説明

無鉛半田合金およびその製造方法

無鉛半田合金およびその製造方法を開示する。より詳しくは、0.8〜1.2重量%の銀(Ag)、0.8〜1.2重量%の銅(Cu)、0.01〜1.0重量%のパラジウム(Pd)、0.001〜0.1重量%のテルリウム(Te)、および残部錫(Sn)を含んでなることにより、従来の無鉛半田合金と類似の融点および優れた濡れ性を有し、偏析率が非常に低く、接合母材との接合特性にも優れるため、電子機器およびプリント基板への適用の際に熱衝撃性能と加速衝撃性能を同時に向上させる無鉛半田合金、その製造方法、およびそれを含む電子機器とプリント基板を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル(Ni)/金(Au)で処理されたプリント基板などに用いられる無鉛合金およびその製造方法に係り、より詳しくは、既存の無鉛半田合金と類似の融点を有し、濡れ性に優れるうえ、偏析率が非常に低く、接合母材との接合特性にも優れるため、電子機器およびプリント基板への適用の際に熱衝撃性能と加速衝撃性能を同時に向上させる無鉛半田合金、その製造方法、およびそれを含む電子機器とプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、小さくて薄いデザインの携帯用デジタル機器が人気を集めるにつれて、内部に取り付けられる半導体パッケージもさらに小さく且つ薄くなっている。半導体パッケージは、ウエハー上に形成された半導体チップを電気的に連結し、密封、包装して実生活での使用を可能にするためのものである。携帯用デジタル機器の高性能化・多機能化に伴い、内蔵される半導体チップの個数は増加しているが、機器全体の大きさは小型化されている。
【0003】
したがって、このような電子部品および携帯用デジタル機器に適用される半田接合部の信頼性基準は、非常に高くなっているうえ、多様化されている。特に、携帯型デジタル機器の普及が急激に増加するにつれて、半田接合部の熱衝撃性能および加速衝撃性能を同時に満足させる製品に対する要求が急激に増加している。
【0004】
従来から使用されている無鉛半田合金は、主に錫(Sn)、銀(Ag)、銅(Cu)を基本組成とする3元系合金が大部分であり、このような3元系合金は、銀(Ag)含量が増加するほど、加速衝撃性能が低下する一方で、熱衝撃性能(temperature cycle performance)は向上する傾向を示す。これに対し、銀(Ag)含量が減少するほど、加速衝撃性能は向上する傾向を示すが、熱衝撃性能は低下する傾向を示す。
【0005】
無鉛半田合金で提供された半田接合部は機械的な強度を維持し、熱の拡散通路、熱衝撃に対する緩衝作用、および電気的流れを提供する通路などの役割を果たすため、半田接合部には高い信頼性が必要である。これにより、半田と基板(substrate)間の反応、または半田とプリント基板(Printed Circuit Board、PCB)間の反応に関する研究が長らく行われてきた。
【0006】
これらの研究において、無鉛半田合金における半田と基板間または半田とプリント基板間の接合部の最も重要な問題は、金属間化合物の生成および制御によって半田接合部の接合信頼性、すなわち熱疲労寿命、引張強度および破壊靱性などをどれほど増加させるかということである。ところが、基板とプリント基板上の表面処理によって、半田接合部の信頼性は確然に異なる。
【0007】
従来では、基板とプリント基板上の表面処理にかかわらず無鉛半田合金を使用することが一般的であった。リフロー(reflow)半田付け過程中に、金属間化合物層は、半田と基板上の表面処理または半田とプリント基板上の表面処理によって相異なる金属間化合物を形成し、この金属間化合物層によって接合信頼性が異なる。金属間化合物層は、半田と基板間および半田とパッケージ間の濡れ現象によって生成されるものであって、固相反応によって融点未満の温度で成長する。この際、金属間化合物層の成長は温度と時間の関数であり、半田接合部の形状(morphology、モーフォロジー)は界面エネルギーと粒界エネルギーを最小とするようになされる。
【0008】
したがって、前述した半田接合部の相異なる特性のため、加速衝撃性能に優れる銀(Ag)含量の比較的低い合金が台頭しているが、比較的低い銀(Ag)含量によって錫(Sn)の含量が相対的に増加して、金属間化合物層を形成する確率が高くなり、金属間化合物層の成長が半田接合信頼性の中でも熱疲労寿命、すなわち熱衝撃性能を低下させるという問題点が発生する。これは、携帯型電子機器の普及が急激に増加している現趨勢を考慮すると、半田接合部の熱衝撃性能と加速衝撃性能を同時に満足させなければならない製品の要求に応えないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−1482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した従来の技術の問題点を解決するために、本発明では、ニッケル(Ni)/金(Au)で処理された基板、ニッケル(Ni)/金(Au)で処理されたプリント基板、銅(Cu)/OSP処理された基板、および銅(Cu)/OSP処理されたプリント基板に適用するとき、熱衝撃性能と加速衝撃性能を同時に解決することにより、半田接合部の信頼度を向上させる無鉛半田合金を提供する。
