説明

潤滑用オイルのリリーフ機構

【課題】本発明は、潤滑用オイルの粘度に適した動作を行えるリリーフ機構を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、バルブボディの基端に設けられてオイルポンプの吐出側に連通する第1開口部と、バルブボディの先端に設けられて内燃機関のオイル溜まりに連通する第2開口部と、バルブボディの基端と先端の間に設けられてオイルポンプの吸引側と連通するリリーフ孔と、スプールが摺動方向の基端に位置するときは第1開口部とリリーフ孔を導通させるとともにスプールが摺動方向の先端に位置するときは第1開口部とリリーフ孔を遮断させる連通路と、スプールを基端側へ付勢する付勢部材と、第2開口部とオイル溜まりとの間に設けられるオリフィスと、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に併設されたオイルポンプから吐出される潤滑用オイルの一部をオイルポンプより上流側へ戻すためのリリーフ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に併設されたオイルポンプから吐出される潤滑用オイルの一部をオイルポンプより上流側へ戻すことにより、オイルポンプに作用する背圧を低減するリリーフ機構が知られている。このようなリリーフ機構としては、オイルポンプより下流側のオイル通路とオイルポンプより上流側のオイル通路とを連通するリターン通路と、潤滑用オイルの温度に感応してリターン通路を開閉する弁機構と、を備えたものが提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−263026号公報
【特許文献2】特開2008−163776号公報
【特許文献3】特開平06−159028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、潤滑用オイルの粘度と温度との相関は、潤滑用オイルの種類(性状)によって変化する。そのため、従来の技術によれば、潤滑用オイルの粘度が想定値まで低下する前にリターン通路が遮断されたり、潤滑用オイルの粘度が想定値より低下した後もリターン通路が遮断されなかったりする事態が発生し得る。
【0005】
潤滑用オイルの粘度が想定値まで低下する前にリターン通路が遮断されると、オイルポンプの負荷が高くなるため、オイルポンプの駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる可能性がある。一方、潤滑用オイルの粘度が想定値より低下した後もリターン通路が遮断されないと、内燃機関の被潤滑部位に十分な厚さの油膜が形成されない可能性や、油圧を利用して作動する機器(たとえば、油圧式の可変動弁機構など)が正常に作動しない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記したような種々の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関に併設されたオイルポンプから吐出される潤滑用オイルの一部をオイルポンプより上流側へ戻すことにより、オイルポンプに作用する背圧を低減するリリーフ機構において、潤滑用オイルの粘性に適した動作を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するために、潤滑油の粘性を利用する点に着目した。すなわち、本発明は、内燃機関の潤滑用オイルが循環する経路に設けられるリリーフ機構であって、
スプールを摺動自在に収容する収容孔が形成されたバルブボディと、
前記スプールの摺動方向における前記バルブボディの基端に設けられ、オイルポンプから前記内燃機関へ至るオイル通路と前記収容孔とを連通する第1開口部と、
前記スプールの摺動方向における前記バルブボディの先端に設けられ、前記内燃機関に設けられたオイル溜まりと前記収容孔とを連通する第2開口部と、
前記バルブボディの基端と先端の間の壁面に設けられ、前記オイルポンプより上流のオ
イル通路と前記収容孔とを連通するリリーフ孔と、
前記スプールに設けられ、該スプールが摺動方向の基端に位置するときは前記第1開口部と前記リリーフ孔とを連通させるとともに該スプールが摺動方向の先端に位置するときは前記第1開口部と前記リリーフ孔とを遮断させる連通路と、
