説明

無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具

【課題】瞬時低電後の再始動時において再点灯までに要する時間を短縮するとともに、回路を構成する部品へのストレスが増大するのを防ぐことができる無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】直流電源回路1と、高周波電源回路2と、高周波電源回路2のスイッチング素子Q2,Q3をスイッチングさせる駆動信号を出力する駆動回路と、駆動回路を制御して無電極放電灯4を始動する始動回路と、瞬時低電を検出する瞬時低電検出回路5とを備え、始動回路は、無電極放電灯4が始動しない大きさの高周波電圧を誘導コイル3に印加する始動準備期間、及び無電極放電灯4が始動可能な大きさの高周波電圧を誘導コイル3に印加する始動期間を経て無電極放電灯4を始動させ、瞬時低電検出回路5が瞬時低電を検出した際に再始動時の始動準備期間が初めて始動する際の始動準備期間よりも短くなるように駆動回路を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、透明な球状のガラスバルブ又は内壁面に蛍光体が塗布された球状のガラスバルブ内に不活性ガス、金属蒸気などの放電ガス(例えば、水銀蒸気及び希ガス)が封入された無電極放電灯の近傍に誘導コイルを配置し、この誘導コイルに数十kHzから数百MHzの高周波電流を流すことにより、誘導コイルに高周波電磁界を発生させて無電極放電灯に高周波電力を供給し、無電極放電灯のガラスバルブ内に高周波プラズマ電流を発生させて紫外線若しくは可視光を発生させる無電極放電灯点灯装置が知られている。このような無電極放電灯点灯装置として、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
この従来例は、図8に示すように、商用電源ACの交流出力から所望の直流出力を作成する直流電源回路200と、直流電源回路200の直流出力を高周波出力に変換して無電極放電灯204の近傍に配置された誘導コイル203に供給する高周波電源回路201と、高周波電源回路201の出力端間に設けられて無電極放電灯204とともに負荷回路を構成する共振回路202と、高周波電源回路201から誘導コイル203への電力供給に異常がある際に、誘導コイル203に印加する高周波出力を無電極放電灯204が点灯しない大きさにする保護期間と無電極放電灯204が始動する大きさにする動作期間とを交互に繰り返すように高周波電源回路201を制御する保護回路205とを備える。そして、保護期間から動作期間に移行する移行期間において誘導コイル203に与える高周波出力の大きさを保護期間における大きさと動作期間における大きさとの間の大きさにするオーバーシュート回路206を備え、移行期間において誘導コイル203に印加される高周波出力を緩やかに立ち上げることで誘導コイル203の両端間電圧に発生するオーバーシュートを防止するものである。
【0004】
ところで、無電極放電灯204は内部に電極を有しないので、無電極放電灯204の始動時には蛍光灯等よりも高い始動電圧を誘導コイル203に印加する必要がある。このため、無電極放電灯204の始動時における共振の鋭さを鋭くして(即ち、共振回路202のQ値を高く設定する)高い始動電圧を低損失で印加することのできる無電極放電灯点灯装置を設計する必要がある。ここで共振が鋭いとは、微小な周波数や回路を構成する素子のパラメータ等の変動に対して始動電圧が大きく変動する状態にあることを意味する。
【0005】
また、始動時における無電極放電灯204がインダクタ負荷であり、蛍光灯等の電極を有する他の放電灯に比較して、特に点灯していない状態(始動時や無負荷時等)に大きな電力を必要とするという問題がある。例えば、高周波電源回路201の無負荷時における消費電力は通常点灯時の消費電力の2倍以上に達することもある。しかしながら、無電極放電灯点灯装置における直流電源回路200は、装置のサイズやコストを考慮して通常点灯時の負荷状態を基準にして設計されるのが一般的である。したがって、始動時、特に暗所時や無負荷時では、重負荷のために直流電源回路200の電圧レギュレーションが十分でなく直流電源回路200の出力電圧が低下してしまう。その結果、誘導コイル203に印加される高周波電圧の不安定化や装置の誤動作といった不具合が発生する虞がある。
