説明

測定スタンドおよびその電気制御方法

【課題】 特に薄層の厚さ測定に適した、測定用プローブを保持する測定スタンドおよびその制御方法の提供。
【解決手段】 測定用プローブ(26)を保持する保持器(24)を担持する変位部材(23)と、その変位部材を測定用プローブとともに上下に駆動する駆動ユニット(35)との間に、フリーホイール機構(51)を介在させ、測定用プローブ(26)または保持器(24)が測定対象(14)に接触すると、駆動ユニット(35)による駆動が変位部材(23)から切り離され且つスイッチング・デバイス(58)がスイッチング信号を制御ユニットへ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開始位置から測定位置への少なくとも1つの測定用プローブの移動運動を提供する測定スタンドを電気的に制御する方法、詳細には、薄層の厚さを測定する方法に関し、また、この方法を実施する測定スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
DE102005034515A1は、薄層の厚さを測定するように設計された測定用プローブを保持する測定スタンドを開示する。この測定スタンドは筐体を含み、この筐体内では、変位部材が上下に動けるような形で案内される。筐体の端部のうち測定対象の方を向いている端部には、測定用プローブを固定する保持器が設けられる。変位部材の上下運動は、電気モータによって制御される駆動ユニットによって開始される。変位部材の上下運動の上端位置および下端位置は、それぞれ検出器によって検出される。上下運動は、カム・ディスクを含む駆動ユニットによってもたらされ、カム・ディスクは、枢動レバーを上下に動かす。この目的のために、カム・ディスクから外れるローラが枢動レバー上に設けられる。カム・ディスクは、開始位置から測定位置への測定用プローブの下降運動がまず高速モードで、次いでクリープ・モードで発生するような形で構成される。この測定スタンドは、高い繰返し精度を有し、また使用の際も頑丈である。測定を実行するには、測定用プローブが測定すべき表面に接触すると少なくともクリープ・モードになるように、作業行程を考慮して、測定対象の測定すべき表面(以下、「測定対象の表面」と呼ぶ)に対する測定用プローブの高さを比較的正確に事前に位置決めする必要がある。測定の実行ならびに設定および下降時間の削減に対する柔軟性の点で増大する要件を満たすために、このタイプの測定スタンドには、実際の使用で実績はあるが、さらなる開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE102005034515A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも1つの測定用プローブを保持する測定スタンド、および少なくとも1つの測定用プローブの移動運動によってその測定用プローブを作動させる方法、詳細には薄層の厚さを測定する方法を提案するという目的に基づく。この方法は、用途が柔軟であり、異なる測定タスクに迅速に適合させることが可能であり、また特に、正確な測定値および高い繰返し精度を実現するように、測定すべき表面への測定用プローブの接触を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、測定スタンドの電気制御方法によって実現される。この方法では、第1の測定より前に、測定対象に対する測定用プローブの所定の開始位置と測定位置の間の距離を検出する学習ルーチンが実行され、学習ルーチン中に、測定用プローブが測定対象の表面で止まって駆動ユニットと変位部材の間に設けられたフリーホイール機構が作動するまで、測定用プローブが、事前に定義された、好ましくは一定の移動速度で下げられ、測定用プローブが測定対象の表面に接触した後、フリーホイール機構が駆動ユニットと変位部材の間の相互作用を切り離し、スイッチング・デバイスを介して、フリーホイール機構の作動が検出され、モータを停止させる制御信号が送出され、最後に学習ルーチンが終了される。
【0006】
この学習ルーチンにより、測定対象に対して測定用プローブを事前に大まかに位置決めするだけでよくなる。この測定用プローブを事前に大まかに位置決めすることは、測定用プローブの上下運動の行程または作業範囲内で行わなければならない。この学習ルーチンによって、測定用プローブの開始位置と、好ましくは測定対象の表面上にある測定位置との間の現在の距離が決定される。この学習ルーチンによって、測定用プローブが測定対象の表面に対して定義された形で位置されるように、測定対象に従って、あらゆる測定用プローブを所与の測定タスクに対して調整することができる。駆動ユニットと変位部材の間に構成されるフリーホイール機構により、開始位置からそれぞれの測定位置への測定用プローブの移動を柔軟に適合させることが可能になる。唯一の要件は、測定対象の表面を変位部材の作業範囲または行程内に設けなければならないことである。測定用プローブが測定すべき表面に接触したとき、またはその直後に、スイッチング・デバイスによって制御信号が送出される結果、開始位置と測定すべき表面との間の移動が同時に検出され、したがって、その後移動を作動させるために、測定用プローブを測定すべき表面に実際に確実に接触させることができる。
【0007】
さらに、フリーホイール機構の作動後のさらなる移動が検出され、またモータ静止状態での遅延による移動の遅れが決定されることが好ましい。この移動距離は、前記遅れを組み込んでからプローブの接触位置を検出する測定を実行する目的で、その後の移動を作動させる際に考慮されることが好ましく、したがって移動運動中に、遅れに応じて主な速度低減が組み込まれる。これにより、測定用プローブを測定位置に穏やかに接触させることができる。
【0008】
この方法の好ましい構成によれば、所定の開始点とフリーホイール機構の作動との間の移動は、変位トランスデューサ、特にプログラム可能な回転エンコーダの複数のインパルスによって決定される。これにより、駆動ユニットの下降運動中のインパルスの数を検出すると、駆動ユニット内および駆動ユニットとモータの間に存在する機械的な遊びをなくすことができるので、正確な移動距離を決定することが可能になる。開始位置と測定位置の間の移動距離を正確に決定することによって、移動運動の最適化を実現することができ、移動運動はまず高速モードで作動され、次いでクリープ・モードに切り替えられる。測定用プローブが測定すべき表面に接触するまでに包含される全移動距離がわかっているので、速度の低減を時間内に開始することが可能になり、したがって、測定対象の表面への測定用プローブの穏やかな接触を実現することができる。
【0009】
移動は、モータとは別個に構成される変位トランスデューサによって検出されることが好ましい。さらに、これにより、移動を検出するとき、モータと駆動ユニットの間の遊びをなくすことができる。上下運動を作動することによって、駆動方向が変わる点で遊びが発生することがある。モータの回転方向を無視して移動を別個に検出することにより、移動距離によって繰返し精度が向上する。移動距離は正確に同じままである。移動の駆動力は、バンド駆動装置またはベルト駆動装置によって生成されることが好ましく、1つの返し車がモータによって駆動され、第2の返し車が変位トランスデューサに接続される。これにより、変位トランスデューサはモータの駆動シャフトと係合しないので、移動を決定する目的で切離しを行うことが可能になる。小型の設計を有する回転エンコーダが設けられることが好ましい。
