説明

溶射皮膜形成方法および溶射皮膜形成装置

【課題】クランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列のシリンダボアに対する溶射被膜の形成を、シリンダブロックの取付位置を変更することなく、同一の溶射ガンを用いて行えるようにする。
【解決手段】V型エンジンのシリンダブロック1を設置固定する回転部17は、凸状の円形曲面17bが回転受け台19の凹状の円形曲面19aに沿って回転する。この回転により、第1バンク7のシリンダボア3aと第2バンク9のシリンダボア3bとのいずれか一方の開口を、鉛直方向上方とすることができ、各シリンダボア3a,3bの内面に対し、同一の溶射ガン5を用いて溶射皮膜を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダブロックにおけるクランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列のシリンダボア内面に対して溶射被膜を形成する溶射皮膜形成方法および溶射皮膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにおけるシリンダブロックのシリンダボア内面に対し、溶射ガンが吐出する溶射用材料により溶射被膜を形成して高硬度化する点が、下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平8−246944号公報(段落0023,図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した溶射ガンを用いた溶射被膜形成装置においては、通常シリンダブロックを装置のベース側に固定し、例えば直列多気筒エンジンであれば、上下方向に移動してシリンダボア内に進入可能な溶射ガンを、シリンダブロックに対してシリンダ列方向に直線的に相対移動させることで、複数のシリンダボアに対し、同一の溶射ガンを用いて溶射皮膜を容易に形成することができる。
【0004】
ところが、クランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ二つのシリンダ列を有する、いわゆるV型エンジンにおいて、各シリンダ列のシリンダボアに対して同一の溶射ガンにより溶射皮膜を形成する際には、上下方向に移動する溶射ガンに対応させるべく、シリンダブロックの装置ベース側に対する取付位置を変更して段取り代え作業を行う必要があり、作業性の悪化を招いている。
【0005】
そこで、本発明は、クランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列の各シリンダボアに対する溶射被膜の形成を、シリンダブロックの取付位置を変更することなく、同一の溶射ガンにより可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンのシリンダブロックにおけるクランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列のシリンダボア内面に対して溶射被膜を形成する溶射皮膜形成方法において、前記少なくとも二つのシリンダ列のうちの一つのシリンダ列のシリンダボア内面に対し、溶射ガンから溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成した後、前記シリンダブロックを、クランクシャフトを回転支持する回転支持部を中心として回転させて、前記少なくとも二つのシリンダ列のうちの他の一つのシリンダ列のシリンダボア内面に対し、前記溶射ガンから溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シリンダブロックを、クランクシャフトを回転支持する回転支持部を中心として回転させることで、クランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列のシリンダボア内面に対し、シリンダブロックを設置する側の取付位置を変更することなく、同一の溶射ガンから溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態を示す溶射皮膜形成装置の正面図、図2は、図1のA−A断面図である。この溶射皮膜形成装置は、自動車用V型エンジンのシリンダブロック1におけるシリンダボア3a,3bに対し、溶射ガン5から溶射用材料を吐出して溶射皮膜を形成する。なお、図1では、図2に示してある溶射ガン5および溶射ガン5を支持する各部材を省略している。
【0010】
