説明

熱可塑性バインダーを含有する通気性立体形状部材の成形

【課題】本発明は、熱可塑性バインダーと、繊維、泡沫状物質、顆粒等との混合物の成形に関する。
【解決手段】成形された通気性または蒸気透過性の立体形状部材は、蒸気によって加熱された後、減圧することによって冷却されかつ加熱の際に生じた結露を蒸発させて、鋳型によって模様付けされた成形のまま持続させるというものである。この工程を行なうには、鋳型が特異な性質を有している必要がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性バインダーと、繊維、泡沫状物質、顆粒等との混合物の成形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維質性主成分で成形された立体形状部材は、成形時間をできるだけ短縮するために蒸気で加熱されている。バインダーとしてフェノール樹脂が用いられた立体形状部材は、温圧成型で成形される。このような化成に必要な熱は、蒸気によって、立体形状部材の組織中へ運ばれる。
【0003】
通常、熱可塑性バインダーを含有する立体形状部材は、平板に載せて加熱された不織シートや、広げられたまま蒸気を流し込んで加熱された不織シートで、調製されている。
【0004】
このような加熱された原材料は、圧縮成形で成形された後、常温成型で冷却される。その方法は、特許文献1に記載されているように、半製品であるシートを成形するバッチ工法、または平板を連続的に調製する工法によって、行なわれる。
【0005】
別な方法は、特許文献2に記載されているように、成形される原材料へ暖風を吹付けて加熱した後、寒風を吹付けて冷却するというものである。
【0006】
液体の蒸発によって熱が放散されるという原理は、広く冷却技術に応用されている。このような冷却技術が用いられ始めた頃ほど頻繁ではないが、今日では水も伝熱媒体として用いられている。このような場合、低温でも熱が伝わるように、水の蒸発は大抵、減圧下で行なわれる。
【0007】
工業的な工程において特許文献3に記載されているように、減圧は、木材のような原材料を乾燥するのに、広く用いられている。この原材料は、耐圧チャンバ中に設置される。このチャンバ中で、減圧が行なわれると、原材料に含まれる水分が、蒸発する。蒸発に必要な熱は、外部から連続的に供給される。
【0008】
特許文献4には、原料ビーズから発泡プラスチック製品を製造する自動成型装置が記載されている。この装置は、ビーズが入れられてガス状伝熱流体とりわけ高温蒸気で加圧される鋳型の中空を有し、このガス状伝熱流体が、自動成型装置の一方の表面から鋳型の中空に入り、自動成型装置の他方の表面から出るものであり、それの吸入口および/または排出口に織布が配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
特許文献5は、加圧下で成型器へ蒸気を送り込むことにより、尻当て部材となるクッションシートを製造するためのクッション体に、織毛布を接着する方法が記載されている。この成型器は、蒸気を、成型器の外へ拡散させ、織毛布からクッション体へ通過させる。その成型装置は、接着工程を高圧下で行うことができるように、比較的高圧に保たれた圧力チャンバ中に織毛布とクッション体とを配置しているというものである。
【0010】
ポリエチレンで成型品を製造する場合、予め膨張させたポリスチレンビーズを、中空に充填する。その後、蒸気でこのビーズを加熱する。供給された熱は、ビーズ中に存在する膨張剤に作用してそれを蒸発させ、それによってこのビーズはさらに膨張する。これによりビーズが、互いに押し付けあったり壁面を押し付けたりする圧力を惹き起こし、それによってビーズが一斉に溶融する。この工程の最後に圧力を開放し、場合により減圧すると、水は飛沫となって飛び散る。
【0011】
【特許文献1】独国特許発明第69801228T2号明細書
【特許文献2】独国特許発明第3625818C2号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19822355A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19907279A1号明細書
【特許文献5】国際公開第97/04937号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、熱可塑性バインダー含有の繊維質性主成分を含み低密度であって原材料の厚さを5〜150mmとする通気性および蒸気透過性の立体形状部材4を、それの原材料成分の実質的な変更なしに、短時間で加熱したり再冷却したりすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的は、基本的な実施態様である以下の工程により、達成される。この工程は、熱可塑性樹脂バインダーと、天然繊維および/または化学繊維と、さらに含有していても含有していなくてもよいフレーク状および/または顆粒状の泡沫状物質との混合物を含んでいる通気性および蒸気透過性の立体形状部材4を、調整および/または調製する工程であって、該立体形状部材4が、伝熱を低授受または非授受とする鋳型に挟まれ、耐圧チャンバ中、0.5〜0.01絶対バールの範囲内へ減圧する該チャンバの脱気により、表面を成形された後、蒸気の伝熱媒体により2〜10絶対バールの範囲内に加圧され、次いで0.5〜0.1絶対バールの範囲内に減圧され、結露した該伝熱媒体が蒸発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
