説明

無線機用テストシステム

【課題】妨害波、および、通信端末に付加的に組み込まれたテレビ受信機能等の検査用信号の発生を1台の検査装置で行うことが可能な無線機用テストシステムを実現する。
【解決手段】無線機用テスタを用いて無線装置の性能を検査する無線機用テストシステムにおいて、前記無線機用テスタに、少なくとも妨害波、テレビ受信機能およびGPS受信機能を含む無線受信機能の検査を行うためのベースバンド信号発生器を組み込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機(例えば携帯電話機)のテストシステムに関し、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験において必要となる妨害波を発生するとともに、通信端末に付加的に組み込まれたテレビ受信機能等の無線受信機能の検査用信号の発生を可能としたテストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機の性能をテストする項目の一つとして、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験がある。図2はこのような試験に用いられる無線機用テストシステムの一例を示すブロック構成図である。
【0003】
図2において、21は被検査端末である携帯電話機、22はサーキュレータ、23はパワーコンバイナ、24は携帯電話機テスタ、25はRF信号発生器、26は制御用PCである。上述の構成において、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験を行うには、被検査端末1との通信用信号に加えて、妨害波を付加する必要がある。
【0004】
即ち、携帯電話機テスタ24からの送信信号にRF信号発生器25で発生した妨害波をパワーコンバイナ23により付加し、サーキュレータ22で送受信信号を分離して被検査端末1に接続していた。
【0005】
また、自動検査を行うためには携帯電話機テスタ24とRF信号発生器25を協調して動作させる必要がある。そのため、通常、制御用PC26をGP−IB27等を用いて携帯電話機テスタ24とRF信号発生器25に接続し、制御用PC26上で自動検査ソフトウェアを実行して検査を行っていた。
【0006】
図3は他の従来例を示すブロック構成図である。
図3において、被検査端末1及び2は、携帯電話であり、接続部17および信号切替部3を介して端末制御部5,6に接続されている。
【0007】
端末制御部5及び6のハード構成は、互いに同じであり、RAM及びCPU(図示省略)を有している。これら、端末制御部5,6は被検査端末1,2に対しては、擬似基地局として機能する。
【0008】
試験信号発生部5a,6aは、所定のクロックを基に、I(t)、Q(t)のベースバンド信号を発生するととも、そのベースバンド信号には、被検査端末1,2に対して擬似基地局として働くために必要な制御情報を含ませている。制御情報としては、被検査端末1,2と擬似基地局とでやりとりする位置登録、着呼、切断、その他の試験に必要な指示を含んでいる。
【0009】
RF部5b,6bは、試験信号発生部5a,6aからのベースバンド信号で変調して、被検査端末1,2と同じ、通信方式及び周波数に変換した試験信号を被検査端末1,2に送るととともに、その試験信号を受けた被検査端末1,2からの応答信号を受信し、測定部7、8へ送る。
【0010】
測定部7,8は、RF部5b,6bからのIF(中間周波数)信号を受けて、直交復調してI(t)、Q(t)信号に変換したあと復号部でデコードされ、データ解析部で測定のための解析が行われる。
【0011】
信号切替部3は、スイッチS1〜S4を有し、端末制御部5,6、測定部7,8及び被検査端末1,2の間にあって、製造工程において試験する際、被検査端末1,2の数、通信方式の種類、測定項目、或いは測定方法等に対応して組合せを変えるための切替を模式的に示している。
【0012】
トータル制御部9は、プログラム管理部10、測定制御部11、データ処理部12、及び表示制御部14を備えている。
プログラム管理部10は、端末制御部5、6が、被検査端末1,2の通信方式に対応して制御するためのプログラムを、予めメモリ10aに記憶しておき、測定制御部11からの指示で必要なプログラムを出力する。
【0013】
測定制御部11は、被検査端末1,2の通信方式に応じて、プログラムをメモリ10aから読み出して、各端末制御部5,6へ送るととともに、測定(試験)項目に応じて、共通バス4を通して各部を制御する。測定部1,2及び端末制御部5,6は、共通バス4に接続されている。
【0014】
データ処理部12は、測定部7,8が測定したデータを処理、管理し、データメモリ13に記憶させる。
表示制御部14は、測定制御部11からの指示を受けて、測定項目、測定手順、操作等をガイドする表示を行うとともに、データフォーマットを表示し、測定したデータを表示する。
【0015】
外部インタフェース16は、外部から制御するためのインタフェースであり測定制御部11と接続されるが、測定制御部11は、複数の端末制御部5,6及び測定部7,8を纏めて制御している。
【0016】
表示部15では、測定結果と測定指示である制御情報を被検査端末1,2毎に表示する。測定結果は、データメモリ13に被検査端末1,2毎に記憶し、操作部18からの指示を受けて、表示制御部14がデータメモリ12から読み出して、表示制御し、表示部15に表示させる。
