説明

熱処理装置

【課題】SiCを高温アニールするような場合であっても、低熱容量で且つ均一加熱が可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置において、平行平板電極2、3と、これら電極間に高周波電圧を印加し放電させる高周波電源6と、これら電極間に配置される被加熱試料1の温度を計測する温度計測手段17と、これら電極間へのガス導入手段10と、これら電極の周囲を覆う反射鏡13と、高周波電源6の出力を制御する制御部18を備える。これら電極間での放電によるガス加熱を用いて被加熱試料1の熱処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスを製造する半導体製造装置に係り、特に半導体基板の導電性制御を目的に行われる不純物ドーピング後の活性化アニールや欠陥修復アニールおよび表面の酸化等を行う熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体デバイスの基板材料としてSiC等(他にGaN等あるが以後SiCとする)の広バンドギャップを有する新材料の導入が期待されている。SiCは従来材料であるSiに対してバンドギャップが大きいことで、インバーター等を構成するスイッチングデバイスやショットキーバリアダイオードに用いた場合耐電圧性の向上やそれに伴うリーク電流の低減から消電力化が可能となる。
【0003】
SiCを基板に用いて各種パワーデバイスを製造する工程は、基板のサイズ等をのぞけば、大まかにはSiを基板に用いる場合と同様である。しかし、唯一大きく異なる工程として熱処理工程が上げられる。熱処理工程とは、基板の導電性制御を目的に行われる不純物のイオン打ち込み後の活性化アニールがその代表である。Siデバイスの場合、活性化アニールは800〜1200℃の温度で行われる。しかしSiCの場合には、その材料特性から1800〜2000℃の温度が必要となる。
【0004】
アニール装置として、例えば特許文献1に記されている抵抗加熱炉が知られている。また、抵抗加熱炉方式以外には、例えば特許文献2に記されている誘導加熱方式のアニール装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−32774号公報
【特許文献2】特開2010−34481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている抵抗加熱炉で1800℃以上の加熱を行う場合、以下に示す課題が顕著となる。
【0007】
第1点目は、熱効率である。炉体からの放熱は輻射が支配的となり温度の四乗に比例して輻射量が増大するため、加熱領域が大きいと加熱に要するエネルギー効率が極端に低下する。抵抗加熱炉の場合、ヒーターからの汚染を回避するため通常2重管構造が用いられ、加熱領域が大きくなる。また2重管により熱源(ヒーター)から被加熱試料が遠ざかるためヒーター部は被加熱試料の温度以上の高温にする必要があり、これもまた効率を大きく低下させる要因となる。また同様な理由から被加熱領域の熱容量が非常に大きくなり、温度の上げ下げに時間がかかる。よって被加熱試料の投入から排出までに要する時間が長くなりスループットの低下要因となったり、高温環境下で被加熱試料を滞在させる時間が長くなることで後述する被加熱試料の表面荒れを増大させる要因となる。
【0008】
第2点目は、炉材の消耗である。炉材料として、1800℃に対応できる材料は限られており、高融点で高純度な材料が必要となる。SiC用に活用できる炉材はグラファイトかまたはSiCそのものとなる。一般にはSiC焼結体またはグラファイト基材に化学的気相成長法によりSiCを表面にコーティングした材料が用いられる。これらは通常高価であり、炉体が大きい場合、交換に相当な費用が必要となる。高温であればあるほど炉体の寿命も短くなるので通常のSiプロセスに比べ交換費用が高くなる。
【0009】
一方、特許文献2に記されている誘導加熱方式は、被加熱対象または被加熱対象を設置する設置手段に高周波による誘導電流を流し加熱する方式であり、先の抵抗加熱炉方式に比べ熱効率が高くなる。但し、誘導加熱の場合、被加熱対象の電気抵抗率が低いと加熱に必要な誘導電流が多く必要となり、加熱系全体で見た場合の熱効率(誘導コイル等での熱損失が大きくなる)の絶対値はかならずしも高いわけではなく、熱効率の課題がある。
【0010】
また被加熱試料または被加熱対象を設置する設置手段に流れる誘導電流により加熱均一性が決まり、デバイス製造に用いるような平面円盤では加熱均一性が十分得られない場合がある。加熱均一性が悪いと急加熱の際、被加熱試料を熱応力により破損する恐れがある。そのため温度上昇の速度を応力の発生しない程度に下げる必要性からスループットの低下要因となる。さらに前記抵抗炉加熱方式と同様に、超高温時のSiC表面からのSi蒸発を防止するキャップ膜の生成/除去工程が別途必要となる。
【0011】
本発明の目的は、SiCを高温アニールするような場合であっても、低熱容量で且つ均一加熱が可能な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための一実施形態として、平行平板電極と、前記平行平板電極間に高周波電圧を印加し、放電させる高周波電源と、前記平行平板電極間に配置される被加熱試料の温度を計測する温度計測手段と、前記平行平板電極内へのガス導入手段と、前記平行平板電極の周囲を覆う反射鏡と、前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記温度計測手段により計測された温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御することで被加熱試料の熱処理温度の制御を行うことを特徴とする熱処理装置とする。
【0013】
