説明

熱輸送デバイスの製造方法及び熱輸送デバイス

【課題】拡散接合時に加えられる荷重を大きくすることなく製造される、気密性の高い熱輸送デバイスの製造方法及び熱輸送デバイスを提供すること。
【解決手段】フレーム部材2の接合面21と拡散接合される、上板部材1の接合面1aが凸形状に形成されることで、接合面1aと接合面21との接触領域を小さくすることができる。従って、接合面1a及び21とに加えられる圧力(単位面積あたりの荷重)が大きくなり、高い圧力で接合面1a及び21が拡散接合される。同様に、下板部材3の接合面3a及びフレーム部材2の接合面23も高い圧力で拡散接合される。これにより、拡散接合時に加えられる全体荷重Fを大きくすることなく、気密性の高い熱輸送デバイス100を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の相変化により熱を輸送する熱輸送デバイスの製造方法及び熱輸送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の電子機器を冷却するために、電子機器から発生する熱を吸収し、熱放射部へ輸送して放出する、ヒートパイプ等の冷却デバイスが用いられている。
【0003】
このような冷却デバイスでは、吸収した熱により内部に含まれる作動流体が蒸発し、その蒸気が低温の熱放射部へ移動し、凝縮することで熱が放出される。これにより電子機器が冷却される。
【0004】
近年においては、電子機器等の小型化、薄型化に伴い、その内部に含まれるIC等の発熱が大きな問題となっている。この問題の解決手段として、小型、薄型、高効率の廉価な冷却デバイスが求められている。
【0005】
特許文献1には、ヒートスプレッダーを構成する上カバー及び下カバーが拡散接合される、拡散接合工程について記載されている。拡散接合のために設定される条件として、拡散接合温度、圧力及び時間が挙げられている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−140435号公報(段落[0023]、[0024]、[0026]、[0033]、図7−図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、冷却デバイスの内部の気密性を高めるためには、上記の拡散接合工程において、冷却デバイスに加えられる荷重を大きくする必要がある。しかしながら、大きな荷重を均一に加えることは難しく、冷却デバイスに加えられる荷重にムラが発生する場合がある。そうすると、上カバー及び下カバーの接合状態も均一にならず、冷却デバイスの気密性が損なわれるおそれがある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、拡散接合時に加えられる荷重を大きくすることなく製造される、気密性の高い熱輸送デバイスの製造方法及び熱輸送デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の、前記容器の内部空間を囲む側壁の一部を構成するための凸形状の接合面と、前記容器を構成する第2の板の接合面とを対面させることを含む。
前記容器を形成するために、前記第1の板の前記接合面と、前記第2の板の前記接合面とが拡散接合される。
【0010】
第1の板には、第2の板の接合面と拡散接合されることにより容器の側壁の一部を構成するための凸形状の接合面が、環状に設けられている。この第1の板の接合面が凸形状を有していることにより、上記拡散接合工程において、第1の板の接合面と第2の板の接合面との接触面積が小さくなる。従って、第1の板の接合面及び第2の板の接合面に加えられる圧力(単位面積あたりの荷重)が大きくなり、高い圧力で第1の板の接合面及び第2の板の接合面が拡散接合される。これにより、拡散接合時に加えられる全体荷重を大きくすることなく、気密性の高い熱輸送デバイスを製造することができる。
【0011】
前記第1の板は、複数の前記凸形状の接合面を有してもよい。
【0012】
第1の板に設けられた複数の凸形状の接合面は、第2の板の接合面と高い圧力で拡散接合され、容器の側壁の一部を構成する。この側壁の一部となった複数の凸形状の接合面が、容器の内部空間を多重に囲むので、リーク不良の確率を低くすることができる。
【0013】
前記拡散接合工程は、前記複数の凸形状の接合面を変形させてもよい。
【0014】
