説明

無線通信システム

【課題】方向分割二重通信システムにおいて、基地局と最終端末までの通信距離を拡大する。
【解決手段】基地局の放射する電磁波信号をそのまま搬送波として用いる無線通信システムにおいて基地局と端末の通信において、該基地局と中継局の間の通信に放射電磁界を用い、中継局と端末局の間の通信に誘導電磁界を用い、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、基地局と中継局と端末局から構成される無線通信システムであって、基地局が中継局を経由してRF−IDタグ等の不特定多数の物体を遠隔で識別するのに適した無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
不特定多数の物体を遠隔で識別する技術は、物流の量的増加および流通速度の高速化に伴い、近年富にその有用性が期待されている。このような、大量且つ高速に物体を識別するためには、それら複数の物体の位置関係が特定できないために、該物体に浸潤する情報伝達手段の適用が必要不可欠になる。このような用途に対しては、無線技術が適しており特に電磁波を用いる物体の検出、同物体の有する情報の伝達が、例えば、無線タグシステムとして既に実現に供している。
【0003】
特許文献1には、RFIDタグとその読書き機との通信可能距離を長くすることを可能とする目的で、RFIDタグと通信を行う読書き機とは別体の電波発信手段を使用し、この電波発信手段から発信される電力生成用電波をRFIDタグの電力供給に用いた通信システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、貨物追跡システムにおけるデータの自動読み取り、および自動仕分機による貨物の仕分けを確実に行えるようにする目的で、1つのシート基材上に、第1の周波数の電波による近距離のデータ伝送を行うための第1のアンテナと、第2の周波数の電波による遠距離のデータ伝送を行うための第2のアンテナを配置したRFIDが開示されている。
【0005】
また、一般に無線通信システムでは、送信波と受信波を二重化(デュプレックス)するために、周波数分割二重(フリーケンシー・デバイド・デュプレックス:FDD)あるいは時間分割二重(タイム・デバイド・デュプレックス:TDD)と呼ばれる、異なる周波数あるいは異なる時間タイミングで受信と送信を行い、等価的に送信波と受信波を二重化する技術が用いられている。散乱波を直接搬送波として用いる場合は、方向分割二重(ディレクション・デバイド・デュプレックス:DDD)とでも呼ぶことができる従来技術が知られており、この技術ではサーキュレーターを用いて基地局から出て行く電磁波と基地局に入ってくる電磁波の方向性の違いを用いて等価的に送信波と受信波を二重化している。この技術については、非特許文献1に述べられている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−217393号公報
【特許文献2】特開2005−190043号公報
【非特許文献1】RFIDハンドブック第2版(Klaus Finkenzellar著、ソフト工学研究所訳、日刊工業新聞社刊、2004年5月)45頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、物流の高速化・大容量化に伴い、該電磁波を用いた物体検出・情報伝達の能力、換言すれば、同システムにおいて電磁波の到達する距離を向上させることが、普遍的社会要請となっている。
【0008】
電磁波は伝達距離と共にその距離の2〜3乗程度に比例して減衰するため、該伝達距離が増加すると基地局から放射された電磁波が再び該基地局に到来する際にはその電力が著しく減少しており、種々の擾乱因子に対して極めて耐性の低いものとなっている。このようなシステムでは、基地局から到来した電磁波のエネルギーをなるべく変換損少なく基地局へと再放射させるために、一般には識別すべき物体からの散乱電磁界そのものを情報伝送のための搬送波として使う方法が一般的である。
【0009】
しかし、何らかの手段で新たな搬送波を生成するためには電磁波の高周波電力を何らかの手段のための電源電力に変換する必要が生じ、その際は必ず変換損が現実には生じてしまう。このような電磁波を用いた無線伝送では、搬送波に与えるべき電力で電磁波の到達距離が制限されてしまうので、搬送波生成の電力効率を最大にすることが、システムにおける電磁波の到達距離、換言すればシステムの適用限界を最大にすることに繋がる。
【0010】
散乱波を直接搬送波として用いるシステムでは、基地局が放射する送信電力自体が、基地局に再到来する電磁波の最大の擾乱因子となる。何故なら、両者の周波数が同一であるために、フィルタ等の汎用の技術を用いた、該擾乱因子の除去が出来ないからである。
【0011】
図22は非特許文献1の図3−21を書き直したもので、基地局に入ってくる電磁波の方向性結合器としてサーキュレーター164を用いており、基地局100から放射される電磁波の発生源である搬送波発生器161の出力が該サーキュレーターを介してアンテナ168より放射される。基地局から放射された電磁波181は端末局101に到来するが、この端末局101が具備するアンテナ118により電磁波のエネルギーが取り込まれ整流回路114にて直流電源に変換される。その後、この直流電源を用いて変調回路134により、アンテナ118の負荷インピーダンスに変調か施され、振幅が変調された電磁波182として放射される。基地局100に再到来する電磁波は、アンテナ168からサーキュレーター164に導かれるが、このサーキュレーターの非相反性のため、搬送波発生器161へではなく受信回路162へと伝達される。
【0012】
非特許文献1に開示された技術では、サーキュレーターを通過する逆方向の電磁波が互いに独立であることを用いて、基地局は送信波と受信波を区別しているので、電磁波は放射界を利用する事となる。放射界は、他の二つの界である誘導界と近傍界に比べて遠くまで電力を伝達することが出来る。
【0013】
しかし、電磁波のエネルギーを授受するアンテナの寸法が波長程度あることが望ましく、波長より寸法が著しく減少すると(例えば波長の1/10以下)アンテナの電磁波エネルギー授受の効率は著しく減少する。そのため、基地局或いは端末局の最大寸法に制限がある場合、結果として基地局と端末局の通信距離を大きく取れないという問題が生じる。
【0014】
一方、特許文献1に開示された発明では、読書き機(基地局)とRFIDタグ(端末局)及び電波発信手段との間における、通信および電力伝送のために、通信用電波と電力生成用電波を用いている。電力生成用の電波発信手段はRFIDタグの移動経路の途中に設置されている。この方式では、RFIDタグ内で、通信用の周波数とは別に、電力伝送専用の周波数の受信機能を必要とする。システムの適用限界となる距離を拡大すべく、電力生成用の電波発信手段をRFIDタグの移動経路から遠い位置に設置しようとすると、電力伝送専用の周波数は低周波にするのが望ましいが、その場合、アンテナの寸法を大きくする必要がある。端末局の最大寸法に制限がある用途の場合に、このような2系統の周波数の受信機能を必要とすることやアンテナの寸法の大型化は、好ましくないことである。
【0015】
さらに、特許文献2に開示された発明では、使用周波数が異なる複数の基地局がRFIDシステム内に存在し、シート基材(端末局)上に、第1の周波数の電波による近距離のデータ伝送を行うための第1のアンテナおよび第2の周波数の電波による遠距離のデータ伝送を行うための第2のアンテナを配置することで、各基地局に同時に対応できる端末局を実現している。この方式も、遠距離のデータ伝送を行う場合、第2のアンテナは寸法を大きくする必要があり、端末局の最大寸法に制限がある用途には適さない。
【0016】
本発明の目的は、従来技術の方向分割二重方式を用いた無線通信システムにおいて、端末局の最大寸法に制限がある場合でも、システムの適用可能な限界距離を等価的に拡大する事の出来る無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の代表的なものの一例を示せば以下の通りである。即ち、本発明の無線通信システムは、基地局と中継局と端末局から構成されて成り、前記基地局と前記中継局の距離が前記中継局と前記端末局の距離よりも長く構成されて成り、前記基地局と前記中継局の間は第一の周波数帯域の第一の電波で通信を行い、前記中継局と前記端末局との間は前記第一の電波とは周波数の異なる第二の電波で通信を行うように構成されて成り、前記中継局の前記基地局からの受信電力が、前記中継局から前記端末局への送信電力よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無線通信システムが中継局を経由して基地局と端末の通信を行うように構成されているので、端末局の最大寸法に制限がある場合でも、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来、同無線通信システムの通信容量を増大させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の代表的な実施例を挙げると、次の通りである。すなわち、本発明の無線通信システムは、基地局と中継局および端末局から構成され、中継局が誘導電磁界あるいは静電界(以下特に区別しない場合は誘導電磁界)で結合する空間的に離れた近距離に設置される端末局を具備し、基地局と端末局の間は放射界を用いて通信を行う。中継局と端末局は誘導電磁界で結合されているために、空間的には離れており、非接触による通信を行う。また、その距離が波長以下の寸法である場合、誘導電磁界即ち誘導界による結合は放射界による結合よりも著しく強くなり、大きな電力を送受できる。他方、放射界は距離の一乗に比例して減衰するのと比べて、誘導界は距離の二乗に比例して減衰するので、誘導界による通信は短距離に適している。また、誘導界のエネルギーの授受は誘導コイルによって達成できるので、同コイルの巻き数を増加することで、同コイルの寸法の減少によるエネルギー授受の効率を補うことが出来る。