V型エンジンのシリンダブロック1は、図2に示すように、第1バンク7と第2バンク9とをそれぞれ備えている。第1バンク7にはシリンダボア3aが図2中で紙面に直交する方向(クランクシャフトの軸方向)に複数のシリンダボアが並ぶ一つのシリンダ列を有し、第2バンク9にはシリンダボア3bが図2中で紙面に直交する方向(クランクシャフトの軸方向)に複数のシリンダボアが並ぶ他の一つのシリンダ列を有している。
すなわち、このシリンダブロック1は、シリンダボア3a,3bの各軸線SL,SRが、クランクシャフトの軸方向から見て互いに交差している。
【0011】
ここでのシリンダブロック1は、下部に形成したスカート部11のさらに下部にクランクケース13を固定して一体化してあり、スカート部11とクランクケース13との間に、クランクシャフトを回転支持する回転支持部としての軸受部15を設けている。なお、溶射皮膜を形成する際には、シリンダブロック1に上記したクランクシャフトを組み付けていない。
【0012】
上記したシリンダブロック1は、クランクケース13を下側とした状態で、回転部17上に、固定具18を介して固定設置している。回転部17は、クランクケース13を固定設置する平面状の上面部17aと、下方に凸状となる円形曲面17bとをそれぞれ有し、凸状の円形曲面17bに対応する凹状の円形曲面19aを上部に備えた回転受け台19上に配置する。
【0013】
上記した凸状の円形曲面17bおよび凹状の円形曲面19aは、軸受部15でのクランクシャフトの回転中心軸線Xを中心とした円弧状に形成してあり、回転部17は、この回転中心軸線Xを中心として、図2中の矢印Bで示す方向に揺動回転し、これとともに回転部17上のシリンダブロック1も同様にして揺動回転する。
【0014】
図1に示すように、回転部17の左右両端部は、シリンダブロック1に対してそれぞれ左右に突出しており、この突出した部分の上面部17a上に、チルト軸21を連結している。チルト軸21は、図1中で上面部17aから上方に延びる鉛直部21aと、鉛直部21aの上端部からシリンダブロック1に対して離れるように水平方向に延びる水平部21bとをそれぞれ備えている。水平部21bの中心軸線は、前記した回転中心軸線Xに一致している。
【0015】
一方、前記した回転受け台19は、テーブル23の底面部23a上に固定し、底面部23aの図1中で左右両端から上方に延びる側壁部23bの上部に、前記したチルト軸21の水平部21bの端部を回転可能に連結する。
【0016】
ここで、チルト軸21の水平部21bをテーブル23の側壁部23bに回転可能に連結する際に、回転部17の円形曲面17bと回転受け台19の円形曲面19aとの間の全域には、図3に拡大して示すように隙間24を形成しておく。この隙間24は、回転受け台連通孔19bと外部とを連通し、空気が流通可能な程度の僅かの隙間でよい。
【0017】
そして、上記した左右のチルト軸21のうちの一方を、図1では左側のチルト軸21の水平部21bを、側壁部23bの回転支持孔23cに回転可能に挿入するとともに外部に突出させ、この突出端部に、駆動手段となるモータMを連結する。すなわち、モータMを駆動することで、シリンダブロック1を、軸受部15における回転中心軸線Xを中心として、前記図2中の矢印Bで示す方向に、回転部17とともに揺動回転させる。
また、モータMを駆動制御する制御手段としての制御装置CをモータMに接続する。
【0018】
この際シリンダブロック1は、制御装置CがモータMを駆動制御することで、図2中で右回りに回転して第1バンク7のシリンダボア3aが、図4(a)のように鉛直方向上方に開口する位置と、図2中で左回りに回転して第2バンク9のシリンダボア3bが、図4(b)のように鉛直方向上方に開口する位置とに変位する。
【0019】
回転受け台19の図2中で左右方向中央部には、上下方向に貫通する貫通部としての回転受け台連通孔19bを形成し、この回転受け台連通孔19bの円形曲面19a側の上部開口19cは、回転部17に形成した貫通部としての回転部連通孔17cに連通している。回転部連通孔17cは、前記図4(a),(b)にそれぞれ示す位置にシリンダブロック1が揺動変位した状態であっても、下部開口17dの一部が回転受け台連通孔19bの上部開口19cに常に連通するように、図2中で下部側が広がる形状としている。
この場合、上記とは逆に、回転受け台連通孔19bの上部開口19cを、回転部連通孔17cの下部開口17dより、図2中で左右方向の幅を広くしてもよい。要するに、シリンダブロック1が、前記図4(a),(b)にそれぞれ示す位置に揺動変位しても、回転部連通孔17cと回転受け台連通孔19bとが互いに連通した状態を確保できればよい。
