説明

熱伝導性シート及びその製造方法

【課題】高い熱伝導率、高い耐熱性、高い電気絶縁性、低コストな熱伝導性シートを提供する。
【解決手段】体積基準で導電性かつ熱伝導性のフィラー13:熱可塑性樹脂11=10〜90:90〜10からなる導電性熱伝導性樹脂層10の片面又は両面に、体積基準で絶縁性かつ熱伝導性のフィラー23:熱可塑性樹脂21=10〜90:90〜10からなる絶縁性熱伝導性樹脂層20を設けてなり、前記導電性熱伝導性樹脂層10及び前記絶縁性熱伝導性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂11,21がポリエステル系熱可塑性エラストマーであることを特徴とし、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーがポリエステルブロックとポリエーテルブロックから構成されるブロック共重合体を主成分とし、また、DSC融点が130〜190℃、メルトインデックスが1〜40g/10分であることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シートに関し、さらに詳しくは、電気電子機器の各種半導体素子や電源、光源、ヒーター、部品などの熱源にて発生する熱を外部に放散又は拡散させる熱伝導性、電気絶縁性及び低コスト性を兼ね備えた熱伝導性シートに関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「EB」は「電子線」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、「表面抵抗値の単位Ωは当業界では通常Ω/□とも表示される。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、トランジスタやIC等の電子部品が多く使用された電子機器は、通常使用により発熱し、特に大きな電力を消費する電子部品には、発熱量も多い。さらに、近年、電気電子機器の高性能化、小型化及び軽量化に伴い、電気電子機器及び部品の集積度が高まっている。電子機器や部品の集積度が高まると、より小さい区域により多くの部品や集積回路が組み込まれるので、熱が逃げきれずに高温になってしまい、電子機器や電子部品には熱に弱いものが多く、あまりに熱くなると誤動作したり、故障したり、暴走したりすることがある。従って、これらの電子機器や電子部品等から発生する熱を効果的に拡散させ、外部へ放散させる放熱対策が課題になっている。電気電子機器や部品の発熱対策としては、機器、個々の集積回路やプリント基板にホットスポットの形成を防ぐために放熱体を設ける。発熱源となる発熱性電子部品等の被装着部位の凹凸に柔軟に追従させて、発熱性電子部品等に密着した状態で取り付けられる。例えば、トランジスタやサイリスタ等の発熱性電子部品等にはヒートシンク等の放熱部材を、熱伝導性の良好な熱伝導性シート(放熱シートともいう)や放熱用スペーサを介して取り付けられる。しかしながら、発熱性電子部品から発生する熱を効率良く放熱部材へ伝導させて放熱させる熱伝導性シートには、高い熱伝導率が求められている。また、電気を使用する電気電子機器及び部品用なので、高い電気絶縁性も求められ、さらに、効率よく大量に製造することができる低コスト性も求められている。
即ち、熱伝導性シートは、高い熱伝導率、高い電気絶縁性、低コストが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−321185号公報
【特許文献2】特開2003−113272号公報
【特許文献3】特開2005−150362号公報
【特許文献4】特開2006−28276号公報
【特許文献5】特開2003−60134号公報
【特許文献6】特開2008−42168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、熱伝導性シートの構成材料としては、マトリックス成分としてシリコーンが多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、マトリックス成分としてシリコーンを用いると、熱伝導性、柔軟性、耐熱性に優れた熱伝導性シートを得ることができる。しかし、シリコーンは他の高分子材料と比べて高価であり、さらには、シロキサンによる電子機器の接点不良などの不具合が生じ得るという問題点があり、また、価格及びシロキサン対策から、シリコーンの代わりにポリオレフィン系樹脂等を用い場合には、熱伝導性シートとして必要な耐熱性が不足するという欠点がある。
また、熱伝導性充填剤としては、熱伝導率の高いカーボンや金属粉のような導電性の熱伝導性充填剤が従来から多く用いられている(例えば、特許文献2〜4参照。)。しかしながら、熱伝導性シートは各種電子部品に使われるために絶縁性に優れるものがよく、電気の良導電性の熱伝導性充填剤では、短絡などの危険性がある。
