説明

溶融金属吐出装置

【課題】半田滴が酸化されることを不活性ガスの供給によって防止しつつも、着弾位置の精度を従来よりも向上し得る溶融金属吐出装置を得る。
【解決手段】ノズルプレート4は、平板状のプレート部42と、プレート部42の底面の中央部から下方に向けて先細り状に突出した突出部41とを有している。突出部41の下端には、半田滴8が滴下される吐出口5が規定されている。供給パイプ20から供給された窒素ガスは、突出部41の側面で受け止められた後、半田滴8の吐出方向(即ち下方)に向きを変えて噴出される。従って、半田滴8の吐出方向が窒素ガスによって曲げられてしまう事態を回避でき、吐出口5から滴下された半田滴8が酸化されることを防止しつつも、半田滴8の着弾位置の精度を向上することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属吐出装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属吐出装置は、LSIなどの半導体部品を実装するにあたって、半田滴などの溶融金属をノズルの吐出口から滴下して、半導体チップや基板上のランドにバンプを形成するための装置である。溶融金属吐出装置においては、吐出口から滴下された半田滴が空気中を一時的に落下するため、落下の際に半田滴の表面が酸化されてしまい、その結果として接合不良が発生するなどの不都合があった。
【0003】
かかる不都合を回避するため、下記特許文献1に開示された従来の溶融金属吐出装置では、平板状のノズルプレートの底面が筒状のカバーで覆われ、カバーの側面に差し込まれた不活性ガス導入管からカバー内に窒素ガスが供給されている。
【0004】
また、上記不都合を回避するために、下記特許文献2に開示された従来の溶融金属吐出装置では、平板状のノズルプレートを下方から支持する支持板が、半田滴の吐出口を露出しつつ設けられており、吐出口に対して窒素ガスを供給するための供給パイプが、支持板の内部に埋め込まれている。そして、供給パイプから供給された窒素ガスが、吐出口から滴下された半田滴に直接噴き付けられないようにするために、所定の箇所にスリットを有する複数の障壁が吐出口の周囲に設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−294591号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−334654号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の溶融金属吐出装置には、以下のような問題がある。第1に、吐出口から滴下された半田滴に窒素ガスが側方から直接噴き付けられるため、半田滴の吐出方向が窒素ガスによって曲げられてしまう。その結果、狙った箇所に半田滴が着弾せず、所望の箇所にバンプを形成できない。つまり、着弾位置の精度が悪化する。第2に、ノズルプレートの底面がカバーによって覆われているため、バンプを形成する対象物から吐出口までの距離が長くなる。このことも、着弾位置の精度を悪化させる要因となる。第3に、ノズルプレートの下方に保持板が設けられていないため、ダイアフラムによる上方からの押圧力によってノズルプレートが変形してしまい、吐出に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
これに対し、上記特許文献2に開示された従来の溶融金属吐出装置によると、ノズルプレートの下方に保持板が設けられているため、ダイアフラムによる上方からの押圧力が加わってもノズルプレートが変形することはない。従って、上記特許文献1に開示された従来の溶融金属吐出装置における、上記第3の問題を回避することができる。また、上記特許文献2に開示された従来の溶融金属吐出装置によると、吐出口の周囲に障壁が設けられているため、吐出口から滴下された半田滴に窒素ガスが直接噴き付けられることはない。従って、上記特許文献1に開示された従来の溶融金属吐出装置における、上記第1の問題を緩和することができる。さらに、上記特許文献2に開示された従来の溶融金属吐出装置によると、供給パイプが支持板の内部に埋め込まれているため、バンプを形成する対象物から吐出口までの距離を短くできる。従って、上記特許文献1に開示された従来の溶融金属吐出装置における、上記第2の問題を緩和することができる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示された従来の溶融金属吐出装置によっても、依然として以下のような問題が残る。第1に、吐出口の周囲に設けられた障壁によって、吐出口から滴下された半田滴に窒素ガスが直接噴き付けられることは防止されるが、依然として半田滴は吐出方向と垂直な方向からの窒素ガスの流れの影響を受けるため、吐出方向が完全には安定しない。第2に、供給パイプが支持板の内部に埋め込まれているため、バンプを形成する対象物から吐出口までの距離を短くできるが、その距離は保持板の厚さ以下とすることが不可能であり、着弾位置の精度の向上にも限界がある。
