説明

熱硬化性樹脂組成物及びこれを用いた電子部品

【課題】高周波(ギガヘルツ)帯域用途に適した低比誘電率及び低誘電損失の特性を有し、かつ基板を構成する金属材料等に対する接着性を有する熱硬化性樹脂組成物を用いた高性能高周波電子部品分野に適用できる電子部品を提供すること。
【解決手段】ビニルベンジル系化合物とポリカルボジイミド化合物とを含有することにより、高周波(ギガヘルツ)帯域用途に適した低比誘電率及び低誘電損失の特性、及び基板を構成する金属材料に対する接着性を有し、かつ、高周波帯域において伝送特性と長期信頼性に優れる熱硬化性樹脂組成物を用いた高性能高周波電子部品分野に適用できる電子部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波(ギガヘルツ)帯域での使用に好適な熱硬化性樹脂組成物を用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器の大容量化、高速化に伴って、それを構成する電子部品に用いられる基板材料についても小型化、高密度化および高速化に対応するための低比誘電率かつ低誘電損失等の要求がなされている。具体的には、ギガヘルツ帯域での使用に対応し得る低比誘電率かつ低誘電損失の特性を有する材料が望まれている。
【0003】
従来、プリント配線用基板においては、銅張り積層板の材料としてエポキシ樹脂を用いたものが一般的に用いられてきた。しかし、エポキシ樹脂を用いた基板は安価でかつ加工性やメッキ性に優れている反面、高周波帯域における誘電特性が悪いという欠点があり、上記要請には対応し得ない。また、基板材料としてフッ素樹脂を用いることも提案されているが、フッ素樹脂は誘電特性に優れる反面、加工性や接着性に劣り、また非常に高価であることから、特殊用途に使用が限定されているのが現状である。
【0004】
現在、これらの問題に対応し得る材料として、ポリフェニレンエーテルやBT(ビスマレイミド/トリアジン)レジンなどが注目されている。しかし、ポリフェニレンエーテルについては、耐溶剤性や成型加工性に劣るため化学構造の一部を変更したり、ポリマーやモノマーを配合するなどにより、電子部品材料等としての改良の試みが行われている(例えば、特許文献1、2)。
しかしながら、ポリフェニレンエーテルに関しては、硬化性のポリマーやモノマーを配合することにより、耐薬品性や加工性は改善されているが、高周波帯域、とりわけギガヘルツ帯域における誘電特性への影響については何ら言及されていない。
また、BTレジンに関しては、吸湿性が大きいために外部環境の湿度による影響を受けやすく、高湿度下においては誘電特性が著しく低下するという問題があった。このため、優れた誘電特性と加工性、耐薬品性等の性質とを両立させることは困難であり、誘電特性を優先すると電子機器の部品として使用するには信頼性が著しく低下してしまう一方、信頼性の確保を図ると誘電特性が著しく低下してしまうという問題点があった。
【0005】
また、小型化、高密度化および高速化に対応するための要求を満たす基板材料として、ポリカルボジイミド化合物とエポキシ樹脂とを配合した熱硬化性樹脂組成物の提案がなされている(例えば、特許文献3)。ポリカルボジイミド化合物を用いることにより、高耐熱性、低誘電率、低誘電正接、高接着力、低吸水率等の物性をバランス良く備える改良が図られている。しかし、かかる改良による高周波帯域、とりわけギガヘルツ帯域における誘電特性が十分ではないといった問題があった。
【0006】
さらに、高周波帯域における誘電特性に関して、ポリスチレンやポリプロピレン等に代表される非極性材料が好適であることが見出され、耐熱性等の改良が図られている。しかし、非極性化合物は一般に金属材料との接着性に劣るため、これら材料は基板を構成する金属箔との接着性が悪い問題を有し、結果として電子部品としての信頼性が不十分であった。
【0007】
【特許文献1】特開平06−041418号公報
【特許文献2】特開2001−019844号公報
【特許文献3】特開2002−088221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況の下で、高周波(ギガヘルツ)帯域用途に適した低比誘電率及び低誘電損失の特性を備える材料が持つ信頼性の低さ、具体的には基板を構成する金属材料に対する接着性を改善し、かつ、高周波帯域における優れた伝送特性と長期信頼性に優れる熱硬化性樹脂組成物を用いた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基板材料としてのビニルベンジル系化合物に注目し、これに所定の化合物、すなわちポリカルボジイミド化合物を添加することにより、ビニルベンジル系化合物が有する優れた誘電特性を維持しながら、金属材料との優れた接着性を有する熱硬化性樹脂組成物を見出し、これを電子部品に適用することで本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)ビニルベンジル系化合物とポリカルボジイミド化合物とを含有する熱硬化性樹脂組成物を用いてなる電子部品、
(2)前記熱硬化性樹脂組成物を繊維材料に含浸させたプレプリグの形で用いる上記(1)に記載の電子部品、
(3)前記繊維材料がガラス繊維である上記(2)に記載の電子部品、
(4)金属箔上に、前記熱硬化性樹脂組成物を塗工し、両者を一体化させてなる樹脂付き金属箔の形で用いる上記(1)に記載の電子部品、
(5)金属箔が銅箔である上記(4)に記載の電子部品、
(6)前記熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム上に一定の厚みに塗工し、溶剤を乾燥した後、保護フィルムを積層してなるドライフィルムの形で用いる上記(1)に記載の電子部品、
(7)前記熱硬化性樹脂を用いて作製された高周波基板の形で用いる上記(1)に記載の電子部品、
(8)前記ビニルベンジル系化合物が、ビニルベンジルエーテル化合物である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子部品、
