説明

無電解めっき用材料及びプリント配線板

【課題】、無電解めっきを施す際に好適に使用することができる無電解めっき用材料であり、特にはプリント配線板用の製造等に好適に用いることができる微細配線形成が可能な無電解めっき用材料、及び該無電解めっき用材料を用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】表面に無電解めっきを施すための無電解めっき用材料であって、該無電解めっき用材料は、繊維と、特定の構造を有するポリイミド樹脂、特にシロキサン構造を有するポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物との複合体を含むことを特徴とする無電解めっき用材料によって上記課題を解決しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっきを施す際に好適に使用することができる無電解めっき用材料であり、特にはプリント配線板用の製造等に好適に用いることができる無電解めっき用材料及び該無電解めっき用材料を用いてなるプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板用材料として用いられる銅張積層板として、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させたいわゆるガラスエポキシ基板や、ガラス織布にビスマレイミド/トリアジン樹脂を含浸させたいわゆるBT基板と銅箔とを熱圧着したものが知られている。この種の銅張積層板において絶縁体表面に形成する銅被覆層として用いられる銅箔はいわゆる電解銅箔であり、一般にその厚みは35μmおよび18μmのものが主流となっていたが、電子機器の発達にともなうプリント配線板の微細配線化により、最近では例えば9μm厚箔のようなきわめて薄い電解銅箔を用いた銅張積層板が使用されるようになってきた。このような銅張積層板を用いて配線形成する場合、配線部以外の銅箔をエッチング処理により溶解除去することによって配線を形成する、いわゆるサブトラクティブ法により得られる。しかしながら、電解銅箔の表面粗度は大きく、その凹凸が基板の樹脂に食い込んでいるため、十分にエッチングしないと凹部の銅を除去できず、そのため設計よりも配線が細く形成されてしまうといった問題、逆にエッチングを十分に行わないと凹部に銅が残ってしまうといった問題を有していた。
【0003】
上述のように絶縁層表面の凹凸を極力小さくしないと、回路形状や回路幅、回路厚みなどを設計通りに良好に形成することができない。よって微細配線形成のためには、配線を形成する樹脂の表面は平滑であることが重要である。
【0004】
平滑な表面上に銅層を形成する方法として、銅箔を熱圧着するのではなく、スパッタや無電解めっきなどによりめっき銅を形成する方法が挙げられる。
【0005】
この方法を適用した例として、基材プリプレグ表面に有機溶媒によるエッチング処理を施した後に無電解めっきにより銅被膜層を形成し、必要に応じてこれにさらに電気めっきを施した後、基板に加熱加圧処理を施すことによって絶縁体を硬化させることにより、きわめて薄い銅被膜を有する銅張積層板を製造する方法が提案されている。しかし、この方法はエッチング処理により表面を粗化することで銅との密着を得ているため、微細配線形成に悪影響を及ぼすほどの表面凹凸を有する点、またエッチングによりガラス基材がむき出しになる箇所が生じる点などが問題であった。
【特許文献1】特開平6−177534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術で説明したように、平滑な表面に強固にめっき銅を形成する技術が確立されていないため、微細配線を精度よく形成できる材料は未だ見出されていない。従って、本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、微細配線を精度よく形成できる無電解めっき用材料及び該無電解めっき用材料を用いてなるプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、下記の無電解めっき用材料により、上記課題が解決しうることを見出した。すなわち、
1)表面に無電解めっきを施すための無電解めっき用材料であって、該無電解めっき用材料は、繊維と、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含む樹脂組成物からなることを特徴とする無電解めっき用材料。
【0008】
【化3】

(式中、RおよびRは、C2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、Rは、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、RはC2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3から100であり、mは1以上の整数である。)
2)前記ポリイミド樹脂が、一般式(6)で表されるポリイミド樹脂であって、酸二無水物成分と、下記一般式(7)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とするポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき用材料。
【0009】
【化4】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
3)繊維が、紙、ガラス、ポリイミド、アラミド、ポリアリレート及びテトラフルオロエチレンからなる群から選択される1種以上を原料とする繊維であることを特徴とする1)〜2)に記載の無電解めっき用材料。
4)無電解めっきが、無電解銅めっきであることを特徴とする1)〜3)に記載の無電解めっき用材料。
5)前記複合体が、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の無電解めっき用材料。
6)前記複合体が、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の無電解めっき用材料。
7)1)〜6)記載の無電解めっき用材料の表面に、直接無電解めっきを施してなる積層体。
8)1)〜6)に記載の無電解めっき用材料を用いてなるプリント配線板。
9)一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することによって、表面に無電解めっきを施すための層を形成することを特徴とする無電解めっき用材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無電解めっき用材料は、平滑な表面に銅層を強固に形成することが可能となるため、微細配線形成性に優れるという利点を有する。よって、該無電解めっき用材料を用いた各種プリント配線板の製造に好適に用いることができ、特に微細配線形成が要求されるプリント配線板に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
(本発明の無電解めっき用材料の構成)
本発明の無電解めっき用材料は、表面に無電解めっきを施すための無電解めっき用材料であって、該無電解めっき材料は、繊維と、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含むことを特徴としている。
