説明

熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート、及び電子部品

【課題】本発明は、熱伝導性、難燃性、絶縁性及び柔軟性をバランス良く備えた熱伝導性感圧接着性シート、該シートのもととなる熱伝導性感圧接着剤組成物、並びに、該シートを備えた電子部品を提供する。
【解決手段】少なくとも一種の重合体(S)100質量部と、膨張化黒鉛粉(B)0.5質量部以上20質量部以下と、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)0.06質量部以上12質量部以下とを含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)からなる熱伝導性感圧接着性シート(G)、及び該シートを備えた電子部品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性感圧接着剤組成物、該熱伝導性感圧接着剤組成物から成形される熱伝導性感圧接着性シート、及び該シートを備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)チップ等のような電子部品は、その高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、温度上昇による機能障害対策を講じる必要性が生じている。一般的には、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を電子部品等の発熱体に取り付けることにより、放熱させる方法が取られている。発熱体から放熱体への熱伝導を効率よく行うためには、各種熱伝導シートが使用されているが、一般に、発熱体と放熱体とを固定する用途においては熱伝導性感圧接着性シートが必要とされている。
【0003】
このような熱伝導性感圧接着性シートには、粘着性や熱伝導性に加えて、用途に応じたその他の性能(難燃性、絶縁性、柔軟性等)も要求されることがある。熱伝導性感圧接着性シートのようなシート状の部材の性能向上を図るには、該シートのもととなる組成物に各種フィラーを添加することが知られている。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂に黒鉛粒子及び炭素繊維構造体を含有させた樹脂組成物が開示されており、該樹脂組成物から、放熱性や加工性などに優れる成形品が得られる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−150595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、熱伝導性感圧接着性シートは、用途に応じて粘着性や熱伝導性以外の性能も要求される。具体的には、被着体への形状追従性を向上させるには適度な柔軟性が必要であり、LED光源や自動車のコンデンサ等へ直接貼り付ける用途に対応するためには、絶縁性の向上が要求されてきている。また、用途によっては難燃性も要求されてきている。しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術を含めて従来の技術では、熱伝導性、難燃性、絶縁性及び柔軟性をバランス良く兼ね備えた熱伝導性感圧接着性シートを提供することが困難であった。例えば、熱伝導性や難燃性の向上を図るためには膨張化黒鉛粉を添加することが考えられるが、膨張化黒鉛粉を多く含有した熱伝導性感圧接着性シートは、絶縁性が著しく低下する等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱伝導性、難燃性、絶縁性及び柔軟性をバランス良く備えた熱伝導性感圧接着性シート、該シートのもととなる熱伝導性感圧接着剤組成物、並びに、該シートを備えた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、熱伝導性感圧接着性シートについて鋭意研究を続けた結果、少なくとも膨張化黒鉛粉と極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維とを重合体に所定量含有した熱伝導性感圧接着剤組成物、該組成物からなる熱伝導性感圧接着性シート、及び該シートを備えた電子部品によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
第1の本発明は、少なくとも一種の重合体(S)100質量部と、膨張化黒鉛粉(B)0.5質量部以上20質量部以下と、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)0.06質量部以上12質量部以下と、を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)である。
【0009】
ここで、「少なくとも一種の重合体(S)」とは、重合体(S)が一種類の重合体で構成されていても良く、組成や分子量等が異なる複数の重合体を混合して構成されていても良いことを意味する。また、「極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)」とは、構造中に極性基を有するハロゲン化炭化水素を繊維状にしたものを意味する。極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)の具体例については後述する。
【0010】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)において、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)が、構造中にフッ素を有する極性基変性ハロゲン化炭化水素からなることが好ましい。
【0011】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)において、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)が、(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素からなることが好ましい。
【0012】
本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素」とは、構造中に(メタ)アクリル基を有するハロゲン化炭化水素を意味する。
【0013】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)において、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)が、(メタ)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンからなることが好ましい。以下、「ポリテトラフルオロエチレン」を「PTFE」という。
【0014】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、さらにリン酸エステル(C)を含むことが好ましい。
【0015】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)において、リン酸エステル(C)を含む場合、該リン酸エステル(C)が、組成及び分子量が異なるリン酸エステルを2種以上混合してなるものであることが好ましい。
【0016】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)において、重合体(S)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を含んでなるものであることが好ましい。重合体(S)を(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を含んでなるものとすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を成形して得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)に接着性及び/又は粘着性と柔軟性とを付与させやすい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は単量体が液体なので扱い易いということや安価であるという観点からも好ましい。
【0017】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものであることが好ましい。かかる形態とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を成形して熱伝導性感圧接着性シート(G)を得るとき、該熱伝導性感圧接着性シート(G)の成形性を向上させることができる。
【0018】
第2の本発明は、第1の本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形してなる、熱伝導性感圧接着性シート(G)である。
【0019】
第2の本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含み、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られる、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の固化したシート状成形体であることが好ましい。
【0020】
第3の本発明は、第2の本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)を備えた電子部品である。
【0021】
第3の本発明の電子部品としては、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器、自動車のパワーデバイス、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱伝導性、難燃性、絶縁性及び柔軟性をバランス良く備えた熱伝導性感圧接着性シート、該シートのもととなる熱伝導性感圧接着剤組成物、並びに、該シートを備えた電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.熱伝導性感圧接着剤組成物(F)
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、少なくとも一種の重合体(S)と、膨張化黒鉛粉(B)と、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)と、を所定の割合で含有している。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含まれる主な物質について以下に説明する。
【0024】
<重合体(S)>
重合体(S)を構成するものとしては、特に限定されない。また、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形して熱伝導性感圧接着性シート(G)として用いるためには、重合体(S)が接着性及び/又は粘着性を備えることが好ましい。重合体(S)が、接着性及び/又は粘着性を備えるためには、重合体(S)は、接着性及び/又は粘着性を有するものの中から選ぶことが好ましい。しかしながら、接着性及び/又は粘着性を有しない重合体(S)に、粘接着性付与剤を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
本発明に用いる重合体(S)の具体例を以下に列記する。
【0026】