また、高周波電源と、被加熱試料を載置する下部電極と、前記高周波電源が接続され、前記下部電極に対向する位置に配置された上部電極と、前記上部電極と前記下部電極間に放電によりプラズマを生成するガスを導入するガス導入部と、前記上部及び下部電極を、空隙を介して覆う上部及び下部反射鏡を備えることを特徴とする熱処理装置とする。
【発明の効果】
【0014】
グロー放電を用いることにより、SiCを高温アニールするような場合であっても、低熱容量で且つ均一加熱が可能な熱処理装置を提供することが可能となる。特に、反射鏡を設けることにより、輻射損失が抑制され高温熱処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の実施例1に係るプラズマを用いた熱処理装置の基本構成図である。
【図1B】熱電子電流と電極温度との関係を示す図である。
【図1C】反射鏡により輻射損失が低減されることを説明するための図である。
【図2A】本発明の実施例2に係るプラズマを用いた熱処理装置における放電形成部の断面図である。
【図2B】本発明の実施例2に係るプラズマを用いた熱処理装置における他の放電形成部の断面図である。
【図3】本発明の実施例3に係るプラズマを用いた熱処理装置の基本構成図(処理中の状態)である。
【図4】本発明の実施例3に係るプラズマを用いた熱処理装置の基本構成図(処理後の状態)である。
【図5】図1Aに示した熱処理装置の基本動作シーケンス例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態として、被加熱試料をギャップ間隔0.1mm以上〜2mm以下の平行平板電極内に配置し、そのギャップを大気圧近辺の希ガス(He、Ar、Kr、Xe等)を主原料としたガスで満たし、該平行平板電極間に高周波電圧を印加することでプラズマを生成し、該プラズマによるガス加熱により被加熱試料の熱処理を行う。
【0017】
プラズマによるガス加熱により、2000℃程度の超高温を必要とする半導体デバイス製造における熱処理装置を提供することが可能となる。加熱効率の向上や加熱処理時間の短縮によるスループットの向上や炉材の消耗等運用にかかるコスト低減や超高温に伴う被加熱試料の表面荒れ抑制が可能となる。
【0018】
以下、実施例により説明する。
【実施例1】
【0019】
本実施例に係るプラズマを用いた熱処理装置の基本構成を図1Aに示す。まず本熱処理装置の構成を説明する。被加熱試料1は、上部電極2と下部電極3で構成される平行平板電極内に設置される。本実施例では、被加熱試料1として4インチ(φ100mm)の単結晶炭化シリコン(以下SiC)を用いた。上部電極2および下部電極3の直径は120mm、厚みは5mmとした。上部電極2と下部電極3は、グラファイト基材の表面に炭化シリコンを化学的気相成長法により堆積したものを用いた。
【0020】
被加熱試料1は、下部電極3上に載置され、上部電極2とのギャップ4は0.8mmとした。なお、被加熱試料1は0.5mm〜0.8mm程度の厚さを備え、図示しないが被加熱試料1を載置する下部電極3にはこの被加熱試料を載せるための窪みが設けられている。また上部電極2と下部電極3の対向するそれぞれの円周角部はテーパーあるいはラウンド状に加工されている。これは、電極角部での電界集中によるプラズマ局在を抑制するためである。
【0021】
上部電極2には、給電線5を介して高周波電源6からの高周波電力が供給される。本実施例では、高周波電源6の周波数として13.56MHzを用いた。下部電極3は給電線7を介してアースに接続されている。給電線5、7も上部電極2および下部電極3の構成材料であるグラファイトで形成されている。高周波電源6と上部電極2間にはマッチング回路8(なお、図中のM.BはMatching Boxの略である。)が配置されており、高周波電源6からの高周波電力を効率良く上部電極2と下部電極3間に形成されるプラズマに供給する構造となっている。
【0022】
上部電極2と下部電極3が配置される容器9内にはガス導入手段10によりHeガスを0.1気圧から10気圧の範囲で導入できる構造となっている。導入するガスの圧力は圧力検出手段11によりモニタされる。また容器9は排気口12に接続される真空ポンプによりガス排気可能となっている。Heガスを導入する前段階で真空排気し容器9内の空気を排出後にガス導入手段10から導入するガスを所定の圧力まで導入することで容器9内の雰囲気を純粋な所望ガス(本実施例の場合はHe)の雰囲気とすることができる。またガス導入手段10による一定量のガス導入と排気を組み合わせ所定の圧力に保つことも可能な構造となっている。ガス導入手段の制御は制御部18で行うことができる。
【0023】
容器9内の上部電極2および下部電極3はそれぞれに回転方物面で構成された反射鏡13で囲われる構造となっている。また上部電極2および下部電極3と反射鏡13間には保護石英板14が配置されている。回転方物面で形成される反射鏡13は金属基材の方物面を光学研磨し、研磨面に金をメッキあるいは蒸着することで構成される。また反射鏡13の金属基材には冷媒流路15が形成されており、冷却水を流すことで温度が一定に保てる構造となっている。
【0024】
上部電極2または下部電極3は、窓16を介して放射温度計17で観測可能となっており、該放射温度計17にて被加熱試料1の温度を測定する。放射温度計17による計測結果は制御部18にて処理され、所望の温度になるよう高周波電源6の出力を自動制御する機能を有している。なお、被加熱試料1の温度は上部電極2や下部電極3、特に下部電極3と同一と見なすことができる。
【0025】
次に図1Aに示した構成を有する熱処理装置の基本動作の説明をする。被加熱試料1を下部電極3上に配置後、上下機構20により上部電極2と下部電極3のギャップ4を0.8mm(上部電極2と被加熱試料1間距離も同様)に設定する。次に容器9内を排気口12を介して接続される真空ポンプにて1Pa以下程度まで排気後真空バルブ21にて容器9内を真空状態とする。続いてガス導入手段10からHeガスを所望の圧力になるまで導入する。本実施例では、容器9内のHe圧力を1気圧(1013ヘクトパスカル)とした。
