説明

溶液、ダイレクトプレーティング用材料及びプリント配線板

【課題】プリント配線板の製造等に好適に用いることができるダイレクトプレーティング用材料であり、該材料表面の表面粗度が小さい場合にも、該表面に形成したダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性に優れたダイレクトプレーティング用材料と溶液、それを用いてなるプリント配線板を提供する。
【解決手段】ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを少なくとも有するダイレクトプレーティング用材料であって、表面aの表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっており、かつ表面aは、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とするダイレクトプレーティング用材料によって上記課題を解決しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトプレーティングにより金属層を形成する際に好適に使用することができる溶液及びダイレクトプレーティング用材料であり、特にはプリント配線板用の製造等に好適に用いることができる溶液及びダイレクトプレーティング用材料とそれを用いてなるプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを用いずに、金属塩の水溶液中に還元剤を入れておき、その分解による還元作用で金属を基材上に析出せしめる無電解めっきは、各種プラスチック、ガラス、セラミック、木材などの絶縁性材料表面の機能化のために広く適用されている技術である。例えば、ABS樹脂やポリプロピレン樹脂にダイレクトプレーティングを施し、自動車のグリルやマーク類、家電製品のツマミ類などの部品とする装飾めっきや、プリント配線板のスルーホールめっきのような機能めっきを挙げることができる。
一方、浴の安定性の問題や廃液の規制強化の問題等から、近年無電解めっきを用いずに導電化し、直接電気銅めっきを行うダイレクトプレーティングが提案され、普及し始めている。
しかし、ダイレクトプレーティングは上記各種材料表面との接着性が低い場合が多い。特に、上述したプリント配線板の製造に適用した場合、ダイレクトプレーティングにより形成した金属層と絶縁材料との接着性は低いというのが課題であった。特に、表面粗度が小さい平滑な表面を有する絶縁材料に対して、ダイレクトプレーティングにより金属層を強固に接着するのは非常に困難であった。
一方、例えば表面に配線を形成したプリント配線板などを製造する際、絶縁材料上に金属層を形成する場合、できるだけ平滑な表面に、強固に金属層が形成されていることが非常に望ましい。
これまで知られているプリント配線板に用いられる絶縁シートは、様々な手法で表面を粗化させ、いわゆるアンカー効果によって金属層との接着性を得ていた(例えば特許文献1参照)。しかし、表面粗度が小さい場合には金属層と樹脂材料との接着性は低く、微細配線形成には限界があった。
【特許文献1】特開2000−198907
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術で説明したように、表面粗度が小さい場合でも樹脂材料とダイレクトプレーティングにより形成した金属層との接着性が高い材料は未だ見出されていない。
【0004】
従って、本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ダイレクトプレーティングを施す各種材料表面に形成することにより、ダイレクトプレーティングと各種材料間との接着性を向上させるためのダイレクトプレーティング用材料を提供することにあり、各種プラスチック、ガラス、セラミック、木材などへの機能めっき、自動車のグリルやマーク類、家電製品のツマミ類などの部品への装飾めっき、特には各種プリント配線板の製造等に好適に用いることができ、さらには微細配線形成が要求されるフレキシブルプリント配線板、リジッドプリント配線板、多層フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板等のプリント配線板用の製造等に好適に用いることができる溶液、ダイレクトプレーティング用材料とそれを用いてなるプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、下記のダイレクトプレーティング用材料により、上記課題が解決しうることを見出した。すなわち、
1)ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを少なくとも有するダイレクトプレーティング用材料であって、表面aの表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっており、かつ表面aは、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とするダイレクトプレーティング用材料。
【0006】
【化6】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
2)パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることを特徴とする1)に記載のダイレクトプレーティング用材料。
3)ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを有し、かつ、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する単層シートであって、表面aの表面粗度はカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっていることを特徴とする単層シート。
【0007】
【化7】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
4)パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることを特徴とする3)に記載の単層シート。
5)少なくともダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを有する層Aを含む2層以上の層から構成された絶縁シートであって、表面aの表面粗度はカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっており、かつ層Aは、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とする絶縁シート。
【0008】
【化8】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
6)パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることを特徴とする5)に記載の絶縁シート。
7)3)記載の単層シートまたは、請求項5記載の絶縁シートの、層A上に金属層が形成されていることを特徴とする積層体。
8)3)記載の単層シートまたは、5)に記載の絶縁シートを用いてなるプリント配線板。
9)下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する溶液であって、1)に記載の表面aを形成するために用いられることを特徴とするポリイミド樹脂を含有する溶液。
【0009】
【化9】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
10)下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸を含有する溶液であって、1)に記載の表面aを形成するために用いられることを特徴とするポリアミド酸を含有する溶液。
【0010】
