説明

熱拡散部材

【課題】発熱体からの熱拡散の用途において、より好適に使用可能な熱拡散部材を提供する。
【解決手段】熱拡散部材11は、発熱体上に設けられるグラファイトシート12と、グラファイトシート12を覆う保護層13と、グラファイトシート12上に設けられるコネクタ14とを備えている。コネクタ14は、弾性を有するとともにグラファイトシート12に電気的に接触する導電部32を備えている。導電部32はグラファイトシート12上に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路の集積回路等の発熱体から発生する熱の拡散に用いられる熱拡散部材に関する。
【背景技術】
【0002】
グラファイトシートはその表面に平行な方向、すなわち面内方向に沿って優れた熱伝導性を有しており、熱伝導材又は熱拡散材として用いられている。このグラファイトシートは高い導電性も有している。高い導電性を有する部材については、以下のことが知られている。即ち、高い導電性を有する部材は一般に、電磁波を受けてアンテナとして作用する。その結果、高い導電性を有する部材に電圧が発生してノイズが発生する。
【0003】
そのため、発熱体としての、例えば電子回路の集積回路(IC)からの熱の拡散にグラファイトシートが用いられた場合、特定のICから発生した電磁波を受けたグラファイトシートがノイズの発生源として作用し、電子回路が誤動作を起こすことがある。このようなノイズの発生は、導電性を有するグラファイトシートが電子回路から電気的に孤立している状態で起きる。このため、ノイズの発生を防止するために、グラファイトシートが電子回路のグランドに電気的に接続されている。
【0004】
特許文献1には、図15に示すように、電子回路の発熱体111上に設けられるグラファイトシート112と、該グラファイトシート112上に積層される金属層113とを備える積層体114が開示されている。この積層体114には、電気絶縁性を有するラミネート材115がラミネートされている。積層体114を電子回路のグランド116に電気的に接続するために、積層体114には、金属製のねじ等からなる導電部材117が設けられている。この導電部材117は、積層体114が発熱体111に取り付けられる際に、積層体114の上方から金属層113及びグラファイトシート112を貫通し、グランド116を有する電子回路基板118に取り付けられる。これにより、導電部材117はグラファイトシート112とグランド116とを電気的に接続する。ラミネート材115において発熱体111に対向する箇所は切り欠かれており、グラファイトシート112が露出している。グラファイトシート112において露出した箇所には、発熱体111に対向するシート状の熱伝導体119が設けられている。
【0005】
グラファイトシートでは、該グラファイトシートの熱伝導性を高めるために黒鉛が高度に配向されている。グラファイトシートには黒鉛同士を繋ぐバインダーが含まれていなかったり、たとえバインダーがグラファイトシートに含まれていても該バインダーの含有量は微量であったりすることから、グラファイトシートは非常に脆い。そのため、特許文献1に記載されている積層体114には以下の問題があった。即ち、この積層体114では、導電部材117の基板118への取り付けの際にグラファイトシート112と金属層113との間に応力が加わってグラファイトシート112が破損し易い。破損したグラファイトシート112の破片は電子回路上に飛散し、該回路から電流がリークしたり該回路がショートしたりする。
【特許文献1】特開2004−23066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、発熱体からの熱拡散の用途において、より好適に使用可能な熱拡散部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、発熱体上に設けられるグラファイトシートと、前記グラファイトシートを覆う保護層と、前記グラファイトシート上に設けられるコネクタとを備える熱拡散部材であって、前記コネクタは、弾性を有するとともに前記グラファイトシートに電気的に接触する導電部を備え、前記導電部はグラファイトシート上に位置している熱拡散部材を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記保護層は、前記グラファイトシート上に積層される金属層を備え、前記導電部は金属層上に位置しており、該金属層を介してグラファイトシートに電気的に接触している請求項1に記載の熱拡散部材を提供する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記金属層は、グラファイトシートにおいて少なくとも発熱体及び導電部に対応する箇所に設けられている請求項2に記載の熱拡散部材を提供する。
請求項4に記載の発明は、前記金属層は銅系金属から形成されている請求項2又は請求項3に記載の熱拡散部材を提供する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記保護層は、グラファイトシート及び金属層を覆う樹脂層を更に備え、該樹脂層は電気絶縁性を有する請求項4に記載の熱拡散部材を提供する。
請求項6に記載の発明は、前記保護層は、グラファイトシートと、金属層の一部とを覆う樹脂層を更に備え、該樹脂層は電気絶縁性を有する請求項2又は請求項3に記載の熱拡散部材を提供する。
【0011】
