説明

無段変速機

【課題】検出手段の故障という不測の事態においても変速機構の入出力側の回転速度を確実に検出して所望の変速制御を行なうことができるとともに、検出手段の組み込み忘れを防止できる無段変速機を提供する。
【解決手段】この無段変速機は、無段変速機構200と一定変速機構300とを主入力軸1Aにそれぞれ連結するとともに、無段変速機構200および一定変速機構300の出力軸200a,300aを少なくとも遊星歯車機構180を介して主出力軸160に連結して成り、少なくとも車速に基づいて車速が0の停止状態に対応するギアードニュートラルポイントから変速比の制御を行う変速制御手段を備える。変速制御手段は、主入力軸1A側の回転速度を検出する入力側検出手段400と、主出力軸160側の回転速度を検出する出力側検出手段500とを備え、入力側検出手段400および出力側検出手段500がそれぞれ2つ以上設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能な各種の無段変速機に関し、特に、ギアードニュートラルポイント(GNP)を有する無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の変速機として、ベルト式やトロイダル型の無段変速機が知られているが、例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図2および図3に示すように構成されている(図2に2つのキャビティ221,222が示される)。図2に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図3参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図2中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図2の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。図3に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図3においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、パワーローラ11を支持する支持板部16の長手方向(図3の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸(軸部)23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、ラジアルニードル軸受99を介して各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図3の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図2の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図3で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図3の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図3の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面(トラクション面)11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の変速比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するので、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
ところで、以上のようなトロイダル型無段変速機を含む従来の無段変速機では、変速領域をさらに拡大するために、無段変速機構に一定変速機構と遊星歯車機構とを組み合わせて変速比を無限大まで制御可能とするもの(変速比無限大無段変速機)が知られている。そして、これらの変速比無限大無段変速機では、車速VSPと無段変速機構の変速比とを検出して、車速VSP=0の停止状態(または、ギアードニュートラルポイントGNP)から高精度で変速比の制御を行う必要がある。
【0017】
そのため、例えば、特許文献1には、ユニット入力側の回転速度を検出する検出手段(センサ)と、無段変速機構の出力側の回転速度を検出する検出手段(センサ)と、これらの検出手段の検出結果に基づいて車速VSPおよび無段変速機構の変速比を演算する演算手段とを備えることにより、変速制御を高精度で行なえるようにした無段変速機の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−39351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1に開示される無段変速機の制御装置では、何らかのトラブルで検出手段が故障した場合に、回転速度の検出が不可能となり、変速制御を行なうことができなくなる。また、一般に、組み立て製造工程では、部品が所定位置に誤って組み込まれないという事態も生じ得るが、特許文献1には、装置の組み立て段階で検出手段が誤って装置に組み込まれないといった事態を回避する対策について何ら言及されていない。
【0020】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、検出手段の故障という不測の事態においても変速機構の入出力側の回転速度を確実に検出して所望の変速制御を行なうことができるとともに、検出手段の組み込み忘れを防止できる無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、変速比を連続的に変更可能な無段変速機構と一定変速機構とを主入力軸にそれぞれ連結するとともに、前記無段変速機構および前記一定変速機構の出力軸を少なくとも遊星歯車機構を介して主出力軸に連結して成り、少なくとも車速に基づいて車速が0(零)の停止状態に対応するギアードニュートラルポイントから変速比の制御を行う変速制御手段を備える無段変速機であって、前記変速制御手段は、前記主入力軸側の回転速度を検出する入力側検出手段と、前記主出力軸側の回転速度を検出する出力側検出手段と、前記入力側検出手段および前記出力