説明

測定装置

【課題】TEDS規格対応のセンサが接続される測定装置において、過大入力電圧による内部回路の破壊を防ぐこと。
【解決手段】TEDS規格対応のセンサが接続され、アナログ動作モードとデジタル動作モードが切り換えられるように構成された測定装置において、アナログ動作モードにおける入力電圧を測定する手段と、この入力電圧の測定結果とデジタル動作モードの許容入力範囲を比較する手段と、この比較結果を表示する手段と、動作モードの切換を制御する手段を備え、アナログ動作モードからデジタル動作モードに切り換えるのにあたり、前記入力電圧の測定結果が前記デジタル動作モードの許容入力範囲を超えている場合には、前記表示手段は警報表示を行い、前記切換制御手段はアナログ動作モードを保持することを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置に関し、詳しくは、プラグアンドプレイ形式のセンサを用いた測定装置の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、測定装置に用いるプラグアンドプレイ形式のセンサとして、TEDS(Transducer Electronic Data Sheet:トランスデューサ電子データシート)規格対応のセンサが注目されている。TEDS内のメモリにはセンサ固有の識別情報や校正情報(パラメータ)が記録されている。
【0003】
TEDS規格対応のセンサおよび機器を用いることにより、測定装置におけるセンサ固有情報の設定や校正データなどの取り込みを自動的に行うことができ、設定時間の大幅な短縮や設定ミスの防止などにより現場作業者の負担を大幅に軽減できるとともに、より正確な測定が可能になる。
【0004】
図4は、プラグアンドプレイ形式のTEDS規格対応のセンサを用いた従来の測定装置の一例を示すブロック図である。図4において、センサユニット10と送受信ユニット20は、図示しない同軸ケーブルおよび同軸コネクタ30を介して接続されている。
【0005】
センサユニット10に設けられている同軸コネクタ30の内部導体31にはダイオードD1とアンプ11の直列回路を介してセンサ12の一端が接続されるとともに、ダイオードD2を介してTEDS13の一端が接続されている。これらセンサ12およびTEDS13の他端は同軸コネクタ30の外部導体32に接続されている。
【0006】
送受信ユニット20に設けられている同軸コネクタ30の内部導体33には切換スイッチSW1の可動接点aが接続され、外部導体34は共通電位点に接続されている。
【0007】
切換スイッチSW1の一方の固定接点bにはプラス電源(たとえば+24V)が印加されるとともにコンデンサCを介してPGA21とA/D変換器22が直列接続され、A/D変換器22の出力データは演算制御部23に入力されている。切換スイッチSW1の他方の固定接点cにはマイナス電源(たとえば−5V)が印加されるとともにデータI/O24を介して演算制御部23が接続されている。
【0008】
ここで、コンデンサCは、PGA21のアナログ入力信号の直流オフセット電圧を除去するように機能する。PGA21は、コンデンサCを介して入力されるアナログ電圧を、A/D変換器22が安定にデジタル信号に変換できる所定範囲の値に変換する。データI/O24は、演算制御部23に入力されるまたは演算制御部23から出力されるデジタルデータのレベルを、所定範囲の値に変換する。
【0009】
このような構成において、送受信ユニット20は、切換スイッチSW1の可動接点aの切り換えに応じて、センサ12のアナログ出力を測定するアナログ動作またはTEDS13との間でデジタルデータを入出力するデジタル動作を行う。
【0010】
まず、アナログ動作モード時には切換スイッチSW1の可動接点aを固定接点b側に切り換えて送受信ユニット20からセンサユニット10にプラス電源を供給し、A/D変換器22でセンサ12のアナログ出力を測定する。
【0011】
一方、デジタル動作モード時には切換スイッチSW1の可動接点aを固定接点c側に切り換えて送受信ユニット20からセンサユニット10にマイナス電源を供給し、TEDS13との間でデジタルデータの入出力を行う。
【0012】
また、送受信ユニット20の可動接点aを固定接点b側に切り換えてアナログ動作モードに設定しておき、送受信ユニット20の同軸コネクタにセンサユニット10以外の電圧発生装置などの出力端子に接続される同軸ケーブルの同軸コネクタを接続して、電圧を測定することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−157308号公報
【0014】
特許文献1には、トランスを用いることなく、TEDSメモリから装置側に送信される信号を論理反転して信号の回り込みを防止するように構成されたTEDSシステムにおけるデータ送受信装置が記載されている。
【0015】
図5は、データI/O24の具体例を示す回路図である。演算増幅器OPの反転入力端子は抵抗R1とR2の直列回路の接続中点に接続されている。非反転入力端子は抵抗R3とR4の直列回路の接続中点に接続されるとともに、抵抗R5を介して出力端子に接続されている。出力端子は図示しない演算制御部23に接続されている。
【0016】
抵抗R1の他端はプラス電源+Vに接続され、R2の他端は図示しない切換スイッチSW1の固定接点cに接続されるとともにFET Q2のドレインに接続されている。抵抗R3の他端はプラス電源+Vに接続され、R4の他端は共通電位点に接続されている。
【0017】
FET Q1のソースはプラス電源+Vに接続されるとともに抵抗R6を介してゲートに接続され、ドレインは抵抗R7とR8の直列回路を介してマイナス電源−Vに接続されている。ゲートは図示しない演算制御部23に接続されている。