【0006】
一方、上記従来例は、始動時に誘導コイル203に高周波電圧を急峻に印加させるのではなく、始動前及び再始動前に所定出力の高周波電圧を予備出力として一定期間(以下、この期間を「始動準備期間」と呼ぶ)誘導コイル203に印加させる構成であり、この構成は、高周波電源回路201に適度な負荷を与えることで始動時の急峻な負荷変動を抑え、始動時において誘導コイル203に印加される高周波電圧のオーバーシュートを防止する効果を得るものである。これに加えて、直流電源回路200の制御も負荷変動についていき易いことから、始動時の直流電源回路200の出力電圧の低下を抑えて高周波電源回路201に安定して直流電圧を供給する効果も得ることができる。このため、上記従来例は上記不具合を解決することができるが、直流電源回路200の出力電圧の低下を抑える効果を十分に得るためには、始動準備期間の誘導コイル203への印加電圧を無電極放電灯204が点灯しない範囲で出来る限り大きくする必要がある。
【特許文献1】特開2005−158459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、商用電源ACは数百msにも満たないような短時間だけ出力が低下、即ち瞬時低電する場合がある(ここで、低電には出力が略零となる停電も含まれる)。この場合、瞬時低電後に無電極放電灯204を早期に再点灯することが望まれる。しかしながら、図9に示すように、無電極放電灯204を初めて始動する場合と同様の始動準備期間を瞬時低電後の再始動時においても設けてしまうと、その分瞬時低電後の再点灯までの時間が長くなってしまうという問題があった。更に、上述のように始動準備期間では誘導コイル203への印加電圧を無電極放電灯204が点灯しない範囲で出来る限り大きくする必要があるため、再始動時の始動準備期間が長くなるとそれだけ回路を構成する部品へのストレスが増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、瞬時低電後の再始動時において再点灯までに要する時間を短縮するとともに、回路を構成する部品へのストレスが増大するのを防ぐことができる無電極放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路と、高周波でスイッチングされる1乃至複数のスイッチング素子並びに共振回路を具備し直流電源回路の出力電圧を高周波電圧に変換して無電極放電灯に近接配置された誘導コイルに供給する高周波電源回路と、スイッチング素子をスイッチングさせる駆動信号を出力する駆動回路と、駆動回路を制御して駆動信号の周波数を変化させることにより誘導コイルへの印加電圧を可変して無電極放電灯を始動する始動回路と、交流電源から直流電源回路へ供給される電圧の瞬時低電を検出する瞬時低電検出回路とを備え、始動回路は、無電極放電灯が始動しない大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動準備期間、及び無電極放電灯が始動可能な大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動期間を経て無電極放電灯を始動させ、瞬時低電検出回路が瞬時低電を検出した際に再始動時の始動準備期間が瞬時低電後の始動準備期間以外の始動準備期間よりも短くなるように駆動回路を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、始動回路は、始動準備期間において高周波電界放電を発生させるための高周波電界放電電圧を高周波電界放電が発生するまで誘導コイルに印加するように駆動回路を制御するとともに、始動期間において高周波電磁界放電を発生させるための高周波電磁界放電電圧を誘導コイルに印加するように駆動回路を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、少なくとも無電極放電灯を保持する器具本体と、無電極放電灯に近接配置される誘導コイルと、誘導コイルに高周波電力を供給する請求項1又は2に記載の無電極放電灯点灯装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、始動準備期間が短くても直ぐに再点灯することのできる瞬時低電後の始動準備期間を短くすることで、瞬時低電後の再始動時において再点灯までに要する時間を短縮することができる。