上記拡散接合工程で加えられる高い圧力により、容器の側壁の一部を構成する凸形状の接合面の幅が大きくなる。これにより、熱輸送デバイスの気密性が高められる。
【0015】
前記変形した複数の凸形状の接合面の各幅の合計は、100μm〜1cmであってもよい。
【0016】
前記熱輸送デバイスの製造方法は、さらに、機械研磨、エッチング、又は金型加工により、前記凸形状の接合面を形成することを含んでもよい。
【0017】
本発明の別の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の、前記容器の内部空間を囲む側壁の一部を構成するための凸形状の接合面と、前記側壁を構成するフレーム部材の第1の接合面とを対面させることを含む。
前記容器を構成する第2の板の接合面と、前記フレーム部材の、前記第1の接合面の反対側にある第2の接合面とを対面させる。
前記容器を形成するために、前記第1の板の前記接合面と前記第1の接合面とが拡散接合され、かつ、前記第2の板の前記接合面と前記第2の接合面とが拡散接合される。
【0018】
第1の板の接合面とフレーム部材の第1の接合面とを対面させる工程、及び第2の板の接合面とフレーム部材の第2の接合面とを対面させる工程は、同時に行われてもよいし、順次行われてもよい。
【0019】
前記第2の板の接合面は、前記側壁の一部を構成するために凸形状に形成されてもよい。
【0020】
これにより、上記拡散接合工程において加えられる荷重を大きくすることなく、第1の板とフレーム部材、及び第2の板とフレーム部材とが、共に、高い圧力で拡散接合される。
【0021】
本発明の別の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の接合面と、前記容器の内部空間を囲む側壁を構成するフレーム部材の、前記側壁の一部を構成するための凸形状の第1の接合面とを対面させることを含む。
前記容器を構成する第2の板の接合面と、前記フレーム部材の、前記第1の接合面の反対側にある第2の接合面とを対面させる。
前記容器を形成するために、前記第1の板の前記接合面と前記第1の接合面とが散接合され、かつ、前記第2の板の前記接合面と前記第2の接合面とが拡散接合される。
【0022】
前記フレーム部材の第2の接合面は、前記側壁の一部を構成するために凸形状に形成されてもよい。
【0023】
本発明の別の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の接合面と、前記容器を構成する第2の板の接合面とが対面するように、かつ、環状の凸部を有する治具部の、前記凸部が前記第1の板の接合面の反対側から前記第1の板に向くように、前記治具部、前記第1の板及び前記第2の板を積層することを含む。
前記積層方向に前記治具部、前記第1の板及び前記第2の板に荷重を加えることで、前記第1の板の前記接合面が前記容器の内部空間を囲む側壁の一部として構成されるように、前記凸部により前記第1の板の前記接合面を凸形状に形成し、
前記容器を形成するために、前記荷重を利用して前記第1の板の前記接合面と前記第2の板の前記接合面とが拡散接合される。
【0024】
治具部が有する環状の凸部により第1の板の接合面へ高い圧力が加えられ、第1の板の接合面が、容器の側壁の一部として構成されるように凸形状に形成される。また、その高い圧力で第1の板の接合面及び第2の板の接合面が拡散接合される。
【0025】
本発明の別の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する板を曲げることにより、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を、前記曲げられて形成される前記板の第1の部位及び第2の部位で挟む。
前記容器の内部空間を囲む側壁の一部を構成するための、前記第1の部位に形成された凸形状の接合面と、前記第2の部位の接合面とが対面させられる。
前記容器を形成するために、前記第1の部位の前記接合面と、前記第2の部位の前記接合面とが拡散接合される。
【0026】
これにより、1つの板が曲げられて容器が形成されるので、部品数が減り、コストを削減することができる。また、複数の部品により容器が構成される場合において、それら各部品の所定の位置決め精度が必要となるが、本発明では、そのような高い位置決め精度は必要がない。
【0027】
本発明の一形態に係る熱輸送デバイスは、容器と、作動流体とを具備する。