【0009】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、半田滴が酸化されることを不活性ガスの供給によって防止しつつも、着弾位置の精度を従来よりも向上し得る溶融金属吐出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る溶融金属吐出装置は、溶融金属の貯蔵室に貯蔵された溶融金属を上方から押圧することによって吐出口から滴下する溶融金属吐出装置であって、貯蔵室の底面を規定する上面を有するプレート部と、プレート部の底面の一部から下方に向けて突出し、下端に吐出口が規定された突出部とを有するノズルプレートと、突出部の側方から突出部の側面に向けて不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る溶融金属吐出装置によれば、吐出口から滴下された溶融金属が酸化されることを不活性ガスの供給によって防止しつつも、着弾位置の精度を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶融金属吐出装置の構造を示す断面図である。また、図2は、図1に示した保持板9の構造を示す上面図である。図1は、図2に示したラインI−Iに沿った位置に関する保持板9の断面構造を、他の構成部品とともに示したものに相当する。また、図3は、図1に示したノズルプレート4と保持板9との位置関係を示した斜視図である。
【0013】
図1を参照して、ボディ1は、側壁部101と、底壁部102と、薄板部3とを有している。底壁部102の底面内には、外部から供給された溶融半田(溶融金属)6を貯蔵するための貯蔵室2が形成されている。貯蔵室2の上面には薄板部3が形成されており、薄板部3はダイアフラムとして機能する。
【0014】
底壁部102の底面には、ノズルプレート4が取り付けられている。ノズルプレート4は、平板(円板)状のプレート部42と、プレート部42の底面の中央部から下方に向けて先細り状に突出した突出部41とを有している。換言すれば、突出部41は、上部から下部に向かって直径が徐々に小さくなる円錐形状をなしている。プレート部42の底面からの突出部41の突出量は、保持板9の板厚にほぼ等しい。プレート部42の上面は、貯蔵室2の底面を規定している。突出部41の下端には、半田滴8が滴下される吐出口5が規定されている。つまり、吐出口5は、プレート部42の底面よりも下方に規定されている。
【0015】
ノズルプレート4の底面には、下方からノズルプレート4を保持するための円板状の保持板9が取り付けられている。保持板9の上面は、プレート部42の底面に接触している。保持板9の構造については、後に詳述する。
【0016】
薄板部3上には、圧電素子7が薄板部3の上面に密着して取り付けられている。圧電素子7に制御電圧を印加すると、圧電素子7が変形することによって薄板部3が下方に押し込まれる。これにより、貯蔵室2内に貯蔵されている溶融半田6が薄板部3によって下方に押圧され、その結果、吐出口5から半田滴8が滴下される。本実施の形態1に係る溶融金属吐出装置によると、ノズルプレート4の下方に保持板9が設けられている。そのため、薄板部3による上方からの押圧力が加わってもノズルプレート4が変形することはなく、ノズルプレート4の変形が吐出に及ぼす悪影響を回避することができる。
【0017】
図2,3を参照して、保持板9には、突出部41に対応する箇所(中央部)に、円形の開口91が形成されている。開口91の底部には、フランジ93が形成されている。保持板9の上面内には、開口91に繋がる溝92が形成されている。溝92内には、窒素ガス等の不活性ガスを外部の窒素ガス供給装置(図示しない)から供給するための供給パイプ20が埋め込まれている。図2,3には2本の供給パイプ201,202が溝92内に埋め込まれている例を示したが、1本の供給パイプのみが埋め込まれていてもよい。また、保持板9の上面とノズルプレート4の底面とを隙間なく密着できるのであれば、供給パイプ20を設けず、窒素ガスの供給路としての溝92を形成するだけでもよい。
【0018】
図1を参照して、窒素ガス供給装置から供給パイプ20を介して供給された窒素ガスは、突出部41の側方から突出部41の側面に向けて噴き付けられる。その後、窒素ガスは、突出部41の円錐形状に起因して、開口91内で突出部41の側面を回り込みながら、フランジ93の先端と突出部41の側面との隙間から下方に向かって噴出する。
【0019】