【0026】
容器内の圧力が定まった段階で、高周波電源6より高周波電力マッチング回路8、電力導入端子19および給電線5を介して上部電極2に供給し、ギャップ4内にグロー放電域でのHeプラズマを形成する。本実施例では、上部電極2に供給する高周波電力を2000Wとした。高周波のエネルギーはプラズマ内の電子に吸収され、さらにその電子の衝突により原料ガスの原子あるは分子が加熱される。大気圧近辺でのプラズマでは、電子と気体原子および分子との衝突頻度が高いため、電子の温度と原子および分子の温度はほぼ等しい熱平衡状態となり、原料ガスの温度を容易に1000〜2600℃に加熱することができる。
【0027】
この加熱された高温ガスの接触、および輻射により被加熱試料1が加熱される。被加熱試料1の温度は、ガス温度の70%以上の温度からガス温度とほぼ等しい温度の状態に加熱することができる。被加熱試料1と対向する上部電極2表面も同様に加熱され、被加熱試料とほぼ同等な温度となる。1000℃以上の固体では、輻射によりその熱エネルギーが放出される割合が高くなる(温度の四乗に比例して輻射量が増加)。よって、上部電極2からの輻射も被加熱試料の加熱に寄与する。以上の原理により、被加熱試料1を数百度からSiCの活性化に必要な温度(1800℃〜2000℃程度)まで加熱することができる。
【0028】
グロー放電域のプラズマとすることで、上部電極2と下部電極3間に均一に広がったプラズマを形成でき、この平面的なプラズマを熱源として被加熱試料1を加熱することで平面的な被加熱試料1を均一に加熱することが可能となる。本加熱では、高温部はほぼ上部電極2と被加熱試料1を含む下部電極3のみであり、加熱領域の熱容量を極めて小さくすることができ、高速に温度を上昇/下降さることが可能となる。また平面的に均一に加熱できることから急速に温度を上昇させても、被加熱試料1内での温度不均一に伴う破損等を生じるリスクが低い。以上から高速な温度上昇および下温が可能となり、一連の加熱処理に必要な時間を短縮できる。この効果により加熱処理のスループットを向上できる。また、被加熱試料1の必要以上な高温雰囲気での滞在を抑制でき、例えば高温に加熱されたSiCからSiが蒸発することにより生じるSiC表面荒れ等を低減できる。
【0029】
被加熱試料1の温度はほぼ下部電極3の温度と同じであるので、放射温度計17で下部電極3の温度を測定することで被加熱試料1の温度を計測することが可能となる。放射温度計17での被加熱試料1温度の計測結果を参照して、高周波電源6の出力を制御部18にて制御することで被加熱試料1の温度を高精度に制御することが可能(1800℃±10℃以内)となる。
【0030】
以上の操作により被加熱試料1の温度を本実施例ではSiCデバイスのイオン打ち込み後の活性化に必要な1800℃まで加熱し、1分間のアニールを行なった。その結果、被加熱試料面内抵抗率で±3%以内の均一性が得られた。本加熱ではグロー放電を維持することにより、平面的に均一な加熱が可能となる。グロー放電からアーク放電に遷移すると、プラズマの形成が局所的となり均一な加熱が困難になると同時に温度も数千度以上の必要以上に高い温度となってしまい制御も困難となる。よって、本実施例での加熱範囲はグロー放電が維持できる2000℃程度までが望ましい。2000度以上では、ギャップ4に電極表面から放出される熱電子の量が多くなり、アーク放電への遷移リスクが高まる。
【0031】
アーク放電への遷移は先にも記したように、電極の温度上昇に伴う熱電子放出が大きく関係する。グロー放電は電極からの2次電子放出で維持されるが、熱電子の量が2次電子を上回ると放電が不安定となりアーク放電に遷移する。電極からの熱電子放出量は、式1に示すリチャードソン・ダッシュマンの式で表せられ、電極材の温度と仕事関数で決まる。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、式(1)中のJは単位面積あたりの熱電子放出量、mは電子の質量、kはボルツマン係数、eは素電荷、hはプランク定数、Tは電極の絶対温度、Wは電極材料の仕事関数を示す。図1Bはタングステン(W)、SiCおよびカーボン(C)の式(1)から導かれる熱電子放出量と温度の関係を示す。タングステンは熱電子源として広く用いられるので参考として示した。タングステンの場合、熱電子が2次電子量を上回り、グロー放電からアーク放電に遷移する温度は1800〜2100℃程度とされている。本実施例で用いた電極材はカーボンまたはSiC(カーボン上へのコーティング含む)である。SiCおよびカーボンは両方ともタングステンより仕事関数が大きい。よって熱電子量は同様の温度ではタングステンよりは少ないことになる。アーク放電への遷移が熱電子量で決まるためカーボンおよびSiCを電極として用いる場合、タングステンよりアーク放電へ遷移は高い温度となる。
【0034】
図1Bから、タングステンでのアーク遷移時と同様な熱電子量をアークへの遷移温度とすると、カーボンの場合はだいたい2030〜2300℃程度となる。よって、カーボン電極を用いる場合、2000℃程度以下ならグロー放電を維持できることになり、グロー放電による加熱が可能となる。また同様にSiCまたはSiCをCVD法等によりカーボン基材にコーティングした電極では1900〜2200℃となり1900℃程度までならグロー放電による加熱が可能となる。実際グロー放電維持の下限値では熱電子放出が放電維持を率速するには至らないのでカーボン電極およびSiC電極ともに2000℃程度までのグロー放電維持が可能である。
【0035】