前記スプールを摺動方向の先端側から基端側へ付勢する付勢部材と、
前記第2開口部と前記オイル溜まりとの間に設けられるオリフィスと、
を備えるようにした。
【0008】
このような発明によると、内燃機関の運転停止時(オイルポンプが停止状態にあるとき)は、スプールが付勢部材の付勢力を受けてバルブボディの基端(収容孔の基端)に当接した状態となる。その場合、第1開口部とリリーフ孔は、スプールに設けられた連通路を介して導通することになる。また、スプールの先端とバルブボディ(収容孔)の先端との間隙(以下、「貯留室」と称する)には、オイル溜まりからオリフィスを介して流入した潤滑用オイルが貯留された状態となる。
【0009】
上記したような状態で内燃機関が始動(オイルポンプが作動)されると、オイルポンプから吐出された潤滑用オイルが内燃機関へ供給されるとともに、オイルポンプから吐出された潤滑用オイルの一部が第1開口部へ流れる。その際、潤滑用オイルの温度が低ければ、潤滑用オイルの粘度が高くなる。そのため、オイルポンプから内燃機関へ向かう潤滑用オイルの流動抵抗が高くなり、オイルポンプに作用する背圧が高くなる可能性がある。しかしながら、オイルポンプから吐出された潤滑用オイルの一部は、第1開口部から連通路を経てリリーフ孔へ流れるため、オイルポンプに作用する背圧が過剰に高くなる事態を回避することができる。
【0010】
また、オイルポンプから第1開口部へ供給された潤滑用オイルの一部は連通路を介してリリーフ孔へ流れるが、残りの潤滑用オイルはスプールを収容孔の基端側から先端側へ押圧する作動油として機能する。このような作動油の圧力が付勢部材の付勢力より大きくなると、スプールが収容孔の基端から先端側へ変位する。その際のスプールの変位速度は、貯留室からオリフィスを介してオイル溜まりへ排出される潤滑用オイルの流量(単位時間当たりにオリフィスを通過する潤滑用オイルの流量)によって変化する。つまり、スプールの変位速度は、潤滑用オイルがオリフィスを通過する際の流動抵抗によって変化する。
【0011】
潤滑用オイルがオリフィスを通過する際の流動抵抗の大きさは、潤滑用オイルの粘度に応じて変化する。たとえば、潤滑用オイルの粘度が高いときは低いときに比べ、流動抵抗が大きくなる(単位時間当たりにオリフィスを通過する潤滑用オイルの量が少なくなる)。そのため、潤滑用オイルの粘度が高いときのスプールの変位速度は、潤滑用オイルの粘度が低いときより遅くなる。スプールの変位速度が遅いときは速いときに比べ、連通路とリリーフ孔の導通時間(第1開口部とリリーフ孔の導通時間)が長くなる。したがって、潤滑用オイルの粘度が十分に低下する前にリリーフ孔が遮断される事態を回避することができる。
【0012】
一方、潤滑用オイルの粘度が低いときは高いときに比べ、潤滑用オイルがオリフィスを通過する際の流動抵抗が小さくなる(単位時間当たりにオリフィスを通過する潤滑用オイルの量が多くなる)。そのため、潤滑用オイルの粘度が低いときのスプールの変位速度は、潤滑用オイルの粘度が高いときより速くなる。スプールの移動速度が速いときは遅いときに比べ、第1開口部とリリーフ孔の導通時間が短くなる。つまり、潤滑用オイルの粘度が低いときは高いときに比べ、リリーフ孔が早期に遮断されることになる。したがって、潤滑用オイルの粘度が十分に低下した後もリリーフ孔が遮断されない事態を回避することができる。
【0013】
以上述べたように、本発明の潤滑用オイルのリリーフ機構は、潤滑用オイルの温度ではなく、潤滑用オイルの粘度に適した動作をすることができる。その結果、オイルポンプの駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる事態や、内燃機関へ供給される潤滑用オイルが不足する事態(たとえば、被潤滑部位に十分な厚さの油膜が形成されない事態や、油圧を利用して作動する機器が正常に作動しない事態)などを回避することが可能となる。
【0014】
本発明におけるオリフィスは、潤滑用オイルの温度が高いときは低いときに比べ、通路断面積が大きくなる可変式のオリフィスであってもよい。このような構成によれば、潤滑用オイルの温度が低く且つ潤滑用オイルの粘度が高いときに第1開口部とリリーフ孔の導通時間を確実に長くすることができるとともに、潤滑用オイルの温度が高く且つ潤滑用オイルの粘度が低いときに第1開口部とリリーフ孔の導通時間を確実に短くすることができる。その結果、オイルポンプの駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる事態や、内燃機関へ供給される潤滑用オイルが不足する事態などをより確実に回避することが可能となる。