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来の無鉛半田合金と類似の融点を有し、濡れ性に優れるうえ、偏析率が非常に低く、接合母材との接合特性にも優れるため、合金の機械的強度、熱的強度および加速衝撃性能を向上させる無鉛半田合金を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、高周波真空誘導炉を用いて無鉛半田合金を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために研究を重ねた結果、銀、錫と共にパラジウムとテルリウムを含む無鉛半田合金が、ニッケル(Ni)/金(Au)で処理された基板、ニッケル(Ni)/金(Au)で処理されたプリント基板、銅(Cu)/OSP処理された基板、および銅(Cu)/OSP処理されたプリント基板に適用するとき、熱衝撃性能および加速衝撃性能を向上させることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0014】
したがって、本発明は、0.8〜1.2重量%の銀、0.8〜1.2重量%の銅、0.01〜1.0重量%のパラジウム、0.001〜0.1重量%のテルリウムおよび残部錫を含んでなる無鉛半田合金を提供する。
【0015】
銀(Ag)は、自体毒性がなく、合金の融点を降下させるうえ、接合母材の広がり性を良くし、熱衝撃性能を向上させる。銀(Ag)は、本発明の無鉛半田合金100重量%に対して0.8〜1.2重量%で含まれることが好ましい。
【0016】
銅(Cu)は、接合強度を向上させるためのもので、本発明の無鉛半田合金100重量%に対して0.8〜1.2重量%で含まれることが好ましい。その含量が0.8〜1.2重量%の場合には、従来の無鉛半田合金と比較して多少多い含量の銅を含むが、これにより、リフロー工程上におけるCuSn組成の金属間化合物の形成速度が増加する。よって、銅(Cu)とニッケル(N)が置換されるための時間的な要素が豊富になり、(Cu、Ni)6Sn金属間化合物層とバルク(bulk)半田間の熱膨張係数の差によってバルク半田に圧縮応力が作用し、針状構造の金属間化合物の形状を形成する。また、銅(Cu)/OSP工程上において、図1に示したようなCuSn化合物層を形成し、図2に示したようなCuSn化合物層を形成する。この際、CuSn化合物は六方晶系(hexagonal)と菱面体晶系(rhombohedral)の構造を有し、CuSn化合物は加速衝撃試験に脆弱な黒鉛(graphite)構造を有する。
【0017】
パラジウム(Pd)は、加速衝撃性能および熱衝撃性能を同時に向上させるためのものであって、α−Snおよびβ−Snと結合してPdSnを形成するが、半田内へのα−Snの生成が難しくて化合物を形成することが難しく、銀(Ag)とは全率固溶体なので化合物を形成しないが、針状に形成された(Cu、Ni)Sn組成の金属間化合物の界面に図3に示したようなCuPd化合物を形成する。形成された化合物の構造は四方晶系(tetragonal)の鎖状になり、これにより、金属間化合物層の針状構造がさらに粗密になって鎖状を成し、−25℃〜125℃の温度範囲の熱衝撃条件下で生成された低温相であるα−Sn相と、基地内に既に生成されたβ−Sn相とを結合させて図15のPdSn化合物を生成する。図15に示すように、PdSnは棒状の構造を有し、相平衡のために相境界面(特にAgSn界面)に存在する。したがって、加速衝撃によって漸進的にクラック(crack)が伝播されること、および熱疲労によって生成されたクラックが相境界面を移動して伝播されることを非常に難しくして、優れた加速衝撃性能および熱衝撃性能を同時に向上させる。
【0018】
パラジウム(Pd)は、本発明の無鉛半田合金総100重量%に対して0.01〜1.0重量%で含まれることが好ましい。
【0019】
テルリウム(Te)は、加速衝撃性能および熱衝撃性能を同時に向上させるためのものであって、錫(Sn)とは化合物を形成しない全率固溶体であり、銀(Ag)との化合物を形成するためには30重量%以上の含量で存在しなければならないため、化合物の形成が難しい。これに対し、針状に形成された(Cu、Ni)Sn、CuSn組成の金属間化合物の界面に、図4に示したような六方晶系構造のCuTe化合物を形成する。形成された化合物によって金属間化合物層の針状構造がさらに粗密になって鎖状を成し、加速衝撃によるクラックの漸進的な伝播および熱疲労によるクラックの伝播を防ぐことにより、優れた加速衝撃性能を提供する。
【0020】
テルリウム(Te)は、本発明の無鉛半田合金総100重量%に対して0.001〜0.1重量%で含まれることが好ましい。
【0021】
錫(Sn)は、無鉛半田合金の必須的な成分であって、ベース金属として使用され、本発明の無鉛半田合金中に残量で含有できる。
【0022】
前述したような成分を含んでなる本発明の5元系無鉛半田合金は、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素をさらに含むことができる。
【0023】
コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)びゲルマニウム(Ge)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素は、錫(Sn)に比べて酸化物を作ろうとする反応性および反応時の酸素消耗量が大きいため、犠牲酸化によって合金内酸化物量を減少させて偏析率を低める。
【0024】
前記少なくとも1種の元素は、本発明の無鉛半田合金総100重量%に対してそれぞれ0.001〜0.1重量%で含有できる。特に、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)の含量が0.1重量%を超過する場合には、合金内酸化物を減少させる作用より外部酸素と反応して酸化物を形成する傾向がさらに大きくなり、むしろ合金の偏析率を増加させる。
