説明

熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法

【課題】 押出機のベント部を外部から加熱する以外の方法で、ベント内部で脱揮成分が結露あるいは昇華することを抑制し、品質の優れたペレットを得ることができる熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法を提供する。【解決手段】 ベント機構を有する押出機を用いて、ベント部を使用しながら、熱可塑性樹脂と添加剤、又は熱可塑性樹脂と無機充填材と添加剤とを溶融混練してダイスから吐出する熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法において、押出機のベント部に不活性ガスを流通し、ベント部より排気口に向かって常時随伴気流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機を用いて熱可塑性樹脂と添加剤、又は熱可塑性樹脂と無機強化材と添加剤とからなる熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造する方法に関する。さらに詳しくは、押出機のベント部の脱揮成分による汚れを抑制し、酸化劣化と異物混入を極小化した品質に優れた熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の改質を目的として、熱可塑性樹脂と無機充填材や各種添加剤等を、押出機を用いて溶融混練して樹脂組成物を得る方法が広く用いられている。また、熱可塑性樹脂あるいは、その樹脂組成物を単に着色(調色)する際にも、樹脂成分と染顔料とを押出機で溶融混練するなどの対策を取られることが多い。
【0003】
例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びリン化合物からなる組成物(特許文献1)、ポリアミド樹脂とヒンダードフェノール、あるいはホスファイト類とからなる樹脂組成物(特許文献2)、ポリアミド樹脂、層状珪酸塩及びホスファイト化合物からなる組成物(特許文献3)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩基性無機充填材及びホスファイト化合物からなる組成物(特許文献4)、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール及び離型剤からなる組成物(特許文献5)など多数提案されている。
【0004】
押出機を用いて熱可塑性樹脂などを溶融混練する際には、ダイスからの樹脂組成物の吐出の安定化、加水分解抑制目的で水分子、あるいは物性や外観の改良目的で低分子量化合物を脱揮するために、ベント機構を備えた押出機を使用することが多い。押出機のベント部の目的は低分子量成分の脱揮であるが、樹脂組成物から脱揮された成分がベント部で結露あるいは昇華するため、ベント部は非常に汚れやすい環境にある。
【0005】
このような押出機のベント部は樹脂が直接濡れないため、汚れても常時クリーニングされることがなく、作為的に掃除をしなくてはならないが、ベント部を真空減圧しながらの連続生産中の掃除はほぼ不可能である。そのため、結露あるいは昇華した物質は長時間ベント部に留まって、酸化あるいは熱劣化により変色し、それが樹脂中に滴下するなどして、樹脂組成物の色調を悪化する現象が発生する。これらの現象は、熱可塑性樹脂に含まれる揮発成分のみならず、改質を目的として配合される添加剤自体、あるいはその分解物も脱揮される場合があり、特に有機リン系化合物を用いる場合は、熱劣化によって黒化しやすいため、ベント部の汚れが著しくなることが多い。
【0006】
とりわけ、真空型のベントの場合には、真空排気する配管等が昇華物によって閉塞してベント部の真空度が低下し、得られる樹脂組成物の品質が低下する現象が発生する。
【0007】
樹脂成分中から脱揮される低分子量成分が、ベント部で結露あるいは昇華するのは押出機のシリンダー内部とベント部とで温度が異なっていることが主原因で、すなわち高温の樹脂成分から真空下で脱揮された低分子化合物がベント部まで流れてきたところで、ベント内壁部で冷やされて液化あるいは固化するためである。
【0008】
シリンダー部にはヒータが備え付けられ、内部を加熱することができるが、一方のベント部には、通常はヒータが設置されておらず、そのためベント部の温度は、接触しているシリンダーからの熱伝導と内部を流通する気体からの伝熱によるだけであり、シリンダーよりも低温になっている。
【0009】