天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムなどの、共役ジエン重合体;ブチルゴム;スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンランダム共重合体などの、芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体;スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合ゴムなどの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体とポリ(ハロゲン化ビニル)との混合物;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリアクリル酸ステアリル、ポリメタクリル酸ステアリルなどの、(メタ)アクリル重合体;ポリエピクロロヒドリンゴム、ポリエピブロモヒドリンゴムなどの、ポリエピハロヒドリンゴム;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどの、ポリアルキレンオキシド;エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM);シリコーンゴム;シリコーン樹脂;フッ素ゴム;フッ素樹脂;ポリエチレン;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などの、エチレン−α−オレフィン共重合体;ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−オクテンなどの、α−オレフィン重合体;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ臭化ビニル樹脂などの、ポリハロゲン化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ臭化ビニリデン樹脂などの、ポリハロゲン化ビニリデン樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12などの、ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステル;ポリ酢酸ビニル;ポリ(エチレン−ビニルアルコール);などを挙げることができる。
【0027】
上記した具体例の中でも、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体及び(メタ)アクリル重合体が好ましく、ポリアクリル酸エチル、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕などの、炭素数2〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位と所望により有機酸基を有する単量体単位とを含有する(メタ)アクリル重合体が、接着性、粘着性に優れるためより好ましい。
【0028】
さらに好ましくは、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕などの、炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位と所望により(メタ)アクリル酸単位とを含有する(メタ)アクリル重合体が挙げられる。
【0029】
特に好ましくは、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕などの、炭素数8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位と所望により(メタ)アクリル酸単位とを含有する(メタ)アクリル重合体が挙げられる。
【0030】
重合体(S)の具体例として挙げた上記物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0031】
重合体(S)に所望により配合される粘接着性付与剤としては、各種公知のものを使用できる。例えば石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂及びロジン樹脂が挙げられるが、これらのなかでも石油樹脂が好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0032】
石油樹脂の具体例としては、ペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどから得られるC5石油樹脂;インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどから得られるC9石油樹脂;上記各種モノマーから得られるC5−C9共重合石油樹脂;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンから得られる石油樹脂;それらの石油樹脂の水素化物;それらの石油樹脂を無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性石油樹脂;などを挙げることができる。
【0033】
テルペン系樹脂としてはα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂や、α−ピネン、β−ピネンなどのテルペン類とスチレンなどの芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂などを例示できる。
【0034】
フェノール樹脂としては、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物を使用できる。該フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられ、これらフェノール類とホルムアルデヒドをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが例示できる。また、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども例示できる。
【0035】
ロジン樹脂としてはガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンや、前記ロジンを用いて不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジンや、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性ロジンや、それらのエステル化物などが挙げられる。
【0036】
上記エステル化物を得るためのエステル化に用いられるアルコールとしては多価アルコールが好ましく、その例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコールや、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
これら粘接着性付与剤の軟化点は特に限定されないが、200℃以下の高軟化点のものから室温にて液状のものを適宜選択して使用できる。
【0038】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A1))
重合体(S)を構成するものとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を含んでなるものが好ましい。またそのとき、重合体(S)として、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)以外に含有させることができる重合体としては、先述の、重合体(S)の例として挙げたもののうち、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)に相当するもの以外のものを用いることができる。重合体(S)中の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、重合体(S)の全てが(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)であることが特に好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものが特に好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を成形して熱伝導性感圧接着性シート(G)とする際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、重合して(メタ)アクリル酸エステル重合体に変換し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の成分と混合及び/又は一部結合して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)となる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)とは、熱伝導性感圧接着性シート(G)中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てに相当し、熱伝導性感圧接着性シート(G)中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てを包括的に表す概念である。
【0039】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1))
以下、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)について詳細に説明する。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)、及び、有機酸基を有する単量体単位(a2)を含有することが好ましい。
【0041】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を与える(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)には、特に限定はないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸プロピル(同−37℃)、アクリル酸ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸2−エトキシメチル(同−50℃)、メタクリル酸オクチル(同−25℃)、メタクリル酸デシル(同−49℃)などを挙げることができる。
【0042】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0043】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、それから導かれる単量体単位(a1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)中、好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは85質量%以上99.5質量%以下となるような量で重合に使用される。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)の使用量が、上記範囲内であると、これから得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の室温付近での感圧接着性に優れる。
【0044】
有機酸基を有する単量体単位(a2)を与える単量体(a2m)は、特に限定されず、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができるが、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
【0045】
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸メチル、マレイン酸ブチル、フマル酸プロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