【0010】
この方法のさらに有利な構成によれば、測定を実行するための開始位置から測定位置への測定のための移動は、高速モード・フェーズとクリープ(徐行)・モード・フェーズに細分され、クリープ・モード・フェーズは、フリーホイール機構の作動に基づいて計算される速度の低減を特徴とする。速度の低減は、少なくとも1:10の相関関係で実施されることが好ましい。したがって、学習曲線の実際の進路に基づいて、新しい検出を実施しなければならないその後の測定のための移動を予測することが可能になり、測定用プローブの全移動速度を正確に適合させることが可能になり、したがって測定すべき表面への穏やかな接触を実現することができる。速度の主な低減、すなわちクリープ・モード・フェーズは、例えば、測定用プローブが測定すべき表面に徐々に接近するにつれて移動速度が連続して低減することを含むことができる。クリープ・モード・フェーズはまた、一定の移動速度を有することができるが、この移動速度は、高速モード・フェーズと比較するとかなり低減されている。さらに、高速モード・フェーズの移動速度は、クリープ・モード・フェーズへの切替えが行われる前でも徐々に低減され、したがって、移動速度間の穏やかな遷移を確実に行うことができる。
【0011】
本発明によれば、本発明の目的は、測定用プローブをまず開始位置から測定位置へ変位させるときに測定用プローブが測定スタンドの電気制御ユニットに結合され、したがって好ましくは薄層の厚さの測定を実行する目的で測定用プローブが測定対象の方へ移動運動する間、測定用プローブの信号が監視され、そして、測定用プローブによって測定対象の第1の測定信号が検出されると、変位部材、したがって測定用プローブが測定対象の方へ移動する速度が、測定信号の変化に応じて低減され、したがって測定すべき表面への測定用プローブの穏やかな接触を実現できる方法によって、さらに実現される。測定用プローブが測定すべき表面に接触すると、駆動ユニットと変位部材の間のフリーホイール機構が作動され、制御信号がスイッチング・デバイスを介して制御ユニットへ送出される。これにより、一方では、測定用プローブの穏やかな接触を可能にし、他方では、測定用プローブが測定対象の表面で確実に止まるようにする。
【0012】
したがって、この方法により、測定対象の表面への接近に応じて、測定用プローブの信号変化に関する即時フィードバックに基づいて、移動速度を条件つきで制御することができる。測定用プローブを測定スタンドの電気制御ユニットと結合させることにより、測定用プローブの接近特性のため、制御されまたは特性曲線が定義された移動運動、および測定すべき表面への測定用プローブの穏やかな接触を実現することが可能になる。測定用プローブの接近特性は単調な増大であるため、信号変化の勾配は、接近が進むにつれて増大し、移動速度は、信号変化の勾配の増大に従って低減される。したがって、理論的には、測定対象の表面に接触する瞬間、プローブの速度が「ほとんどゼロ」になる。その後、例えば、薄層の厚さの測定を実施することができる。
【0013】
この方法の有利な構成によれば、変位部材を変位させるようにモータを作動させるために、測定用プローブの電圧信号が使用される。測定用プローブが測定対象の表面に接近している間、それぞれの測定用プローブの特性曲線に従って電圧信号が変化する。このようにして、接近が進むにつれて生じる電圧変化に従って、速度の変化を作動させることが可能になる。その際、電圧変化の増大量を使用して、測定用プローブの移動速度を調整することが好ましい。
【0014】
この方法の好ましい構成によれば、測定対象の表面に接触したとき、またはその後、測定用プローブの測定信号が検出され、また好ましくは、この測定信号から、層厚さが導出される。測定対象、またはもっと正確に言えば測定対象の基板材料に対して測定用プローブを較正した後、それぞれのプローブ特性を使用して、電圧信号に従って、測定すべき表面の基板材料からの距離を導出することが可能になる。測定用プローブが測定すべき表面に接触すると、測定用プローブの測定信号、特に電圧信号から層厚さを導出することができる。このタイプの測定用プローブは、基板材料のタイプに応じて、磁気誘導方法または渦電流方法に従って動作させることができる。
【0015】
本発明の目的は、測定用プローブが測定対象の方へ移動する速度が測定用プローブの信号変化に応じて低減された運動相で、非接触測定のために測定用プローブの測定位置を定義する基準信号が到達した後、測定用プローブが静止状態になる方法によってさらに実現される。この構成により、測定用プローブは、測定対象の表面に対する定義された、特に事前に定義された距離を維持することが可能になり、したがってその後、非接触測定が可能になる。測定用プローブと制御ユニットの間の接続の結果、基準信号を記憶することができ、したがって事前設定を行うことができる。この事前設定により、測定用プローブは、測定すべき表面の高さを無視して、測定対象の表面からまたは測定対象のキャリア材料から同じ所定の距離を常に維持することが可能になり、そして測定対象に対して浮いた形で配置することが可能になる。
【0016】
測定用プローブの基準信号は、実行すべき測定タスク中、測定用プローブの接近特性に応じて事前に定義された距離を決定する基準電圧の形で、事前に設定されることが好ましい。測定用プローブが所望の距離に接近する間、正確な所望の位置を越えた場合、所定の距離または事前に定義された基準信号、特に基準電圧が検出され、したがって所定の距離に到達するまで、測定用プローブの移動の閉ループ制御が実行される。測定対象に対する測定用プローブの所定の距離は、薄層の厚さの測定に関する限り、測定用プローブと被覆された測定対象の基板材料またはキャリア材料の表面との間の距離を検出するように理解されることが好ましい。
【0017】
本発明のさらに有利な構成によれば、測定用プローブは、その測定位置にあるとき、測定対象の表面に対して非接触構成で配置される。ウェブ状の測定対象は、測定用プローブの下を連続する形または連続しない形で通され、測定対象に対する測定用プローブの距離の制御は、測定用プローブによって検出される測定信号に応じて、測定用プローブの基準信号を介して実行される。これにより、ウェブ状材料上の塗料または粘性の高い被覆を検出することが可能になる。測定用プローブによって検出された信号を基準信号と比較することで、測定用プローブを保持する保持器が、その下を通した測定対象から一定の距離で維持されかつ位置決めされるように、測定用プローブの再調整を実施できることが好ましい。また測定用プローブは、距離検出センサまたはさらなるセンサ/プローブを保持する。したがって、ウェブ状材料に施された被覆の連続する層厚さ測定を可能にすることができる。基本的に、距離検出センサを介して、距離制御を実現することも可能である。
【0018】
本発明のさらに有利な構成によれば、測定用プローブが基準信号によって定義された測定位置にある間に、距離検出センサが基準面に対して較正されてから、第1の測定、特に層厚さ測定が実施される。したがって、保持器上の測定用プローブに対して正確に定義された位置に距離検出センサを設ける必要はない。むしろこの較正は、層厚さを決定するときに考慮するように、測定用プローブに対する距離検出センサの相対位置を検出する働きをする。これにより、測定用プローブは、測定対象の基板材料からの定義された距離を検出することが可能になり、一方距離検出センサは、測定対象の表面からの距離を検出し、したがってこの差から層厚さを決定することができる。しかし、測定用プローブは被覆された対象の基板材料からの測定信号を検出するので、さらに、測定位置における測定用プローブのより厳密な位置決めを実現することが可能である。この方法には、基板材料上の固体の被覆だけでなく粘性の高い被覆も検出できるという利点がある。
