説明

無線管理システム

【課題】 符号化された監視カメラの画像データを1画面単位でのフレーム落ちが少なく、リアルタイムでの長時間の連続伝送を可能とする無線管理システムを実現する。
【解決手段】 管理送受信部21から送信されるディジタル信号の電界強度を電界強度測定部162bで測定し、カメラ送受信部16からディジタル信号が送信された場合における、管理送受信部213で測定される電界強度を受信強度推定部141で推定し、ディジタル信号の圧縮率をパラメータとした電界強度とカメラ送受信部から送信されるディジタル信号のビット誤り率との関係を示す誤り表を記憶部151に格納し、誤り表に基づいて、ディジタル信号のビット誤り率を所定値以下にするように多値数を制御部14で制御するようにして無線セキュリティカメラ装置1を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラで撮像した監視画像を管理システムに無線伝送するに際し、監視画像の2次利用に障害を与えることなくセキュリティ性能を補償して符号化された監視画像を無線伝送する無線管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近になり、監視カメラで撮影した監視画像を管理装置に無線伝送し、監視画像を記録する一方、伝送された監視画像を分析して監視領域に異常があるか否かを判断し、異常がある場合には警報装置を稼動させる、監視センターに連絡するなどの無線式監視カメラ装置の活用がなされるようになってきた。
一方、監視画像を伝送するためには、符号化装置により符号化し情報量を圧縮して伝送する方がアナログ伝送するよりも小さな周波数帯域で、且つ高画質で伝送できるなど好ましい。その圧縮方式としてはいわゆるモーションJPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)や、MPEG(moving picture experts group)などの符号化方式が用いられる。
無線式監視カメラ装置の無線伝送は、免許取得が不要な無線LANシステムを用いるのが便利である。
【0003】
特許文献1には、監視カメラのズーム、フォーカス制御と共に圧縮される監視画像の画素数や圧縮率などを管理装置側から無線制御出来るようにしたワイヤレス監視システムが開示されている。
特許文献2には、無線伝送路の状況を推定することにより送受信部で適当と判断される変調方式を選択し、その変調方式で通信を行う送受信装置が開示されている。
【特許文献1】特開平9−93179号公報
【特許文献2】特開2002−290246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているワイヤレス監視システムでは、圧縮画像データに1画面単位でのフレーム落ちが生じた後に、例えば画像の圧縮率を低下させるようにして監視画像を伝送するため、監視画像の伝送が途切れることがある。監視画像に途切れがあると監視画像データの2次利用を十分に行うことが出来なく、信頼性の高い無線式セキュリティシステムを実現することが出来ない。
【0005】
また、特許文献2に開示される送受信装置は、送受信部で適当とした変調方式を選択して送受信を行う場合ではセキュリティ画像の伝送に適した変調方式が選択されない。即ち、変調方式の選択はパソコン(パーソナルコンピュータ)で用いられれるディジタルデータの送受信に適した方式に設定される。パソコンは、受信するデータに誤りがあるとその誤り部分のデータを再送要求する。最初に伝送されたデータの誤り部分を再送データで置換しデータ受信が行われる。しかし、符号化された監視画像データを連続して送信する場合では1フレーム分の画像データの一部に誤りデータが含まれると1フレーム単位でのフレーム落ちが生じてしまう。
汎用の無線LANシステムを用い、符号化された監視カメラの画像データを高品質で長時間連続して伝送する無線監視カメラ装置を実現することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、汎用の無線LANシステムを用い、符号化された監視カメラの画像データを1画面単位でのフレーム落ちが少なく、リアルタイムでの長時間連続伝送を可能とする無線管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明における第1の発明は、被写体を撮影してディジタル撮像画像を得る無線カメラ装置と、前記無線カメラ装置から送信される前記ディジタル撮像画像に基づいて、前記被写体を監視する監視装置と、を有し、前記無線カメラ装置の送信部から送信する1次信号が前記監視装置の受信部で受信した後、前記1次信号に対応する2次信号を前記無線カメラ装置に送信して、前記無線カメラ装置の受信部で受信された際の前記2次信号の送信電力が前記ディジタル撮像画像を前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