【0018】
FET Q2のゲートは抵抗R7とR8の直列回路の接続中点に接続されている。ドレインは抵抗R9を介してマイナス電源−Vに接続されている。抵抗R9の抵抗値は、規格で規定されているTEDS13に所定の電力を供給できるように、その範囲が定められている。
【0019】
図5のデータI/O24において、過大電圧から保護しなくてはならない部分は、抵抗R2の他端とFET Q2のドレインとを接続する配線との接続点Pである。
【0020】
この接続点Pを過大電圧から保護するためには、たとえば図6に示すように、保護抵抗R10を介して電圧クランプ回路を接続することが考えられる。なお、電圧クランプ回路は、順方向に接続されたダイオードD3とD4の直列回路と、一端がダイオードD3のカソードに接続され他端がプラス電源+Vに接続された抵抗R11と、カソードがダイオードD3のカソードに接続されアノードが共通電位点に接続された第1のツェナーダイオードZD1と、一端がダイオードD3およびツェナーダイオードZD1のカソードに接続され他端が共通電位点に接続された第1のコンデンサC1と、一端がダイオードD4のアノードに接続され他端がマイナス電源−Vに接続された抵抗R12と、カソードがダイオードD4のアノードに接続されアノードが共通電位点に接続された第2のツェナーダイオードZD2と、一端がダイオードD4のアノードとツェナーダイオードZD2のカソードの接続点に接続され他端が共通電位点に接続された第2のコンデンサC2とで構成されている。
【0021】
ところで、データI/O24周辺に図6のような電圧クランプ回路を設けるためには、図5の接続点Pに保護抵抗R10を接続しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、図5の接続点Pに保護抵抗R10を接続するとTEDS13に所定の電力を供給する部分の抵抗が大きくなってTEDS13に充分な電力を供給できなくなり、安定したデジタル動作が得られなくなってしまう。
【0023】
このように、図5の接続点Pに保護抵抗R10を入れて過電圧保護を行うことは困難であって、たとえば電圧発生装置の出力電圧などの比較的大きな電圧を測定しているアナログ動作モード状態で誤って切換スイッチSW1の可動接点aを固定接点c側に切り換えると、データI/O24に過大電圧が加わってデータI/O24を破壊してしまうおそれがある。
【0024】
本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、TEDS規格対応のセンサが接続される測定装置において、過大入力電圧による内部回路の破壊を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
TEDS規格対応のセンサが接続され、アナログ動作モードとデジタル動作モードが切り換えられるように構成された測定装置において、
アナログ動作モードにおける入力電圧を測定する手段と、この入力電圧の測定結果とデジタル動作モードの許容入力範囲を比較する手段と、この比較結果を表示する手段と、動作モードの切換を制御する手段を備え、
アナログ動作モードからデジタル動作モードに切り換えるのにあたり、
前記入力電圧の測定結果が前記デジタル動作モードの許容入力範囲を超えている場合には、前記表示手段は警報表示を行い、前記切換制御手段はアナログ動作モードを保持することを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測定装置において、
前記入力電圧を測定する手段はA/D変換器であることを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測定装置において、
前記測定装置はセンサユニットと送受信ユニットとで構成され、これらセンサユニットと送受信ユニットは同軸ケーブルを介して着脱可能に接続されていることを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の測定装置において、
前記送受信ユニットには、アナログ動作モードとデジタル動作モードを切り換える第1の切換スイッチと、この第1の切換スイッチのアナログ動作側の接点に接続され前記センサユニットに選択的に電源を供給するスイッチと、この第1の切換スイッチのアナログ動作側の接点に接続され直流オフセット電圧を除去するコンデンサの前後を切り換える第2の切換スイッチが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、アナログ動作モードからデジタル動作モードに切り換えるのにあたって、アナログ動作モードにおける入力電圧の測定結果がデジタル動作モードの許容入力範囲を超えている場合には、アナログ動作モードが保持されるので、過大入力電圧による内部回路の破壊を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図3】本発明に基づく表示部14の具体例図である。
【図4】従来の測定装置の一例を示すブロック図である。
【図5】データI/O24の具体例を示す回路図である。
【図6】電圧クランプ回路の具体例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図4と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、切換スイッチSW1の一方の固定接点bには切換スイッチSW2の可動接点aが接続されるとともに、スイッチSW3を介してプラス電源(たとえば+24V)が印加されている。
【0032】