【0019】
この方法のさらに有利な構成では、さらなる放射放出プローブが測定用プローブに付随することが想定され、好ましくは、ベータ粒子の後方散乱技法を実行するように設けられ、またはX線蛍光法に従って動作される。測定用プローブと、ベータ粒子の後方散乱技法に従って動作するさらなる測定用プローブとを組み合わせると、測定用プローブは、測定用プローブに隣接して構成されてさらなる放射を放出するさらなるプローブが、測定すべき表面からまたは測定対象の基板材料から一定の距離を空けて確実に維持されるようにする。ベータ粒子の後方散乱技法では、反射エネルギーが検出される。放出された放射を反射と比較することによって、被覆の坪量を求めることができ、また坪量は被覆の厚さおよび被覆の相対密度に基づいて求められるので、その坪量から厚さを導出することができる。この際、ベータ粒子放射が被覆を透過し、このベータ放射が少なくとも部分的に基板材料内を透過して、基板材料の表面のわずかに下に形成されたある程度効果的な後方散乱表面から反射されるように、ベータ粒子放射を選択することが好ましい。類推から、測定用プローブと組み合わせてX線蛍光法を実行するプローブにも同じことが言える。
【0020】
本発明の目的は、保持器上または変位部材上に測定用プローブおよび距離検出センサが固定され、測定用プローブが開始位置にあるときに測定対象の表面に対する距離が距離検出センサによって検出され、測定対象の表面に至る決定された移動よりわずかに大きい移動が作動され、また測定用プローブが測定対象の表面に穏やかに接触するように、測定用プローブが測定対象の表面の方へ移動する速度が作動される、代替方法によってさらに実現される。
【0021】
この実施形態では、移動速度の作動は測定用プローブによって実施されるのではなく、この代わりに、距離検出センサによって決定される開始位置と測定位置の間の距離から計算することによって、測定用プローブが測定すべき表面への穏やかな接触を確保する接近特性が得られる。この際、まず高速モードを使用して作業範囲の大部分を短時間で進み、その後クリープ・モードで穏やかな接触を実施するために、異なる実験的手法を選択することができる。測定すべき表面へ接近するにつれて、移動速度をますます低減させることが好ましい。決定された移動よりわずかに大きくなるような形で移動を制御することによって、測定用プローブを確実に測定対象の表面で止めることができる。同時に、フリーホイール機構のため、駆動ユニットと変位部材の間の相互作用の切離しが実現される。
【0022】
本発明の目的は、少なくとも1つの測定用プローブを保持し、特に薄層の厚さを測定する測定スタンドによってさらに実現される。この測定スタンドでは、変位部材の移動運動を作動させる駆動ユニットと変位部材との間にフリーホイール機構が設けられ、したがって、測定用プローブまたは保持器が測定対象の表面に接触すると、駆動ユニットの駆動運動が変位部材から切り離され、そしてフリーホイール機構が作動すると、スイッチング・デバイスが測定スタンドの制御ユニットにスイッチング信号を送出する。これにより、一方では、測定用プローブが測定対象の表面に接触したことを検出することができ、他方では、測定用プローブの移動運動を作動させるモータの遅れのため、測定すべき表面の損傷を防ぐことができる。フリーホイール機構の結果、モータを遅らせることができ、この遅れによって、何らかのさらなる力の作用が駆動ユニットを介して変位部材に及ぶことはない。スイッチング・デバイスによってスイッチング信号が出力される結果、測定用プローブが測定すべき表面に接触する瞬間を検出することが可能になり、したがって、開始位置で移動運動を開始してから測定位置に到達するまで、移動の正確な検出が可能になる。
【0023】
測定スタンドの好ましい構成によれば、変位部材は、運動軸、好ましくは垂直軸に沿って上下に動けるような形で筐体内を案内され、したがって前記変位部材を、変位部材自体の重量の力によって下げることができる。したがって、測定用プローブまたは保持器に作用する抵抗を最小限にしながら変位部材を駆動ユニットから持ち上げることを可能にする簡単な形で、フリーホイール機構が形成される。
【0024】
測定スタンドのさらに好ましい構成によれば、変位部材は、開始位置と測定位置の間の測定用プローブの移動を行いながら、当接面を介して、駆動ユニットの接触面で止まる。この構成により、フリーホイール機構を簡単な幾何形状で形成することができる。同時に、フリーホイール機構のある程度摩擦のない作動を実現することができる。
【0025】
測定スタンドのさらに好ましい構成によれば、変位部材は、少なくとも1つの案内部材を有するガイドに沿って動くことができるキャリッジに結合される。この案内部材は、筐体内に垂直に設けられたガイドレールまたはガイド支柱として実現されることが好ましい。こうしてキャリッジおよびキャリッジ上に構成された接触面を動けるように配置することによって、変位部材の移動運動中、傾斜する瞬間が変位部材に作用することがなく、したがって、変位部材の移動運動中、径方向の力をほとんど発生させないことが可能になる。
【0026】
キャリッジは、ガイド棒を備えることが好ましく、このガイド棒は、キャリッジ上で変位部材の反対側に構成され、また一方の端部がキャリッジに対向する状態で、さらなるガイド内を上下に動けるように案内される。このガイド棒は、水平構成で配置されることが好ましい。このさらなるガイド棒は、変位部材に作用しうるさらなる自由度をなくす働きをする。これにより、変位部材をねじれのない形で上下に動かすことが可能になる。
【0027】
好ましい実施形態では、駆動ユニットの接触面は、駆動ユニットの駆動部材に作用する結合部材上に設けられる。これにより、部品を減らすことができ、また寸法をより小さくすることができる。
【0028】
結合部材は、ガイド、特に少なくとも1つの案内部材上を上下に動くように案内されることが好ましく、そのガイド上に、変位部材の上下運動のためのキャリッジも構成されることが好ましい。このようにして、キャリッジと結合部材の両方が共通のガイド上で上下に動くことができ、したがってさらなる公差をなくすことが可能になる。
【0029】
さらに、結合部材は、駆動ユニットの上端位置を検出するセンサ要素、特にスイッチ用翼状片を備えることが好ましい。したがって、駆動ユニットが上端位置を越えないようにする。反対方向には、止め具を設けることが好ましく、この止め具は同時に、シャフト、特に返し車を取り付ける働きをすることが好ましい。
【0030】
本発明のさらに好ましい構成では、駆動ユニットが歯付きベルトを含むことが想定され、歯付きベルトは、好ましくは引っ張られた状態で、2つの返し車によって受け取られる。一方の返し車は、モータの駆動ローラとして設けられる。駆動ユニットを歯付きベルトとして構成することで、歯付きベルトと返し車の間の遊びなしで駆動運動を実現することができる。返し車は、特に歯付きローラとして実現される。別法として、移動運動のための駆動力を提供するために、歯付きベルトの代わりに鎖、駆動ベルト、昇降用シリンダなどを使用することもできる。
【0031】
駆動ユニットの好ましい構成では、他方の返し車も同様に歯付きローラとして実現され、変位トランスデューサ、特に回転エンコーダを駆動することが想定される。このようにして、歯付きベルトの移動運動は、モータの回転駆動運動とは独立して検出される。これにより、移動の厳密な検出が可能になる。