請求項7に記載の発明は、前記発熱体は電子機器の筐体内に設けられ、前記保護層の少なくとも一部が前記筐体で構成されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の熱拡散部材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱体からの熱拡散の用途において、より好適に使用可能な熱拡散部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明を熱拡散部材に具体化した第1実施形態を図1(a)〜図3に基づいて説明する。図2に示すように、電子機器の筐体51内には樹脂製の電子回路基板52が配置されており、該基板52の表面には電子回路が形成されている。この電子回路には発熱体53、例えばICが接続されているとともに、該電子回路から延びるアース回路54が形成されている。
【0014】
図1(a)に示すように、熱拡散部材11はシート状に形成され、グラファイトシート12と、該グラファイトシート12全体を覆う保護層13と、グラファイトシート12上に配設されたコネクタ14とを備えている。グラファイトシート12では複数の黒鉛層が互いに積層されており、該シート12は、その表面に平行な方向、即ち面内方向における良好な熱伝導率、具体的には200〜1000W/m・Kの熱伝導率を有している。そのため、グラファイトシート12は、熱拡散部材11が発熱体53に取り付けられた際に該発熱体53からグラファイトシート12に伝導された熱を面内方向に沿って拡散させ、発熱体53の過剰な温度上昇を抑制する。グラファイトシート12の製法は特に限定されず、該シート12は例えば天然黒鉛から製造されたり合成黒鉛から製造されたりする。
【0015】
グラファイトシート12の厚さは、好ましくは25〜300μmであり、より好ましくは50〜150μmである。グラファイトシート12の厚さが25μm未満の場合、該グラファイトシート12の熱拡散性が十分に発揮されないおそれがある。グラファイトシート12の厚さが300μmを越えると、熱拡散部材11が過剰に厚くなる。そのため、小型化及び薄型化が求められている電子機器に熱拡散部材11を用いることができなくなるおそれがある。
【0016】
保護層13は、グラファイトシート12上に積層される金属層21と、グラファイトシート12全体を覆う樹脂層22とを備えている。金属層21は、グラファイトシート12においてコネクタ14に対応する箇所に積層されており、グラファイトシート12とコネクタ14とを電気的に接続するとともにグラファイトシート12を保護する。金属層21の材質として、好ましくは低抵抗の金属が挙げられ、具体的にはアルミニウム系金属、銅系金属、及びステンレスが挙げられる。アルミニウム系金属としてアルミニウム単体及びアルミニウム合金が挙げられ、銅系金属として銅単体及び銅合金が挙げられる。本実施形態に係る金属層21は銅系金属により形成されている。
【0017】
金属層21の厚さは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜50μmである。金属層21の厚さが1μm未満の場合、該金属層21が過剰に薄いことからグラファイトシート12を例えば衝撃から十分に保護することができない。金属層21の厚さが100μmを越えると、熱拡散部材11が過剰に厚くなる。そのため、小型化及び薄型化が求められている電子機器に熱拡散部材11を用いることができなくなるおそれがある。金属層21の厚さを5〜50μmに設定することにより、グラファイトシート12を十分に保護することができるとともに熱拡散部材11を薄く形成することができる。
【0018】
樹脂層22は電気絶縁性を有する樹脂により形成されており、電気絶縁性を有している。電気絶縁性を有する樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性ゴムが挙げられる。熱可塑性樹脂として、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、及びこれらの内の少なくとも2種の複合樹脂が挙げられる。
【0019】
熱硬化性樹脂として、例えばポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、及びシリコーン樹脂が挙げられる。熱可塑性エラストマーとして、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ化系熱可塑性エラストマー、及びイオン架橋系熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱硬化性ゴムとして、例えばシリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、及びウレタンゴムが挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る樹脂層22は、一対のシート状を有する第1樹脂層22a及び第2樹脂層22bから構成されており、グラファイトシート12及び金属層21は第1樹脂層22a及び第2樹脂層22bによって挟まれている。第1樹脂層22aは、熱拡散部材11が発熱体53に取り付けられた際に該発熱体53上に位置する。即ち、発熱体53から発生した熱は第1樹脂層22aを介してグラファイトシート12に伝導される。そのため、第1樹脂層22aにおいて発熱体53に対応する箇所の厚さは、好ましくは2〜50μmであり、より好ましくは5〜25μmである。第1樹脂層22aにおいて発熱体53に対応する箇所の厚さが2μm未満の場合には、第1樹脂層22aがグラファイトシート12を例えば衝撃から十分に保護することできなかったり、発熱体53から第1樹脂層22aを介してグラファイトシートに電流が流れてリークしたりするおそれがある。第1樹脂層22aにおいて発熱体53に対応する箇所の厚さが50μmを越えると、発熱体53からグラファイトシート12に熱が効率的に伝導されない。第1樹脂層22aにおいて発熱体53に対応する箇所の厚さを5〜25μmの範囲に設定することにより、グラファイトシート12を十分に保護することができるとともに発熱体53からグラファイトシート12に効率的に熱を伝導させることができる。