【化10】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを有し、且つ表面aに特定の構造を有するポリイミド樹脂を用いることにより、めっきを施す表面の表面粗度が小さいにもかかわらずダイレクトプレーティングにより形成した金属層との接着強度が高い。また本発明のダイレクトプレーティング用材料は他の各種材料との接着性にも優れる。よって、ダイレクトプレーティングを施したい材料表面に、まず本発明のダイレクトプレーティング用材料を形成し、その後ダイレクトプレーティングにより金属層を形成すれば、本発明のダイレクトプレーティング用材料と金属層とが強固に接着するという利点を有する。
【0012】
また、本発明のダイレクトプレーティング用材料はポリイミド樹脂を含有することにより耐熱性に優れたものとなるため、各種プリント配線板の製造に好適に用いることができ、さらには、特に表面粗化を実施せずともダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着強度が高いという利点を生かして、微細配線形成が要求されるフレキシブルプリント配線板、リジッドプリント配線板、多層フレキシブルプリント配線板やビルドアップ配線板等のプリント配線板用の製造等に好適に用いることができるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の一形態について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0014】
[本発明のダイレクトプレーティング用材料の構成]
本発明のダイレクトプレーティング用材料は、ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを少なくとも有するダイレクトプレーティング用材料であって、表面aの表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっており、かつ表面aは、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とするダイレクトプレーティング用材料である。
【0015】
表面aに上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を用いることにより、表面粗度がカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下と極めて小さい場合でもダイレクトプレーティングにより形成された金属層を強固に形成することができる。
【0016】
本発明のダイレクトプレーティング用材料は、表面aを有しさえすればいかなる構成からなる材料、形態であっても構わない。例えば、本発明のダイレクトプレーティング用材料をプリント配線板用に用いる場合には、表面aを構成する、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含む材料のみからなるフィルム状材料であっても良いし、表面aを有する層Aと、形成された回路と対向させるための層Bとから構成される材料であっても良いし、表面aを有する層A/高分子フィルムC/層Bとから構成される材料であっても良い。また、表面aを有する層Aと高分子Cとから構成される材料であっても良いし、表面aを有する層A/高分子フィルムC/表面aを有する層Aとから構成される材料であっても良い。
【0017】
本発明のダイレクトプレーティング用材料を得るために、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する溶液が好ましく用いられる。また、本発明のダイレクトプレーティング用材料を得るために、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸を含有する溶液が好ましく用いられる。
【0018】
本発明のダイレクトプレーティング用材料は、少なくともダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面Aを有していればよいが、ダイレクトプレーティングを施したい材料表面に、まず本発明のダイレクトプレーティング用材料を形成し、その後ダイレクトプレーティングを施す方法が好ましく用いられる。これにより、本発明のダイレクトプレーティング用材料が層間接着剤の役割を果たすことにより、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層と材料間とが強固に接着するという利点を生かし、各種装飾めっき用途や、機能めっき用途に適用することが可能である。その中でも、耐熱性をも併せ持ち、表面粗度が小さい場合でもダイレクトプレーティングにより形成された金属層を強固に形成できるという利点を生かし、プリント配線板用のダイレクトプレーティング用材料として好適に用いることができる。
以下に本発明のダイレクトプレーティング用材料について、特にプリント配線板に適用した場合について説明する。
【0019】
[表面aに含有されるポリイミド樹脂]
本発明の上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂は、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有していれば、いかなるポリイミド樹脂を用いても良い。例えば、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有する酸二無水物成分あるいは上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分を用いて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を製造し、これをイミド化してポリイミド樹脂を製造する方法、官能基を有する酸二無水物成分あるいは官能基を有するジアミン成分を用いて官能基を有するポリアミド酸を製造し、この官能基と反応しうる官能基、及び上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有する化合物を反応させて、シロキサン構造が導入されたポリアミド酸を製造し、これをイミド化してポリイミド樹脂を製造する方法、官能基を有する酸二無水物成分あるいは官能基を有するジアミン成分を用いて官能基を有するポリアミド酸を製造し、これをイミド化して官能基を有するポリイミドを製造し、この官能基と反応しうる官能基、及び上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有する化合物を反応させて、シロキサン構造が導入されたポリイミド樹脂を製造する方法、などが挙げられる。ここで、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミンは比較的容易に入手することが可能であるため、上記の中でも、酸二無水物成分と、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分とを反応させて目的とするポリイミド樹脂を製造することが好ましい。
次に、本発明のポリイミド樹脂として、酸二無水物成分と、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分とを用いた場合の製造例について説明する。
【0020】
酸二無水物成分としては特に限定はなく、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’−ハイドロキノンビス(無水フタル酸)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)等を挙げることができる。これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0021】
続いて、ジアミン成分について説明する。本発明においては、ジアミン成分として、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分を含むことが好ましい。
【0022】
【化11】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分を用いることにより、得られるポリイミド樹脂は、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層と強固に接着するという特徴を有するようになる。
【0023】