【0012】
【化5】

(式中、RおよびRは、C2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、Rは、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、RはC2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3から100であり、mは1以上の整数である。)
従来から用いられている、ガラスなどの繊維とエポキシ樹脂などの樹脂とを複合した材料を利用したこの種のプリント配線板用基板は、無電解めっきを施すに先立って基板表面に対して何らかの処理を行い、表面に凹凸を形成して無電解めっきを施すのが常識であった。すなわち、従来知られている繊維と樹脂とを複合体を利用した基板は、そのまま平滑表面に無電解めっきしても、無電解めっきが強固に形成されないのである。本発明者らは、このような繊維と樹脂とを複合体を利用した基板において、複合させる樹脂を選択することによって、表面平滑であっても無電解めっきが強固に接着しうることを見出した。繊維に一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を複合させることによって、得られる複合体を用いた材料の表面が平滑であるにもかかわらず強固に無電解めっきが形成されるという知見は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0013】
繊維と、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含みさえすれば、いかなる構成でも構わない。例えば、本発明の無電解めっき用材料は、繊維とポリイミド樹脂の複合体の他に、必要に応じて熱硬化性成分を含有していても良い。熱硬化性成分を含有する場合は、無電解めっき用材料中に熱硬化性成分と繊維との複合体も存在させることができるので、熱膨張係数を低減させることが可能である。熱硬化性成分を含有する場合、本発明の無電解めっき用材料は、BステージであってもCステージであっても良く、用途に応じて適切な状態を選択することが可能である。また、フィラーなどの各種添加剤を含んだ材料であっても良く、必要な特性を発揮させるために、当業者の考え得るあらゆる構成をとることができる。さらには、繊維と、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含む樹脂組成物からなる無電解めっき用材料に、他の樹脂層が形成された材料であっても良い。
【0014】
本発明の無電解めっき用材料は、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られた材料であることが好ましく、あるいは、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られた材料であることが好ましい。上記製造方法により、樹脂組成物を表面平滑に形成でき、また気泡の発生を抑えて良好な複合体を形成できるという利点を有する。含浸させる樹脂組成物溶液は、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂を含むか、若しくは該ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を含むことが必須である。この含浸させる樹脂組成物溶液に、熱硬化性成分やフィラーなどの添加剤を混合しておいてもよい。また、ポリアミド酸を含んでいる場合は、加熱イミド化や化学的イミド化により、最終的にはポリイミド樹脂に変換されることが、耐熱性や無電解めっき皮膜との接着性の観点等から好ましい。
【0015】
(本発明の複合体に用いられる繊維)
本発明に用いられる繊維としては特に限定はなく、各種無機繊維、及び有機繊維を用いることができるが、プリント配線板用途においては、紙、ガラス、ポリイミド、アラミド、ポリアリレート及びテトラフルオロエチレンから選ばれた少なくとも1種以上からなる繊維であることが熱膨張係数を低減させる観点から、好ましい。これらの繊維は、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等用途に応じて種々の形態で使用することが可能である。
【0016】
(本発明の複合体に用いられるポリイミド樹脂)
本発明に用いられるポリイミド樹脂は一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂であることが必要である。
【0017】
【化6】

(式中、R1およびR3は、CXH2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、R4は、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、R2はCXH2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3から100であり、mは1以上の整数である。)
本発明においては、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有していれば、いかなるポリイミド樹脂を用いても良い。例えば、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有する酸二無水物成分、あるいは上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分を用いて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を製造し、これをイミド化してポリイミド樹脂を製造する方法、官能基を有する酸二無水物成分あるいは官能基を有するジアミン成分を用いて官能基を有するポリアミド酸を製造し、この官能基と反応しうる官能基、及び上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有する化合物を反応させて、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造が導入されたポリアミド酸を製造し、これをイミド化してポリイミド樹脂を製造する方法、官能基を有する酸二無水物成分あるいは官能基を有するジアミン成分を用いて官能基を有するポリアミド酸を製造し、これをイミド化して官能基を有するポリイミドを製造し、この官能基と反応しうる官能基、及び上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有する化合物を反応させて、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造が導入されたポリイミド樹脂を製造する方法、などが挙げられる。ここで、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミンは比較的容易に入手することが可能であるため、上記の中でも、酸二無水物成分と、上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分とを反応させて目的とするポリイミド樹脂を製造することが好ましい。また、常態での接着強度、PCT処理前後の接着強度がさらに優れるという点から、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂を含むことがさらに好ましい。 シロキサン構造を有するポリイミド樹脂は、無電解めっき皮膜との接着性や原料の入手の容易さ等の観点から、酸二無水物成分と、下記一般式(7)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とするポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0018】