【0020】
これらの効果を最大限活用するために、中継局と端末局の結合に用いる電磁波の周波数を(波長と逆比例の関係にあるので)、基地局と中継局との通信用いる電磁波の周波数よりも小さくする。この電磁波の周波数は、基地局から放射される電磁波にあらかじめ変調を掛けて与えておくか、基地局からの該送信波のエネルギーをアンテナで受信し、整流、充電してこれを電力として中継局あるいは端末局が具備する発振回路によって、生成する。このような構成によって、端末局の寸法を決める因子である誘導コイルの寸法を小さく出来、結果して端末局の寸法を大きくすることなく端末局と基地局との通信距離を大きくとることが可能となる。
【0021】
このように、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成を導入することで、等価的に、基地局と通信をすべき最終端末との間の距離を拡大する事が出来るので、無線通信システムの適用限界となる距離を拡大でき、また無線通信システムの通信容量を増大させることができる。さらに、最終端末のみならず中継局も電池を必要とせず、耐環境性及び環境保護に優れたシステムを構成できる。
【0022】
本技術を、基地局がカバーする通信距離内を最終端末である端末局が自由に移動可能とする要請がある場合に適応するためには、同基地局のカバーエリアに固定の中継局を配置し、同中継局と端末局との通信可能エリアで基地局の通信カバーエリアを充填するように配置すればよい。
本発明を実施するための最良の形態について、以下、図を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の第1の実施例を、図1(図1A、図1B、図1Cおよび図1D)を用いて説明する。
図1Aは、第1の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。本実施例の通信システムは、基地局(BS)100と、単独あるいは複数の中継局(TS)101と、各中継局に対応する単独あるいは複数の端末局(STS)102から構成されている。基地局100と中継局101の間、及び中継局101と端末局102の間は、夫々、非接触通信による双方向の交信がなされる。
【0024】
基地局100は、送信回路1、受信回路2、サーキュレーター3、基地局アンテナ8により構成されている。中継局101は、スイッチ12、整合回路13、整流回路14、平滑回路15、マイクロプロセッサ16、メモリ17、発振回路19、第一のパラレル/シリアル変換器11、中継局アンテナ18、第一の誘導コイル10により構成されている。さらに、端末局102は、第二のパラレル/シリアル変換器21、副メモリ(ICチップ)27、第二の誘導コイル20により構成されている。副メモリ27には、少なくともその端末局固有の識別番号を含む情報が書き込まれている。
【0025】
基地局100において、送信回路1の出力はサーキュレーター3の第一ポートに結合し、該サーキュレーターの3の第二ポートには基地局アンテナ8が結合し、サーキュレーター3の第三ポートには受信回路2が結合している。サーキュレーター3は、基地局100から出て行く電磁波と基地局100に入ってくる電磁波の方向性の違いを用いて等価的に送信波と受信波を二重化している。基地局100は、サーキュレーター3を介して基地局アンテナ8から送信波を送信し、中継局101から反射波82を受信波として受信し、サーキュレーター3の非相反性により受信回路2に供給する機能を有している。
【0026】
基地局100の送信回路1は、クロック信号に基づき特定の周波数及び振幅の搬送波信号を生成し、これをDA変換し、増幅した搬送波81を送信波として送出する送信信号処理機能を有している。
受信回路2は、受信した反射波82について検波、AD変換及び復調処理を行い、受信信号に含まれる情報に基づいて所定の処理を行なう、受信信号処理機能を有している。
【0027】
基地局アンテナ8から送出された搬送波81は、中継局101の中継局アンテナ18により中継局101に入力される。中継局アンテナ18には、スイッチ12と整合回路13が並列に結合されている。中継局101は、受信した搬送波81を整流して直流電力に変換し内部の各回路に電力として供給する電源電力生成機能を有している。すなわち、整合回路13の出力が整流回路14で直流に変換され、平滑回路15で平滑化され直流電源としてこの平滑回路に蓄積され、この直流電源からマイクロプロセッサ16に電力が供給される。マイクロプロセッサ16は、基地局および各端末局との通信を制御する通信制御機能、及び端末局から読み取ったデータに基づく情報を基地局に送るための反射波生成機能等を備えている。
【0028】
中継局101と各端末局102との通信方式としては、通信距離に応じて、近傍型あるいは近接型の場合は電磁誘導、密着型の場合は電磁結合あるいは静電結合が挙げられる。
【0029】
本実施例の通信システムでは、各端末局102が中継局101の近傍に位置し、基地局100と中継局の距離は中継局と端末局の距離よりも長い場合を標準的な構成とする。より具体的には、図1の例では、基地局100と中継局の距離は一対のアンテナ間の通信距離、中継局と端末局の距離は一対の誘導コイル間の通信距離を指す。例えば、各端末局102と中継局101の通信距離は、近傍型あるいは近接型の場合は数10cm以内、密着型の場合は数mm以内である。また、基地局100と中継局101の通信距離は、数m乃至数10m程度である。
【0030】
基地局100と中継局101の通信は、マイクロ波やUHF帯等の高周波数の電磁波(第一の電波もしくは第一の電磁波:第一の周波数fc)を用いた放射電磁界(81、82)により実現され、中継局101と端末局102との通信は長波帯や短波帯等の低周波数の電波もしくは交流信号(第二の電波もしくは第二の電磁波:第二の周波数fm)を用いた誘導電磁界88によりなされる。
【0031】
本実施例において、基地局と中継局の通信に用いる第一の電波は、中継局と端末局の通信に用いる第二の電波よりも周波数が高い。一例として、第一の電波には、数百MHzのUHF帯の電波又は数GHzのマイクロ波を用い、第二の電波には、長波帯又は13.56MHzの短波帯の電磁波を用いる。
【0032】
中継局101のマイクロプロセッサ16には発信器19が結合し、マイクロプロセッサ16にクロックを供給している。このクロックに基づき、マイクロプロセッサ16は、第二の周波数fmの信号を生成し、単独あるいは複数の端末局との通信を行い、各端末局が保有しているメモリに書き込まれた識別番号を読み取り、基地局に通報する機能を備えている。すなわち、マイクロプロセッサ16は、第一のパラレル/シリアル変換回路11、第一の誘導コイル10、端末局102の第二の誘導コイル20を介して第二の電波で各端末局と通信を行い、さらに第二のパラレル/シリアル変換回路21を介して端末局102の副メモリ27の内容(少なくとも識別番号)を読み取る機能を備えている。また、マイクロプロセッサ16は、この副メモリ27の内容を参照しメモリ17の内容と比較演算を施し、その結果によりスイッチ12の開閉を行う機能を備えている。すなわち、周波数fcの搬送波81(第一の電波)の受信に応答して、当該中継局が有するデータを用いて必要に応じた新たな情報、少なくともスイッチ12を開閉し搬送波81を変調するためのスイッチング信号を生成する機能と、このスイッチング信号に基づいたスイッチ12の開閉により、中継局アンテナ18の負荷インピーダンスを変化させ、搬送波81に対して変調を施した反射波82を生成する反射波生成機能と、この反射波82を基地局100へ指定されたタイミングで送出する通信制御機能を備えている。また、中継局101のマイクロプロセッサ16は、端末局が保有しているメモリに書き込まれている情報が読取れないときに、その状態を基地局に通報する異常通報機能も備えている。
【0033】
端末局102では、中継局101からの第二の電波の受信に伴い、第一の誘導コイル10と第二の誘導コイル20との共振作用により起電力が発生する。端末局102は、この起電力の発生に伴い第二のパラレル/シリアル変換回路21が起動し、副メモリ27の内容を符号化し、中継局101へ送信する機能を有している。
【0034】
本実施例において、基地局と中継局の通信を放射電磁界により実現するため、これらの間の通信に用いるアンテナは線状あるいは板状アンテナとし、中継局と端末局の通信に用いるアンテナはコイルあるいは板状コンデンサとするのが望ましい。本実施例によれば、中継局101が基地局100との通信に用いるアンテナ18よりも、中継局101が端末局102との通信に用いるアンテナ20の寸法を小さくできる。一例として、第一の電波に周波数800MHzの電波を用いた場合、基地局と中継局の通信を行うアンテナは、その長さを20cm程度にする必要がある。一方、中継局101が端末局102との通信には誘導電磁界を用いるので、コイルあるいは板状コンデンサは、その長さあるいは直径を数cm以下とすることができる。
【0035】
換言すると、基地局100や中継局101には最大寸法の制限が比較的緩やかな場合が多いのでサイズの大きなアンテナを用いることにより高い周波数の電波を使用して基地局100と中継局101間の通信距離を長くすることが出来、逆に、最大寸法の制限のある場合の多い端末局102と中継局101との通信距離は短く制限することで誘導コイルの寸法を小さくすることが出来る。
【0036】
なお、中継局101が端末局102との通信に電磁結合を用いる場合は、中継局側と端末局側の一対のアンテナを対向させ、静止状態で電磁誘導により通信する。また、静電結合を用いる場合は、中継局と端末局間の静電誘導を利用して通信する。例えば、中継局と端末局に一対の電極を設け両電極間の空隙部に容量を形成する。この状態で、一方の電極に電圧(信号)を印加して正の電荷に帯電させると、静電誘導により他方の電極に負の電荷(信号)が誘導される。このように、密着型の場合でも、一対のアンテナの電極の寸法は小さなものとすることが出来る。また、中継局は電池が不要であり、環境面に関して優れたシステムを構成できる。