したがって、ベント部にもヒータを設置すれば、シリンダーと同等の温度まで加熱することが可能となるが、ベント部の形状が複雑でスペース上の問題や、製造する銘柄変更時の機台清掃などでベント部を解体する作業が煩雑になるため実用的ではない。また、ベント部の一部分だけを加熱することで、これらの問題を回避しようとすると、ベント部の加熱が不十分となりやすい。このように、ベント部の加熱という対処には種々問題がある。
【特許文献1】特開2000−327892号公報
【特許文献2】特開2004−43567号公報
【特許文献3】特開2002−88239号公報
【特許文献4】特開2004−359913号公報
【特許文献5】特開2003−268223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決し、押出機のベント部を外部から加熱する以外の方法で、ベント内部で脱揮成分が結露あるいは昇華することを抑制し、品質の優れたペレットを得ることができる熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、押出機のベント部での気化した揮発成分の滞留時間を極力短くし、かつ、この揮発成分の分圧を低くすることで、押出機のシリンダーよりもベント部の方が低温であっても揮発成分の結露や昇華が抑制されることを見出した。具体的には、ベント部に不活性ガスをキャリアガスとして流通させることで、ベント部から揮発成分が液化あるいは固化することなく排出されることを見出して本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)ベント機構を有する押出機を用いて、ベント部を使用しながら、熱可塑性樹脂と添加剤、又は熱可塑性樹脂と無機充填材と添加剤とを溶融混練してダイスから吐出する熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法において、押出機のベント部に不活性ガスを流通し、ベント部より排気口に向かって常時随伴気流を発生させることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
(2)不活性ガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等の希ガス類や、窒素、二酸化炭素、あるいは反応性の低いメタン、エタン、プロパン等の飽和炭化水素類から選ばれたものであることを特徴とする上記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
(3)不活性ガスの0℃、大気圧の状態に換算した1分あたりの体積流量F(Nl/min)と押出機ベント部の内容積V(l)との比率F/Vが0.5以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
(4)不活性ガスの圧力が大気圧以上、温度が常温以上で、押出機内の樹脂成分の温度以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
(5)添加剤が、大気圧における融点もしくは昇華温度が60〜250℃の範囲にある有機化合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
(6)添加剤が有機リン系化合物であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押出機のベント部を外部から加熱することなく、ベント部に不活性ガスを流通し、ベント部より排気口に向かって常時随伴気流を発生させることで、ベント内部で脱揮成分が結露したり昇華することを抑制することができ、それらの劣化物が組成物に混入するのが抑制されるので、品質の優れた熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造することが可能となり、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明において使用する熱可塑性樹脂とは、溶融押出機によってペレット化することのできる熱可塑性樹脂であり、例えばポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマ等)、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン系共重合体等が例示される。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、機械的特性を損なわない範囲で複数のものの混合物であってもよい。熱可塑性樹脂の形状は、特に制限がなく、粉体状、ペレット状、フレーク状等、任意の形状のものを使用できる。