【化7】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
上記ポリイミド樹脂は、対応する前駆体のポリアミド酸を脱水閉環して得られる。ポリアミド酸は、酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル反応させて得られ、例えば以下のような方法で得ることができる。
1)ジアミン成分を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの酸二無水物成分を反応させて重合する方法。
2)酸二無水物成分とこれに対し過小モル量のジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において酸二無水物とジアミン成分が実質的に等モルとなるようにジアミン成分を用いて重合させる方法。
3)酸二無水物成分とこれに対し過剰モル量のジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここにジアミン成分を追加添加後、全工程において酸二無水物成分とジアミン成分が実質的に等モルとなるように酸二無水物成分を用いて重合する方法。
4)酸二無水物成分を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるようにジアミン成分を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの酸二無水物成分とジアミン成分の混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
【0019】
反応時間、反応温度は、特に限定されない。
【0020】
ポリアミド酸の重合反応に用いられる有機極性溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0021】
次にポリアミド酸の重合に用いられる酸二無水物成分について説明する。
【0022】
酸二無水物成分としては特に限定はなく、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’−ハイドロキノンビス(無水フタル酸)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)等を挙げることができる。これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。

続いて、ジアミン成分について説明する。上記一般式(1)〜(6)のいずれかで表さ
れる構造のうち、1つ以上の構造を有するジアミン成分を例示する。上記一般式(1)で
表されるジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミンや、オクタメチレンジアミンなどを
例示することができる。上記一般式(2)で表されるジアミンとしては、1,3−ビス(
4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,
5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン等を挙げることができる。上記一般式(3)
で表されるジアミンとしては、エラスマー1000P、エラスマー650P、エラスマー
250P(イハラケミカル工業(株)製)が挙げられる。また、上記一般式(4)で表さ
れるジアミンとしては、ポリエーテルポリアミン類、ポリオキシアルキレンポリアミン類
を挙げる事ができ、ジェファーミンD−2000、ジェファーミンD−4000(ハンツ
マン・コーポレーション社製)等を例示することができる。ジアミン成分としては、シロ
キサン構造を有するジアミン成分であることが好ましい。シロキサン構造を有するジアミ
ン成分を用いて得られる、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂は、表面凹凸が小さく
平滑な表面であっても、無電解めっき銅層と強固に接着するという特徴を有する。
上記シロキサン構造を有するジアミン成分として、特に、下記一般式(7)で表される
ジアミン成分を含むことが好ましい。
【化8】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
上記式中において、gは1〜100であることが好ましく、R11及びR22は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフェニレン基であることが好ましい。さらにR33〜R66は、炭素数1〜20のアルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基であることが好ましい。
【0023】
一般式(7)で表されるジアミン成分を用いることにより、得られるポリイミド樹脂と繊維との複合体を用いた無電解めっき用材料は、平滑な表面であっても無電解めっき層と強固に接着するという特徴を有するようになる。
【0024】
一般式(7)で表されるジアミンとしては、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(3−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(3−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5,−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、等が挙げられる。また、一般式(7)で表される、比較的入手しやすいジアミンとして、信越化学工業株式会社製のKF−8010、X−22−161A、X−22−161B、X−22−1660B―3、KF−8008、KF−8012、Xー22−9362、等を挙げることができる。上記ジアミンは単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0025】
得られるポリイミド樹脂の耐熱性向上等を目的として、上述のジアミンと他のジアミンとを組み合わせて使用することも好ましく用いられる。他のジアミン成分としては、あらゆるジアミンを使用することが可能であり、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルなどを挙げることができる。
【0026】
一般式(7)で表されるジアミンは、全ジアミン成分に対して2〜100モル%が好ましく、より好ましくは5〜100モル%である。一般式(7)で表されるジアミンが、全ジアミン成分に対して2モル%より少ない場合、無電解めっき皮膜との接着強度が低くなる。