【0025】
また、前記2種以上の元素が含まれる場合には、各元素の含量の和は0.001〜0.2重量%であることが好ましい。
【0026】
コバルト(Co)は、銀(Ag)と銅(Cu)とは化合物を形成しないが、錫(Sn)とは図5に示したような四方晶系構造のCoSn化合物を形成する。
【0027】
ルテニウム(Ru)とロジウム(Rh)は、錫(Sn)との化合物を形成することがさらに安定的なので、図6に示したような立方晶系(cubic)のRuSnおよび図5に示したような四方晶系のRhSn化合物を形成する。
【0028】
前記CoSn、RuSnおよびRhSn2化合物は、半田全体に均一に分布して半田内部の界面エネルギーを減少させるため、粒界を微細にする。また、下記ランタン(La)およびセリウム(Ce)より粒界微細化傾向が大きいため、さらに良好な加速衝撃性能および熱衝撃性能を有する。
【0029】
ランタン(La)およびセリウム(Ce)は、錫(Sn)との化合物を形成することがさらに安定的なので、図7に示したような立方晶系のLaSnおよびCeSn化合物を形成する。このような化合物は、半田全体に均一に分布して界面エネルギーを低めることにより、粒界微細化による機械的強度を高めるうえ、加速衝撃性能および熱衝撃性能を同時に向上させる。
【0030】
ゲルマニウム(Ge)は、β−Sn相と同一の構造的特徴を持つゲル(gel)上の四方晶系構造として半田内に存在し、半田合金の冷却の際に形成される非晶質相である、図8に示したようなGeSn1−y化合物(この際、非晶質相は原子の配列に規則性がないランダム構造なので、yは特定不可な任意の実数値である。)を形成する。このような化合物の構造的な特性で、物理的衝撃と熱疲労によって生成されたクラックの伝播に妨害要素として作用して半田合金の物理的熱的性能を向上させる。
【0031】
一方、本発明の無鉛半田合金の製造方法は、(1)銀、銅、パラジウム、テルリウムおよび錫の混合物を製造する段階と、(2)混合物を高周波真空誘導炉に投入し、合金に製造する段階とを含んでなる。
【0032】
(2)の段階は、真空度を6.0×10−1torr〜3.×10−1torrの圧力に維持した後、740〜750torrの圧力で不活性ガスでパージし、不活性雰囲気を維持した後、10〜15分間行われることが好ましい。
【0033】
前述したように真空誘導炉で合金を製造する場合には、錫が酸素と反応して錫酸化物(SnO)を形成する不必要な反応が抑制されながら、相対的に異なる元素の含量変化が少ないため、偏析率を減少させる。また、真空誘導炉の電気的 渦流による攪拌力が従来の電気炉を用いる方法の機械的な攪拌力より優れるうえ、大気中ではなく、不活性雰囲気の下で作業が行われることにより、偏析をさらに抑制する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る無鉛半田合金は、従来の無鉛半田合金と類似の融点および優れた濡れ性を有するうえ、偏析率が非常に低い。それだけでなく、接合母材との優れた接合特性を有することにより、合金の機械的強度、熱的強度および加速衝撃性能を著しく向上させることを可能にする。
【0035】
したがって、無鉛半田合金を電子機器およびプリント基板、特にNi/Auで処理された基板、Ni/Auで処理されたプリント基板、Cu/OSP処理された基板、およびCu/OSP処理されたプリント基板に適用することにより、熱衝撃性能および加速衝撃性能を同時に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の前記および他の目的、特徴および利点は、添付図面を参照する次の詳細な説明からさらに明確に理解されるであろう。
【図1】CuSn化合物の六方晶系および菱面体晶系構造を示す図である。
【図2】CuSn化合物の黒鉛構造を示す図である。
【図3】CuPd化合物の四方晶系鎖状構造を示す図である。
【図4】CuTe化合物の六方晶系構造を示す図である。
【図5】CoSnおよびRhSn化合物の四方晶系構造を示す図である。
【図6】Ru3Sn化合物の立方晶系構造を示す図である。
【図7】LaSnおよびCeSn化合物の立方晶系構造を示す図である。
【図8】GeSn1−y化合物の非晶質相の構造を示す図である。
【図9】本発明で酸化物発生量の測定に使用される酸化物発生装置を示す図である。
【図10】本発明によって製造された合金の偏析率、作業性(収率)および酸化物含量の連関性を示すグラフである。
【図11】ニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理された基板およびプリント基板、金属間化合物、被接合材から構成された半田接合部を示す概略図である。
【図12】本発明における、銅(Cu)/OSPで表面処理された基板およびプリント基板上に半田接合部を形成する過程を示す概略図である。
【図13】本発明における熱衝撃性能試験の方法を具体的に示す図である。
【図14】本発明に係るAgSn化合物の構造を示す図である。
【図15】本発明に係るPdSn化合物の構造を示す図である。
【図16】本発明に係るニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理された基板およびプリント基板と半田間の接合部の微細組織を示す図で、(a)は実施例3の微細組織、(b)は実施例4の微細組織、(c)は比較例1の微細組織、(d)は比較例4の微細組織をそれぞれ示す。