、適している場合には前記2次信号の送信電力で送信し、適していない場合には、前記2次信号の送信電力を変化させて前記ディジタル撮像画像を前記監視装置に送信する無線管理システムにおいて、前記無線カメラ装置から前記2次信号の電力で送信した場合の前記監視装置で受信される受信電力を推定する受信電力推定部と、前記ディジタル撮像画像を符号化する際の圧縮率をパラメータとした前記監視装置で受信される受信電力と前記ディジタル撮像画像のビット誤り率との関係を示す誤り表を格納する記憶部と、前記誤り表に基づいて、前記受信電力推定部で推定された前記受信電力が前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、送信に適するように前記無線カメラ装置の送信部から前記ディジタル撮像画像を出力させる制御部と、を備えたことを特徴とする無線管理システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線カメラ装置から2次信号の電力で送信した場合の監視装置で受信される受信電力を推定する受信電力推定部と、ディジタル撮像画像を符号化する際の圧縮率をパラメータとした前記監視装置で受信される受信電力と前記ディジタル撮像画像のビット誤り率との関係を示す誤り表を格納する記憶部と、前記誤り表に基づいて、前記受信電力推定部で推定された前記受信電力が前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、送信に適するように前記無線カメラ装置の送信部から前記ディジタル撮像画像を出力させる制御部と、を備えているので、汎用の無線LANシステムを用い、符号化された監視カメラの画像データを1画面単位でのフレーム落ちが少なく、リアルタイムでの長時間連続伝送を可能とする無線管理システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の無線管理システムの実施に係る無線セキュリティシステムについて図1〜図8を用いて説明する。
図1は、本発明の実施に係る、無線管理システムの実施に係る無線セキュリティシステムの構成例を示すブロック図である。
図2は、本発明の実施に係る、無線セキュリティシステムの要部のCPUの機能を示す図である。
図3は、本発明の実施に係る、無線セキュリティシステムのカメラ側送受信部の構成例を示す図である。
図4は、本発明の実施に係る、無線装置の監視側送受信部の構成例を示す図である。
図5は、本発明の実施に係る、無線セキュリティシステムの要部のメモリに格納されるテーブル例を示す図である。
図6は、本発明の実施に係る、受信電力と画像フレーム誤り率の関係を、画像圧縮率をパラメータとして示した図である。
図7は、本発明の実施に係る、メモリに格納される受信電力比較用参照テーブルの記述例を示した図である。
図8は、本発明の実施に係る、無線セキュリティカメラ装置の動作をフローチャートで示した図である。
【0010】
その無線セキュリティシステムは汎用の無線LANシステムを用い、符号化された監視カメラの画像データを1画面単位でのフレーム落ちが少なく、リアルタイムでの長時間連続伝送を可能とする無線管理システムを実現するという目的を、無線カメラ装置から2次信号の電力で送信した場合の監視装置で受信される受信電力を推定する受信電力推定部と、ディジタル撮像画像を符号化する際の圧縮率をパラメータとした前記監視装置で受信される受信電力と前記ディジタル撮像画像のビット誤り率との関係を示す誤り表を格納する記憶部と、前記誤り表に基づいて、前記受信電力推定部で推定された前記受信電力が前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、送信に適するように前記無線カメラ装置の送信部から前記ディジタル撮像画像を出力させる制御部とを備えるようにして実現した。
【0011】
無線セキュリティシステムの構成について述べる。
図1に示す無線セキュリティシステムは、撮像部11、A/D(Analog to Digital)変換部12、画像符号化部13、CPU(Central Processing Unit)14、メモリ15、無線LAN(Local Area Network)処理部16、及び内部バス19よりなる無線セキュリティカメラ装置1と、監視側送受信部21を有する無線装置2と、有線LAN29と、有線LAN処理部31、CPU32、メモリ33、ディスプレイコントローラ34、画像復号化部35、ハードディスク36、解析部37、及び内部バス39よりなる監視装置3と、ディスプレイ41とより構成される。カメラ側送受信部16にはアンテナ18が接続される。監視側送受信部21にはアンテナ28が接続される。
図2に示すCPU14は、AP(Access Point)受信電力推定機能141、初期設定処理機能142、画像圧縮率変更命令機能143、画像圧縮率検出機能144、画像データ用受信電力比較機能145、及び外部からの誤り許容通知確認機能146を有する。