【0027】
上記ポリアミド酸溶液を脱水閉環することで、ポリイミド樹脂を得ることができ、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する熱的方法、脱水剤を用いて脱水する化学的方法のいずれも用いることができる。また、減圧下で加熱してイミド化する方法も用いることができる。以下に各方法について説明する。
【0028】
熱的に脱水閉環する方法として、前記ポリアミド酸溶液を加熱処理によりイミド化反応を進行させると同時に、溶媒を蒸発させる方法を例示することができる。この方法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。加熱の条件はとくに限定されないが、200℃以下の温度で1秒〜200分の時間の範囲で行なうことが好ましい。
【0029】
また、化学的に脱水閉環する方法として、前記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒を加えることにより、脱水反応を起こし、有機溶媒を蒸発させる方法を例示することができる。これにより、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。脱水剤としては、たとえば、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物などがあげられる。また、触媒としては、たとえば、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などがあげられる。化学的に脱水閉環する際の条件は、100℃以下の温度が好ましく、有機溶媒の蒸発は、200℃以下の温度で約5分〜120分の時間の範囲で行なうことが好ましい。
また、ポリイミド樹脂を得るための別の方法として、前記の熱的または化学的に脱水閉環する方法において、溶媒の蒸発を行なわない方法もある。具体的には、熱的イミド化処理または脱水剤による化学的イミド化処理を行なって得られるポリイミド溶液を貧溶媒中に投入して、ポリイミド樹脂を析出させ、未反応モノマーを取り除いて精製、乾燥させ、固形のポリイミド樹脂を得る方法である。貧溶媒としては、溶媒とは良好に混合するがポリイミドは溶解しにくい性質のものを選択する。例示すると、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトンなどがあげられるが、これらに限定されない。
【0030】
つぎに、減圧下で加熱してイミド化する方法であるが、このイミド化の方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去できるので、ポリアミド酸の加水分解を抑えることが可能であり、高分子量のポリイミドが得られる。また、この方法によれば、原料の酸二無水物中に不純物として存在する片側または両側開環物が再閉環するので、より一層の分子量の向上効果が期待できる。
【0031】
減圧下で加熱イミド化する方法の加熱条件は、80〜400℃が好ましいが、イミド化が効率よく行なわれ、しかも水が効率よく除かれる100℃以上がより好ましく、さらに好ましくは120℃以上である。最高温度は目的とするポリイミドの熱分解温度以下が好ましく、通常のイミド化の完結温度、すなわち250〜350℃程度が通常適用される。減圧する圧力の条件は、小さいほうが好ましいが、具体的には、9×10〜1×10Pa、好ましくは8×10〜1×10Pa、より好ましくは7×104〜1×10Paである。
【0032】
以上、本発明の無電解めっき用材料を構成する複合体に用いられるポリイミド樹脂について説明したが、市販のシロキサン構造を有するポリイミド樹脂も用いてもよく、比較的入手しやすいシロキサン構造を含むポリイミド樹脂の例として、信越化学工業株式会社製のXー22−8917、Xー22−8904、Xー22−8951、Xー22−8956、Xー22−8984、Xー22−8985、等を挙げることができる。尚、これらはポリイミド溶液である。
【0033】
(他の成分)
上記のポリイミド樹脂だけでなく、得られる材料の耐熱性向上等の目的で、他の成分を含有させることも可能である。他の成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂を適宜使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、トリアジン樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などをあげることができ、これらを単独または適宜組み合わせて用いることができる。また、前記熱硬化性樹脂以外に、高分子鎖の側鎖または末端に、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基などの反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を使用することも可能である。本発明の無電解めっき用材料を構成する複合体をBステージで用いる場合は、熱硬化性成分を含む樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0034】
また、無電解めっき皮膜との接着性をより向上させる目的で、各種添加剤を複合体に添加、もしくは複合体表面に塗布等の方法で存在させることも可能である。具体的には有機チオール化合物などを挙げることができるが、これに限定されない。また、各種有機フィラー、無機フィラーを添加することもできる。
【0035】
なお、上述の他の成分は、微細配線形成に悪影響を及ぼす程に複合体の表面粗度を大きくしない、また、複合体と無電解めっき皮膜との接着性を低下させない範囲で組み合わせることが重要であり、この点には注意を要する。
【0036】
(本発明の無電解めっき用材料の製造例)
上述のようにして得られた一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂は、溶媒に溶解して、ポリイミド樹脂を含む樹脂組成物溶液として使用することが好ましい。溶媒としては、樹脂組成物を溶解するいかなる溶媒をも使用することができるが、乾燥時の発泡を抑えるという観点や、残溶媒を低減するという観点から、沸点が230℃以下であることが好ましい。その例としては、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す。沸点66℃)、1,4−ジオキサン(以下、ジオキサンと略す。沸点103℃)、モノグライム(沸点84℃)、ジオキソラン(沸点76℃)、トルエン(沸点110℃)、テトラヒドロピラン(沸点88℃)、ジメトキシエタン(沸点85℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点205℃)等を挙げることができる。以上例示した以外にも沸点が230℃以下である溶媒であれば、好ましく用いることが可能である。これらは、1種で使用しても良いし、2種以上組み合わせて用いることもできる。ここで溶解するとは、溶媒に対して樹脂成分が1重量%以上溶解することをいう。
【0037】