すなわち、各貫通部である回転部連通孔17cと回転受け台連通孔19bとの互いに対向する開口のいずれか一方が、他方の開口よりも、回転部17の回転方向の幅が広くなっている。
【0020】
そして、これら回転部連通孔17cおよび回転受け台連通孔19bの図1中で左右方向幅は、シリンダブロック1の同方向長さより短く形成して、左右内端部がシリンダブロック1の両外端部より内側に位置している。
【0021】
上記した回転受け台連通孔19bの下部開口19dは、テーブル23内に形成した排気通路25に連通している。排気通路25は、回転受け台連通孔19bの下部開口19dに直接連通する連通部25aと、連通部25aの下端に連通し、図2中で左右方向に延びる排気通路部25bとをそれぞれ備えている。
【0022】
排気通路部25bは、図2中で右側の端部が外部に開口し、この外部開口に排気管27を接続する。排気管27にはファンなどを備える排気手段としての排気装置28を接続し、溶射皮膜形成時に、シリンダボア3a,3b内に対し空気を吸引して換気する。排気通路部25bの図2中で左側の端部は、開閉可能な蓋29によって閉塞している。
【0023】
また、排気通路25における連通部25a内の図2中で右側には、異物落とし板31を傾斜状態で設置し、異物落とし板31の下方の排気通路部25b内の底面には、異物受け皿33を配置する。異物受け皿33は、蓋29の開放によって外部に取り出すことができる。
【0024】
なお、上記したテーブル23は、ガイドレール35に沿って図1中で左右方向に移動可能としている。
また、前記図2に示した溶射ガン5は、その上部に連結してあるガン支持具37に対して回転可能に支持され、この溶射ガン5の回転は、回転駆動モータ39によって行う。
この際、溶射ガン5のガン支持具37近傍の外周に従動プーリ41を設ける一方、回転駆動モータ39には駆動プーリ43を連結し、これら各プーリ41,43を連結ベルト45によって互いに連結する。すなわち、回転駆動モータ39の駆動により溶射ガン5がガン支持具37に対して回転する。
ガン支持具37には、ガン支持具37を溶射ガン5および回転駆動モータ39とともに図2中で上下方向に移動させる昇降装置47を設けている。昇降装置47としては、例えばピニオンとラックによって構成できる。さらに、昇降装置47には、水平方向に延びる連結アーム49の先端を連結し、連結アーム49の基端は、図2中でテーブル23の側方にて鉛直方向に延びる支持ポスト53の上部に取り付けている。
なお、溶射ガン5を回転させる回転駆動モータ39とガン支持具37とは、図示しない固定具によって連結固定してあり、これらは一体となって図2中で上下方向に移動する。
また、回転駆動モータ39や昇降装置47についても、前記した制御装置Cが駆動制御する。
【0025】
次に作用を説明する。図1,図2に示すように、回転部17の上面部17aが水平となる状態で、シリンダブロック1を上面部17aに設置し、固定具18により固定する。この状態から制御装置CによりモータMを駆動制御してチルト軸21をその水平部21bを中心として図2中で右回りに回転させる。これにより、回転部17が、その凸状の円形曲面17bが回転受け台19の凹状の円形曲面19aに沿って回転し、図4(a)に示すように、回転部17とともに回転するシリンダブロック1を、第1バンク7のシリンダボア3aが鉛直方向上方に開口した状態とする。
【0026】
上記図4(a)の状態では、溶射ガン5が、シリンダボア3aの鉛直方向上方位置にあり、このとき、溶射ガン5の回転中心とシリンダボア3aの軸線SLとが一致した状態となる。この図4(a)の状態から、溶射ガン5を、回転駆動モータ39の駆動により回転させつつ昇降装置47の駆動により下降させて、第1バンク7のシリンダボア3a内に進入させ、そのノズル部5aから溶射用材料を吐出することで、シリンダボア3aの内面に溶射皮膜を形成する。
第1バンク7における複数(ここでは3つ)のシリンダボア3aに対して順次溶射皮膜を形成する際には、テーブル23を、シリンダブロック1とともに図1中で左右方向に移動させ、溶射ガン5を各シリンダボア3aの上方位置とすることで対応する。
【0027】
その後、溶射ガン5を、溶射皮膜形成後のシリンダボア3a内から引き抜き、図4(a)の位置まで上昇させた状態で、図1に示す制御装置CによりモータMを駆動してチルト軸21を、その水平部21bを中心として図4(a)中で左回りに回転させる。このときの回転角度は、前記図1に示してあるシリンダボア3a,3bの各軸線SL,SR相互の交差角度α分に相当する。
【0028】
これにより、回転部17が、その凸状の円形曲面17bが回転受け台19の凹状の円形曲面19aに沿って回転し、図4(b)に示すように、回転部17とともに回転するシリンダブロック1を、第2バンク9のシリンダボア3bが鉛直方向上方に開口した状態とする。