【0037】
これらの特徴を生かせば、寸法の小さい端末局の情報をこの端末局近傍に設置された中継局を介して遠方にある基地局に通信することが出来るので、等価的に小さな寸法を有する無線タグを遠方の基地局より遠隔的に管理することが可能となる。
【0038】
図1Bは、本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成要素である基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。また、図1Cは、基地局、中継局及び端末局における処理の概要を示すフローチャートの一例を示す図である。
【0039】
図1Bにおいて、上側の二つ(BS,TS1)が基地局100と中継局101間の電磁波のやり取り、下側の二つ(TS2,STS)が中継局101と端末局102間の電磁波のやり取りを示している。基地局100は常に第一の周波数fcの無変調の電磁波81を放射しており(BS)、中継局101はこの無変調の電磁波を期間T1,T2の間そのエネルギーを取り込み、整流回路14および平滑回路15において直流電源として変換・蓄積する(TS1)。この直流電源の電圧が一定値に達すると、中継局101のマイクロプロセッサ16が動作を開始し、第二の周波数(周波数fm)の誘導電磁界88を発生さ、期間T3から端末局102とこの誘導電界を介して通信を開始する(TS2,STS)。
【0040】
また、本実施例においては、各端末局102を中継局101の近傍もしくは密着した位置に配置し誘導電界で電力を送受し、基地局100と中継局間の距離は中継局と端末局間の距離よりも長く放射電磁界で電力を送受することで、中継局101が基地局100から受信する電力を、中継局101から端末局102へ送信される電力よりも大きくしている。たとえば、中継局101が基地局100から電磁波81により受信する電力を、1Wあるいは4Wとすることができる。他方、誘導電磁界により受信する電力はこれよりも小さい。
【0041】
この誘導電界88を用いて端末局が有するデータを用いて、マイクロプロセッサ16は中継局が有するデータを用いて必要に応じた新たな情報を生成し、第一の周波数に変調、例えば振幅変調を施した反射波82を用いて、期間T4,T6において基地局100へ情報を転送する(TS1)。
【0042】
以上述べたように、本実施例によれば、基地局と中継局の距離を中継局と端末局の距離よりも長く構成し、基地局と中継局の通信を主に放射界を用いて行い、中継局と端末局の通信を主に誘導界あるいは静電界を用いて行うことにより、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成を導入して、等価的に、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来、同無線通信システムの通信容量を増大させる効果がある。
【0043】
図1Dは、第一の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成要素である基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波の他のタイムチャート例を示す図である。
【0044】
図1Dの場合は、基地局100は、その送信回路1においてクロック信号に基づき所定の周波数及び振幅の搬送波信号を生成すると共に、送信情報に基づき搬送波信号に変調を施し、これを増幅した搬送波81をサーキュレーター3を介して基地局アンテナ8より送出する送信信号生成、送信機能と、受信信号に含まれるに基づいて受信回路2で所定の処理を行なう信号処理機能を有している。中継局101は、基地局100から受信した信号を復調し、信号に含まれる情報を用いて、図1Bの情報に加えてさらに受信情報に対応する新たな情報を付加、変更する変調処理を行い、増幅して、基地局100に伝達する信号処理機能を有している。
【0045】
基地局100が放射する電磁界は期間T2,T4,T6において該電磁波に変調が施され、何らかの情報を中継局に伝達する(BS)。中継局101はこの無変調の電磁波のエネルギーを取り込み、直流電源として変換・蓄積する。この直流電源の電圧が一定値に達すると、マイクロプロセッサが動作を開始し、端末局102と誘導電界を介して通信を行い、端末局の情報を取得する(TS2,STS)。中継局101はこの情報を用いて、図1Bの場合に中継局が行った前記新たな情報にさらなる変換を必要に応じて施して、この情報を基地局100に伝達する(TS1)。
【0046】
本図の実施例では、基地局100が中継局101あるいは端末局102の有するデータの改変を行うことが可能となるので、本実施例の誘導・放射界併用DDD通信システムのアプリケーションを変化させることができ、同システムを用いたビジネスモデル構築の選択範囲を拡大するという効果がある。
【実施例2】
【0047】
本発明の第2の実施例を、図2(図2Aおよび図2B)を用いて説明する。図2Aは、本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システム構成を示す図である。この実施例が図1の実施例と異なる点は、中継局101が第一の整流回路14を具備しているのみならず、端末局102も第二の整流回路24を具備していることにある。これにより、この第二の整流回路24が第二の誘電コイル20を介して中継局101から伝達される高周波電力を整流し、第二のパラレル/シリアル変換器21および副メモリ27に電力を供給する。
【0048】
本実施例によれば、端末局102の副メモリ27として高速アクセス可能なRAMを用いることが出来るので、この副メモリへのデータの一時記憶、収納が可能となり、中継局101の情報処理能力を拡大できる効果がある。
【0049】
図2Bは、実施例2の構成要素である基地局100、中継局101及び端末局102が放射する電磁波のタイムチャートを示す図である。上側の二つ(BS,TS1)が基地局と中継局間の電磁波のやり取り、下側の二つ(TS2,STS)が中継局と端末局間の電磁波のやり取りを示している。本図と図1Bの違いは、端末局102に電源を供給するために、期間T2およびT4において、中継局101から端末局102に無変調の誘導電界88が供給される点である(TS2,STS)。
【0050】
本実施例によれば、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成を導入して、等価的に、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来、同無線通信システムの通信容量を増大させる効果がある。また、端末局が電源を有するために、この端末局が取り扱うことの出来る情報量を拡大する効果がある。
【実施例3】
【0051】
本発明の第3の実施例を、図3(図3Aおよび図3B)を用いて説明する。図3Aは、本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図1の実施例と異なる点は、中継局101がメモリを持たず、端末局102が具備する副メモリ27に格納されている情報のみを用いて、基地局100との通信をすることである。本実施例に拠れば、たとえば端末局102が設置される対象の識別を行う場合等の中継局の情報処理負荷が軽い場合、中継局の構成を簡略化することができ、中継局の小型化に効果がある。
【0052】
図3Bは本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成要素である基地局、中継局及び端末局が放射する電磁波のタイムチャートを示す図である。上側の二つ(BS,TS1)が基地局と中継局間の電磁波のやり取り、下側の二つ(TS2,STS)が中継局と端末局間の電磁波のやり取りを示している。本図と図1Bの違いは、中継局101が端末局102の情報を直接基地局100に転送することである。これにより、中継局100は、マイクロプロセッサ16の稼動に必要な電源電力が得られたタイミングT3から、図1Bのメカニズムに則って、第二の誘導電磁界88を用いて中継局と端末局の間で、また、第一の周波数の放射界81を用いて中継局101と基地局100の間で、各々情報の伝送を行う。
【0053】
本実施例によれば、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成を導入して、等価的に、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来、同無線通信システムの通信容量を増大させる効果がある。また、本実施例は、中継局がメモリを有しないので、中継局のハードウエアを小型化・低コスト化することができる。
【実施例4】
【0054】
本発明の第4の実施例を、図4(図4Aおよび図4B)を用いて説明する。図4は本実施例の誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図2の実施例と異なる点は、中継局101がメモリを持たず、端末局102が具備する副メモリ27に格納されている情報のみを用いて、基地局100との通信をすることである。
【0055】
図4Bは、本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成要素である基地局、中継局及び端末局が放射する電磁波のタイムチャートを示す図である。上側の二つ(BS,TS1)が基地局100と中継局101間の電磁波のやり取り、下側の二つ(TS2,STS)が中継局101と端末局102間の電磁波のやり取りを示している。期間T2およびT4において、端末局102に電源を供給するために、中継局101から端末局102に無変調の誘導電界88が供給される(TS2,STS)。
【0056】