【0021】
第1樹脂層22aにおいて発熱体53に対応する箇所以外の箇所の厚さ、及び第2樹脂層22bの厚さの下限は特に限定されず、例えば50μmでもよい。第1樹脂層22aにおいて発熱体53に対応する箇所以外の箇所の厚さ、及び第2樹脂層22bの厚さの上限は、好ましくは150μmである。これらの上限が150μmを超えると、各樹脂層22a、22bの製造コストが増加するおそれがある。更に、熱拡散部材11が過剰に厚くなることから、小型化及び薄型化が求められている電子機器に熱拡散部材11を用いることができなくなるおそれがある。
【0022】
コネクタ14は、グラファイトシート12において前記アース回路54に対応する箇所に配設されている。コネクタ14は、円板状の本体31と、該本体31の中央に形成されている円柱状の導電部32とを備えている。本体31はゴム状弾性体で構成されており、該ゴム状弾性体に起因して弾性を有するとともに電気絶縁性を有している。コネクタ14は、熱拡散部材11が発熱体53に取り付けられる際にアース回路54に圧接される。
【0023】
ゴム状弾性体の材質として、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ化系熱可塑性エラストマー、及びイオン架橋系熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、優れた電気絶縁性及び耐候性を発揮することから、好ましくはシリコーンゴムである。
【0024】
本体31の外周面には、例えばその全周にわたって嵌合溝33が形成されている。第1樹脂層22aにおいてコネクタ14に対応する箇所には円孔23が形成されており、該円孔23に本体31が嵌挿されているとともに前記嵌合溝33に第1樹脂層22aが嵌合されている。この嵌合によって、コネクタ14の熱拡散部材11からの脱落が防止されている。本体31のグラファイトシート12に対向する表面およびアース回路54に対向する表面において導電部32に対応する箇所には、該導電部32の外径よりも大きい外径を有する円板状の突部34が形成されている。
【0025】
導電部32は本体31を貫通しており、コネクタ14がアース回路54に圧接された際に、金属層21を介してアース回路54とグラファイトシート12とを電気的に接続する。導電部32の一対の端部は前記突部34内に位置しており、導電部32の一対の端面は本体31から露出している。導電部32の各端面において金属層21に対向する端面は該金属層21と接触している。図1(b)に示すように、導電部32は、前記ゴム状弾性体35中に粒子状の磁性導電体36の粒子が分散されて形成されている。本実施形態に係る導電部32では、磁性導電体36の粒子同士が互いに接触した状態で、本体31の厚さ方向に連なって配向されている。
【0026】
日本工業規格であるJIS K6253に従って測定されるゴム状弾性体35の硬度は、好ましくはA10〜80であり、より好ましくはA30〜50である。ゴム状弾性体の硬度がA10未満の場合には、コネクタ14の機械的強度が低下して耐久性が悪化するおそれがある。これは、導電部32を構成するゴム状弾性体35の柔軟性が過剰に高いことから、コネクタ14の繰り返しの使用に伴いゴム状弾性体35中の磁性導電体36の粒子が移動して該粒子の配向が乱れることによるものと推察される。ゴム状弾性体の硬度がA80を超えると、コネクタ14のアース回路54への圧接に要する荷重が大きくなり、大きな加重によってグラファイトシート12が破損するおそれがある。
【0027】
磁性導電体36の材質として、例えばニッケル、コバルド、及び鉄が挙げられる。また、磁性導電体36として、表面に良好な導電性を発揮する金属がめっきされた、強磁性体からなる粒子が用いられてもよいし、表面に磁性及び導電性を有する層が被覆された、導電性を有する粒子が用いられてもよい。強磁性体として、例えばニッケル、コバルト、鉄、及びフェライトが挙げられる。これらの中でも、良好な導電性および常温(25℃)で安定である金属、例えば金又は銀が表面にめっきされた強磁性体の粒子が好ましい。導電部32の一対の端面の間の電気抵抗値は、好ましくは1Ω以下である。
【0028】
熱拡散部材11は、グラファイトシート12を準備する工程と、該グラファイトシート12上に金属層21を積層する工程と、金属層21上にコネクタ14を配設するとともに各樹脂層22a、22bによってグラファイトシート12を覆う工程とを経て製造される。
【0029】
グラファイトシート12上に金属層21を積層する工程では、例えば金属層21においてグラファイトシート12に対向する表面に粘着層が積層された後に該粘着層によって金属層21がグラファイトシート12に貼付されたり、蒸着、スパッタリング等によってグラファイトシート12上に金属層21が直接形成されたりする。
【0030】
金属層21上にコネクタ14を配設するとともに各樹脂層22a、22bによってグラファイトシート12を覆う工程では、まずシート状の各樹脂層22a、22bが形成される。次いで、コネクタ14が製造される。コネクタ14は、該コネクタ14の原料組成物を調製する工程、該原料組成物を型内に充填する工程、磁性導電体36を配向させる工程、及びコネクタ14を成形する工程を経て製造される。
【0031】
コネクタ14の原料組成物を調製する工程では、公知の方法により、ゴム状弾性体35を形成する液状高分子と、磁性導電体36とが適宜に混合されて原料組成物が調製される。原料組成物を型内に充填する工程では、調製された原料組成物が、非磁性体からなる型内に充填される。非磁性体として、例えばアルミニウムが挙げられる。この型は、コネクタ14に対応するキャビティを有しているとともに、導電部32に対応する個所に磁性体を備えている。この型内には、原料組成物の充填前に第1樹脂層22aが配置される。
