説明

無段変速装置およびエアコンシステム

【課題】変速比毎の回転バランスの変化を抑制でき且つ構成が簡素な無段変速装置を提供する。
【解決手段】入力側揺動アーム15と、入力側揺動アーム15を揺動自在に支持する支持部材133と、入力軸12の一方向の回転運動を入力側揺動アーム15の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構13と、入力側揺動アーム15の所定部位から押圧されることによって揺動する出力側揺動アーム16と、出力側揺動アーム16の揺動運動を出力軸22の一方向の回転運動に変換する揺動−回転変換機構17、18、19、20と、出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置を入力側揺動アーム15の揺動半径の方向に変化させることによって出力側揺動アーム16の揺動量を調整可能な調整機構14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速比を無段階に調整可能な無段変速装置、およびそれを用いたエアコンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、偏心カムの偏心量を変化させることによって変速比を調整可能にした無段変速装置が記載されている。この従来技術では、入力軸に対する偏心量を調整自在な偏心カムを入力軸と一体的に回転するようにし、入力軸を中心とする同一円周上にクランクシャフトを回転自在に配置し、クランクシャフトの旋回端部を偏心カムのカム溝に摺動自在に嵌合すると共に、クランクシャフトにそれぞれ一方向クラッチを介して遊星歯車を嵌合し、遊星歯車をリングギヤに噛合させ、リングギヤにより出力軸を回転させるようにしている。
【0003】
偏心カムは内側偏心カムと外側偏心カムとで構成され、内側偏心カムは入力軸に固定され、外側偏心カムは入力軸に対して独立して回転可能になっている。具体的には、外側偏心カムは差動歯車、遊星歯車、ウォームホイール、ウォームおよびハンドルに連結されており、ハンドルを回転すれば外側偏心カムが内側偏心カムに対して回転するようになっている。これにより、入力軸と一体的に回転する偏心カムの入力軸に対する偏心量を調整自在にしている。
【0004】
上記構成によると、偏心カムの入力軸に対する偏心量が小さいほど変速比が小さく、偏心カムの入力軸に対する偏心量が大きいほど変速比が大きくなるので、変速比を無段階に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−140664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、変速比を調整すると、入力軸と一体的に回転する偏心カムの偏心量が変化するので、変速比毎に回転バランスが変化するという問題がある。また、入力軸と一体的に回転する偏心カムの偏心量を調整自在にするために差動歯車、遊星歯車、ウォームホイール、ウォームおよびハンドルが設けられているので、部品点数が増大して構成が複雑化するという問題もある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、変速比毎の回転バランスの変化を抑制でき且つ構成が簡素な無段変速装置、およびそれを用いたエアコンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、入力側揺動アーム(15)と、
入力側揺動アーム(15)を揺動自在に支持する支持部材(133)と、
入力軸(12)の一方向の回転運動を入力側揺動アーム(15)の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構(13)と、
入力側揺動アーム(15)の所定部位から押圧されることによって揺動する出力側揺動アーム(16)と、
出力側揺動アーム(16)の揺動運動を出力軸(22)の一方向の回転運動に変換する揺動−回転変換機構(17、18、19、20)と、
出力側揺動アーム(16)に対する入力側揺動アーム(15)の作用点の位置を入力側揺動アーム(15)の揺動半径の方向に変化させることによって出力側揺動アーム(16)の揺動量を調整可能な調整機構(14)とを備えることを特徴とする。
【0009】
これによると、出力側揺動アーム(16)に対する入力側揺動アーム(15)の作用点の位置が変化することで変速比が変わるので、上記従来技術のような偏心カムを用いることなく変速比を調整することができる。このため、上記従来技術のごとく入力軸に対する偏心カムの偏心量が変化することで変速比を調整可能にする無段変速装置と比較して、変速比毎の回転バランスの変化を抑制できる。
【0010】
また、変速比を調整する際には調整機構(14)によって両揺動アーム(15、16)相互間の相対位置を調整すればよいので、調整機構(14)として複雑な機構を必要としない。このため、上記従来技術のごとく偏心カムの偏心量を調整自在にするために差動歯車、遊星歯車、ウォームホイール、ウォームおよびハンドルを必要とする無段変速装置と比較して、部品点数を削減して構成を簡素化できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の無段変速装置において、回転−揺動変換機構(13、30、31)は、入力側揺動アーム(15)を駆動する駆動ピン(137)を有し、
入力側揺動アーム(15)には、駆動ピン(137)が挿入される第1の溝(151)が形成され、
出力側揺動アーム(16)の揺動軸は、入力側揺動アーム(15)の揺動角を2等分する仮想揺動中心線に対してずれて配置され、
作用点は、第1の溝(151)よりも出力側揺動アーム(16)の揺動軸側に位置していることを特徴とする。
【0012】
これによると、出力側揺動アーム(16)の揺動角を2等分する仮想揺動中心線の方向を、入力側揺動アーム(15)の仮想揺動中心線と平行な方向に近づけることができるので、出力側揺動アーム(16)の揺動角速度の変動を小さくすることができる。このため、揺動−回転変換機構(17、18、19、20)を経て出力される出力軸(22)の回転速度の変動を小さくすることができる。
【0013】
例えば、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の無段変速装置において、出力側揺動アーム(16)は、入力側揺動アーム(15)によって押圧されるピン(161)を有し、
入力側揺動アーム(15)には、ピン(161)が挿入される第2の溝(152)が形成され、
第1の溝(151)および第2の溝(152)は、互いに非平行な直線形状を有している。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の無段変速装置において、調整機構(14)は、出力側揺動アーム(16)に対する支持部材(133)の相対位置を変化させる機構で構成されている。これにより、部品点数を削減して構成を簡素化できる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の無段変速装置において、回転−揺動変換機構(13)は、太陽ギヤ(131)、遊星ギヤ(132)、キャリア(133)および内歯ギヤ(134)を有する遊星歯車機構で構成され、
入力側揺動アーム(15)は、キャリア(133)に揺動自在に支持され且つ遊星ギヤ(132)の自転によって揺動し、
支持部材はキャリア(133)で構成され、
調整機構(14)は、キャリア(133)の回転角度を所定範囲内の任意の角度で固定可能にする機構で構成されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、入力軸(12)の回転運動を入力側揺動アーム(15)の揺動運動に良好に変換することができる。
【0017】