【図17】本発明に係るニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理された基板およびプリント基板と半田間の金属間化合物層の立体的構造を示す図で、(a)は実施例3、(b)は実施例4、(c)は比較例1、(d)は比較例4の構造をそれぞれ示す。
【図18】本発明に係るニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理された基板およびプリント基板を用いた加速衝撃性能を示すグラフである(ワイブル分布図)。
【図19】本発明に係るニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理された基板およびプリント基板を用いた加速衝撃性能を示すグラフである(母数生存図)。
【図20】本発明に係る銅(Cu)−OSPで表面処理された基板およびプリント基板と半田間の接合部の微細組織を示す図で、(a)は実施例3の微細組織、(b)は実施例4の微細組織、(c)は比較例1の微細組織、(d)は比較例4の微細組織をそれぞれ示す。
【図21】本発明に係る銅(Cu)−OSPで表面処理された基板およびプリント基板を用いた加速衝撃性能を示すグラフである(ワイブル分布図)。
【図22】本発明に係る銅(Cu)−OSPで表面処理された基板およびプリント基板を用いた加速衝撃性能を示すグラフである(母数生存図)。
【図23】本発明に係る銅(Cu)−OSPで表面処理された基板およびプリント基板を用いた熱衝撃性能を示すグラフである(ワイブル分布図)。
【図24】本発明に係る銅(Cu)−OSPで表面処理された基板およびプリント基板を用いた熱衝撃性能を示すグラフである(母数生存図)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例について説明する。ところが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明は当該技術思想の範囲内において多様な変更および修正を加えることが可能であり、これらの変形および修正は特許請求の範囲に属するものと理解されるべきである。
【0038】
(実施例1〜13:高周波誘導炉における無鉛半田合金の製造)
表1(ここで、各成分の含量は重量%)に示したような組成で混合物を製造した。製造された混合物を高周波真空誘導炉に投入し、真空度を5.5×10−1torr以下に維持した後、750torrの圧力で窒素をパージし、しかる後に、チャンバー雰囲気を保って15分間合金を製造した。
【表1】

【0039】
(実施例14〜20:電気炉における無鉛半田合金の製造)
表2(ここで、各成分の含量は重量%)に示したような組成で混合物を製造した。混合物を電気炉で1000℃で約4時間、30分間隔で強制攪拌して合金を製造した。
【表2】

【0040】
(比較例1〜7)
表3(ここで、各成分の含量は重量%)に示したような組成で混合物を製造した。製造された混合物を高周波真空誘導炉に投入し、真空度を5.5×10−1torr以下に維持した後、750torrの圧力で窒素パージし、チャンバー雰囲気を維持して15分間合金を製造した。
【表3】

このように製作された合金について次の物性試験を行った。
【0041】
(偏析率の測定)
実施例1〜13および実施例14〜20で製造された合金を用いて幅15mm、長さ255mm、高さ15mmの半田バー(solder bar)をそれぞれ3個ずつ製造した。製造された半田バーを5等分して主成分としての銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)およびテルリウム(Te)の含量を分光分析器で分析し、数式1を用いて各成分の投入量に対する分析値の平均によって偏析率を計算した。偏析率試験結果を表4に示した。
[数式1]
偏析率(%)=[{100−(分析値x1/投入量x1)×100}+{100−(分析値x2/投入量x2)×100}+…+{100−(分析値xn/投入量xn)×100}]/n
ここで、x1〜xnは等分された半田バーを示す。例えば、x1はn等分された半田バーの1番目の部分、x2はn等分された半田バーの2番目の部分である。
【表4】

【0042】
表4に示すように、無鉛半田合金の製造方法と追加元素によって偏析率の差異が明確であった。まず、高周波真空誘導炉で製造した実施例1〜13の合金は、電気炉で製造した実施例14〜20の合金に比べて約50%以上偏析率が減少した。すなわち、錫が酸素と反応して錫酸化物(SnO)を形成する不必要な反応が抑制されながら、相対的に異なる元素の含量変化が少ないため、偏析率が減少したのである。
【0043】
また、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(Ce)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)をそれぞれ0.01重量%添加して製造した合金において、高周波真空誘導炉で製造した実施例2、4、6、8、10、12の合金の場合には偏析率が約100%程度減少し、電気炉で製造した実施例15〜20の合金の場合には偏析率が約20%程度減少した。これに対し、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)をそれぞれ0.15重量%添加して製造した実施例3、5、7、9、11、13の合金の場合、合金内酸化物を減少させる作用より外部酸素と反応して酸化物を形成する傾向がさらに大きくなり、偏析率が多少増加した。したがって、高周波真空誘導炉を用いて合金を製造することが好ましく、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルアミニウム(Ge)などの元素をさらに添加する場合にはそれぞれ0.001〜0.1重量%の含量で添加することがより好ましい。