上記図4(b)の状態では、溶射ガン5が、シリンダボア3bの鉛直方向上方位置にあり、このとき、溶射ガン5の回転中心とシリンダボア3bの軸線SRとが一致した状態となる。
【0029】
上記図4(b)の状態から、前記と同様にして溶射ガン5を回転させつつ下降させて、第2バンク9のシリンダボア3b内に進入させ、そのノズル部5aから溶射用材料を吐出することで、シリンダボア3bの内面に溶射皮膜を形成する。
すなわち、モータMは、制御装置Cの指令を受けて、回転部17によって回転可能に支持されたシリンダブロック1の回転方向の位置を、溶射ガン5が少なくとも二つのシリンダ列のうちの一つのシリンダ列のシリンダボア3a内に進入しつつ溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成する第1の溶射位置と、溶射ガン5が少なくとも二つのシリンダ列のうちの他の一つのシリンダ列のシリンダボア3b内に進入しつつ溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成する第2の溶射位置とに切り替え可能に、回転部17を回転させる。
【0030】
このように、シリンダブロック1を、クランクシャフトの回転中心部となる軸受部15を中心として、シリンダボア3a,3bの各軸線SL,SR相互の交差角度α分だけ回転させることで、シリンダブロック1の取付位置の変更、すなわち段取り代え作業を行うことなく、シリンダブロック1の両バンク7,9のシリンダボア3a,3bに対し、一定方向に相当する図2中で上下方向(鉛直方向)に移動可能な同一の溶射ガン5により、溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成することができる。
【0031】
上記したようにシリンダボア3a,3bに対して溶射皮膜を形成する際には、排気装置28を作動させ、排気管27からシリンダボア3a,3b内の空気を吸引して換気を行う。換気空気は、シリンダボア3a,3bの外部から内部に入り込み、回転部連通孔17cおよび回転受け台連通孔19bを経て、テーブル23内の排気通路25を通り排気管27に至る。
【0032】
この際、ノズル部5aから吐出する溶射用材料の一部は、シリンダボア3a,3bに付着せずに飛散するが、この飛散した溶射用材料は、上記した換気空気によって下方に移動し、異物落とし板31に当接するなどして異物受け皿33上に落下する。異物受け皿33上に落下した溶射用材料などの異物は、蓋29を開放し、異物受け皿33を取り出して、廃棄物として適宜処分する。
【0033】
また、排気管27側からシリンダボア3a,3b側の空気を吸引して換気を行うことで、図3に示すように回転部17と回転受け台19との間に形成した隙間24に、外部から空気が入り込み、回転受け台連通孔19bを経て排気通路25に流出する。このため、回転部17と回転受け台19との間に、溶射用材料などの異物が侵入するのを防ぐことができ、回転部17の回転動作が安定化する。
さらに、上記した隙間24は、回転部17の凸状の円形曲面17bと、回転受け台19の凹状の円形曲面19aとの間に形成しているので、回転部17が回転しても隙間24は常に一定に確保でき、隙間24をより狭く設定してごみの進入を防止することができる。
また、シリンダブロック1が、第1バンク7のシリンダボア3aを溶射する第1の溶射位置と、第2バンク9のシリンダボア3bを溶射する第2の溶射位置のいずれの溶射位置にあっても、回転部連通孔17cと回転受け台連通孔19bとが互いに連通しているので、溶射皮膜を形成する際の排気の流れを、常に確保することができる。
さらに、上記の回転部連通孔17cと回転受け台連通孔19bとを互いに連通させる際に、各貫通部である回転部連通孔17cと回転受け台連通孔19bとの互いに対向する開口のいずれか一方が、他方の開口よりも、回転部17の回転方向の幅を広くしているので、一方の貫通部を単に大きくするという簡単な構造で、溶射皮膜を形成する際の排気の流れを、常に確保することができる。
【0034】
なお、V型エンジンとして第1バンク7と第2バンク9とがなす角、すなわち各シリンダボア3a,3bの軸線SL,SR相互がなす角αは、60度であっても、また90度であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態を示す溶射皮膜形成装置の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】回転部と回転受け台との隙間に空気が流入する状態を示す説明図である。