このように本実施の形態1に係る溶融金属吐出装置によると、供給パイプ20から供給された窒素ガスは、突出部41の側面で受け止められた後、半田滴8の吐出方向(即ち下方)に向きを変えて噴出される。従って、半田滴8の吐出方向が窒素ガスによって曲げられてしまう事態を回避でき、吐出口5から滴下された半田滴8が酸化されることを防止しつつも、半田滴8の着弾位置の精度を向上することが可能となる。
【0020】
また、ノズルプレート4が突出部41を有し、突出部41の下端に吐出口5が規定されているため、バンプを形成する対象物(半導体チップ等)から吐出口5までの距離を短くできる。従って、半田滴8の着弾位置の精度をさらに向上することが可能となる。
【0021】
さらに、保持板9の上面内に溝92を形成するという比較的簡単な構造によって窒素ガスの供給手段を実現できるため、溶融金属吐出装置の加工及び組み立てが複雑化することを最小限に抑えることができる。
【0022】
図4〜9は、ノズルプレート4及び保持板9の変形例をそれぞれ示す断面図である。
【0023】
図4を参照して、図1に示した突出部41の代わりに、外形が円筒形状の突出部41aを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0024】
図5を参照して、図1に示した突出部41の代わりに、側面が階段状の突出部41bを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0025】
図6を参照して、図1に示した突出部41の代わりに、プレート部42の底面からの突出量が保持板9の板厚よりも小さい突出部41cを採用してもよい。かかる構造によると、上記の効果に加えて、図1に示した貯蔵室2から吐出口5までの距離が短くなるため、吐出口5に到るまでに溶融半田6の温度が低下して流動性が低くなるという悪影響を緩和することが可能となる。
【0026】
図7を参照して、図1に示した突出部41の代わりに、プレート部42の底面からの突出量が保持板9の板厚よりも大きい突出部41dを採用してもよい。かかる構造によると、上記の効果に加えて、バンプを形成する対象物から吐出口5までの距離をさらに短くできるため、半田滴8の着弾位置の精度を極限まで向上することが可能となる。但し、温度低下に起因して溶融半田6が吐出口5付近で凝固することを回避すべく、例えば突出部41dの側壁内にヒータを埋設する等の対策を施すことが望ましい。
【0027】
図8を参照して、図1に示した保持板9に代えて、フランジ93が形成されていない保持板9aaを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0028】
図9を参照して、図1に示した保持板9に代えて、突出部41の形状に合わせて内側面がテーパ状の保持板9bbを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0029】
実施の形態2.
図10は、図2に対応させて、本発明の実施の形態2に係る溶融金属吐出装置が備える保持板9aの構造を示す上面図である。図1に示した突出部41に関して対称な複数の方向から窒素ガスが突出部41に向けて供給されるように、保持板9aの上面内に複数の溝92,92aが形成されている。つまり、開口91の中心点を通る垂直軸に関して点対称な方向に、溝92,92aの先端として規定される窒素ガスの噴出口が設けられている。図10に示した例では、突出部41の右方向に溝92が形成されており、突出部41の左方向に溝92aが形成されている。その結果、溝92の先端(左端)として規定される窒素ガスの噴出口と、溝92aの先端(右端)として規定される窒素ガスの噴出口とが、開口91の中心点を挟んで180°対向している。
【0030】
溝92内には供給パイプ20が配設されており、溝92a内には供給パイプ21が配設されている。窒素ガス供給装置から供給パイプ20を介して供給された窒素ガスは、突出部41の右方向から突出部41の右側面に向けて噴き付けられ、一方、窒素ガス供給装置から供給パイプ21を介して供給された窒素ガスは、突出部41の左方向から突出部41の左側面に向けて噴き付けられる。
【0031】
なお、図10には2本の溝92,92aが形成されている例を示したが、3本以上の溝が形成されてもよい。
【0032】
図11は、図2に対応させて、本発明の実施の形態2に係る溶融金属吐出装置が備える保持板9bの構造を示す上面図である。図1に示した突出部41に関して対称な複数の方向から窒素ガスが供給されるように、溝92が、溝92bと溝92cとに分岐されている。溝92b,92cは、いずれも保持板9bの上面内に形成されている。図11に示した例では、突出部41の紙面上方向に溝92bが形成されており、突出部41の紙面下方向に溝92cが形成されている。その結果、溝92bの先端(紙面下端)として規定される窒素ガスの噴出口と、溝92cの先端(紙面上端)として規定される窒素ガスの噴出口とが、開口91の中心点を挟んで180°対向している。
【0033】