【0015】
本発明における付勢部材は、スプールの先端とバルブボディ(収容孔)の先端との間の貯留室に配置されるコイルスプリングであってもよい。その際、コイルスプリングの基端は、スプールの外周に嵌挿されるようにしてもよい。すなわち、コイルスプリングの基端がスプールの外壁と収容孔の内壁との間隙に挿入されるようにしてもよい。その場合、スプールの外壁と収容孔の内壁との間のシール性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内燃機関に併設されるオイルポンプから吐出された潤滑用オイルの一部をオイルポンプより上流側へ戻すことによりオイルポンプに作用する背圧を低減するリリーフ機構において、潤滑用オイルの粘性に適した動作を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施例における潤滑用オイルのリリーフ機構の構成を示す図である。
【図2】第1開口部の内径と連通路の内径との相対関係を示す図である。
【図3】スプールが基端から先端側へ変位し始めたときのリリーフ機構の状態を示す図である。
【図4】スプールが先端に到達したときのリリーフ機構の状態を示す図である。
【図5】第2の実施例における潤滑用オイルのリリーフ機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
<実施例1>
先ず、本発明の第1の実施例について図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、本発明に係る潤滑用オイルのリリーフ機構の一実施態様を示す図である。なお、図1は、内燃機関が運転停止状態(オイルポンプが停止状態)にあるときのリリーフ機構の態様を示している。
【0020】
図1において、リリーフ機構は、円筒状のバルブボディ1を備えている。バルブボディ1内の円柱状の空間(収容孔)2には、該収容孔2の内径と略同径の外径を有する円柱状のスプール3が摺動自在に収容されている。バルブボディ1の基端(図1中の下端)の一
部には、該バルブボディ1の壁面を貫通する第1開口部4が形成されている。
【0021】
前記第1開口部4は、オイル通路5と連通している。オイル通路5は、オイルポンプ6と内燃機関のメインギャラリを連通させる通路である。オイルポンプ6は、オイルパン7に貯留されている潤滑用オイルを汲み上げて、前記オイル通路5へ吐出するポンプである。オイルポンプ6は、たとえば、内燃機関の動力を利用して駆動されるトロコイド式のポンプである。
【0022】
バルブボディ1の先端(図1中の上端)の一部には、該バルブボディ1を貫通する第2開口部8が形成されている。第2開口部8は、オリフィス9を介して内燃機関のオイル溜まり10に連通している。オイル溜まり10は、たとえば、内燃機関のシリンダブロック内部に形成され、シリンダヘッドを循環し終わった潤滑用オイルが滴下して一時的に貯留される空間である。オイル溜まり10には、リターン通路11が接続されている。リターン通路11は、オイルパン7に接続されており、内燃機関を循環し終わった潤滑用オイルをオイルパン7に導くようになっている。なお、オイル溜まり10におけるリターン通路11の接続部位は、オイル溜まり10の底面より高い位置に配置され、オイル溜まり10に一定量のオイルが残留するようになっている。
【0023】
バルブボディ1の基端と先端との間の壁面(側壁)には、該壁面を貫通するリリーフ孔12が形成されている。リリーフ孔12は、前記したリターン通路11に連通している。これに対応して、スプール3には、前記第1開口部4と前記リリーフ孔12とを連通させるための連通路13が形成されている。
【0024】
連通路13の一端(起点)は、スプール3の基端(底面)における前記第1開口部4と対向する部位に配置される。その際、図2に示すように、連通路13の径R0は、第1開口部4の径R1より小さく形成されるものとする。言い換えると、第1開口部4の径R1は、連通路13の径R0より大きく形成されるものとする。
【0025】