【0017】
なお、無線機テストシステムの先行技術としては例えば下記の特許文献に示されたものがある。
【0018】
【特許文献1】特開2005-12274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上述の図2に示す従来例においては、携帯電話機テスタ24以外にRF信号発生器25や制御用PC26が必要となり、検査システムの規模・コスト・消費電力が大きくなるという問題があった。
【0020】
さらに、被検査端末1と携帯電話機テスタ24・RF信号発生器25の間に、パワーコンバイナ23やサーキュレータ22が別途必要となり、被検査端末1に印加される信号のレベル確度を保証するには、このパワーコンバイナ23やサーキュレータ22による損失を保証するための校正が必要となるという問題もあった。
【0021】
図3に示す従来例においては、携帯電話機テスタ単体で試験が行えるため、図2に示す従来例のような問題点はないが、端末制御部5,6のうちの一方を妨害波発生に使用している間、測定部の一方は動作せず、無駄になるという問題がある。
また、端末制御部5,6は携帯電話の通信方式をサポートするだけであるため、他の通信・放送方式の信号を発生することができないという問題があった。
【0022】
従って、本発明は、携帯電話機テスタにRF信号発生器を組み込み、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験において必要となる妨害波、および、通信端末に付加的に組み込まれたテレビ受信機能等の無線受信機能の検査用信号の発生を1台の検査装置で行うことが可能な無線機用テストシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、請求項1記載の無線機用テストシステムの発明においては、
無線機用テスタを用いて無線装置の性能を検査する無線機用テストシステムにおいて、前記無線機用テスタに、少なくとも妨害波、テレビ受信機能およびGPS受信機能を含む無線受信機能の検査を行うためのベースバンド信号発生器を組み込んだことを特徴とする。
【0024】
請求項2においては、請求項1記載の無線機用テストシステムの発明において、
前記妨害波検査と無線受信機能の検査のための信号は前記ベースバンド信号発生器の出力信号を制御する測定制御手段を用いて検査ごとに切替えて行うことを特徴とする。
【0025】
請求項3においては、請求項1又は2に記載の無線機用テストシステムの発明において、検査の進行状況および測定部での測定結果を表示する表示手段を設けたことを特徴とする。
【0026】
請求項4においては、請求項1乃至3のいずれかに記載の無線機用テストシステムの発明において、前記無線装置は携帯電話であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1乃至4によれば、次のような効果がある。
無線機用テスタを用いて無線装置の性能を検査する無線機用テストシステムにおいて、前記無線機用テスタに、少なくとも妨害波、テレビ受信機能およびGPS受信機能を含む無線受信機能の検査を行うためのベースバンド信号発生器を組み込んだので、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験において必要となる妨害波、および、通信端末に組み込まれたテレビ受信機能やGPS受信機能等の検査用信号の発生を1台の検査装置で発生できる。
また、妨害波を付加するために必要な回路が検査装置に含まれているため、外部で校正を行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の一実施例を示すブロック構成図である。図において32は携帯電話機テスタであり、被検査端末1を自動的に検査する。
本発明の携帯電話機テスタ32においては、被検査端末1との通信を行うため、測定制御部43は、試験信号発生部48を制御して被検査端末1への送信ベースバンド信号を発生させる。
【0029】
ベースバンド信号はRF送信部47で変調され、信号切替部31を介して被検査端末1に入力される。信号切替部31では、パワーコンバイナ23でRF送信部47からの送信信号と、RF信号発生部41からの妨害信号を加算した後、サーキュレータ22を介して出力する。
【0030】
サーキュレータ22では、試験用送信信号を被検査端末1に対して出力すると同時に、被検査端末1からの送信信号をRF受信部39に入力する。
被検査端末1の送信信号は、RF受信部39で周波数変換されてIF信号となり、測定部40に入力される。
【0031】
測定部40ではIF信号を復調し、試験信号発生部48に対して被検査端末1からの応答を送る。同時に、被検査端末1の送信電力やスペクトルなどを測定する。
隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験を行うとき、測定制御部43はベースバンド信号発生部42を制御して妨害波のベースバンド信号を発生させる。
【0032】
このベースバンド信号は、RF信号発生部41で変調されてRF信号となり、信号切替部31で測定用送信信号に加算されて出力される。
信号切替部31では、高周波スイッチ36を切り替え、RF信号発生器41からの妨害信号をパワーコンバイナ23に入力する。
【0033】