窒素ガス供給装置から供給パイプ201を介して供給された窒素ガスは、溝92bを介して突出部41の紙面上方向から突出部41の紙面上側面に向けて噴き付けられ、一方、窒素ガス供給装置から供給パイプ202を介して供給された窒素ガスは、溝92cを介して突出部41の紙面下方向から突出部41の紙面下側面に向けて噴き付けられる。
【0034】
なお、図11には溝92が2本の溝92b,92cに分岐されている例を示したが、溝92が3本以上の溝に分岐されてもよい。
【0035】
このように本実施の形態2に係る溶融金属吐出装置によると、図10に示したように複数の溝92,92aが形成されることにより、あるいは図11に示したように溝92が複数の溝92b,92cに分岐されることにより、突出部41に関して対称な複数の方向から窒素ガスを突出部41に向けて供給することができる。その結果、吐出口5から滴下された半田滴8に噴き付けられる窒素ガスの噴出方向に偏りがなくなり、半田滴8の吐出方向をより一層安定させることが可能となる。
【0036】
実施の形態3.
図12は、図2に対応させて、本発明の実施の形態3に係る溶融金属吐出装置が備える保持板9cの構造を示す上面図である。また、図13は、図12に示したラインXIII−XIIIに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【0037】
図12を参照して、保持板9cには、図1に示した吐出口5に関して対称な複数の方向から窒素ガスが噴出されるように、複数の障壁91a〜91cが突出部41の周囲に部分的に形成されている。互いに隣接する障壁91a〜91c同士の隙間には、テーパ状のスリット11a〜11cが形成されている。図12に示した例では、3個のスリット11a〜11cが互いに120°ずつずれて形成されている。障壁91a〜91cについても同様である。
【0038】
図13を参照して、障壁91cの先端は、突出部41の側面に接触している。これにより、障壁91cが形成されている箇所では、供給パイプ20から突出部41の側面に噴き付けられた窒素ガスは、障壁91cによって下方への進行が妨げられて、吐出口5の方向には噴出しない。同様に、障壁91a,91bが形成されている箇所においても、窒素ガスは吐出口5の方向には噴出しない。
【0039】
一方、図12,13を参照して、スリット11a〜11cが形成されている箇所では、供給パイプ20から突出部41に供給された窒素ガスは、噴出口として機能するスリット11a〜11cを介して下方に噴出する。
【0040】
なお、図12には3個の障壁91a〜91cと3個のスリット11a〜11cとが形成されている例を示したが、障壁及びスリットの各個数は3個に限定されるものではない。
【0041】
図14は、図2に対応させて、本発明の実施の形態3に係る溶融金属吐出装置が備える保持板9dの構造を示す上面図である。また、図15は、図14に示したラインXV−XVに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【0042】
図14を参照して、保持板9dには、図1に示した吐出口5に関して対称な複数の方向から窒素ガスが噴出されるように、複数の障壁91d〜91fが突出部41の周囲に部分的に形成されている。互いに隣接する障壁91d〜91f同士の隙間には、スリット11d〜11fが形成されている。図14に示した例では、3個のスリット11d〜11fが互いに120°ずつずれて形成されている。障壁91d〜91fについても同様である。
【0043】
図15を参照して、障壁91fの先端は、ノズルプレート4の底面に接触している。これにより、障壁91fが形成されている箇所では、供給パイプ20から供給された窒素ガスは、障壁91fによって進行が妨げられて、吐出口5の方向には噴出しない。同様に、障壁91d,91eが形成されている箇所においても、窒素ガスは吐出口5の方向には噴出しない。
【0044】
一方、図14,15を参照して、スリット11d〜11fが形成されている箇所では、供給パイプ20から供給された窒素ガスは、噴出口として機能するスリット11d〜11fを介して下方に噴出する。
【0045】
なお、図14には3個の障壁91d〜91fと3個のスリット11d〜11fとが形成されている例を示したが、障壁及びスリットの各個数は3個に限定されるものではない。
【0046】
このように本実施の形態4に係る溶融金属吐出装置によると、図12に示したように障壁91a〜91c及びスリット11a〜11cが形成されることにより、あるいは図14に示したように障壁91d〜91f及びスリット11d〜11fが形成されることにより、吐出口5に関して対称な複数の方向から窒素ガスを吐出口5に向けて噴出することができる。その結果、吐出口5から滴下された半田滴8に噴き付けられる窒素ガスの噴出方向に偏りがなくなり、半田滴8の吐出方向をより一層安定させることが可能となる。
【0047】
実施の形態4.