図3に示すカメラ側送受信部16は、MAC(Media Access Control)処理器161と、ベースバンド処理機能162aに加えて受信電力計測機能162bを有するベースバンド処理器162と、無線周波処理器163とより構成される。
図4に示す監視側送受信部21は、MAC処理器211と、ベースバンド処理機能212aを有するベースバンド処理器162と、無線周波処理器213とより構成される。
図5に示すRAM15には画像データ用受信電力比較用参照テーブル151及び非セキュリティモードマーク152の記憶領域がある。
【0012】
無線セキュリティカメラ装置の動作について述べる。
まず、無線セキュリティカメラ装置1は無線装置2の監視側送受信部21で受信される受信電力と伝送された画像のフレーム誤り率の関係を、画像圧縮率をパラメータとして得て記憶する。得られた受信電力、伝送された画像のフレーム誤り率、及び画像圧縮率の関係を受信電力参照テーブルに記述し、メモリ15に記憶する。
【0013】
次に、CPU14は、無線装置2の監視側送受信部21に対してビーコンの送信を依頼する。カメラ側送受信部16は、監視側送受信部21から所定の送信電力で送信されるビーコンの受信電力を計測し、計測結果をCPU14に伝送する。CPU14は監視側送受信部21から送信されたビーコンの送信電力と受信電力の関係から、カメラ側送受信部16から所定の電力で送信される信号が監視側送受信部21で受信される受信電力を推定する。
【0014】
監視側送受信部21で推定された受信電力を、メモリ15に記憶されている受信電力参照テーブルと比較し、監視側送受信部21で受信される所定の圧縮率で圧縮符号化した信号の画像フレームの誤り率を推定する。推定された画像フレームの誤り率を基に、セキュリティ目的の品質を確保して監視画像が送信可能であるか否かを検出する。送信可能であるとして検出された場合は撮像部11から出力され、画像符号化部13で符号化された符号化信号はカメラ側送受信部16から所定の電力で送信される。
推定された画像フレームの誤り率により、セキュリティ目的の監視画像が送信可能でないとして検出された場合には、CPU14は画像符号化部13で行われる符号化時の圧縮率を変更し、所定の画像フレームの誤り率を確保する送信が可能かを検出する。伝送可能な符号化時の圧縮率がある場合に、カメラ側送受信部16は圧縮率を変更して符号化信号を生成し、符号化信号を監視側送受信部21から送信する。
【0015】
監視側送受信部21は送信された信号を受信して符号化信号を得、得られた符号化信号を監視装置3に有線LAN29を介して伝送する。監視装置3の画像復号化部35は、有線LAN処理部31を介して得られた符号化信号を復号化して監視画像を得る。ディスプレイコントローラ34は監視画像を所定のフォーマットの信号形式でディスプレイ41に送り、監視画像を表示させる。監視画像はハードディスク36に記録される。解析部37は、伝送された監視画像の動き解析やパターン認識などにより監視領域に異常が発生したか否かを判断する。異常時には出口をロックしたり、異常情報が警備センターや使用者に連絡される。受信信号の誤り率が所定値以下であれば、無線セキュリティカメラ装置1は送信された監視画像を基に上記の動作を行うことができる。
【0016】
受信電力が小さく受信信号の誤り率が所定値を超え、誤りデータが受信される場合は符号化された監視画像を正常に復号化することはできない。有線LAN処理部31はカメラ側送受信部16にエラーデータの再送を要求する。しかし、再送要求は連続して送信されるフレーム単位の符号化画像の送信後に行われるため、誤りデータが再送されるまでには所定の時間を要する。セキュリティ目的の監視画像の送信は所定の受信信号の誤り率以下で送信される必要がある。
監視側送受信部21で、セキュリティ目的の品質で画像が受信可能な圧縮率が存在しない場合などは無線セキュリティカメラ装置1の図示しない表示部に、無線装置2との通信条件の良い場所に移動するように移動要求を表示する。セキュリティ品質が確保できていないことは警告ランプの点滅、あるいは警告音により通知しても良い。通信条件が改善された後に監視側送受信部21の受信電力の検査を再度実行する。但し、使用者によりセキュリティ目的の監視画像を送信しなく、撮像部で撮影された画像のみの送信を行えば良いとされる操作が図示しない操作部で行われた場合は、セキュリティ目的の監視を行っていないことを示す非セキュリティマークを表示しつつ撮影画像の送信を行う。セキュリティ目的でない画像は、例えば1分に数回のブロックノイズが生じたり、通信路の状況により時々画像がフリーズするなどの不安定な画像である。被写体の確認程度は可能であるが、受信される画像を分析してセキュリティ面での異常を検出することは出来ない。
【0017】
次に、詳細に説明する。