【0032】
スイッチング信号を送出するスイッチング・デバイスは、フォーク状光バリアおよびスイッチ用翼状片などの第1および第2の構成要素を含むことが好ましい。このスイッチング・デバイスは、スイッチング信号を作動させる摩擦力が生成されないように、非接触で動作することが好ましい。スイッチング・デバイスの第1の構成要素は、キャリッジ上に設けられることが好ましく、またスイッチング・デバイスの第2の構成要素は、結合部材上に設けられる。スイッチング・デバイスの構成要素はどちらも、同じ少なくとも1つの案内部材上で、この案内部材上を動けるように案内されることが好ましい。これにより、スイッチング・デバイスのフリーホイール機構内への完全な組込み、ならびに小型の構成を可能にする。別法として、接触センサまたは距離検出センサ、ならびに遮断器接点などを提供することができる。
【0033】
さらに、変位部材とキャリッジの間に、ねじれを受け入れるガイドが設けられることが好ましく、このガイドによって、変位部材は、変位部材の長手方向軸の周りを、互いに異なる少なくとも2つの角度位置で枢動することができる。この構成は特に、測定用プローブおよび例えば距離検出センサまたは何らかの他のセンサが保持器上に設けられる場合に有利である。したがって、簡単な回動によって、測定対象の表面に対する作業位置へ、センサのいずれかを交互に動かすことが可能になる。したがって、測定スタンドの使用における柔軟性が高まる。
【0034】
さらに、変位部材のそれぞれの角度位置を解放可能な留め具型の接続によって固定させることが好ましい。ねじれを受け入れるガイド上に、凹部、特に角柱状の凹部を設けることができ、この凹部に、変位部材を交差しまたは変位部材内に構成されるピン形部材が係合する。
【0035】
これにより、設定された角度位置を自己保持する形で保つことが可能になる。
【0036】
測定スタンドのさらに好ましい構成では、変位部材またはキャリッジに重量軽減機構を取り付けることができることが想定される。この重量軽減機構は、レバー・アームを含むことが好ましく、このレバー・アームは、軸受軸上に揺動可能に構成され、また変位部材またはキャリッジとは反対側の端部に質量体を備える。質量体は、レバー・アームに沿って変位可能であり、かつ/またはレバー・アームに対して交換可能であることが好ましい。重量軽減機構は、大きな測定用プローブまたは複数の測定用プローブもしくはセンサの収容のため、より高い重量負荷が変位部材の保持器にかかる場合、測定スタンドの筐体に固定されることが好ましい。
【0037】
本発明、ならびに本発明の他の有利な実施形態および発展形態について、図面に示す例を参照しながら以下に説明する。説明および図面から生じる特徴は、本発明によれば、個々にまたは任意の組合せで得られる複数の特徴として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による測定スタンドの斜視図である。
【図2】測定用プローブが開始位置にある、図1による測定スタンドの筐体の概略側面図である。
【図3】図1による測定スタンドの筐体の端部表面の斜視図である。
【図4】測定用プローブが測定位置にある、測定スタンドの筐体の概略側面図である。
【図5】図1による測定スタンドのスイッチング・デバイスの概略詳細図である。
【図6】重量軽減機構がその上に構成された、図1による測定スタンドの筐体の後部壁の斜視図である。
【図7】2つの異なる角度位置にある変位部材上の保持器の斜視図である。
【図8】非接触測定のための測定構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明による測定スタンド11を示す斜視図であり、図2は側面図である。この測定スタンド11は測定台12を含み、測定台12には、個々の試験対象または測定対象14が直接配置され、または保持器16によって保持される。測定スタンド11の基部上または測定台12上には垂直な支柱17が設けられ、垂直な支柱17はねじ付き支柱18とともに、筐体19を高さ調整可能な形で収容する。互いに隣接して構成された2つの支柱17、18によって、簡単な高さ調整のための平行ガイドを実現することができる。筐体19の方向付けは、調整機構20によって可能になる。この高さは、設定ねじ21を介して設定することができる。さらに、筐体19を測定台12に対して所与の高さで固定するために、締付け機構22が設けられる。
【0040】
支柱17、18の反対側には、筐体19上に、上下方向に動けるような形で変位部材23が収容される。変位部材23の下端部には、測定用プローブ26またはセンサなどを解放可能に固定するために保持器24が設けられる。別法として、保持器24を複数の測定用プローブ26またはセンサを保持するように構成することもできる。測定用プローブ26は、例えば、薄層の厚さを測定するために提供される。この測定用プローブ26は、測定対象14の表面に接触できる球形の接触キャップをもつセンサ要素を有する。測定用プローブ26の反対側の端部には、伝送線27が設けられる。伝送線27は、これ以上詳細には示さないが別個の測定デバイスに接続され、またはこれ以上詳細には示さないが測定スタンドのコネクタを介して、筐体19の端部表面に設けられた制御ユニットに接続できる。
【0041】
筐体19の上部表面には、例えば3つの作動要素29、特に押しボタンが設けられる。作動要素29の機能については、以下に説明する。
【0042】
図2では、測定用プローブ26が開始位置31に配置される。変位部材23を用いて、測定用プローブ26を下げて、測定位置32へ移動させることができる。この実施形態では、測定位置32は、測定対象14の表面との接触位置に対応する。開始位置31と測定位置32の間の距離、または移動は、変位部材23の作業範囲、または行程の長さより小さい。筐体19は、開始位置31および測定位置32が変位部材23の作業範囲内に入るように、測定対象14の表面に対して設定ねじ21を介して事前に位置決めされることが好ましい。
【0043】
筐体19内には、移動運動を制御する電気モータ34が設けられる。前記モータは、変位部材23に接続された駆動ユニットを駆動する。駆動ユニット35は、特に歯付きベルトとして実現される駆動部材36を含む。この駆動部材36は、下部返し車37および上部返し車38によって受け取られる。これらの返し車37、38は、歯付きローラとして実現されて、歯付きベルトの歯の輪郭と整合することが好ましい。歯付きベルトおよび歯付きローラを適切に選択することによって、駆動運動のすべりのない確実な伝達を得ることができる。第1の返し車37は、モータ34の動軸に直接固定される。上部返し車38は、変位トランスデューサ39の一部である回転軸上に設けられる。この変位トランスデューサ39は、開始位置31から測定位置32への測定用プローブ26の移動運動に応じてインパルスを検出してこれらの検出したインパルスを制御ユニットへ伝送するプログラム可能な回転エンコーダとして設けられる。
【0044】
駆動部材36上には、結合部材41が設けられる。結合部材41を図3により詳細に示す。結合部材41は、ガイド42に沿って案内される。ガイド42は、互いに平行に方向付けされた2つの案内部材43、特にガイド棒を含むことが好ましい。結合部材41は、締付け固定具を用いて駆動部材36に接続される。上部から見ると、結合部材41はU字形の輪郭を有し、したがって駆動部材36はU字形の輪郭の2つの脚部内を案内され、それぞれの脚部は案内部材43に取り付けられる。結合部材41上には、プリント回路基板上に構成されたセンサ要素またはフォーク状光バリアと協働するスイッチ用翼状片45が設けられることが好ましい。センサ要素またはフォーク状光バリアは、これ以上詳細には示さないが、同様に制御ユニットの一部である。したがって、駆動ユニット35の上端位置を検出することが可能である。制御ユニットも同様に筐体19内に構成されることが好ましいが、単に機械構成要素を示す目的で、筐体19から取り除いた。