(9)前記ビニルベンジル系化合物が、インデン化合物及び/若しくはフルオレン化合物又はフェノール樹脂とビニルベンジルハライドとの反応生成物である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子部品、及び
(10)前記ビニルベンジル系化合物100質量部に対する前記ポリカルボジイミド化合物の配合割合が0.1〜30質量部である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の電子部品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波(ギガヘルツ)帯域における優れた誘電特性と接着性や加工性等の各種材料特性とを兼ね備えた熱硬化性樹脂組成物を用いた信頼性に優れた電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の電子部品を作製するための熱硬化性樹脂組成物はビニルベンジル系化合物と、ポリカルボジイミド化合物とを含有することを特徴とする。ビニルベンジル系化合物は高周波帯域における誘電特性に優れる一方、金属材料に対する接着性が高くないため、単独では基板材料として実用上不十分なことがある。そこで、本発明においては主成分としてのビニルベンジル系化合物に、ポリカルボジイミド化合物を配合して金属材料との接着性を向上させることで、高周波用途に適した低比誘電率及び低誘電損失の特性と、金属材料に対する接着性とを高いレベルで両立させることを可能としたものである。
【0013】
1.ビニルベンジル系化合物
ビニルベンジル系化合物は、分子内にビニルベンジル基を有するものであればいずれのものも用いることが出来るが、ビニルベンジル化合物が好ましい。
該ビニルベンジル化合物としては、例えば、下記一般式(I)、
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ビニルベンジル基、又は、置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜5のチオアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜20のアリール基で置換されていても良い炭化水素基を示し、R1〜R4の少なくても1つはビニルベンジル基である。)
【0016】
下記一般式(II)、
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R5は、炭素数2〜20の2価の有機基を示し、R6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜5のチオアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜20のチオアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を示す。xは0〜4の整数を示し、nは0〜20の整数を示す。)
【0019】
または、下記一般式(III)
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R4、R5及びR6は、上記一般式(I)及び一般式(II)と同様であり、a、b、cは各々0〜20の整数を示す。)
【0022】
で表される化合物を好ましく挙げることができる。
一般式(II)および一般式(III)においてR5で示される炭素数2〜20の2価の有機基は、2価の脂肪族炭化水素基、又は2価の脂環式炭化水素基を示し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、直鎖状又は分岐状でもよく、また、置換されていてもよい。
【0023】
上記一般式(I)、(II)及び(III)に例示されるビニルベンジル化合物は、少なくとも1種のインデン化合物及び/又は少なくとも1種のフルオレン化合物とビニルベンジルハライドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0024】
インデン化合物は、インデン、またはその芳香環部分がハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜5のチオアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜20のアリール基から選ばれる1種以上で置換されたインデン化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。なお、該置換されたインデン化合物は、例えばインデンの芳香環部を臭素等によりハロゲン化し、さらにその部分に所望の基を導入することにより簡単に合成することができる。
【0025】
フルオレン化合物はフルオレン、またはその芳香環部分がハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数1〜5のチオアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜20のアリール基から選ばれる1種以上で置換されたフルオレン化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物の合成にあたっては、上記のインデン化合物とフルオレン化合物とを混合して用いてもよい。
【0026】
また、ビニルベンジル系化合物としては、上記ビニルベンジル化合物の他、下記一般式(IV)
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、R7は、メチル基またはエチル基から選ばれる基を示し、R8は、水素原子または置換または無置換の炭素数1〜10の有機基から選ばれる基を示し、nは2〜6の整数を示す。)
【0029】
で表されるビニルベンジルエーテル化合物を好適に挙げることができる。
上記の炭素数1〜10の有機基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を示し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、直鎖状又は分岐状でもよく、また、置換されていてもよい。