上部電極2および下部電極3(被加熱試料1を含む)の温度を高率良く上昇させるには、給電線5、7からの伝熱、Heガス雰囲気を介する伝熱および高温域からの輻射(赤外光から可視光域)の抑制が必要となる。特に1800℃の超高温状態では、輻射による放熱が非常に大きく、輻射損失の低減が加熱高率の向上に必須となる。本実施例では、この輻射損失の低減を反射鏡13で実施する。反射鏡13は光学研磨された回転方物面に赤外光の反射率を高める金をコーティングし形成されている。この反射鏡13による回転方物面で上部電極2および下部電極3を覆うように配置することで、輻射光を加熱域である上部電極2および下部電極3周辺に反射させることで輻射損失の低減が可能となる。
【0036】
図1Cに1800℃の電極から放出される輻射スペクトルと、鏡面研磨された金(Au)の反射率を示す。金の場合、可視光(600nm以下)で反射率が低下するが、1800℃の輻射スペクトのほぼ全域にわたり高い反射率(95〜98%)が維持されており、平均しても97%程度の反射率が確保できることがわかる。実際は、さまざまな損失があるので平均すると90%程度の反射率となる。この反射率を有する鏡面で図1Aに示す反射鏡13を形成することで輻射による損失を低減することが可能となる。
【0037】
反射鏡13の鏡面は輻射光に対して90%程度の反射率を有するが多重反射となるので吸収された輻射エネルギーにより反射鏡13の温度上昇をもたらす。また上部電極2および下部電極3からのHeガス雰囲気を介して伝熱される熱損失分も反射鏡13の温度上昇につながる。反射鏡13の温度が数百度程度以上になると鏡面の劣化による反射率の低下や不純物の放出による被加熱試料1の汚染を生じさせる可能性がある。そこで本実施例では反射鏡13の金属基材部に冷媒流路15を施し冷却水を流すことで反射鏡13自身の温度上昇を抑制している。また反射鏡13と上部電極2および下部電極3間には保護石英板14が配置されている。保護石英板14は、超高温の上部電極2および下部電極3からの放出物(グラファイトの昇華や後述する添加ガスによる生成物等)による反射鏡13面の汚れ防止と、反射鏡13から被加熱試料1に混入する可能性がある汚染の防止機能を有する。なお、反射鏡13を備えない場合であっても低熱容量で且つ均一加熱が可能な熱処理装置を提供することができる。
【0038】
上記図1Aに示したプラズマを用いた熱処理装置の基本動作では、真空排気した容器9内を一定圧(1気圧)のHeガスで封じきり加熱処理を実施する場合について説明した。しかしHeガスを封じきりで加熱処理を行う場合は、操作が単純であるが、加熱による圧力変動やガス雰囲気の純度低下を招く恐れがある。よって、熱処理中常にガス導入手段10により一定量のHeガスを導入しつつ、所定の圧力(本実施例の場合は1気圧)を保持するように排気量を制御する方が望ましい。導入するHe流量が多いと熱損失が大きくなり、加熱高率が低下する。一方少なすぎるとHe雰囲気の純度保持能力が低下する。従って、加熱処理中に導入するガス量は10sccm〜10000sccmの範囲が好適である。
【0039】
上記図1Aに示した熱処理装置の基本構成では、ギャップ4を0.8mmとしたが0.1mmから2mmの範囲でも同様な効果がある。0.1mmより狭いギャップの場合も放電は可能であるが、上部電極2と下部電極3間の並行を維持するのに高精度な機能が必要となり、また電極表面の変質(荒れ等)がプラズマに影響するようになり好ましくない。一方ギャップ4が2mmを超える場合は、プラズマの着火性低下やギャップからの輻射損失増大が問題となり好ましくない。
【0040】
上記図1Aに示した熱処理装置の基本動作では、プラズマ形成の圧力を1気圧としたが、0.1気圧から10気圧の範囲でも同様の動作が可能である。0.1気圧より低い圧力で動作させる場合、上部電極2および下部電極3からのガス雰囲気の伝熱による熱損失を低減でき、また温度上昇にともなうグロー放電からアーク放電への遷移も抑制する効果がある。但し、0.1気圧より低い圧力では、プラズマ中のイオンが被加熱試料1に比較的高いエネルギーで入射するようになり、ダメージを発生させる場合があるので望ましくない。一般的に結晶面にダメージを与える運動エネルギーは10エレクトロンボルト以上であり、この値を超えるイオンの加速が生じるとダメージを与える。よって被加熱試料1に入射するイオンのエネルギーを10エレクトロンボルト以下とする必要がある。プラズマ中のイオンは被加熱試料1表面に形成されるイオンシース内での電圧で加速され入射する。イオンシース内の電圧はプラズマバルク中のイオンと電子のエネルギー差で生じる。よってイオン、電子、中性粒子が熱平衡状態である大気圧では、イオンシースの電圧発生が少なくまたイオンシース内での中性原子との衝突が100〜1000回程度生じるためイオン入射に伴う被加熱試料1の表面ダメージの発生はほとんど生じない。しかし、減圧していくとイオンと電子の運動エネルギーに差が生じイオンシースにイオンを加速する電圧が発生する。例えば数十〜100V程度の電位差がイオンシースに発生した場合を想定する。イオンシースの厚さは通常数十μmから数百μmである。一方、Heイオンの平均自由工程は、例えば1800℃の0.1気圧以下のHe雰囲気では20μm以下である。よってイオンシース内での衝突回数が1〜10回程度しかなく電位差に近い値までイオンが加速される割合が大きくなり、前記した10エレクトロンボルトを超えるエネルギーを有するイオンが入射する可能性が高まる。
【0041】
上記図1Aに示した熱処理装置の基本動作では、プラズマ生成の原料ガスにHeを用いたが他にAr、Xe、Kr等の希ガスを用いても同様の効果があることは言うまでもない。前記動作説明で用いたHeは大気圧近辺でのプラズマ着火性や安定性に優れるが、ガスの熱伝導率が高くガス雰囲気を介した伝熱による熱損失が比較的多い。一方Ar等質量の大きいガスは熱伝導率が低いため、熱効率の観点では有利である。また該希ガスに炭化水素系のガスを添加し、プラズマを生成することとで被加熱試料1表面に加熱に伴う表面荒れを防止する炭素保護膜を形成することが加熱の前段階で可能となる。また同様に加熱後(被加熱試料1の温度がある程度低下した段階)に酸素ガスを添加してプラズマを生成することで、該炭素系皮膜を除去することも可能である。