【0016】
また、添加剤としては、滑剤、核剤、可塑剤、増粘剤、難燃剤、加工安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、表面処理剤、架橋剤、カップリング剤、及び摺動性改善のためのポリテトラフルオロエチレン、衝撃性向上のためのゴム状樹脂等、熱可塑性樹脂と混練されうるすべての添加剤が例示される。
【0017】
上記した添加剤は、ポリテトラフルオロエチレンやゴム状樹脂以外のものは、一般に低分子量の有機化合物であり、その融点はあまり高いものではなく、あるいは物質によっては融解せずに昇華するものも多い。特に、真空下では沸点が低下するため、押出機で熱可塑性樹脂と溶融混練される際に真空ベントによって脱揮される。このように真空ベントによって脱揮されうる添加剤は、溶融混練する温度が熱可塑性樹脂の種類によって異なるため一概には言えないが、大気圧における融点あるいは昇華温度が60〜250℃の範囲にあるものであり、それらは後述するようにベント部で結露あるいは昇華するため、本発明の適用が有効である。
【0018】
また、上記添加剤の中で、酸化防止剤や難燃剤に用いられることが多い有機リン化合物は、熱劣化によって黒化しやすいため、本発明の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法が有効に使用できる。
【0019】
次に、無機充填材としては、ウィスカ、フィブリッド、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、チタン繊維等の繊維状強化材料、スメクタイト系鉱物、バーキュライト系鉱物、雲母系鉱物、脆雲母系鉱物、緑泥石系鉱物、グラファイト等の板状あるいは層状強化材料のほか、タルク、クレー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック等が例示される。
【0020】
本発明に用いられる押出機としては、熱可塑性樹脂を溶融さらには混練して押出しできるもので、溶融混練時に原料樹脂に含まれる揮発成分を除去するための脱揮機構(ベント部)を有しているものであれば特に制限はないが、複数種類の熱可塑性樹脂を混練する場合や無機充填材を分散する場合等には、二軸押出機を用いることが好ましく、スクリューの回転方向が同方向であるものが品質の優れた樹脂組成物が得られるためより好ましい。
【0021】
また、押出機1台あたりのベント部の数に特に制限はないが、特に二軸押出機の場合には熱可塑性樹脂の混練段数に応じて変更することが好ましく、1〜3段のベント数のものが好適に用いられる。原料成分に含まれるものや溶融混練により発生する揮発成分を除去するためには、ベント部は大気圧よりも減圧することが好ましく、特にエステル結合を主鎖に有する熱可塑性樹脂を用いる場合は、加水分解による低分子量化を防ぐために高真空にすることが好ましい。
【0022】
前記のように押出機のベント部の目的は低分子量成分の脱揮であるが、押出機内の樹脂組成物から脱揮された成分がベント部の内壁で結露あるいは昇華するため、ベント部は非常に汚れやすい環境にある。これらの物質は長時間ベント部に留まるために熱劣化しやすく、それが樹脂中に滴下あるいは脱落して、樹脂組成物の品質を悪化する場合がある。また、ベント部から真空排気する配管等を昇華物が閉塞して、ベント部を実質真空下に維持できなくなって、品質の良好な樹脂組成物が得られない場合もある。
【0023】
上記の問題を解決するために、本発明の骨子は、ベント部、好ましくは真空型のベント部に不活性ガスを流通させ、ベント部より排気口に向かって常時随伴気流を発生させることにある。すなわち、不活性ガスを流通するとベント部に常時随伴気流が発生するため、気化した揮発成分も随伴気流によって直ちにベント部から除去されること、及び、脱揮された成分の分圧を下げることにより、ベント部や真空排気する配管等での結露や昇華を抑制することができ、これらの劣化物が組成物に混入するのが低減するので、熱可塑性樹脂の品質低下を防止することが可能となる。
【0024】
ベント部の形状は、不活性ガスが流入されるものであれば特に限定されるものではないが、押出機バレル内を貫通するスクリュー近辺とベント部の真空排気の配管を接続する部分の間に流入口を設けることが、ベント内部に発生する気流の方向が押出機内部から真空排気系に向かうものとなるため好ましい。
【0025】