【0046】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
【0047】
これらの有機酸基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体がより好ましく、中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。これらは、工業的に安価で容易に入手することができ、他の単量体成分との共重合性も良く、生産性の点でも好ましい。これらの有機酸基を有する単量体(a2m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0048】
これらの有機酸基を有する単量体(a2m)は、それから導かれる単量体単位(a2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)中、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に使用されるのが望ましい。上記範囲内での使用においては、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことができる。
【0049】
なお、有機酸基を有する単量体単位(a2)は、前述のように、有機酸基を有する単量体(a2m)の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル重合体生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)から誘導される単量体単位(a3)を含有していてもよい。
【0051】
有機酸基以外の官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
【0052】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0053】
アミノ基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
【0054】
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
【0055】
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0056】
有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0057】
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、それから導かれる単量体単位(a3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)中、10質量%以下となるような量で重合に使用されるのが好ましい。10質量%以下の単量体(a3m)を使用することにより、重合時の粘度を適正に保つことができる。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、上述したガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)、有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、有機酸基以外の官能基を含有する単量体単位(a3)以外に、これらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)から誘導される単量体単位(a4)を含有していてもよい。単量体(a4m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0059】
単量体(a4m)から導かれる単量体単位(a4)の量は、アクリル酸エステル重合体(AP1)の10質量%以下が好ましく、より好ましくは、5質量%以下である。
【0060】
単量体(a4m)は、特に限定されないが、その具体例として、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン系単量体、非共役ジエン系単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0061】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸プロピル(同25℃)、メタクリル酸ブチル(同20℃)などを挙げることができる。
【0062】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0063】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエン、及び、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0064】
共役ジエン系単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレンと同義)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
【0065】
非共役ジエン系単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0066】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0067】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0068】
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、10万から40万の範囲にあることが好ましく、15万から30万の範囲にあることが、より好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)、有機酸基を有する単量体(a2m)、必要に応じて使用する、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)、及び、必要に応じて使用するこれらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)を共重合することによって特に好適に得ることができる。
【0071】
重合の方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これ以外の方法でもよい。好ましくは、溶液重合であり、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチルなどのカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒を用いた溶液重合がより好ましい。
【0072】
重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。
【0073】
重合開始の方法は、特に限定されないが、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるのが好ましい。熱重合開始剤は、特に限定されず、過酸化物及びアゾ化合物のいずれでもよい。
【0074】
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシドの他、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などを挙げることができる。これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
【0075】
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを挙げることができる。
【0076】
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単量体100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の範囲であるのが好ましい。
【0077】
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、圧力、撹拌条件など々)は、特に制限がない。
【0078】
重合反応終了後、必要により、得られた重合体を重合媒体から分離する。分離の方法は、特に限定されないが、溶液重合の場合、重合溶液を減圧下に置き、重合溶媒を留去することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)を得ることができる。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の重量平均分子量は、重合の際に使用する重合開始剤の量や、連鎖移動剤の量を適宜調整することによって制御することができる。
【0080】
((メタ)アクリル酸エステル単量体(α1))
上記したように、重合体(S)を構成するものとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものが特に好ましい。
【0081】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するものであれば、特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)を含有するものであることが好ましい。
【0082】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の合成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)と同様の(メタ)アクリル酸エステル単量体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0083】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及びそれと共重合可能な単量体との混合物として用いてもよい。
【0084】
特に好ましい(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)、及び、これらと共重合可能な単量体(a7m)からなるものである。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率は、好ましくは50質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは75質量%以上99.5質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率が、50質量%以上99.9質量%以下であるときは、熱伝導性感圧接着性シート(G)が感圧接着性や柔軟性に優れる。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)に所望により共重合させることができる、有機酸基を有する単量体(a6m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の合成に用いる単量体(a2m)として例示したものと同様の有機酸基を有する単量体を挙げることができる。有機酸基を有する単量体(a6m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0087】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における有機酸基を有する単量体(a6m)の比率は、30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率が30質量%以下であるときは、熱伝導性感圧接着性シート(F)の硬度が適正となり、高温(100℃)での感圧接着性が良好なものとなる。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及び所望により共重合させることができる有機酸基を有する単量体(a6m)の他に、これらと共重合可能な単量体(a7m)を、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下の範囲で用いることが望ましい。