従来技術とは著しく異なり、本発明は以下に述べるとおり、繊維および泡沫状物質と溶融可能なバインダーとで成形するために、蒸気状物質である伝熱媒体とりわけ蒸気を利用している。その本質的な特長は、加熱のための伝熱が蒸気の結露によってもたらされることである。そしてその結露液はそのまま残存し、そこで引続く工程の蒸発手段により冷却される際に利用される。
【0015】
このような原材料や工程に用いられる鋳型を最適なものにする必要がある。常温成形は、蒸気供給段階中、鋳型に伝熱して、広範囲にわたる結露を惹き起こす。過剰な結露液が立体形状部材に吸収されると、減圧するのに足るだけの短時間内だけでは、原材料から留去され得ない。
【0016】
鋳型が高温過ぎると、蒸発による冷却で内部が冷えた成形部分が、高温の鋳型の表面にくっ付いてしまう。
【0017】
そのため、本発明によれば、立体形状部材は、低い熱伝導率および/または低い熱容量を有する鋳型と接触させられるのである。これによって、この工程期間中、鋳型への伝熱および/または鋳型からの伝熱が、立体形状部材の表面の1mにつきまたこの工程の間で立体形状部材を加熱するときの1Kにつき、最大250m/sに抑えられる。
【実施例】
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様は、立体形状部材4が、少なくとも1層、とりわけ同一または異なる原材料成分からなる2層以上であるというものである。
【0019】
本発明によれば、成形用鋳型が、有孔性および/または無孔性の金属シートでできており輪郭を形づける薄いシェルと、蒸気を偏流させる隙間を有する低熱容量の蒸気不透過性固体鋳型台座とであると一層好ましい。
【0020】
本発明によれば、この金属シートが、鋳型の台座から2〜20mmの距離をおいていると、特に好ましい。または、低い熱伝導率を持つ原材料とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・プロピレン共重合体(EPDM)、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂からなる層を1〜30mmの層厚にして、鋳型台座へ押し当てて、輪郭の該成形をすることも可能である。
【0021】
前記のように本発明に用いられる鋳型を設計したことにより、成型部位で、成形した表面がほとんど熱を吸収せず、さらにほとんど結露液を生じないということを、なし得たのである。同時に、その表面は、蒸発による冷却をしている間中、持続的に冷え、鋳型からの成型部位を離型し易くする。
【0022】
本発明によれば、化学処理された固体原材料とりわけアルミニウムや鋼鉄、または化学処理された鋳造材料とりわけネズミ鋳鉄や鋳造アルミニウムでできた耐圧鋳型台座を用いると、特に好ましい。
【0023】
本発明の全実施例に用いられる適切な鋳型に共通する点は、加熱された台座によって、そこで結露があまり生じないということである。
【0024】
所望する情況に応じて、液体の伝熱媒体を選択する。本発明によれば、120〜180℃に昇温するために穴やパイプコイルを通って流れる伝熱媒体として伝熱性オイルまたは熱水を用いることが特に好ましい。
【0025】
実施例A(図1参照)のように、成形用鋳型は、腹板10a〜10gで支持された金属シートフレームに付いている二つの薄い多孔金属シート1、2からなる。成形する輪郭の裏側にある中空は、蒸気伝導のための間隙3a〜3hを除き、適当な充填材5a〜5bで塞がれている。充填材は、深くまで達した穴7a〜7kによって加熱および/または冷却できるものであってもよい。
【0026】
鋳型は、耐圧容器8、9および12中に据えつけられる。そのため、該容器中に収められた鋳型は、上型と下型とで構成されており、該容器を開放した時やその後に、鋳型を開けることができ、立体形状部材4を出し入れすることができる。
【0027】
例えば、容器は加熱プレート(不図示)上に載置される。または、その深くまで達した穴へ流れ込む伝熱媒体によって加熱される。
【0028】
密閉した容器内で、立体形状部材4は最終的な形状へ成形される。供給された蒸気は、成形する金属シート1、2の裏側の中空を経て通気性立体形状部材4へ流れ込む。そしてそれが、原材料へ流れ込み、それを透過しながら加熱する。蒸気は原材料の表面で結露する。その凝縮熱が、蒸気温度に応じ原材料温度を上昇させる。
【0029】
金属シート1、2は、熱容量が低いものである。結露液は、立体形状部材4に成形される表面上に生じることも、立体形状部材4の外側層に滲み込むことも、少ししかない。
【0030】
減圧されたとき、立体形状部材4の原材料に付着したり吸着されたりした結露液は、熱を吸収して蒸発する。そのエネルギーは蒸気から奪われる。鋳型の加熱で生じた結露液は、外側層に存在している。蒸発に必要な熱は、予め加熱された金属シート1、2から奪われる。このようにして、金属シート1、2は、腹板10a〜10gと、仕切りシート1、2と、充填材5a〜5bとからなる鋳型台座や、2〜20mmの断熱間隙が存在する近辺よりもさらに冷える。
【0031】
その結果、冷却され乾いた立体形状部材4が、容易に鋳型(シート1、2)から離型されて、得られる。
【0032】
実施例Bは、図2のとおり、本発明による成形鋳型である。この鋳型は、ブロック5a〜5fでできた複構成の鋳型5からなる。鋳型5も、外部シール6を有している。鋳型は、台座5a〜5f内にあって伝熱媒体が流れている深くまで達した穴(不図示)やパイプコイルを通じて、直接加熱されていてもよい。または、加熱された取付け板によって、間接的に加熱されてもよい。