【0044】
(半田ボール(solder ball)製造時の作業性(収率)評価)
実施例1〜13および実施例14〜20で製造された合金に対する半田ボール製造時の作業性を評価するために、前記偏析率の測定の際に用いられた半田バーを使用した。PAP(Pulsated Atomization Process)工法を用いて各合金1000gを直径0.2mmのノズルを用いて噴射させて直径0.45±0.01mmの半田ボールを製造した。製造された半田ボールの重量で収率を計算し、その結果を表5に示した。
【表5】

【0045】
表5に示すように、合金製造の際に偏析率と酸化物の含量が全体半田ボールの製造収率に影響を及ぼすことを確認した。まず、高周波真空誘導炉で製造した実施例1〜13の合金は、電気炉で製造した実施例14〜20の合金と比較して約20%以上の収率が増加した。
【0046】
また、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)を添加する場合には、作業性、すなわち収率を増加させることができるが、各元素の含量が0.1重量%を超過する場合には、偏析率の増加と共に、溶融された無鉛半田合金内の酸化物の増加によってノズル詰りをもたらすことにより、半田ボール製造時の収率を減少させる。偏析率試験の結果と半田ボール製造時の収率間の連関性が存在するが、合金の偏析率と残存酸化物の含量と半田ボール製造時の収率とが比例することが分かる。
【0047】
(酸化物発生量の測定)
偏析率および作業性に重要な要因として作用する酸化物発生特性を調査して偏析率と作業性との直接的な連関性を試験した。
実施例1〜13および比較例3で製造された合金を大気中で245±5℃の条件で溶融させ、分析試料量はそれぞれ2kgずつにして機械的に100rpmで強制攪拌させた。攪拌力を最大にするために、攪拌槽の1/4位置で攪拌した。図9に示した酸化物発生装置を用いて、時間に応じて攪拌された合金の表面に生成される酸化物の含量を測定し、その結果を表6に示した。
【表6】

【0048】
表6に示すように、酸化物の含量は偏析率に比例することが分かった。また、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)を添加する場合、錫酸化の障壁として作用して酸素消耗量が減少し、また、これらが錫より大きい反応性を示すため、犠牲酸化によって合金内の酸化物の含量を減少させることが分かる。
【0049】
これに対し、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルアミニウム(Ge)をそれぞれ0.15重量%添加して製造した実施例3、5、7、9、11および13の場合、合金内の酸化物を減少させる作用より外部酸素と反応して酸化物を形成する傾向がさらに大きくなり、酸化物の含量が増加した。
【0050】
したがって、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)などの元素をさらに添加する場合には、それぞれ0.001〜0.1重量%の含量で添加することがより好ましい。
【0051】
前記3つの物性試験の偏析率、作業性(収率)および酸化物含量の連関性を図10に示した。偏析率、作業性(収率)および酸化物含量は非常に比例的な関係であることが分かる。
【0052】
(濡れ力の評価)
実施例1〜13および比較例1〜6で製造された無鉛合金半田の半田接合部の信頼度を評価するために、濡れ性と溶融点を次の方法で測定し、その結果を表7に示した。
濡れ性は、表面がOSP処理されて規格3×10×0.3mmの試験片(銅クーポン(coupon))を用いて、J−STD−002B規定に基づいて溶湯温度245±5℃、水溶性フラックスを用いて総10回測定し、その値の平均値を求めた。より詳しくは、濡れ性試験はメニスコグラフ(meniscograph)法を用いて濡れ時間による濡れ力を測定するのであって、245±5℃で加熱された溶融半田容器(bath)中に試験片を一定の速度で一定の深さまで浸漬し、試験片に加えられる浮力と濡れ力(濡れ開始後の表面張力によって試験片に作用する力)を測定し、その作用力および時間曲線を解析して評価し、数式2で計算した。この際、濡れ時間(T)は溶融半田が試験片に濡れながら試験片と半田表面とが水平になる時間を示し、これは浮力と溶融半田の表面張力が平衡状態となるものであって、濡れ性を決定する重要な要素である。
[数式2]
最大濡れ力(Fmax)=pγcosθ−pgV
式中、pは浸漬した試験片の周囲、γはフラックスに接触した半田の表面張力、θは接触角、Vは浸漬体積、gは重力加速度をそれぞれ示す。
溶融点は、分析試料10mgを用いてアルミニウム材質の坩堝(容量:25μl、直径:5mm)で示差走査熱量計(DSC)によって測定した。
【表7】

【0053】
表7に示すように、溶融点は、共晶組成である比較例7以外は有意差を示しておらず、濡れ性の評価において、濡れ時間(T)の場合に有意差を有することを確認した。具体的に、鉛(Pb)が含まれた比較例7の合金の場合、濡れ時間が0.5秒であって、実施例1、2、4、6、8、10および12の合金と比較して0.2〜0.4秒さらに短かった。ところが、パラジウム(Pd)とテルリウム(Te)と共に少なくとも1種の元素をさらに含む合金の場合、濡れ時間が50%以上向上した。特にルテニウム(Ru)を含む合金は濡れ時間がより改善されたが、これは、溶融半田の表面張力および半田とフラックス間の界面エネルギーが減少し、酸化層の生成が抑制されたためである。ところが、濡れ性は数式2に示したように濡れ時間との連関性はなく、10回測定した平均値を見るとき、分析された濡れ力は有意差がないと判断される。