【0030】
上記一般式(IV)で表されるビニルベンジルエーテル化合物は、例えば、下記一般式(V)
【化5】

【0031】
(式中、R7、R8及びnは、上記と同様である。)
【0032】
で表されるフェノール樹脂とビニルベンジルハライドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより得ることができる(例えば、特開平9−31006号公報)。
上記一般式(V)のフェノール樹脂としては、市販されているものを適宜用いることができ、例えば、PP−700−300、PP−1000−240(いずれも新日本石油化学(株)製)等の市販品が挙げられる。
【0033】
また、ビニルベンジルエーテル化合物の製造に用いることができるフェノール樹脂としては、上記一般式(V)のほか、下記一般式(VI)
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、nは0〜20の整数を示す。)
【0036】
で表されるフェノールアラルキル樹脂、下記一般式(VII)
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、nは0〜20の整数を示す。)
【0039】
で表されるナフトールアラルキル樹脂、下記一般式(VIII)
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、nは0〜20の整数を示す。)
【0042】
で表されるビフェニル型フェノールノボラック樹脂、または下記一般式(IX)
【0043】
【化9】

【0044】
(式中、nは0〜20の整数を示す。)
【0045】
で表されるビフェニル型ナフトールノボラック樹脂を好ましく挙げることができる。また、下記一般式(X)
【0046】
【化10】

【0047】
(式中、nは0〜20の整数を示す。)
【0048】
で表されるジシクロペンタジエン系フェノール樹脂もビニルベンジルエーテル化合物の製造に、好適に用いることができる。
【0049】
上記フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル型フェノールノボラック樹脂及びジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、市販されているものを適宜用いることができ、例えば、フェノールアラルキル樹脂としては三井化学(株)製ミレックスXLC−LL、XLC−3L、XLC−4Lや住金エア・ウォーター・ケミカル(株)製SKレジンHE−100−10、HE−100C−15、HE−100C−30等が挙げられる。また、ナフトールアラルキル樹脂としては、例えば、新日鐵化学(株)製SN170、SN180、SN190、SN475、SN485等が挙げられる。また、ビフェニル型フェノールノボラック樹脂、ビフェニル型ナフトールノボラック樹脂としては、例えば、明和化成(株)製MEH7581SS、MEH7581S、MEH7581M、MEH7581H等が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、例えば新日本石油化学社製のDPP−M、DPP−L、DPP−6085、DPP−6095L、DPP−6095H、DPP−6115L、DPP−6115H、DPP−6125等が挙げられる。
【0050】
また、ビニルベンジルハライドとしては、p−ビニルベンジルクロライド、m−ビニルベンジルクロライド、p−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドの混合体、p−ビニルベンジルブロマイド、m−ビニルベンジルブロマイド、p−ビニルベンジルブロマイドとm−ビニルベンジルブロマイドの混合体等が挙げられる。中でも好ましくは、p−ビニルベンジルクロライド、およびp−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドの混合体を用いる。p−ビニルベンジルクロライドを使用すると対称性がよくなり、高融点、高軟化点のビニルベンジル系化合物が得られる。また、p−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドの混合体を使用すると、低融点、低軟化点のビニルベンジル系化合物が得られ、作業性が良好となる。
【0051】
以上のように、本発明におけるビニルベンジル系化合物は、インデン化合物及び/若しくはフルオレン化合物又はフェノール樹脂とビニルベンジルハライドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより得ることができるものである。より具体的には、例えば、インデン化合物及び/若しくはフルオレン化合物の反応性水素基、又はフェノール樹脂水酸基とビニルベンジルハライドとを極性中性溶媒中、アルカリ金属水酸化物を脱ハロゲン化水素剤として用いて反応させる方法が挙げられる。
【0052】
インデン化合物及び/若しくはフルオレン化合物、又はフェノール樹脂とビニルベンジルハライドとの配合割合は適宜設計することが出来るが、例えば、モル比として反応性水素基またはフェノール性水酸基:ビニルベンジルハライド=100:40〜100:120程度とすることができる。
また、インデン化合物とフルオレン化合物とを用いる場合、インデン化合物とフルオレン化合物との当量比は、0.9:0.1〜0.1:0.9となるように調整して反応に供するのがよい。フルオレン化合物の当量比を大きくすると直線状の化合物になりやすく、インデン化合物の当量比を大きくすると枝分かれの多い化合物となりやすい。
【0053】