【0089】
上記単量体(a7m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の合成に用いる単量体(a3m)、単量体(a4m)、及び下記に示す多官能性単量体として例示するものと同様の単量体を挙げることができる。
【0090】
共重合可能な単量体(a7m)としては、前述したように、二以上の重合性不飽和結合を有する、多官能性単量体を用いることもできる。多官能性単量体を共重合させることにより、共重合体に分子内及び/又は分子間架橋を導入して、感圧接着剤としての凝集力を高めることができる。
【0091】
多官能性単量体としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジンの他、4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどを用いることができる。中でも、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0092】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、上記の多官能性単量体を含有していることが好ましい。多官能性単量体は、単量体(a7m)の全部又は一部として用いられるが、多官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下含有しているのが望ましい。
【0093】
本発明において、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)100質量部に対して、下限が50質量部であることが好ましく、100質量部であることがより好ましく、150質量部であることがさらに好ましい。また、上限は500質量部であることが好ましく、300質量部であることがより好ましく、200質量部であることがさらに好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の量が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)100質量部に対して50質量部未満又は500質量部を超えると、熱伝導性感圧接着性シート(G)の成形性が劣ることがある。
【0094】
熱伝導性感圧接着性シート(G)を成形する際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は重合する。その重合を促進するため、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)に加えて、さらに、重合開始剤を含有することが好ましい。
【0095】
重合開始剤としては、光重合開始剤、アゾ系熱重合開始剤、有機過酸化物熱重合開始剤などが挙げられるが、得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の接着力等の観点から、有機過酸化物熱重合開始剤が好ましく用いられる。
【0096】
光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。その中でも、ホスフォンオキサイド系化合物が好ましい。好ましい光重合開始剤であるホスフォンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンジル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0097】
アゾ系熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などが挙げられる。
【0098】
有機過酸化物熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンのようなペルオキシドなどを挙げることができるが、熱分解時に臭気の原因となる揮発性物質を放出しないことが好ましい。有機過酸化物熱重合開始剤の中でも、1分間半減期温度が100℃以上かつ170℃以下のものが好ましい。
【0099】
有機過酸化物熱重合開始剤などの重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)100質量部に対し、下限が、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.5質量部、さらに好ましくは1質量部であり、上限が、好ましくは30質量部、より好ましくは20質量部、さらに好ましくは15質量部である。
【0100】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率は、95質量%以上であることが好ましい。重合転化率が低すぎると、得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)に単量体臭が残るので好ましくない。
【0101】
<膨張化黒鉛粉(B)>
本発明に用いることができる膨張化黒鉛粉(B)の例としては、酸処理した黒鉛を500℃〜1200℃にて熱処理して100ml/g〜300ml/gに膨張させ、次いで、粉砕することを含む工程を経て得られたものを挙げることができる。より好ましくは、黒鉛を強酸で処理した後アルカリ中で焼結し、その後再度強酸で処理したものを500℃〜1200℃にて熱処理して、酸を除去すると共に100ml/g〜300ml/gに膨張させ、次いで、粉砕することを含む工程を経て得られたものを挙げることができる。上記熱処理の温度は、特に好ましくは800℃〜1000℃である。
【0102】
本発明に用いる膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径は5μm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜300μmであり、さらに好ましくは20μm〜100μmである。膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径が5μm未満では、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導率が低くなる傾向にある。一方、膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径が500μmを超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を成形して得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の表面に膨張化黒鉛粉(B)が大きなドメインで存在することにより、被接着体との界面において空隙ができやすくなり、該熱伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導性及び粘着性が低くなる虞や、成形性が悪くなる虞がある。
【0103】
膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径は、レーザー式粒度測定機(株式会社セイシン企業製)を用い、マイクロソーティング制御方式(測定領域内にのみ測定対象粒子を通過させ、測定の信頼性を向上させる方式)により測定する。この測定方法は、セル中に測定対象の膨張化黒鉛粉(B)0.01g〜0.02gが流されることで、測定領域内に流れてくる膨張化黒鉛粉(B)に波長670nmの半導体レーザー光が照射され、その際のレーザー光の散乱と回折が測定機にて測定されることにより、フランホーファの回折原理から、平均粒径及び粒径分布が計算され、その結果が表示される。
【0104】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有させる膨張化黒鉛粉(B)の量は、重合体(S)を100質量部として、0.5質量部以上20質量部以下である。絶縁性と高い熱伝導性とのバランスを重視する観点からは、膨張化黒鉛粉(B)の含有量の上限は15質量部であることが好ましく、10質量部であることがより好ましい。同観点から膨張化黒鉛粉(B)の含有量の下限は2質量部であることが好ましく、5質量部であることがより好ましい。膨張化黒鉛粉(B)の含有量が0.5質量部未満であれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導率が劣る傾向にある。一方、膨張化黒鉛粉(B)の含有量が20質量部を超えれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着剤組成物(G)の柔軟性及び絶縁性が劣る傾向にある。
【0105】
<極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)>
本発明に用いることができる極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)は、極性基変性ハロゲン化炭化水素が繊維状になったものであり、該極性基変性ハロゲン化炭化水素は、構造中に極性基を有するハロゲン化炭化水素である。当該極性基は、一種のみでも良く、複数種の異なる極性基でも良い。当該極性基の具体例としては、(メタ)アクリル基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基などを挙げることができ、これらの中で(メタ)アクリル基が好ましい。また、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)を構成する極性基変性ハロゲン化炭化水素の構造中に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などを挙げることができ、これらの中でフッ素原子が好ましい。さらに、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)を構成する、極性基部分を除くハロゲン化炭化水素としては、前記極性基部分を除くハロゲン化炭化水素を構成する全ての炭素原子に結合しているハロゲン原子と水素原子の合計を100モル%としたとき、ハロゲン原子が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。以上のことから、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)としては、(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素繊維が好ましく、(メタ)アクリル変性PTFE繊維(例えば、三菱レイヨン株式会社製の「メタブレンA−3000」)が特に好ましい。
【0106】
上記膨張化黒鉛粉(B)と極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)とを所定の割合で併用することによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着剤組成物(G)の難燃性を向上させつつ、熱伝導性感圧接着剤組成物(G)に柔軟性や熱伝導率もバランス良く備えさせることができる。例えば、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)にかえてPTFE繊維などを熱伝導性感圧接着剤組成物(F)含有させ、熱伝導性感圧接着剤組成物(G)の難燃性の向上を図った場合、難燃性を十分に向上させることができる程度にPTFE繊維などを含有させると、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着剤組成物(G)の柔軟性や熱伝導性が低下する虞がある。