図16は、本発明の実施の形態4に係る溶融金属吐出装置の構造を示す断面図である。また、図17は、図16に示したノズルプレート50の構造を示す底面図である。図16は、図17に示したラインXVI−XVIに沿った位置に関するノズルプレート50の断面構造を、他の構成部品とともに示したものに相当する。また、図18は、図16に示したノズルプレート50と保持板60との位置関係を示した斜視図である。
【0048】
図16を参照して、底壁部102の底面には、ノズルプレート50が取り付けられている。ノズルプレート50は、周縁部における板厚が中央部における板厚よりも厚い平板(円板)状のプレート部52と、プレート部52の底面の中央部から下方に向けて先細り状に突出した突出部51とを有している。換言すれば、突出部51は、上部から下部に向かって直径が徐々に小さくなる円錐形状をなしている。周縁部におけるプレート部52の底面からの突出部51の突出量は、保持板60の板厚にほぼ等しい。プレート部52の上面は、貯蔵室2の底面を規定している。突出部51の下端には、半田滴8が滴下される吐出口5が規定されている。つまり、吐出口5は、プレート部52の底面よりも下方に規定されている。ノズルプレート50の構造については、後に詳述する。
【0049】
ノズルプレート50の底面には、下方からノズルプレート50を保持するための円板状の保持板60が取り付けられている。そのため、薄板部3による上方からの押圧力が加わってもノズルプレート50が変形することはなく、ノズルプレート50の変形が吐出に及ぼす悪影響を回避することができる。
【0050】
図17,18を参照して、ノズルプレート50の底面内には、突出部51の周囲に、円形の開口70が形成されている。また、ノズルプレート50の底面内には、開口70に繋がる溝80が形成されている。溝80内には、窒素ガス供給装置から窒素ガスを供給するための供給パイプ20が埋め込まれている。図17,18には2本の供給パイプ201,202が溝80内に埋め込まれている例を示したが、1本の供給パイプのみが埋め込まれていてもよい。また、保持板60の上面とノズルプレート50の底面とを隙間なく密着できるのであれば、供給パイプ20を設けず、窒素ガスの供給路としての溝80を形成するだけでもよい。
【0051】
保持板60には、突出部51に対応する箇所(中央部)に、円形の開口61が形成されている。図16を参照して、開口70の直径は開口61の直径よりも大きく、保持板60のうちプレート部52からはみ出す部分は、フランジ65として機能する。
【0052】
図16を参照して、窒素ガス供給装置から供給パイプ20を介して供給された窒素ガスは、突出部51の側方から突出部51の側面に向けて噴き付けられる。その後、窒素ガスは、突出部51の円錐形状に起因して、開口70内で突出部51の側面を回り込みながら、フランジ65の先端と突出部51の側面との隙間から下方に向かって噴出する。
【0053】
このように本実施の形態4に係る溶融金属吐出装置によると、上記実施の形態1と同様に、供給パイプ20から供給された窒素ガスは、突出部51の側面で受け止められた後、半田滴8の吐出方向(即ち下方)に向きを変えて噴出される。従って、半田滴8の吐出方向が窒素ガスによって曲げられてしまう事態を回避でき、吐出口5から滴下された半田滴8が酸化されることを防止しつつも、半田滴8の着弾位置の精度を向上することが可能となる。
【0054】
また、上記実施の形態1と同様に、ノズルプレート50が突出部51を有し、突出部51の下端に吐出口5が規定されているため、バンプを形成する対象物から吐出口5までの距離を短くできる。従って、半田滴8の着弾位置の精度をさらに向上することが可能となる。
【0055】
さらに、ノズルプレート50の底面内に溝80を形成するという比較的簡単な構造によって窒素ガスの供給手段を実現できるため、溶融金属吐出装置の加工及び組み立てが複雑化することを最小限に抑えることができる。
【0056】
図19〜24は、ノズルプレート50及び保持板60の変形例をそれぞれ示す断面図である。
【0057】
図19を参照して、図16に示した突出部51の代わりに、外形が円筒形状の突出部51aを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0058】
図20を参照して、図16に示した突出部51の代わりに、側面が階段状の突出部51bを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0059】
図21を参照して、図16に示した突出部51の代わりに、周縁部におけるプレート部52の底面からの突出量が保持板60の板厚よりも小さい突出部51cを採用してもよい。かかる構造によると、上記の効果に加えて、図16に示した貯蔵室2から吐出口5までの距離が短くなるため、吐出口5に到るまでに溶融半田6の温度が低下して流動性が低くなるという悪影響を緩和することが可能となる。