図1は、本発明で使用する押出機のベント部の一実施態様を示す概略断面図である。図1において、不活性ガスは、ベント部の蓋2を貫通して設けた不活性ガス導入管3からベントの内部に供給され、常時随伴気流となって真空排気口4から排出される。その際、押出機内の樹脂組成物から脱揮された成分は、この随伴気流とともに真空排気口4から排出され、ベント部の内壁で結露することがない。図中、1はベント部本体、5は押出機のバレル、6は押出機のスクリューである。
【0026】
ベント部を真空に減圧しない、いわゆるオープン型のベントの場合には、樹脂組成物からの低分子量成分は真空ベントの場合ほど脱揮されないが、押出機のベント内部のみならずバレル内の樹脂も空気と接触し、酸素による酸化が発生する。それを防止するために、オープン型のベントの場合にも、不活性ガスを流通することが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる不活性ガスとは、熱可塑性樹脂や添加剤に作用しない低分子量物質であり、具体的にはヘリウムやネオン、アルゴン、クリプトン等の希ガス類や、窒素、二酸化炭素、あるいは反応性の低いメタン、エタン、プロパン等の飽和炭化水素類が挙げられる。さらには、加水分解による低分子量化が起こらないポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の場合は、水蒸気も使用することができる。これらの中で、安全性や利便性の点から窒素が最も好適に用いることができる。
【0028】
押出機のベント部に流通する不活性ガスの流量は多い方が、ベント部や真空排気系統の汚れや閉塞が発生し難くなるが、流量が多すぎると、ベント部を真空減圧している場合は真空度が悪化するため、ベント部本来の目的である脱揮能力が低下するためよくない。したがって、不活性ガスの流量はベント部の真空度を著しく損なわない程度に適宜調節することが好ましい。具体的には、0℃、大気圧の状態に換算した1分あたりの体積流量F(Nl/min)と押出機ベント部の内容積V(l)との比率F/Vが0.5以上とすることが好ましく、1.0〜10.0の範囲とすることがより好ましい。F/Vが0.5未満になると、不活性ガスの流量が少なくベント内部での不活性ガスの滞留時間が長くなって十分な効果が得られない場合があり、逆に大きすぎると十分な真空度を達成できなくなるか、真空到達度を低くするために大型の真空排気装置が必要となってしまい、実用的でない場合がある。
【0029】
押出機のベント部に流通する不活性ガスは、圧力が大気圧以上、ゲージ圧力で1.0MPa以下とすることが好ましい。一方、不活性ガスの圧力が大気圧より低いと、配管の継ぎ手などから空気が混入するようになって、押出機内で樹脂成分の酸化劣化を引き起こす場合があり、好ましくない。
【0030】
不活性ガスの温度は常温以上で、押出機内の樹脂成分の温度以下とすることが好ましい。不活性ガスの温度が低すぎるとベント部が冷却され、脱揮された成分の結露あるいは昇華が発生しやすくなり、逆に高温すぎるとベント部近傍で滞留する樹脂成分を熱劣化させてしまう場合があるため好ましくない。
【0031】
押出機への熱可塑性樹脂や添加剤、無機充填材の供給は、最も基部側に供給するのが通常であるが、原料成分を順次供給して混練するため、あるいは繊維状あるいは板状強化材の損壊を防ぐために、押出機の途中にサイドフィーダを1段乃至は数段設け、原料成分の一部あるいは特定成分の全部をそこから供給してもよい。さらには、押出機の途中に設けた注入機構から液体成分を供給してもよい。
【0032】
本発明において、押出機の押出温度は、熱可塑性樹脂が溶融する温度であれば特に限定されるものではないが、極力低くした方が得られる樹脂組成物の色調の黄変が抑制されやいため好ましい。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた原料と、押出機のベント部形状は次の通りである。
1.使用原料
(1)ポリアミド6
ユニチカ社製ナイロン樹脂A1030BRL:以下、「PA」と称する。
(2)ポリアリレート
ユニチカ社製UポリマーD−パウダー。以下、「PAR」と称する。
(3)ポリカーボネート
住友ダウ社製カリバー200-3。以下、「PC」と称する。
(4)熱安定剤
旭電化社製アデカスタブPEP-24G(融点170℃)
(5)離型剤
日本精蝋社製LUVAX1266(融点69℃)
(6)ガラス繊維
日本電気硝子社製チョップドストランドT-289。以下、「GF」と称する。
2.押出機のベント部形状
図1に示すように、ベント部の蓋2に不活性ガス導入管3を設けた真空型のものを使用した。不活性ガス導入管3の先端は、押出機スクリュー6の上部と真空排気口4との間の中間に位置するものとした。