【0032】
磁性導電体36を配向させる工程では、磁性体によって型内の原料組成物に磁場が印加される。このとき、型内に充填された原料組成物中の磁性導電体36は、型内において磁性体に対応する個所、即ち導電部32に対応する個所に集まるとともに配向される。図1(b)に示すように、本実施形態では、磁性導電体36の粒子同士が互いに接触した状態で、磁性導電体36の粒子が本体31の厚さ方向に沿って連なって配向される。コネクタ14を成形する工程では、例えば加熱によって液状高分子を硬化させてゴム状弾性体35を形成することによりコネクタ14が成形される。このとき、液状高分子は、磁性導電体36の配向が維持された状態で硬化される。また、型内に第1樹脂層22aが配置されていることから、該第1樹脂層22aが本体31の嵌合溝33に嵌合された状態でコネクタ14が成形され、第1樹脂層22aとコネクタ14とが一体に成形される。そのため、本実施形態に係る製造方法に用いられる第1樹脂層22aの材質は、低価格であるとともに十分な耐熱性を有することからポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、または特に良好な耐熱性を有することからポリイミド樹脂が好ましい。
【0033】
そして、コネクタ14を有する第1樹脂層22aと、第2樹脂層22bとによりグラファイトシート12及び金属層21が挟まれて熱拡散部材11が形成される。このとき、グラファイトシート12及び金属層21の全体が樹脂層22に覆われており、外部に露出していない。
【0034】
熱拡散部材11を発熱体53に取り付ける際には、図2に示すように、例えば筐体51において発熱体53及びアース回路54に対向する箇所に、粘着層55を用いて熱拡散部材11が貼付される。次いで、筐体51と電子回路基板52とを近接させることにより、熱拡散部材11が発熱体53及びアース回路54上に載置される。このとき、図3に示すように、第1樹脂層22aが発熱体53に対向するとともにコネクタ14がアース回路54に対向している。更に、コネクタ14の導電部32はアース回路54に圧接し、グラファイトシート12に向かって押圧される。そのため、導電部32はアース回路54及び金属層21によって圧縮される。導電部32の圧縮率は例えば10〜30%である。このとき、導電部32の一対の端面はアース回路54及び金属層21に接触しており、グラファイトシート12及びアース回路54は、金属層21及び導電部32を介して電気的に接続される。
【0035】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態に係る熱拡散部材11は、グラファイトシート12と、ゴム状弾性体35に起因する弾性を有する導電部32とを備えている。導電部32はグラファイトシート12上に位置しており、該グラファイトシート12を貫通したり導電部32の一端部がグラファイトシート12内に位置したりしていない。そのため、熱拡散部材11が発熱体53に取り付けられる際には導電部32がグラファイトシート12上で圧縮されるのみであることから、グラファイトシート12に応力が加わって該グラファイトシート12が破損することを防止することができる。更に、導電部32の圧縮によって該導電部32の一端面全体にわたって金属層21及びアース回路54と接触することができる。その結果、接触不良を防止して電気的接続を安定化させることができ、良好な導電性を得ることができる。
【0036】
(2)本実施形態では、グラファイトシート12は、コネクタ14を介してアース回路54に電気的に接続されている。そのため、グラファイトシート12が電子回路基板52の電子回路から孤立することを防止してグラファイトシート12がノイズの発生源として作用することを防止することができる。
【0037】
(3)本実施形態では、グラファイトシート12と導電部32との間に金属層21が配置されている。そのため、グラファイトシート12と導電部32との電気的な接続を確実に行うことができるとともに、導電部32のグラファイトシート12への押圧によって該グラファイトシート12が破損することをより確実に防止することができる。更に、金属層21は良好な熱伝導性を有することから、金属層21はグラファイトシート12の熱拡散性を補助し、熱拡散部材11の熱拡散性を高めることができる。
【0038】
(4)本実施形態では、金属層21は銅系金属により形成されている。銅系金属は優れた熱伝導性を有している。そのため、金属層21はグラファイトシート12の熱拡散性を効果的に補助し、熱拡散部材11の熱拡散性をより高めることができる。
【0039】
(5)本実施形態では、グラファイトシート12及び金属層21が樹脂層22により覆われている。樹脂層22は柔軟性及び電気絶縁性を有している。そのため、グラファイトシート12がアース回路54以外の部材と電気的に接続されたり、外方からの衝撃により破損したりすることを抑制することができる。また、例えば外方からの衝撃によりグラファイトシート12が破損した場合には、該グラファイトシート12の破片が熱拡散部材11から脱落することを防止して該破片に起因する電子回路のショートを防止することができる。更に、金属層21の外部への露出が樹脂層22によって防止され、例えば筐体51内の湿気による金属層21の劣化を防止することができる。その結果、湿度によって劣化し易い銅系金属によって金属層21を形成することができ、金属層21の材質の選択の幅を広げることができる。
【0040】