【0033】
輪郭は、台座5a〜5fのブロックの型どおりに成形されるが、その部分で求められる寸法形状よりも、2〜20mm深い。金属シート1、2から成形され輪郭を形づけられた表面は、スペーサー10a〜10hを介してそこに貼り付けられる。二つの金属シート1、2の少なくとも一方は、有孔である。蒸気は、台座5a〜5f中の一つまたは複数の穴を通じて供給され、有孔金属シート1、2と鋳型台座5a〜5fとの間の中空3a〜3fから抜けていく。この実施例の特性は、実施例Aの特性と同じである。
【0034】
実施例Cは、図3のとおり、実施例Bと同様に鋳型台座5a、5bを用いたものである。低い熱伝導率を有する原材料11は、台座5a、5bの窪んだ輪郭に当てられる。立体形状部材4の熱可塑性樹脂も前記原材料11への低粘着性を有していることが好ましい。本発明を適用するこの実施例では、成形される表面からしっかり取り付けられた台座5a、5bへの伝熱を妨げることによって、鋳型上で結露しないということが成し遂げられる。可融性成分と成形される表面との低い粘着性の結果、より高い表面温度が許容されるので、成形工程中に鋳型5a、5b上で凝縮による結露がほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用する工程の実施例Aを示す図である。
【図2】本発明を適用する工程の別な実施例Bを示す図である。
【図3】本発明を適用する工程の別な実施例Cを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂バインダーと、天然繊維および/または化学繊維と、さらに含有していても含有していなくてもよいフレーク状および/または顆粒状の泡沫状物質との混合物を含んでいる通気性および蒸気透過性の立体形状部材(4)を、調整および/または調製する工程であって、該立体形状部材(4)が、伝熱を低授受または非授受とする鋳型に挟まれ、耐圧チャンバ中、0.5〜0.01絶対バールの範囲内へ減圧する該チャンバの脱気により、表面を成形された後、蒸気の伝熱媒体により2〜10絶対バールの範囲内に加圧され、次いで0.5〜0.1絶対バールの範囲内に減圧され、結露した該伝熱媒体が蒸発することを特徴とする工程。
【請求項2】
該立体形状部材からなるひとかたまり当たりの該伝熱が、該蒸気の伝熱媒体と、該成形された表面および/またはその工程サイクル中での台座との間で、該立体形状部材の表面の1mにつきまた該工程期間中で該立体形状部材を加熱するときの1Kにつき、250m/s未満であることを特徴とする請求項1に記載の工程。
【請求項3】
該立体形状部材(4)が、少なくとも1層、とりわけ同一または異なる原材料成分からなる2層以上であることを特徴とする請求項1に記載の工程。
【請求項4】
成形用鋳型が、有孔性および/または無孔性の金属シートでできており輪郭を形づける薄いシェルと、蒸気を偏流させる隙間を有する蒸気不透過性固体鋳型台座とであることを特徴とする請求項1または3に記載の工程。
【請求項5】
少なくとも一つの該有孔性または無孔性の金属シートが、該鋳型の台座から2〜20mm離れており、輪郭の該成形をすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の工程。
【請求項6】
低い熱伝導率を持つ原材料とりわけポリテトラフルオロエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂からなる層を1〜30mmの層厚にして、鋳型台座へ押し当てて、輪郭の該成形をすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の工程。
【請求項7】
耐圧性の鋳型台座が、化学処理された固体原材料とりわけアルミニウムまたは鋼鉄でできていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の工程。
【請求項8】
耐圧性の鋳型台座が、化学処理された鋳造材料とりわけネズミ鋳鉄または鋳造アルミニウムでできていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の工程。
【請求項9】
120〜180℃に昇温する穴(7)やパイプコイルを通って流れる該伝熱媒体が、伝熱性オイルまたは熱水であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501137(P2007−501137A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522296(P2006−522296)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008559
【国際公開番号】WO2005/016619
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506037906)クリオン アイルランド ホールディング リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Clion Ireland Holding Ltd.
【住所又は居所原語表記】1,Adelphia Quay Waterford Ireland
【Fターム(参考)】