また、例えば、ポリアミド酸溶液を熱的若しくは化学的にイミド化し、その溶液を用いても良い。さらには、ポリアミド酸溶液を用いて繊維と樹脂との複合体を得ることもできる。ただしこの場合、熱的、若しくは化学的方法でイミド化処理を行い、実質的に完全にイミド化することが好ましい。
【0038】
ポリイミド樹脂を含む樹脂組成物溶液、若しくはポリアミド酸を含む樹脂組成物溶液は、前述のようにポリイミド樹脂、若しくはポリアミド酸を含む樹脂組成物を適当な溶媒に溶解することによって得られる。この溶液を繊維に含浸、必要に応じて適切な乾燥処理を施すことにより、複合体を得ることができる。乾燥条件は特に制限はないが、ポリアミド溶液を用いる場合は、乾燥と同時に熱的にイミド化することが好ましい。この場合、イミド化を実質的に完全に行うためには、最終乾燥温度を100℃〜400℃で、時間10秒〜10時間の範囲で行うことが好ましく、最終乾燥温度を150℃〜350℃で、時間10秒〜3時間の範囲で行うことがより好ましい。
【0039】
樹脂組成物が、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂のみからなる場合は、残溶媒を調整する目的で、短い時間、低温で乾燥しても良いし、長い時間、高温で乾燥しても良い。
【0040】
また、樹脂組成物中に熱硬化性成分を含む場合は、Bステージに保つような条件で乾燥することもできるし、Cステージまで乾燥することも可能である。乾燥は、熱風オーブン等のオーブンを用いて加熱乾燥することが可能であるし、また、真空プレス等の装置を用いて加圧しつつ加熱乾燥することも可能である。ただし、真空プレス等の装置を用いて加圧しつつ加熱乾燥する場合は、複合体が十分に平滑な表面を得るために、十分に平滑な表面を有する樹脂フィルム等を合紙として用いる必要がある。
【0041】
シロキサン構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られた材料、あるいは、シロキサン構造を有するポリアミド酸および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られた材料は、得られる複合体の表面を平滑に形成でき、また気泡の発生を抑えて良好に複合体を形成できる。
【0042】
なお、本発明においてBステージとは、半硬化状態ともいわれ、複合体に用いられる熱硬化性成分の反応の中間的な段階であって、加熱により軟化するが、ある種の液体に接触しても完全には溶融や溶解をしない段階である。よって、複合体がBステージである場合、本発明の無電解めっき用材料は加熱加工により軟化し、内層回路を埋め込むことが可能となるため、ビルドアップ材として好ましく使用することができる。
【0043】
また、Cステージとは、複合体に用いられる熱硬化性樹脂が実質的に硬化し、不溶不融の状態にある段階である。よって、Cステージである場合、そのまま無電解めっき皮膜を形成し、配線形成することでプリント配線板を得ることができることになる。
【0044】
ここで、本発明でいう表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さRaで表すことができる。算術平均粗さRaとは、JIS B 0601(平成6年2月1日改正版)に定義されている。特に本発明の算術平均粗さRaの数値は、光干渉式の表面構造解析装置で表面を観察により求められた数値を示す。本発明のカットオフ値とは、上記JIS B 0601に記載されているが、断面曲線(実測データ)から粗さ曲線を得る際に設定する波長を示す。即ち、カットオフ値が0.002mmで測定した値Raとは、実測データから0.002mmよりも長い波長を有する凹凸を除去した粗さ曲線から算出された算術平均粗さである。
【0045】
本発明の複合体の表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さRaで0.5μm未満であることが好ましい。この条件を満たす場合、特に本発明の無電解めっき用材料をプリント配線板用途で使用する際には、良好な微細配線形成性を有する。
【0046】
耐熱性や接着性等のバランスのとれた特性を有する複合体を得るためには、樹脂組成物中に含まれる、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂は、全樹脂中10〜100重量%の範囲にあることが好ましい。
【0047】
また、熱硬化性成分を配合する場合には、該熱硬化性成分の配合量は、全樹脂中5〜90重量%であることが、低熱膨張性や、樹脂流れ性の観点から好ましい。
【0048】
本発明の複合体の厚みには特に制限はないが、高密度プリント配線板への適用を考えると薄いほうがよい。具体的には1mm以下であることが好ましい。
【0049】
本発明の無電解めっき用材料の構成要素である複合体は、当業者の実施し得るあらゆる製造方法により製造可能である。その中でも、得られる複合体の表面を平滑に形成でき、また気泡の発生を抑えて良好に複合体を形成できるため、複合体が、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られることが好ましい。また、複合体が、シロキサン構造を有するポリアミド酸および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られることも好ましい。
【0050】
本発明の無電解めっき用材料は、前述のとおりBステージであってもCステージであっても良く、用途に応じて適切な状態を選択することが可能である。また、無電解めっき用材料に、他の別の樹脂層が形成された材料であっても良い。すなわち、上記のようにして得た複合体を含む樹脂層に、さらに複合体との接着性が良く、無電解めっきとも接着性の良い樹脂層、例えばシート状に成形した樹脂層を真空プレス積層することにより、他の樹脂層/複合体を含む樹脂層/他の樹脂層からなる無電解めっき用材料を得ることもできる。
【0051】
一方で、本発明の無電解めっき用材料は、それのみで平滑表面に強固に無電解めっきを形成できるという利点を有することから、本発明の無電解めっき用材料としては、他の樹脂層を含まない構造であることが好ましい。その場合、無電解めっき用材料の製造は容易になるという利点がある。
【0052】
(無電解めっき)
本発明に係る無電解めっきとしては、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解錫めっき、等を挙げる事ができ本発明に使用可能であるが、工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは無電解銅めっきである。本発明の無電解めっき用材料に無電解めっきをする場合、デスミア処理などの各種表面処理を施してもよい。無電解めっき皮膜の厚みは特に制限はないが、生産性等を考慮すると、1nm〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0053】
(プリント配線板)
本発明の無電解めっき用材料を用いたプリント配線板としては、例えば、本発明の無電解めっき用材料に配線形成を施すことで、片面若しくは両面プリント配線板を得ることができる。例えば、本発明の無電解めっき用材料に無電解めっきした後、セミアディティブ工法、サブトラクティブ工法により配線形成を施すことで、片面若しくは両面プリント配線板を得ることができる。また、該プリント配線板をコア基板として、ビルドアップ配線板を得ることもできる。また、本発明の無電解めっき用材料をビルドアップ材として、ビルドアップ配線板を得ることも可能である。本発明の無電解めっき用材料は微細配線形成性に優れるため、その他の各種高密度プリント配線板にも好ましく適用可能である。