一方、被検査端末1に搭載されたテレビ受信機能やGPS受信機能等の検査を行うときは、測定制御部43はベースバンド信号発生部42を制御してテレビやGPSのベースバンド信号を発生させる。このベースバンド信号は、RF信号発生部41で変調されてRF信号となり、信号切替部31を通して出力される。
【0034】
信号切替部31では、高周波スイッチ36を切り替え、RF信号発生器41からのRF信号を外部(点線で示す部分)に出力する。測定制御部43は、検査の進行状況や測定部40での測定結果を操作・表示制御部44にて表示する。
【0035】
上述の構成によれば、妨害波や各種試験信号が発生可能なRF信号発生器を携帯電話機テスタに組み込んでいるため、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験において必要となる妨害波、および、被検査端末1に組み込まれたテレビ受信機能等の検査用信号の発生を1台の検査装置で発生させることができる。更に、妨害波を付加するために必要な回路が検査装置に含まれているため、外部で校正を行う必要がない。
【0036】
なお、本実施例では送信信号と受信信号を分離するためにサーキュレータを使用したが、パワースプリッタを使用しても良い。
また、本実施例ではRF受信部でIF信号に周波数変換していたが、復調してベースバンド信号とするようにしても良い。
【0037】
また、本実施例において、ベースバンド信号発生部42には、予め作成しておいた波形データを繰り返し出力する任意波形発生器を用いることができる。また、波形データをPC上のソフトウエアで作成することで、ハードウェアを変更せずに新たな試験用信号を発生することができる。
【0038】
また、本実施例において、ベースバンド信号発生部42にディジタル信号処理プロセッサを組み込み、ディジタルデータをリアルタイムでディジタル変調して試験用信号を発生することもできる。この場合、繰返し周期の長い試験信号を低コストで作成することができる。
【0039】
また、本実施例では、RF送信部47、RF受信部39、RF信号発生部41は独立したブロックとして表示したが、それぞれで共通的に使用する基準信号等を発生する部分を共用することにより、回路規模・消費電力・コストを下げることができる。
【0040】
本発明は、携帯電話機テスタにRF信号発生器を組み込み、隣接チャネル選択度やブロッキング特性の試験では、RF信号発生部で妨害波を発生して被検査端末との通信信号に加算して出力し、通信端末に付加的に組み込まれたテレビ受信機能等の検査の時は、RF信号発生器で発生した検査用信号を独立して出力するので、1台の検査装置で妨害波付加試験と端末の付加機能の試験を両方とも可能な無線機用テストシステムを実現することができる。
【0041】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。本発明では無線機として携帯電話機を用いたが、他の移動体無線機であってもよい。従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例を示す無線機テストシステムの構成図である。
【図2】無線機用テストシステムの従来例を示す構成図である。
【図3】無線機用テストシステムの他の従来例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1a 被検査端末(携帯電話機)
3,31 信号信号切替部
4 共通バス
5,6 端末制御部
7,8,40 測定部
9 トータル制御部
10 プログラム管理部
10a メモリ
11,43 測定制御部
12 データメモリ
13 データ処理部
14 表示制御部
15 表示部
16 外部インタフェース
18 操作部
22 サーキュレータ
23 パワーコンバイナ
24,32 携帯電話機テスタ
25 信号発生器
26 制御用PC
27 GP−IB
36 高周波スイッチ
39 RF受信部
41 RF信号発生部
42 BB信号発生部
43 測定制御部
44 表示・操作制御部
47 RF送信部
48 試験信号発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機用テスタを用いて無線装置の性能を検査する無線機用テストシステムにおいて、前記無線機用テスタに、少なくとも妨害波、テレビ受信機能およびGPS受信機能を含む無線受信機能の検査を行うためのベースバンド信号発生器を組み込んだことを特徴とする無線機用テストシステム。
【請求項2】
前記無線受信機能検査のための信号は前記ベースバンド信号発生器の出力信号を制御する測定制御手段を用いて検査ごとに切替えて行うことを特徴とする請求項1記載の無線機用テストシステム。
【請求項3】
検査の進行状況および測定部での測定結果を表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線機用テストシステム。
【請求項4】
前記無線装置は携帯電話であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線機用テストシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−208349(P2007−208349A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21626(P2006−21626)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】