(実施例1)
PA100質量部と熱安定剤PEP-24G 0.5質量部とを均一混合した後、クボタ社製ロスインウェイト式二軸スクリュー計量機CE-W-1を用いて、東芝機械社製二軸押出機TEM-37BSの主供給口に供給した。この二軸押出機には、ダイス部手前1箇所のみに概算の内容積が1lのベント部が設けられており、そこに真空に減圧しながら不活性ガスの導入管から窒素ガス(圧力0.3MPa、温度25℃)を1Nl/min(F/V=1)の流量で流通させた。

スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/h、バレル温度設定250℃で溶融混練を行ない、ダイオリフィスからストランド状に引き取った樹脂組成物を水浴を通して冷却固化し、樹脂組成物のペレットを得た。押出しを1時間続けたが、途中ベント部の真空度は終始ゲージ圧力-0.098MPaを維持していた。その後、原料の供給装置を止め、押出機を停止してベント内部の状態を確認したところ、内壁には昇華物が見られず、乾いた状態であった。
【0034】
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製射出成形機IS80Gを用いてシリンダー温度250℃で成形し、厚さ1mmの見本板を作製し、色調測定装置(日本電色製SE-2000)を使用してイエローインデックスを測定したところ、16.9であった。

(実施例2)
PAR69質量部、PC29質量部及び離型剤LUVAX1266:2質量部とを使用し、バレル温度設定を320℃とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。押出しを1時間続けた時の真空度はゲージ圧力-0.098MPaを維持し、押出機を停止後、ベント内部の状態を確認したところ、内壁には昇華物が見られず、乾いた状態であった。
【0035】
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製射出成形機IS80Gを用いてシリンダー温度320℃で成形し、厚さ3mmの見本板を作製し、色調測定装置(日本電色製SE-2000)を使用してイエローインデックスを測定したところ、11.2であった。

(実施例3)
PA85質量部と熱安定剤PEP-24G0.5質量部とを均一混合したもの、及びGF15質量部とを別々のクボタ社製ロスインウェイト式二軸スクリュー計量機CE-W-1を用いて、それぞれを東芝機械社製二軸押出機TEM-37BSの主供給口及びサイドフィーダーに供給した。この二軸押出機には、ダイス部手前とサイドフィーダー手前の2箇所に、概算の内容積が1lのベント部が設けられており、それぞれを真空に減圧しながら不活性ガス導入管から窒素ガス(圧力0.3MPa、温度25℃)を各1Nl/min(F/V=1)の流量で流通した。

スクリュー回転数200rpm、総吐出量15kg/h、バレル温度設定250℃で溶融混練を行ない、ダイオリフィスからストランド状に引き取った樹脂組成物を水浴を通して冷却固化し、樹脂組成物のペレットを得た。押出しを1時間続けたが、途中ベントの真空度は終始ゲージ圧力-0.098MPaを維持していた。その後、原料の供給装置を止め、押出機を停止してベント内部の状態を確認したところ、内壁には昇華物が見られず、乾いた状態であった。
【0036】
実施例1と同様にしてイエローインデックスを測定したところ、17.3であった。

(比較例1)
PA100質量部と熱安定剤PEP-24G 0.5質量部とを使用し、窒素ガスをベント部に流通しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。押出しを開始してから40分後、真空度はゲージ圧力-0.098MPaを維持していたが、茶色く変色したストランドが突然発生した。押出機を停止後、ベント内部の状態を確認したところ、内壁には黒色の液体が付着していた。
【0037】
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製射出成形機IS80Gを用いてシリンダー温度250℃で成形し、厚さ1mmの見本板を作製し、色調測定装置(日本電色製SE-2000)を使用してイエローインデックスを測定したところ、23.5であった。