また、高電圧が印加される始動準備期間を短くすることで、回路を構成する部品へのストレスが増大するのを防ぐことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、始動準備期間において高周波電界放電を発生させた後に始動期間において高周波電磁界放電を発生させるので、始動準備期間を設けずに無電極放電灯を始動させる場合と比較して始動性を高めることができる。また、高周波電界放電を発生させた後に始動期間に移行するため、直ぐに高周波電磁界放電を発生させることができて高電圧を誘導コイルに印加する始動期間を短縮することができ、したがって回路を構成する部品へのストレスを低減することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果を奏する照明器具を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、交流電源である商用電源ACからの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路1と、高周波でスイッチングされる2つのスイッチング素子Q2,Q3並びに共振回路21を具備し直流電源回路1の出力電圧を高周波電圧Vcoilに変換して無電極放電灯4に近接配置された誘導コイル3に供給する高周波電源回路2と、スイッチング素子Q2,Q3をスイッチングさせる駆動信号を出力する駆動回路と、駆動回路を制御して駆動信号の周波数を変化させることにより誘導コイル3への印加電圧を漸増させて無電極放電灯4を始動する始動回路と、商用電源ACから直流電源回路1へ供給される電圧の瞬時低電を検出する瞬時低電検出回路5とを備える。尚、本実施形態では、駆動回路及び始動回路は何れの機能も有する集積回路(IC)から成る制御部20に纏めて構成されている。
【0016】
直流電源回路1は、商用電源ACの交流出力を整流する整流回路10と、インダクタL1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、平滑コンデンサC1並びにスイッチング素子Q1を駆動する駆動回路11を具備した従来周知の昇圧チョッパ回路から成り、直流電圧Vdcを出力する。また、整流回路10の後段には、整流回路10の出力端間に接続された抵抗R1,R2の直列回路、及び抵抗R2と並列に接続されたコンデンサC4から成り、整流回路10の出力電圧Vinを分圧して検出する電圧検出回路12が設けられている。
【0017】
高周波電源回路2は、直流電源回路1の出力端間に直列接続された一対のスイッチング素子Q2,Q3を具備し、ローサイドのスイッチング素子Q3にインダクタL2、コンデンサC2,C3から成る共振回路21が接続された所謂ハーフブリッジ型のインバータ回路で構成され、電界効果トランジスタからなる一対のスイッチング素子Q2,Q3を、駆動回路から出力される矩形波パルスの駆動信号VDH,VDLにより交互にスイッチングすることで共振回路21を介して誘導コイル3に高周波電圧Vcoilを供給する。尚、スイッチング素子Q2を駆動する駆動信号VDHとスイッチング素子Q3を駆動する駆動信号VDLは略180度の位相差を有している。
【0018】
始動回路は、図2に示すように、無電極放電灯4が始動しない大きさの高周波電圧Vcoilを誘導コイル3に印加する始動準備期間、及び無電極放電灯4が始動可能な大きさの高周波電圧Vcoilを誘導コイル3に印加する始動期間を経て無電極放電灯4を始動させる。尚、始動回路の動作は従来例のオーバーシュート防止回路206の動作と同様で周知であるので、ここでは詳細な説明を省略するものとする。また、従来例のオーバーシュート防止回路206と異なる機能として、後述するオペアンプOP1からの制御電圧Vmに応じて始動準備期間の長さを制御する機能を有する。
【0019】