【0107】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有させる極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)の量は、重合体(S)を100質量部として、0.06質量部以上12質量部以下である。絶縁性と高い熱伝導性とのバランスを重視する観点からは、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)の含有量の上限は5質量部であることが好ましく、3質量部であることがより好ましい。同観点から極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)の含有量の下限は0.1質量部であることが好ましく、0.3質量部であることがより好ましい。極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)の含有量が0.06質量部未満であれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性が劣る傾向にある。一方、極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)の含有量が12質量部を超えれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着剤組成物(G)の柔軟性及び熱伝導率が劣る傾向にある。
【0108】
<リン酸エステル(C)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、重合体(S)、膨張化黒鉛(B)及び極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)に加えて、さらにリン酸エステル(C)を所定量含有することが好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)にリン酸エステル(C)を所定量含有させることによって、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性を向上させることができる。本発明に用いることができるリン酸エステル(C)は、25℃における粘度が3000mPa・s以上のものであることが好ましい。リン酸エステル(C)の粘度が低すぎる場合は、熱伝導性感圧接着性シート(G)の成形性が悪くなる。なお、本発明においてリン酸エステルの「粘度」とは、以下に説明する方法によって測定した粘度を意味する。
【0109】
(リン酸エステルの粘度測定方法)
リン酸エステルの粘度測定には、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて、以下に示す手順で行う。
(1)常温の環境でリン酸エステルを300ml計量し、500mlの容器に入れる。
(2)攪拌用ロータNo.1、2、3、4、5、6、7から、いずれかを選択し、粘度計に取り付ける。
(3)リン酸エステルが入った容器を粘度計の上に置き、ロータを該容器内の縮合リン酸エステルに沈める。このとき、ロータの目印となる凹みが丁度、リン酸エステルの液状界面にくるように沈める。
(4)回転数を20、10、4、2の中から選択する。
(5)攪拌スイッチを入れ、1分後の数値を読み取る。
(6)読み取った数値に、係数Aを掛け算した値が粘度[mPa・s]となる。
なお、係数Aは、下記表1に示すように、選択したロータNo.と回転数とから決まる。
【0110】
【表1】

【0111】
また、本発明に用いるリン酸エステル(C)は、大気圧下での15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体であることが好ましい。リン酸エステル(C)は、混合する際に液体でなければ、作業性が悪く、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形することが困難になる。リン酸エステル(C)を含んだ熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を得る際、通常は15℃以上100℃以下の環境で、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を構成する各物質を混合する。混合時の温度が低すぎれば重合体(S)のガラス転移温度を下回る可能性があり、高すぎれば単量体等の揮発あるいは重合反応が始まってしまうため、環境性及び作業性が悪くなる虞がある。
【0112】
本発明には、リン酸エステル(C)として、縮合リン酸エステルも非縮合リン酸エステルも用いることができる。ここでいう「非縮合リン酸エステル」とは、縮合されていないリン酸エステルのことを意味する。これまでに説明した条件を満たすリン酸エステル(C)の具体例を以下に列記する。
【0113】
縮合リン酸エステルの具体例としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル;ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートなどの含ハロゲン系縮合リン酸エステル;非芳香族非ハロゲン系縮合リン酸エステル;などが挙げられる。これらの中でも、比重が比較的小さく、有害物質(ハロゲンなど)の放出の危険がなく、入手も容易であることなどから、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)がより好ましい。
【0114】
非縮合リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル;トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;などが挙げられる。この中でも、有害物質(ハロゲンなど)が発生しないことなどから、芳香族リン酸エステルが好ましい。
【0115】
本発明において、リン酸エステル(C)は、上記した具体例などの中から一種を単独で用いても良いが、二種以上を併用することが好ましい。組成や分子量等が異なるリン酸エステルを用いることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導性を向上させやすくなる。
【0116】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有されるリン酸エステル(C)の量の上限は、重合体(S)を100質量部として、200質量部であることが好ましく、100質量部であることがより好ましい。リン酸エステル(C)の含有量が多すぎれば、熱伝導性感圧接着性シート(G)の凝集力の低下、表面への過度のブリードを誘発する虞がある他、成形性が悪くなる虞がある。一方、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有されるリン酸エステル(C)の量の下限は、重合体(S)を100質量部として、20質量部であることが好ましく、50質量部であることがより好ましい。リン酸エステル(C)の含有量が少なすぎれば、リン酸エステル(C)を含有させることによる熱伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性を向上させる効果が十分でなくなる。
【0117】
<アルミナ(L)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、さらにアルミナ(L)も含有させることが好ましい。以下に説明するアルミナ(L)を熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有させることによって、熱伝導性感圧接着性シート(G)に熱伝導性を向上させることができる。
【0118】
アルミナを熱伝導性フィラーとして用いる場合、通常は、球状アルミナのような比表面積が小さいものが好んで用いられていた。それは、アルミナを含む組成物の粘度が増大することを抑制し、該組成物中に該アルミナを高充填させ、かつ混合させやすくするためである。しかしながら、本発明者らは、BET比表面積が大きなアルミナを用いることにより、熱伝導性感圧接着性シート(G)が、高い熱伝導率、絶縁性を有し、かつ、高い難燃性を有することを見出した。したがって、本発明に用いるアルミナ(L)は、BET比表面積が0.7m/g以上であることが好ましく、1m/g以上であることがより好ましい。熱伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性を向上させるには、アルミナ(L)のBET比表面積は、大きい方が好ましいと考えられる。一方、アルミナ(L)の含有量にも因るが、BET比表面積が大きいアルミナ(L)を用いると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の粘度が増し、熱伝導性感圧接着性シート(G)を成形することが困難になる。したがって、単に熱伝導性感圧接着性シート(G)の生産性のみを考慮すると、アルミナ(L)のBET比表面積の上限は、10m/gであることが好ましく、5m/gであることがより好ましく、3m/gであることがさらに好ましい。
【0119】
なお、本発明においてBET比表面積とは、以下の方法で計測したものを意味する。
まず、窒素およびヘリウムの混合ガスをBET比表面積測定装置内に導入し、試料(BET比表面積の測定対象物)を入れた試料セルを液体窒素に浸して、窒素ガスを試料表面に吸着させる。吸着平衡に達した後、試料セルを水浴に入れ常温まで温め、試料に付着していた窒素を脱着させる。窒素ガスの吸着、脱着時に試料セルを通過する前後のガスの混合比は変化するので、この変化を窒素およびヘリウムの混合比が一定のガスを対照として熱伝導度検出器(TCD)で検知し、窒素ガスの吸着量および脱着量を求める。測定前に単位量の窒素ガスを装置内に導入してキャリブレーションを行い、TCDで検出した値に対応する表面績の値を求めておくことにより、その試料の表面積を求める。また、表面積をその試料の質量で除すことにより、BET比表面積を求めることができる。
【0120】
また、本発明に用いるアルミナ(L)のピーク粒径の下限は、0.1μmであることが好ましく、0.5μmであることがより好ましく、1.0μmであることがさらに好ましい。アルミナ(L)の粒径が大きければ、熱伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導性を向上させ易く、絶縁性も向上させ易くなると考えられるからである。一方、アルミナ(L)のピーク粒径の上限は、500μmであることが好ましく、200μmであることがより好ましく、100μmであることがさらに好ましい。ピーク粒径が大きすぎると、熱伝導性感圧接着性シート(G)の表面が荒れてしまい、被着体への形状追従性が低下してしまう虞があるからである。
【0121】
なお、本発明においてピーク粒径とは、特に断りがない限り以下の方法で計測したものを意味する。
試料(粒径の測定対象物)が分散している溶液に光を照射すると、光は試料により散乱される。この散乱光の強度及び角度は、懸濁粒子の大きさに大きく依存されるため、散乱光の強度分布を検出することにより、粒度分布が求められる。この粒度分布曲線におけるピークに対応する粒径を当該試料のピーク粒径とする。
【0122】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有されるアルミナ(L)の量の下限は150質量部であることが好ましく、200質量部であることがより好ましい。一方、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有されるアルミナ(L)の量の上限は600質量部であることが好ましく、500質量部であることがより好ましい。アルミナ(L)の含有量が上記の好ましい範囲内にあると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の粘度の増加を抑えることができ、熱伝導性感圧接着性シート(G)の成形性が良好となる。
【0123】