【0042】
上記実施例では、上部電極2および下部電極3をCVD法による炭化シリコンをコーティングしたグラファイトを用いたが、他にグラファイト単体、グラファイトに熱分解炭素をコーティングした部材、グラファイト表面をガラス化処理した部材、炭素と高融点金属(Ta、W等)との化合物およびSiC(焼結体、多結晶、単結晶)を用いても同様な効果がある。上部電極2および下部電極3の基材となるグラファイトやその表面に施すコーティングは被加熱試料1への汚染防止の観点から高純度なものが望ましいのは言うまでもない。また超高温時には給電線5、7からも被加熱試料1への汚染が影響する場合もある。よって本実施例では給電線5、7も上部電極2および下部電極3と同様なグラファイトを用いた。また上部電極2および下部電極3の熱は給電線5、7を伝熱し損失となる。よって給電線5、7からの伝熱を必要最小限にとどめる必要がある。よって、グラファイトで形成される給電線5、7の断面積はなるべく小さく、長さを長くする必要がある。しかし、給電線5、7の断面積を極端に小さくし、長さも長くしすぎると給電線5、7での高周波電力損失が大きくなり、被加熱試料1の加熱高率の低下を招く。本実施例では、以上の観点からグラファイトで形成される給電線5、7の断面積を12mm、長さを40mmとした。同様な効果は断面積5mm〜30mm、長さ30mm〜100mmの範囲で得られる。
【0043】
本実施例では前述したように加熱効率を決定する上部電極2および下部電極3からの放熱は、(1)輻射、(2)ガス雰囲気の伝熱、(3)給電線5、7からの伝熱が主である。この中で主なのが前述した(1)輻射で、その抑制に反射鏡13を用いた。また給電線5、7からの放熱は前述した給電線の断面積および長さを最適化し最小限に抑制した。残る(2)のガス雰囲気の伝熱に関しては、ガスの電熱距離(高温部である上部電極2および下部電極3と低温部である反射鏡13または容器9壁までの距離)により抑制した。大気圧のHe雰囲気では比較的ガスの伝熱による放熱が高くなる(Heの熱伝導率が高いため)。よって本実施例では、上部電極2および下部電極3から反射鏡13または容器9壁までの距離を30mm以上確保する構造とした。距離が長い方が放熱抑制には有利であるが、加熱領域に対する容器9の大きさが大きくなり好ましくない。30mm以上の距離を確保することで、容器9の大きさを抑制しつつガス雰囲気の伝熱による放熱を抑制できる。もちろん熱伝導率の低いAr等を用いたり、減圧(0.1気圧以上)することでさらにガス雰囲気の伝熱を抑制することが可能となることは言うまでもない。
【0044】
本実施例1では、放電の生成に13.56MHzを用いたがこれは工業周波数であるために低コストで電源が入手でき、かつ電磁波漏洩基準も低いので装置コストが低減できるためである。しかし、原理的には他の周波数でも同様な原理で加熱できることは言うまでもない。特に、1MHz以上100MHz未満の周波数が本発明に於いては好適である。1MHzより低い周波数になると加熱に必要な電力を供給する際の高周波電圧が高くなり、異常放電(不安定な放電や上部電極と下部電極間以外での放電)を生じ、安定な動作が難しくなるためふさわしくない。また100MHzを超える周波数は、上部電極2と下部電極3のギャップのインピーダンスが低く、プラズマ生成に必要な電圧が得にくくなりため好適でない。
【0045】
本実施例1では、単一の反射鏡13内に配置される下部電極3上に1枚の被加熱試料1を配置する構成について説明したが、反射鏡13、上部電極2および下部電極3を大型化し、下部電極3上に複数枚の被加熱試料1を配置することで一度に処理できる被加熱試料枚数を向上させることも可能である。その場合、上部電極2および下部電極の大きさに見合った高周波電力(上部電極2および下部電極の面積にほぼ比例)を投入する必要がある。
【0046】
また同様に、本実施例1では容器9内に反射鏡13、上部電極2および下部電極3(被加熱試料1を含む)を1対配置する構成について説明したが、大型の容器としその内部に複数対の反射鏡13、上部電極2および下部電極3を配置することでも一度に処理できる被加熱試料枚数を向上できることは言うまでもない。
【0047】
本実施例1では反射鏡13の鏡面に金をメッキまたは蒸着した部材を用いたが、他に鏡面の材質がアルミ、アルミ合金、銀、銀合金、ステンレスでも同様な効果があることは言うまでもない。また反射鏡13を回転方物面で形成したが、上部電極2および下部電極3の両端に平面状の反射鏡を配置しても同様の効果がある。
【0048】
図5に図1Aに示した熱処理装置における基本動作シーケンス例を示す。図5では、被加熱試料の表面荒れを防止するための表面保護膜形成および除去を一連の加熱処理と同時に行う場合について記す。まずベースとなる希ガス(He)180と表面保護膜形成用のフロロカーボンガス190を導入し、比較的低電力(ここでは、500W)で放電を形成し被加熱試料表面に保護膜を形成する(処理時間230)。つぎに保護膜形成用ガス190の供給を止め、希ガス(He)180の流量も低減し、放電電力210を加熱に必要な電力(ここでは、2000W)まで上昇させる。これにより、被加熱試料温度220は1800℃まで上昇する(処理時間240)。加熱処理が終了したら、冷却のため希ガス(He)180の流量を増加し、放電電力210も低下させる。ある程度温度が低下(ここでは600℃)したら、保護膜除去用の酸素ガス200を希ガス180に添加し、保護膜除去を実施する(処理時間250)。以上が一連の処理例である。図5のシーケンスでは、保護膜形成および除去の工程を付加した場合について記したが、もちろん表面荒れ抑制に関しては、本実施例の特徴である加熱/冷却時間の短縮による余分な加熱時間を削除すること、或いは事前に被加熱試料表面に保護膜を形成することでも可能であり、その際は図5に示される保護膜形成等を削除したシーケンスで処理される。