上記一般式(1)で表されるジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミンや、オクタメチレンジアミンなどを例示することができる。上記一般式(2)で表されるジアミンとしては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン等を挙げることができる。上記一般式(3)で表されるジアミンとしては、エラスマー1000P、エラスマー650P、エラスマー250P(イハラケミカル工業(株)製)が挙げられる。また、上記一般式(1)で表されるジアミンとしては、ポリエーテルポリアミン類、ポリオキシアルキレンポリアミン類を挙げる事ができ、ジェファーミンD−2000、ジェファーミンD−4000(ハンツマン・コーポレーション社製)等を例示することができる。さらに、上記一般式(6)で表されるジアミンとしては、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(3−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(3−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、等が挙げられる。また、一般式(6)で表される、比較的入手しやすいジアミンとして、信越化学工業株式会社製のKF−8010、X−22−161A、X−22−161B、X−22−1660B−3、KF−8008、KF−8012、Xー22−9362、等を挙げることができる。上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミンは単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0024】
表面aの耐熱性向上等を目的として、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミンと他のジアミンとを組み合わせて使用することも好ましく用いられる。他のジアミン成分としては、あらゆるジアミンを使用することが可能であり、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルなどを挙げることができる。
【0025】
上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミンは、全ジアミン成分に対して2〜100モル%が好ましく、より好ましくは5〜100モル%である。上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミンが、全ジアミン成分に対して2モル%より少ない場合、表面aとダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着強度が低くなる場合がある。
【0026】
前記ポリイミドは、対応する前駆体ポリアミド酸を脱水閉環して得られる。ポリアミド酸は、酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル反応させて得られる。
【0027】
反応の代表的な手順として、1種以上のジアミン成分を有機極性溶剤に溶解または分散させ、そののち1種以上の酸二無水物成分を添加し、ポリアミド酸溶液を得る方法があげられる。各モノマーの添加順序はとくに限定されず、酸二無水物成分を有機極性溶媒に先に加えておき、ジアミン成分を添加し、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよいし、ジアミン成分を有機極性溶媒中に先に適量加えて、つぎに過剰の酸二無水物成分を加え、過剰量に相当するジアミン成分を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。このほかにも、当業者に公知のさまざまな添加方法がある。具体的には下記の方法が挙げられる。
【0028】
なお、ここでいう「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解する場合のほかに、溶質が溶媒中に均一に分散されて実質的に溶解しているのと同様の状態になる場合を含む。反応時間、反応温度は、とくに限定されない。
1)ジアミン成分を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの酸二無水物成分を反応させて重合する方法。
2)酸二無水物成分とこれに対し過小モル量のジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において酸二無水物成分とジアミン成分が実質的に等モルとなるようにジアミン成分を用いて重合させる方法。
3)酸二無水物成分とこれに対し過剰モル量のジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここにジアミン成分を追加添加後、全工程において酸二無水物成分とジアミン成分が実質的に等モルとなるように酸二無水物成分を用いて重合する方法。
4)酸二無水物成分を有機極性溶媒中に溶解させた後、実質的に等モルとなるようにジアミン化合物成分を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの酸二無水物成分とジアミン成分の混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
【0029】
ポリアミド酸の重合反応に用いられる有機極性溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0030】
前記方法により得られたポリアミド酸溶液を、熱的または化学的方法により脱水閉環し、ポリイミドを得るが、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する熱的方法、脱水剤を用いて脱水する化学的方法のいずれも用いることができる。また、減圧下で加熱してイミド化する方法も用いることができる。以下に各方法について説明する。
【0031】
熱的に脱水閉環する方法として、前記ポリアミド酸溶液を加熱処理によりイミド化反応を進行させると同時に、溶媒を蒸発させる方法を例示することができる。この方法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。加熱の条件はとくに限定されないが、200℃以下の温度で1秒〜200分の時間の範囲で行なうことが好ましい。
【0032】
また、化学的に脱水閉環する方法として、前記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒を加えることにより、脱水反応を起こし、有機溶媒を蒸発させる方法を例示することができる。これにより、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。脱水剤としては、たとえば、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物などがあげられる。また、触媒としては、たとえば、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などがあげられる。化学的に脱水閉環する際の条件は、100℃以下の温度が好ましく、有機溶媒の蒸発は、200℃以下の温度で約5分〜120分の時間の範囲で行なうことが好ましい。
【0033】
また、ポリイミド樹脂を得るための別の方法として、前記の熱的または化学的に脱水閉環する方法において、溶媒の蒸発を行なわない方法もある。具体的には、熱的イミド化処理または脱水剤による化学的イミド化処理を行なって得られるポリイミド溶液を貧溶媒中に投入して、ポリイミド樹脂を析出させ、未反応モノマーを取り除いて精製、乾燥させ、固形のポリイミド樹脂を得る方法である。貧溶媒としては、溶媒とは良好に混合するがポリイミドは溶解しにくい性質のものを選択する。例示すると、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトンなどがあげられるが、これらに限定されない。
【0034】