(比較例2)
PAR69質量部、PC29質量部及び離型剤LUVAX1266:2質量部とを使用し、窒素ガスをベント部に流通しなかった以外は実施例2と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。押出しを開始してから30分後、真空度がゲージ圧力-0.05MPaまで低下し、ストランドが白く発泡した状態となった。押出機を停止後、ベント内部の状態を確認したところ、内壁に白色の昇華物が付着しており、さらに、真空排気配管はほとんど白色固形物で閉塞していた。
【0038】
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製射出成形機IS80Gを用いてシリンダー温度320℃で成形し、厚さ3mmの見本板を作製し、色調測定装置(日本電色製SE-2000)を使用してイエローインデックスを測定したところ、13.3であった。

(比較例3)
PA85質量部、熱安定剤PEP-24G 0.5質量部及びGF15質量部とを使用し、窒素ガスをベント部に流通しなかった以外は実施例3と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。押出しを開始してから、終始真空度はゲージ圧力-0.098MPaを維持していたが、開始30分以降はストランドの色調が若干に茶色く変色した。押出機を停止後、ベント内部の状態を確認したところ、2箇所とも内壁には黒色の液体が付着していた。
【0039】
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製射出成形機IS80Gを用いてシリンダー温度250℃で成形し、厚さ1mmの見本板を作製し、色調測定装置(日本電色製SE-2000)を使用してイエローインデックスを測定したところ、28.9であった。

(比較例4)
PA100質量部と熱安定剤PEP-24G0.5質量部とを使用し、ベント部を真空に減圧しながら空気(圧力0.2MPa、温度25℃)を1Nl/min(F/V=1)の流量で流通した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。押出し開始時からストランドに黄色が見られた。また、押出しを1時間続けたが、途中ベントの真空度は終始ゲージ圧力-0.098MPaを維持していた。その後、原料の供給装置を止め、押出機を停止してベント内部の状態を確認したところ、内壁には昇華物が見られず、乾いた状態であった。
【0040】
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製射出成形機IS80Gを用いてシリンダー温度250℃で成形し、厚さ1mmの見本板を作製し、色調測定装置(日本電色製SE-2000)を使用してイエローインデックスを測定したところ、19.6であった。

上記した実施例1〜3と対応する比較例1〜3との違いは、ベント部への窒素ガス供給の有無であるが、ベント部に窒素ガスを供給した実施例1〜3で得られた見本板のイエローインデックスは、いずれも対応する比較例1〜3のものより値が小さく、黄変が少ないものであった。また、実施例1と比較例4との違いは、ベント部に供給するガスが異なる点であるが、窒素ガスを供給した実施例1で得られた見本板のイエローインデックスは、空気を供給した比較例4のものより値が小さく、黄変が少ないものであった。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】

【図1】本発明で使用する押出機のベント部の一実施態様を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】

1 ベント部本体
2 ベント部の蓋
3 不活性ガス導入管
4 真空排気口
5 押出機のバレル
6 押出機のスクリュー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベント機構を有する押出機を用いて、ベント部を使用しながら、熱可塑性樹脂と添加剤、又は熱可塑性樹脂と無機充填材と添加剤とを溶融混練してダイスから吐出する熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法において、押出機のベント部に不活性ガスを流通し、ベント部より排気口に向かって常時随伴気流を発生させることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項2】
不活性ガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等の希ガス類や、窒素、二酸化炭素、あるいは反応性の低いメタン、エタン、プロパン等の飽和炭化水素類から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項3】
不活性ガスの0℃、大気圧の状態に換算した1分あたりの体積流量F(Nl/min)と押出機ベント部の内容積V(l)との比率F/Vが0.5以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項4】
不活性ガスの圧力が大気圧以上、温度が常温以上で、押出機内の樹脂成分の温度以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項5】
添加剤が、大気圧における融点もしくは昇華温度が60〜250℃の範囲にある有機化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項6】
添加剤が有機リン系化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−36942(P2008−36942A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213333(P2006−213333)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】