(6)本実施形態に係る熱拡散部材11は、グラファイトシート12とコネクタ14とを備えている。そのため、コネクタが熱拡散部材の別体として構成されている場合に比べて発熱体53への取り付けを容易に行うことができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明を熱拡散部材11に具体化した第2実施形態を図4に基づいて説明する。第2実施形態では、第1実施形態との説明の重複を避けるために、第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と同一の作用及び効果についてもその説明を省略する。
【0042】
図4に示すように、本実施形態に係る保護層13は、グラファイトシート12上に積層される金属層41と、樹脂層22とを備えている。金属層41はグラファイトシート12全体にわたって積層されており、グラファイトシート12とコネクタ14とを電気的に接続するとともにグラファイトシート12を保護する。本実施形態に係る金属層41の材質および厚さは、第1実施形態に係る金属層21と同じである。
【0043】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(7)本実施形態に係る金属層41はグラファイトシート12全体にわたって積層されている。そのため、金属層41の剛性に起因して、グラファイトシート12の屈曲を抑制して該グラファイトシート12の屈曲による破損を抑制することができる。更に、金属層41の良好な熱伝導性に起因して、グラファイトシート12の熱拡散性を効果的に補助して熱拡散部材11の熱拡散性を高めることができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明を熱拡散部材11に具体化した第3実施形態を図5に基づいて説明する。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との説明の重複を避けるために、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態及び第2実施形態と同一の作用及び効果についてもその説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、本実施形態に係る保護層13は、金属層41及び樹脂層22を備えている。樹脂層22は、一対のシート状を有する第1樹脂層42及び第2樹脂層22bから構成されている。第1樹脂層42において前記発熱体53に対応する箇所には貫通孔43が形成されており、該貫通孔43では金属層41が露出している。即ち、樹脂層22によって金属層41の一部が覆われている。グラファイトシート12は、金属層41及び各樹脂層22b、42によって覆われている。第1樹脂層42の材質および発熱体53に対応する箇所以外の箇所の厚さは、第1実施形態に係る第1樹脂層22aと同じである。本実施形態に係る金属層41の一部が露出していることから、例えば筐体内の湿度による金属層41の劣化を防止するために、該金属層41の材質は、好ましくはアルミニウム系金属である。
【0046】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(8)本実施形態に係る第1樹脂層42には貫通孔43が形成され、該貫通孔43において金属層41が露出している。そのため、熱拡散部材11を発熱体53に取り付ける際に発熱体53と金属層41とを直接接触させることができ、発熱体53からグラファイトシート12への熱伝導を金属層41によって促進することができる。
【0047】
(第4実施形態)
次に、本発明を熱拡散部材11に具体化した第4実施形態を図6に基づいて説明する。第4実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との説明の重複を避けるために、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態及び第2実施形態と同一の作用及び効果についてもその説明を省略する。
【0048】
図6に示すように、本実施形態に係る筐体51は樹脂により形成されており、保護層13は、金属層41と樹脂層22とを備えている。樹脂層22は、第1樹脂層22aと、筐体51の一部とから構成されている。即ち、本実施形態に係る熱拡散部材11では前記第2樹脂層が省略されており、グラファイトシート12が例えば粘着剤によって筐体51に貼付されることにより、筐体51の一部が樹脂層22を構成している。
【0049】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(9)本実施形態では、筐体51の一部が樹脂層22を構成している。そのため、筐体51内において熱拡散部材11の配置に要する空間を小さくすることができ、電子機器の小型化及び薄型化が容易になる。
【0050】
前記各実施形態は、以下のように変更して具体化されてもよい。
・ 各実施形態において金属層21、41が省略されてもよい。例えば図7に示すように、第1実施形態において金属層が省略されてもよい。また、各実施形態において発熱体53に対応する箇所にのみ金属層21、41が設けられてもよいし、発熱体53及びコネクタ14に対応する箇所にのみ金属層21、41が設けられてもよい。この場合にも、導電部32は弾性を有していることから、熱拡散部材11が発熱体53に取り付けられる際に、グラファイトシート12に応力が加わって該グラファイトシート12が破損することを防止することができる。コネクタ14に対向する金属層21、41が省略される場合には、JIS K6253に従って測定されるコネクタ14のゴム状弾性体35の硬度の上限は、好ましくはA80未満である。
【0051】