本実施例によれば、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成を導入して、等価的に、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来、同無線通信システムの通信容量を増大させる効果がある。また、本実施例は、中継局がメモリを有しないので、中継局のハードウエアを小型化・低コスト化することができる。また、端末局が電源を有するために、この端末局が取り扱うことの出来る情報量を拡大できる効果がある。
【実施例5】
【0057】
本発明の第5の実施例を、図5(図5A、図5Bおよび図5C)を用いて説明する。図5は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。この実施例が図1の実施例と異なる点は、基地局100の送信回路1が出力する第一の電波(放射電磁界)81としてバースト信号を用いたことにある。すなわち、基地局100の送信回路1が、搬送波の周期Tcより長い周期Tbで、この搬送波を断続的に送信することにある。さらに、中継局101はその内部に発信器19、メモリ17を具備せず、スイッチ12の制御端子に帯域通過フィルタ31が挿入されている。また、端末局102がマイクロプロセッサ26、発信器29、整流回路24、平滑回路25、スイッチ22及び副メモリ27を具備している。副メモリ27には、識別番号あるいはこれに加えて他の状態情報も書き込まれる。マイクロプロセッサ26は、中継局との通信を制御する通信制御機能、及び中継局からの受信信号基づきメモリの情報を中継局に送るための信号波生成機能等を備えている。
【0058】
中継局101は、基地局100から間欠的に伝送される電磁波(第一の電波)81のエネルギーを中継局アンテナ18より入力し、第一の整流回路14、第一の平滑回路15により、基地局100から伝送される搬送波の周波数fcよりも小さい周波数fbの交流信号を形成し、整合回路16、第一の誘電コイル10、第二の誘電コイル20、整合回路23を介して電磁波(第二の電波)88を端末局102に伝達する。
【0059】
端末局102は、中継局から伝達された電磁波88による高周波電力を第二の整流回路24および第二の平滑回路25にてマイクロプロセッサ26に電源供給し、該マイクロプロセッサ26は発信器29にクロックを発生させる。このクロックを用いて副メモリ27に格納されている情報を基に、第二の整合回路23を介して第二の誘導コイル20にスイッチ22のオン/オフ周期に関係する高周波信号を伝達する。この高周波信号は第一の誘導コイル10、第一の整合回路16を通じて中継局101の内部に取り込まれ、この取り込まれた高周波信号は帯域通過型フィルタ31により、スイッチ22のオン/オフ周期に関する周波数成分を選別して、中継局のスイッチ12をオン/オフさせる。
【0060】
なお、1つの基地局100に対して複数の中継局101が存在する場合には、基地局が各中継局に送信する第一の電波の周波数を変調して互いに異なるものとすれば良い。
【0061】
図5Bは、本実施例の誘導・放射界併用DDD通信システムの構成要素である基地局、中継局及び端末局が放射する電磁波のタイムチャートを示す図である。上側の二つ(BS,TS1)が基地局と中継局間の電磁波(第一の電波)81、82のやり取り、下側の二つ(TS2,STS)が中継局と端末局間の電磁波(第二の電波)88のやり取りを示している。本図では、基地局100は常に第一の周波数fcの無変調の電磁波81を一定周期で間欠的に放射しており(BS)、中継局101はこの無変調の電磁波のエネルギーを取り込み整流回路14および平滑回路15で直流電源として変換・蓄積する。この周期に対応する周波数を第二の周波数とすれば、該間欠的に放射される電磁波は第二の周波数で振幅変調された第一の周波数を搬送波とする電磁波と考えることが出来、その特性は、(A+Bsinωt)cosωtで表される。中継局101はこの電磁波を受信し整流するが、この整流過程で前式は、(A+Bsinωt)|cosωt|となり、第一の周波数成分が直流成分を生成するので、第二の周波数成分が自動的に得られる。また、端末局に電源を供給するために、T1、T3、T5に中継局から端末局に無変調の誘導電界が直流電源(整流回路24、平滑回路25)に供給される。この直流電源が一定値に達すると端末局102のマイクロプロセッサ26が動作を開始し、該第二の周波数成分を有する電磁界のうち誘導界成分を用いて端末局102はT2、T4、T6のタイミングで中継局101と通信を行う(TS2,STS)。この誘導電界88を用いて端末局が有するデータを用いてマイクロプロセッサ26は、中継局が有するデータを用いて必要に応じた新たな情報を生成し、第一の周波数に変調を施し、基地局にT4,T6において基地局100へ情報を転送する(TS1)。
【0062】
本実施例によれば、通常大きな寸法が許される基地局と、比較的寸法の大きい中継局と、寸法を小さく出来る端末局の三段構成を導入して、等価的に、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来、同無線通信システムの通信容量を増大させる効果がある。特に、本実施例によれば、端末局102が直流電源(整流回路24、平滑回路25)を有するために、端末局102が取り扱うことの出来る情報量を拡大する効果がある。また、本実施例に拠れば、中継局101が発信器を持つ必要がなく、中継局の構成を簡略化する効果がある。また、本実施例の構成では、端末局102が図11で示される従来技術のDDD通信システムの中継局と同一の構成となるために、従来技術のDDD通信システムに本実施例の中継局を導入して、従来技術のDDD通信システムの中継局の外付けアンテナを変更するだけで、比較的容易にDDD通信システムの通信距離を拡大することが出来る。そのため、DDD通信システムの新規導入コストを削減する効果がある。
【0063】
図5Cは、第5の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波の他のタイムチャート例を示す図である。
【0064】
図5Cの場合は、基地局が放射する電磁界は図1Bの場合で述べた第二の周波数で変調を施し(BS)、何らかの情報を中継局に伝達する。中継局は該情報を用いて、図5Bの場合に中継局が行った新たな情報にさらなる変換を必要に応じて施して、該情報を基地局に伝達するものである(TS1)。
【0065】
本図の実施例では、基地局が中継局あるいは端末局の有するデータを改変することが可能となるので、本実施例の誘導・放射界併用DDD通信システムのアプリケーションを変化させることができ、同システムを用いたビジネスモデル構築の選択範囲を拡大する効果がある。
【実施例6】
【0066】
本発明の第6の実施例を、図6(図6Aおよび図6B)を用いて説明する。図6Aは本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図5の実施例と異なる点は、中継局101の具備する帯域通過型フィルタ31が、帯域阻止型フィルタ32に置き換わっていることである。
【0067】
本実施例では、帯域阻止型フィルタ32は基地局101から送出される搬送波の周波数成分を阻止するもので、図5の実施例における、より低い周波数成分の電磁波を選択的に通過させるフィルタに比べて、扱う電磁波の波長が減少するために構造を小型にすることができる。このため、中継局の寸法を小型化することができる。
【0068】
図6Bは、本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成要素である基地局、中継局及び端末局が放射する電磁波のタイムチャートを示す図である。上側の二つ(BS,TS1)が基地局と中継局間の電磁波のやり取り、下側の二つ(TS2,STS)が中継局と端末局間の電磁波のやり取りを示している。本図と図5の違いは、帯域阻止型フィルタ32により波長が減少した電磁波を用いて生成される誘導磁界88により中継局と端末局間の電磁波のやり取りを行なう点にあり(TS2,STS)、これにより、中継局や端末局の寸法を小型化することができるという効果がある。
【実施例7】
【0069】
本発明の第7の実施例を、図7を用いて説明する。図7は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構造を示す図である。図6の実施例と異なる点は、基地局100の送信回路1が、搬送波発生回路4とスイッチ5およびマイクロプロセッサ6で構成されていることである。マイクロプロセッサ6は、バースト信号生成のためのオン/オフ信号を生成し、出力する機能を有している。搬送波発生回路4は連続的に高い周波数成分を有する搬送波信号を送出する。サーキュレーター3の第一ポートに対して搬送波発生回路4と並列に設置されたスイッチ5は、マイクロプロセッサ6の出力信号によってオン/オフし、スイッチ5自体が概略オープン/ショートの状態になることによって、搬送波発生回路4の搬送波信号に基づく基地局アンテナ8からの出力をオン/オフすることが出来る。
【0070】
これにより、簡単な回路構成で、基地局100からの搬送波の信号を周期的に送信することができる、という効果がある。
【実施例8】
【0071】
本発明の第8の実施例を、図8を用いて説明する。図8は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構造を示す図である。図7の実施例と異なる点は、基地局アンテナおよび中継局アンテナが、共に基地局円偏波アンテナ80および中継局円偏波アンテナ180に置き換わっていることである。
【0072】
本実施例によれば、円偏波の電磁波は反射のたびに旋回方向が反転するので、誘導・放射界併用DDD通信システムが屋内等の多重反射環境に設置される場合、反射波の電波伝播環境に対する影響を低減することが出来、誘導・放射界併用DDD通信システムのシステム設計を簡略化する効果が生じ、換言すれば同システムの電波伝播環境変動に対するロバストネスを向上させる効果がある。
【実施例9】
【0073】