【0049】
以上、本実施例によれば、平行平板電極間のグロー放電で発生するプラズマにより加熱される被加熱試料(下部電極)の温度を計測する温度計測手段と、温度計測手段で計測される温度を用いて高周波電源の出力を制御する制御部とを備えることにより、低熱容量で且つ均一加熱が可能な熱処理装置を提供することができる。また、輻射損失を低減する反射鏡を更に備えることにより、SiCを高温アニールするような場合であっても、低熱容量で且つ均一加熱が可能な熱処理装置を提供することができる。
【実施例2】
【0050】
第2の実施例を図2A、図2Bを用いて説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0051】
図2Aは本実施例に係るプラズマを用いた熱処理装置における放電形成部の断面図である。本実施例2の説明では、実施例1と異なる部分のみについて説明する。図2A、図2Bは実施例1における上部電極2と下部電極3に相当する部分の拡大図である。図2A、図2Bでは、図1の実施例と異なり、上部電極2に第2のガス導入手段22、ガス拡散層23およびガス噴出し孔24が設けられている。その他の構成は図1の実施例1と同様である。なお、図2Aと図2Bとの構成の違いは、図2Bでは第2のガス導入手段22が給電線5の内部に設けられている点にある。上部電極2をガス導入手段の一部として用いることで、プラズマを生成するギャップ4内と容器9内のガス組成を変えることが可能となる。例えば、第2のガス導入手段22からは放電の着火性や安定性に優れるHeガスを導入し、容器9内には熱伝導率の低いArを導入することで、放熱の抑制による加熱高率向上とプラズマ形成の安定化の両立をはかることができる。また、前述した被加熱試料1表面に表面荒れ防止用の保護膜を形成する場合、第2のガス導入手段から原料ガス(炭化水素系ガス)希ガスに混合して導入することで少ない原料ガス量でかつ均一な保護膜形成が可能となる。なお、図2Bのように第2のガス導入手段22を給電線5の内部に設けることにより、上部電極周辺における輻射が均一となる。
【0052】
以上、本実施例においても実施例1と同様の効果が得られる。更に、第2のガス導入手段を有することにより、加熱高率向上とプラズマ形成の安定化の両立を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0053】
第3の実施例を図3と図4を用いて説明する。なお、実施例1又は実施例2に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情がない限り本実施例にも適用することができる。
【0054】
図3及び図4は、本発明の実施例3に係るプラズマを用いた熱処理装置の基本構成を示す図であり、図3は加熱処理中の状態を、図4は処理後の状態を示す。本実施例3の説明では、実施例1と異なる部分のみについて説明する。図3および図4では図1での実施例1に対して、反射鏡13の上下駆動機構25を付加した。図3に示すように加熱処理中は、上部電極2および下部電極3を反射鏡13になるべく近接(実施例1で説明したガス雰囲気の伝熱の影響を抑制できる程度の距離:30mm以上)させることで輻射による損失を抑制する。一方加熱後はなるべく早く温度を下げる必要があり、反射鏡13による輻射損失抑制が冷却の阻害となる。よって、図4に示すように加熱処理終了後は上下機構25により反射鏡13を上部電極2および下部電極3から離し、反射鏡13の効果を低減することで降温速度を向上させることができる。なお、上部反射鏡と上部電極との距離は、下部反射鏡と下部電極との距離と同じとなるように調整することが望ましい(特に、加熱処理中)。
【0055】
以下、実施例1、2、3に示した本発明の効果を纏める。本技術では、狭ギャップで生成する大気圧グロー放電によるガス加熱を熱源として被加熱試料1を加熱する。本原理に伴い従来技術に無い以下に示す4つの効果が得られる。
【0056】
第一点目は熱効率である。上部電極及び下部電極の間のギャップのガス及び上部電極及び下部電極(試料台)を加熱すれば良いため熱容量を極めて小さくできる。また被加熱試料1を含む上部電極2および下部電極3を回転方物面で構成される反射鏡で覆うことにより輻射に伴う加熱損失が極めて少ない体系にて被加熱試料1を加熱できるため高エネルギー効率が実現でき、高温加熱が可能となる。
【0057】
第二点目は加熱応答性と均一性である。上記構成により加熱部の熱容量が極めて小さいため急速な昇温および降温が可能となる。またグロー放電によるガス加熱を熱源に用いるため、グロー放電の広がりにより平面的に均一な加熱が可能となる。温度均一性が高いことで熱処理に伴う被加熱試料1面内でのデバイス特性バラツキを抑制できると同時に、急激な昇温等を行った際に被加熱試料1面内の温度差に伴う熱応力による損傷も抑制できる。
【0058】
第三点目は、加熱処理に伴う消耗部品の低減である。本技術では被加熱試料1に接触するガスを直接加熱するため、高温化する領域は被加熱試料1の極めて近傍に配置される部材に限定され、かつその温度も被加熱試料1と同等かそれ以下である。よって、部材の寿命が長く、部品劣化に伴う交換の領域も少ない。
【0059】
第四点目は被加熱試料1の表面荒れ抑制である。本技術では、先に記し効果により昇温/降温時間が短くできることから、仮に試料表面が露出しているような場合であっても、被加熱試料1を高温環境下に曝す時間が必要最低限に短縮され表面荒れを抑制できる。また本技術では、大気圧グロー放電によるプラズマを被加熱試料に曝すことで加熱を行う。加熱の段階では希ガスプラズマを用いるが昇温過程または降温過程で希ガスに反応性ガスを添加することで保護膜の形成および除去が加熱工程の中で一貫して可能となる。これにより熱処理装置とは別装置で行う保護膜の形成および除去工程が不要とり製造コストの低減が可能となる。