【0045】
変位部材23と駆動ユニット35は、フリーホイール機構51(図3)を用いて互いに結合される。このフリーホイール機構51は、一方では結合部材41上に構成された当接面52によって、また他方では接触面53によって形成される。変位部材23自体の重量の結果、接触面53は当接面52で止まる。この接触面53は、キャリッジ54上に設けられることが好ましく、キャリッジ54は、ガイド42上で上下に動けることが好ましい。キャリッジ54は保持部分56を有し、保持部分56によって、変位部材23は、キャリッジ54に解放可能に結合される。変位部材23が駆動ユニット35で止まるため、モータ34によって駆動される測定用プローブ26の移動運動中、測定用プローブ26が測定対象14の表面に接触した直後に、駆動力が変位部材23に、したがって測定用プローブ26に伝達されることなく、モータ34の遅れ、したがって結合部材41のさらなる下降が可能になる。フリーホイール機構51のこの干渉しない位置を図4に示す。
【0046】
フリーホイール機構51は、接触面53が当接面52から持ち上げられると作動されるスイッチング・デバイス58を含むことが好ましい。この目的のために、スイッチング・デバイス58は、キャリッジ54上または変位部材23上に構成された第1の構成要素59と、結合部材41または駆動ユニット35に接続された第2の構成要素60とを有する。第1の構成要素59はフォーク状光バリアとして実現され、また第2の構成要素60はスイッチング・フィンガまたはスイッチ用翼状片45として実現されることが好ましい。フリーホイール機構51が作動されると、第2の構成要素60が第1の構成要素59から離れて動かされ、スイッチング信号が制御ユニットに送出される。この位置を図5に破線で示す。キャリッジ54上には、プリント回路基板が構成されることが好ましい。プリント回路基板は、プリント回路基板に固定されたフォーク状光バリアのスイッチング信号を処理して、その信号を制御ユニットへ伝送する。これに必要な制御線は、ガイド棒62上に固定されることが好ましく、ガイド棒62は、ねじ付き支柱18付近のガイド内で上下に動かすことができる。ガイド棒62は、一方の端部でキャリッジ54に堅固に接続される。反対側では、ガイド棒は、ガイド内で上下に動けるころ軸受または滑り軸受を有する。このガイド棒62のため、変位部材23に作用しうるあらゆる径方向の駆動力がなくなる。
【0047】
モータ34の動軸を取り付ける軸受64は同時に、駆動ユニット35の下方方向への移動運動に対する止め具として働く。
【0048】
図6では、筐体19の後部側面67に重量軽減機構68が設けられる。この重量軽減機構68は、保持器24が複数の測定用プローブ26もしくはセンサまたはより大きくもしくはより重い測定用プローブ26などを保持する場合に取り付けることができる。この重量軽減機構68により、少なくとも1つの測定用プローブ26を、測定用プローブ26自体の重量の小さな力だけで測定すべき表面に接触させる。重量軽減機構68は、軸受軸71を介して後部壁67に固定され、レバー・アーム72を枢動可能に収容する。レバー・アーム72の一方の端部には固定ピン74が設けられ、固定ピン74は、変位部材23に取り付けられて、後部壁67内に形成された貫通孔73を貫通する。固定ピン74は、レバー・アーム72の溝状の窪み75内に固定され、したがってレバー・アーム72の回動中に補償運動を可能にする。反対側では、レバー・アーム72は、少なくとも1つの質量体77を備える。質量体77は、保持器24によって保持すべき負荷に応じて、レバー・アーム72に沿って動けるようにすることができる。さらに、レバー・アーム72上に設けられた質量体77は交換可能にすることができ、したがって、レバー・アーム72上により大きなまたはより小さな質量体77を固定することが可能になる。重量軽減機構68は、カバーによって覆われて保護されることが好ましい。
【0049】
図7aおよび7bでは、例えば測定用プローブ26およびさらなるプローブまたはセンサを収容する保持器24を示す。この実施形態では、距離検出センサ80を示す。保持器24は、ねじれを受け入れるガイド89によって形成される。ガイド89は、筐体19内で変位部材23を囲み、保持器24を第1の角度位置81内および第2の角度位置82内に配置することを可能にする。解放可能なスクリーン構成を用いて、それぞれの角度位置81、82を自己保持する形で固定できることが好ましい。これにより、測定用プローブ26と距離検出センサ80の両方を、測定対象14の表面のすぐ上の位置へ選択的に動かすことが可能になる。例として、これにより、まず距離検出センサ80を使用して測定対象14の表面に対する距離測定を実行し、その後必要な移動に応じて、測定用プローブ26を変位させて、測定すべき表面への穏やかな接触を可能にする適切な移動運動を作動させることが可能になる。
【0050】
このタイプの測定スタンド11は、層の厚さを測定するために使用されることが好ましい。磁気誘導方法または渦電流方法を利用することによって、層厚さを測定することができる。どの方法を使用するかは、基板材料および測定すべき層に依存する。例として、磁気誘導方法は、強磁性体の基板材料上の非磁性層に対して使用される。鉄金属上の非導電層の場合、渦電流方法が使用される。
【0051】
別法として、測定スタンド11を他の測定タスクに使用することもできる。保持器24は、変位部材23上に解放可能に構成され、したがって測定要素に応じて、それに適合させた保持器24を変位部材23上に構成することができる。
【0052】
このタイプの測定スタンド11は、特に、薄層の厚さ測定に使用される。前記測定用プローブ26を使用する測定が手動で実行された場合、測定すべき表面への測定用プローブ26の接触が異なる速度または力で行われるはずであり、それによってさらに、測定対象14の表面の損傷および測定された値の歪みを招くはずであるからである。
【0053】
測定スタンド11は、以下に説明する方法に従って動作させることができる。
【0054】
測定対象14が、測定台12上に直接または間接的に位置決めされる。保持器24が、測定要素、特に薄層の厚さを測定する保持器26を収容する。この測定用プローブ26は、別個の測定デバイスに接続される。筐体19は、その高さに関する限り、測定用プローブ26または測定用プローブ26のプローブ・チップと測定対象14の表面との間の距離が、変位部材23の作業範囲内、すなわち変位部材23の上下運動のために駆動ユニット35が移動する範囲内に入るような形で、事前に位置決めされる。
【0055】