【0060】
図22を参照して、図16に示した突出部51の代わりに、周縁部におけるプレート部52の底面からの突出量が保持板60の板厚よりも大きい突出部51dを採用してもよい。かかる構造によると、上記の効果に加えて、バンプを形成する対象物から吐出口5までの距離をさらに短くできるため、半田滴8の着弾位置の精度を極限まで向上することが可能となる。但し、温度低下に起因して溶融半田6が吐出口5付近で凝固することを回避すべく、例えば突出部51dの側壁内にヒータを埋設する等の対策を施すことが望ましい。
【0061】
図23を参照して、開口70の直径と開口61の直径とを互いに等しくすることにより、図16に示した保持板60に代えて、フランジ65が形成されていない保持板60aを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0062】
図24を参照して、図16に示した保持板60に代えて、突出部51の形状に合わせて内側面がテーパ状の保持板60bを採用してもよい。かかる構造によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0063】
実施の形態5.
図25は、図17に対応させて、本発明の実施の形態5に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレート50aの構造を示す底面図である。突出部51に関して対称な複数の方向から窒素ガスが突出部51に向けて供給されるように、保持板50aの底面内に複数の溝80,80aが形成されている。つまり、開口70の中心点を通る垂直軸に関して点対称な方向に、溝80,80aの先端として規定される窒素ガスの噴出口が設けられている。図25に示した例では、突出部51の右方向に溝80が形成されており、突出部51の左方向に溝80aが形成されている。その結果、溝80の先端(左端)として規定される窒素ガスの噴出口と、溝80aの先端(右端)として規定される窒素ガスの噴出口とが、開口70の中心点を挟んで180°対向している。
【0064】
溝80内には供給パイプ20が配設されており、溝80a内には供給パイプ21が配設されている。窒素ガス供給装置から供給パイプ20を介して供給された窒素ガスは、突出部51の右方向から突出部51の右側面に向けて噴き付けられ、一方、窒素ガス供給装置から供給パイプ21を介して供給された窒素ガスは、突出部51の左方向から突出部51の左側面に向けて噴き付けられる。
【0065】
なお、図25には2本の溝80,80aが形成されている例を示したが、3本以上の溝が形成されてもよい。
【0066】
図26は、図17に対応させて、本発明の実施の形態5に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレート50bの構造を示す底面図である。突出部51に関して対称な複数の方向から窒素ガスが供給されるように、溝80が、溝80bと溝80cとに分岐されている。溝80b,80cは、いずれもノズルプレート50bの底面内に形成されている。図26に示した例では、突出部51の紙面上方向に溝80bが形成されており、突出部51の紙面下方向に溝80cが形成されている。その結果、溝80bの先端(紙面下端)として規定される窒素ガスの噴出口と、溝80cの先端(紙面上端)として規定される窒素ガスの噴出口とが、開口70の中心点を挟んで180°対向している。
【0067】
窒素ガス供給装置から供給パイプ202を介して供給された窒素ガスは、溝80bを介して突出部51の紙面上方向から突出部51の紙面上側面に向けて噴き付けられ、一方、窒素ガス供給装置から供給パイプ201を介して供給された窒素ガスは、溝80cを介して突出部51の紙面下方向から突出部51の紙面下側面に向けて噴き付けられる。
【0068】
なお、図26には溝80が2本の溝80b,80cに分岐されている例を示したが、溝80が3本以上の溝に分岐されてもよい。
【0069】
このように本実施の形態5に係る溶融金属吐出装置によると、図25に示したように複数の溝80,80aが形成されることにより、あるいは図26に示したように溝80が複数の溝80b,80cに分岐されることにより、突出部51に関して対称な複数の方向から窒素ガスを突出部51に向けて供給することができる。その結果、上記実施の形態2と同様に、吐出口5から滴下された半田滴8に噴き付けられる窒素ガスの噴出方向に偏りがなくなり、半田滴8の吐出方向をより一層安定させることが可能となる。
【0070】
実施の形態6.