因みに、遊星ギヤ(132)を複数個有する遊星歯車機構を用いれば、入力側揺動アーム(15)および出力側揺動アーム(16)を複数組設けることができるので、入力側揺動アーム(15)および出力側揺動アーム(16)の多極化を極めて容易に実現することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明のように、請求項1に記載の無段変速装置において、回転−揺動変換機構(13)は、入力軸(12)に連結された偏心カム(30)と、出力側揺動アーム(16)を入力側揺動アーム(15)側に付勢する弾性部材(31)とで構成され、
調整機構(14)は、偏心カム(30)の軸に対する支持部材(133)の回転角度を所定範囲内の任意の角度で固定可能にする機構で構成されていてもよい。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項5に記載の無段変速装置において、遊星ギヤ(132)に揺動自在に連結された梃子クランク機構(35)を備え、
梃子クランク機構(35)は、複数本の連接棒(351、352)を有し、
出力側揺動アーム(16)は、複数本の連接棒(351、352)のうち所定の連接棒(352)の所定部位から押圧されることによって揺動し、
入力側揺動アームは、出力側揺動アーム(16)を押圧する連接棒(352)によって構成されていることを特徴とする。
【0020】
これにより、出力側揺動アーム(16)の揺動量を大きく確保して最大変速比を大きくできる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の無段変速装置において、調整機構(14)は、入力側揺動アーム(15)の作用点の位置を、入力側揺動アーム(15)のうち揺動半径が0になる零点位置に調整可能になっており、
入力側揺動アーム(15)は、入力側揺動アーム(15)の作用点の位置を零点位置に調整したときの入力側揺動アーム(15)の作用点の位置公差を吸収する公差吸収部(152a)を有していることを特徴とする。
【0022】
これにより、製造上や作動上の誤差による作用点の位置公差を吸収して変速比(変速比=出力回転数/入力回転数)を0にすることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の無段変速装置において、揺動−回転変換機構(17、18、19、20)で変換された回転運動が伝達される差動歯車機構(32)と、
入力軸(12)の回転運動を、回転−揺動変換機構(13、30、31)、入力側揺動アーム(15)、出力側揺動アーム(16)および揺動−回転変換機構(17、18、19、20)をバイパスして差動歯車機構(32)に伝達するバイパス軸(30)とを備え、
差動歯車機構(32)は、無段変速機構(13、15〜20)およびバイパス軸(30)から伝達された回転を出力軸(22)に伝達することを特徴とする。
【0024】
これによると、入力軸(12)からの動力が無段変速機構(13、15〜20)とバイパス軸(30)とに分配される。このため、無段変速機構(13、15〜20)にかかる負担を軽減できる。
【0025】
また、無段変速機構(13、15〜20)とバイパス軸(30)とに分配された動力は、差動歯車機構(32)を介して出力軸(22)に伝達されるので、動力循環が起こらず効率がよい。
【0026】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の無段変速装置において、入力軸(12)、出力軸(22)およびバイパス軸(30)は、互いに同軸上に配置されていることを特徴とする。
【0027】
これによると、バイパス軸(30)は、入力軸(12)および出力軸(22)と同軸上に設けられているので、入出力軸(12、22)の径方向における体格を小型化できる。
【0028】
請求項11に記載の発明では、請求項9または10に記載の無段変速装置において、入力軸(12)からバイパス軸(30)への回転伝達を断続する断続機構(31)を備え、
断続機構(31)がバイパス軸(30)への回転伝達を断続することによって、得られる変速比の範囲が変化することを特徴とする。
【0029】
これにより、得られる変速比の範囲を広げることができる。
【0030】
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の無段変速装置において、断続機構(31)は、クラッチ機構で構成されている。
【0031】
請求項13に記載の発明では、請求項11または12に記載の無段変速装置において、バイパス軸(30)の回転方向を制限する第1の回転制限機構(33)を備え、
第1の回転制限機構(33)は、無段変速機構(13、15〜20)から差動歯車機構(32)に伝達される回転の方向と反対の方向にバイパス軸(30)が回転することを許容し、無段変速機構(13、15〜20)から差動歯車機構(32)に伝達される回転の方向と同じ方向にバイパス軸(30)が回転することを制限するものであることを特徴とする。
【0032】
これにより、断続機構(31)が入力軸(12)からバイパス軸(30)への回転伝達を遮断している場合に、差動歯車機構(32)からバイパス軸(30)への回転伝達を制限することができる。
【0033】
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載の無段変速装置において、揺動−回転変換機構は、
出力側揺動アーム(16)の軸の回転を差動歯車機構(32)に伝達する歯車機構(18、19、20)と、
出力側揺動アーム(16)の軸から歯車機構(18、19、20)に伝達される回転を一方向に制限する第2の回転制限機構(17)とを有し、
歯車機構(18、19、20)は、出力側揺動アーム(16)の軸から第2の回転制限機構(17)を介して伝達された回転と、差動歯車機構(32)に伝達する回転とが互いに逆方向になるように構成され、
第2の回転制限機構(17)が制限する回転の方向は、第1の回転制限機構(33)が制限する回転の方向と反対になっている。
【0034】
請求項15に記載の発明では、請求項9ないし14のいずれか1つに記載の無段変速装置において、差動歯車機構(32)は、
無段変速機構(13、15〜20)から回転が伝達されるキャリア(323)と、
バイパス軸(30)から回転が伝達される太陽ギヤ(321)と、
出力軸(22)に回転を伝達する内歯ギヤ(324)とを有している。
【0035】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の無段変速装置(2)と、
無段変速装置(2)の出力によって駆動され、冷媒を吸入・圧縮する圧縮機(1)と、
調整機構(14)を駆動制御する駆動制御手段(5、6、7)とを備え、
調整機構(14)は、作用点の位置を、入力側揺動アーム(15)のうち揺動半径が0になる零点位置に調整可能になっており、
駆動制御手段(5、6、7)は、圧縮機(1)の始動時において、無段変速装置(2)にかかるトルク(T)が通常動作トルク(TN )以下となるように調整機構(14)を駆動制御することを特徴とする。
【0036】
これによると、圧縮機(1)の始動時に無段変速装置(2)にかかるトルク(T)が通常動作トルク(TN )を超えることを抑制できるので、圧縮機(1)の始動時に動力源(4)の負荷が大きくなることを抑制できる。
【0037】
具体的には、請求項17に記載の発明のように、請求項16に記載のエアコンシステムにおいて、駆動制御手段(5、6、7)は、圧縮機(1)の始動時において、無段変速装置(2)の変速比(γ)を0から目標変速比(γCVT )まで変化させる際の変速比(γ)の時間変化率(dγ(t)/dt)を演算し、時間変化率(dγ(t)/dt)に基づいて調整機構(14)を駆動制御すればよい。
【0038】
より具体的には、請求項18に記載の発明のように、請求項17に記載のエアコンシステムにおいて、駆動制御手段(5、6、7)は、以下の数式1の条件を満たすように時間変化率(dγ(t)/dt)を演算すればよい。