連通路13の他端(終点)は、スプール3が摺動方向の基端(スプール3の基端(底面)が収容孔2の基端と当接する位置)に位置するときに、該スプール3の側面において前記リリーフ孔12と対向する部位に配置される。その際、リリーフ孔12は、スプール3の摺動方向に沿って長穴加工されるとともに、スプール3が基端に位置するときに該リリーフ孔12の底部(図1中において最も下側に位置する部位)が前記連通路13の開口端の底部(図1中において最も下側に位置する部位)と対向するように形成されるものとする。さらに、リリーフ孔12は、スプール3が摺動方向の先端(後述するコイルスプリング15が縮みきる位置)に位置するときに、該リリーフ孔12の上端が前記連通路13の開口端より低くなる(該リリーフ孔12がスプール3の側面によって遮断される)ように形成されるものとする。
【0026】
前記収容孔2において、該収容孔2の先端と前記スプール3の先端との間の空間(貯留室)14には、コイルスプリング15が収容されている。このコイルスプリング15は、本発明に係わる付勢部材に相当するものであり、前記スプール3を収容孔2の先端側から基端側へ付勢するものである。
【0027】
次に、本実施例におけるリリーフ機構の動作について説明する。まず、内燃機関が運転停止状態(オイルポンプ6が停止状態)にあるときは、オイルポンプ6から吐出された潤滑用オイルの圧力がスプール3に作用しないため、該スプール3はコイルスプリング15の付勢力のみを受ける。その結果、前述した図1に示すように、スプール3の底面が収容孔2の基端に当接した状態となる。
【0028】
スプール3の底面が収容孔2の基端に当接しているときは、第1開口部4とリリーフ孔12とが連通路13を介して導通した状態になる。すなわち、オイル通路5がリターン通路11と導通した状態になる。また、スプール3の上面と収容孔2の先端との間の空間である貯留室14には、内燃機関の運転中にオイル溜まり10に溜まった潤滑用オイルがオリフィス9及び第2開口部8を介して貯留室14へ流入する。
【0029】
このような状態で内燃機関が始動されると、オイルポンプ6がオイルパン7内の潤滑用オイルを汲み上げてオイル通路5へ吐出する。オイルポンプ6からオイル通路5へ吐出された潤滑用オイルは、内燃機関のメインギャラリへ供給される。その際、潤滑用オイルの温度が低ければ、該潤滑用オイルの粘度が高くなる。潤滑用オイルの粘度が高くなると、オイルポンプ6からメインギャラリへ向かう潤滑用オイルの流動抵抗が大きくなる。潤滑用オイルの流動抵抗が高くなると、オイルポンプに作用する背圧が高くなるため、オイルポンプ6の駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる。
【0030】
これに対し、本実施例におけるリリーフ機構によれば、オイルポンプ6から吐出された潤滑用オイルの一部は、オイル通路5から、第1開口部4、連通路13、及びリリーフ孔12を経てリターン通路11へ流れるため、オイルポンプ6に作用する背圧が過剰に高くなる事態を回避することができる。その結果、内燃機関が冷間始動された直後のように潤滑用オイルの粘度が高いときに、オイルポンプ6の駆動に伴う内燃機関の出力損失を低減することができる。
【0031】
また、オイルポンプ6から第1開口部4へ供給された潤滑用オイルの一部は連通路13へ流入するが、残りの潤滑用オイルはスプール3を収容孔2の基端側から先端側へ押圧する作動油として機能する。作動油の圧力がコイルスプリング15の付勢力より大きくなると、図3に示すように、スプール3が収容孔2の基端から離間しつつ先端側へ変位し始める。その際、リリーフ孔12がスプール3の摺動方向へ長穴加工されているため、スプール3が先端側の変位端(コイルスプリング15が縮みきる位置)へ到達するまでは、連通路13とリリーフ孔12との導通状態(第1開口部4とリリーフ孔12との導通状態)が保たれる。
【0032】
その後、スプール3が先端側の変位端へ到達すると、図4に示すように、連通路13の開口端の位置とリリーフ孔12の位置とが相対的にずれるため、連通路13とリリーフ孔12との導通状態が絶たれる。つまり、オイル通路5から第1開口部4、連通路13、及びリリーフ孔12を経てリターン通路11へ至る潤滑用オイルの流れが遮断される。その結果、オイルポンプ6からオイル通路5へ吐出された潤滑用オイルの全量が内燃機関のメインギャラリへ供給されることになる。