【0054】
(加速衝撃性能評価)
実施例1、2、4、6、8、10、12および比較例1〜6で製造された無鉛合金半田の加速衝撃性能を次の方法によって評価し、その結果を表8および表9に示した。
加速衝撃試験器を用いてJESD22−B111規定に基づいて測定し、測定の際に加えられる重力加速度(G)は1500±150Gであって0.5msec単位で測定した。衝撃回数は最大300回と限定した。評価に用いられた基板およびプリント基板(PCB)は、表面をニッケル(Ni)/金(Au)で処理したものと、表面を銅(Cu)/OSPで処理したものをそれぞれ使用した。
【表8】

【0055】
表8に示すように、表面をニッケル(Ni)/金(Au)で処理した基板およびプリント基板の場合、実施例の合金を用いた初期短絡(1% failure)回数を比較例の合金と比較するとき、約250%程度加速衝撃性能が向上したことが分かる。飛躍的な加速衝撃性能の向上は、半田接合部の形状と非常に密接な関係がある。図11には表面をニッケル(Ni)/金(Au)で処理した基板及びプリント基板、金属間化合物、被接合材で構成された半田接合部の概略図を示した。
【0056】
加速衝撃性能は半田接合部の形状によって大きく左右される。前記結果において加速衝撃性能に最も優れた実施例3、4と比較例1、4の微細構造を図16に示した。まず、半田接合部の形状を考察すると、実施例に係る合金の場合、比較例の合金と比較して銅(Cu)の含量が約2倍程度多いため、リフロー工程上でCuSn組成の金属間化合物の形成後に銅(Cu)とニッケル(Ni)の内部拡散によって(Cu、Ni)Sn組成の金属間化合物の形成速度が増加する。したがって、銅(Cu)とニッケル(Ni)の置換時間が長くなり、(Cu、Ni)Sn金属間化合物層とバルク半田間の熱膨張係数の差によってバルク半田に圧縮応力が作用し、金属間化合物の形状が針状構造を形成する。
【0057】
パラジウム(Pd)とテルリウム(Te)は、針状に成長した(Cu、Ni)Sn組成の金属間化合物の不安定な界面にCuPdとCuTe相を形成する。形成されたCuPdは四方晶系の鎖状構造を有し、形成されたCuTeは六方晶系構造を有するが、このような構造によって金属間酸化物層の針状構造がさらに粗密になり、鎖状構造を成す。図17には実施例3、4と比較例1、4の金属間化合物層の立体的構造を示した。これにより、加速衝撃による漸進的クラック伝播が難しくなり、比較例の半田合金と比較して非常に優れた加速衝撃性能を持つ。
【0058】
また、コバルト(Co)は四方晶系のCoSnを形成し、ルテニウム(Ru)とロジウム(Rh)はそれぞれ立方晶系のRuSnと四方晶系のRhSn化合物を形成し、ランタン(La)とセリウム(Ce)はそれぞれ立方晶系のLaSnとCeSnを形成し、ゲルマニウム(Ge)は四方晶系の化合物を形成する。このような元素を含む実施例の合金は、粒界微細化による効果によって合金内の強度を上昇させ、これにより極めて優れた加速衝撃性能を持たせる。粒界微細化による効果起因する合金内の強度上昇は数式3に示した。
表8に示した結果をワイブル分布(Weibull distribution、 図18)および母数生存図(図19)で表示した。
[数式3]
材料の強度(σY)=σ+k×d−1/2
式中、σは1つの粒界の平均強度、kは材料の強度増加に及ぼす粒界の効果を決定する複合媒介変数、dは粒界のサイズである。
【表9】

【0059】
表9に示すように、表面を銅(Cu)/OSPで処理した基板およびプリント基板の場合、実施例の合金を用いた場合の初期短絡(1% failure)回数を比較例の合金と比較するとき、約100%程度加速衝撃性能が向上したことが分かった。ニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理した基板およびプリント基板の試験と同様に、銅(Cu)/OSPで表面処理した基板においても、加速衝撃性能は半田接合部の形状と非常に密接な関係がある。図12には表面を銅(Cu)/OSPで処理した基板およびプリント基板の半田接合部の形成過程を示した。
【0060】
図12に示すように、基板およびプリント基板を銅(Cu)/OSPで表面処理する場合にはCu6Sn5組成の金属間化合物を生成する。この際、CuSn組成の金属間化合物層とバルク半田間の熱膨張係数の差によってバルク半田に圧縮応力が作用するが、ニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理したものと比較して相対的に銅(Cu)の含量が豊富なので、ニッケル(Ni)/金(Au)で表面処理したものとは異なり、金属間化合物の形状がホタテ貝状(scallop)の構造で形成される。本発明が提示した相対的に多くなった銅(Cu)の含量に応じてリフロー工程によって第2の金属間化合物層が生成される。すなわち、 CuSnとCuSnの2組成の金属間化合物層が形成されるが、第1の金属間化合物層であるCuSnの形成後に残っている銅(Cu)は、拡散による錫(Sn)と熱力学的に安定的な2番目の金属間化合物層であるCuSn化合物層を形成する。 CuSnは六方晶系と菱面体晶系構造を有するが、CuSnは黒鉛構造を有するため、構造学的に非常に結合が弱くて加速衝撃試験に非常に脆弱である。
【0061】