側検出手段の検出結果に基づいて車速と前記無段変速機構の変速比とを演算する演算手段とを備え、同じ検出機能を有する前記入力側検出手段および前記出力側検出手段がそれぞれ2つ以上設けられることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、同じ検出機能を有する入力側検出手段および出力側検出手段がそれぞれ2つ以上設けられるので、入力側検出手段(出力側検出手段)のうちの1つが故障した場合であっても、同じ検出機能を有する他の入力側検出手段(出力側検出手段)が回転速度を検出できるため、所望の変速制御を問題なく行なうことができる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記入力側検出手段は、前記無段変速機構の入力部または該入力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出し、前記出力側検出手段は、前記無段変速機構の出力部または該出力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、例えば、出力側検出手段が無段変速機構の出力部側の例えば出力側ディスクとクラッチ軸のドリブンギアとの間に設けられる部品の回転速度を検出する場合には、クラッチOFFの状態でも無段変速機構の出力側ディスクの回転を検出でき(GNPの検出が可能)、したがって、クラッチOFFの状態でギアードニュートラルポイントへの変速制御を行なうことができ、有益である。
【0025】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記入力側検出手段および前記出力側検出手段の変速機に対する組み込み忘れを防止するための組み込み忘れ防止手段を更に備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、検出手段の組み込み忘れを未然に防止できる。
【0027】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記組み込み忘れ防止手段は、変速機に封入される油の表面よりも下側に設けられて油を外部に逃がすための取り付け穴に前記入力側検出手段および前記出力側検出手段を取り付けることから成ることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、取り付け穴を通じた油の漏れにより検出手段の組み込み忘れを報知でき、したがって、検出手段の組み込み忘れを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の無段変速機によれば、同じ検出機能を有する入力側検出手段および出力側検出手段がそれぞれ2つ以上設けられるので、検出手段の故障という不測の事態においても変速機構の入出力側の回転速度を確実に検出して所望の変速制御を行なうことができ、また、入力側検出手段および出力側検出手段の変速機に対する組み込み忘れを防止するための組み込み忘れ防止手段を備えているので、検出手段の組み込み忘れを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る無段変速機の概略構成図、(b)は検出手段の取り付け位置の一例を示す概略断面図である。
【図2】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の特徴は、無段変速機の入力側および出力側の回転速度を検出する検出手段の設置形態にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図2および図3と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0032】
図1の(a)に示すように、本発明の実施形態に係る無段変速機は、エンジン150へ連結される主入力軸1Aに、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型の無段変速機構200と、ギアードニュートラルの第1〜第3のギアGN1,GN2,GN3から構成される一定変速機構(減速機)300とを並列的に連結し、これらの出力軸200a,300aを主出力軸160と同軸的に配設するとともに遊星歯車機構180で連結したもので、無段変速機構200の出力軸200aは、クラッチ190(ローモード)を介して、リングギアRingとプラネットギアPraとサンギアSunとを有する遊星歯車機構180に連結される。また、一定変速機構300の出力軸300aは、遊星歯車機構180のプラネットギアPraに連結される。
【0033】
無段変速機構200の出力軸200aは、クラッチ195(ハイモード)、ギアA、および、ギアaを介して出力側ディスク3に連結されるとともに、ギアB、ギアb、および、ギアcを介してディファレンシャルギア198に連結される。
【0034】
また、図示しないが、本実施形態の無段変速機は、少なくとも車速に基づいて車速が0(零)の停止状態に対応するギアードニュートラルポイント(GNP)から変速比の制御を行う変速制御手段を備える。そして、この変速制御手段は、主入力軸1A側の回転速度を検出する入力側センサ(入力側検出手段)400と、主出力軸160側の回転速度を検出する出力側センサ(出力側検出手段)500と、センサ400,500の検出結果に基づいて車速と無段変速機構200の変速比とを演算する演算手段(図示せず)とを備える。
【0035】
ここで、本実施形態では、同じ検出機能を有するセンサ400(500)がそれぞれ2つ以上設けられている。特に、本実施形態において、入力側センサ400は、無段変速機構200の入力部または該入力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出するよう位置され、具体的には、入力側ディスク2、第1〜第3のギアGN1,GN2,GN3のいずれか2か所以上で回転速度(回転数)を検出するように位置される。無論、入力側ディスク2、第1〜第3のギアGN1,GN2,GN3のいずれか1か所に2個以上の入力側センサ400が設けられてもよい。この場合、他のギアと異なり、ローモードかハイモードかのモード判別や、クラッチの滑り率などを考慮せずに済む。特に、ギア比を考慮しなくてもよい入力側ディスク2およびギアGN1に入力側センサ400を設けることが好ましい。