本発明の第9の実施例を、図9を用いて説明する。図9は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。なお、本図では1つの基地局100と複数の中継局101(101a,101b,101c)の関係のみを示し、各中継局とそれに対応する端末局の関係は省略しているが、その構成は図1の実施例と同じである。また記述の簡略化のため各中継局の具備する発振回路は省略している。
【0074】
基地局100は、送信回路61、受信回路62、基地局帯域通過型フィルタ63、サーキュレーター64、基地局アンテナ8により構成されている。中継局101は、スイッチ12、整合回路13、整流回路14、平滑回路15、マイクロプロセッサ16、メモリ17、及び異なる通過帯域を有する中継局帯域通過型フィルタ30(30a,30b,30c)を備えている。基地局100において、送信回路61の出力はサーキュレーター64の第一ポートに結合し、該サーキュレーターの64の第二ポートには基地局アンテナ8が結合し、サーキュレーター64の第三ポートにはパラレルに複数の基地局帯域通過型フィルタ63(63a,63b,63c)を介して複数の受信回路62(62a,62b,62c)が結合している。中継局アンテナ18(18a,18b,18c)には、基地局帯域通過型フィルタ30を介したスイッチ12と整合回路13を介した整流回路14が並列に結合している。この整流回路14の出力は、平滑回路15を介してマイクロプロセッサ16の電力として供給される。マイクロプロセッサ16はメモリ17の内容を参照し、演算を施したのち、その結果によりスイッチ12の開閉を行う。
【0075】
図9の実施例では、基地局100は3種の異なる周波数(f1,f2,f3)の電磁波を送出し、異なる通過帯域を有する中継局帯域通過型フィルタ30を具備した3つの中継局101がシステム内部に存在し、基地局100は異なる通過帯域を有する帯域通過型フィルタ63と結合した3つの受信回路62を有している。基地局100の送信回路61からサーキュレーター64を介して基地局アンテナ8より送出される搬送波81は、中継局101の中継局アンテナ18により中継局101に入力され、この中継局内部の諸回路に電力を供給する。また、マイクロプロセッサ16の演算処理の結果に基づくスイッチ12の開閉により、中継局アンテナ18の負荷インピーダンスが変化し、変調の施された反射波82(82a,82b,82c)を基地局100に送出する。基地局100はこの反射波82を受信し、サーキュレーター64の非相反性により各基地局帯域通過型フィルタ63へと導かれ、必要な周波数成分のみが各受信回路62(62a,62b,62c)に供給される。
【0076】
本実施例では、システム内部に中継局101が3つ存在するので、3つの反射波82(82a,82b,82c)の異なる周波数(f1,f2,f3)の搬送波のうち変調が施されている搬送波の周波数は互いに異なっている。3つの中継局101において、スイッチ12が開閉されても、異なる通過帯域を有する中継局帯域通過型フィルタ30の作用で、3つの中継局アンテナ18が変調の掛かった反射波を発生できる電磁波の周波数(f1,f2,f3)は互いに異なる。従って、通信経路のみを考えれば、基地局100と各中継局(101a,101b,101c)の状態は、それぞれひとつの基地局と1つの中継局を有するDDD通信システムの状態と等価である。
【0077】
他方、基地局から各中継局に供給される電力は、基地局が放出する電磁波の周波数(f1,f2,f3)の種類だけ倍加されているので、等価的に中継局に供給される電力が増加し、DDDシステム内の基地局と中継局の距離を離すことが出来、結果として同DDD通信システムのサービスエリア拡大の効果がある。
【実施例10】
【0078】
本発明の第10の実施例を、図10を用いて説明する。図10は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図9の実施例と異なる点は、中継局101が中継局アンテナ18を具備する代わりに、中継局受信アンテナ181と中継局送信アンテナ182を具備し、中継局受信アンテナ181の出力は整合回路13を介して整流回路14にのみ導かれ、スイッチ12が中継局帯域通過型フィルタ30を介して中継局送信アンテナ182と結合していることである。
【0079】
本実施例では、基地局100から放射される送信波の電力を受信する中継局側のアンテナ181の受信効率がスイッチ12の開閉に伴い変動することを無くすることができるので、この送信波の電力を中継局中の各回路へ電源供給する効率を上昇できる。その結果、DDDシステム内の基地局と中継局の距離を離すことが出来、結果として同DDD通指システムのサービスエリアを拡大できるという効果がある。
【実施例11】
【0080】
本発明の第11の実施例を、図11を用いて説明する。図11は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図10の実施例と異なる点は、基地局100が基地局アンテナ8および方向性結合器64を具備する代わりに、基地局送信アンテナ183と基地局受信アンテナ184を具備し、送信回路61の出力は基地局送信アンテナ183より送出され、基地局受信アンテナ184の受信信号が異なる通過帯域を有する帯域通過型フィルタ63(を介して複数の受信回路62に分配されていることである。また、基地局100と中継局101の各送信アンテナと受信アンテナ(181,182,183,184)は、互いに異なる旋回方向を有する円偏波アンテナであることも相違点である。
【0081】
本実施例では、図10の実施例と比べて、偏波の直交性により、基地局と中継局の送信アンテナと受信アンテナのアイソレーションを高めることが出来るので、基地局および中継局内部への不要波の侵入を削減でき、基地局および中継局の歪特性の改善および感度の向上に効果がある。
【実施例12】
【0082】
本発明の第12の実施例を、図12を用いて説明する。図12は、本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図11の実施例と異なる点は、基地局送信アンテナ183と基地局受信アンテナ184の給電点にアイソレーション端子を終端抵抗66で抵抗終端された第一、第二の方向性結合器64、67が結合し、これら第一、第二の方向性結合器64、67の伝達端子に、夫々送信回路61、もしくは帯域通過型フィルタ63を介した受信回路62が結合していることである。
【0083】
本実施例に拠れば、給電点にアイソレーション端子を終端抵抗66で抵抗終端された方向性結合器64、67を備えることで、図11の実施例に比べて、基地局100および中継局101が具備する回路への不要波の侵入をより削減できるので、基地局および中継局の歪特性の改善および感度の向上に効果がある。
【実施例13】
【0084】
本発明の第13の実施例を、図13を用いて説明する。図13は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図10の実施例と異なる点は、中継局送信アンテナとして平衡型中継局受信アンテナ185が採用され、中継局101が整流回路として全波整流回路40を具備していることである。本実施例に拠れば、図10の実施例に比べて、整流回路の整流効率を上昇させることが出来、送信波の電力を中継局101中の各回路へ電源供給する効率を上昇できる。これにより、DDDシステム内の基地局と中継局の距離を離すことが出来、結果として同DDD通指システムのサービスエリアを拡大できるという効果がある。
【実施例14】
【0085】
本発明の第14の実施例を、図14を用いて説明する。図14は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図12の実施例と異なる点は、中継局送信アンテナとして、平衡型中継局受信円偏波アンテナ187が採用され、中継局101が整流回路として全波整流回路40を、具備していることである。
【0086】
本実施例に拠れば、図12の実施例に比べて、整流回路の整流効率を上昇させることが出来、送信波の電力を中継局101中の各回路へ電源供給する効率を上昇できる。これにより、DDDシステム内の基地局と中継局の距離を離すことが出来、結果として同DDD通指システムのサービスエリアを拡大できるという効果がある。
【実施例15】
【0087】
本発明の第15の実施例を、図15を用いて説明する。図15は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。図11の実施例と異なる点は、中継局送信アンテナとして、平衡型中継局受信円偏波アンテナ187が採用され、整流回路として全波整流回路20を、中継局101が具備していることである。
【0088】
本実施例に拠れば、図11の実施例に比べて、整流回路の整流効率を上昇させることが出来、送信波の電力を中継局101中の各回路へ電源供給する効率を上昇できる。これにより、DDDシステム内の基地局と中継局の距離を離すことが出来、結果として同DDD通指システムのサービスエリアを拡大できるという効果がある。
【実施例16】
【0089】
本発明の第16の実施例を、図16を用いて説明する。図16は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図であり、図13の実施例と異なる点は、基地局100が具備する送信回路61の代わりに搬送波発生器65を具備していることである。本実施例によれば、図13の実施例に比べて、基地局の回路構成を簡略化することが出来、基地局の低価格化、小型化に効果がある。
【実施例17】
【0090】
本発明の第17の実施例を、図17用いて説明する。図17は前記各実施例のいずれかを用いた誘導・放射界併用DDD通信システムにおいて、1つの基地局100と複数の一組の中継局と端末局が存在するときのシステム構成例を示す図である。
【0091】
図17では、3つの中継局・端末局組(111−112,121−122,131−132)が存在し、基地局100はこれらのそれぞれを認識する必要がある。
【0092】
