷却流路を中心として、その左右に、対称にヒートレーンを備えている場合だけでなく、片側のみにヒートレーンを備えてもよく、また、左右対称でなくてもよく、ヒートレーンの形状や往復する長さが等しくなくても構わない。ヒートレーンの中で温度が低い部分が放熱部として、放熱部と比較して温度が高い部分が受熱部として機能するため、ヒートレーンに備える受熱部と放熱部の位置についても、ヒートレーンに備える熱交換器の位置や、設定する温度の高低により任意に設定できる。
【0083】
また、実施の形態で説明した温度調節機構を組み合わせて用いたり、誘電体窓や基板保持台などにヒートレーンを用いた温度調節機構を備えてもよい。また、上述したヒートレーンを備えた温度調節機構とは別に、温度調節ができる加熱冷却装置を備えてもよい。加熱冷却装置により、短時間で所定の温度へ調節ができるようになり、また、所定の温度のレンジ幅を広くできる。別途備えた加熱冷却装置とヒートレーンを用いた温度調節機構を組み合わせて使用することで、短時間で所定の温度にし、かつ温度分布を均一にできる。
【0084】
また、プラズマ処理装置の構造、プラズマ処理方法、プラズマ処理に用いられるガス、処理を施す基板、温度調節冷却手段などについても、任意に選択し、設定することが可能である。プラズマ処理装置に限らずに、半導体の製造における他の工程で使用する装置にヒートレーンを用いた温度調節機構を備えてもよい。温度分布により不具合が生じやすい工程を含む場合や、より品質の安定した製品を求められている場合など、短時間で温度分布を均一にすることが求められる半導体の製造において特に有用である。半導体製造装置の例として、ウェーハ上に薄い酸化膜を形成する際に用いる熱処理成膜装置や、感光剤(フォトレジスト)の塗布と現像を行う装置などが挙げられる。プラズマ処理を施す処理ユニットを備えた幾つかの処理ユニットからなる半導体製造装置でもかまわない。ヒートレーンを用いた温度調節機構を用いる装置は上述した実施の形態の例に限らず、任意に選択することができ、様々な実施の形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体製造装置であるプラズマ処理装置を示す構成概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る温度調節機構である冷却ジャケットの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る冷却ジャケットの変形例を示す構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る温度調節機構である保持リングの構成図である。(a)は誘電体窓側から見た平面図、(b)は(a)の囲み部分Kの内部の様子を示す図、(c)は保持リングを複数に分割した部分の一部分についての斜視図を示す。
【図5】本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置の変形例を示す構成概略図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る温度調節機構である下段シャワープレートの構成図である。(a)は処理容器側から見た平面図である。(b)は(a)の一部分を誘電体窓側から見た拡大図、(c)は(a)のM−M線断面図、(d)は(a)のN−N線断面図を示す。
【符号の説明】
【0086】
1 プラズマ処理装置
2 処理容器(チャンバ)
2a 保持リング
3 誘電体窓
4 アンテナ
5 導波管
6 冷却ジャケット
10 下段シャワープレート
21、62、67、105 ヒートレーン
22a、22b、63、
68、100a 受熱部(蒸発部)
23、64、69、100b 放熱部(凝縮部)
24、61、66、106 冷却流路
W 被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程の処理が可能な処理容器の、該処理容器の被処理対象物を収容する空間を囲む部材に接する温度調節機構であって、
前記被処理対象物を収容する空間の外面の方向に沿って配置される環状の細管と、
前記環状の細管に封入された気体と液体との2相凝縮性作動流体と、
を備えることを特徴とする温度調節機構。
【請求項2】
前記環状の細管は蛇行して設置され、
該環状の細管の少なくとも1部分に接して熱交換器を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の温度調節機構。
【請求項3】
前記熱交換器と前記被処理対象物を収容する空間との最小の距離は、少なくとも前記熱交換器の前記最小の距離の範囲における、前記環状の細管と前記被処理対象物を収容する空間との距離よりも大きい、ことを特徴とする請求項2に記載の温度調節機構。
【請求項4】
前記被処理対象物を収容する空間を囲む部材に接する温度調節機構を複数の部分に分割した該部分ごとに、それぞれ独立の前記環状の細管を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の温度調節機構。
【請求項5】
前記温度調節機構を複数の部分に分割した該部分ごとに、それぞれ独立に設定された温度で温度調節が可能であることを特徴とする請求項4に記載の温度調節機構。
【請求項6】
前記温度調節機構を複数の部分に分割した該部分ごとに、前記環状の細管に接して前記熱交換器を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の温度調節機構。
【請求項7】
前記半導体製造工程の処理はプラズマ処理であって、
前記部材は、前記プラズマを前記処理容器に封止し、該プラズマを挟んで前記被処理対象物と対向する板状部材である
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の温度調節機構。
【請求項8】
前記板状部材の、前記処理容器の外側に向かう面の側に、前記環状の細管を備えることを特徴とする請求項7に記載の温度調節機構。
【請求項9】
前記環状の細管を、前記板状部材の中心と外周との間を折り返して蛇行するように配置させ、
前記板状部材の周縁部近傍に前記熱交換器を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の温度調節機構。
【請求項10】
前記環状の細管を、前記板状部材の中心から外周に向かう線を横切って折り返して蛇行するように配置させ、
前記板状部材の中心から外周に向かう方向に沿って前記熱交換器を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の温度調節機構。
【請求項11】
前記板状部材の主面の延長方向の周囲に、前記気体と液体との2相凝縮性作動流体を封入した環状の細管を備えることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1項に記載の温度調節機構。
【請求項12】
前記半導体製造工程の処理はプラズマ処理であって、
前記部材は、該処理容器の被処理対象物を収容する空間にあって、前記プラズマ処理に用いるガスを該被処理対象物に向かって導入するシャワープレートであり、
該シャワープレートの内部に前記環状の細管と、前記プラズマ処理に用いるガスのガス通路を備える
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の温度調節機構。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の温度調節機構を備えることを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−16225(P2010−16225A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175590(P2008−175590)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】