そこで、絶縁性を保ちつつ高熱伝導率を実現するため、窒化ホウ素といった絶縁性の熱伝導性充填剤が用いられている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、絶縁性の熱伝導性充填剤は、導電性の熱伝導性充填剤に比べ、熱伝導率が低く、更に価格も高いという欠点がある。
そこで、さらに、導電性の熱伝導性充填剤を含有した熱伝導性シートの表面に、PETフィルムを積層し、絶縁層とすることが知られている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、上記の方法では、熱伝導性シートの製造に加え、PETフィルムを積層する工程が加わるためコストアップに繋がり、また更には、伸びの少ないPETフィルムを積層するために、柔軟な熱伝導性シートの変形を阻害し、表面形状追従性を著しく低下させるという欠点もある。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、高い熱伝導率、高い電気絶縁性、低コストな熱伝導性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる熱伝導性シートは、導電性かつ熱伝導性のフィラーと熱可塑性樹脂との体積基準での配合割合が導電性かつ熱伝導性のフィラー:熱可塑性樹脂=10〜90:90〜10からなる導電性熱伝導性樹脂層の片面又は両面に、絶縁性かつ熱伝導性のフィラーと熱可塑性樹脂との体積基準での配合割合が絶縁性かつ熱伝導性のフィラー:熱可塑性樹脂=10〜90:90〜10からなる絶縁性熱伝導性樹脂層を設けてなり、前記導電性熱伝導性樹脂層及び前記絶縁性熱伝導性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂がポリエステル系熱可塑性エラストマーであるように、したものである。
請求項2の発明に係わる熱伝導性シートは、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックから構成されるブロック共重合体を主成分とするように、したものである。
請求項3の発明に係わる熱伝導性シートは、上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーのDSC融点が130〜190℃、メルトインデックスが1〜40g/10分であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる熱伝導性シートの製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法であって、上記導電性熱伝導性樹脂層及び上記絶縁性熱伝導性樹脂層を共押出法で成膜するように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明によれば、高い熱伝導率、高い電気絶縁性の効果を奏する。
請求項2の本発明によれば、低温から高温までほぼ一定の弾性率を示す柔軟な効果を奏する。
請求項3の本発明によれば、押出加工がし易く、高融点なために高い耐熱性の効果を奏する。
請求項4の本発明によれば、公知で安定した加工工程である共押出法で成形でき、低コストで製造できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の1実施例を示す熱伝導性シートの断面図である。
【図2】本願発明の1実施例を示す熱伝導性シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(熱伝導性シート)本願発明の熱伝導性シート1は図1に示すように、導電性熱伝導性フィラー13と熱可塑性樹脂11とからなる導電性熱伝導性樹脂層10の両面に、絶縁性熱伝導性フィラー23と熱可塑性樹脂21とからなる絶縁性熱伝導性樹脂層20が設けられている。また、図2に示すように、導電性熱伝導性フィラー13と熱可塑性樹脂11とからなる導電性熱伝導性樹脂層10の片面に、絶縁性熱伝導性フィラー23と熱可塑性樹脂21とからなる絶縁性熱伝導性樹脂層20を設けてもよい。そして、導電性熱伝導性樹脂層10及び絶縁性熱伝導性樹脂層20を構成する熱可塑性樹脂がポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いる。また、熱可塑性樹脂11と熱可塑性樹脂21とは、同一でも異なる樹脂でもよい。
【0012】
(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックから構成されるポリエステル系ブロック共重合体を主成分とするポリエステル系熱可塑性エラストマーが例示できる。即ち、ポリエステルを含有するハードセグメントと、ゴム弾性に富むソフトセグメントから構成されている。
【0013】