【0039】
【数1】

なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態における無段変速装置の断面図である。
【図2】図1の無段変速装置の内部構造の要部を示す斜視図であり、変速比が0の状態を示している。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】遊星歯車機構および入力側揺動アームの模式的な正面図である。
【図5】図1の無段変速装置のうち入力軸から入力側揺動アームまでの部分を分解して示す正面図である。
【図6】第1実施形態における入力側揺動アームのうち第1のアーム部の平面図である。
【図7】図1の無段変速装置の内部構造の要部を示す斜視図であり、変速比が最大の状態を示している。
【図8】図1の無段変速装置の内部構造の要部を示す斜視図であり、変速比が中間変速比の状態を示している。
【図9】第2実施形態における入力側揺動アームのうち第1のアーム部の平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態における回転−揺動変換機構を示す正面図である。
【図11】本発明の第4実施形態における回転−揺動変換機構を示す正面図である。
【図12】第5実施形態における無段変速装置の低変速比モードを示す図である。
【図13】第5実施形態における無段変速装置の高変速比モードを示す図である。
【図14】第5実施形態における無段変速装置の共線図である。
【図15】第6実施形態における車両用エアコンシステムの要部構成図である。
【図16】図15の車両用エアコンシステムにおける機械動力回路および電気動力回路を示すブロック図である。
【図17】図16の電子制御装置が実行する制御処理の概要を示すフローチャートである。
【図18】第6実施形態における作動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態)
本第1実施形態は、本発明の無段変速装置を冷凍サイクルの圧縮機に適用したものである。図1は、本実施形態における無段変速装置を示す断面図である。図2は、図1の無段変速装置の内部構造の要部を示す斜視図である。
【0042】
図1、図2に示すように、無段変速装置は、中空円柱状の筐体11と、筐体11に対して回転可能に支持された入力軸12と、筐体11内において入力軸12に連結された遊星歯車機構13とを有している。筐体11は、成形上の都合や内蔵部品の組付上の都合等から複数の部材に分割して成形されている。
【0043】
遊星歯車機構13は、太陽ギヤ131、遊星ギヤ132、キャリア133および内歯ギヤ134で構成されている。太陽ギヤ131および内歯ギヤ134は入力軸12と同軸上に配置されている。
【0044】
内歯ギヤ134は、入力軸12に対してボルト結合されて入力軸12と一体に回転する。遊星ギヤ132は、本実施形態では4個設けられている。
【0045】
キャリア133には、太陽ギヤ131を回転可能に支持する軸135と、遊星ギヤ132を回転可能に支持する軸136とが固定されている。キャリア133は、調整機構14を介して筐体11に固定されている。
【0046】
調整機構14は、キャリア133を太陽ギヤ131および内歯ギヤ134と同軸上に回転させて、キャリア133の回転角度を所定範囲内の任意の角度で固定可能にするものである。
【0047】
具体的には、調整機構14は、キャリア133と同軸状の円盤状部材141と、円盤状部材141の外周部から筐体11の壁面を貫通して筐体11の外部に突出するハンドル部142とを有している。円盤状部材141は、軸135に固定されているとともに、筐体11の軸方向中間部に一体的に形成された仕切壁部111に回転可能に支持されている。
【0048】
筐体11の外部からハンドル部142を操作して円盤状部材141を回転させることでキャリア133の回転角度を無段階に調整できる。ハンドル部142の操作は、筐体11の外部に配置された電動アクチュエータ(図示せず)によって行われる。もちろんハンドル部142を手動で操作してもよい。
【0049】
キャリア133は、入力側揺動アーム15を揺動自在に支持する支持部材の役割を果たしている。入力側揺動アーム15は、遊星ギヤ132と同数個(本実施形態では4個)設けられ、遊星ギヤ132の自転によって揺動する。
【0050】
図3は図1の要部拡大図であり、図4は遊星歯車機構13および入力側揺動アーム15の模式的な正面図である。図3、図4に示すように、入力側揺動アーム15に形成された第1の溝151に、遊星ギヤ132に一体に形成された駆動ピン137が挿入されている。これにより、遊星歯車機構13は、入力軸12の回転運動を入力側揺動アーム15の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構として機能する。
【0051】
図3に示すように、複数個の入力側揺動アーム15はそれぞれ出力側揺動アーム16に連結されている。具体的には、入力側揺動アーム15に形成された第2の溝152に、出力側揺動アーム16に一体に形成されたピン161が挿入されている。
【0052】
図1、図2に示すように、複数個の出力側揺動アーム16の軸はそれぞれ、一方向クラッチ17を介して外歯ギヤ18の中心軸部に連結されている。一方向クラッチ17は、出力側揺動アーム16に対して外歯ギヤ18が一方向に回転するのを阻止し、他方向に回転するのは許容するものである。
【0053】
換言すれば、一方向クラッチ17は、出力側揺動アーム16の軸から外歯ギヤ18への回転力の伝達を一方向に制限する回転力伝達制限機構としての役割を果たす。したがって、出力側揺動アーム16の揺動により外歯ギヤ18が一方向に回転する。
【0054】
複数個の外歯ギヤ18は、1つの内歯ギヤ19および1つの外歯ギヤ20に噛み合うようになっている。内歯ギヤ19は、ベアリング21を介して筐体11に回転自在に支持されている。外歯ギヤ20は、入力軸12と同軸上に配置された出力軸22に一体に形成されている。
【0055】
一方向クラッチ17、外歯ギヤ18、内歯ギヤ19および外歯ギヤ20は、出力側揺動アーム16の揺動運動を出力軸22の回転運動に変換する揺動−回転変換機構としての役割を果たす。
【0056】
出力軸22は増速機23に連結されている。増速機23は、出力軸22の回転によって公転する遊星ギヤ231と、遊星ギヤ231に噛み合う内歯ギヤ232および太陽ギヤ233とで構成されている。増速機23の遊星ギヤ231、内歯ギヤ232および太陽ギヤ233は筐体11に収容されている。増速機23の内歯ギヤ232は筐体11に固定されている。増速機23の太陽ギヤ233には、増速機23の出力軸が一体に形成されている。なお、筐体11内において、上述の各部材の組み付けは適宜ベアリングを介して行われている。また、筐体11は、Oリング等のシール部材によって適宜封止されている。
【0057】
次に、入力側揺動アーム15と出力側揺動アーム16との連結構造を図3、図5に基づいて詳細に説明する。図5は、図1に示す無段変速装置のうち入力軸12から入力側揺動アーム15までの部分を分解して入力側揺動アーム15側(入力軸12と反対側)から軸方向に見た状態を示す正面図である。
【0058】
図3に示すように、入力側揺動アーム15の第1の溝151は、入力側揺動アーム15の片面(遊星ギヤ132側の面)に形成されている。一方、入力側揺動アーム15の第2の溝152は、図3、図5に示すように入力側揺動アーム15の他面(出力側揺動アーム16側の面)に形成されている。本実施形態では、第1、第2の溝151、152は直線形状を有している。
【0059】
本実施形態では、入力側揺動アーム15は、第1の溝151が形成された第1のアーム部15aと、第2の溝152が形成された第2のアーム部15bとを軸方向に重ねて一体化した構成になっている。
【0060】
本実施形態では、出力側揺動アーム16の揺動軸は、その軸方向から見たときに、入力側揺動アーム15の揺動角を2等分する仮想揺動中心線(図示せず)に対してずれて配置されている。