このような構造的欠陥はパラジウム(Pd)およびテルリウム(Te)を添加することにより解決することができるが、これらの元素は、第1の金属間化合物層であるCuSnの形成後に残っている銅(Cu)が、熱力学的に安定的な第2の金属間化合物層であるCuSn化合物層を形成することを妨害し、加速衝撃によるCuSn化合物層の破壊を抑制することにより、優れた加速衝撃性能を持たせる。
【0062】
また、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)の添加によって形成された化合物(CoSn、RuSn、RhSn、LaSn、CeSn)は、バルク半田および金属間化合物層の界面に均一に分布すると、相対的に錫(Sn)の拡散を妨害することにより、第1の金属間化合物層であるCuSnの形成後に残っている銅(Cu)が熱力学的に安定的な第2の金属間化合物層であるCuSn化合物層を形成することを妨害する。ゲルマニウム(Ge)は、四方晶系の化合物を形成し、その構造的特性によってクラック伝播に妨害要素として作用して合金の機械的性能を向上させる。加速衝撃性能に最も優れた実施例3、4と比較例1、4の微細構造を図20に示した。
表9に示した結果はワイブル分布図(図21)および母数生存図(図22)で表示した。
【0063】
(熱衝撃性能の評価)
熱衝撃性能が脆弱な同(Cu)/OSPで表面処理された基板および回路基板で熱衝撃性能を次の方法によって評価し、その結果を表10に示した。
熱衝撃試験機を用いて−25℃〜125℃の温度範囲で抵抗を実時間にて測定して破壊有無を検査した。試験条件は図13に示した。
【表10】

【0064】
表10に示すように、相対的に銀(Ag)の含量が低い合金は非常に劣悪な熱衝撃性能を示す。しかし、実施例の合金は比較例4、5に比べて相対的に銀(Ag)の含量が低いにも拘らず同等またはそれ以上の熱衝撃性能を示した。
【0065】
熱衝撃による材料の破壊は、−25℃〜125℃の温度範囲で成長した金属間化合物層とバルク半田内の微細亀裂の伝播によって発生する。前記加速衝撃性能に関連して説明したように、基板およびプリント基板を銅(Cu)/OSPで表面処理すると、CuSnとCuSnの2組成の金属間化合物層が形成される。すなわち、第1の金属間化合物層であるCuSnの形成後に残っている銅(Cu)が、拡散による錫(Sn)と熱力学的に安定的な第2の金属間化合物層であるCuSn化合物を形成する。また、バルク半田内に微細に分布していた図14のAgSn化合物が温度によって成長し、相対的に銀(Ag)の含量が多い比較例3および4の場合にはAgSnの成長が著しい。このような化合物の成長メカニズムに基づいて本発明に係る無鉛半田合金の特性を考察すると、次のとおりである。
【0066】
パラジウム(Pd)とテルリウム(Te)を添加する場合、CuSn組成の金属間化合物の不安定な界面にCuPd化合物とCuTe化合物を形成する。パラジウム(Pd)とテルリウム(Te)の添加は材料構造的に熱疲労によるクラック伝播が容易な黒鉛構造の化合物層であるCuSn化合物の形成と成長を妨害する。また、パラジウム(Pd)の場合、−25℃〜125℃の温度範囲の実験条件下で生成された低温相であるα−Sn相と、基地内に既に生成されていたβ−Sn相とが結合して図15のPdSn化合物を生成する。図15に示すように、PdSnは棒状の構造を有し、相平衡のために相境界面(特に、AgSn界面)に存在する。熱疲労によって生成されたクラックが相境界面を移動して伝播されることを非常に難しくして優れた熱衝撃性能を持たせる。
【0067】
また、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)およびロジウム(Rh)の添加により形成された化合物(CoSn、RuSn、RhSn)は、−25℃〜125℃の温度範囲の実験条件下で成長および拡散を介してバルク半田および金属間化合物層の界面に均一に分布して界面エネルギーを減少させるため、半田内粒界をさらに微細にする。また、バルク半田と金属間化合物層との界面に均一に分布して錫(Sn)の拡散を防ぐことにより、材料構造上クラックの伝播が容易なCuSn化合物の成長を妨害して熱疲労によるCuSn化合物層の破壊を抑制する効果を持つ。
【0068】
このように、パラジウム(Pd)との組み合わせによってCuSn、CuSn、AgSn化合物の構造を棒状に維持して構造的に高い表面エネルギーを有するCuSn、CuSn、AgSn化合物の成長を効果的に制御することにより、非常に優れた熱衝撃性能を持つ。
【0069】
また、高い表面活性化傾向を持つランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)を添加する場合、表面エネルギーの高いCuSn、AgSnの金属間化合物の界面に吸着する。表面活性化傾向が高い元素の吸着は、各面(結晶の方位面)によって異なる。最高の表面張力(エネルギー)を持つ面が最も速く成長し、表面活性化元素の吸着量も最大になる。表面活性化元素の吸着量は、全体界面の自由エネルギーを最小化することに非常に重要である。このような吸着は、結晶の表面エネルギーの差を減少させ、高い表面エネルギーを持つ面の過多成長を防止する。したがって、活性化傾向が高いランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)を添加すると、CuSn、AgSnの金属間化合物の大きさを減少させ、基地相であるβ−Snの粒子サイズも微細化させる。このような構造的特性によってクラック伝播に妨害要素として作用して材料の熱衝撃性能の向上に寄与する。表10に示した結果をワイブル分布図(図23)および母数生存図(図24)で表示した。
【0070】