切換スイッチSW2の一方の固定接点bはコンデンサCとPGA21の接続点に接続され、他方の固定接点cにはコンデンサCを介してPGA21とA/D変換器22が直列接続され、A/D変換器22の出力データは演算制御部23に入力されている。切換スイッチSW1の他方の固定接点cにはマイナス電源(たとえば−5V)が印加されるとともにデータI/O24を介して演算制御部23が接続されている。
【0033】
すなわち、図1の構成では、図6の構成に対して、入力電圧レベルの測定にあたり直流を含めるか含めないかを切り換えるための切換スイッチSW2と、プラス電源を選択的にオンオフにするスイッチSW3を設けている。
【0034】
図2は、図1における演算制御部23の動作モード切換時における機能の具体例を示すブロック図である。電圧測定部23aは、A/D変換器22により変換されたデジタルデータに基づきアナログ電圧を測定する。測定値比較部23bは、電圧測定部23aの測定値とあらかじめ規定値メモリ23cに格納されている規定値との大小関係を比較する。スイッチ制御部23dは、測定値比較部23bの比較結果に基づき、各スイッチSW1〜3を制御する。表示制御部23eは、測定値比較部23bの比較結果に基づき、図示しない警告表示部を制御する。
【0035】
図1の動作を説明する。演算制御部23は、切換スイッチSW1の可動接点aを固定接点c側に切り換えてデジタル動作モードにする前に電圧測定動作を行い、その測定結果に基づいて切換スイッチSW1の可動接点aの固定接点c側への切り換えを制御し、データI/O24に過大電圧がかからないようにする。
【0036】
1)切換スイッチSW1の可動接点aを固定接点b側に切り換える(通常は固定接点b側になっている)。
2)スイッチSW3をオフにする。
3)切換スイッチSW2の可動接点aを固定接点b側に切り換える。
4)A/D変換器22で電圧を測定する。
【0037】
5)測定結果が規定値(たとえば±0.2V)以下の場合は以下の動作を行い、通常のTEDS解析動作に入る。
5−1)切換スイッチSW2を固定接点c側に切り換える。
5−2)スイッチSW3をオンにする。
5−3)切換スイッチSW1を固定接点c側に切り換える。
【0038】
6)測定結果が規定値を超えた場合は警告エラー表示をして切換スイッチSW1の切り換えは行わず、測定動作を終了する。
【0039】
図3は、図1の動作の流れを説明するフローチャートである。切換スイッチSW1の可動接点aが固定接点b側に切り換えられているアナログ動作状態でTEDS13にアクセスするデジタル動作が指令されると(SP1)、A/D変換器22はその状態で入力されている電圧を測定する(SP2)。演算制御部23は、測定電圧が規定値(たとえば±0.2V)以下か否かを判断し(SP3)、規定値以下でない場合にはアナログ動作状態のままで警告表示を行い(SP4)、規定値以下の場合にはデジタル動作に切り換える(SP5)。
【0040】
これにより、過大電圧がデータI/O24に印加されることを防止でき、データI/O24の破壊を防ぐことができる。
【0041】
なお、図3のフローチャートに示す一連の動作は、送受信ユニット20の演算制御部23に組み込まれているプログラムに基づき、自動的に処理実行できる。
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、TEDS規格対応のセンサが接続される測定装置における過大入力電圧による内部回路の破損を防止できる。
【符号の説明】
【0043】
10 センサユニット
11 アンプ
12 センサ
13 TEDS
20 送受信ユニット
21 PGA
22 A/D変換器
23 演算制御部
24 データI/O
30 同軸コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TEDS規格対応のセンサが接続され、アナログ動作モードとデジタル動作モードが切り換えられるように構成された測定装置において、
アナログ動作モードにおける入力電圧を測定する手段と、この入力電圧の測定結果とデジタル動作モードの許容入力範囲を比較する手段と、この比較結果を表示する手段と、動作モードの切換を制御する手段を備え、
アナログ動作モードからデジタル動作モードに切り換えるのにあたり、
前記入力電圧の測定結果が前記デジタル動作モードの許容入力範囲を超えている場合には、前記表示手段は警報表示を行い、前記切換制御手段はアナログ動作モードを保持することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記入力電圧を測定する手段はA/D変換器であることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定装置はセンサユニットと送受信ユニットとで構成され、これらセンサユニットと送受信ユニットは同軸ケーブルを介して着脱可能に接続されていることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
前記送受信ユニットには、アナログ動作モードとデジタル動作モードを切り換える第1の切換スイッチと、この第1の切換スイッチのアナログ動作側の接点に接続され前記センサユニットに選択的に電源を供給するスイッチと、この第1の切換スイッチのアナログ動作側の接点に接続され直流オフセット電圧を除去するコンデンサの前後を切り換える第2の切換スイッチが設けられていることを特徴とする請求項3記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175334(P2010−175334A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16914(P2009−16914)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】