【0060】
前記実施例1から3において、反射鏡13を用いて上部電極2、下部電極3および被加熱試料1の加熱高率向上を実施したが、例えば1200℃以下の比較的低温の処理の場合には、かならずしも反射鏡13は必要としない。反射鏡は輻射放出による熱損失を低減することを目的とするので輻射損失があまり大きくない1200℃以下では、反射鏡13が無い構造でも十分機能を果たすことが可能である。その際の基本構成は、被加熱試料1を含む上部電極2および下部電極3とそれら電極に高周波電力を供給する高周波電源6、被加熱試料1または上部下部電極のいづれかの温度をモニタする手段(放射温度計17)、該温度モニタの値を参照して高周波電源6の電力を制御する手段および放電領域を0.1〜10気圧の範囲の希ガスまたは希ガスに保護膜形成用添加ガスおよび保護膜除去用添加ガスの雰囲気に制御する機構を備えた構造となる。
【0061】
以上示したように、本実施例においても実施例1と同様の効果を得ることができる。また、反射鏡を上下に移動する上下駆動機構を更に備えることにより、降温速度を向上させることが可能となる。
【0062】
以上、本願発明を詳細に説明したが、以下に主な発明の形態を列挙する。
(1) 平行平板電極と、
前記平行平板電極間に高周波電圧を印加し、放電させる高周波電源と、
前記平行平板電極間に配置される被加熱試料の温度を計測する温度計測手段と、
前記平行平板電極内へのガス導入手段と、
前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記温度計測手段により計測された温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御することで被加熱試料の熱処理温度の制御を行うことを特徴とする熱処理装置。(2) 平行平板電極と、
前記平行平板電極間に高周波電圧を印加し、放電させる高周波電源と、
前記平行平板電極間に配置される被加熱試料の温度を計測する温度計測手段と、
前記平行平板電極内へのガス導入手段と、
前記平行平板電極の周囲を覆う反射鏡と、
前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記温度計測手段により計測された温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御することで被加熱試料の熱処理温度の制御を行うことを特徴とする熱処理装置。(3) 上記(2)記載の熱処理装置において、
前記ガス導入手段は、第1のガス導入手段と第2のガス導入手段とを備え、
前記第1のガス導入手段は前記平行平板電極間のギャップ外にガス導入口を有し、前記第2のガス導入手段は前記平行平板電極間のギャップ内にガス導入口を有し、それぞれ独立にガス導入を行うことを特徴とする熱処理装置。
(4) 上記(2)記載の熱処理装置において、
前記平行平板電極は複数組設けられていることを特徴とする熱処理装置。
(5) 上記(2)記載の熱処理装置において、
前記制御部は、前記被加熱試料の熱処理を実施する前または温度上昇途中に、放電により生じるプラズマ中に炭化含有分子ガスを添加し、被加熱試料の表面に炭素系皮膜による保護膜を形成するように前記ガス導入手段を制御するものであることを特徴とする熱処理装置。
(6) 上記(5)記載の熱処理装置において、
前記制御部は、前記熱処理を実施した後に、放電により生じるプラズマ中に酸素を添加し、前記保護膜を除去する制御を行うことを特徴とする熱処理装置。
(7) 高周波電源と、
被加熱試料を載置する下部電極と、
前記高周波電源が接続され、前記下部電極に対向する位置に配置された上部電極と、前記上部電極と前記下部電極間にプラズマを生成するガスを導入するガス導入部と、前記上部及び下部電極を、空隙を介して覆う上部及び下部反射鏡を備えることを特徴とする熱処理装置。
(8) 上記(7)記載の熱処理装置において、
前記上部及び下部反射鏡は、回転方物面をなす金属基材表面を光学研磨加工し、かつ前記光学研磨面が金、アルミ、アルミ合金、銀、銀合金、ステンレスのいづれかの材料から成ることを特徴とする熱処理装置。
(9) 上記(7)記載の熱処理装置において、
前記上部電極と前記上部反射鏡との中間および前記下部電極と前記下部反射鏡との中間に石英板がそれぞれ配置されていることを特徴とする熱処理装置。
(10) 上記(7)記載の熱処理装置において、
さらに、該被加熱試料の温度を測定する温度計と、
前記温度計にて計測した温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御する制御部を備えることを特徴とする熱処理装置。
(11) 上記(7)記載の熱処理装置において、
さらに、前記ガス導入部から導入されるガス種及びガス流量並びに前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、該被加熱試料の表面に保護膜を形成するように前記ガス導入部を制御し、該被加熱試料の表面に該保護膜が覆われた状態で加熱するように前記高周波電源の出力を制御し、該保護膜を除去するように前記ガス導入部を制御するものであることを特徴とする熱処理装置。
(12) 上記(2)記載の熱処理装置において、
前記反射鏡は前記平行平板電極の上部及び下部にそれぞれ設けられ、それぞれの前記反射鏡を上下方向に駆動する駆動機構が更に備えられていることを特徴とする熱処理装置。(13) (7)記載の熱処理装置において、
前記上部及び下部反射鏡を上下方向に駆動する駆動機構が更に備えられていることを特徴とする熱処理装置。
【符号の説明】
【0063】