つぎに、減圧下で加熱してイミド化する方法であるが、このイミド化の方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去できるので、ポリアミド酸の加水分解を抑えることが可能であり、高分子量のポリイミドが得られる。また、この方法によれば、原料の酸二無水物中に不純物として存在する片側または両側開環物が再閉環するので、より一層の分子量の向上効果が期待できる。
【0035】
減圧下で加熱イミド化する方法の加熱条件は、80〜400℃が好ましいが、イミド化が効率よく行なわれ、しかも水が効率よく除かれる100℃以上がより好ましく、さらに好ましくは120℃以上である。最高温度は目的とするポリイミドの熱分解温度以下が好ましく、通常のイミド化の完結温度、すなわち150〜350℃程度が通常適用される。
【0036】
減圧する圧力の条件は、小さいほうが好ましいが、具体的には、9×104〜1×102Pa、好ましくは8×104〜1×102Pa、より好ましくは7×104〜1×102Paである。
【0037】
以上、ポリイミド樹脂について説明したが、市販の上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂も用いてもよい。本発明の積層体の表面Aに用いることができる、比較的入手しやすい上記一般式(6)を含むポリイミド樹脂の例として、信越化学工業株式会社製のXー22−8917、Xー22−8904、Xー22−8951、Xー22−8956、Xー22−8984、Xー22−8985、等を挙げることができる。尚、これらはポリイミド溶液である。
【0038】
本発明の層Aを構成する上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂は、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性に優れるという点から、熱可塑性ポリイミドが好ましい。ここで、本発明における熱可塑性ポリイミドとは、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こすものをいう。
【0039】
[表面aを有する層A]
表面aを有する層には、上述の上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂が必ず含有されているが、表面aを有する層には、他の成分を含有させることも可能である。他の成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂を適宜使用することができる。これによって、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性を損なうことなく、耐熱性を向上させることが可能となる。特に、熱硬化性樹脂を使用することは、層Aの耐熱性が向上するとともに、層Bや、高分子フィルムCとの接着性が向上するという利点も有するため、好ましい。熱硬化性樹脂は、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂100重量部に対して、3〜100重量部含むことが、耐熱性や接着性のバランスの取れた特性が得られることから好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、また、酸二無水物成分と、一般式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分とからなる熱可塑性ポリイミド樹脂とは構造の異なる熱可塑性ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、トリアジン樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などをあげることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。また、前記熱硬化性樹脂以外に、高分子鎖の側鎖または末端に、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基などの反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を使用することも可能である。
【0041】
また、表面aとダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性をより向上させる目的で、各種添加剤を高分子材料に添加、高分子材料表面に塗布等の方法で存在させることも可能である。具体的には有機チオール化合物などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0042】
また、表面aに微細配線形成を阻害しない程度の表面粗度を形成し、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性を高める目的で、各種有機フィラー、無機フィラーを添加することもできる。
【0043】
上述の他の成分は、微細配線形成に悪影響を及ぼす程に表面aの表面粗度を大きくしない、また、表面aとダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性を低下させない範囲で組み合わせることが重要であり、この点には注意を要する。
【0044】
表面aに含まれる上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂の割合は、30重量%〜100重量%であることが、表面粗度とダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性とのバランスが優れるという点から好ましい。
【0045】
尚、本発明の表面aとは、厚さが10Å以上を有する表面のことをいう。
【0046】
本発明の表面aは、表面粗度が小さい場合でもダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着強度が高いという利点を有する。ここで、本発明でいう表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さRaで表すことができる。算術平均粗さRaとは、JIS B 0601(平成6年2月1日改正版)に定義されている。特に本発明の算術平均粗さRaの数値は、光干渉式の表面構造解析装置で表面を観察により求められた数値を示す。本発明のカットオフ値とは、上記JIS B 0601に記載されているが、断面曲線(実測データ)から粗さ曲線を得る際に設定する波長を示す。即ち、カットオフ値が0.002mmで測定した値Raとは、実測データから0.002mmよりも長い波長を有する凹凸を除去した粗さ曲線から算出された算術平均粗さである。
【0047】
本発明の表面aの表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さRaで0.5μm未満であることが好ましい。従って、本発明における表面aは、微少な範囲の表面の粗さを観察した場合、非常に平滑な表面を有しているといえる。よって、例えばライン アンド スペースが10μm/10μm以下であるような微細配線を形成する場合でも、悪影響を及ぼすことはない。
この条件を満たす場合、特に本発明のダイレクトプレーティング用材料をプリント配線板用途で使用する際には、良好な微細配線形成性を有する。このような表面を有する層Aを形成するには、例えば、
(1)表面処理を行わない。
(2)支持体、あるいは合紙などの材料の、ダイレクトプレーティングを施すための層Aと接する面の表面粗度を適切に選択する。
(3)少なくともダイレクトプレーティングを施すための表面aを有する層Aを含む2層以上の層から構成されたシートの場合は、層Aに接する層の表面粗度を適切に選択する。
(4)層Aに含まれるポリイミド樹脂の組成や、層Aを形成する際の乾燥条件を適切に選択する。
などの方法を、適宜組み合わせればよい。
具体的には、サンドブラスト等の物理的な表面粗化や、アルカリ可溶性成分を配合し、アルカリ溶液で処理する等の化学的な表面粗化を実施しないことが好ましい。