反応溶媒としてはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシプロパン、テトラメチレンスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0054】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびこれらの混合物等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物の使用量は、例えば、反応性水素基またはフェノール性水酸基1モルに対して1.1〜2.0倍モル程度が好ましい。この範囲内にあれば、反応速度が過度に遅くなることがないと同時に、反応が完全に進行するので原料が残留することもなく、硬化物物性は良好となる。また、残存アルカリ金属水酸化物の除去に多量の洗浄水を使用することないので、経済的にも有利である。また、反応温度は30〜100℃とし、反応時間は0.5〜20時間程度とすればよい。
【0055】
また、上記とは別の方法として、相関移動触媒の存在下でインデン化合物及び/若しくはフルオレン化合物、又はフェノール樹脂とビニルベンジルハライドとを水/有機溶剤混合液中、アルカリ金属水酸化物を脱ハロゲン化水素剤として反応させることにより、本発明に係るビニルベンジル系化合物を得ることができる。
【0056】
相関移動触媒としては、各種オニウム塩、例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリカプリルメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム化合物、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の四級ホスホニウム化合物、ベンジルテトラメチレンスルホニウムブロマイド等の三級スルホニウム化合物およびこれらの混合物が挙げられる。中でも、四級アンモニウム化合物が好ましい。
これらの相間移動触媒の使用量は触媒種、あるいは反応温度により触媒効果が異なるために一概に規定できないが、一般的には原料の反応性水素基またはフェノール性水酸基1モルに対して0.01〜0.5倍モル程度使用すれば十分である。
【0057】
反応温度および反応時間は、使用する原料化合物の種類、反応条件によって異なるために一概に規定できないが、それぞれ30〜100℃で0.5〜20時間であればよい。この温度範囲内であれば、熱重合等の好ましくない反応を併発することがなく、また反応速度が遅くなり長時間を要することもなく、経済的である。
このようにして、得られたビニルベンジル化合物およびビニルベンジルエーテル化合物は、作業性等の面から少なくとも1種を混合して用いることが可能であり、誘電特性を損なわない範囲内で適宜選択される。
【0058】
2.ポリカルボジイミド化合物
本発明に用いられるポリカルボジイミド化合物は下記一般式(XI)
【0059】
【化11】

【0060】
(式中、Rはそれぞれ独立の2価の炭素数4〜20の有機基、R10は1価の炭素数4〜20の有機基、nは2〜40の整数を示す)
【0061】
で表される。
9で表される2価の炭素数4〜20の有機基は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、直鎖状又は分岐状でもよく、また、置換されていてもよい。また、R10で表される1価の炭素数4〜20の有機基は、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、又は1価の芳香族炭化水素基を示し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、直鎖状又は分岐状でもよく、また、置換されていてもよい。
【0062】
一般式(XI)で表されるポリカルボジイミド化合物は、市販品を適宜用いることができる。市販品としては、例えば、カルボジライトV−01、カルボジライトV−03、カルボジライトV−05、カルボジライトV−07、カルボジライトV−09(日清紡績(株)製)等が挙げられる。
また、一般式(XI)で表されるポリカルボジイミド化合物は、例えば、L. M. Alberinoらの方法[J. Appl. Polym. Sci., 21, 190(1990)]に開示されている公知の方法等によって製造することができる。具体的には、有機ポリイソシアネート化合物からイソシアネートのカルボジイミド化を促進する触媒の存在下で製造することができる。
【0063】
これらポリカルボジイミド等の化合物は、ビニルベンジル系化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部、特には0.5〜10質量部の割合で配合されていることが好ましい。配合割合が上記範囲内にあれば、得られる熱硬化性樹脂組成物の金属箔に対する密着性向上効果は十分であり、誘電特性の低下や、樹脂組成物中で配合物の相分離を引き起こすことはない。
【0064】
3.その他成分
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、前記ビニルベンジル系化合物と、前記ポリカルボジイミド化合物を含むものであればよく、使用目的によって他の樹脂成分、添加剤等を配合することができる。
樹脂成分は本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物にフィルム形成性を与える、あるいは硬化物に可撓性を付与する目的で使用される。本発明の目的を損なわない範囲であれば、任意の樹脂成分を使用できるが、硬化物の誘電特性を低下させないためにも5GHzの周波数帯域において誘電率が3.0以下で、かつ誘電正接が0.003以下のものが好ましい。そのような樹脂成分としては、例えばポリフェニレンエーテル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂及びその混合物等が挙げられる。
【0065】
また、添加剤としては難燃剤、離型剤、表面処理剤、充填剤等を配合することができる。
難燃剤としては通常使用されるものであれば、特に限定はされないが、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートや市販品CR−741、CR−747、PX−200(大八化学製)等のリン酸エステル、ヘキサフェノキシホスファゼン、ヘキサナフトキシホスファゼン等のホスファゼン化合物、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸系化合物、一般式(XII)で表されるリン系化合物、