【0054】
本発明の、繊維と、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含む樹脂組成物からなる無電解めっき用材料を用いた片面若しくは両面プリント配線板の製造例を示す。
【0055】
(1)必要に応じて、ビアを形成する。
公知のドリルマシン、ドライプラズマ装置、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等を用いることができるが、UV−YAGレーザー、エキシマレーザーが小径特に50μm以下のビア形成の為に好ましく、特に好ましくは30μm以下である。また良好な形状のビアを形成でき、好ましい。
(2)無電解めっきを行う。
無電解めっきの種類としては無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解錫めっき、等を挙げる事ができ本発明に使用可能であるが、工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは無電解銅めっきである。ビア形成後、過マンガン酸塩を用いるウェットプロセスやプラズマ等のドライデスミアなどの公知の技術でデスミアを行った後に無電解めっきを施しても良い。
(3)めっきレジストを形成する。
感光性めっきレジストとしては広く市販されている公知の材料を用いることができる。本発明のプリント配線板の製造方法では、微細配線化に対応するために50μmピッチ以下の解像度を有する感光性めっきレジストを用いることが好ましい。無論、本発明のプリント配線板の配線ピッチに、50μm以下のピッチを有する配線とそれ以上のピッチを有する配線が混在しても良い。
(4)電解銅めっきによるパターンめっきを行う。
公知の多くの方法を適用することにより、レジストの形成されていない部分に電解銅パターンめっきを施す。具体的には電解銅めっき、電解はんだめっき、電解錫めっき、電解ニッケルめっき、電解金めっき等を挙げる事ができる。工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、電解銅めっき、電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは電解銅めっきである。
(5)レジスト剥離を行う。
レジスト剥離には、使用しためっきレジストの剥離に適した材料を使用することができ、特に制限はない。例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることができる。
(6)無電解めっき層をクイックエッチングすることにより配線を形成する。
クイックエッチングには、公知のクイックエッチャントを用いることができる。例えば、硫酸・過酸化水素系エッチャント、過硫酸アンモニウム系エッチャント、過硫酸ナトリウム系エッチャントや希釈した塩化第二鉄系エッチャント、希釈した塩化第二銅系エッチャント等を好ましく用いることができる。
上記の方法は、微細配線形成に適用される、いわゆるセミアディティブ工法であるが、本発明の無電解めっき用材料は該工法を好ましく適用できる。一方で、本発明の積層体は平滑表面に強固にめっき銅を形成することが可能であるため、樹脂の凹凸部にエッチング後の銅残りが発生するようなことがないため、レジストを形成したのち、不要な銅をエッチング除去して配線形成を行う、サブトラクティブ工法も適用することが可能である。サブトラクティブ工法は工程が少ないというメリットがある一方で、サイドエッチングによる配線形状不良等の問題を含んでいる。よって、形成する配線ピッチ、生産性、コスト等を考慮してサブトラクティブ工法、セミアディティブ工法を選択すればよい。
上述のようにして作製したプリント配線板をコア基板とし、ビルドアップ配線板を作製することも可能である。この場合、コア基板自体に微細配線形成が可能であるため、より高密度なビルドアップ配線板を作製することが可能となる。
次に、繊維と、シロキサン構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含む樹脂組成物からなる、Bステージの無電解めっき用材料をビルドアップ材として用いたビルドアップ配線板の製造例を示す。
(1)コア基板と積層する。
順に、合紙、Bステージの無電解めっき用材料、配線形成されたコア基板を対向させて積層する。この工程では、コア基板に形成されている配線パターン間を十分に埋め込むことが重要であり、本発明の無電解めっき用材料に用いられる複合体は、熱硬化性成分を含み、Bステージであることが好ましい。積層方法としては、熱プレス、真空プレス、ラミネート(熱ラミネート)、真空ラミネート、熱ロールラミネート、真空熱ロールラミネート等の各種熱圧着方法を行うことができる。中でも真空下での処理、すなわち真空プレス処理、真空ラミネート処理、真空熱ロールラミネート処理がより良好に回路間をボイド無く埋め込むことが可能であり、好ましく実施可能である。積層した後に、Cステージまで硬化を進める目的から、熱風オーブン等を用いて加熱乾燥を行うことも可能である。
(2)ビアを形成する。
公知のドリルマシン、ドライプラズマ装置、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等を用いることができるが、UV−YAGレーザー、エキシマレーザーが小径特に50μm以下のビア形成の為に好ましく、特に好ましくは30μm以下である。また良好な形状のビアを形成でき、好ましい。
(3)無電解めっきを行う。
無電解めっきの種類としては無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解錫めっき、等を挙げる事ができ本発明に使用可能であるが、工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは無電解銅めっきである。ビア形成後、過マンガン酸塩を用いるウェットプロセスやプラズマ等のドライデスミアなどの公知の技術でデスミアを行った後に無電解めっきを施しても良い。
(4)めっきレジストを形成する。
感光性めっきレジストとしては広く市販されている公知の材料を用いることができる。本発明のプリント配線板の製造方法では、微細配線化に対応するために50μmピッチ以下の解像度を有する感光性めっきレジストを用いることが好ましい。無論、本発明のプリント配線板の配線ピッチに、50μm以下のピッチを有する回路とそれ以上のピッチを有する回路が混在しても良い。
(5)電解めっきによるパターンめっきを行う。
【0056】
電解めっきは公知の多くの方法を適用することができる。具体的には電解銅めっき、電解はんだめっき、電解錫めっき、電解ニッケルめっき、電解金めっき等を挙げる事ができる。工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、電解銅めっき、電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは電解銅めっきである。
(6)レジスト剥離を行う。