【0036】
また、出力側センサ500は、無段変速機構200の出力部または該出力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出するように位置され、具体的には、出力側ディスク3、ギアA、ギアa、サンギアSunのいずれか2か所以上で回転速度(回転数)を検出するように位置される。無論、出力側ディスク3、ギアA、ギアa、サンギアSunのいずれか1か所に2個以上の出力側センサ500が設けられてもよい。この場合、他のギアと異なり、ローモードかハイモードかのモード判別や、クラッチの滑り率などを考慮せずに済む。特に、ギア比を考慮しなくてもよい出力側ディスク3およびギアAに出力側センサ500を設けることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、センサ400,500の変速機に対する組み込み忘れを防止するための組み込み忘れ防止手段が更に設けられる。このような組み込み忘れ防止手段は、例えば、図1の(b)に示すように、変速機内に封入される油102の表面102aよりも下側に設けられて油102を外部に逃がすための取り付け穴(オイルパン100の油抜きプラグであってもよい)104にセンサ400,500を取り付けることから成る。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、同じ検出機能を有する入力側センサ400および出力側センサ500がそれぞれ2つ以上設けられているので、入力側センサ400(出力側センサ500)のうちの1つが故障した場合であっても、同じ検出機能を有する他の入力側センサ400(出力側センサ500)が回転速度を検出できるため、所望の変速制御を問題なく行なうことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、入力側センサ400は、無段変速機構200の入力部または該入力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出するよう位置され、また、出力側センサ500は、無段変速機構200の出力部または該出力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出するように位置されるため、例えば、出力側センサ500が無段変速機構の出力部側の例えば出力側ディスク3とクラッチ軸のドリブンギアとの間に設けられる部品の回転速度を検出する場合には、クラッチOFFの状態でも無段変速機構の出力側ディスク3の回転を検出でき(GNPの検出が可能)、したがって、クラッチOFFの状態でギアードニュートラルポイントへの変速制御を行なうことができ、有益である。
【0040】
また、本実施形態では、センサ400,500の変速機に対する組み込み忘れを防止するための組み込み忘れ防止手段が設けられているので、センサ400,500の組み込み忘れを未然に防止できる。特に、本実施形態において、前記組み込み忘れ防止手段は、変速機に封入される油102の表面102aよりも下側に設けられて油102を外部に逃がすための取り付け穴104にセンサ400,500を取り付けることから成るため、取り付け穴104を通じた油102の漏れによりセンサ400,500の組み込み忘れを報知でき、したがって、センサ400,500の組み込み忘れを確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ベルト式やトロイダル型などの様々な無段変速機に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1A 主入力軸
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
104 取り付け穴
160 主出力軸
200 無段変速機構
180 遊星歯車機構
300 一定変速機構
400 入力側センサ(入力側検出手段)
500 出力側センサ(出力側検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速比を連続的に変更可能な無段変速機構と一定変速機構とを主入力軸にそれぞれ連結するとともに、前記無段変速機構および前記一定変速機構の出力軸を少なくとも遊星歯車機構を介して主出力軸に連結して成り、少なくとも車速に基づいて車速が0の停止状態に対応するギアードニュートラルポイントから変速比の制御を行う変速制御手段を備える無段変速機であって、
前記変速制御手段は、前記主入力軸側の回転速度を検出する入力側検出手段と、前記主出力軸側の回転速度を検出する出力側検出手段と、前記入力側検出手段および前記出力側検出手段の検出結果に基づいて車速と前記無段変速機構の変速比とを演算する演算手段とを備え、
同じ検出機能を有する前記入力側検出手段および前記出力側検出手段がそれぞれ2つ以上設けられることを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記入力側検出手段は、前記無段変速機構の入力部または該入力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出し、前記出力側検出手段は、前記無段変速機構の出力部または該出力部と同回転もしくは一定の減速比で回転する動力伝達部の回転速度を検出することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
前記入力側検出手段および前記出力側検出手段の変速機に対する組み込み忘れを防止するための組み込み忘れ防止手段を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無段変速機。
【請求項4】
前記組み込み忘れ防止手段は、変速機に封入される油の表面よりも下側に設けられて油を外部に逃がすための取り付け穴に前記入力側検出手段および前記出力側検出手段を取り付けることから成ることを特徴とする請求項3に記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−24309(P2013−24309A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158825(P2011−158825)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】