前記容器は、内部空間を囲む側壁を有する容器であって、前記側壁の一部を構成するための凸形状の接合面を有する第1の板と、前記凸形状の接合面に拡散接合により接合された第2の板とを有する。
前記作動流体は、前記容器内で相変化することにより熱を輸送する。
【0028】
本発明の別の形態に係る熱輸送デバイスでは、容器は、内部空間を囲む側壁を有する容器であって、第1の板と、フレーム部材と、第2の板とを有する。
前記第1の板は、前記側壁の一部を構成するための凸形状の接合面を有する。
前記フレーム部材は、前記凸形状の接合面に拡散接合により接合された第1の接合面を有し、前記側壁を構成する。
前記第2の板は、前記フレーム部材の前記第1の接合面の反対側にある第2の接合面に拡散接合により接合される。
前記第2の板は、前記フレーム部材の前記第2の接合面に拡散接合により接合された、前記側壁の一部を構成するための凸形状の接合面を有してもよい。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、拡散接合時に加えられる荷重を大きくすることなく、気密性の高い熱輸送デバイスが製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0031】
[第1の実施形態に係る熱輸送デバイス]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。図2は、その分解斜視図であり、図3は、図1における符号X及びYの拡大図である。図1の断面図は、熱輸送デバイス100の長手方向における断面図であり、以後、断面図の方向は同様である。
【0032】
熱輸送デバイス100は、容器4と、容器4内に設けられた毛細管部材5とを含む。容器4は、上板部材1、フレーム部材2及び下板部材3により構成される。フレーム部材2により、容器4の内部空間を囲む側壁が構成される。
【0033】
容器4の内部には、相変化により熱を輸送する図示しない作動流体が封入されており、この作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材5が設けられている。毛細管部材5は、第1のメッシュ層6と、第1のメッシュ層6に積層された第2のメッシュ層7とを含む。第2のメッシュ層7は、第1のメッシュ層6に含まれるメッシュよりも目の粗いメッシュからなる。
【0034】
作動流体としては、純水、エタノール又は代替フロン等が用いられる。
【0035】
容器4を構成する上板部材1、フレーム部材2及び下板部材3の材料としては、典型的には銅が用いられる。その他に、例えばニッケル、アルミニウム、又はステンレス等が用いられてもよい。上板部材1及び下板部材3の厚みは、典型的には0.1mm〜0.8mmである。フレーム部材2の厚みは、典型的には0.1mm〜0.25mmであり、図2に示すように、幅aは典型的には2mm〜1cmである。ここで典型的な例として挙げる材料及び数値等は、これに限られるという意味ではない。このことは、以降の説明でも同様である。
【0036】
図2に示すように、第1のメッシュ層6及び第2のメッシュ層7は、金属細線による網目状のメッシュを有するメッシュ部材8が、1枚又は複数枚積層されて形成されている。本実施形態では、第1のメッシュ層6として、2〜5枚のメッシュ部材8が積層され、第1のメッシュ層6の上に第2のメッシュ層7として、1枚のメッシュ部材8が積層されている。複数のメッシュ部材8は、例えばろう付け、接着剤を用いた接合、又はめっき処理等により積層される。各メッシュ部材8の厚みは、典型的には0.02mm〜0.05mmである。
【0037】
熱輸送デバイス100が動作していないときは、作動流体は、第1のメッシュ層6及び第2のメッシュ層7のうち、主に毛細管力の強い第1のメッシュ層6の方に引き寄せられて保持されている。
【0038】
毛細管部材5として、メッシュ層以外のものが用いられてもよい。例えば複数のワイヤーが束になったものなどが挙げられるが、作動流体に毛細管力を作用させるものであれば、どのようなものでもよい。また、気相となった作動流体の流路には毛細管部材5が用いられない構造でもよい。すなわち、容器4の厚み方向で、例えば容器4の内部空間の底面から半分の高さまで毛細管部材5が配置され、他の半分は毛細管部材5が配置されない構造であってもよい。
【0039】