レジスト剥離には、使用しためっきレジストの剥離に適した材料を使用することができ、特に制限はない。例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることができる。
(7)無電解めっき層をクイックエッチングすることにより配線を形成する。
クイックエッチングには、公知のクイックエッチャントを用いることができる。例えば、硫酸・過酸化水素系エッチャント、過硫酸アンモニウム系エッチャント、過硫酸ナトリウム系エッチャントや希釈した塩化第二鉄系エッチャント、希釈した塩化第二銅系エッチャント等を好ましく用いることができる。
【0057】
この後、得られたビルドアップ配線板の最外層に、さらにBステージの無電解めっき用材料を積層一体化し、上述の(2)〜(7)の工程により配線形成することで所望の層数を有するビルドアップ配線板を得ることができる。
【0058】
本発明の無電解めっき用材料をビルドアップ層に適用すると、優れた加工性と微細配線形成性を両立する。また、繊維を含んでいるため、熱膨張係数も小さくなるという利点も有する。
【実施例】
【0059】
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、本発明にかかる無電解めっき用材料の特性として、無電解めっき銅との接着性、表面粗さRa、配線形成性は以下のように評価または算出した。
【0060】
〔接着性評価〕
得られた無電解めっき用材料表面に下記表1、2に示す条件にて、デスミア、及び無電解銅めっき処理を施した。さらに、トータルの銅厚みが18μmになるように電解銅めっきを行った。
その後、180℃、30分の乾燥処理を行った後、JPCA−BU01−1998(社団法人日本プリント回路工業会発行)に従い、常態、及びプレッシャークッカー試験(PCT)後の接着強度を測定した。
常態接着強度:25℃、50%の雰囲気下、24時間放置した後に測定した接着強度。
PCT後接着強度:121℃、100%の雰囲気下、96時間放置した後に測定した接着強度。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

〔表面粗度Ra測定〕
上記の接着性評価項目と同様にして形成した無電解めっき銅層をエッチング除去し、露出した表面の表面粗度Raの測定を行った。測定は、光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製NewView5030システム)を用いて下記の条件で表面Aの算術平均粗さを測定した。
【0063】
(測定条件)
対物レンズ:50倍ミラウ イメージズーム:2
FDA Res:Normal
解析条件:
Remove:Cylinder
Filter:High Pass
Filter Low Waven:0.002mm
〔配線形成性〕
上記の接着性評価項目と同様にして得た無電解めっき銅層上にレジストパターンを形成し、パターン銅の厚みが10μmとなるように電解銅パターンめっきを行った後、レジストパターンを剥離し、さらに露出しためっき銅を硫酸/過酸化水素系エッチャントで除去して、ライン アンド スペース(L/S)=10μm/10μmの配線を有するプリント配線板を作製した。該プリント配線板の配線が、断線や形状不良なく良好に作製できている場合を○、断線や形状不良を生じている場合を×として配線形成性を評価した。
【0064】
〔ポリイミド樹脂の合成例1〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、信越化学工業株式会社製KF−8010を37g(0.045mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル21g(0.105mol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼ぶ)を投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)78g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液1を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂2を得た。
【0065】
〔ポリイミド樹脂の合成例2〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、信越化学工業株式会社製KF8010を62g(0.075mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15g(0.075mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂3を得た。
【0066】
〔ポリイミド樹脂の合成例3〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、イハラケミカル工業(株)製のエラスマー1000Pを92g(0.075mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15g(0.075mol)と、DMFを投入し、撹拌しながら溶解させ、4,4´―(4,4´―イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物78g(0.15mol)を添加、約1時間撹拌し、固形分濃度30%ポリアミド酸のDMF溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液をテフロン(登録商標)コートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、120分、665Paで減圧加熱し、ポリイミド樹脂4を得た。
【0067】
〔樹脂組成物溶液の調合例1〕
固形分濃度が25%になるように、ポリアミド酸のDMF溶液1をDMFで希釈し、樹脂組成物溶液(a)を得た。
【0068】
〔樹脂組成物溶液の調合例2〕
ポリイミド樹脂2をジオキソランに溶解させ、樹脂組成物溶液(b)を得た。固形分濃度は25重量%となるようにした。
【0069】
〔樹脂組成物溶液の調合例3〕
ポリイミド樹脂3をジオキソランに溶解させ、樹脂組成物溶液(c)を得た。固形分濃度は25重量%となるようにした。
【0070】
〔樹脂組成物溶液の調合例4〕
ジャパンエポキシレジン(株)社製ビフェニル型エポキシ樹脂のYX4000Hを32.1g、和歌山精化工業(株)社製ジアミンのビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン17.9g、四国化成工業(株)社製のエポキシ硬化剤、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]ーエチル−s―トリアジン0.2gをジオキソランに溶解させたエポキシ樹脂組成物溶液(d)を得た。固形分濃度は50重量%になるようにした。溶液(b)140gと溶液(d)30gとを混合して、樹脂組成物溶液(e)を得た。
【0071】
〔樹脂組成物溶液の調合例5〕
ポリイミド樹脂4をジオキソランに溶解させ、樹脂組成物溶液(f)を得た。固形分濃度は25重量%となるようにした。
【0072】
〔実施例1〕