また、本発明のダイレクトプレーティング用材料が支持体上に形成されたシートである場合は、支持体の表面粗度は十分に小さくすることが好ましい。さらに、該シートを用いて内層配線板と積層する場合は、積層の際に該シート上に対向させる合紙の表面粗度も十分に小さくすることが好ましい。従って、支持体あるいは合紙の表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下であることが好ましい。
また、少なくともダイレクトプレーティングを施すための表面aを有する層Aを含む2層以上の層から構成されたシートの場合は、層Aに接する層の表面粗度が、層Aの表面に影響する場合があるので、層Aに接する層の表面粗度も十分に小さくすることが好ましい。従って、層Aに接する層の表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下であることが好ましい。
また、ダイレクトプレーティングを施すための表面aの表面粗度は、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂に用いられる、酸二無水物成分やジアミン成分の種類や、配合比により変動する。例えば、上記一般式(6)で表されるジアミンを多く用いた場合、組み合わせる酸二無水物成分あるいはその他のジアミン成分の種類によっては、相分離を起こしてRaが大きくなる場合がある。また、上記一般式(6)で表されるポリイミド樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂をブレンドする場合、相分離を起こしてRaが大きくなる傾向にある。また、乾燥条件なども考慮する。本発明のダイレクトプレーティングを施すための表面aの表面粗度は、微少な範囲の表面の粗さが小さいものであるので、層Aに含まれる上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂の組成や、層Aの乾燥条件を組み合わせによって、その表面粗度は変動する。従って、ポリイミド樹脂の組成や、層Aの乾燥条件を種々変更してみて、目的とする表面粗度が得られていることを確認すればよい。
また、その他の成分を含有させた場合にも、配合量や樹脂の組み合わせによっては相分離を起こしてRaが大きくなる場合があるので、含有される他の成分の配合量や樹脂を種々変更してみて、目的とする表面粗度が得られていることを確認すればよい。
【0048】
本発明のダイレクトプレーティング用材料あるいは絶縁シートには、ダイレクトプレーティングを行う前に、デスミアなどのアルカリ処理を施す場合がある。従来公知の材料である、エポキシ樹脂材料などは、デスミアなどのアルカリ処理によって表面が粗化されてしまうのに対して、本発明のダイレクトプレーティングを施すための表面aには、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂が存在する場合、デスミアなどのアルカリ処理をしても、ほとんど表面が粗化されずに平滑に保つことができ、かつ、強固にダイレクトプレーティングにより形成された金属層が形成される。
【0049】
[表面aを有する単層シート]
ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを有し、かつ上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する単層シートについて説明する。例えば、ダイレクトプレーティングを施す表面aを形成する溶液を支持体上に流延塗布し、その後乾燥せしめることにより表面aを有するシートを製造する。このシートを内層配線板や高分子フィルム等の所望の材料上に積層することにより表面aを形成することができる。表面aを形成する溶液として、ポリイミド樹脂を含有する溶液を用いる場合は、該溶液を支持体上に流延塗布し、その後熱風オーブン等を用いて乾燥する。乾燥条件は特に制限はないが、樹脂を溶解している溶媒が十分に揮発するような条件で乾燥することが好ましい。また、シートの発泡を抑えるために、温度を段階的に変化させて乾燥させても良い。
表面aを形成する溶液として、ポリアミド酸を含有する溶液を用いる場合は、該溶液を支持体上に流延塗布し、その後熱風オーブン等を用いて乾燥する。この場合は、乾燥の際にイミド化まで行うのが製造効率がよく好ましいため、最終的に150〜400℃の温度で乾燥とイミド化を行うのが好ましい。
単層シートの厚みは、ダイレクトプレーティングとの接着性や、回路埋め込み性の観点から、2〜100μmであることが好ましい。
【0050】
(その他の層)
本発明のダイレクトプレーティング用材料は、表面aを有しさえすればいかなる構成からなる材料であっても構わない。例えば、本発明のダイレクトプレーティング用材料をプリント配線板、特にビルドアップ配線板等のリジッドプリント配線板に適用する場合、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する単層シートであっても良いし、表面aを有する層Aと、形成された回路と対向させるための層Bとから構成される材料であっても良いし、表面aを有する層A/高分子フィルムC/層Bとから構成される材料であっても良い。また、本発明のダイレクトプレーティング用材料をプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板に適用する場合、表面aを有する層A/高分子Cとから構成される材料であっても良いし、表面aを有する層A/高分子フィルムC/表面aを有する層Aとから構成される材料であっても良い。
【0051】
層Bは、形成された回路を有する表面に対して積層する際、回路間に層Bが流動して、回路を埋め込むことができる、優れた加工性が必要である。一般に、熱硬化性樹脂は上記加工性に優れており、層Bには熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。この熱硬化性樹脂組成物としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、シアナートエステル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を適切な熱硬化剤、硬化触媒と組み合わせた熱硬化性樹脂組成物として適用可能である。これらの熱硬化性樹脂組成物に更に熱可塑性高分子を添加することも好ましく実施可能であり、例えばエポキシ樹脂とフェノキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物やエポキシ樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物、シアナート樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物等は好ましく実施可能である。この中でも、ダイレクトプレーティング用材料として要求される諸特性バランスに優れるエポキシ樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が最も好ましい。また、低熱膨張性発現のため、各種フィラーを組み合わせることも可能である。
【0052】
高分子フィルムCとしては、特に限定はなく、あらゆる高分子フィルムを使用することが可能であるが、耐熱性、低熱膨張性の観点から非熱可塑性ポリイミドフィルムが好ましい。
【0053】
(ダイレクトプレーティング)
本発明でいうダイレクトプレーティングとは、絶縁材料および/または導電性材料表面に導電化処理を行い、その後直接電解めっきによりめっきを行う方法を言う。
【0054】
導電化処理としては、特に限定は無く、いかなる導電化処理を施すことも可能であるが、本発明のダイレクトプレーティング用材料との密着性という観点から、パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることが好ましい。パラジウムによる導電化としては、パラジウムースズコロイド系や、スズフリーパラジウム系を用いる方法を挙げることができ、いずれも好ましく適用可能である。また、導電性ポリマーを用いる方法としては、ピロール誘導体のモノマーを過マンガン酸塩処理することによって、生成した酸化マンガンによる酸性下で酸化重合させることによって、次の電気銅めっきを行うに十分な導電性の膜を形成させる例を挙げることができる。カーボンを用いる方法としては、懸濁したカーボンブラックの溶液で表面を処理することにより、導電性のカーボンを静電気的に吸着させる方法を例示ことができる。