さらに好ましくは、ポリエステル系ブロック共重合体をマトリックスとし、柔軟性や圧縮永久ひずみに優れたスチレン系ブロック共重合体ゴムをドメインとして分散されて、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの長所を維持しながら、ポリエステル系熱可塑性エラストマー単独では到達しえなかったレベルの柔軟性とゴム弾性を兼ね備えている。ハードセグメント(ポリエステル)とソフトセグメント(ポリアルキレンエーテルグリコール)からなるブロック共重合体等が挙げられる。具体的には、三菱化学社製「プリマロイ」等が市販されている。
【0014】
好ましくは、ハードセグメントが高融点の結晶性芳香族ポリエステルブロック(主にポリブチレンエステるテレフタレート骨格)で、ソフトセグメントがガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテルブロック(主にポリテトラメチレンエーテルグリコール)から構成されたマルチブロック共重合体である。他のエラストマーと比較して、耐熱性の他にも、機械強度、耐寒性、耐油性、耐磨耗性などにも優れている。
【0015】
このポリエステル系熱可塑性エラストマーは、DSC融点が130〜190℃の範囲である樹脂が好ましい。DSC融点が低いと、熱伝導性シート(放熱シート)として必要な耐熱性が不足し、高いと密度が高くなり、柔軟性低下に繋がる。DSC融点が130〜190℃であり、通常の汎用樹脂と比較して高く、熱伝導性シートとしてた高い耐熱性が与えられる。
【0016】
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、メルトインデックスが1〜40g/10分の範囲である樹脂が好ましい。メルトインデックスが高過ぎると樹脂の流動性が過剰になり、低過ぎると流動性が不足し、安定した押出成形が困難になるため好ましくない。
【0017】
(導電性熱伝導性フィラー)導電性熱伝導性フィラー13としては、特に限定されず、通常、熱伝導性樹脂組成物中に配合される導電性のものを用いることが出来る。例えば、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル等の金属充填材;チタン等の金属合金充填材;カーボン等の炭素系充填材等が挙げられる。また無機充填材粒子に銀や銅等の金属材料を表面被覆したもの;金属充填材粒子に無機材料や炭素材料を表面被覆したもの等も挙げられる。
【0018】
導電性熱伝導性フィラー13は単独、又は2種類以上を併用しても良く、導電性かつ熱伝導性のフィラーに加え、絶縁性かつ熱伝導性のフィラーを添加しても良い。例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類;窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類;炭化ケイ素等の炭化物類;ダイヤモンド等の絶縁性炭素系充填材;石英、石英ガラス等のシリカ粉類が挙げられる。
【0019】
導電性熱伝導性フィラー13の配合量は、導電性かつ熱伝導性のフィラーと熱可塑性樹脂との体積基準での配合割合が導電性かつ熱伝導性のフィラー:熱可塑性樹脂=10〜90:90〜10とする。導電性熱伝導性フィラー13の含有量が10体積%未満であると効率的な熱伝導性を得にくくなり、90体積%を超えると樹脂組成物の柔軟性が低下し、発熱体や放熱体の表面の凹凸への密着追従性が悪く接触熱抵抗が増大し効率的な熱伝導性が得られなくなる。より好ましくは15〜60体積%である。
【0020】
(絶縁性熱伝導性フィラー)絶縁性熱伝導性フィラー23としては、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類;窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類;炭化ケイ素等の炭化物類;ダイヤモンド等の絶縁性炭素系充填材;石英、石英ガラス等のシリカ粉類が挙げられる。
【0021】
絶縁性熱伝導性フィラー23の配合量は、絶縁性かつ熱伝導性のフィラーと熱可塑性樹脂との体積基準での配合割合が絶縁性かつ熱伝導性のフィラー:熱可塑性樹脂=10〜90:90〜10とする。絶縁性熱伝導性フィラー23の含有量が10体積%未満であると効率的な熱伝導性を得にくくなり、90体積%を超えると樹脂組成物の柔軟性が低下し、発熱体や放熱体の表面の凹凸への密着追従性が悪く接触熱抵抗が増大し効率的な熱伝導性が得られなくなる。より好ましくは15〜60体積%である。
【0022】