測定用プローブ26を開始位置31で示す。測定を実行する前に、開始位置31に対する測定対象14の表面の位置が、学習ルーチンを用いて決定される。これは、例えば押しボタン29を作動させることによって開始することができる。この学習ルーチンの過程で、モータ34が制御ユニットによって一定の電流で駆動され、その結果、測定位置32の方への測定用プローブ26の移動運動が一定になる。測定用プローブ26が測定対象14の表面に接触した直後に、フリーホイール機構51が作動され、スイッチング・デバイス58がスイッチング信号を制御ユニットへ送出する。スイッチング・デバイス58のこの位置を図5に破線で示す。例えば、スイッチング信号が送出される前に包含しなければならないスイッチング距離は調整可能であり、またスイッチ用翼状片の移動距離が1mm未満のときすでに、スイッチング信号を検出して送出することができる。この制御信号に基づいて、モータ34は静止状態に設定され、フリーホイール機構51のため、モータ34の遅れは悪影響を及ぼさない。開始位置31からスイッチング・デバイス58のスイッチング信号の開始までに包含される移動運動は、変位トランスデューサ39によって検出される。これらの移動経路に沿って、変位トランスデューサ39によってインパルスが検出される。モータ34が静止状態に設定された後、測定用プローブ26が開始位置31に戻る運動が制御ユニットによって作動される。測定用プローブ26は、開始位置31を越えて動かされ、その後下降運動を実行して開始位置に戻ることが好ましい。したがって、開始位置31内で正確な位置決めが確保される。この学習ルーチンから、測定用プローブ26が測定すべき表面に接触するその後の測定のための移動速度プロファイルが確立される。その後の測定では、まず制御ユニットによって、高速モードの移動運動が開始される。測定用プローブ26が測定対象14の表面に接触する直前、測定位置32に到達する前に、測定すべき表面への穏やかな接触を確保するように、移動運動はクリープ・モードに切り替えられる。この過程で、主な速度低減が実行され、したがって測定用プローブ26は、測定位置32に穏やかな形で到達する。開始位置31と測定位置32の間の移動経路を先に検出した結果、したがって必要な移動距離に関する限り、測定用プローブ26が測定すべき表面に接触するまでの速度低減が決定され、その後残りの移動は高速モードで行われるので、測定用プローブ26の時間最適化された移動運動を決定することができる。学習ルーチン中、測定用プローブ26の接触が常にスイッチング信号の送出前に行われる結果、測定用プローブ26は常に確実に、測定対象14に関して同一の測定条件で測定位置32を占める。このようにして、複数の測定を実行することができ、開始位置31と測定位置32の間で検出されるインパルスのため、正確な移動運動が常に確保される。
【0056】
本発明による、特に測定対象上の薄層の厚さを測定するさらなる方法は以下のとおりである。
【0057】
保持台16上に、測定スタンド11の制御ユニットに接続された測定用プローブ26が固定される。筐体19の高さは、先の方法による類推から、その後行うべき測定タスクに従って事前に調整される。変位部材23の作業範囲は例えば25〜65mmを含むことがあるが、測定用プローブ26は例えば測定すべき表面から5〜10mmの距離のところに位置決めされることが好ましい。測定用プローブ26は、開始位置31から測定位置32へ移動するとき、距離検出センサとして動作する。このタイプの測定用プローブ26は、例えば測定すべき表面より上に2〜4mmを超える距離からは、測定対象14を検出できないことが好ましい。この基本構造では、測定を実行するのに先の学習ルーチンは必要とされない。むしろ、押しボタン29’を押した後、制御ユニットによってモータ34が作動され、したがって下降運動が開始される。測定用プローブ26がまず測定対象14を検出するとすぐに、制御信号が制御ユニットへ送出される。この信号の結果、測定用プローブ26によって検出される信号の変化、特に電圧の変化に応じて、測定用プローブ26の別の移動速度が作動される。測定用プローブ26の電圧変化がますます小さくなるにつれ、それに応じて、モータ34を作動させるために供給される電流の強度も低減される。したがって、測定用プローブ26が測定位置32の方へますます接近すると、移動速度もますます低減され、したがって、測定用プローブ26は、測定すべき表面に穏やかに接触する。電圧の変化が検出されないこと、またはフリーホイール機構51の作動を伝える制御信号がスイッチング・デバイス58によって放出されたことによって、測定用プローブ26により測定位置32の到達を評価することができる。この時点で検出される測定用プローブ26の測定信号は、層厚さを測定する働きをする。測定用プローブ26はそれぞれ、試験すべき所与の材料に対して特有のプローブ特性を有する。すなわち、基板材料からの定義された距離は電圧信号に対応し、したがって、検出された電圧信号から層厚さを導出することができる。押しボタン29’を作動させると、開始位置から測定位置へ、そして再び開始位置へ戻る単一の移動運動を開始する。押しボタン29”を作動させると、上記の1回だけのルーチンを数回連続して開始することができる。繰返し回数は、プログラム可能であることが好ましい。
【0058】
測定スタンド11ではさらに、測定用プローブ26の下を通した材料ウェブ上の層厚さの非接触測定方法を実行することができる。
【0059】
この場合も測定用プローブ26は、前述の方法と同じ形で制御ユニットに接続される。制御ユニットでは、測定対象の表面からの測定用プローブ26の定義された距離に対応する基準信号、特に基準電圧が記憶される。図8に示すように、この基準信号またはこの基準電圧は、非接触測定のための測定用プローブ26の測定位置32を決定する。測定を実行するために、基準信号に対応する制御信号が測定用プローブ26によって放出されるまで、測定用プローブ26が開始位置31から下方へ変位される。正確な位置決めを確保するために、正確な測定位置32を越えると正確な測定位置32に到達するまで往復運動が行われるように、閉ループ制御を実行することができる。その後、非接触の層厚さ測定を実施することができる。
【0060】
測定用プローブ26に隣接して、変位部材23の保持器24上に距離検出センサ80を位置決めすることができる。距離検出センサ80は、測定位置32と測定すべき表面83との間の距離を検出することができる。測定用プローブ26は、測定位置32と測定対象24の基板材料85の表面84との間の距離を決定することが好ましい。2つの値間の差が層厚さを決定し、距離検出センサ80に対して測定用プローブ26を較正することによって、事前に補正値が決定される。この方法は、測定用プローブ26および距離検出センサ80の下を矢印86の方向に通したウェブ状の被覆された材料を測定するのに特に適している。この方法はまた、粘性の高い被覆、特にまだ完全に乾いていないキャリア材料または基板材料85上の被覆の液膜の厚さを検出するために使用できることが好ましい。さらに、大部分が理想的な平坦ではないウェブ状の材料に関するこの方法では、制御ユニットが測定用プローブ26からの制御信号を拾い、そしてこれらの制御信号を基準信号と比較することが好ましい。測定用プローブ26は、測定位置32と基板材料85の表面84との間の距離を検出する。所定の基準値からの何らかのずれが検出された場合、変位部材23を上下に動かしてこのずれを補償するようにモータ34が作動される。このようにして、測定用プローブ26と距離検出センサ80の両方が、下を通る材料ウェブより上にある程度浮いた形で保持される。このタイプの制御の代替法として、測定対象24に対する測定用プローブ26および距離検出センサ80の所定の距離を、測定用プローブ26ではなく距離検出センサ80によって決定して制御することもできる。その際、被覆の測定すべき表面83を、測定用プローブ26および距離検出センサ80を位置決めするための基準とする。
【0061】
上記の測定用プローブの代わりに、他の測定計器または測定デバイスを使用することができ、これらが本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。