図3に示すように、上板部材1及び下板部材3には、凸形状の接合面1a及び3aがそれぞれ設けられている。接合面1a及び3aは、例えば機械研磨、エッチング、又は金型加工等で形成される。エッチングとしては、薬品(例えば硫酸及び過酸化水素水)を用いたドライエッチングやRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチング技術が用いられる。また、金型加工としては、プレス加工、又は鋳造加工等が用いられる。これにより、熱輸送デバイス100の製造におけるコストを抑えることができる。
【0040】
熱輸送デバイス100の動作について説明する。熱輸送デバイス100の吸熱部V(図1参照)において、例えば回路デバイス等の熱源10から熱を受け、液相の作動流体が蒸発する。気相になった作動流体は、主に第2のメッシュ層7を通って放熱部Wへ移動し、放熱部Wで熱を放出し凝縮する。液相になった作動流体は、第1のメッシュ層6による毛細管力を受けて吸熱部Vへ移動し、熱源10からの熱を受けて再び蒸発する。このサイクルが繰り返されることで、熱源10が冷却される。
【0041】
なお図1では、熱源10は、熱輸送デバイス100の液相側に近い側、つまり第1のメッシュ層6に近い側に配置される例を示した。しかし、熱輸送デバイス100は、薄板形状で形成されているので、図17に示すように、例えば熱輸送デバイス100の気相側に近い側、つまり第2のメッシュ層7側に近い側に配置されても、高い熱輸送性能を発揮することができる。
【0042】
[熱輸送デバイス100の製造方法]
図4は、熱輸送デバイス100の製造方法を説明する図である。図4(A)に示すように、例えば図示しない接合装置の台上に下板部材3が載置され、下板部材3に、フレーム部材2及び毛細管部材5が載置され、また、フレーム部材2に上板部材1が載置される。この際、上板部材1の凸形状の接合面1aと、フレーム部材2の上板部材1と接合される接合面21とが対面する。また、下板部材3の凸形状の接合面3aと、フレーム部材2の下板部材3と接合される接合面23とが対面する。
【0043】
図5(A)は、図4(A)において、上板部材1の凸形状の接合面1aと、フレーム部材2の接合面21とが対面したときの、接合面1aと接合面21との接触領域Zを示した模式的な図である。接合面3aと接合面23との接触領域も同様である。図5(A)に示すように、接合面1aが凸形状に形成されることで、接合面1aと接合面21との接触領域Zを小さくすることができる。
【0044】
図4(B)に示すように、上板部材1、フレーム部材2及び下板部材3が加熱された状態で、上板部材1側及び下板部材3側の両方から均等に全体荷重Fが加えられる。これにより接合面1a及び3aが、それぞれフレーム部材2と拡散接合される。接合面1a及び3aは、上板部材1及び下板部材3に、それぞれ環状に設けられており(図2の符号3a参照)、フレーム部材2と拡散接合されることで、容器4の側壁の一部を構成する。
【0045】
図5(B)は、図4(B)において拡散接合された接合面1aと接合面21との接触領域Zを示す模式的な図である。図5(B)に示すように、図4(B)の拡散接合工程において、接合面1aは変形し幅が大きくなる。これにより熱輸送デバイス100の気密性が高められる。
【0046】
図5(A)で説明したように、接合面1aが凸形状に形成されることで、接合面1aと接合面21との接触領域Zを小さくすることができる。従って、接合面1a及び21に加えられる圧力(単位面積あたりの荷重)が大きくなり、高い圧力で接合面1a及び21が拡散接合される。同様に、接合面3a及び23も高い圧力で拡散接合される。これにより、図4(B)に示す拡散接合工程において、全体荷重Fを大きくすることなく、気密性の高い熱輸送デバイス100を製造することができる。
【0047】
本実施形態では、上板部材1及び下板部材3に凸形状の接合面1a及び3aがそれぞれ設けられるが、これに限られない。上板部材1又は下板部材3のいずれか一方に凸形状の接合面が設けられる構造でも、上記した本実施形態の特有の効果は得られる。
【0048】
変形した接合面1a及び3aの幅について、本発明者は、以下のようなシミュレーションに基づいて検討した。
【0049】
図6は、シミュレーションのために想定される、隙間(ボイド)を有する熱輸送デバイスを説明する模式的な断面図である。これ以後の説明では、毛細管部材の図示を省略する。
【0050】