図2を参照し、CPU14について述べる。
CPU14は無線セキュリティカメラ装置1の動作制御を行う回路部である。
まず、初期設定処理機能142は、無線セキュリティカメラ装置1の電源投入時などにおいて無線装置2の監視側送受信部21に対してビーコンの送信要求を発行する。そのビーコンは、例えばIEEE802.11(Institute of Electrical and Electronics Engineers 802.11 activities)に規定される方法によるビーコンである。監視側送受信部21から送信されるビーコンは所定の送信電力で送信される。CPU14はカメラ側送受信部16で受信されたビーコンの受信電力の情報を得る。
AP受信電力推定機能141は、監視側送受信部21が所定の電力で送信する信号とカメラ側送受信部16で受信される受信電力の関係から、カメラ側送受信部16に設定されている送信電力値で送信した場合に監視側送受信部21で受信される受信電力を推定する。
【0018】
画像データ用受信電力比較機能145は、推定された受信電力をメモリ15に記憶される受信電力参照テーブルと比較し、受信信号の誤り率を推定する。画像圧縮率検出機能144は推定された受信信号の誤り率がセキュリティ目的監視画像を送信するのに不足であると判断された場合には、画像信号の圧縮率を変更して所定の受信信号の誤り率、即ち伝送された画像フレームの所定の誤り率が得られるかを検出する。画像圧縮率を変更して所望の受信信号の誤り率が得られる場合に、画像圧縮率検出機能144は画像圧縮率検出信号を生成する。画像圧縮率検出信号が生成された場合に、画像圧縮率変更命令機能143は画像符号化部13に対して現在設定されている画像圧縮率の変更を命令する。
画像圧縮率検出機能144はセキュリティ目的監視画像を送信するための画像圧縮率がないとして検出した場合に、使用者からセキュリティ目的の監視を行わずに、撮像部で撮影された画像のみの送信を行いたいとして操作された場合に、誤り許容通知確認機能146は非セキュリティマークを撮影画像に多重表示させ、撮影された画像の送信を行わせる。
【0019】
図3を参照してカメラ側送受信部について述べる。
まず、送信処理について述べる。
同図に示すカメラ側送受信部16のMAC処理器161は、カメラ側送受信部16から送信される信号をIEEE802.11に準拠させて送信するためのMACヘッダを付加した送信用フレームデータを生成する。ベースバンド処理器162のベースバンド処理機能162aは送信用フレームデータを多値の信号点を有する実数軸及び虚数軸で定義されるIQ平面への割り付けを行う。多値の信号点として、例えば4つの信号点を定義するQPSK(quadrature phase shift keying)、16の信号点を定義する16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64の信号点を定義する64QAM、及び256の信号点を定義する256QAMなどがある。ベースバンド処理機能162aは所定の多値数により信号点の割り付けを行う。次に、IFFT(Inverse fast Fourier transform;逆高速フーリエ変換)を行ってOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の送信用ベースバンド信号を生成する。無線周波処理器163は送信用ベースバンド信号を送信用高周波信号に周波数変換して高周波信号を生成する。高周波信号はアンテナ18から送信される。
【0020】
受信処理について述べる。
アンテナ18は無線装置2などから送信された高周波信号を取得する。無線周波処理器163は高周波信号を周波数変換してベースバンド信号を生成する。受信電力計測機能162bは生成されたベースバンド信号の信号レベルを基に、無線周波処理器163に入力される信号のレベル、即ち受信電力を計測する。受信電力は、CPU14からの要求に応じて計測された受信電力の情報をCPU14に伝送する。ベースバンド処理機能162aは無線周波処理器163で生成されたベースバンド信号のFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を行い、フレームデータを得る。MAC処理器161はフレームデータから送信されたビーコン等に係る情報信号を得る。
【0021】
図4を参照して監視側送受信部21について述べる。監視側送受信部21は市場に供給されている無線LAN処理に変更を加えることなくそのまま用いる。
従って、監視側送受信部21は、カメラ側送受信部16に比して受信電力計測機能や変調多値数変更機能を有していない。仮に受信電力計測機能を有している場合であっても、その機能は製造者の検査時に用いる機能であり、例えば監視装置3のCPU32は、有線LAN処理部31及び有線LAN29を介して受信される信号の受信電力情報を取得することができない。従って、上記のAP受信電力推定機能141が無線周波処理器213の受信電力を推定して得るようにしている。