(添加剤)導電性熱伝導性樹脂層10及び絶縁性熱伝導性樹脂層20の熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じて物性調整剤、可塑剤等が加えられても良い。上記物性調整剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の各種シランカップリング剤が挙げられる。上記可塑剤として、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類;グリセリンモノオレイル酸エステル等の脂肪酸一塩基酸エステル類;アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類;ポリプロピレングリコール類やポリエチレングリコール類等のポリエーテル類;ポリα−オレフィン等の液状炭化水素類;クロロフルオロカーボン類;シリコンオイル等の従来公知の可塑剤が挙げられ、これらは単独、又は2種以上を併用出来る。本発明の熱伝導性樹脂組成物には、さらに、難燃剤、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、溶剤、香料、顔料、染料等が添加されても良い。
【0023】
(製造方法)本願発明の熱伝導性シート1の製造方法は、(1)上記導電性熱伝導性樹脂層及び上記絶縁性熱伝導性樹脂層を共押出法で成膜する工程、からなる。共押出成形は成膜と同時に積層化できる加工工程であり、高品質な熱伝導性シート1を低コストで製造することができる。
【0024】
(共押出法)導電性熱伝導性樹脂層10/絶縁性熱伝導性樹脂層20の2層、又は、絶縁性熱伝導性樹脂層20/導電性熱伝導性樹脂層10/絶縁性熱伝導性樹脂層20の3層構成の層を共押出法で成膜する。共押出法による熱伝導性シート1の製造には、Tダイ共押出機、インフレ−ション共押出機等を使用して押出成形することができる。好ましくはTダイ共押出機である。
【0025】
熱伝導性シート1の製造にあたっては、事前に熱可塑性樹脂11と導電性熱伝導性フィラー13とを混合・混練した導電性熱伝導性樹脂層10組成物とする。同様に、熱可塑性樹脂21と絶縁性熱伝導性フィラー23とを混合・混練した絶縁性熱伝導性樹脂層20組成物としてから、上記の共押出法で成膜するのが好ましい。導電性熱伝導性樹脂層10組成物、又は絶縁性熱伝導性樹脂層20組成物を製造するために、必要に応じてその他成分を混練・混合させてもよい。を混練・混合させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、混練機、押出機、ミキサー、ロール、ニーダー、攪拌機等の一般的な装置を用いることが出来る。また、必要に応じて混練・混合時に装置内を減圧、脱気しても良い。
【0026】
(厚さ)熱伝導性シート1の総厚みは、20〜800μmが好ましい。より好ましくは、50〜600μmが好ましい。20μm未満では、成形安定性が低くなり、厚み精度が低下する。800μmを超えると、押出成形による製造が難しくなる。導電性熱伝導性樹脂層10の厚みは、10〜780μmが好ましい。より好ましくは、40〜600μmが好ましい。10μm未満では、成形安定性が低くなり、厚み精度が低下する。780μmを超えると、押出成形による製造が難しくなるためである。絶縁性熱伝導性樹脂層20の厚みは5〜200μmが好ましい。より好ましくは、10〜100μmが好ましい。5μm未満では、成形安定性が低くなり、厚み精度が低下し、更に絶縁効果が低下するためである。200μmを超えると、熱伝導率が低下するとともに価格が高いものとなっしまう。
【0027】
熱伝導性シート1には、片側あるいは両面に粘着層を付与してもよい。粘着層としては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂系、シリコーン樹脂系などの公知の粘着剤が例示できる
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)(1)導電性熱伝導性樹脂層10として、プリマロイ A1800N(三菱化学株式会社 ポリエステル系熱可塑性エラストマー、メルトインデックス=30g/10分、密度=1.08g/cm3、DSC融点=160℃)50重量部(46.3体積部)、黒鉛(新越化成株式会社 WF−025 平均粒径=25μm、密度=2.2g/cm3)50重量部(22.7体積部)からなる樹脂組成物を調整した。また、絶縁性熱伝導性樹脂層20として、プリマロイ A1800N(三菱化学株式会社 ポリエステル系熱可塑性エラストマー、メルトインデックス=30g/10分、密度=1.08g/cm3、DSC融点=160℃)33重量部(30.6体積部)、酸化亜鉛(堺化学工業株式会社 LPZINC−11 平均粒径=11μm)67重量部(12.0体積部)からなる樹脂組成物を調整した。(2)次に、上記で調整した各樹脂組成物を用いて、Tダイ共押出製膜機により、絶縁性熱伝導性樹脂層20/導電性熱伝導性樹脂層10/絶縁性熱伝導性樹脂層20の3層構成の層を、導電性熱伝導性樹脂層10が140μm、両絶縁性熱伝導性樹脂層20がそれぞれ70μm、総厚280μmとなるように共押出成形して、実施例1の熱伝導性シート1を得た。