熱輸送デバイス900は、上板部材901及びベッセル形状の下板部材903で構成される容器904を有する。上板部材901及び下板部材903の接合部分には、直径d(nm)の円筒状のボイド950が形成され、このボイド950により発生するリークレートがシミュレーションされる。ボイド950の長さは側壁の幅bと同等であり、それをリークパスbとする。
【0051】
図7は、リークパスbに対するリークレートをシミュレーションしたグラフである。容器904の内部空間の圧力は、25℃の水の蒸気圧とほぼ同等の0.03atmとする。容器904の外部は大気とする。これらの条件で、ボイド950の直径dが100nm、10nm及び1nmの場合におけるリークレートがシミュレーションされる。直径dとして設定される100nmは、熱輸送デバイスの製造に用いられる一般的な部材の、表面の粗さによる凹凸の平均の高さの実測値に基づいた数値である。つまり、ここでのシミュレーションにおいては、直径dが100nmのボイドは、接合面911と接合面931の表面の粗さにより発生するボイドとして想定されている。
【0052】
リークレートが、一般的なHeリークディテクタの測定限界である1.00×10-10Pa・m3/sec以下の場合に、リークが無いと判断する。分子直径が小さく、質量も小さいHeのリークレートが1.00×10-10Pa・m3/sec以下の範囲であれば、熱輸送デバイス900の気密性は損なわれない。
【0053】
図7のグラフに示すように、リークパスbが100μm〜10000μm(1cm)の範囲で、リークレートが1.00×10-10Pa・m3/secより小さくなる(破線で囲った領域)。つまり、リークパスbが100μm〜1cmの範囲であれば、熱輸送デバイス900の気密性は損なわれない。
【0054】
このことを熱輸送デバイス100について考える。図4(B)の拡散接合工程において、上板部材1の接合面1a及びフレーム部材2の接合面21の表面の粗さにより、ボイド(直径dが100nmのボイド)が、接合面1aと接合面21との接合部分に発生したとする。しかしながら、上記拡散接合工程において変形された接合面1aの幅が100μm〜1cmの範囲であれば、発生したボイドのリークパスも100μm〜1cmの範囲となり、熱輸送デバイス100の気密性は損なわれない。
【0055】
また、図4(B)の拡散接合工程では、接合面1a及び21に高い圧力が加えられるので、接合面1a及び21の表面の粗さによる凹凸の高さが小さくなり、表面の粗さにより発生するボイドの直径dも小さくなることが考えられる。この場合リークレートは小さくなるので、上記の範囲の幅を有する接合面1aにより、熱輸送デバイス100の気密性は十分に保たれる。
【0056】
以上の説明は、接合面1aの幅が上記の範囲で限定されることを意味している訳ではない。熱輸送デバイス100の気密性が保たれる範囲で、適宜設定してもよい。
【0057】
次に、本発明の各実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法の、拡散接合工程における全体荷重と圧力との関係について説明する。
【0058】
[第2の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。図8(A)に示すように、熱輸送デバイス200のベッセル形状の下板部材203に、凸形状の接合面201aを有する上板部材201が載置される。図8(B)は、接合面201aと下板部材203の接合面231との接触領域Zを示す模式的な図である。
【0059】
図9は、比較対象の熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。図9(A)に示すように、熱輸送デバイス1000の下板部材1003に、凸形状でない接合面1011を有する上板部材1001が載置される。図9(B)は、接合面1011と下板部材1003の接合面1031との接触領域Zを示す模式的な図である。
【0060】
ここで、図8(B)及び図9(B)に示す接合面231及び1031の大きさを同等とし、短手方向の大きさfを5cm、長手方向の大きさeを20cm、及び幅gを5mmとする。また、図8(B)に示す接触領域Zの幅jを100μmとする。この場合、熱輸送デバイス200における、接合面201aと接合面231との接触領域Zの面積は0.5cm2となり、熱輸送デバイス1000における、接合面1011と接合面1031との接触領域Zの面積は24cm2となる。これらの数値は説明の便宜上設定されるもので、熱輸送デバイス200の大きさを限定するものではない。