・ 図8及び図9に示すように、第2実施形態に係る第1樹脂層22a上において発熱体53に対応する箇所に熱伝導体45が設けられてもよい。熱伝導体45として、例えば一般的な放熱シート、及び放熱グリスが挙げられる。放熱シートとして、例えばゴム状弾性体に絶縁性の熱伝導性フィラーが分散されたシートが挙げられる。熱伝導性フィラーとして、例えば酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素が挙げられる。
【0052】
熱拡散部材11の発熱体53への取り付けが容易な場合には、熱伝導体45として放熱グリスを用いることができる。しかしながら、電子回路上の素子の高さが不均一であったり、熱拡散部材11が取り付けられる発熱体53の電子回路基板52上での高さにバラツキがあったりする場合には、熱伝導体45として放熱シートを用いることが好ましい。この構成では、発熱体53からグラファイトシート12への熱伝導を熱伝導体45により促進し、熱拡散部材11の熱拡散性を高めることができる。同様に、第1実施形態及び第4実施形態に係る第1樹脂層22a上において前記発熱体53に対応する箇所に熱伝導体45が設けられてもよい。また、図10に示すように、第3実施形態に係る第1樹脂層42の貫通孔43に熱伝導体45が設けられてもよい。この場合、金属層41全体が第1樹脂層42及び熱伝導体45によって覆われることから、金属層41を銅系金属によって形成してもよい。
【0053】
・ 図8に記載の構成において、図11に示すように、熱伝導体45が第2樹脂層22b上に設けられてもよい。この場合、図12に示すように、筐体内には一対の電子回路基板52が配置されており、一方の電子回路基板52(図12の上方に位置する電子回路基板52)に発熱体53が設けられるとともに他方の電子回路基板52(図12の下方に位置する電子回路基板52)にアース回路54が形成されている。熱伝導体45は、第2樹脂層22b上において発熱体53に対応する箇所に形成されている。
【0054】
この構成においては、アース回路54が形成されている電子回路基板52において発熱体53に対応する箇所に、粘着層55を用いて熱拡散部材11が貼付される。そして、一対の電子回路基板52に熱拡散部材11が挟まれる。この構成においても、発熱体53からグラファイトシート12への熱伝導を熱伝導体45により促進し、熱拡散部材11の熱拡散性を高めることができる。
【0055】
・ 図13に示すように、第2実施形態において、第1樹脂層22aがコネクタ14の本体を構成してもよい。この構成においてもグラファイトシート12の破損を防止することができる。この場合、第1樹脂層22aの材質は、好ましくはシリコーンゴムである。同様に、第1、第3、及び第4実施形態において、第1樹脂層22a、42がコネクタ14の本体を構成してもよい。
【0056】
・ 各実施形態において、磁性導電体36の配向が省略されてもよいし、該磁性導電体36の形状が例えば繊維状に変更されてもよい。また、導電部32が、ゴム状弾性体35と、該ゴム状弾性体35中に分散されている導電体とから形成されてもよい。導電体の材質として、例えば炭素及び金属が挙げられる。金属として、例えば抵抗値が低い金、銀、白金、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、パラジウム、コバルト、クロム、及びそれらと他の金属との合金が挙げられる。合金として、例えばステンレスが挙げられる。導電体の形状として、例えば粒子状及び繊維状が挙げられる。例えば金属、樹脂、又はセラミックスにより形成された粉末又は繊維の表面に、前記導電体の具体例として挙げられた金属が被覆されて導電体が構成されてもよい。
【0057】
導電体が磁性を有していない場合、コネクタ14は、例えば予めコンプレッション成形又は射出成形によって成形された導電部32が金型にインサートされた後、該金型を用いて本体31を成形するインサート成形法、又は二色成形法によって製造される。導電体が磁性を有していても、即ち磁性導電体36においても、前記インサート成形、又は二色成形法によってコネクタ14が製造されてもよい。
【0058】
・ 各実施形態において、本体31の各突部34が省略されてもよい。この場合、導電部32の各端部が本体31の表面から突出していてもよいし、導電部32の各端面が本体31の表面と面一に構成されてもよい。
【0059】
・ 各実施形態において、熱拡散部材11が複数のコネクタ14を備えてもよい。
・ 第1〜第3実施形態において、第1樹脂層22a、42及び第2樹脂層22bがそれらの一端部において一体に構成されてもよい。即ち、樹脂層22が一枚のシート状を有する樹脂層によって構成されてもよい。この場合、例えば樹脂層22の中央部での折曲によりグラファイトシート12等が樹脂層22に覆われる。また、第4実施形態において、筐体51のみによって樹脂層22が構成されてもよい。
【0060】
・ 各実施形態においてアース回路54が省略されてもよい。この場合、例えば筐体51が導電性を有する材料により形成され、アース回路54として作用する。そして、熱拡散部材11が発熱体53に取り付けられる際には、コネクタ14の導電部32が筐体51に圧接される。この構成においても、グラファイトシート12が他の部材から電気的に孤立することを防止してグラファイトシート12がノイズの発生源として作用することを防止することができる。
【0061】
・ 第1〜第3実施形態において、熱拡散部材11は、筐体51に貼付されることなく発熱体53に直接取り付けられてもよい。このとき、一対の電子回路基板52を用いて熱拡散部材11を発熱体53に取り付けてもよいし、筐体51及び電子回路基板52以外の部材を用いて熱拡散部材11を発熱体53に取り付けてもよい。
【0062】