樹脂組成物溶液(a)を厚さ40μmのガラス織布に含浸し、100℃で10分、180℃で60分、250℃で10分の条件で乾燥及びイミド化を行い、無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0073】
〔実施例2〕
樹脂組成物溶液(b)を厚さ40μmのガラス織布に含浸し、100℃で10分、180℃で60分の条件で乾燥し、無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0074】
〔実施例3〕
樹脂組成物溶液(e)を厚さ40μmのガラス織布に含浸し、100℃で10分、180℃で60分の条件で乾燥し、Cステージの無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0075】
〔実施例4〕
樹脂組成物溶液(c)を厚さ40μmのガラス織布に含浸し、100℃で10分、180℃で60分の条件で乾燥し、無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0076】
〔実施例5〕
厚さ40μmのガラス織布のかわりに、厚さ50μmのアラミド不織布を用いた以外は実施例1と同様にして、無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0077】
〔実施例6〕
樹脂組成物溶液(f)を厚さ40μmのガラス織布に含浸し、100℃で10分、180℃で60分の条件で乾燥し、無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。
【0078】
〔実施例7〕
樹脂組成物溶液(e)を厚さ40μmのガラス織布に含浸し、60℃で5分、100℃で5分、150℃で5分乾燥して、Bステージの無電解めっき用材料を得た。一方、実施例1の配線形成性評価時に得たプリント配線板の両面に、上記無電解めっき用材料を真空プレスにて、180℃、3MPa、60分の条件で積層した。尚、積層の際の合紙として、樹脂フィルム(アフレックス、旭硝子社製)を用いた。このようにして、無電解めっき用材料/両面配線板/無電解めっき用材料からなる積層体を得た。その後、実施例1と同様にして各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表3に示す。尚、両面配線板と無電解めっき用材料とは強固に接着しており、また、両面配線板のライン アンド スペース(L/S)=10μm/10μmの配線部も良好に埋め込まれていた。
【0079】
〔比較例1〕
複合体として、9μm厚みの電解銅箔の積層された銅張積層板を用いて、銅箔と複合体の接着強度を測定した。また、銅箔をエッチアウトした後の樹脂表面の表面性も評価した。その後、レジストを形成して、エッチングを行うことによるサブトラクティブ法にてライン アンド スペース(L/S)=10μm/10μmの配線形成性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0080】
〔比較例2〕
2、2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン90gとビス(4−マレイミドフェニル)メタン10gとを150℃で100分間予備反応させ、これをメチルエチルケトンとDMFとの混合溶媒に溶解させ、さらにオクチル酸亜鉛1.8部を加えて均一に混合して、樹脂溶液を得た。該樹脂溶液を、厚さ40μmのガラス織布に含浸し、160℃で10分、170℃で90分の条件で乾燥し、無電解めっき用材料を得た。この無電解めっき用材料を用いて各種評価項目の評価手順に従い評価した。評価結果を表4に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかる無電解めっき用材料は、平滑表面にもかかわらず無電解めっき銅が強固に形成されているために、特に微細配線形成が要求されるプリント配線板に用いることができる。それゆえ、本発明は、各種電子部品の産業分野に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に無電解めっきを施すための無電解めっき用材料であって、該無電解めっき用材料は、繊維と、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂との複合体を含む樹脂組成物からなることを特徴とする無電解めっき用材料。
【化1】

(式中、RおよびRは、C2Xで表される2価のアルキレン基、または2価の芳香族基を表す。また、Rは、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、またはフェノキシ基を表し、RはC2Xで表される2価のアルキレン基、または2価のフェニレン基を表す。さらに、n=3から100であり、mは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂が、一般式(6)で表されるポリイミド樹脂であって、酸二無水物成分と、下記一般式(7)で表されるジアミンを含むジアミン成分を原料とするポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき用材料。
【化2】

(式中、gは1以上の整数を表す。また、R11及びR22は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキレン基またはフェニレン基を表す。R33〜R66は、それぞれ同一、または異なっていてよく、アルキル基、またはフェニル基、またはフェノキシ基を表す。)
【請求項3】
繊維が、紙、ガラス、ポリイミド、アラミド、ポリアリレート及びテトラフルオロエチレンからなる群から選択される1種以上を原料とする繊維であることを特徴とする請求項1〜2に記載の無電解めっき用材料。
【請求項4】
無電解めっきが、無電解銅めっきであることを特徴とする請求項1〜3に記載の無電解めっき用材料。
【請求項5】
前記複合体が、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無電解めっき用材料。
【請求項6】
前記複合体が、一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリアミド酸および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することにより得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無電解めっき用材料。
【請求項7】
請求項1〜6記載の無電解めっき用材料の表面に、直接無電解めっきを施してなる積層体。
【請求項8】
請求項1〜6に記載の無電解めっき用材料を用いてなるプリント配線板。
【請求項9】
一般式(1)〜(6)のいずれかで表される構造のうち、1つ以上の構造を有するポリイミド樹脂および溶媒を含む樹脂組成物溶液を、繊維に含浸することによって、表面に無電解めっきを施すための層を形成することを特徴とする無電解めっき用材料の製造方法

【公開番号】特開2007−46048(P2007−46048A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194277(P2006−194277)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】