【0030】
(実施例2)絶縁性熱伝導性樹脂層20/導電性熱伝導性樹脂層10/絶縁性熱伝導性樹脂層20の3層構成の層を、導電性熱伝導性樹脂層10が200μm、両絶縁性熱伝導性樹脂層20がそれぞれ50μm、総厚300μmとする以外は実施例1と同様にして、実施例2の熱伝導性シート1を得た。
【0031】
(実施例3)絶縁性熱伝導性樹脂層20としても、プリマロイ A1800N(三菱化学株式会社 ポリエステル系熱可塑性エラストマー、メルトインデックス=30g/10分、密度=1.08g/cm3、DSC融点=160℃)67重量部(62.0体積部)、窒化ホウ素(MOMENTIVE社 PTX60 平均粒径=60μm)33重量部(14.3体積部)、からなる樹脂組成物とする以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱伝導性シート1を得た。
【0032】
(比較例1)(1)導電性熱伝導性樹脂層10の樹脂組成物として、プリマロイ A1800N(三菱化学株式会社 ポリエステル系熱可塑性エラストマー、メルトインデックス=30g/10分、密度=1.08g/cm3、DSC融点=160℃)50重量部(46.3体積部)、黒鉛(新越化成株式会社 WF−025 平均粒径=25μm、密度=2.2g/cm3)50重量部(22.7体積部)からなる樹脂組成物を調整した。
(2) Tダイ押出製膜機により、上記で調整した樹脂組成物が200μmとなるように単層押出製膜し、熱伝導性シートを製造して、比較例1の熱伝導性シート1を得た。
【0033】
(比較例2)樹脂組成物が100μmとなるように単層押出製膜した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の熱伝導性シート1を得た。
【0034】
(評価方法)熱伝導率、表面抵抗値で評価した。
【0035】
(測定方法)熱伝導率は、Netzsch Nanoflash LFA447を用いた。表面抵抗値は、抵抗率計(株式会社ダイアインスツルメンツ「ハイレスタUP MCP−HT450型」)を用いて、23℃−50%RH雰囲気下で測定した。加熱収縮率、熱伝導率、抵抗率を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
(評価結果)本発明の熱伝導性シートである実施例1〜3では、1014以上の表面抵抗値であり、高い絶縁性が示された。また、熱伝導性シートとして充分な熱伝導率を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
(産業上の利用可能性)本発明は、熱が発生する電子機器、部品や集積回路に利用することができる。しかしながら、高い熱伝導率を必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1:熱伝導性シート
10:導電性熱伝導性樹脂層
11:熱可塑性樹脂
13:導電性熱伝導性フィラー
20:絶縁性熱伝導性樹脂層
21:熱可塑性樹脂
23:絶縁性熱伝導性フィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性かつ熱伝導性のフィラーと熱可塑性樹脂との体積基準での配合割合が導電性かつ熱伝導性のフィラー:熱可塑性樹脂=10〜90:90〜10からなる導電性熱伝導性樹脂層の片面又は両面に、絶縁性かつ熱伝導性のフィラーと熱可塑性樹脂との体積基準での配合割合が絶縁性かつ熱伝導性のフィラー:熱可塑性樹脂=10〜90:90〜10からなる絶縁性熱伝導性樹脂層を設けてなり、前記導電性熱伝導性樹脂層及び前記絶縁性熱伝導性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂がポリエステル系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、ポリエステルブロックとポリエーテルブロックから構成されるブロック共重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーのDSC融点が130〜190℃、メルトインデックスが1〜40g/10分であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法であって、上記導電性熱伝導性樹脂層及び上記絶縁性熱伝導性樹脂層を共押出法で成膜することを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−54609(P2011−54609A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199636(P2009−199636)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】