【0066】
【化12】

【0067】
(式中、R11は炭素数2〜30の有機基を示す。)
【0068】
三酸化アンチモン、ポリ(ペンタブロモベンジルメタクリレート)、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ビニルベンジルエーテル)、ヘキサブロモシクロドデカン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)等の臭素化合物等が挙げられる。離型剤としてはワックス類等、表面処理剤としてはシランカップリング剤等、充填剤としてはシリカ、タルク、ガラス繊維等を挙げることができる。
上記のR11で表される炭素数2〜30の有機基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は2価の芳香族炭化水素基を示し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、直鎖状又は分岐状でもよく、また、置換されていてもよい。
【0069】
また、本発明に使用する熱硬化性樹脂組成物は、低誘電率・低誘電正接であることから、セラミックス粉末等の公知慣用の高誘電率フィラーを併用することで高周波用のアンテナやコンデンサー用の誘電体等に好適に使用することができる。例えば、チタン−バリウム−ネオジウム系セラミックス、チタン−バリウム−スズ系セラミックス、鉛−カルシウム系セラミックス、二酸化チタン系セラミックス、チタン酸バリウム系セラミックス、チタン酸鉛系セラミックス、チタン酸ストロンチウム系セラミックス、チタン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸ビスマス系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックス、CaWO4系セラミックス、Ba(Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Mg,Ta)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Ta)O3系セラミックス等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0070】
また、磁気シールドを目的とする場合には、Mn−Mg−Zn系、Ni−Zn系、Mn−Zn系等のフェライト、カルボニル鉄、鉄−シリコン系合金、鉄−アルミ−珪素系合金(商標名:センダスト)、鉄−ニッケル系合金(商標名:パーマロイ)、アモルファス系(鉄系、コバルト系)等の強磁性金属などが好ましい。
【0071】
4.プリプレグ
本発明に用いられるプレプリグは、熱硬化性樹脂組成物あるいはをその溶液を繊維材料に含浸させることで得ることができる。
上記の熱硬化性樹脂組成物を繊維材料に含浸させる方法としては、公知の溶剤法あるいは無溶剤法どちらの方法も用いることができる。溶剤法に用いる溶剤としては、プリプレグ中の残存溶剤をできるだけ低減させ、耐熱性の低下やクラック、ボイドの発生を回避するために比較的低沸点の溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。このような方法で熱硬化性樹脂組成物が繊維材料に含浸したものを必要に応じて80〜130℃で10分〜180分乾燥および熱処理を施すことによってプリプレグを得ることができる。
【0072】
プリプレグの製造に用いられる繊維材料としてはガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維など公知の繊維材料を用いることができるが、好ましくは低誘電性(低比誘電率、低誘電正接)を有するガラス繊維からなるガラスクロスである。
繊維材料の厚みとしては、特に制限されるものではないが、10〜300μmが好ましく、20〜200μmがより好ましく、さらには50〜180μmが好ましい。
【0073】
ガラスクロスには、糸束内部に含浸した樹脂とガラス繊維との接着性を向上するために、あらかじめ表面処理が施されていることが好ましい。かかる表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系化合物、ビニルシラン系化合物、スチレン系シラン化合物、メタクリルシラン系化合物等のシランカップリング剤を挙げることができる。中でも特にメタクリルシラン系、およびビニルシラン系がビニルベンジル化合物との組み合わせにおいて好適である。メタクリルシラン系化合物としては例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を好適に挙げることができる。
【0074】
ガラスクロスの表面処理に用いるカップリング剤の種類や調合条件およびカップリング剤によるガラスクロスの表面処理方法としては、公知の方法により行うことができる。処理方法としては一般的な浸漬法や噴霧法を用いることができ、超音波を併用した浸漬法(特開昭63−165441号公報)や、ローラジェット脱水機を用いた浸漬法(特開昭63−175165号公報)などを用いることも可能である。
【0075】
また、プレプリグにおける繊維材料の含有量は、強度や成形性等の観点から30〜70質量%であることが好ましい。
【0076】
5.樹脂付き金属箔
本発明の樹脂付き金属箔は、例えば、後述する高周波帯域用基板の製造に用いることができるものである。該樹脂付き金属箔は、前記の熱硬化性樹脂組成物あるいはその溶液をドクターブレードコート法等の通常用いられる方法により塗工し、80〜130℃で10分〜180分乾燥および熱処理を施して両者を一体化させることで、得ることができる。
金属箔としては、銅、金、銀、アルミニウム等が挙げられるが、銅が好ましい。また、必要に応じて電解箔や圧延箔を用いることができる。また、金属箔の厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmが更に好ましい。