<膨張化黒鉛粉(B)及びアルミナ(L)を除く難燃性熱伝導無機化合物(N)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、以下に説明する難燃性熱伝導無機化合物(N)を加えることもできる。本発明に用いることができる、難燃性熱伝導無機化合物(N)は、上記膨張化黒鉛粉(B)及びアルミナ(L)を除くものであって、熱伝導性を有し、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性を向上させることができる無機化合物であれば特に限定されない。本発明に用いることができる難燃性熱伝導無機化合物(N)の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、カオリンクレー、アルミン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ドーソナイトなどが挙げられる。難燃性熱伝導無機化合物(N)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0124】
難燃性熱伝導無機化合物(N)の形状も特に限定されず、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状及び不定形状のいずれでもよい。
【0125】
難燃性熱伝導無機化合物(N)の中でも、周期律表第2族又は第13族の金属の水酸化物が好ましい。第2族の金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等を、第13族の金属としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム等を挙げることができる。
上述した、周期律表第2族又は第13族の金属の水酸化物の中でも、特に水酸化アルミニウムが好ましい。水酸化アルミニウムを用いることにより、熱伝導性感圧接着性シート(G)に優れた難燃性を付与することができる。
【0126】
水酸化アルミニウムとしては、通常、0.2μm〜150μm、好ましくは0.7μm〜100μmの粒径を有するものを使用する。また、1μm〜80μmの平均粒径を有するのが好ましい。平均粒径が1μm未満のものは熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の粘度を増大させ、また、同時に硬度も増大し、熱伝導性感圧接着性シート(G)の形状追随性を低下させる虞があり、かつ、熱伝導性が低くなる傾向にある。一方、平均粒径が80μmを超えるものは、熱伝導性感圧接着性シート(G)の表面が荒れてしまい、被着体への形状追従性が低下してしまう虞がある。
【0127】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有される難燃性熱伝導無機化合物(N)の量は、重合体(S)を100質量部として、150質量部以上600質量部以下である。上限は500質量部であることが好ましく、400質量部であることがより好ましい。下限は200質量部であることが好ましく、300質量部であることがより好ましい。難燃性熱伝導無機化合物(N)の含有量が600質量部を超えると、熱伝導性感圧接着性シート(G)の硬度が増大し、形状追随性が低下する傾向にある。一方、難燃性熱伝導無機化合物(N)の含有量が150質量部未満であると、熱伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性が劣る虞がある。なお、熱伝導性感圧接着性シート(G)の難燃性を向上させるために難燃性熱伝導無機化合物(N)の含有量を増やすと、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の粘度が増し、熱伝導性感圧接着性シート(G)の成形性が悪くなる虞があるが、アルミナ(L)と難燃性熱伝導無機化合物(N)とを併用することによって、難燃性熱伝導無機化合物(N)の含有量を抑えつつ、熱伝導性感圧接着性シート(G)に優れた難燃性を備えさせることができる。
【0128】
<発泡剤(H)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、任意成分として発泡剤(H)を所定量含有させることができる。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に発泡剤(H)を含有させることによって、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の柔軟性をさらに向上させることができる。
【0129】
本発明に用いることができる発泡剤(H)としては、熱分解性発泡剤が好ましい。さらに、熱分解性発泡剤としては、80℃以上かつ500℃以下の分解開始温度を有するものが好ましく、120℃以上かつ300℃以下の分解開始温度を有するものがより好ましい。
【0130】
そのような熱分解性発泡剤の具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボアミドなどが挙げられる。熱分解開始温度が500℃より高い発泡剤に後述する発泡助剤を一定量混合して熱分解開始温度を500℃以下とした発泡システムも同様に熱分解性発泡剤とすることができる。
【0131】
上記発泡助剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸と亜鉛華(酸化亜鉛のこと)の混合物、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸と亜鉛華の混合物、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸と亜鉛華の混合物、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、などが挙げられる。
【0132】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有させることができる発泡剤(H)の量は、重合体(S)を100質量部として、15質量部以下であることが好ましい。上限は5質量部であることがより好ましく、1質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部であることが特に好ましい。発泡剤(H)の含有量が15質量部を超えれば、熱伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導を阻害する虞がある。
【0133】
<ガラス繊維(I)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、任意成分として、ガラス繊維(I)を所定量含有させるができる。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)にガラス繊維(I)を含有させることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の絶縁性を向上させることができる。
【0134】
本発明に用いることができるガラス繊維(I)は、繊維長が0.1mm以上4mm以下であることが好ましい。ガラス繊維の長さが0.1mm未満であれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の絶縁性を高める効果を得難い傾向にある。一方、ガラス繊維の長さが4mmを超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の熱伝導性を低下させる傾向にあり、かつ成形し難くなる傾向にある。
【0135】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有されるガラス繊維(I)の量は、重合体(S)を100質量部として、100質量部以下であることが好ましい。上限は50質量部であることがより好ましく、10質量部であることがさらに好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)に含有されるガラス繊維(I)の量が100質量部を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から熱伝導性感圧接着性シート(G)を成形し難くなる傾向にある。
【0136】
<その他の熱伝導性無機化合物>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、膨張化黒鉛粉(B)、アルミナ(L)及び難燃性熱伝導無機化合物(N)以外に、任意成分として他の熱伝導性無機化合物を含有させることができる。以下にその熱伝導性無機化合物について例示する。
【0137】
(PITCH系炭素繊維(P))
PITCH系炭素繊維(P)とは、ピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料とする炭素繊維であり、熱伝導率が高いという特長を有する。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)にPITCH系炭素繊維(P)が含有される場合、その含有量は、重合体(S)を100質量部として、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下であることが望ましい。PITCH系炭素繊維(P)の含有量が20質量部を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(G)の絶縁破壊強さが劣る傾向にある。
【0138】
<その他の成分>
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、さらに、必要により、外部架橋剤、顔料、その他の充填材、老化防止剤、増粘剤、などの公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0139】
(外部架橋剤)
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)には、感圧接着剤としての凝集力を高め、耐熱性などを向上させるために、外部架橋剤を添加して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合してなる重合体に架橋構造を導入することができる。
【0140】
外部架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能性イソシアネート系架橋剤;ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのエポキシ架橋剤;メラミン樹脂架橋剤;アミノ樹脂架橋剤;金属塩架橋剤;金属キレート架橋剤;過酸化物架橋剤;などが挙げられる。
【0141】
外部架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合してなる重合体を得た後、これに添加して、加熱処理や放射線照射処理を行うことにより、共重合体の分子内及び/又は分子間に架橋を形成させるものである。
【0142】
(その他)
顔料としては、カーボンブラックや、二酸化チタンなど、有機系、無機系を問わず使用できる。その他の充填材としては、クレーなどの無機化合物などが挙げられる。フラーレンやカーボンナノチューブ、などのナノ粒子を添加してもよい。老化防止剤としては、ラジカル重合を阻害する可能性が高いため通常は使用しないが、必要に応じてポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤を使用することができる。増粘剤としては、アクリル系ポリマー粒子、微粒シリカなどの無機化合物微粒子、酸化マグネシウムなどのような反応性無機化合物を使用することできる。
【0143】
2.熱伝導性感圧接着性シート(G)
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)のシート状の形態物である。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形して、熱伝導性感圧接着性シート(G)とすることができる。熱伝導性感接着剤組成物(F)をシート状に成形する際には、加熱することが好ましい。