基地局100はアンテナ8を具備し、中継局111,121,131は夫々アンテナ118,128,138と外部誘導コイル110、120、130を具備し、対応する端末局112,122,132は夫々外部誘導コイル150、160、170を具備している。
【0093】
各組の中継局と端末局は誘導電磁界881、882、883を介してお互いに情報のやり取りを行い、3つの中継局は1つの基地局100との間で、放射電磁界81および82を用いて通信を行う。各中継局は内部に持っているメモリの内容に応じて切り替えスイッチのオンオフパターンを時系列的に違うタイミングで送出するものとする。
【0094】
このように構成することで、ある期間において、アンテナ118,128,138からの散乱電磁波の送出タイミングをずらすことが可能となり、そのタイミングを基地局100が検出することで、これら3つの中継局を識別することが可能となる。図17では、基地局から放射される電磁界81のスペクトルをfcで示しており、3つの中継局で反射される電磁波のうち固有の情報を有している変調が掛けられた部分のタイミングを時系列的にTime(t,t,t)で示している。
【0095】
本実施例によれば、複数の中継局を基地局が識別できるので、誘導・放射界併用DDD通信システムとしての通信容量を増大させる効果がある。
【実施例18】
【0096】
本発明の第18の実施例を、図18を用いて説明する。図18は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムにおいて、1つの基地局100と1つの中継局101と複数の端末局が存在するときのシステム構成例を示す図である。
【0097】
図18の例では、3つの端末局組(150−112,160−122,170−132)が存在し、基地局はそれぞれを認識する必要がある。基地局100はアンテナ8を具備し、中継局101はアンテナ18と外部誘導コイル110を具備し、端末局112,122,132は夫々外部誘導コイル150、160、170を具備している。
【0098】
中継局110と端末局は誘導電磁界88を介してお互いに情報のやり取りを行い、中継局は基地局100との間で、放射電磁界81および83を用いて通信を行う。各端末局は内部に持っているメモリの内容に応じて切り替えスイッチのオンオフパターンを時系列的に違うタイミングで送出ものとする。図では、基地局から放射される電磁界81のスペクトルをfcで示しており、3つの端末局が中継局と誘導電磁界88で情報のやり取りを行うタイミングをTime(t,t,t)で示しており、中継局101で反射され再び基地局100に向かう電磁波83のうち固有の情報を有している変調が掛けられた部分のタイミングを時系列的にTime(t,t,t)で示している。
【0099】
このようにすることにより、ある期間において、端末局の外部誘導コイル150、160、170と中継局の外部誘導コイル110との高周波電力の通信タイミングをずらすことが可能となり、そのタイミングを基地局が検出することで、これら3つの端末局を識別することが可能となる。
【0100】
本実施例によれば、複数の端末局を1つの基地局が識別できるので、図9の実施例と同様に、誘導・放射界併用DDD通信システムとしての通信容量を増大させる効果がある。
【実施例19】
【0101】
本発明の第19の実施例を、図19を用いて説明する。図19は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムが適用された、1つのビジネスモデルを示す図である。この例は、1つの基地局と1つの中継局と複数の端末局が存在するシステム構成を示す図である。図19の例では10個の端末局203が存在し、基地局201はそれぞれを1つの中継局202を介して認識する必要がある。
【0102】
基地局201と中継局202とは放射電磁界208を介して通信を行い、中継局202は誘導電磁界218を介して複数の端末局203と通信を行う。基地局201は外部に置かれ可搬とする。中継局202はコンテナ301の外壁面上部に位置しており、基地局201とは見通し通信可能とする。各端末局203はコンテナ301の壁面を面積的に等分割するように分布配置されている。
【0103】
コンテナの壁面に、破壊、切除、欠損等のなんらかの異常が発生すると、その異常に対応して少なくとも1つ以上の端末局203が消失しあるいは機能を停止し、その結果それらの端末局と中継局202との通信が途絶える。この状況の変化を基地局201が監視することにより、コンテナの異常が遠隔で検出され、必要な管理が可能となり、コンテナ内部の物資の盗難、破壊、変質を防ぐ効果がある。
【実施例20】
【0104】
本発明の第20の実施例を、図20を用いて説明する。図20は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムが工場内の製造ラインに適用された、1つのビジネスモデルを示す図である。この例は、複数の基地局と1つの中継局と複数の端末局が組をなして存在するシステム構成となっている。組をなす1つの中継局と、この中継局に対応する複数の端末の夫々は、複数の基地局のいずれとも通信可能である。
【0105】
図20では、複数の端末局203が存在し、複数の基地局201はそれぞれを1つの中継局202を介して認識する必要がある。基地局201と中継局202とは放射電磁界を介して通信を行い、中継局202は誘導電磁界を介して複数の端末局203と通信を行う。1つの基地局201が中継局202を介して端末局203が具備するメモリの内容を必要に応じて書き換え、別の基地局がこの書き換えられた内容を読取ることができる。
【0106】
基地局201は、生産ライン311となる複数の部屋等の各エリア(エリアA,エリアB,エリアC、・・・エリアN)の入出部にそれぞれ置かれ、位置は固定とする。各基地局201は、有線ネットワーク316を介してサーバ314に接続されている。
サーバ314は、作業者から与えられた生産に関する情報、指令と、生産ラインからの各種帰還情報に基づき、被加工部材に適切な加工を施すべく生産ラインに設置された各種設備機器の統合的な運転管理を行うリモートコントロール機能を具備している。
【0107】
この製造ラインは、少なくとも1台の移動可能な搬送キャリア(もしくはキャスター)を備えており、搬送キャリア毎に1つの中継局が設置され、この搬送キャリアに搭載される複数の搬送容器の各々に、夫々1つの端末局203が設置される。すなわち、各搬送キャリア312の下部には中継局202が設置され、この中継局202と各基地局201とは見通し通信可能とする。生産ラインで加工される部材が搬送用のボックスあるいはトレイ等の搬送容器(以下、容器)313に収納され、搬送キャリア312で搬送される。夫々の容器313の外部壁面には、端末局203が分布配置されている。
【0108】
基地局201と対応する中継局203の間の距離は、中継局203と搬送容器に設置された端末局203の距離よりも長く構成されている。一例として、基地局と中継局は長さ20cmのアンテナを備え、10m程度以内の範囲において周波数800MHzの電波で通信を行い、中継局と端末局102とは数10cm程度以内の範囲にあり、サイズの小さいコイルあるいは板状コンデンサにより誘導電磁界もしくは静電誘導を用いて通信するものとする。
【0109】
作業者は、あらかじめ、加工対象である部材が格納される容器313に配置されるべき端末局203に、部材の加工に関して必要な情報(部品名、来歴、個数、特性等)を、マンマシンインターフェース318とライタ319を具備する外部PC317を用いて書き込む。
【0110】
続いて作業者は、キャリア312を矢印方向にいずれか1つのエリア(例えばエリアA)に移動させ、容器313の内部の部材を当該エリアに搬送する。1つのエリア(例えばエリアA)では容器313内の部材に所定の処理を施し、さらに、次の容器を用いて次のエリア(例えばエリアB)と進む。
【0111】
基地局201は中継局202を介して、その部材を収納した容器313内の端末局203が具備するメモリの内容を書き換える。次のエリアBの基地局は、この書き換えられた内容を読取ることができる。例えば、エリアAで部材に所定の処理が終了したものについて、次のエリアBでの処理に関して処理条件の変更がある場合、その情報がメモリに書き込まれ、次のエリアBの基地局は、処理条件の変更を読み取り、部材に所定の処理を行なう。このようにして、1つのエリアAから次のエリアBに移動する際に、基地局201はキャリア312に設置された中継局202を介してキャリア312に載置された容器の情報を検出し、有線ネットワーク316を介してサーバ314に伝送する。このようにして、サーバはリアルタイムで当該部材がどのプロセス(エリア)にあり、どのような処理状態にあるかという状態を管理し、必要に応じて加工プロセスの変更の指示を行なうこともできる。
【0112】
本実施例では、端末局203を、加工対象である部材自体には設置せず、この部材が格納される容器に配置しているので、部材の加工に際して、端末局203が部材から分離されるあるいは脱落することについて配慮する必要はない。したがって、本実施例は加工対象である部材に直接端末局203を配置することが困難あるいは好ましくないもの、例えば電気機器の小型部品の加工や組み立て、切断加工される食品や木材など、多くの分野の製造工程に適用することができる。例えば、本実施例における誘導・放射界併用DDD通信システムとして、第一の実施例のシステムを採用し電池の不要な中継局や端末局を採用することで、冷凍食品のように低温度の環境下、あるいは港湾での塩水の影響を受ける雰囲気などのかなり厳しい環境下でも、加工、管理を容易に行なうことができる。
【0113】
本実施例では、端末局とその近傍に設置された中継局との間の通信に誘導電磁界を用いるので、大きなサイズのアンテナは不要であり、端末局の最大寸法に制限がある場合でも、基地局と通信をすべき最終端末との距離を拡大する事が出来る。
【0114】
また、本実施例は、部材の製造ラインのみならず、物資の配送、流通ラインなどにも同様に、適用できる。
【0115】