【0061】
熱輸送デバイス200及び1000に同等の全体荷重100kgfが加えられる。そうすると、接合面201a及び231に加えられる圧力は、200kgf/cm2(20MPa)となり、接合面1011及び1031に加えられる圧力は、4.2kgf/cm2(0.42MPa)となる。つまり、本実施形態に係る熱輸送デバイス200の容器204の方が、高い圧力での拡散接合により形成され、気密性が高くなる。また、拡散接合工程で発生するボイドによる歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0062】
比較対象の熱輸送デバイス1000の容器1004が、容器204と同様に高い圧力(20MPa)で形成されるためには、上板部材1001及び下板部材1003に、100kgfの50倍となる5tf程度の全体荷重が加えられる必要がある。しかしながら、大きな荷重を均一に加えることは難しく、上板部材1001及び下板部材1003に加えられる荷重にムラが発生する場合がある。そうすると、上板部材1001及び下板部材1003の接合状態も均一にならず、熱輸送デバイス1000の気密性が損なわれる。また、大きな荷重を発生させるための装置にかかるコストも問題となる。
【0063】
熱輸送デバイス1000のように、容器が低い圧力での拡散接合で形成される場合には、拡散接合に費やされる時間も長くなる。しかしながら、本発明の各実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法では、拡散接合に費やされる時間を短縮することができる。このことを、次に説明する。
【0064】
図10は、2つの部材が拡散接合される場合の、接合過程を説明するグラフである(西口、他「接合機構領域図による固相接合過程の検討」溶接学会論文集 第4巻(1996)p311−p316参照)。拡散接合される2つの部材には銅が用いられており、銅の表面の粗さによる凹凸の高さh00及び間隔Lは一定とする。
【0065】
図10に示すS0は、圧力P0及び温度T0における拡散接合の開始点(接合率0%)を示している。S0から垂直に延びる線lに沿って拡散接合が進行しS3で終わる(接合率100%)。
【0066】
また図10のグラフには、塑性変形接合領域、クリープ変形接合領域、及び拡散接合領域の3つの領域が示されている。これらの各領域について説明する。
【0067】
拡散接合の接合機構は、塑性変形接合機構、クリープ変形接合機構、及び拡散接合機構の3つに大別される。塑性変形接合機構及びクリープ変形接合機構は、接合面近傍に力学的ひずみを与え、接合面同士を変形密着させようとする機構である。塑性変形接合機構は接合開始時のみに働く機構であり、クリープ変形接合機構はその後の接合過程中作用し続ける機構である。拡散接合機構は、原子の拡散により接合面同士を接合させようとする機構である。これらの接合機構が互いに独立して、拡散接合の接合過程に寄与している。
【0068】
図10に示す各領域は、その領域内で拡散接合の接合過程に最も寄与している接合機構を示している。例えば、上記した線l上の点がクリープ変形接合領域内にある場合では、その接合過程に最も大きく寄与している接合機構は、クリープ変形接合機構ということになる。
【0069】
1は境界面I上の点である。境界面Iは、塑性変形接合機構の終了を意味している。境界面Iよりも上の領域では、クリープ変形接合機構及び拡散接合機構により、拡散接合が進行する。S2は境界面II上にあり、これはクリープ変形接合機構及び拡散接合機構の寄与率がそれぞれ50%であることを示している。従って、圧力P0及び温度T0における拡散接合は、塑性変形接合機構(S0−S1)、クリープ変形接合機構(S1−S2)、及び拡散接合機構(S2−S3)がこの順で、最も寄与率が大きい機構となって進行する。図10に示すように、温度Tが一定なら、圧力Pが大きい拡散接合ほど、クリープ変形接合領域を多く通って進行する。圧力Pが小さく、曲線mよりも左の領域で進行する拡散接合では、クリープ変形接合機構の寄与率は小さい。
【0070】
図11は、温度を一定とした場合の、圧力、接合率、及び最も寄与率が大きい接合機構の関係を示すグラフである。図11には、接合開始からの等しい経過時間tを示す曲線(以後、等時間線と言う)と、クリープ変形接合機構及び拡散接合機構の寄与率を示す曲線も示されている。温度T、拡散接合される銅の表面の凹凸の高さh00及び間隔Lは、それぞれ1023K、0.5μm及び5μmであり一定である。