【0144】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)は、好ましくは、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含有し、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に該(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られる、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の固化したシート状成形体である。
【0145】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又はその固化物のみからなるものであってもよく、基材とその片面又は両面に成形された熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又はその固化物とからなる複合体であってもよい。
【0146】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)における熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又はその固化物の層の厚さは特に限定されないが、100μm〜3000μmであることが好ましい。100μmより薄いと、発熱体と放熱体に貼付する際に空気を巻き込み易く、結果として充分な熱伝導性を得られなかったり、被着体への貼り付け工程における作業性に劣る虞がある。一方、3000μmより厚いと、熱伝導性感圧接着性シート(G)の厚み方向の熱抵抗が大きくなり、放熱性が損なわれる虞がある。
【0147】
基材の片面又は両面に熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又はその固化物の層を成形する場合、該基材は特に限定されない。
【0148】
上記基材の具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ベリリウム銅などの熱伝導性に優れる金属、及び、合金の箔状物や、熱伝導性シリコーンなどのそれ自体熱伝導性に優れるポリマーからなるシート状物や、熱伝導性フィラーを含有させた熱伝導性プラスチックフィルムや、各種不織布や、ガラスクロスや、ハニカム構造体などを用いることができる。
【0149】
プラスチックフィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーからなるフィルムを使用することができる。
【0150】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又はその固化物をシート状に成形する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、例えば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を、剥離処理したポリエステルフィルムなどの工程紙の上に塗布するキャスト法、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又はその固化物を、必要ならば二枚の剥離処理した工程紙間に挟んで、ロールの間を通す方法、及び、押出機を用いて、押出す際にダイスを通して厚さを制御する方法などが挙げられる。
【0151】
シート化しながら、あるいはシート化後に、例えば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を熱風、電気ヒーター、赤外線などにより加熱することによって、熱伝導性感圧接着性シート(G)を好適に得ることができる。このときの加熱温度は、有機過酸化物熱重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合が進行する条件が好ましい。温度範囲は、用いる有機過酸化物熱重合開始剤の種類により異なるが、100℃〜200℃が好ましく、130℃〜180℃がより好ましい。
【0152】
熱伝導性感圧接着性シート(G)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を、シート状に成形し、及び100℃以上かつ200℃以下の温度に加熱することにより、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)のシート化及び熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合を行うことによりなるシート状成形体であることが好ましい。
【0153】
3.電子部品
上記した本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)は、電子部品の一部として用いることができる。その際、放熱体のような基材上に直接的に成形して、電子部品の一部として提供することもできる。当該電子部品の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器における発熱部周囲の部品、自動車等のパワーデバイス周囲の部品、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)など発熱部を有する機器や部品を挙げることができる。
【0154】
なお、本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)の電子機器への使用方法の一例として、LED光源を具体例に下記に記述するような方法で使用することを挙げることができる。すなわちLED光源に直接貼り付ける;LED光源と放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシートなど)との間に挟みこむ;LED光源に接続された放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシートなど)に貼り付ける;LED光源を取り囲む筐体として使用する;LED光源を取り囲む筐体に貼り付ける;LED光源と筐体との隙間を埋める;などの方法である。LED光源の用途例としては、透過型の液晶パネルを有する表示装置のバックライト装置(テレビ、携帯、PC、ノートPC、PDAなど);車両用灯具;工業用照明;商業用照明;一般住宅用照明;などが挙げられる。
【0155】
また、LED光源以外の具体例としては、以下が挙げられる。すなわち、PDPパネル;IC発熱部;冷陰極管(CCFL);有機EL光源;無機EL光源;高輝度発光LED光源;高輝度発光有機EL光源;高輝度発光無機EL光源;CPU;MPU;半導体素子;などである。
【0156】
更に本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)の使用方法としては、装置の筐体に貼り付けることなどを挙げることができる。例えば、自動車などに使用される装置では、自動車に備えられる筐体の内部に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の外観に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)と該筐体とを接続する;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)に接続した放熱板に貼り付ける;ことなどが挙げられる。
【0157】
なお、自動車以外にも、同様の方法で本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)を使用することができる。例えばパソコン;住宅;テレビ;携帯電話機;自動販売機;冷蔵庫;太陽電池;表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED);有機ELディスプレイ;無機ELディスプレイ;有機EL照明;無機EL照明;有機ELディスプレイ;ノートパソコン;PDA;燃料電池;半導体装置;炊飯器;洗濯機;洗濯乾燥機;光半導体素子と蛍光体を組み合わせた光半導体装置;各種パワーデバイス;ゲーム機;キャパシタ;などが挙げられる。
【0158】
更に、本発明の熱伝導性感圧接着性シート(G)は上記の使用方法に留まらず、用途に応じて使用することが可能である。例えば、カーペットや温暖マットなどの熱の均一化のために使用する;LED光源/熱源の封止剤として使用する;太陽電池セルの封止剤として使用する;太陽電池のバックシ−トとして使用する;太陽電池のバックシ−トと屋根との間に使用する;自動販売機内部の断熱層の内側に使用する;有機EL照明の筐体内部に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、エポキシ系の放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;人や動物を冷やすための装置、衣類、タオル、シートなどの冷却部材に対し、身体と反対の面に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置の加圧部材に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置の加圧部材そのものとして使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部として使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部に使用する;放射性物質格納容器の外層と内装の間に使用する;太陽光線を吸収するソーラパネルを設置したボックス体の中に使用する;CCFLバックライトの反射シートとアルミシャーシの間に使用する;ことなどを挙げることができる。
【実施例】
【0159】
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0160】
<難燃性>
熱伝導性感圧接着性シートを幅10mm×長さ150mmの大きさに裁断した試験片を5本用意した。ブンゼンバーナーの空気及びガスの流量を調整して高さ20mm程度の青色炎をつくり、垂直に支持した試験片の下端にバーナーの炎をあてて(試験片とバーナーの炎と約10mm交わるように。)10秒間保った後、試験片をバーナーの炎から離した。その後、試験片の炎が消えれば直ちにバーナーの炎を試験片にあて、更に10秒間保持した後、試験片をバーナーの炎から離した。このようにして試験片にバーナーの炎をあて、燃焼滴下物(ドリップ)の有無を調べた。その結果を表2及び表3に示した。この評価において、ドリップが発生しなかった場合は、難燃性が優れていると言える。
【0161】
<熱伝導率>
熱伝導性感圧接着性シートを幅50mm×長さ110mmの大きさに裁断した試験片を用意した。後に説明するように、試験片の表面には離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「離形PETフィルム」という。)が貼合されている。試験片から離形PETフィルムを剥がし、離形PETフィルムを剥がした面に、空気が入らないようにラップフィルムを貼った。このラップフィルムの大きさは、試験片の粘着面より大きいものであれば良い。そして、このラップフィルムを貼った試験片を用いて熱伝導率を測定した。熱伝導率(単位:W/m・K)の測定は、迅速熱伝導率計(商品名「QTM―500」、京都電子工業株式会社製)を用いて、非定常熱線比較法により行った。なお、リファレンスプレートには、シリコンスポンジ(電流値:1A)、シリコーンゴム(電流値:2A)、及び、石英(電流値:4A)をこの順で使用した。また、熱伝導率が1.5W/m・Kを超えるシートに関しては、リファレンスプレートにシリコーンゴム(電流値:2A)、石英(電流値:4A)、及び、ジルコニア(電流値:6A)をこの順で使用した。その結果を表2及び表3に示した。この評価による結果が1.0W/m・Kより大きければ、熱伝導性が優れていると言える。