これにより、在庫調整、顧客に対する製品供給可能量の詳細な把握が可能となり、工業製品等の流通コスト、調達コストの低減に効果がある。
【0116】
さらに、電池の不要な中継局や端末局を採用することで、電池が不要で遠隔操作のできるシステムを構築できるので、環境保護の観点からも、効果がある。
【実施例21】
【0117】
本発明の第21の実施例を、図21用いて説明する。図21は本実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムが高額商品を販売する店舗に適用された、1つのビジネスモデルを示す図である。この例は、1つの基地局と複数の中継局と複数の端末局が存在するシステム構成となっている。基地局のコンピュータは、管理者から与えられた商品に関する情報、指令と、店舗内からの商品の販売に関する情報、及び店舗内の商品監視に関する帰還情報に基づき、店舗内に展示された各種商品の移動、有無等の監視を行うリモートコントロール機能を具備している。
【0118】
図21では、店舗内に6個の中継局202が存在し、1つの基地局201は、各中継局202を介して、個々の中継局に対応する6個の端末局203の情報を認識する必要がある。基地局201は中継局202と放射電磁界208を介して通信を行い、複数の中継局202は誘導電磁界218を介して個々に対応する複数の端末局203と通信を行う。ケース(容器)321が服飾品の展示台に相当し、中継局はケース321の底面に配置されており、このケースは陳列台324の上部に並べられている。また、ケースには対応する高額商品323(本図ではネックレスを想定)が収納されており、この商品323にはプライスタグ322が接続されており、該プライスタグには端末局203が設置されている。基地局201は店舗の出入口近傍の壁面、天井あるいは床に設置され固定とする。
【0119】
商品がケースより外部に取り出されると、端末局203は消失し、その結果、中継局202との通信が途絶える。この状況の変化を基地局201が監視することにより、商品の顧客による試着等の検討状況や、商品の販売に関する情報との照合、及び長時間の通信切断情報などから、該当商品の有無確認、消失・盗難の検出が可能となる。
【0120】
同様に、店舗内に商品を陳列するために容器を用い、中継局を容器に設置しても良い。この場合、端末局はこの容器内部の個別の商品に添付されるタグに設置されるものとする。
【0121】
本実施例によれば、開店、閉店時の高額商品の物品検査の時間節減、営業時の盗難防止による利益損失の低減の効果がある。
【0122】
また、本発明の各実施例は、店舗内の高額商品の監視のみならず、建屋内の美術品、コンテナ内に収納された商品等の物品の監視などにも同様に、適用できる。
【0123】
例えば、誘導・放射界併用DDD通信システムであって、基地局が移動可能なスキャナとして構成され、1つの中継局が複数の端末局を有し、各端末局と中継局が交信する交流信号の送出タイミングが互いに異なっている。中継局は物品を収納したコンテナの一部に設置され、端末局はこのコンテナが具備する各側面を面積的に等分割された各エリアの中心部に設置されている。ネットワークに接続された基地局が、複数の中継局と無線通信を行い、中継局は単独あるいは複数の端末局が保有しているメモリに書き込まれた識別番号を読み取り、基地局に通報する。基地局が移動しながらコンテナ内をスキャンして各エリアの通信状況の変化を監視することで、コンテナ内の物品の監視を行なうことができる。
【0124】
なお、上記各実施例における基地局201、中継局202及び端末局203の相互間の距離は、あくまでも基本的なシステム構成における距離であり、中継局202や端末局203が移動可能なシステムにおいて、その運用上、一時的に基地局と中継局がこの中継局と端末局よりも近接した位置関係になり、上記距離の関係が一時的に崩れる場合を排除するものではない。たとえば、中継局が設けられた容器からタグ付の商品を取り出して顧客に説明している状態で、上記距離の関係が維持されない場合が生ずることは当然である。
【0125】
また、上記各実施例は、誘導・放射界併用DDD通信システムとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基地局、中継局及び端末局の相互間で双方向通信を行う無線通信システム全般において適用できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】本発明の第1の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図1B】第1の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。
【図1C】第1の実施例における基地局、中継局及び端末局における処理の概要を示すフローチャートの一例を示す図である。
【図1D】第1の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの他の例を示す図である。
【図2A】本発明の第2の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図2B】第2の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。
【図3A】本発明の第3の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図3B】第3の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。
【図4A】本発明の第4の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図4B】第4の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。
【図5A】本発明の第5の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図5B】第5の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。
【図5C】第5の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの他の例を示す図である。
【図6A】本発明の第6の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図6B】第6の実施例における基地局、中継局及び端末局が放射する、電磁波のタイムチャートの一例を示す図である。
【図7】本発明の第7の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図8】本発明の第8の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図9】本発明の第9の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図10】本発明の第10の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図11】本発明の第11の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図12】本発明の第12の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図13】本発明の第13の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図14】本発明の第14の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図15】本発明の第15の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図16】本発明の第16の実施例になる誘導・放射界併用DDD通信システムの構成を示す図である。
【図17】本発明の前記各実施例のいずれかを用いた誘導・放射界併用DDD通信システムにおいて、1つの基地局と複数の一組の中継局と端末局が存在するときのシステム構成例を示す図である。
【図18】本発明の前記各実施例のいずれかを用いた誘導・放射界併用DDD通信システムにおいて、1つの基地局と複数の一組の中継局と端末局が存在するときのシステム構成例を示す図である。
【図19】本発明の前記各実施例のいずれかを用いた誘導・放射界併用DDD通信システムにおいて、1つの基地局と複数の一組の中継局と端末局が存在するときのシステム構成例を示す図である。
【図20】本発明の前記各実施例のいずれかを用いた誘導・放射界併用DDD通信システムが工場内の製造ラインに適用された、1つのビジネスモデルを示す図である。
【図21】本発明の前記各実施例のいずれかを用いた誘導・放射界併用DDD通信システムが高額商品を販売する店舗に適用された、1つのビジネスモデルを示す図である。
【図22】従来の無線通信システムの解決すべき課題を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
1…送信回路、2…受信回路、3…サーキュレーター、4…搬送波発生回路、
5…スイッチ、6…マイクロプロセッサ、8…基地局アンテナ、