以上、本発明の好適な実施例について説明の目的で開示したが、当業者であれば、添付した請求の範囲に開示された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な変形、追加または置換を加え得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル(Ni)/金(Au)で処理されたプリント基板に用いられる無鉛半田合金であって、0.8〜1.2重量%の銀(Ag)、0.8〜1.2重量%の銅(Cu)、0.01〜1.0重量%のパラジウム(Pd)、0.001〜0.1重量%のテルリウム(Te)および残部錫(Sn)を含んでなる、無鉛半田合金。
【請求項2】
コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素をさらに含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の無鉛半田合金。
【請求項3】
前記選ばれた元素が1種の場合、前記1種の元素の含量が0.001〜0.1重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の無鉛半田合金。
【請求項4】
前記選ばれた元素が2種以上の場合、前記2種以上の元素の含量の和が0.001〜0.2重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の無鉛半田合金。
【請求項5】
前記半田合金のCu、Snおよびプリント基板のNiによって(Cu、Ni)SnおよびCuSn組成の金属間化合物を形成され、前記金属間化合物の界面に、前記パラジウム(Pd)と銅(Cu)とが結合してCuPd化合物およびPdSn化合物が形成されることにより、前記金属間化合物の針状構造はさらに粗密になり、鎖状を成すことを特徴とする、請求項1または2に記載の無鉛半田合金。
【請求項6】
前記半田合金のCu、Snおよびプリント基板のNiによって(Cu、Ni)SnおよびCuSn組成の金属間化合物が形成され、前記金属間化合物の界面に、前記テルリウム(Te)と銅(Cu)とが結合してCuTe化合物が形成されることにより、前記金属間化合物の針状構造はさらに粗密になり、針状を成すことを特徴とする、請求項1または2に記載の無鉛半田合金。
【請求項7】
コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)およびロジウム(Rh)が、それぞれCoSn、RuSn、RhSn化合物を形成して半田内部の界面エネルギーを減少させることにより、粒界を微細化させることを特徴とする、請求項2に記載の無鉛半田合金。
【請求項8】
ランタン(La)、セリウム(Ce)およびゲルマニウム(Ge)がそれぞれLaSn、CeSn、およびGeSn1−y非晶質化合物(ここで、yは任意の実数値)を形成することを特徴とする、請求項2に記載の無鉛半田合金。
【請求項9】
ニッケル(Ni)/金(Au)で処理されたプリント基板に用いられる無鉛半田合金の製造方法であって、
(1)銀、銅、パラジウム、テルリウムおよび錫の混合物を製造する段階と、
(2)混合物を高周波真空誘導炉に投入し、合金に製造する段階とを含んでなることを特徴とする、無鉛半田合金の製造方法。
【請求項10】
(2)段階の合金化が、真空度を6.0×10−1torr〜3.0×10−1torrの圧力に維持した後、740〜750torrで不活性ガスでパージし、不活性雰囲気を維持した後、10〜15分間行われることを特徴とする、請求項9に記載の無鉛半田合金の製造方法。
【請求項11】
(2)段階における前記不活性ガスは窒素であり、(2)段階の合金化は、真空度を5.5×10−1torr以下に維持し、750torrの圧力で窒素をパージした後、15分間行われることを特徴とする、請求項10に記載の無鉛半田合金の製造方法。
【請求項12】
(1)段階の混合物が0.8〜1.2重量%の銀、0.8〜1.2重量%の銅、0.01〜1.0重量%のパラジウム、0.001〜0.1重量%のテルリウム、および残部錫を含んでなることを特徴とする、請求項9または10に記載の無鉛半田合金の製造方法。
【請求項13】
前記混合物が、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ランタン、セリウムおよびゲルマニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素をさらに含んでなることを特徴とする、請求項12に記載の無鉛半田合金の製造方法。
【請求項14】
前記選ばれた元素が1種の場合、前記1種の元素の含量が0.001〜0.1重量%であることを特徴とする、請求項13に記載の無鉛半田合金の製造方法。
【請求項15】
前記選ばれた元素が2種以上の場合、前記少なくとも2種の元素の含量の和が0.001〜0.2重量%であることを特徴とする、請求項13に記載の無鉛半田合金の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公表番号】特表2010−512250(P2010−512250A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548177(P2009−548177)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005218
【国際公開番号】WO2009/084798
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509039286)トゥクサン ハイ‐メタル シーオー エルティディ (1)
【Fターム(参考)】