【0162】
<硬度(柔軟性)>
熱伝導性感圧接着性シートを30mm×50mmの大きさに切断した試験片を複数枚用意した。それらの試験片から離形PETフィルムを剥がし、離形PETフィルムを剥がした面にタルクを使用して粉打ちした。厚さが6mm程度になるように試験片を積層し、硬度計(商品名「CL−150」、高分子計器株式会社製)の試料台上に載せた。その後、ダンパーを落として硬度の測定を行った。ダンパーが試料に接してから20秒後の値を測定値として読み取った。測定は23℃雰囲気下で行った。結果を表2及び表3に示した。この評価による結果が50未満であれば、柔軟性が優れていると言える。
【0163】
<体積抵抗率(絶縁性)>
熱伝導性感圧接着性シートを80mm×80mmの大きさに裁断した試験片を用意した。デジタル超高抵抗/微少電流抗計(商品名「8340A」、株式会社エーディーシー製)に試験片をセットして、該試験片の左右両端に電流を流して抵抗率を測定した。電圧は500Vから開始して測定できる電圧まで徐々に下げていき、測定できる電圧での抵抗率を測定した。なお、チャージ時間は1分とした。該測定を3回行い、その平均値を熱伝導性感圧接着性シートの体積抵抗率(単位:Ω・cm)とした。結果を表2及び表3に示した。この評価による結果が1.0×1010Ω・cm以上であれば、絶縁性が優れていると言える。
【0164】
(実施例1)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)は270,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は3.1であった。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
【0165】
次に、電子天秤を用いて、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートを60:35:5の割合で混合した多官能性単量体0.6部、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」と略記する。)63部、有機過酸化物熱重合開始剤である1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(以下、「tBCH」と略記する。)〔1分間半減期温度は150℃である。〕0.5部の順で計量して混合し、液体原料を得た。
【0166】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体36部と、上記液体原料と、リン酸エステル1(商品名「CR−741」、大八化学工業株式会社製、25℃における粘度:32000mPa・s(回転数10、ロータN0.5(表1参照)、数値80)、大気圧下での15〜100℃の温度領域において常に液体、化合物名「ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)」)27部と、リン酸エステル2(商品名「レオフォス65」、味の素ファインテクノ株式会社製、25℃における粘度:5800mPa・s(回転数10、ロータN0.3(表1参照)、数値58)、大気圧下での15〜100℃の温度領域において常に液体、化合物名「リン酸トリアリールイソプロピル化物」)54部と、水酸化アルミニウム(商品名「BF083」、日本軽金属株式会社製、平均粒径:8μm)360部と、アルミナ(商品名「AL−47−H」、昭和電工株式会社製、BET比表面積:1.8m/g、ピーク粒径:2μm)360部と、膨張化黒鉛粉(商品名「EC−500」、伊藤黒鉛工業株式会社製、平均粒径(D50):30μm)5.4部と、アクリル変性PTFE繊維(商品名「メンブレンA−3000」、三菱レイヨン株式会社製)0.45部とを、恒温槽(商品名「ビスコメイト 150III」、東機産業株式会社製)及びホバートミキサー(商品名「ACM−5LVT型」、容量:5L、株式会社小平製作所製)を用いて、減圧下において攪拌混合しながら脱泡し、熱伝導性感圧接着剤組成物を得た。ホバート容器の温調は60℃に設定した。具体的な混合方法は、下記の通りである。
【0167】
まず、フィラー成分以外をホバート容器に投入し、回転数メモリ3×10分で混合した。その後、膨張化黒鉛粉以外のフィラー成分を上記ホバート容器に投入し、回転数メモリ5×10分で混合した。その後、膨張化黒鉛粉を上記ホバート容器に投入し、回転数メモリ3×10分、−0.1MPaで真空脱泡しながら混合した。
【0168】
次に、得られた熱伝導性感圧接着剤組成物を離型PETフィルムで挟み込み、離型PETフィルムの上からロールで押圧してシート状に成形し、150℃の熱風炉で15分間、重合を行わせ、両面を離型PETフィルムで覆われた、熱伝導性感圧接着性シート(G1)を得た。熱伝導性感圧接着性シート(G1)中の残存単量体量から(メタ)アクリル酸エステル単量体混合物の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
【0169】
(実施例2〜7、比較例1〜10)
表2及び表3に示すように、各配合物とその量を変更した以外は実施例1と同様にして、熱伝導性感圧接着性シート(G2〜7、GC1〜10)を得た。なお、実施例1では用いていない配合物は、下記の通りである。
・PTFE繊維:旭硝子株式会社製、商品名「Fluon(登録商標)」、品番「L169J」
・アルミナ繊維:三菱樹脂株式会社製、繊維長5〜10cm、繊維径5μm、アルミナ・シリカ組成の結晶質アルミナファイバー
・PAN系炭素繊維:東邦テナックス株式会社製、商品名「Tenax−J HTA−C6−NR」、繊維長6mm
【0170】
<性能評価>
実施例で作製したシート(G1)〜(G7)及び比較例で作製したシート(GC1)〜(GC10)の評価結果を表2及び表3に示した。
【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
表2に示すように、実施例にかかるシート(G1)〜(G7)は難燃性試験においてドリップの発生がなく、難燃性に優れていることがわかった。また、実施例にかかるシート(G1)〜(G7)は、熱伝導率が1.0W/m・K以上、硬度が50以下、体積抵抗率が1010Ω・cm以上であり、難燃性に加えて熱伝導率、柔軟性、及び絶縁性もバランスよく備えているといえる。
【0174】
一方、表3に示すように、比較例にかかるシート(GC1)〜(GC10)は上記性能のいずれかが劣っていた。具体的には、以下の通りであった。
・比較例1:実施例1のシート(G1)の(メタ)アクリル変性PTFE繊維にかえて未変性のPTFE繊維を用いた比較例1のシート(GC1)は、難燃性試験においてドリップの発生し、難燃性が劣っていた。
・比較例2:実施例4のシート(G4)の(メタ)アクリル変性PTFE繊維にかえてPTFE繊維を用いた比較例2のシート(GC2)は、難燃性及び柔軟性が劣っていた。
・比較例3:(メタ)アクリル変性PTFE繊維の含有量が本発明で規定する範囲に満たない比較例3のシート(GC3)は、難燃性が劣っていた。
・比較例4:(メタ)アクリル変性PTFE繊維の含有量が本発明で規定する範囲を超えた比較例4のシート(GC4)は、柔軟性が劣っていた。
・比較例5:膨張化黒鉛粉が本発明で規定する範囲に満たない比較例5のシート(GC5)は、難燃性及び熱伝導性が劣っていた。
・比較例6:膨張化黒鉛粉が本発明で規定する範囲を超えた比較例6のシート(GC6)は、柔軟性及び絶縁性が劣っていた。
・比較例7:実施例1のシート(G1)の(メタ)アクリル変性PTFE繊維にかえてアルミナ繊維を用いた比較例7のシート(GC7)は、難燃性が劣っていた。
・比較例8:比較例7よりアルミナ繊維の含有量を増やした比較例8のシート(GC8)は、シート(GC7)に比べて難燃性は向上されたが、柔軟性が劣っていた。
・比較例9:実施例1のシート(G1)の(メタ)アクリル変性PTFE繊維にかえて炭素繊維を用いた比較例9のシート(GC9)は、難燃性が劣っていた。
・比較例10:比較例9より炭素繊維の含有量を増やした比較例10のシート(GC10)は、シート(GC9)に比べて難燃性は向上されたが、柔軟性が劣っていた。
【0175】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート、及び電子部品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の重合体(S)100質量部と、
膨張化黒鉛粉(B)0.5質量部以上20質量部以下と、
極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)0.06質量部以上12質量部以下と、
を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項2】
前記極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)が、構造中にフッ素を有する極性基変性ハロゲン化炭化水素からなる、請求項1に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項3】
前記極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)が(メタ)アクリル変性ハロゲン化炭化水素からなる、請求項1又は2に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項4】
前記極性基変性ハロゲン化炭化水素繊維(D)が(メタ)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項5】
さらにリン酸エステル(C)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項6】
前記リン酸エステル(C)が、組成及び分子量が異なるリン酸エステルを2種以上混合してなるものである、請求項5に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項7】
前記重合体(S)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を含んでなるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものである、請求項7に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形してなる、熱伝導性感圧接着性シート(G)。
【請求項10】
請求項8に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)中の前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られる、該熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の固化したシート状成形体である、熱伝導性感圧接着性シート(G)。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の熱伝導性感圧接着性シート(G)を備えた電子部品。
【請求項12】
エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器、自動車のパワーデバイス、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)である、請求項11に記載の電子部品。

【公開番号】特開2011−246590(P2011−246590A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120680(P2010−120680)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】