【0033】
ところで、潤滑用オイルの粘度が十分に低下する前に連通路13とリリーフ孔12との導通状態が絶たれると、オイルポンプ6に作用する背圧が高くなるため、オイルポンプ6の駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる可能性がある。一方、潤滑用オイルの粘度が十分に低下した後も連通路13とリリーフ孔12との導通状態が継続されると、内燃機関へ供給される潤滑用オイルが不足する可能性がある。内燃機関へ供給されるオイル量が不足すると、内燃機関の被潤滑部位に十分な厚さの油膜が形成されない可能性や、油圧を利用して作動する機器(たとえば、油圧式の可変動弁機構など)が正常に作動しない可能性がある。
【0034】
これに対し、本実施例のリリーフ機構によれば、スプール3が収容孔2の基端から先端へ変位する過程において、スプール3の変位量に応じて貯留室14の容積が減少することになる。貯留室14の容積が減少すると、貯留室14内のオイルが第2開口部8及びオリフィス9を介してオイル溜まり10へ排出(逆流)されることになる。なお、オイル溜ま
り10に残留する潤滑用オイルの量は一定であるため、内燃機関の運転停止中に貯留室14に溜まる潤滑用オイルの量も一定となる。
【0035】
よって、スプール3が収容孔2の基端から先端へ変位するまでに要する時間(第1開口部4とリリーフ孔12との導通時間)は、貯留室14からオリフィス9を介してオイル溜まり10へ排出される潤滑用オイルの流速によって変化することになる。言い換えると、スプール3の変位速度は、単位時間当たりにオリフィス9を通過する潤滑用オイルの流量(潤滑用オイルがオリフィス9を通過する際の流動抵抗の大きさ)によって変化することになる。
【0036】
単位時間当たりにオリフィス9を通過する潤滑用オイルの流量は、潤滑用オイルの粘度に応じて変化する。たとえば、潤滑用オイルの粘度が高いときは低いときに比べ、単位時間当たりにオリフィス9を通過する潤滑用オイルの流量が少なくなる。そのため、潤滑用オイルの粘度が高いときのスプール3の変位速度は、潤滑用オイルの粘度が低いときより遅くなる。よって、潤滑用オイルの粘度が高いときは低いときに比べ、第1開口部4とリリーフ孔12との導通時間が長くなる。その結果、潤滑用オイルの粘度が十分に低下する前にリリーフ孔12が遮断される事態を回避することができる。
【0037】
一方、潤滑用オイルの粘度が低いときは高いときに比べ、単位時間当たりにオリフィス9を通過する潤滑用オイルの流量が多くなる。そのため、潤滑用オイルの粘度が低いときのスプール3の変位速度は、潤滑用オイルの粘度が高いときより速くなる。よって、潤滑用オイルの粘度が低いときは高いときに比べ、第1開口部4とリリーフ孔12との導通時間が短くなる。言い換えれば、オイルの粘度が低いときは高いときに比べ、リリーフ孔12の遮断時期が早くなる。その結果、潤滑用オイルの粘度が十分に低下した後もリリーフ孔12が遮断されない事態(リリーフ孔12が開き続ける事態)を回避することができる。
【0038】
以上述べたように、本実施例の潤滑用オイルのリリーフ機構によれば、リリーフ孔12の遮断時期が潤滑用オイルの粘度に応じて自動的に調整されることになる。そのため、潤滑用オイルの性状変化によって潤滑用オイルの温度と粘度との相関が変化した場合であっても、オイルポンプ6の駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる事態や、内燃機関へ供給される潤滑用オイルが不足する事態などを回避することが可能となる。
【0039】
なお、オリフィス9は、潤滑用オイルの温度に応じて通路断面積を変更可能な感温式の可変オリフィスであってもよい。詳細には、潤滑用オイルの温度が低いときは高いときに比べ、通路断面積が小さくなるようにオリフィス9が構成されてもよい。その場合、潤滑用オイルの温度が低く且つ潤滑用オイルの粘度が高いときに第1開口部4とリリーフ孔12との導通時間を確実に長くすることができるとともに、潤滑用オイルの温度が高く且つ潤滑用オイルの粘度が低いときに第1開口部4とリリーフ孔12との導通時間を確実に短くすることができる。その結果、オイルポンプ6の駆動に伴う内燃機関の出力損失が大きくなる事態や、内燃機関へ供給される潤滑用オイルが不足する事態などをより確実に回避することが可能となる。