【0022】
図5〜図7を参照して、メモリ15に格納されるデータについて述べる。
図5に示すメモリ15にはCPU14を実行させるコンピュータプログラム、及び演算中のデータを一時記憶させると共に、画像データ用受信電力比較用参照テーブル151や非セキュリティモードマークを記憶させる。
【0023】
図6に示す受信電力に対する画像フレームの誤り率、即ちビット誤り率特性は、無線セキュリティカメラ装置1の画像符号化部13で画像圧縮率をパラメータとして予め測定して得られた特性である。パソコン同士が通信をしながらデータ交換するのに必要なビット誤り率は10-9程度である。それは、パケット化されて送信されるデータのサイズが画像データを送信するよりも小さくされ、且つ誤りデータが生じた場合に再送要求により誤りデータ部分のみを短時間に得ることができるからである。
画像データを送信する場合にはパケット化されるデータサイズも大きく、1フレームのデータが連続して送信される。そのフレーム画像データ中に誤りデータが含まれると画像が正常に復号化できなく、また誤りデータの再送信もフレームデータ送信後になされるため復号化画像を得るために時間を必要とする。さらに、復号化画像はセキュリティ目的で分析されるため復号時間の遅延は許容できない。そこで、ビット誤り率はパソコン同士の通信に比して例えば2桁ほど小さな10-11程度が必要である。必要とされるビット誤り率は符号化圧縮率により異なる。圧縮率が大きく1フレームを構成するデータ長が小さくなる場合は、1フレームのデータ中に誤りデータが含まれる確率が低くなるため、その分データ誤り率が大きくても構わない。
【0024】
図7に示す画像データ用受信電力比較用参照テーブル151の記述例は、条件1〜条件4に対する受信電力と符号化時に使用する画像圧縮率の関係を示したものである。条件1は、受信電力が−60dBm以上得られる場合であり画像圧縮率80%が使用できる場合である。条件2は受信電力が−60dBm〜−70dBmが得られる場合であり画像圧縮率を50%とし、条件3は受信電力が−70dBm〜−80dBmが得られる場合であり画像圧縮率を20%とするセキュリティ目的の監視画像を符号化して送信可能とする。
【0025】
条件4は、受信電力が−80dBm未満しか得られない場合であり適当な画像圧縮率が存在しない。20%未満の画像圧縮率による画像の品質はセキュリティ目的の監視画像としての品質を保証できない。そこで、使用者に対して無線セキュリティカメラ装置1を通信条件の良い場所に移動するか、またはセキュリティを目的としないカメラの撮影画像を伝送するかを選択させる。カメラの撮影画像を伝送するとして選択された場合には撮影画像にメモリ15の非セキュリティモードマーク152を多重表示した撮影画像をカメラ側送受信部16から送信させる。
【0026】
図8を参照して無線セキュリティカメラ装置設置時の信号の流れについて述べる。
まず、無線装置2にビーコンの送信を要求し、S(ステップ)71で無線装置2から送信されたビーコンの受信電力を計測する。S72で計測された受信電力の情報を基に無線装置2での受信電力を推定する。S73で、推定された受信電力を画像データ用受信電力比較用参照テーブル151に比較し、セキュリティ目的の監視画像を符号化するための画像圧縮率が存在するかを検出する。最適な圧縮率が検出されない場合にはS74で、CPU14から画像データ送信不可信号を生成し、カメラ側送受信部16から無線装置2、及び監視側送受信部21を介して監視装置3に送信すると共に、無線セキュリティカメラ装置1の図示しない表示部に監視を目的としない撮影画像を送信するかの画面を提示する。S75で撮影画像を送信するが選択されたとして検出される場合には設置作業を完了させる。
【0027】
撮影画像を送信するが選択されない場合にはS76で通信状態の良い場所に移動して設置するための画面を表示し、S77で所定時間経過後に再度S71からの処理を行う。
S73で、セキュリティ目的の監視画像を送信するための最適な画像圧縮率が存在するとして検出された場合にはS81でCPU16は画像圧縮率変更要求情報を生成する。S82で、CPU14からの指定要求で、画像符号化部13の画像圧縮率を指定した圧縮率で符号化を行うように設定し、無線セキュリティカメラ装置1の設置作業を完了する。
【0028】
以上のように、本実施例で示した無線セキュリティシステムによれば、無線カメラ装置から2次信号の電力で送信した場合の監視装置で受信される受信電力を推定する受信電力推定部141と、ディジタル撮像画像を符号化する際の圧縮率をパラメータとした前記監視装置で受信される受信電力と前記ディジタル撮像画像のビット誤り率との関係を示す誤り表を格納する記憶部151と、前記誤り表に基づいて、前記受信電力推定部で推定された前記受信電力が前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、送信に適するように前記無線カメラ装置の送信部から前記ディジタル撮像画像を出力させる制御部14とを備えるようにして、無線セキュリティシステムは汎用の無線LANシステムを用い、符号化された監視カメラの画像データを1画面単位でのフレーム落ちが少なく、リアルタイムでの長時間連続伝送を可能とする無線セキュリティシステムを実現した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