共振回路21の出力端には導電性を有する線材を複数ターン巻回して成る誘導コイル3が接続され、当該誘導コイル3に無電極放電灯4が近接配置される。無電極放電灯4は、図5(a)に示すように、不活性ガス・金属蒸気等の放電ガス(例えば、水銀及び希ガス)が封入された透明な略球状のバルブ40と、バルブ40に封止されてバルブ40の内方に突出した略円筒状のキャビティ41とから成り、キャビティ41には、バルブ40を保持するとともにバルブ40に対する誘導コイル3の位置決めをするカプラ7が挿入される。
【0020】
カプラ7は、図5(b)に示すように、誘導コイルを保持するボビン70と、ボビン70内部に収納された略筒状のコア71とを備えている。コア71は、例えば高周波磁気特性の良好な、Mn−Znのフェライトから成り、アルミ等の金属材料で形成された放熱体(図示せず)によって保持される。コア71の発熱は、放熱体を介して台座部72に捨てられる。尚、同図に示すように、本実施形態及び後述の各実施形態は何れもケース73に収納され、誘導コイル3と出力線74を介して電気的に接続されることで高周波出力を誘導コイル3に供給するようになっている。
【0021】
瞬時低電検出回路5は、平滑コンデンサC1から電圧供給され出力端に基準電圧を生じる基準電源回路50と、基準電源回路50の出力端と整流回路10の低圧側の出力端との間に挿入される抵抗R3及びコンデンサC5の直列回路と、基準電源回路50の出力端と抵抗R3との間に挿入されるスイッチング素子Q4とを備え、スイッチング素子Q4がオンである期間に基準電源回路50によってコンデンサC5を充電する。スイッチング素子Q4はpnp形のトランジスタから成り、ベースが電圧検出回路12における抵抗R1,R2の接続点に接続されることによって、抵抗R1,R2の接続点の電位が所定電位よりも小さくなるとオンする。また、反転入力端子に基準電源回路50の出力電圧を抵抗R6,R7で分圧した電圧が入力されるとともに、非反転入力端子にコンデンサC5の両端間電圧Vcが入力されるオペアンプOP1を備え、コンデンサC5の両端間電圧Vcが基準電源回路50の出力電圧を分圧した電圧よりも大きくなると制御電圧Vmを制御部20に与えるようになっている。更に、スイッチング素子Q4がオフすることによってコンデンサC5に充電された電荷を放電できるように、スイッチング素子Q4と抵抗R3との接続点と整流回路10の低圧側の出力端との間に抵抗R4が挿入されている。
【0022】
以下、本実施形態の動作について図1,2を用いて説明する。先ず、商用電源ACから直流電源回路1への電圧供給が開始されると、直流電源回路1の出力電圧Vdcが立ち上がり、始動回路が駆動回路を制御して始動準備期間の間(時刻t1から時刻t2まで)無電極放電灯4が点灯しない範囲で出来る限り大きい高周波電圧Vcoilを誘導コイル3に印加させる。
【0023】
ここで、電圧供給開始時には瞬時低電検出回路5においてスイッチング素子Q4はオンになっているが、平滑コンデンサC1が充電されていないためにオペアンプOP1に動作電圧が供給されず、したがって制御電圧Vmが制御部20に入力されることがない。一定期間が経過すると、平滑コンデンサC1が充電されてオペアンプOP1に動作電圧が供給されるが、この時には電圧検出回路12における抵抗R1,R2の接続点の電位が所定電位よりも大きくなるため、スイッチング素子Q4がオフとなり、したがって制御電圧Vmが制御部20に入力されることがない。この状態は瞬時低電が発生するまで維持される。
【0024】
次に、始動準備期間が経過すると、始動回路が駆動回路を制御して無電極放電灯4が始動可能な大きさの高周波電圧Vcoilを誘導コイル3に印加させる。一定期間の後、無電極放電灯4が点灯して高周波電圧Vcoilが低下し(時刻t3)、点灯状態が維持される。この時刻t2から時刻t3までが始動期間、時刻t3以降が点灯期間となる。しばらくの間点灯状態が維持された後、時刻t4において瞬時低電が発生すると、直流電源回路1及び高周波電源回路2が停止して誘導コイル3への電圧供給も停止され、無電極放電灯4が消灯する。そして、時刻t5において商用電源ACからの電圧供給が復電すると、直流電源回路1及び高周波電源回路2に電圧が供給されて無電極放電灯4の再始動が開始する(時刻t5)。
【0025】