【0055】
電解めっきについては特に限定はないが、工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、電解銅めっき、電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは電解銅めっきである。
【0056】
尚、スミアの除去や密着性の向上といった観点から、ダイレクトプレーティング前にデスミア処理やクリーニング処理等の各種処理を施しても構わない。
(本発明の溶液)
本発明の溶液は、表面aを形成するために用いられることを特徴とする一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する溶液である。該溶液は、上述したように、ポリイミド溶液以外にも他の成分を含んでいても良く、またこれら樹脂成分を溶解するいかなる溶媒をも使用することができる。ここで溶解するとは、溶媒に対して樹脂成分が1重量%以上溶解することをいう。
【0057】
該溶液は、所望の材料上に浸漬、スプレーによるコーティング、スピンコート等公知の方法により塗布、乾燥することにより表面aを形成することができる。
【0058】
また、本発明の溶液は、表面aを形成するために用いられることを特徴とする一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸を含有する溶液である。該溶液は、上述したように、ポリアミド酸溶液以外にも他の成分を含んでいても良く、またこれら樹脂成分を溶解するいかなる溶媒をも使用することができる。ここで溶解するとは、溶媒に対して樹脂成分が1重量%以上溶解することをいう。
【0059】
該溶液は、所望の材料上に公知の方法により浸漬、スプレーによるコーティング、スピンコート等公知の方法により塗布、イミド化することにより表面Aを形成することができる。イミド化は、上述のように、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する熱的方法、脱水剤を用いて脱水する化学的方法のいずれも用いることができる。また、減圧下で加熱してイミド化する方法も用いることができる。この中でも、処理が簡便で製造効率が良い点から、熱処理して脱水する熱的方法によりイミド化する方法を好ましく用いることができる。
【0060】
(本発明のダイレクトプレーティング用材料の形態と製造方法)
次に本発明のダイレクトプレーティング用材料の製造方法について説明する
本発明の、ダイレクトプレーティング用材料の形態の1つは、ポリイミド樹脂を含有する溶液である。例えば、ダイレクトプレーティングを施すための表面Aを形成する上記溶液を製造し、該溶液を浸漬、スプレーによるコーティング、スピンコート等の公知の方法により、内層配線板や高分子フィルム等の所望の材料上に塗布、乾燥せしめて表面aを形成することができる。
本発明の、ダイレクトプレーティング用材料の形態の1つは、ポリアミド酸溶液である。例えば、ダイレクトプレーティングを施すための表面Aを形成する上記溶液を製造し、該溶液を浸漬、スプレーによるコーティング、スピンコート等の公知の方法により、内層配線板や高分子フィルム等の所望の材料上に塗布、イミド化せしめて表面aを形成することができる。
本発明のダイレクトプレーティング用材料の別の形態は、シートである。例えば、ダイレクトプレーティングを施す表面Aを形成する溶液を支持体上に流延塗布し、その後乾燥せしめることにより表面aを有するシートを製造する。このシートを内層配線板や高分子フィルム等の所望の材料上に積層することにより表面aを形成することができる。
尚、上述したように、本発明の表面Aとは、厚さが10Å以上を有する表面のことをいう。例えば、表面aを有する本発明のめっき材料がシート状である場合、表面aを構成する、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する材料からなるシートであってもよいし、少なくとも片方の表面aが上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂であるシートであってもよい。
以上、本発明のダイレクトプレーティング用材料の形態と使用方法について例示したが、これに限定されるものではない。
【0061】
<プリント配線板>
本発明のダイレクトプレーティング用材料は、プリント配線板用途に好ましく用いる事ができる。ここで、本発明のシート状のダイレクトプレーティング用材料を用いたプリント配線板を製造する方法として、順に、樹脂フィルム基材の付いたシート状のダイレクトプレーティング用材料、回路パターンが形成された内層基板を積層し、樹脂フィルム基材を剥離することにより露出する表面A表面に対しダイレクトプレーティングを行い、回路パターン用の金属層を得る事が可能である。
【0062】
上記において内層基板にフレキシブルプリント配線板を用いた場合、多層フレキシブル配線板を製造する事になり、また、ガラス−エポキシ基材等を用いたプリント配線板を用いた場合、多層リジッド配線板やビルドアップ配線板を製造する事になる。また、多層プリント配線板には垂直方向の電気的接続の為にヴィアの形成が必要であるが、本発明のプリント配線板においては、レーザー、メカニカルドリル、パンチング等の公知の方法でヴィアを形成し、ダイレクトプレーティング等の公知の方法で導電化することが可能であり、好ましく実施される。
【0063】
積層に際しては、熱プレス処理、真空プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、真空ラミネート処理、熱ロールラミネート処理、真空熱ロールラミネート処理等の熱圧着処理を行うことができる。中でも真空下での処理、すなわち真空プレス処理、真空ラミネート処理、真空熱ロールラミネート処理がより良好に回路間をボイド無く埋め込むことが可能であり、好ましく実施可能である。
【0064】
また、表面aとダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性を向上させる目的で、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層を形成後に加熱処理を施すことも可能である。
【実施例】
【0065】
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、本発明にかかるダイレクトプレーティング用材料の特性として、めっき銅との接着性、表面粗さRaは以下のように評価または算出した。
【0066】
〔接着性評価〕
表面aを有する層A/支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム)からなる絶縁シートを作製し、層Aとガラスエポキシ基板FR−4(商品番号:MCL−E−67、日立化成工業(株)社製;銅箔の厚さ50μm、全体の厚さ1.2mm)とを対向させ、温度170℃、圧力1MPa、真空下の条件で6分の加熱加圧を行った後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がして、130℃で10分、150℃で10分、180℃で30分加熱して、表面aを有する層A/FR−4からなる積層体を得た。その後、露出する表面aにデスミア、及び銅層の形成を行った。銅層の形成は、厚さ18μmを狙い、ダイレクトプレーティングにより行った。その後、180℃、30分の乾燥処理を行った後、JPCA−BU01−1998(社団法人日本プリント回路工業会発行)に従い、常態、及びプレッシャークッカー試験(PCT)後の接着強度を測定した。尚、デスミア、ダイレクトプレーティングは以下の表1、表2に記載の上村工業(株)製のプロセスで実施した。
常態接着強度:温度25℃、湿度50%の雰囲気下、24時間放置した後に測定した接着強度。
PCT後接着強度:温度121℃、湿度100%の雰囲気下、96時間放置した後に測定した接着強度。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

〔表面粗度Ra測定〕