【図4】(a)は、第1バンクのシリンダボアに対して溶射皮膜を形成する状態を示す、図2に対応する断面図、(b)は、第2バンクのシリンダボアに対して溶射皮膜を形成する状態を示す、図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 シリンダブロック
3a,3b シリンダボア
5 溶射ガン
15 ジャーナル部(回転支持部)
17 回転部
17b 回転部の凸状の円形曲面
17c 回転部連通孔(回転部の貫通部)
17d 回転部連通孔の下部開口(貫通部のいずれか一方の開口)
19 回転受け台
19a 凹状の円形曲面
19b 回転受け台連通孔(回転受け台の貫通部)
19c 回転受け台連通孔の上部開口(貫通部のいずれか他方の開口)
24 回転部と回転受け台との隙間
25 排気通路
28 排気装置(排気手段)
SL,SR シリンダボアの軸線
M 回転部を回転させるモータ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダブロックにおけるクランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列のシリンダボア内面に対して溶射被膜を形成する溶射皮膜形成方法において、前記少なくとも二つのシリンダ列のうちの一つのシリンダ列のシリンダボア内面に対し、溶射ガンから溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成した後、前記シリンダブロックを、クランクシャフトを回転支持する回転支持部を中心として回転させて、前記少なくとも二つのシリンダ列のうちの他の一つのシリンダ列のシリンダボア内面に対し、前記溶射ガンから溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成することを特徴とする溶射皮膜形成方法。
【請求項2】
エンジンのシリンダブロックにおけるクランクシャフトの軸方向にシリンダボアが並ぶ少なくとも二つのシリンダ列のシリンダボア内面に対して溶射被膜を形成する溶射皮膜形成装置において、
一定方向に移動しシリンダボア内に進入する溶射ガンと、
前記シリンダブロックを、クランクシャフトを回転支持する回転支持部を中心として回転可能に支持する回転部と、
前記回転部によって支持されたシリンダブロックの回転方向の位置を、前記溶射ガンが前記少なくとも二つのシリンダ列のうちの一つのシリンダ列のシリンダボア内に進入しつつ溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成する第1の溶射位置と、前記溶射ガンが前記少なくとも二つのシリンダ列のうちの他の一つのシリンダ列のシリンダボア内に進入しつつ溶射用材料を吐出して溶射被膜を形成する第2の溶射位置とに切り替え可能に、前記回転部を回転させる駆動手段と、
を有することを特徴とする溶射皮膜形成装置。
【請求項3】
前記回転部によって支持された前記シリンダブロックのシリンダボア内の空気を、前記回転部および該回転部に対して前記シリンダブロックと反対側に配置した回転受け台の各貫通部を通して前記シリンダブロックと反対側の外部に排気する排気通路と、前記排気通路を通して前記空気を排気する排気手段をさらに有し、前記シリンダブロックが前記第1の溶射位置と前記第2の溶射位置とのいずれの位置にあっても、前記各貫通部相互が連通することを特徴とする請求項2に記載の溶射皮膜形成装置。
【請求項4】
前記回転部と前記回転受け台の各貫通部の互いに対向する開口のいずれか一方が、他方の開口よりも、前記回転部の回転方向の幅が広くなっていることを特徴とする請求項3に記載の溶射皮膜形成装置。
【請求項5】
前記回転部と前記回転受け台との間に隙間を設け、この隙間を、前記回転受け台の貫通部に連通させたことを特徴とする請求項3または4に記載の溶射皮膜形成装置。
【請求項6】
前記回転部は、前記回転受け台に対向する凸状の円形曲面を有し、前記回転受け台は、前記回転部の凸状の円形曲面に対応する凹状の円形曲面を備え、前記各円形曲面は、前記回転部の回転中心が中心となる曲面形状であるとともに、各円形曲面相互間に前記隙間を設けたことを特徴とする請求項5に記載の溶射皮膜形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−182621(P2007−182621A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218380(P2006−218380)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】