【0071】
図11に示すように、圧力Pが高くなるほど等時間線が上昇する。これは等しい経過時間tにおいて、圧力Pが高くなるほど、接合率が大きくなることを意味する。つまり、高い圧力Pによる、クリープ変形接合領域を多く通る拡散接合の方が、短時間で進行する。これにより、上述した熱輸送デバイス200の製造方法における、高い圧力(20MPa)による拡散接合が短時間で進行すること分かる。
【0072】
[第3の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法]
図12は、本発明の第3の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。本実施形態に係る熱輸送デバイス300では、上板部材301及び下板部材303に、複数の凸形状の接合面が設けられている。図12(A)に示すように、上板部材301には凸形状の接合面301a及び301bが、下板部材303には凸形状の接合面303a及び303bが設けられている。図12(B)は、接合面301aとフレーム部材302との接触領域Z1及び接合面301bとフレーム部材302との接触領域Z2を示す図である。接触領域Z1は、接触領域Z2に囲まれている。
【0073】
接合面301a及び301bは、フレーム部材302と高い圧力で拡散接合され、容器304の側壁の一部となる。この側壁の一部となった接合面301a及び301bが容器304の内部空間を多重に囲むので、リーク不良の確率を低くすることができる。接合面303a及び303bも同様である。
【0074】
接合面301a及び301bは上記拡散接合工程において変形し、それぞれの幅は大きくなる。変形した接合面301a及び301bの幅の合計が、上記したように100μm〜1cmの範囲であれば、リーク不良を十分に防ぐことができる。
【0075】
[第4の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法]
図13は、本発明の第4の実施形態に係る、治具部を用いた熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【0076】
治具部450及び460の材料としては、典型的にはカーボン又はステンレスが用いられる。
【0077】
治具部460に下板部材403が載置され、下板部材403に上板部材401が載置される。この上板部材401に凸部450aを有するベッセル形状の治具部450が載置される。凸部450aは上板部材401の下板部材403に接合される接合面411の反対側の面415に載置される。
【0078】
治具部450及び熱輸送デバイス400が載置された方向で全体荷重が加えられると、凸部450aにより、上板部材401の面415に高い圧力が加えられる。この高い圧力により、面415及び接合面411が凸形状に形成される。また、この高い圧力により凸形状に形成された接合面411と下板部材403とが拡散接合され、接合面411は容器404の側壁の一部を構成する。
【0079】
本実施形態では、上板部材401に凸形状の接合面をあらかじめ設ける必要が無いので、コストを抑えることができる。また、凸形状の接合面があらかじめ設けられる場合の、凸形状の接合面の形成における誤差等による歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0080】
[第5の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法]
図14は、本発明の第5の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【0081】
治具部560に下板部材503が載置され、下板部材503に凸形状の接合面501aを有する上板部材501が載置される。また、上板部材501にベッセル形状の治具部550が載置される。次に、治具部550及び熱輸送デバイス500が載置された方向で全体圧力が加えられ、上板部材501と下板部材503とが拡散接合される。凸形状の接合面501aにより、上板部材501及び下板部材503は、高い圧力で拡散接合される。
【0082】
[凸形状の接合面の具体的な形状の例]
図15は、凸形状の接合面の具体的な形状の例を示した断面図である。ここでは同様の形状を有する凸形状の接合面Sが3つ設けられた場合による例を示している。