【符号の説明】
【0062】
11 測定スタンド; 12 測定台; 14 測定対象; 16 保持台;
17 垂直な支柱; 18 ねじ付き支柱; 19 筐体; 20 調整機構;
21 設定ねじ; 22 締付け機構; 23 変位部材; 24 保持器;
26 測定用プローブ; 27 伝送線; 29 押しボタン; 31 開始位置;
32 測定位置; 34 電気モータ; 35 駆動ユニット; 36 駆動部材;
37 下部返し車; 38 上部返し車; 39 変位トランスデューサ;
41 結合部材; 42 ガイド; 43 案内部材; 45 スイッチ用翼状片;
51 フリーホイール機構; 52 当接面; 53 接触面; 54 キャリッジ;
56 保持部分; 58 スイッチング・デバイス; 59 第1の構成要素;
60 第2の構成要素; 62 ガイド棒; 64 軸受; 67 後部側面;
68 重量軽減機構; 71 軸受軸; 72 レバー・アーム; 73 貫通孔;
74 固定ピン; 75 溝状の窪み; 77 質量体; 80 距離検出センサ;
81 第1の角度位置; 82 第2の角度位置; 84 表面;
85 基板材料; 89 ガイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始位置(31)から測定位置(32)への少なくとも1つの測定用プローブ(26)の移動運動で測定スタンド(11)を電気的に制御する、薄層厚さの測定に有用な方法であって、少なくとも1つの測定を実行するために、変位部材(23)を上下に動かす駆動ユニット(35)を使用するモータ(34)が作動され、前記変位部材(23)上に、前記測定用プローブ(26)が保持器(24)を用いて固定されて行われる、測定スタンドを制御する方法において、
第1の測定を実施する前に、学習ルーチンが実行され、
前記測定用プローブ(26)が測定対象(14)の表面で止まるまで、前記測定用プローブ(26)が所定の移動速度で下げられ、
前記駆動ユニット(35)と前記変位部材(23)の間でフリーホイール機構(51)の作動によって、前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)の表面に接触すると、前記変位部材(23)に対して前記駆動ユニット(35)が切り離され、
前記フリーホイール機構(51)の前記作動が検出され、前記モータ(34)を停止させる制御信号が、スイッチング・デバイス(58)によって発生され、
少なくとも前記事前に設定された開始位置(31)から前記フリーホイール機構(51)の前記作動までの間の移動が検出され、その後前記学習ルーチンが終了されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記事前に設定された開始位置(31)と前記フリーホイール機構(51)の前記作動との間の前記移動が、変位トランスデューサ(39)、特にプログラム可能な回転エンコーダの所与の複数のインパルスによって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移動が、前記モータ(34)とは別個に構成された変位トランスデューサ(39)によって検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
測定を実行するための前記開始位置(31)から測定位置(32)までの前記測定用プローブ(26)の前記移動が、高速モード・フェーズと、その高速モード・フェーズの後の速度低減の・フェーズとに細分され、前記速度が少なくとも1:10の相関関係で低減されることが好ましいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
開始位置(31)から測定位置(32)への少なくとも1つの測定用プローブ(26)の移動運動で測定スタンド(11)を電気的に制御する、特に薄層の厚さを測定する方法であって、測定を実行するために、変位部材(23)を上下に動かす駆動ユニット(35)を使用するモータ(34)が作動され、前記変位部材(23)上に、前記測定用プローブ(26)が保持器(24)を用いて固定される、方法において、
前記測定位置(32)への前記測定用プローブ(26)の第1の移動の前に、前記測定用プローブ(26)が前記測定スタンド(11)の制御ユニットと結合され、したがって前記開始位置(31)から前記測定位置(32)への前記測定用プローブ(26)の前記移動運動中に、前記測定用プローブ(26)の信号が前記制御ユニットに供給され、
前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)に接近し、そして前記測定対象(14)の測定信号がまず検出されると、前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)の方へ移動する速度が、前記測定用プローブ(26)の信号変化に応じて低減され、また前記移動運動が、少なくとも前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)の表面に接触するまで継続され、
前記駆動ユニット(35)と前記変位部材(23)の間でフリーホイール機構(51)が作動され、前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)の表面に接触した後、前記フリーホイール機構(51)が、前記駆動ユニット(35)と前記変位部材(23)の間の相互作用を切り離し、スイッチング・デバイス(58)を介して前記フリーホイール機構(51)の前記作動が検出され、前記モータ(34)を停止させる制御信号が放出され、
前記測定対象(14)の表面に接触したとき、またはその後、前記測定用プローブ(26)の前記測定信号が検出されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記測定用プローブ(26)の電圧信号を使用して、前記変位部材(23)を変位させるように前記モータ(34)を作動させることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
開始位置(31)から測定位置(32)への少なくとも1つの測定用プローブ(26)の移動運動で測定スタンド(11)を電気的に制御する、薄層厚さの測定に有用な方法方法であって、測定を実行するために、変位部材(23)を上下に動かす駆動ユニット(35)を使用するモータ(34)が作動され、前記変位部材(23)上に、前記測定用プローブ(26)が保持器(24)を用いて固定されて行われる、方法において、
前記測定位置(32)への前記測定用プローブ(26)の第1の移動の前に、前記測定用プローブ(26)が前記測定スタンド(11)の制御ユニットと結合され、したがって前記開始位置(31)から前記測定位置(32)への前記測定用プローブ(26)の前記移動運動中に、前記測定用プローブ(26)の信号が前記制御ユニットに供給され、