図27は、図17に対応させて、本発明の実施の形態6に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレート50cの構造を示す底面図である。また、図28は、図27に示したラインXXVIII−XXVIIIに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【0071】
図27を参照して、ノズルプレート50cには、吐出口5に関して対称な複数の方向から窒素ガスが噴出されるように、複数の障壁85a〜85cが突出部51の周囲に部分的に形成されている。互いに隣接する障壁85a〜85c同士の隙間には、スリット61a〜61cが形成されている。図27に示した例では、3個のスリット61a〜61cが互いに120°ずつずれて形成されている。障壁85a〜85cについても同様である。
【0072】
図28を参照して、障壁85cの先端は、保持板60の側面に接触している。これにより、障壁85cが形成されている箇所では、供給パイプ20から突出部51の側面に噴き付けられた窒素ガスは、障壁85cによって下方への進行が妨げられて、吐出口5の方向には噴出しない。同様に、障壁85a,85bが形成されている箇所においても、窒素ガスは吐出口5の方向には噴出しない。
【0073】
一方、図27,28を参照して、スリット61a〜61cが形成されている箇所では、供給パイプ20から突出部51に供給された窒素ガスは、噴出口として機能するスリット61a〜61cを介して下方に噴出する。
【0074】
なお、図27には3個の障壁85a〜85cと3個のスリット61a〜61cとが形成されている例を示したが、障壁及びスリットの各個数は3個に限定されるものではない。
【0075】
図29は、図17に対応させて、本発明の実施の形態6に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレート50dの構造を示す底面図である。また、図30は、図29に示したラインXXX−XXXに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【0076】
図29を参照して、ノズルプレート50dには、吐出口5に関して対称な複数の方向から窒素ガスが噴出されるように、複数の障壁85d〜85fが突出部51の周囲に部分的に形成されている。互いに隣接する障壁85d〜85f同士の隙間には、スリット61d〜61fが形成されている。図29に示した例では、3個のスリット61d〜61fが互いに120°ずつずれて形成されている。障壁85d〜85fについても同様である。
【0077】
図30を参照して、障壁85fの上端は、ノズルプレート50dの底面に固定されており、障壁85fの下端は、保持板60の上面に接触している。これにより、障壁85fが形成されている箇所では、供給パイプ20から供給された窒素ガスは、障壁85fによって進行が妨げられて、吐出口5の方向には噴出しない。同様に、障壁85d,85eが形成されている箇所においても、窒素ガスは吐出口5の方向には噴出しない。
【0078】
一方、図29,30を参照して、スリット61d〜61fが形成されている箇所では、供給パイプ20から供給された窒素ガスは、噴出口として機能するスリット61d〜61fを介して下方に噴出する。
【0079】
なお、図29には3個の障壁85d〜85fと3個のスリット61d〜61fとが形成されている例を示したが、障壁及びスリットの各個数は3個に限定されるものではない。
【0080】
このように本実施の形態6に係る溶融金属吐出装置によると、図27に示したように障壁85a〜85c及びスリット61a〜61cが形成されることにより、あるいは図29に示したように障壁85d〜85f及びスリット61d〜61fが形成されることにより、吐出口5に関して対称な複数の方向から窒素ガスを吐出口5に向けて噴出することができる。その結果、上記実施の形態3と同様に、吐出口5から滴下された半田滴8に噴き付けられる窒素ガスの噴出方向に偏りがなくなり、半田滴8の吐出方向をより一層安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1に係る溶融金属吐出装置の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した保持板の構造を示す上面図である。
【図3】図1に示したノズルプレートと保持板との位置関係を示した斜視図である。
【図4】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図5】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図6】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図7】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図8】保持板の変形例を示す断面図である。
【図9】保持板の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る溶融金属吐出装置が備える保持板の構造を示す上面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る溶融金属吐出装置が備える保持板の構造を示す上面図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る溶融金属吐出装置が備える保持板の構造を示す上面図である。
【図13】図12に示したラインXIII−XIIIに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る溶融金属吐出装置が備える保持板の構造を示す上面図である。