10…外部誘導コイル、11…パラレル/シリアル変換器、12…スイッチ、13…整合回路、14…整流回路、15…平滑回路、16…マイクロプロセッサ、17…メモリ、18…中継局アンテナ、19…発振回路、20…外部誘導コイル、21…パラレル/シリアル変換器、22…スイッチ、23…整合回路、24…整流回路、25…平滑回路、26…マイクロプロセッサ、27…副メモリ、29…発振回路、30…中継局帯域通型フィルタ、31…帯域通過型フィルタ、32…帯域阻止型フィルタ、34…変調器、40…全波整流回路、61…送信回路、62…受信回路、63…基地局帯域通型フィルタ、64…サーキュレーター、65…搬送波発生器、66…終端抵抗、80…基地局円偏波アンテナ、81…搬送波(放射電磁界)、82…反射波(放射電磁界)、83…放射電磁界、88…誘導電磁界、100…基地局、101…中継局、102…端末局、110…第一の中継局外部誘導コイル、111…第一の中継局、112…第一の端末局、118…第一の中継局アンテナ、121…第二の中継局、122…第二の端末局、128…第二の中継局アンテナ、131…第三の中継局、132…第三の端末局、138…第三の中継局アンテナ、120…第二の中継局外部誘導コイル、130…第三の中継局外部誘導コイル、150…第一の端末局外部誘導コイル、160…第三の端末局外部誘導コイル、170…第三の端末局外部誘導コイル、180…中継局円偏波アンテナ、181…中継局受信アンテナ、182…中継局送信アンテナ、183…基地局送信円偏波アンテナ、184…基地局受信円偏波アンテナ、185…平衡型基地局円偏波アンテナ、187…平衡型基地局受信円偏波アンテナ、201…基地局、202…中継局、203…端末局、208…放射電磁界、218…誘導電磁界、301…コンテナ、311…生産ライン、312…キャリア、313…ボックス/容器、314…サーバ、316…有線ネットワーク、317…外部PC、318…マンマシンインターフェース、319…ライタ、321…容器(ケース)、322…プライスタグ、323…高額商品、324…陳列台、Time(t,t,t)…複数中継局通信タイミング、Time(t,t,t)…複数端末局通信タイミング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と中継局と端末局から構成されて成り、
前記基地局と前記中継局の距離が前記中継局と前記端末局の距離よりも長く構成されて成り、
前記基地局と前記中継局の間は第一の電波で通信を行い、前記中継局と前記端末局との間は前記第一の電波とは周波数帯域の異なる第二の電波で通信を行うように構成されて成り、
前記中継局の前記基地局からの受信電力が、前記中継局から前記端末局への送信電力よりも小さい
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記基地局は送信波と受信波を二重化する機能を備えて成り、
前記中継局および前記端末局が整流回路を具備する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記基地局は送信波と受信波を二重化する機能を備えて成り、
前記第一の電波の周波数が、前記第二の電波の周波数より高い
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記第一の電波が該第一の電波の周波数に相当する周期より長い周期でON/OFFされる
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記中継局が前記第二の電波として前記基地局から放射される前記第一の電波の周波数よりも低い周波数の交流信号を生成し、前記第二の電波により前記中継局と前記端末局との通信を行う
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記基地局が、第一の送受信アンテナと、送信回路と、受信回路と、前記送信回路と前記受信回路のいずれかを前記第一の送受信アンテナに結合する方向性結合器を具備して成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記中継局が、第二の送受信アンテナ、第一の整合回路、マイクロプロセッサ、第一のシリアル/パラレル変換回路、および第一の外部誘導コイルを備えて成り、
前記端末局が、第二の外部誘導コイル、第二の整合回路、第二のシリアル/パラレル変換回路、および副メモリを具備して成り、
前記中継局は、
受信した電磁界のエネルギーを整流回路で整流し該整流出力を充電回路に蓄積する機能と、
該蓄積エネルギーを用いて前記マイクロプロセッサが発信器を駆動してクロック周波数を発生させる機能と、
該マイクロプロセッサが、前記第一、第二の外部誘導コイルを介して該中継局と前記端末局との通信を行い、該端末局内の前記副メモリに格納されている情報を読み取り、該情報を参照し前記第二の送受信アンテナに結合するスイッチを開閉して前記基地局からの前記第一の電波の反射波に変調を施す機能とを備え成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
基地局と中継局と端末局から構成されて成り、
前記基地局と前記中継局の距離が前記中継局と前記端末局の距離よりも長く構成されて成り、
前記基地局と前記中継局の間は主に放射界を用いて通信を行い、前記中継局と前記端末局との間は主に誘導界あるいは静電界を用いて通信を行うように構成されて成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記中継局が前記基地局から放射される前記放射界の周波数よりも低い周波数の交流信号を生成し、該低い周波数の交流信号に基づいて生成される交流信号で前記中継局と前記端末局との通信を行う
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項8において、
前記中継局が複数存在し、前記基地局が該各中継局に送信する前記放射界の変調信号の周波数が互いに異なる
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
請求項8において、
前記中継局が複数存在し、前記各中継局の送信する前記放射界の変調信号の送信タイミングが互いに異なる
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
請求項8において、
前記中継局が生成する低い周波数を用いて、前記基地局から飛来する前記放射界に変調を施して該中継局から前記中継局への反射波とする
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項13】
請求項8において、
前記基地局が送受信アンテナと送信回路と受信回路を具備し、該送受信アンテナに方向性結合器を介して前記送信回路と前記受信回路が結合されて成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
請求項8において、
前記中継局が、送受信アンテナ、第一の整合回路、第一の整流回路、第一のスイッチ、フィルタ、第一の充電回路、第一の外部誘導コイルを具備して成り、
前記端末局が、第二の外部誘導コイル、第二の整合回路、第二の整流回路、第二のスイッチ、第二の充電回路、マイクロプロセッサ、発信器、メモリを具備して成り、
前記中継局において、受信した電磁界のエネルギーが前記第一の整流回路に導かれ、その整流出力が前記第一の充電回路に蓄積される機能と、
前記端末局において、前記蓄積されたエネルギーの交流成分が、前記第一、第二の外部誘電コイルを介して前記第二の整流回路と前記第二の充電回路により電源として前記マイクロプロセッサに供給される機能と、該マイクロプロセッサが前記発信器を駆動してクロック周波数を発生させ前記メモリの内容に応じて、前記第二のスイッチを開閉させ新たな高周波信号を形成する機能と、前記第一、第二の外部誘導コイルを介して前記中継局に伝送する機能と、
前記中継局において、前記端末局より伝送された前記新たな高周波信号を前記フィルタを介して不要な高周波成分を除去する機能と、該中継局の前記送受信アンテナに結合する前記第一のスイッチを開閉して、該アンテナでの前記基地局からの前記放射界の反射波に変調を施す機能とを備えて成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項15】
請求項8において、
前記基地局は移動可能なスキャナとして構成され、前記中継局はコンテナの一部に設置され、前記端末局は該コンテナが具備する各側面を面積的に等分割された各エリアの中心部に設置されて成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項16】
基地局と中継局と端末局から構成されて成り、
前記基地局と前記中継局の距離が該中継局と前記端末局の距離よりも長く構成されて成り、
前記基地局と前記中継局の通信は線状あるいは板状アンテナを用いて行い、前記中継局と前記端末局の通信はコイルあるいは板状コンデンサを用いて行うように構成されて成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項17】
請求項16において、
前記中継局は前記基地局との通信に用いる第一のアンテナよりも、前記端末局との通信に用いる第二のアンテナの寸法が小さい
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項18】
請求項16において、
前期基地局および前記中継局の送受信アンテナが円偏波アンテナである
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項19】
請求項16において、
前記基地局は室内の壁、出入口近傍、床あるいは天井に固定され、前記中継局は個別の物品又は商品を収納する容器又はこれらを展示する展示台に貼付され、前記端末局は該個別の物品又は商品に付随する小型タグに貼付されて成る
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項20】
請求項16おいて、
前記基地局は部屋の出入口近傍の壁面に設置され、前記中継局は移動可能なキャスターに設置され、前記端末局はキャスターに搭載される容器に設置されて成る
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−278169(P2008−278169A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118921(P2007−118921)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】