【0040】
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について図5に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0041】
前述した第1の実施例では、コイルスプリング15の基端がスプール3の上面に当接する構成について述べたが、本実施例では、コイルスプリング15の基端がスプール3の外周と収容孔2の内周面との間に嵌挿される例について述べる。
【0042】
図5は、本実施例における潤滑用オイルのリリーフ機構の構成を示す図である。図5において前述した第1の実施例と同様の構成については同様の符号が付されている。図5に示すように、スプール3の先端には、該スプール3の基端側より径が小さい小径部30が形成されている。前記小径部30の外周面と収容孔2の内周面との間には、コイルスプリング150の基端が嵌挿されている。その際、コイルスプリング150は、該コイルスプリング150の内径が前記小径部30の外径と略同径であり、且つ該コイルスプリング150の外径が収容孔2の内径と略同径に形成されるものとする。なお、コイルスプリング150は、前述した第1の実施例のコイルスプリング15と同様に、スプール3を先端側から基端側へ向けて付勢する機能を有する。
【0043】
このように構成されたリリーフ機構によれば、スプール3の基端側から先端側への変位によってコイルスプリング150が収縮したときに、コイルスプリング150が径方向へ広がろうとするため、該コイルスプリング150と収容孔2の内周面との接触荷重が増加する。その結果、上記した第1の実施例と同様の効果に加え、スプール3の外周面と収容孔2の内周面との間のシール性を高めることができるという効果を得ることができる。
【0044】
なお、前述した第1乃至第2の本実施例では、専用のバルブボディを備えたリリーフ機構を例示したが、内燃機関のシリンダブロックがバルブボディを兼用してもよい。すなわち、シリンダブロックの内部に収容孔を設け、該収容孔の内部にスプールが収容されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 バルブボディ
2 収容孔
3 スプール
4 第1開口部
5 オイル通路
6 オイルポンプ
7 オイルパン
8 第2開口部
9 オリフィス
10 オイル溜まり
11 リターン通路
12 リリーフ孔
13 連通路
14 貯留室
15 コイルスプリング
30 小径部
150 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の潤滑用オイルが循環する経路に設けられるリリーフ機構であって、
スプールを摺動自在に収容する収容孔が形成されたバルブボディと、
前記スプールの摺動方向における前記バルブボディの基端に設けられ、オイルポンプから前記内燃機関へ至るオイル通路と前記収容孔とを連通する第1開口部と、
前記スプールの摺動方向における前記バルブボディの先端に設けられ、前記内燃機関に設けられたオイル溜まりと前記収容孔とを連通する第2開口部と、
前記バルブボディの基端と先端の間の壁面に設けられ、前記オイルポンプより上流と前記収容孔とを連通するリリーフ孔と、
前記スプールに設けられ、該スプールが摺動方向の基端に位置するときは前記第1開口部と前記リリーフ孔とを連通させるとともに該スプールが摺動方向の先端に位置するときは前記第1開口部と前記リリーフ孔とを遮断させる連通路と、
前記スプールを摺動方向の基端側へ付勢する付勢部材と、
前記第2開口部と前記オイル溜まりとの間に設けられるオリフィスと、
を備える潤滑用オイルのリリーフ機構。
【請求項2】
請求項1において、前記オリフィスは、潤滑用オイルの温度が高いときは低いときに比べ、通路断面積が大きくなる可変式のオリフィスである潤滑用オイルのリリーフ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188996(P2012−188996A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53068(P2011−53068)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】