ここで、瞬時低電時には電圧検出回路12における抵抗R1,R2の接続点の電位が一時的に所定電位よりも下降するため、瞬時低電検出回路5のスイッチング素子Q4がオンとなりコンデンサC5の充電が開始される。そして、コンデンサC5の両端間電圧Vcが基準電源回路50の出力電圧を分圧した電圧よりも大きくなると、オペアンプOP1から制御部20に制御電圧Vmが入力される。復電後には、電圧検出回路12における抵抗R1,R2の接続点の電位が所定電位よりも大きくなるためにスイッチング素子Q4がオフとなり、抵抗R4を介してコンデンサC5の放電が開始される。この時、コンデンサC5の両端間電圧Vcが一定期間の間基準電源回路50の出力電圧を分圧した電圧よりも大きくなるように各素子の定数が設定され、当該一定期間(時刻t5から時刻t6まで)の間は制御電圧Vmが制御部20に入力される。
【0026】
制御部20は、制御電圧Vmが入力されない状態では上記のように所定の始動準備期間、始動期間を経て無電極放電灯4を始動するように制御するが、制御電圧Vmが入力されている状態では、制御電圧Vmが制御部20に入力されている間を始動準備期間とし、制御電圧Vmが入力されなくなると始動期間に移行するように制御する。ここで、本実施形態では、制御電圧Vmが制御部20に入力される期間を通常の始動準備期間よりも短くなるように設定している。通常、無電極放電灯4を始動するために始動期間を長くしなければならないのは暗所や低温時等の始動が困難な状況の場合であり、無電極放電灯4を初めて始動する場合にはこれに伴って十分な始動準備期間を設ける必要がある。しかしながら、瞬時低電後は一度無電極放電灯4が点灯しているため、このような状況にならない。したがって、瞬時低電後の再始動時は始動期間に移行すると無電極放電灯4が直ぐに点灯するため、直流電源回路1の出力電圧Vdcの低下も小さいことから気にする必要が無く、始動準備期間を初めて始動する場合と比較して短縮しても問題無い。
【0027】
而して、上述のように始動準備期間が短くても直ぐに再点灯することのできる瞬時低電後の始動準備期間を短くすることで、瞬時低電後の再始動時において再点灯までに要する時間を短縮することができる。また、高電圧が印加される始動準備期間を短くすることで、回路を構成する部品へのストレスが増大するのを防ぐことができる。尚、本実施形態では瞬時低電後の始動準備期間を短くするようにしているが、始動準備期間を極端に短くして略零とする、即ち、瞬時低電後の始動準備期間が無い構成であっても構わない。
【0028】
尚、本実施形態は商用電源ACから直流電源回路1に交流電圧を供給することで動作しているが、図3に示すように、商用電源AC及び例えば密閉型のNi−Cd蓄電池等の2次電池BTと接続された電源装置Bを直流電源回路1の入力端子に接続する構成であっても構わない。この場合、通常時には商用電源ACから交流電圧を直流電源回路1に供給することで無電極放電灯4を点灯させるとともに2次電池BTを充電し、商用電源ACからの電力供給が遮断される等の非常時には、2次電池BTから直流電圧を直流電源回路1に供給することで無電極放電灯4を点灯させることができる。
【0029】
ところで、無電極放電灯4の始動は、一般の有電極放電灯と違いバルブ40と誘導コイル3とを一体として考慮する必要があり、以下の2つのモードの放電がある。その放電の順序として、誘導コイル3に高周波電圧Vcoilが印加されると、誘導コイル3と無電極放電灯4のランプ管壁を介してバルブ40内のガスが励起し、高周波電界放電(以下、「E放電」と呼ぶ)が発生して放電の種火が作られ、グロー放電状態となる。その後、更に誘導コイル3に高い高周波電圧Vcoilが印加されると高周波電磁界放電(以下、「H放電」と呼ぶ)が発生し、無電極放電灯4が点灯して安定なアーク放電状態となる。
【0030】
先ず、E放電について説明する。E放電とは、無電極放電灯4のランプ管壁の静電容量を介して放電電流が流れるものであり、誘導コイル3に高周波電圧Vcoilを印加していくと、誘導コイル3と無電極放電灯4のランプ管壁の静電容量を介してバルブ40内のガスが励起されて発光する。この放電は微放電(グロー放電状態)となり、誘導コイル3に印加する高周波電圧Vcoilを高くしていくと主放電に移行する。
【0031】
次に、H放電について説明する。H放電とは、誘導コイル3の電磁誘導で誘導電流を流すものであり、誘導コイル3を複数ターンの1次巻線とし、バルブ40内に発生するプラズマリングを1ターンの2次巻線とするトランスとして理解できる。ここで、H放電は無電極放電灯4の発光に寄与する主放電(アーク放電状態)である。