セキュリティ性能を補償して符号化された監視画像を無線伝送する無線管理システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施に係る、無線管理システムの実施に係る無線セキュリティシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施に係る、無線セキュリティシステムの要部のCPUの機能を示す図である。
【図3】本発明の実施に係る、無線セキュリティシステムのカメラ側送受信部の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施に係る、無線装置の監視側送受信部の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施に係る、無線セキュリティシステムの要部のメモリに格納されるテーブル例を示す図である。
【図6】本発明の実施に係る、本発明の実施に係る、受信電力と画像フレーム誤り率の関係を、画像圧縮率をパラメータとして示した図である。
【図7】本発明の実施に係る、メモリに格納される受信電力比較用参照テーブルの記述例を示した図である。
【図8】本発明の実施に係る、無線セキュリティカメラ装置の動作をフローチャートで示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 無線セキュリティカメラ装置
2 無線装置
3 監視装置
11 撮像部
12 A/D変換部
13 画像符号化部
14 CPU
15 メモリ
16 カメラ側送受信部
18 アンテナ
19 内部バス
21 監視側送受信部
28 アンテナ
29 有線LAN
31 有線LAN処理部
32 CPU
33 メモリ
34 ディスプレイコントローラ
35 画像復号化部
36 ハードディスク
37 解析部
39 内部バス
41 ディスプレイ
141 AP受信電力推定機能
142 初期設定処理機能
143 画像圧縮率変更命令機能
144 画像圧縮率検出機能
145 画像データ用受信電力比較機能
146 外部からの誤り許容通知確認機能
151 画像データ用受信電力比較用参照テーブル
152 非セキュリティモードマーク
161 MAC処理器
162 ベースバンド処理器
162a ベースバンド処理機能
162b 受信電力計測機能
163 無線周波処理器
211 MAC処理器
213 無線周波処理器




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影してディジタル撮像画像を得る無線カメラ装置と、前記無線カメラ装置から送信される前記ディジタル撮像画像に基づいて、前記被写体を監視する監視装置と、を有し、前記無線カメラ装置の送信部から送信する1次信号が前記監視装置の受信部で受信した後、前記1次信号に対応する2次信号を前記無線カメラ装置に送信して、前記無線カメラ装置の受信部で受信された際の前記2次信号の送信電力が前記ディジタル撮像画像を前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、適している場合には前記2次信号の送信電力で送信し、適していない場合には、前記2次信号の送信電力を変化させて前記ディジタル撮像画像を前記監視装置に送信する無線管理システムにおいて、
前記無線カメラ装置から前記2次信号の電力で送信した場合の前記監視装置で受信される受信電力を推定する受信電力推定部と、
前記ディジタル撮像画像を符号化する際の圧縮率をパラメータとした前記監視装置で受信される受信電力と前記ディジタル撮像画像のビット誤り率との関係を示す誤り表を格納する記憶部と、
前記誤り表に基づいて、前記受信電力推定部で推定された前記受信電力が前記監視装置に送信するのに適しているかどうかを判定して、送信に適するように前記無線カメラ装置の送信部から前記ディジタル撮像画像を出力させる制御部と、
を備えたことを特徴とする無線管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−89090(P2007−89090A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278743(P2005−278743)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】