上記接着性測定項目のサンプル作製手順において、ダイレクトプレーティングをする前の状態(デスミアまで行った状態)のサンプルを用い、表面aの表面粗度Raの測定を行った。測定は、光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製NewView5030システム)を用いて下記の条件で表面Aの算術平均粗さを測定した。
【0069】
(測定条件)
対物レンズ:50倍ミラウ イメージズーム:2
FDA Res:Normal
解析条件:
Remove:Cylinder
Filter:High Pass
Filter Low Waven:0.002mm
〔ポリイミド樹脂の合成例1〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、信越化学工業株式会社製KF−8010を62g(0.075mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15g(0.075mol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼ぶ)を投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)78g(0.15mol)を添加、20℃で約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂1を得た。
【0070】
〔ポリイミド樹脂の合成例2〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、信越化学工業株式会社製KF−8010を37g(0.05mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル21g(0.10mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)78g(0.15mol)を添加、20℃で約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂2を得た。
【0071】
〔ポリイミド樹脂の合成例3〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、イハラケミカル工業(株)製エラスマー1000Pを55g(0.045mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル21g(0.105mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)78g(0.15mol)を添加、20℃で約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂3を得た。
【0072】
〔ポリイミド樹脂の合成例4〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、イハラケミカル工業(株)製エラスマー1000Pを92g(0.075mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15g(0.075mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)78g(0.15mol)を添加、20℃で約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂4を得た。
【0073】
〔ポリイミド樹脂の合成例5〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン41g(0.143mol)と、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル1.6g(0.007mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、180分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂5を得た
〔層Aを形成する溶液の調合例1〕
ポリイミド樹脂1をジオキソランに溶解させ、層Aを形成する溶液(a)を得た。固形分濃度は15重量%となるようにした。
【0074】
〔層Aを形成する調合例2〕
ポリイミド樹脂2をジオキソランに溶解させ、層Aを形成する溶液(b)を得た。固形分濃度は15重量%となるようにした。
【0075】
〔層Aを形成する調合例3〕
ポリイミド樹脂3をジオキソランに溶解させ、層Aを形成する溶液(c)を得た。固形分濃度は15重量%となるようにした。
【0076】
〔層Aを形成する溶液の調合例4〕
ポリイミド樹脂4をジオキソランに溶解させ、層Aを形成する溶液(d)を得た。固形分濃度は15重量%となるようにした。
【0077】
〔層Aを形成する溶液の調合例5〕
ジャパンエポキシレジン(株)社製ビフェニル型エポキシ樹脂のYX4000H32.1g、和歌山精化工業(株)社製ジアミンのビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン17.9g、四国化成工業(株)社製のエポキシ硬化剤、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]ーエチル−s−トリアジン0.2gをジオキソランに溶解させ、溶液(e)を得た。該溶液の固形分濃度は50重量%とした。溶液(a)10gと溶液(e)1gを混合して層Aを形成する溶液(f)を得た。
【0078】
〔層Aを形成する溶液の調合例6〕
溶液(e)27gと日本石油化学製エポキシ変性ポリブタジエンゴム(E1000−8)10gとを混合し、層Aを形成する溶液(g)を得た。
【0079】
〔層B溶液の調合例1〕
ポリイミド樹脂5をジオキソランに溶解させ、層Aを形成する溶液(h)を得た。固形分濃度は15重量%となるようにした。溶液(h)83gと溶液(e)25gと(株)龍森社製のシリカ(アドマファインS0−C5、平均粒径=1.5μm)7.5gとを混合し、層B溶液(i)を得た。
【0080】
〔非熱可塑ポリイミドフィルムの製造例1〕
高分子フィルムとして、25μmの非熱可塑ポリイミドフィルムを作製して用いた。セパラブルフラスコ中でパラフェニレンジアミン(以下PDA)と4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下ODA)各1当量をDMFに溶解し、その後p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)(以下TMHQ)1当量を加え30分間攪拌した。その後、ピロメリット酸二無水物(以下PMDA)0.9当量を加え30分間攪拌した。次いで粘度上昇に注意しながらPMDAのDMF溶液(濃度7%)を加え23℃での粘度が2000〜3000ポイズになるように調整し、ポリアミド酸重合体のDMF溶液を得た。なおDMFの使用量はジアミン成分およびテトラカルボン酸二無水物成分のモノマー仕込濃度が、18重量%となるようにした。また、重合は40℃で行った。上記ポリアミド酸溶液100gに対して、無水酢酸10gとイソキノリン10gを添加し均一に攪拌した後、脱泡を行い、ガラス板上に流延塗布し、約110℃に約5分間乾燥後、ポリアミド酸塗膜をガラス板より剥し、自己支持性を持つゲルフィルムを得た。該ゲルフィルムをフレームに固定して、その後約200℃で約1分間、約300℃で約1分間、約400℃で約1分間、約500℃で約1分間加熱し、脱水閉環乾燥し、厚み約25μmの非熱可塑ポリイミドフィルム(j)を得た。このフィルムの熱膨張係数は12ppmであった。また、圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析測定(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こさなかったため、非熱可塑ポリイミドと判定した。また、得られた非熱可塑ポリイミドフィルムの表面粗度Raは0.01μmであった。
【0081】
〔実施例1〕