【0032】
本実施形態では、始動準備期間において誘導コイル3にE放電が発生し且つH放電が発生しない程度の大きさの高周波電圧Vcoilを印加することでE放電を発生させ、始動期間において誘導コイル3にH放電が発生する程度の大きさの高周波電圧Vcoilを印加することでH放電を発生させて無電極放電灯4を点灯させている。このため、始動準備期間において暗所や低温等周囲の状況によって多少ばらつきがあってもE放電を発生させることができる。また、E放電を発生させた後に始動期間に移行することから、直ぐにH放電を発生させることができて高電圧を誘導コイル3に印加する始動期間を短縮することができる。而して、始動準備期間を設けずに無電極放電灯4を始動させる場合と比較して無電極放電灯4の始動性を高めることができるとともに、回路を構成する部品へのストレスを低減することができる。
【0033】
(実施形態2)
以下、本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略するものとする。実施形態1では、無電極放電灯4が一度始動した状態で瞬時低電が発生した場合を想定したものであるが、無電極放電灯4を初めて始動する際において無電極放電灯4が点灯する前に瞬時低電が発生した場合を想定していない。この場合、無電極放電灯4が未だ点灯していないため、瞬時低電後の再始動は暗所や低温時等の始動が困難な状況での始動となる虞がある。したがって、実施形態1と同様の制御を行うと、再始動時における始動準備期間が短いために直流電源回路1の電圧レギュレーションが十分でなく、直流電源回路1の出力電圧が低下して始動性の悪化を招く。そこで、本実施形態では、図4に示すように、無電極放電灯4を初めて始動する際において無電極放電灯4が点灯する前に瞬時低電が発生した場合に、始動準備期間が短くなるように制御部20が制御されるのを防ぐマスク回路6を設けている。
【0034】
マスク回路6は、非反転入力端子に平滑コンデンサC1の両端間電圧、即ち直流電源回路1の出力電圧Vdcが入力されるとともに、反転入力端子に整流回路10の低圧側の出力端が接続されるオペアンプOP2と、オペアンプOP2の出力端子に接続されて抵抗R8及びコンデンサC6から成る遅延回路と、瞬時低電検出回路5のオペアンプOP1の出力端子と制御部20との間に挿入されて遅延回路の出力電圧が所定電圧を超えるとオンに切り替わるスイッチSWとから構成される。
【0035】
以下、本実施形態の動作について説明する。先ず、商用電源ACから直流電源回路1への電圧供給が開始されると、平滑コンデンサC1が充電され、それに伴ってマスク回路6のコンデンサC6も抵抗R8を介して充電される。そして、コンデンサC6の両端間電圧が所定電圧を超えると、スイッチSWがオンに切り替わり瞬時低電検出回路5のオペアンプOP1の出力端子と制御部20との間が接続される。即ち、電圧供給が開始してからスイッチSWがオンに切り替わるまでの一定期間の間は、瞬時低電が発生して再始動が行われても制御電圧Vmが制御部20に入力されることがない。
【0036】
したがって、抵抗R8及びコンデンサC6の各定数を適宜設定することで、無電極放電灯4を初めて始動する際において無電極放電灯4が点灯する前に瞬時低電が発生したとしても、瞬時低電後における再始動時に始動準備期間を短縮する制御が行われないために始動性が悪化するのを防ぐことができる。尚、上記一定期間を経過した後はスイッチSWは常時オンであるために、上記実施形態1と同様の動作を実施することができる。
【0037】
尚、上記各実施形態は、無電極放電灯4とともに街路灯や防犯灯等の照明器具の器具本体に搭載されて用いられる。例えば、図6(a)に示すように、道路上に設けられた電柱等の支柱101に無電極放電灯4を収納した器具本体100を取り付けて成る防犯灯や、図6(b)に示すように、笠形の器具本体110、反射部を構成するプリズム111、プリズム111の基部に設けられたランプソケット部112、ランプソケット部112の下方に設けられた回路収納部113から成る防犯灯などに用いられる。
【0038】