・ 第3実施形態において、露出している金属層41に追加のコネクタ14を配置してもよい。この場合、ゴム状弾性体の粘着性に基づいてコネクタ14が金属層41に貼付されてもよいし、例えば粘着剤によってコネクタ14が金属層41に貼付されてもよい。
【0063】
・ 各実施形態において、樹脂層22を省略し、金属層21、41のみから保護層13を構成してもよい。
・ 各実施形態において、熱拡散部材11は、導電部32の代わりにスプリングコネクタ等の周知の弾性を有する導電部を備えてもよい。
【実施例】
【0064】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1においては、以下の工程に従って図7に示す構成を有する熱拡散部材11を得た。即ち、まずグラフテック社製のグラファイトシート12を準備した。グラファイトシート12の厚さは150μmであり、厚さ方向における熱伝導率は5W/m・Kであり、面内方向における熱伝導率は400W/m・Kであった。また、以下の工程に従ってコネクタ14を作成した。即ち、ゴム状弾性体35を形成する液状高分子としてのポリアルキルアルケニルシロキサン系シリコーンゴム(数平均分子量:60,000〜80,000、20℃における粘度:15Pa・s)100質量部と、磁性導電体36としての、直径が30μmである銀めっきニッケル粒子30質量部とを混合して原料組成物を調製した。
【0065】
次いで、導電部32に対応する個所に強磁性体としての鉄系合金からなるピンが設けられたアルミニウム製の金型内に、第1樹脂層22aとしての、厚さが12μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをインサートした後、原料組成物を充填した。続いて、前記ピンを用いて0.2テスラ(T)の磁束密度を有する磁場を原料組成物に5分間印加してニッケル粒子を配向させた後、原料組成物を150℃で2分間加熱してポリアルキルアルケニルシロキサン系シリコーンゴムを架橋により硬化させてコネクタ14を得た。コネクタ14において、JIS K6253に従って測定されるポリアルキルアルケニルシロキサン系シリコーンゴムの硬度はA50であった。
【0066】
そして、グラファイトシート12の一方の表面に前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付するとともに、他方の表面に、第2樹脂層22bとしての厚さが12μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付して熱拡散部材11を得た。これらのポリエチレンテレフタレートフィルムの貼付には、厚さが50μmであるアクリル系両面粘着剤(大日本インキ製ダイタック#8616UJ−50)を用いた。
【0067】
(実施例2)
実施例2においては、グラファイトシート12への各ポリエチレンテレフタレートフィルムの貼付の前に、該グラファイトシート12の一方の表面全体にわたって、金属層としての厚さが12μmであるアルミニウム箔を貼付した以外は実施例1と同様にして、図4に示す構成を有する熱拡散部材11を得た。
【0068】
(実施例3)
実施例3においては、アルミニウム箔を厚さが12μmである銅箔に変更した以外は実施例2と同様にして、図4に示す構成を有する熱拡散部材11を得た。
【0069】
(実施例4)
実施例4においては、銅箔に対向するポリエチレンテレフタレートフィルムに貫通孔43を形成した以外は実施例3と同様にして、図5に示す構成を有する熱拡散部材11を得た。
【0070】
(比較例1)
比較例1においては、図15に示す構成を有する積層体114を製造した。
そして、各実施例に係る熱拡散部材11及び比較例1に係る積層体114に関して以下の各項目の評価を行った。その結果を以下に示す。
【0071】
<グラファイトシート12の破損防止効果>
各実施例に係る熱拡散部材11及び比較例1に係る積層体114を発熱体に取り付けた際におけるグラファイトシート12の状態を目視により確認した。その結果、各実施例に係る熱拡散部材11ではグラファイトシート12の破損が見られなかった。そのため、各実施例に係る熱拡散部材11はグラファイトシートを保護することができることが分かった。一方、比較例1に係る熱拡散部材11では、導電部材117としてのネジを用いて積層体114を発熱体111に取り付けた際にグラファイトシート112が破損し、該グラファイトシート112の破片が積層体114から飛散した。
【0072】
<発熱体への取り付け性>
前記項目“グラファイトシート12の破損防止効果”における各実施例に係る熱拡散部材11及び比較例1に係る積層体114の発熱体への取り付けの容易さを評価した。その結果、各実施例に係る熱拡散部材11の取り付けは容易であったものの、比較例1に係る積層体114の取り付けは煩雑であった。これは以下の理由による。即ち、各実施例に係る熱拡散部材11では、コネクタ14が熱拡散部材11と一体に構成されている。これに対して、比較例1に係る積層体114では、コネクタ14に相当する導電部材117が積層体114と別体に構成され、積層体114の取り付けの際には導電部材117を用いて積層体114を固定する必要があった。
【0073】
(実施例5)
実施例5においては、各ポリエチレンテレフタレートフィルムを厚さが50μmであるポリイミドフィルムに変更した以外は実施例1と同様にして熱拡散部材11を得た。
【0074】
(実施例6)
実施例6においては、アルミニウム箔の厚さを50μmに変更するとともに各ポリエチレンテレフタレートフィルムを厚さが50μmであるポリイミドフィルムに変更した以外は実施例2と同様にして熱拡散部材11を得た。
【0075】
(実施例7)
実施例7においては、アルミニウム箔を厚さが50μmである銅箔に変更した以外は実施例6と同様にして熱拡散部材11を得た。
【0076】