表3に示す層Aを形成する溶液を、支持体となる樹脂フィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製、表面粗度Ra=0.02μm)の表面上に流延塗布した。その後、熱風オーブンにて60℃、100℃、150℃の温度で各1分加熱乾燥させ、厚み25μmの層Aを有する支持体つき絶縁シートを得た。得られたシートを用いて、各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0082】
〔実施例2〜5〕
表3に示す層Aを形成する溶液に従い、実施例1と同様の手順で層Aを有する支持体付き絶縁シートを得た。得られたシートを各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0083】
〔実施例6〕
表3に示す層Aを形成する溶液を、支持体となる樹脂フィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製、表面粗度Ra=0.02μm)の表面上に流延塗布した。その後、熱風オーブンにて60℃の温度で1分加熱乾燥させ、厚み5μmの層Aを有する支持体つき絶縁シートを得た。
続いて層Aに表3に示す最外層B溶液を流延塗布し、熱風オーブンにて80℃、100℃、120℃、140℃、150℃の温度で、各1分ずつ加熱乾燥させ、層Aと層B両者を併せた厚みが40μmの支持体つき絶縁シートを得た。この、層B/層A/支持体からなる絶縁シートを用いて、層Bとガラスエポキシ基板FR−4とを対向させ、温度170℃、圧力1MPa、真空下の条件で6分の加熱加圧を行った後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がして、130℃で10分、150℃で10分、180℃で30分加熱して層B/層A/FR−4からなる積層体を得た。その後は実施例1と同様にして各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0084】
〔実施例7〕
表3に示す層Aを形成する溶液を、25μmのポリイミドフィルム(j)に流延塗布した。その後、熱風オーブンにて60℃の温度で1分加熱乾燥させ、厚み5μmの表面Aを有するポリイミドフィルムを得た。
続いて形成した層Aと反対のポリイミドフィルム面に表3に示す最外層B溶液を流延塗布し、熱風オーブンにて80℃、100℃、120℃、150℃、170℃の温度で、各1分ずつ加熱乾燥させ、5μmの表面A/25μmのポリイミドフィルム/35μmの層Bからなる構成の絶縁シートを得た。この、層B/ポリイミドフィルム/層Aからなる絶縁シートを用いて、層Bとガラスエポキシ基板FR−4とを対向させ、温度170℃、圧力1MPa、真空下の条件で6分の加熱加圧を行った後、合紙を引き剥がして、130℃で10分、150℃で10分、180℃で30分加熱して層B/層A/FR−4からなる積層体を得た。尚、積層の際の合紙としてはアフレックス50N(旭硝子(株)製)を用いた。その後は実施例1と同様にして各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0085】
〔比較例1〕
溶液(g)を用い、デスミアを行わなかった以外は実施例1と同様の手順で各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表4に示す。表4から分かるように接着強度が低い。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明にかかるダイレクトプレーティング用材料は、各種材料との接着性のみならず、ダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性が高い。さらには、本発明の表面粗度が小さい場合でもダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性が高いことから、特にプリント配線板の製造等に好適に用いることができる。それゆえ、本発明は、樹脂組成物や接着剤等の素材加工産業や各種化学産業だけでなく、各種電子部品の産業分野に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを少なくとも有するダイレクトプレーティング用材料であって、表面aの表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっており、かつ表面aは、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とするダイレクトプレーティング用材料。
【化1】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
【請求項2】
パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることを特徴とする請求項1に記載のダイレクトプレーティング用材料。
【請求項3】
ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを有し、かつ、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する単層シートであって、表面aの表面粗度はカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっていることを特徴とする単層シート。
【化2】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
【請求項4】
パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることを特徴とする請求項3に記載の単層シート。
【請求項5】
少なくともダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面aを有する層Aを含む2層以上の層から構成された絶縁シートであって、表面aの表面粗度はカットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下となっており、かつ層Aは、下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有することを特徴とする絶縁シート。
【化3】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
【請求項6】
パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることを特徴とする請求項5に記載の絶縁シート。
【請求項7】
請求項3記載の単層シートまたは、請求項5記載の絶縁シートの、層A上に金属層が形成されていることを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項3記載の単層シートまたは、請求項5記載の絶縁シートを用いてなるプリント配線板。
【請求項9】
下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含有する溶液であって、請求項1に記載の表面aを形成するために用いられることを特徴とするポリイミド樹脂を含有する溶液。
【化4】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)
【請求項10】
下記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸を含有する溶液であって、請求項1に記載の表面aを形成するために用いられることを特徴とするポリアミド酸を含有する溶液。
【化5】

(式中、R1およびR3は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2は、CX2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3〜100であり、mは1以上の整数である。)

【公開番号】特開2007−106951(P2007−106951A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301354(P2005−301354)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】