【図15】図14に示したラインXV−XVに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る溶融金属吐出装置の構造を示す断面図である。
【図17】図16に示したノズルプレートの構造を示す底面図である。
【図18】図16に示したノズルプレートと保持板との位置関係を示した斜視図である。
【図19】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図20】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図21】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図22】ノズルプレートの変形例を示す断面図である。
【図23】保持板の変形例を示す断面図である。
【図24】保持板の変形例を示す断面図である。
【図25】本発明の実施の形態5に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレートの構造を示す底面図である。
【図26】本発明の実施の形態5に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレートの構造を示す底面図である。
【図27】本発明の実施の形態6に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレートの構造を示す底面図である。
【図28】図27に示したラインXXVIII−XXVIIIに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【図29】本発明の実施の形態6に係る溶融金属吐出装置が備えるノズルプレートの構造を示す底面図である。
【図30】図29に示したラインXXX−XXXに沿った位置に関する断面構造を、他の構成部品とともに示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
2 貯蔵室、4,50,50a〜50d ノズルプレート、5 吐出口、6 溶融半田、8 半田滴、9,9a〜9d,60 保持板、41,41c,41d,51c,51d 突出部、42 プレート部、80,80a〜80c,92,92a〜92c 溝、85a〜85f,91a〜91f 障壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属の貯蔵室に貯蔵された前記溶融金属を上方から押圧することによって吐出口から滴下する溶融金属吐出装置であって、
前記貯蔵室の底面を規定する上面を有するプレート部と、前記プレート部の底面の一部から下方に向けて突出し、下端に前記吐出口が規定された突出部とを有するノズルプレートと、
前記突出部の側方から前記突出部の側面に向けて不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と
を備える、溶融金属吐出装置。
【請求項2】
前記プレート部の前記底面に接触する上面を有し、前記ノズルプレートの下方から前記ノズルプレートを保持する保持板をさらに備え、
前記不活性ガス供給手段は、前記保持板の前記上面内に形成された溝である、請求項1に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項3】
前記保持板には、前記不活性ガスが複数の方向から前記突出部に向けて供給されるように、前記溝が複数形成されている、請求項2に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項4】
前記保持板には、前記不活性ガスが複数の方向から前記吐出口に向けて噴出されるように、前記ノズルプレートに接触して前記不活性ガスの噴出を妨げる障壁が、前記突出部の周囲に部分的に形成されている、請求項2に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項5】
前記プレート部の前記底面に接触する上面を有し、前記ノズルプレートの下方から前記ノズルプレートを保持する保持板をさらに備え、
前記不活性ガス供給手段は、前記プレート部の前記底面内に形成された溝である、請求項1に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルプレートには、前記不活性ガスが複数の方向から前記突出部に向けて供給されるように、前記溝が複数形成されている、請求項5に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項7】
前記ノズルプレートには、前記不活性ガスが複数の方向から前記吐出口に向けて噴出されるように、前記保持板に接触して前記不活性ガスの噴出を妨げる障壁が、前記突出部の周囲に部分的に形成されている、請求項5に記載の溶融金属吐出装置。
【請求項8】
前記プレート部の前記底面からの前記突出部の突出量は、前記保持板の板厚よりも小さい、請求項2〜7のいずれか一つに記載の溶融金属吐出装置。
【請求項9】
前記プレート部の前記底面からの前記突出部の突出量は、前記保持板の板厚よりも大きい、請求項2〜7のいずれか一つに記載の溶融金属吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−75781(P2006−75781A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264889(P2004−264889)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】