【0077】
6.ドライフィルム
本発明のドライフィルムは、前記の熱硬化性樹脂組成物あるいはその溶液を、支持フィルム上でドライフィルム化することにより得られるものであり、回路基板等の層間絶縁材料として用いることができる。該支持フィルムの材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類等を挙げることができる。これらの中では特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。これらのフィルムの表面はコロナ処理等が施してあってもよい。
【0078】
ドライフィルムは、具体的には、熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤を用いてワニスとした後、これを支持フィルム上に塗布し、50〜150℃程度の熱風乾燥炉を通す等して乾燥して製造することができる。乾燥後の硬化性樹脂組成物層の厚みは10〜100μmとするのが好ましい。なお、ドライフィルムにゴミ等が付着するのを防止するため、保護フィルムを積層してもよい。このように保護フィルムが積層され、保護フィルム/熱硬化性樹脂組成物/支持フィルムを有するドライフィルムはロール状に巻き取って貯蔵することもできる。
保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類等が好ましく用いられる。
【0079】
このようにして得られたドライフィルムは、保護フィルムを剥がした後、これを熱硬化性樹脂組成物の面で回路基板にラミネート後、支持フィルムを剥離し、熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることで多層基板に絶縁層を導入することができる。この際、熱硬化性樹脂組成物を硬化する前に金属箔等の導体層をドライフィルム上にラミネートし、その後、硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることで、絶縁層及び導体層を導入することもできる。また、回路基板に熱硬化樹脂組成物をラミネート、熱硬化させた後に導体層をメッキにより導入することもできる。
【0080】
7.基板
前述したプリプレグ、樹脂付き金属箔、ドライフィルム及び金属箔、メッキ等を組み合わせて基板を作成することができる。このような基板には両面パターニング基板や、多層基板がある。
【0081】
前記のように得られたプレプリグは、これを単独で、または積層して加熱、加圧に施すことにより、高周波帯域用基板を得ることができる。すなわち、所定の厚みのプレプリグを単独、あるいは所定の厚みとなるようにプレプリグを積層し、熱プレス等の公知の方法にて加熱加圧成形を行うことにより、高周波帯域用基板を得ることができる。
成形温度は、80〜250℃、好ましくは100〜200℃であり、成形圧力は0.5〜10MPaが好ましく、成形時間は0.5〜10時間が好ましい。また、成形温度は段階的に昇温することも効果的である。
【0082】
また、前記のプリプレグを単独で、または積層し、さらに金属箔または前記の樹脂付き金属箔を重ねて加熱、加圧に施すことにより、金属張り高周波用基板を製造することができる。すなわち、所定の厚みのプリプレグ単独、あるいは所定の厚みとなるようにプリプレグを積層し、その積層体の両面に金属箔を重ね、前記の加熱加圧成形を行うことにより金属張り高周波用基板を得ることができる。金属箔は、前記と同様である。また樹脂付き金属箔をコア材に重ねて加熱加圧成形することにより多層積層基板としてもよい。
【0083】
また、導電層上に前記の硬化性ビニルベンジル化合物または硬化性樹脂組成物を塗工し重合・硬化させ、硬化物の上にさらに導電層を設けることにより多層積層基板を製造することができる。このような多層積層基板は、例えば導電層として厚さ18μmの銅箔を用い、その上に硬化性ビニルベンジル化合物または硬化性樹脂組成物を厚さ20〜200μm好ましくは50〜100μmの絶縁層として塗布し、熱硬化させ、その上にさらに導電層を形成する、いわゆるビルドアップ法により作製することができる。
【0084】
本発明では、前記に限らず、種々の方法で基板を形成することができる。例えば樹脂付き金属箔と、金属箔を積層したプリプレグを用い、多層化することも可能である。また、金属箔を積層したプリプレグを加圧加熱硬化した後、金属箔をパターニングした後、層間絶縁材としてドライフィルムを積層して多層化することも可能である。
【0085】
8.電子部品
前述したプリプレグ、樹脂付き金属箔、ドライフィルム、およびこれらから構成された積層基板等を組み合わせ、導体のパターニング処理行うことにより、電子部品を得ることができる。そのような電子部品としては、コンデンサ、インダクタ、フィルタ、バルントランスの他、これらとあるいはそれ以外の配線パターン、増幅素子、機能素子と組み合わせ、アンテナ、RFモジュール(RF増幅段)、VCO(電圧制御発振回路)、パワーアンプ(電力増幅段)、共振器等の高周波電子回路、光ピックアップなどに用いられる重畳モジュール等の高周波用電子部品を得ることができる。
【0086】
次に本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて作製できる電子部品の実施態様の一例を図1、図2に示した。図1はインダクタの導体パターンを形成した面の概略図、図2は同インダクタの断面図を表している。ここで、1は上記熱硬化性樹脂をプリプレグ化したものを加圧加熱して絶縁層としたもの、3はスルーホール、2はスルーホールに施したメッキ層、4はミアンダ状に形成した導体パターンである。
【実施例】
【0087】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお特記しない限り、例中の部は質量部を意味する。
(測定方法)
各実施例で得られた試験片について、以下の方法で評価した。
(1)誘電特性