【0061】
軸方向から見たときに、第1、第2のアーム部15a、15bは、長手方向一端部同士の位置が合致し、長手方向他端部に向かうにつれて互いにずれている。したがって、入力側揺動アーム15の第1の溝151および第2の溝152は互いに非平行になっている。
【0062】
これにより、出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置が、入力側揺動アーム15の第1の溝151よりも出力側揺動アーム16の揺動軸側に位置することとなる。
【0063】
このため、出力側揺動アーム16の揺動軸がその軸方向から見たときに入力側揺動アーム15の仮想揺動中心線に対してずれていても、出力側揺動アーム16の揺動角を2等分する仮想揺動中心線(図示せず)の方向を、入力側揺動アーム15の仮想揺動中心線と平行な方向に近づけることができるので、出力側揺動アーム16の揺動角速度の変動を小さくすることができ、ひいては、揺動−回転変換機構を経て出力される出力軸22の回転速度の変動を小さくすることができる。
【0064】
本実施形態では、出力側揺動アーム16の揺動軸が、入力側揺動アーム15の第1の溝151よりも出力軸22側(揺動−回転変換機構の中心側)に配置されているので、入力側揺動アーム15の第2の溝152は、第1の溝151よりも出力軸22側(揺動−回転変換機構の中心側)に配置されている。なお、第1、第2の溝151、152は互いに平行になっていてもよい。
【0065】
入力側揺動アーム15の軸153は第1のアーム部15aの一端部に形成されている。軸方向から見たときに、第2の溝152は、その長手方向一端部152aが軸153と重合している。本実施形態では、図6に示すように第2の溝152は、出力側揺動アーム16のピン161に対して逃がしをもたない形状になっている。
【0066】
上記構成における作動を説明する。調整機構14によってキャリア133を所定の回転角度で筐体11に固定した状態において入力軸12が一方向に回転すると、入力軸12の回転運動が遊星歯車機構13によって入力側揺動アーム15の揺動運動に変換される。
【0067】
具体的には、入力軸12が回転すると内歯ギヤ134も回転し、これにより遊星ギヤ132が公転することなく自転し、遊星ギヤ132の自転により遊星ギヤ132の駆動ピン137が遊星ギヤ132の軸周りに公転して入力側揺動アーム15が揺動駆動される。入力側揺動アーム15が揺動すると、出力側揺動アーム16のピン161が入力側揺動アーム15の第2の溝152の壁面に押圧されて出力側揺動アーム16も揺動する。
【0068】
出力側揺動アーム16が揺動すると、出力側揺動アーム16の揺動運動が揺動−回転変換機構17〜20によって出力軸22の一方向の回転運動に変換される。具体的には、出力側揺動アーム16が揺動すると一方向クラッチ17を介して外歯ギヤ18が一方向に回転し、これにより外歯ギヤ20および出力軸22が一方向に回転する。そして出力軸22の回転は、増速機23によって増速される。
【0069】
上記構成において変速比(増速比)を調整する際には、調整機構14によってキャリア133の回転角度を調整する。図2は、変速比(変速比=出力回転数/入力回転数)が0になるようにキャリア133の回転角度を調整した状態を示し、図7は、変速比が最大になるようにキャリア133の回転角度を調整した状態を示し、図8は、変速比が中間変速比になるようにキャリア133の回転角度を調整した状態を示している。
【0070】
キャリア133の回転角度を変えることで出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置が変化するので、入力側揺動アーム15の揺動量に対する出力側揺動アーム16の揺動量が変化し、ひいては出力軸22の回転数(出力回転数)が変化する。
【0071】
キャリア13の回転角度は無段階に調整可能となっているので、入力軸12の回転数(入力回転数)に対する出力軸22の回転数(出力回転数)を無段階に変化させることができる。よって、変速比を無段階に調整することができる。
【0072】
具体的には、図2に示す状態(変速比:0)では、入力側揺動アーム15の作用点が入力側揺動アーム15の軸153に最も接近し、入力側揺動アーム15の長手方向における軸153から作用点までの距離が0になる。換言すれば、入力側揺動アーム15のうち揺動半径が0になる零点位置に作用点が位置する。これにより、入力側揺動アーム15が揺動しても出力側揺動アーム16が揺動しないので、変速比を0にすることができる。
【0073】
図7に示す状態(変速比:最大)では、入力側揺動アーム15の長手方向(揺動半径の方向)における軸153から作用点までの距離が最大になる。これにより、入力側揺動アーム15の揺動量に対する出力側揺動アーム16の揺動量が最大になるので変速比を最大にすることができる。
【0074】
図8に示す状態(変速比:中間変速比)では、入力側揺動アーム15の長手方向における軸153から作用点までの距離が中程度になる。これにより、入力側揺動アーム15の揺動量に対する出力側揺動アーム16の揺動量が中程度になるので変速比を中間変速比にすることができる。
【0075】
本実施形態によると、出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置が変化することで変速比が変わるので、変速比を変えても回転バランスが変化しない。このため、変速比毎に回転バランスが変化することを防止できる。
【0076】
また、変速比を調整する際には、入力軸12と一体に回転しない入力側揺動アーム15の位置を調整すればよいので、調整機構14を少ない部品点数で構成できる。具体的には、調整機構14は、出力側揺動アーム16に対する支持部材133の相対位置を変化させるといった簡素な機構である。このため、無段変速装置の構成を簡素化できる。
【0077】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、入力側揺動アーム15の第2の溝152は、出力側揺動アーム16のピン161に対して逃がしをもたない形状になっているが、本第2実施形態では、図9に示すように、第2の溝152の長手方向一端部152aに、ピン161に対する逃がし形状が形成されている。具体的には、逃がし形状は、ピン161の外形よりも所定寸法大きい形状になっている。
【0078】
逃がし形状の寸法は、製造上や作動上の誤差による入力側揺動アーム15の位置公差を考慮して決定される。なお、第2の溝152の残余の部位はピン161に対して逃がしをもたない形状になっている。
【0079】
出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置を変速比:0の位置(零点位置)に調整した場合には、第2の溝152の長手方向一端部152aに出力側揺動アーム16のピン161がくる。
【0080】
ここで、上述した図6のように第2の溝152に逃がし形状を設けていない場合には、公差の範囲内において入力側揺動アーム15の位置がばらつくと、入力側揺動アーム15の揺動により出力側揺動アーム16が僅かに揺動してしまうので変速比が確実に0にならない。
【0081】
この点に鑑みて、本実施形態では、図9のように第2の溝152に逃がし形状を設けているので、入力側揺動アーム15の位置公差を吸収して出力側揺動アーム16が揺動しないようにすることができる。換言すれば、第2の溝152のうち逃がし形状が設けられた長手方向一端部152aは、入力側揺動アーム15の作用点の位置を零点位置に調整したときの作用点の位置公差を吸収する公差吸収部の役割を果たす。よって、入力側揺動アーム15の位置公差を吸収して変速比を0にすることができる。