また、図7(a)〜(c)に示すように、扁平な箱形の器具本体120と、無電極放電灯4からの光を反射する反射板121とを備えたトンネル灯に上記何れかの実施形態の無電極放電灯点灯装置Aを搭載してもよい。尚、無電極放電灯4は長寿命で且つメンテナンスの頻度が少なくて済むという利点があり、メンテナンスが面倒なトンネル灯に採用するメリットが大きい。また、トンネル灯はトンネル内の安全性を向上するために、停電後出来る限り早く復帰して再点灯することが望まれる。ここで、上記各実施形態の無電極放電灯点灯装置を採用すれば、瞬時停電後に非常用電源に切り替えて無電極放電灯4を直ぐに再始動することができるため、停電時におけるトンネル内の消灯時間が短くなり、結果としてトンネル内の安全性を向上することができる。
【0039】
勿論、上記各実施形態が搭載される照明器具は上記のものに限定される必要は無く、少なくとも無電極放電灯4を保持する器具本体(図示せず)と、無電極放電灯4に近接配置される誘導コイル3とを備えた照明器具であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の動作を示すタイムチャートである。
【図3】同上の電源装置を設けた場合を示す回路図である。
【図4】本発明に係る無電極放電灯点灯装置の実施形態2を示す回路図である。
【図5】本発明の無電極放電灯点灯装置に関連する部位の説明図で、(a)は無電極放電灯の断面図で、(b)はカプラの斜視図である。
【図6】本発明の無電極放電灯点灯装置を用いる照明器具を示す図で、(a)は防犯灯の側面図で、(b)は(a)とは異なる防犯灯の一部破断した正面図である。
【図7】同上のトンネル灯を示す図で、(a)は正面図で、(b)は側面図で、(c)は(b)とは異なる方向から見た側面図である。
【図8】従来の無電極放電灯点灯装置を示す回路図である。
【図9】同上の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 直流電源回路
2 高周波電源回路
20 駆動回路・始動回路
21 共振回路
3 誘導コイル
4 無電極放電灯
5 瞬時低電検出回路
Q2,Q3 スイッチング素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路と、高周波でスイッチングされる1乃至複数のスイッチング素子並びに共振回路を具備し直流電源回路の出力電圧を高周波電圧に変換して無電極放電灯に近接配置された誘導コイルに供給する高周波電源回路と、スイッチング素子をスイッチングさせる駆動信号を出力する駆動回路と、駆動回路を制御して駆動信号の周波数を変化させることにより誘導コイルへの印加電圧を可変して無電極放電灯を始動する始動回路と、交流電源から直流電源回路へ供給される電圧の瞬時低電を検出する瞬時低電検出回路とを備え、始動回路は、無電極放電灯が始動しない大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動準備期間、及び無電極放電灯が始動可能な大きさの高周波電圧を誘導コイルに印加する始動期間を経て無電極放電灯を始動させ、瞬時低電検出回路が瞬時低電を検出した際に再始動時の始動準備期間が瞬時低電後の始動準備期間以外の始動準備期間よりも短くなるように駆動回路を制御することを特徴とする無電極放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記始動回路は、始動準備期間において高周波電界放電を発生させるための高周波電界放電電圧を高周波電界放電が発生するまで誘導コイルに印加するように駆動回路を制御するとともに、始動期間において高周波電磁界放電を発生させるための高周波電磁界放電電圧を誘導コイルに印加するように駆動回路を制御することを特徴とする請求項1記載の無電極放電灯点灯装置。
【請求項3】
少なくとも無電極放電灯を保持する器具本体と、無電極放電灯に近接配置される誘導コイルと、誘導コイルに高周波電力を供給する請求項1又は2に記載の無電極放電灯点灯装置とを備えたことを特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−55823(P2010−55823A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217372(P2008−217372)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】