ベクトルネットワークアナライザHP8753E(HP社製)を用い、1.5mm×1.5mm×75mmの角柱状試験片を用いて空洞共振器摂動法で5GHzの比誘電率および誘電正接を測定した。
(2)銅箔引き剥がし強度
JISC6481に準じ、引っ張り試験機を用いて測定した。
【0088】
[実施例1〜5]
前記一般式(I)でのR1、R2、R3がビニルベンジル基または水素原子であり、ビニルベンジル基と水素原子との割合が一分子平均で2.4:0.6であり、R4が全て水素原子であるビニルベンジル化合物を樹脂1とし、ポリカルボジイミド(日清紡績(株)製、カルボジライトV−03)を配合剤とする。樹脂1と配合剤とを、下記の表1中に示す割合にてトルエン中に溶解して、熱硬化性樹脂溶液を調製した。これら樹脂溶液を、ガラスクロスに含浸させたのち110℃で30分乾燥し、プリプレグを得た。
また、これら樹脂溶液を18μm銅箔((株)日鉱マテリアルズ製、JTC箔)粗化面に厚さ100μmとなるように塗工して、110℃で30分乾燥し、樹脂付き銅箔を得た。さらに該樹脂付き銅箔2枚の間に、上記プリプレグを10層積層して、150℃2時間、180℃5時間の条件での加熱加圧成形により厚さ1.5mmの銅箔付き積層板を作製し、銅箔引き剥がし試験用の試験片とした。
また、樹脂組成物の誘電特性評価用として、上記樹脂溶液を110℃で30分乾燥し、加熱加圧成形により厚さ1.5mmの樹脂板を作製し、誘電特性測定用の試験片とした。
【0089】
[比較例1]
ポリカルボジイミドを用いない以外は、実施例1〜5と同様の方法にて銅箔引き剥がし試験用の試験片および、誘電特性測定用の試験片を作製した。
【0090】
【表1】

*1,配合割合は全て固形分換算
【0091】
[実施例6]
前記一般式(II)での、R5が直鎖ヘキシレン基であり、nが1であり、xが0であるビニルベンジル化合物を樹脂2とする。樹脂2と、配合剤を下記の表2中に示す配合にてトルエン中に溶解して、熱硬化性樹脂溶液を調製した。これら樹脂溶液を、ガラスクロスに含浸させたのち110℃で1時間乾燥し、プリプレグを得た。
また、上記樹脂溶液を実施例1と同じ条件で作製した銅箔粗化面に厚さ100μmとなるように塗工して、110℃で1時間乾燥し、樹脂付き銅箔を得た。
さらに上記樹脂付き銅箔2枚の間に、上記プリプレグを10層積層して、150℃2時間、180℃5時間の条件での加熱加圧成形により厚さ1.5mmの銅箔付き積層板を作製し、銅箔引き剥がし試験用の試験片とした。
また、樹脂組成物の誘電特性評価用として、上記樹脂溶液を110℃で1時間乾燥し、加熱加圧成形により厚さ1.5mmの樹脂板を作製し、誘電特性測定用の試験片とした。
【0092】
[実施例7]
四級アンモニウム塩(テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド)の存在下で、前記一般式(V)で表される化合物の1種であるフェノール樹脂(新日本石油化学(株)製、PP−700−300)とビニルベンジルクロライド(m/p異性体:50/50重量%混合物、セイミケミカル(株)製、CMS−AM)とを、水/有機溶剤混合液中で、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム)を脱ハロゲン化水素剤として80℃で反応させて得た化合物を樹脂3とする。樹脂3と、配合剤を下記の表2中に示す配合にてトルエン中に溶解して、熱硬化性樹脂溶液を調製した。これら樹脂溶液を、ガラスクロスに含浸させたのち110℃で2時間乾燥し、プリプレグを得た。
また、上記樹脂溶液を実施例1と同じ条件で作製した銅箔粗化面に厚さ100μmとなるように塗工して、110℃で2時間乾燥し、樹脂付き銅箔を得た。
さらに上記樹脂付き銅箔2枚の間に、上記プリプレグを10層積層して、150℃2時間、180℃5時間の条件での加熱加圧成形により厚さ1.5mmの銅箔付き積層板を作製し、銅箔引き剥がし試験用の試験片とした。
また、樹脂組成物の誘電特性評価用として、上記樹脂溶液を110℃で2時間乾燥し、加熱加圧成形により厚さ1.5mmの樹脂板を作製し、誘電特性測定用の試験片とした。
【0093】
[実施例8]
四級アンモニウム塩(テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド)の存在下で、前記一般式(VI)で表される化合物の1種であるフェノール樹脂(住金エア・ウォーター・ケミカル(株)製、SKレジンHE−100C−30)とビニルベンジルクロライド(m/p異性体:50/50重量%混合物、セイミケミカル(株)製、CMS−AM)とを、水/有機溶剤混合液中で、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム)を脱ハロゲン化水素剤として80℃で反応させて得た化合物を樹脂4とする。樹脂4と、配合剤を下記の表2中に示す配合にてトルエン中に溶解して、熱硬化性樹脂溶液を調製した。これら樹脂溶液を、ガラスクロスに含浸させたのち110℃で1時間乾燥し、プリプレグを得た。
また、上記樹脂溶液を実施例1と同じ条件で作製した銅箔粗化面に厚さ100μmとなるように塗工して、110℃で1時間乾燥し、樹脂付き銅箔を得た。
さらに上記樹脂付き銅箔2枚の間に、上記プリプレグを10層積層して、150℃2時間、180℃5時間の条件での加熱加圧成形により厚さ1.5mmの銅箔付き積層板を作製し、銅箔引き剥がし試験用の試験片とした。
また、樹脂組成物の誘電特性評価用として、上記樹脂溶液を110℃で1時間乾燥し、加熱加圧成形により厚さ1.5mmの樹脂板を作製し、誘電特性測定用の試験片とした。
【0094】
[実施例9]
四級アンモニウム塩(テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド)の存在下で、前記一般式(X)で表される化合物の1種であるフェノール樹脂(新日本石油化学社製、DPP−6115H)とビニルベンジルクロライド(m/p異性体:50/50重量%混合物、セイミケミカル(株)製、CMS−AM)とを水/有機溶剤混合液中で、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム)を脱ハロゲン化水素剤として80℃で反応させて得た化合物を樹脂5とする。樹脂5と、配合剤を下記の表2中に示す配合にてトルエン中に溶解して、熱硬化性樹脂溶液を調製した。これら樹脂溶液を、ガラスクロスに含浸させたのち110℃で1時間乾燥し、プリプレグを得た。