【0082】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、入力軸12の回転運動を入力側揺動アーム15の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構を遊星歯車機構13によって構成しているが、本第2実施形態では、図10に示すように、回転−揺動変換機構を、入力軸12に連結された偏心カム30と、出力側揺動アーム16に設けられた弾性部材31とによって構成している。
【0083】
偏心カム30は、そのカム面上を入力側揺動アーム15が摺動するように配置されている。入力側揺動アーム15は、環板状の支持部材32に揺動自在に設けられている。支持部材32は、調整機構33を介して筐体11に固定されている。
【0084】
調整機構33は、支持部材32を入力軸12と同軸上に回転させて、支持部材32の回転角度を所定範囲内で任意(無段階)に調整可能にするものである。図10の例では、調整機構33は、筐体11の外部に配置された電動アクチュエータ34によって操作されるようになっている。
【0085】
弾性部材31は、出力側揺動アーム16を入力側揺動アーム15側に付勢するように筐体11に固定されている。
【0086】
上記構成における作動を説明する。調整機構33によって支持部材32を所定の回転角度で筐体11に固定した状態において入力軸12が一方向に回転すると、入力軸12の回転運動が偏心カム30によって入力側揺動アーム15の揺動運動に変換される。
【0087】
具体的には、入力軸12が回転すると偏心カム30が偏心回転し、これにより入力側揺動アーム15が偏心カム30のカム面に押圧され、入力側揺動アーム15が出力側揺動アーム16を押圧する。入力側揺動アーム15に押圧された出力側揺動アーム16は弾性部材31の弾性復元力によって入力側揺動アーム15側に押し戻され、入力側揺動アーム15を偏心カム30のカム面側に押し戻す。これにより入力側揺動アーム15が揺動し、出力側揺動アーム16も揺動する。
【0088】
出力側揺動アーム16が揺動すると、出力側揺動アーム16の揺動運動が揺動−回転変換機構17〜20によって出力軸22の一方向の回転運動に変換される。
【0089】
上記構成において、変速比を調整する際には、調整機構33によって支持部材32の回転角度を調整する。支持部材32の回転角度を変えることで出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置が変化するので、上記第1実施形態と同様に変速比を無段階に調整することができる。
【0090】
なお、本実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、入力側揺動アーム15の第2の溝152のうち長手方向一端部(揺動軸153と重合する部位)に、出力側揺動アーム16のピン161に対する逃がし形状を形成すれば、入力側揺動アーム15の位置公差を吸収して変速比を0にすることができる。
【0091】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、遊星ギヤ132に入力側揺動アーム15を直接連結しているが、本第3実施形態では、図11に示すように、遊星歯車機構13に梃子クランク機構35を連結し、梃子クランク機構35を構成する複数本の連接棒351、352のうち遊星歯車機構13に直接連結されていない連接棒352が入力側揺動アームの役割を果たすようにしている。
【0092】
本実施形態では、梃子クランク機構35は、2つの連接棒351、352を有し、一方の連接棒351は遊星ギヤ132に揺動自在に支持され、他方の連接棒351はキャリア133に揺動自在に支持されている。
【0093】
図示を省略しているが、入力側揺動アームをなす連接棒352のうち遊星ギヤ132と反対側の面には、出力側揺動アーム16のピン161が挿入される溝が、その長手方向に延びて形成されている。
【0094】
この連接棒352の溝は、その長手方向一端部が連接棒352の揺動軸352aと重合するように形成されている。この溝の一端部に、上記第2実施形態と同様に出力側揺動アーム16のピン161に対する逃がし形状を形成すれば、連接棒352の位置公差を吸収して変速比を0にすることができる。
【0095】
図11中、点P1は、変速比が0の場合における出力側揺動アーム16のピン161の位置を示している。この状態では、出力側揺動アーム16のピン161の位置が連接棒352の揺動軸352aの位置と重合している。
【0096】
これに対し、図11中、点P2は、変速比が最大の場合における出力側揺動アーム16のピン161の位置を示している。この状態では、出力側揺動アーム16のピン161の位置が連接棒352の揺動軸352aから最も離れた位置になっている。
【0097】
上記構成における作動を説明する。調整機構14によってキャリア133を所定の回転角度で筐体11に固定した状態において入力軸12が一方向に回転すると、内歯ギヤ134も回転し、これにより遊星ギヤ132が公転することなく自転し、遊星ギヤ132の自転により梃子クランク機構35が運動する。すなわち、入力側揺動アームをなす連接棒352が、その揺動軸352aを中心として揺動する。
【0098】
そして、入力側揺動アームをなす連接棒352の揺動により出力側揺動アーム16も揺動するので、出力側揺動アーム16の揺動運動が揺動−回転変換機構17〜20によって出力軸22の一方向の回転運動に変換され、出力軸22の回転は増速機23によって増速される。
【0099】
上記構成において、変速比を調整する際には、調整機構14によってキャリア133の回転角度を調整する。キャリア133の回転角度を変えることで、出力側揺動アーム16のピン161の位置が点P1から点P2の間で相対的に変化するので、出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム(すなわち連接棒352)の作用点の位置も変化する。これにより、上記第1実施形態と同様に変速比を無段階に調整することができる。
【0100】
本実施形態によると、上記第1実施形態のように遊星ギヤ132に入力側揺動アームを直接連結した場合と比較して、入力側揺動アーム(すなわち連接棒352)の揺動量を大きくすることができるので最大変速比を大きくできる。
【0101】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、入力軸12の回転力が、遊星ギヤ132→入力側揺動アーム15→出力側揺動アーム16→外歯ギヤ18→外歯ギヤ20→出力軸22という経路で伝達されるが、図12、図13に示す第5実施形態では、入力軸12の回転力が、上記経路に加えて、バイパス軸30にも分配して伝達されるようにしている。
【0102】
本実施形態の無段変速装置は、低変速比モード(Loモード)と高変速比モード(Hiモード)とに切り替え可能になっており、図12は低変速比モード(Loモード)での作動状態を示している。
【0103】
バイパス軸30は、入力軸12および出力軸22の両方と同軸上に設けられている。バイパス軸30は、太陽ギヤ131の中心部および外歯ギヤ20の中心部を貫通し、太陽ギヤ131および出力軸22に対して独立に回転可能になっている。本実施形態では、太陽ギヤ131は、入力軸12と一体に回転するようになっている。
【0104】
バイパス軸30には、入力軸12からの回転力がクラッチ機構31(断続機構)を介して伝達されるようになっている。
【0105】
バイパス軸30は、差動歯車機構32の太陽ギヤ321に連結されている。差動歯車機構32は、太陽ギヤ321、遊星ギヤ322、キャリア323および内歯ギヤ324で構成されたシングルピニオン式のものである。太陽ギヤ321および遊星ギヤ322は、キャリア323に回転可能に支持されている。
【0106】
差動歯車機構32は無段変速機構13、15〜20と出力軸22との間に設けられており、差動歯車機構32と出力軸22との間には増速機23が設けられている。無段変速機構の外歯ギヤ20は差動歯車機構32のキャリア323に連結されている。したがって、差動歯車機構32のキャリア323は、無段変速機構の外歯ギヤ20と一体に回転する。