1…被加熱試料、2…上部電極、3…下部電極、4…ギャップ、5…給電線、6…高周波電源、7…給電線、8…マッチング回路、9…容器、10…ガス導入手段、11…圧力検出手段、12…排気口、13…反射鏡、14…保護石英板、15…冷媒流路、16…窓、17…放射温度計、18…制御部、19…電力導入端子、20…上下機構、21…真空バルブ、22…第2のガス導入手段、23…ガス拡散層、24…ガス噴出し孔、25…反射鏡の上下駆動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行平板電極と、
前記平行平板電極間に高周波電圧を印加し、放電させる高周波電源と、
前記平行平板電極間に配置される被加熱試料の温度を計測する温度計測手段と、
前記平行平板電極内へのガス導入手段と、
前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記温度計測手段により計測された温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御することで被加熱試料の熱処理温度の制御を行うことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
平行平板電極と、
前記平行平板電極間に高周波電圧を印加し、放電させる高周波電源と、
前記平行平板電極間に配置される被加熱試料の温度を計測する温度計測手段と、
前記平行平板電極内へのガス導入手段と、
前記平行平板電極の周囲を覆う反射鏡と、
前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記温度計測手段により計測された温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御することで被加熱試料の熱処理温度の制御を行うことを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記ガス導入手段は、第一のガス導入手段と第二のガス導入手段とを備え、
前記第1のガス導入手段は前記平行平板電極間のギャップ外にガス導入口を有し、前記第2のガス導入手段は前記平行平板電極間のギャップ内にガス導入口を有し、それぞれ独立にガス導入を行うことを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記平行平板電極は複数組設けられていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記制御部は、前記被加熱試料の熱処理を実施する前または温度上昇途中に、放電により生じるプラズマ中に炭化含有分子ガスを添加し、被加熱試料の表面に炭素系皮膜による保護膜を形成するように前記ガス導入手段を制御するものであることを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理装置において、
前記制御部は、前記熱処理を実施した後に、放電により生じるプラズマ中に酸素を添加し、前記保護膜を除去する制御を行うことを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
高周波電源と、
被加熱試料を載置する下部電極と、
前記高周波電源が接続され、前記下部電極に対向する位置に配置された上部電極と、前記上部電極と前記下部電極間にプラズマを生成するガスを導入するガス導入部と、前記上部及び下部電極を、空隙を介して覆う上部及び下部反射鏡を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の熱処理装置において、
前記上部及び下部反射鏡は、回転方物面をなす金属基材表面を光学研磨加工し、かつ前記光学研磨面が金、アルミ、アルミ合金、銀、銀合金、ステンレスのいづれかの材料から成ることを特徴とする熱処理装置。
【請求項9】
請求項7記載の熱処理装置において、
前記上部電極と前記上部反射鏡との中間および前記下部電極と前記下部反射鏡との中間に石英板がそれぞれ配置されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項10】
請求項7記載の熱処理装置において、
さらに、該被加熱試料の温度を測定する温度計と、
前記温度計にて計測した温度を参照し、前記高周波電源の出力を制御する制御部を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項11】
請求項7記載の熱処理装置において、
さらに、前記ガス導入部から導入されるガス種及びガス流量並びに前記高周波電源の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、該被加熱試料の表面に保護膜を形成するように前記ガス導入部を制御し、該被加熱試料の表面に該保護膜が覆われた状態で加熱するように前記高周波電源の出力を制御し、該保護膜を除去するように前記ガス導入部を制御するものであることを特徴とする熱処理装置。
【請求項12】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記反射鏡は前記平行平板電極の上部及び下部にそれぞれ設けられ、それぞれの前記反射鏡を上下方向に駆動する駆動機構が更に備えられていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項13】
請求項7記載の熱処理装置において、
前記上部及び下部反射鏡を上下方向に駆動する駆動機構が更に備えられていることを特徴とする熱処理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−59872(P2012−59872A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200845(P2010−200845)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】