また、上記樹脂溶液を実施例1と同じ条件で作製した銅箔粗化面に厚さ100μmとなるように塗工して、110℃で1時間乾燥し、樹脂付き銅箔を得た。
さらに上記樹脂付き銅箔2枚の間に、上記プリプレグを10層積層して、150℃2時間、180℃5時間の条件での加熱加圧成形により厚さ1.5mmの銅箔付き積層板を作製し、銅箔引き剥がし試験用の試験片とした。
また、樹脂組成物の誘電特性評価用として、上記樹脂溶液を110℃で1時間乾燥し、加熱加圧成形により厚さ1.5mmの樹脂板を作製し、誘電特性測定用の試験片とした。
【0095】
[比較例2〜5]
比較例2〜5は、ポリカルボジイミドを用いない以外は、各々実施例6〜9と同様の方法で銅箔引き剥がし試験用の試験片および、誘電特性測定用の試験片を作製した。結果は表3に示した。
【0096】
[比較例6]
比較例6は、ビニルベンジル系化合物を使用しない樹脂系で行った。ポリカルボジイミド(日清紡績(株)、カルボジライトV−03)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)、ジシアンジアミドを表3に示す配合にてトルエン中に分散・溶解して、比較例6の熱硬化性樹脂溶液を調製した。これら樹脂溶液を、ガラスクロスに含浸させたのち90℃で1時間乾燥し、プリプレグを得た。
また、上記樹脂溶液を実施例1と同じ条件で作製した銅箔粗化面に厚さ100μmとなるように塗工して、90℃で1時間乾燥し、樹脂付き銅箔を得た。
さらに上記樹脂付き銅箔2枚の間に、上記プリプレグを10層積層して、150℃2時間、180℃5時間の条件での加熱加圧成形により厚さ1.5mmの銅箔付き積層板を作製し、銅箔引き剥がし試験用の試験片とした。
また、樹脂組成物の誘電特性評価用として、上記樹脂溶液を110℃で1時間乾燥し、加熱加圧成形により厚さ1.5mmの樹脂板を作製し、誘電特性測定用の試験片とした。
【0097】
【表2】

*1,配合割合は全て固形分換算
【0098】
【表3】

*1,配合割合は全て固形分換算
【0099】
表1〜表3により、ポリカルボジイミド化合物をビニルベンジル化合物に配合することにより、硬化後においてビニルベンジル系化合物が有する優れた誘電特性を維持しながら、高い銅箔接着性を有することが示された。従って、本発明のプリプレグ、樹脂付き金属箔、ドライフィルムおよび基板を用いて作製した電子部品は、高周波帯域での使用に適し、信頼性に優れる回路基板等の電子部品とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、加工性に優れ、耐熱性があり、高周波(ギガヘルツ)帯域での使用に好適である低比誘電率及び低誘電損失の特性を有し、かつ基板を構成する金属材料等に対する接着性を有する熱硬化性樹脂組成物を用いた、高性能高周波電子部品分野において優れた伝送特性と長期信頼性に優れる電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の電子部品の実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明の電子部品の実施態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0102】
1.絶縁層
2.メッキ層
3.スルーホール
4.導体パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルベンジル系化合物とポリカルボジイミド化合物とを含有する熱硬化性樹脂組成物を用いてなる電子部品。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物を繊維材料に含浸させたプレプリグの形で用いる請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記繊維材料がガラス繊維である請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
金属箔上に、前記熱硬化性樹脂組成物を塗工し、両者を一体化させてなる樹脂付き金属箔の形で用いる請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
金属箔が銅箔である請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム上に一定の厚みに塗工し、溶剤を乾燥した後、保護フィルムを積層してなるドライフィルムの形で用いる請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂を用いて作製された高周波基板の形で用いる請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記ビニルベンジル系化合物が、ビニルベンジルエーテル化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
前記ビニルベンジル系化合物が、インデン化合物及び/若しくはフルオレン化合物又はフェノール樹脂とビニルベンジルハライドとの反応生成物である請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項10】
前記ビニルベンジル系化合物100質量部に対する前記ポリカルボジイミド化合物の配合割合が0.1〜30質量部である請求項1〜9のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−119531(P2007−119531A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310243(P2005−310243)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】