【0107】
図12では図示を省略しているが、バイパス軸30は、第1の回転制限機構をなす一方向クラッチ33を介して筐体11に支持されている。一方向クラッチ33は、バイパス軸30が無段変速機構の外歯ギヤ20および差動歯車機構32のキャリア323と同方向に回転するのを阻止し、バイパス軸30が無段変速機構の外歯ギヤ20および差動歯車機構32のキャリア323と逆方向に回転するのは許容する。
【0108】
なお、本実施形態では、一方向クラッチ33が阻止する回転の方向は、無段変速機構13、15〜20の一方向クラッチ17(第1の回転制限機構)が阻止する回転の方向と反対になる。
【0109】
差動歯車機構32の内歯ギヤ324は、増速機23の内歯ギヤ232に連結されている。図12では図示を省略しているが、差動歯車機構32の内歯ギヤ324および増速機23の内歯ギヤ232は、筐体11に対して回転可能に支持されている。増速機23の遊星ギヤ231は、自転はするが公転はしないように筐体11に支持されている。
【0110】
上記構成における作動を説明する。図12に示す低変速比モードでは、入力軸12からバイパス軸30への回転力の伝達がクラッチ機構31によって遮断される。そのため、入力軸12が駆動源により回転駆動されると、入力軸12の回転力は、太陽ギヤ131→遊星ギヤ132→入力側揺動アーム15→出力側揺動アーム16→外歯ギヤ18→外歯ギヤ20→キャリア323→遊星ギヤ322→内歯ギヤ324→増速機23→出力軸22という経路で伝達される。
【0111】
このとき、図12(b)に示すように、遊星ギヤ322が公転および自転するが、太陽ギヤ321は回転しない。これは、太陽ギヤ321に連結されたバイパス軸30の回転が一方向クラッチ33によって阻止されるからである。
【0112】
図12(c)は低変速比モード(Loモード)の作動を模式的に示すものである。低変速比モード(Loモード)では、入力軸12の回転力が無段変速機構13、15〜20のみを経て差動歯車機構32に伝達され、バイパス軸30には入力軸12の回転力が分配されない。
【0113】
一方、図13に示す高変速比モード(Hiモード)では、入力軸12の回転力がクラッチ機構31を介してバイパス軸30に伝達される。そのため、入力軸12の回転力は、低変速比モードの動力伝達経路に加えて、バイパス軸30→太陽ギヤ321→遊星ギヤ322→内歯ギヤ324→増速機23→出力軸22という経路でも伝達される。
【0114】
このとき、図13(b)に示すように、太陽ギヤ321がキャリア323と逆方向に回転するので、低変速比モードに比べて遊星ギヤ322の自転が増速される。その結果、低変速比モードに比べて内歯ギヤ324の回転数が高くなる。換言すれば、低変速比モードに比べて変速比が高くなる。
【0115】
図13(c)は高変速比モード(Hiモード)の作動を模式的に示すものである。高変速比モード(Hiモード)では、入力軸12からの動力が無段変速機構13、15〜20とバイパス軸30とに分配されて差動歯車機構32に伝達される。このため、無段変速機構13、15〜20にかかる負担を軽減して耐久性向上を図ることができる。
【0116】
図14(a)は低変速比モード(Loモード)における共線図であり、図14(b)は高変速比モード(Hiモード)における共線図である。図14(a)では、高変速比モード(Hiモード)における共線図を破線で示し、図14(b)では、低変速比モード(Loモード)における共線図を破線で示している。
【0117】
低変速比モード(Loモード)では太陽ギヤ321(クラッチ接続サン)が回転しないのに対し、高変速比モード(Hiモード)では太陽ギヤ321(クラッチ接続サン)がキャリア323の回転方向と逆方向に回転する(回転数がマイナスになる)ので低変速比モード(Loモード)に比べて内歯ギヤ324(リングギヤ)の回転数が高くなる。そのため、高変速比モード(Hiモード)では、得られる変速比の範囲(変速範囲)が低変速比モード(Loモード)に比べて高くなる。
【0118】
本実施形態によると、高変速比モード(Hiモード)では、バイパス軸30から差動歯車機構32の太陽ギヤ321に入力される回転と、無段変速機構13、15〜20から差動歯車機構32のキャリア323に入力される回転とが逆回転の関係になるので、動力循環が起こらない。そのため、動力循環による機械的損失が発生せず高効率である。
【0119】
また、バイパス軸30は入力軸12および出力軸22の両方と同軸上に設けられているので、バイパス軸30を設けても装置全体の体格が無段変速機構13、15〜20の径方向に大型化することを回避できる。
【0120】
(第6実施形態)
本第6実施形態は、上記各実施形態の無段変速装置を、車両用エアコンシステムの圧縮機に適用した場合における、圧縮機始動時の変速比制御に関するものである。
【0121】
図15は、車両用エアコンシステムの要部構成図であり、図16は、車両用エアコンシステムにおける機械動力回路および電気動力回路を示すブロック図である。圧縮機1は、、無段変速装置2、プーリ3aおよびベルト3bを介してエンジン4(内燃機関)に連結されている。
【0122】
圧縮機1としては、スクロール型等、種々の型式のものを用いることができる。無段変速装置2は、動力源をなすエンジン4の回転動力を所望の回転数に変化させて圧縮機1に伝達する。圧縮機1は、無段変速装置2の出力によって駆動され、冷凍サイクルの冷媒を吸入、圧縮する。
【0123】
上述のごとく、無段変速装置2は、調整機構14によってキャリア133の回転角度を変えると、出力側揺動アーム16に対する入力側揺動アーム15の作用点の位置が変化して変速比が変化する。本実施形態では、調整機構14を電動アクチュエータ5によって駆動する。
【0124】
電動アクチュエータ5は、インバータ6から出力される駆動電流IM (指令値)で駆動される。インバータ6は、電子制御装置7(ECU)によって制御される。すなわち、電動アクチュエータ5、インバータ6、および電子制御装置7は、調整機構14を駆動制御する駆動制御手段を構成している。
【0125】
電子制御装置7は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、制御信号を出力することによって、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0126】
電子制御装置7には、電動アクチュエータ5からのエンコーダパルスn、エアコン操作パネル8からのエアコンON/OFF信号、およびエンジン用電子制御装置9(エンジンECU)からのエンジン回転数NEng が入力される。
【0127】
電子制御装置7は、エアコン操作パネル8からエアコンOFF信号が入力されると、無段変速装置2の変速比が0になるように電動アクチュエータ5を制御する。これにより、エンジン4の動力が圧縮機1に伝達されず、圧縮機1が停止状態になる(エアコンOFF)。
【0128】
電子制御装置7は、エアコン操作パネル8からエアコンON信号が入力されると、エンジン4の動力が圧縮機1に伝達されるように電動アクチュエータ5を制御する。具体的には、電子制御装置7は、図17のフローチャートに示す制御処理を実行する。
【0129】
まず、ステップS100にて、エンジン用電子制御装置9からエンジン回転数NENG を取得する。
【0130】
次いで、ステップS110にて、エンジン回転数NEng および熱負荷に基づいて、圧縮機1の適切回転数NCompを演算する。熱負荷は、車室内温度、外気温、日射量等から求めることができる。
【0131】
次いで、ステップS120にて、エンジン回転数NEng および適切回転数NCompに基づいて無段変速装置2の目標変速比γCVT を演算する。具体的には、目標変速比γCVT を次の数式2によって演算する。
【0132】
(数2)
γCVT =NComp/NEng