そして、実施例5〜7に係る熱拡散部材に関して以下の項目について測定を行った。
<熱拡散性>
各実施例の熱拡散部材11から、縦および横の長さが100mmである試験片を調製した。この試験片は、グラファイトシート12及び保護層13を有しているがコネクタ14を有していない。また、図14に示すように、有底筒状を有する本体61と、該本体61の上部に形成された開口を閉塞する蓋62と、本体61の底部に設けられた発熱体としてのセラミックヒータ63(坂口電熱株式会社製のマイクロセラミックヒータ MS−3)とを備える容器64を準備した。本体61及び蓋62は断熱材により形成されている。セラミックヒータ63の発熱量は1.0Wであった。次いで、本体61内に試験片65を収容した後、蓋62により本体61の開口を閉塞した。このとき、セラミックヒータ63は本体61の底部から露出しており、試験片65と接触している。
【0077】
続いて、セラミックヒータ63上の所定の位置(以下、t0点という)と、試験片65の蓋62に対向する表面において、セラミックヒータ63に対応する位置(以下、t1点という)と、t1点から側方へ25mm離間した位置(以下、t2点という)と、t1点から50mm離間した位置(以下、t3点という)とに熱電対を設置した。次いで、25℃の雰囲気下において、セラミックヒータ63により試験片65を加熱した。そして、セラミックヒータ63による加熱から10分後に、前記熱電対を用いてt0点、t1点、t2点、及びt3点の温度を測定した。結果を表1に示す。表1において、“t0点”欄はt0点での温度の測定結果を示し、“t1点”欄はt1点での温度の測定結果を示し、“t2点”欄はt2点での温度の測定結果を示し、“t3点”欄はt3点での温度の測定結果を示す。
【0078】
【表1】

表1に示すように、セラミックヒータ63の熱が各実施例に係る熱拡散部材11によって拡散されていることが分かった。更に、実施例6に係る熱拡散部材11では、実施例5に係る熱拡散部材11に比べてt1点とt2又はt3点との温度差が小さかった。また、実施例7に係る熱拡散部材11では、実施例5及び6に係る熱拡散部材11に比べてt1点とt2又はt3点との温度差が小さかった。このことから、金属層21、41を用いることにより熱拡散部材11の熱拡散性を向上させることができ、金属層21、41を銅系金属で形成することにより熱拡散部材11の熱拡散性をより向上させることができることが分かった。
【0079】
以上の結果から、各実施例に係る熱拡散部材11は、発熱体53からの熱拡散の用途において好適に使用可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(a)は第1実施形態に係る熱拡散部材を示す断面図、(b)は導電部を示す断面図。
【図2】熱拡散部材の発熱体への取り付けを示す断面図。
【図3】発熱体に取り付けられた熱拡散部材を示す断面図。
【図4】第2実施形態に係る熱拡散部材を示す断面図。
【図5】第3実施形態に係る熱拡散部材を示す断面図。
【図6】第4実施形態に係る熱拡散部材を示す断面図。
【図7】熱拡散部材の第1の別例を示す断面図。
【図8】熱拡散部材の第2の別例を示す断面図。
【図9】発熱体に取り付けられた熱拡散部材を示す断面図。
【図10】熱拡散部材の第3の別例を示す断面図。
【図11】熱拡散部材の第4の別例を示す断面図。
【図12】発熱体に取り付けられた熱拡散部材を示す断面図。
【図13】熱拡散部材の第5の別例を示す断面図。
【図14】容器を示す断面図。
【図15】従来に係る積層体を示す断面図。
【符号の説明】
【0081】
11…熱拡散部材、12…グラファイトシート、13…保護層、14…コネクタ、21,41…金属層、22…樹脂層、32…導電部、51…筐体、53…発熱体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体上に設けられるグラファイトシートと、
前記グラファイトシートを覆う保護層と、
前記グラファイトシート上に設けられるコネクタとを備える熱拡散部材であって、
前記コネクタは、弾性を有するとともに前記グラファイトシートに電気的に接触する導電部を備え、
前記導電部はグラファイトシート上に位置していることを特徴とする熱拡散部材。
【請求項2】
前記保護層は、前記グラファイトシート上に積層される金属層を備え、
前記導電部は金属層上に位置しており、該金属層を介してグラファイトシートに電気的に接触している請求項1に記載の熱拡散部材。
【請求項3】
前記金属層は、グラファイトシートにおいて少なくとも発熱体及び導電部に対応する箇所に設けられている請求項2に記載の熱拡散部材。
【請求項4】
前記金属層は銅系金属から形成されている請求項2又は請求項3に記載の熱拡散部材。
【請求項5】
前記保護層は、グラファイトシート及び金属層を覆う樹脂層を更に備え、該樹脂層は電気絶縁性を有する請求項4に記載の熱拡散部材。
【請求項6】
前記保護層は、グラファイトシートと、金属層の一部とを覆う樹脂層を更に備え、該樹脂層は電気絶縁性を有する請求項2又は請求項3に記載の熱拡散部材。
【請求項7】
前記発熱体は電子機器の筐体内に設けられ、前記保護層の少なくとも一部が前記筐体で構成されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の熱拡散部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−158780(P2009−158780A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336679(P2007−336679)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】