運動フェーズで、前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)の方へ移動する速度が、前記測定用プローブ(26)の信号変化に応じて低減され、非接触測定のための前記測定用プローブ(26)の前記測定位置(32)を定義する基準信号に到達した後、前記測定用プローブ(26)が静止状態になることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記測定用プローブ(26)が、前記測定位置(32)にあるとき、前記測定対象(14)に対して非接触の形で位置決めされ、ウェブ状の対象が、前記測定位置(32)の下を連続する形または連続しない形で動かされ、前記基準信号を介した前記測定用プローブ(26)の距離制御が、前記測定用プローブ(26)の実際に検出された制御信号に従って実行されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定用プローブ(26)に距離検出センサ(80)が付随し、前記第1の測定を実行する前に、前記距離検出センサ(80)が、前記基準信号によって決定された前記測定用プローブ(26)の測定位置(32)にあるとき、基準面に対して較正されることが好ましいこと、または前記測定用プローブ(26)にさらなる放射放出プローブが付随し、前記さらなる放射放出プローブが、ベータ粒子の後方散乱技法を実行するように設けられることが好ましく、もしくはX線蛍光法に従って動作されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
開始位置(31)から測定位置(32)への少なくとも1つの測定用プローブ(26)の移動運動で測定スタンド(11)を電気的に制御する、薄層の厚さの測定に有用な方法であって、測定を実行するために、変位部材(23)を上下に動かす駆動ユニット(35)を使用するモータ(34)が作動され、前記変位部材(23)上に、前記測定用プローブ(26)が保持器(24)を用いて固定される、方法において、
前記変位部材(23)の保持器(24)上に測定用プローブ(26)および距離検出センサ(80)が取り付けられ、
前記測定用プローブ(26)の事前に設定された開始位置(31)と測定対象(14)の表面との間の距離が、前記距離検出センサ(80)によって検出され、
前記測定対象(14)の表面に到達するのに必要として検出される移動よりわずかに大きい移動が作動され、
前記測定用プローブ(26)の移動速度が前記測定対象(14)の表面からの距離に応じて制御され、前記測定用プローブ(26)が前記測定対象(14)の表面に穏やかに接触することを特徴とする、方法。
【請求項11】
少なくとも1つの測定用プローブ(26)を保持する、特に請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行する測定スタンドであって、モータ(34)によって駆動される駆動ユニット(35)をもつ変位部材(23)が上下に動けるように案内される筐体(18)と、前記変位部材(23)上に構成された、前記測定用プローブ(26)を保持する保持器(24)と、前記変位部材(23)を変位させるように少なくとも前記モータ(34)を作動させる制御ユニットとを有する測定スタンドにおいて、前記駆動ユニット(35)と前記変位部材(23)の間にフリーホイール機構(51)が設けられ、したがって前記測定用プローブ(26)または前記保持器(24)が前記測定対象(14)に接触すると、前記駆動ユニット(35)の移動運動が前記変位部材(23)から切り離され、前記フリーホイール機構(51)が作動されると、スイッチング・デバイス(58)がスイッチング信号を前記制御ユニットへ送出することを特徴とする、測定スタンド。
【請求項12】
前記変位部材(23)が、垂直軸であることが好ましい運動軸に沿って上下に動けるように前記筐体(18)内を案内され、したがって前記少なくとも1つの測定用プローブ(26)を、前記測定用プローブ(26)自体の重量の力によって下げることができることを特徴とする、請求項11に記載の測定スタンド。
【請求項13】
前記開始位置(31)と前記測定位置(32)の間の前記測定用プローブ(26)の移動運動中、前記変位部材(23)が、当接面(52)を介して、前記駆動ユニット(35)の接触面(53)で止まること、前記駆動ユニット(35)の前記接触面(53)が、前記駆動ユニット(35)の駆動部材(36)と係合する結合部材(41)上に設けられること、そして前記結合部材(41)がガイド(42)上、特に少なくとも1つの案内部材(43)上で上下に動けるような形で案内されることを特徴とする、請求項11に記載の測定スタンド。
【請求項14】
前記変位部材(23)が、前記筐体(18)内で垂直に構成される前記ガイド(42)、特に前記案内部材(43)に沿って動けるキャリッジ(54)に結合されることを特徴とする、請求項13に記載の測定スタンド。
【請求項15】
前記キャリッジ(54)上にガイド棒(62)が設けられ、前記ガイド棒(62)が、一方の端部が前記キャリッジ(54)に対向して配置された状態で、前記筐体(18)内に形成されたさらなるガイド内で上下に動けることを特徴とする、請求項14に記載の測定スタンド。
【請求項16】
前記結合部材(41)に、前記駆動ユニット(35)の上端位置を検出するセンサ要素、特にスイッチ用翼状片(45)が構成されることを特徴とする、請求項13に記載の測定スタンド。
【請求項17】
前記駆動ユニット(35)が歯付きベルトを含み、前記歯付きベルトが駆動部材(36)として働き、好ましくは引っ張られた状態で、2つの返し車(37、38)によって受け取られ、一方の返し車が前記モータ(34)の駆動ローラとして設けられ、また他方の返し車が変位トランスデューサ(39)、特にプログラム可能な回転エンコーダを駆動させることが好ましいことを特徴とする、請求項13に記載の測定スタンド。
【請求項18】
前記スイッチング・デバイス(58)が第1の構成要素(59)および第2の構成要素(60)を有し、前記第1の構成要素(59)が前記キャリッジ(54)上または前記変位部材(23)上に構成され、前記第2の構成要素(60)が前記駆動ユニット(35)の前記結合部材(41)上に構成され、また前記スイッチング・デバイス(58)が、切換え羽根、接触センサ、距離検出センサ、または遮断器接点を有するフォーク状光バリアとして実現されることを特徴とする、請求項11に記載の測定スタンド。
【請求項19】
前記変位部材(23)と前記キャリッジ(54)の間に、ねじれを受け入れるガイド(84)が構成され、前記ガイド(84)を用いて、前記変位部材(23)が、互いに異なりまた解放可能な留め具型の接続を用いて固定された少なくとも2つの角度位置(81、82)で枢動できることを特徴とする、請求項14に記載の測定スタンド。
【請求項20】
前記変位部材(23)上または前記キャリッジ(54)上に重量軽減機構(68)を取り付けることができ、前記重量軽減機構(68)がレバー・アーム(72)を有することが好ましく、前記レバー・アーム(72)が、軸受軸(71)内で回転可能であり、また一方では前記変位部材(23)または前記キャリッジ(54)に作用し、他方では前記レバー・アーム(72)に沿って変位可能でかつ/または交換可能な形で質量体(77)を受け取ることを特徴とする、請求項11に記載の測定スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−217182(P2010−217182A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58865(P2010−58865)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(309007036)ヘルムート・フィッシャー・ゲーエムベーハー・インスティテュート・フューア・エレクトロニク・ウント・メステクニク (5)
【Fターム(参考)】