次いで、ステップS130にて、無段変速装置2の変速比γを0から目標変速比γCVT まで変化させる際の変速比γの時間変化率、すなわち変速比γの時間変化の傾きdγ(t)/dtを演算する。具体的には、無段変速装置2に入力されるトルクTが無段変速装置2の通常動作トルクTN を超えないような傾きdγ(t)/dtを演算する。
【0133】
具体的には、傾きdγ(t)/dtが次の数式3の条件を満足している場合、無段変速装置2に入力されるトルクTCVT が無段変速装置2の通常動作トルクTN を超えない。
【0134】
【数3】

但し、Jは圧縮機1の慣性モーメントJ、TN は無段変速装置2の通常動作トルク、TCompは無段変速装置2の定格運転トルクである。無段変速装置2の通常動作トルクTN とは、ある環境下(例えば、外気温環境下)で定常的に決まるトルクのことであり、そのときの環境に応じて電子制御装置7によって演算されるものである。
【0135】
数式3の条件を満足する傾きdγ(t)/dtの範囲の中からどの値を選定するかについては、数式2の条件を超えない最大の値を選定するのが好ましい。傾きdγ(t)/dtが大きいほど、変速時間tCVT を短くできるからである。
【0136】
数式3の条件は、以下のようにして導出されたものである。まず、無段変速装置2に入力されるトルクTは、次の数式4で求めることができる。
【0137】
【数4】

この数式4より、以下の数式5に示す一階線形微分方程式が得られる。
【0138】
【数5】

この数式5の一階線形微分方程式を、t=0のときγ=0という条件で解くことによって、以下の数式6が得られる。
【0139】
【数6】

この数式6を0<T≦TN の条件に当てはめることによって、上述の数式3の条件が求められる。
【0140】
次いで、ステップS140にて、無段変速装置2の変速比γが傾きdγ(t)/dtで目標変速比γCVT に到達するように、電動アクチュエータ5を制御する。具体的には、インバータ6から電動アクチュエータ5に適切な駆動電流IM を出力させ、電動アクチュエータ5からのエンコーダパルスnの値が適切な値に達したらインバータ6から電動アクチュエータ5への駆動電流IM の出力を停止させる。
【0141】
図18は、図17のフローチャートを実行した時の作動を説明する図である。図18(a)、(b)において、実線は本実施形態を示し、破線は比較例を示している。
【0142】
図18(b)に示すように、比較例では、無段変速装置2の変速時間(変速比γが0から目標変速比γCVT まで変化する時間)が本実施形態に比べて短くなっている。したがって、変速比γの時間変化の傾きdγ(t)/dtが本実施形態に比べて大きくなっている。
【0143】
上述の数式6からわかるように、無段変速装置2に入力されるトルクTは、傾きdγ(t)/dtと相関関係がある。具体的には、傾きdγ(t)/dtが小さい場合、無段変速装置2に入力されるトルクTも小さくなり、傾きdγ(t)/dtが大きい場合、無段変速装置2に入力されるトルクTも大きくなる。
【0144】
そのため、傾きdγ(t)/dtが大きい比較例では、図18(a)に示すように、無段変速装置2に入力されるトルク(CVT入力トルク)TのピークトルクTP が通常動作トルクTN を超えてしまう。
【0145】
無段変速装置2にかかるトルクが通常動作トルクを超えてしまうと、エンジン4の負荷が大きくなり、最悪の場合エンジン4が停止してしまうので、圧縮機1の始動に合わせてエンジン4の回転数を上げる等の対策が必要となってしまう。
【0146】
これに対し、本実施形態では、無段変速装置2の変速時間tCVT が比較例に比べて長くなっていて、変速比γの時間変化の傾きdγ(t)/dtが比較例に比べて小さくなっているので、無段変速装置2に入力されるトルクTが通常動作トルクTN を超えないようにすることができる。そのため、圧縮機1の始動時にエンジン4の負荷が大きくなることを防止できる。
【0147】
また、本実施形態では、無段変速装置2の変速比γを0にすることができるので、クラッチを用いることなく圧縮機1を始動・停止させることができる。このため、クラッチを用いて圧縮機1を始動・停止させる場合に生じる不具合、すなわちクラッチのオン・オフ切替時の動作音やエンジン4の負荷変動が発生しないので、圧縮機1の始動・停止時にユーザーに不快感を与えることもない。
【0148】
また、無段変速装置2を用いて圧縮機1の回転数を調整するので、エンジン4の回転数の影響を受けることなく圧縮機1を適切な回転数で駆動することができる。
【0149】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、本発明の無段変速装置を冷凍サイクルの圧縮機に適用した例を示したが、本発明の無段変速装置は種々の回転機械に広く適用することが可能である。
【0150】
また、上記各実施形態では、入力側揺動アームの位置を調整することで作用点の位置を調整するようにしているが、出力側揺動アームの位置を調整することで作用点の位置を調整するようにしてもよい。
【0151】
また、上記各実施形態では、入力側揺動アームの溝に出力側揺動アームのピンを挿入することによって出力側揺動アームが入力側揺動アームから押圧されるようになっているが、これに限定されるものではなく、例えば、出力側揺動アームの所定部位を入力側揺動アームの側面に当接させることによって出力側揺動アームが入力側揺動アームから押圧されるようにしてもよい。
【0152】
また、上記第5実施形態では、上記第1実施形態に対してバイパス軸30を設けた例を示したが、これに限定されるものではなく、上記第2〜第4実施形態に対してバイパス軸30を設けてもよい。
【0153】
また、上記第6実施形態では、数式2の条件を満足する傾きdγ(t)/dtを選定しているが、これに限定されるものではなく、傾きdγ(t)/dtの選定条件を種々変形可能である。
【符号の説明】
【0154】
12 入力軸
13 遊星歯車機構(回転−揺動変換機構)
131 太陽ギヤ
132 遊星ギヤ
133 キャリア(支持部材)
134 内歯ギヤ
14 調整機構
15 入力側揺動アーム
16 出力側揺動アーム
17 一方向クラッチ(揺動−回転変換機構)
18 外歯ギヤ(揺動−回転変換機構)
19 内歯ギヤ(揺動−回転変換機構)
20 外歯ギヤ(揺動−回転変換機構)
22 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側揺動アーム(15、352)と、
前記入力側揺動アーム(15)を揺動自在に支持する支持部材(133、32)と、
入力軸(12)の一方向の回転運動を前記入力側揺動アーム(15)の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構(13、30、31)と、
前記入力側揺動アーム(15)の所定部位から押圧されることによって揺動する出力側揺動アーム(16)と、
前記出力側揺動アーム(16)の揺動運動を出力軸(22)の一方向の回転運動に変換する揺動−回転変換機構(17、18、19、20)と、
前記出力側揺動アーム(16)に対する前記入力側揺動アーム(15)の作用点の位置を前記入力側揺動アーム(15)の揺動半径の方向に変化させることによって前記出力側揺動アーム(16)の揺動量を調整可能な調整機構(14、33)とを備えることを特徴とする無段変速装置。
【請求項2】
前記回転−揺動変換機構(13、30、31)は、前記入力側揺動アーム(15)を駆動する駆動ピン(137)を有し、
前記入力側揺動アーム(15)には、前記駆動ピン(137)が挿入される第1の溝(151)が形成され、
前記出力側揺動アーム(16)の揺動軸は、その軸方向から見たときに、前記入力側揺動アーム(15)の揺動角を2等分する仮想揺動中心線に対してずれて配置され、
前記作用点は、前記第1の溝(151)よりも前記出力側揺動アーム(16)の前記揺動軸側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の無段変速装置。
【請求項3】
前記出力側揺動アーム(16)は、前記入力側揺動アーム(15)によって押圧されるピン(161)を有し、
前記入力側揺動アーム(15)には、前記ピン(161)が挿入される第2の溝(152)が形成され、
前記第1の溝(151)および前記第2の溝(152)は、互いに非平行な直線形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の無段変速装置。
【請求項4】
前記調整機構(14、33)は、前記出力側揺動アーム(16)に対する前記支持部材(133、32)の相対位置を変化させる機構で構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の無段変速装置。
【請求項5】
前記回転−揺動変換機構(13)は、太陽ギヤ(131)、遊星ギヤ(132)、キャリア(133)および内歯ギヤ(134)を有する遊星歯車機構で構成され、
前記入力側揺動アーム(15)は、前記キャリア(133)に揺動自在に支持され且つ前記遊星ギヤ(132)の自転によって揺動し、
前記支持部材は前記キャリア(133)で構成され、
前記調整機構(14)は、前記キャリア(133)の回転角度を所定範囲内の任意の角度で固定可能にする機構で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の無段変速装置。
【請求項6】
前記回転−揺動変換機構は、前記入力軸(12)に連結された偏心カム(30)と、前記出力側揺動アーム(16)を前記入力側揺動アーム(15)側に付勢する弾性部材(31)とで構成され、
前記調整機構(14)は、前記偏心カム(30)の軸に対する前記支持部材(32)の回転角度を所定範囲内の任意の角度で固定可能にする機構で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速装置。
【請求項7】
前記遊星ギヤ(132)に揺動自在に連結された梃子クランク機構(35)を備え、
前記梃子クランク機構(35)は、複数本の連接棒(351、352)を有し、
前記出力側揺動アーム(16)は、前記複数本の連接棒(351、352)のうち所定の連接棒(352)の所定部位から押圧されることによって揺動し、
前記入力側揺動アームは、前記所定の連接棒(352)によって構成されていることを特徴とする請求項5に記載の無段変速装置。
【請求項8】
前記調整機構(14)は、前記作用点の位置を、前記入力側揺動アーム(15)のうち揺動半径が0になる零点位置に調整可能になっており、
前記入力側揺動アーム(15)は、前記作用点の位置を前記零点位置に調整したときの前記作用点の位置公差を吸収する公差吸収部(152a)を有していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の無段変速装置。
【請求項9】
揺動−回転変換機構(17、18、19、20)で変換された回転運動が伝達される差動歯車機構(32)と、
前記入力軸(12)の回転運動を、前記回転−揺動変換機構(13、30、31)、前記入力側揺動アーム(15)、前記出力側揺動アーム(16)および前記揺動−回転変換機構(17、18、19、20)をバイパスして前記差動歯車機構(32)に伝達するバイパス軸(30)とを備え、
前記差動歯車機構(32)は、前記無段変速機構(13、15〜20)および前記バイパス軸(30)から伝達された回転を前記出力軸(22)に伝達することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の無段変速装置。
【請求項10】
前記入力軸(12)、前記出力軸(22)および前記バイパス軸(30)は、互いに同軸上に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の無段変速装置。
【請求項11】
前記入力軸(12)から前記バイパス軸(30)への回転伝達を断続する断続機構(31)を備え、
前記断続機構(31)が前記バイパス軸(30)への回転伝達を断続することによって、得られる変速比の範囲が変化することを特徴とする請求項9または10に記載の無段変速装置。
【請求項12】
前記断続機構(31)は、クラッチ機構で構成されていることを特徴とする請求項11に記載の無段変速装置。
【請求項13】
前記バイパス軸(30)の回転方向を制限する第1の回転制限機構(33)を備え、
前記第1の回転制限機構(33)は、前記無段変速機構(13、15〜20)から前記差動歯車機構(32)に伝達される回転の方向と反対の方向に前記バイパス軸(30)が回転することを許容し、前記無段変速機構(13、15〜20)から前記差動歯車機構(32)に伝達される回転の方向と同じ方向に前記バイパス軸(30)が回転することを制限するものであることを特徴とする請求項11または12に記載の無段変速装置。
【請求項14】
前記揺動−回転変換機構は、
前記出力側揺動アーム(16)の軸の回転を前記差動歯車機構(32)に伝達する歯車機構(18、19、20)と、
前記出力側揺動アーム(16)の軸から前記歯車機構(18、19、20)に伝達される回転を一方向に制限する第2の回転制限機構(17)とを有し、
前記歯車機構(18、19、20)は、前記出力側揺動アーム(16)の軸から前記第2の回転制限機構(17)を介して伝達された回転と、前記差動歯車機構(32)に伝達する回転とが互いに逆方向になるように構成され、
前記第2の回転制限機構(17)が制限する回転の方向は、前記第1の回転制限機構(33)が制限する回転の方向と反対になっていることを特徴とする請求項13に記載の無段変速装置。
【請求項15】
前記差動歯車機構(32)は、
前記無段変速機構(13、15〜20)から回転が伝達されるキャリア(323)と、
前記バイパス軸(30)から回転が伝達される太陽ギヤ(321)と、
前記出力軸(22)に回転を伝達する内歯ギヤ(324)とを有していることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1つに記載の無段変速装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1つに記載の無段変速装置(2)と、
前記無段変速装置(2)の出力によって駆動され、冷媒を吸入・圧縮する圧縮機(1)と、
前記調整機構(14)を駆動制御する駆動制御手段(5、6、7)とを備え、
前記調整機構(14)は、前記作用点の位置を、前記入力側揺動アーム(15)のうち揺動半径が0になる零点位置に調整可能になっており、
前記駆動制御手段(5、6、7)は、前記圧縮機(1)の始動時において、前記無段変速装置(2)にかかるトルク(T)が通常動作トルク(TN )以下となるように前記調整機構(14)を駆動制御することを特徴とするエアコンシステム。
【請求項17】
前記駆動制御手段(5、6、7)は、前記圧縮機(1)の始動時において、前記無段変速装置(2)の変速比(γ)を0から目標変速比(γCVT )まで変化させる際の前記変速比(γ)の時間変化率(dγ(t)/dt)を演算し、前記時間変化率(dγ(t)/dt)に基づいて前記調整機構(14)を駆動制御することを特徴とする請求項16に記載のエアコンシステム。
【請求項18】
前記駆動制御手段(5、6、7)は、以下の数式1の条件を満たすように前記時間変化率(dγ(t)/dt)を演算することを特徴とする請求項17に記載のエアコンシステム。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−237028(P2011−237028A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9099(P2011−9099)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】