【0083】
図15(A)及び(B)は、他の部材と接触する接合面Sの先端部分が尖っている形状である。図15(C)及び(D)は、先端部分が他の部材の接合面とほぼ平行な面でなる形状である。また、複数の凸形状の接合面図Sが設けられた場合に、15(B)、(C)及び(D)に示すように、隣り合う凸形状の接合面Sに間隔が設けられてもよいし、図15(A)に示すように間隔が設けられなくても良い。
【0084】
図15に示す形状に限られず、拡散接合工程における他の部材との接触領域が小さくなるような形状であればどのような形状でもよい。また、互いに異なる形状を有する接合面が複数設けられてもよい。拡散接合され変形した接合面の幅(複数の場合はその合計)が100μm〜1cmであれば、熱輸送デバイスの容器の気密性は十分に保たれる。
【0085】
[変形例]
本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更され得る。例えば、図16に示すように、凸形状の接合面が設けられる箇所が適宜設定されてもよい。
【0086】
図16(A)は、ベッセル形状の下板部材603の、上板部材601と拡散接合される接合面603aを、凸形状に形成したものである。
【0087】
図16(B)は、フレーム部材702の、上板部材701と拡散接合される接合面702a、及び、下板部材703と拡散接合される接合面702bを、凸形状に形成したものである。
【0088】
図16(C)は、上板部材801の、フレーム部材802と拡散接合される接合面801a、及び、フレーム部材802の、下板部材803と拡散接合される接合面802aを、凸形状に形成したものである。
【0089】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0090】
上記各実施形態では、容器が、上板部材、下板部材等により形成されるとして説明した。一方、第6実施形態では、容器が、1つの板部材が曲げられることで形成される。従って、その点を中心に説明する。
【0091】
図18は、第6の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図19は、図18に示すA−A間の断面図である。図20は、熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【0092】
図18に示すように、熱輸送デバイス110は、一方向(Y軸方向)に長い矩形の薄板形状を有する容器51を備えている。この容器51は、1つの板部材52が曲げられることで形成される。図20及び図21(B)に示すように、板部材52の縁部52bから内側へ所定の距離d内であって、板部材52の中心線に対して半分の領域には、凸形状の接合面52aが設けられている。また、縁部52bから内側へ所定の距離d内であって、中心線に対して他方の半分の領域には、その接合面52aが当接して拡散接合により接合される平面状の接合面52cが設けられている。すなわち、図20に示すように、板部材52の周縁部が接合領域となっている。
【0093】
板部材52は、典型的には、無酸素銅、タフピッチ銅、あるいは銅合金で構成される。しかしこれに限られず、板部材52は、銅以外の金属で構成されてもよく、その他、熱伝導率の高い材料が用いられてもよい。
【0094】
図18及び図19に示すように、容器51は、長手方向(Y軸方向)に沿う方向での側部51cが、湾曲した形状とされている。すなわち、容器51は、図20に示す板部材52が、板部材52の略中央で曲げられて形成されることから、側部51cが湾曲した形状とされている。以降では、側部51cを湾曲部51cと呼ぶ場合がある。
【0095】
容器51の内部には、毛細管部材5が設けられている。毛細管部材5は、上述のように、1つまたは複数のメッシュ部材8を含む。
【0096】
[熱輸送デバイス110の製造方法]
図21は、熱輸送デバイスの製造方法を示す図である。
【0097】
図21(A)に示すように、まず、板部材52が用意される。そして、板部材52の略中央において、板部材52が曲げられる。
【0098】
板部材52が所定の角度まで曲げられると、図21(B)に示すように、曲げられた板部材52の間に、毛細管部材5が入れられる。なお、毛細管部材5は、板部材52の曲げが開始される前に、板部材52上の所定の位置に配置されていてもよい。板部材52の間に、毛細管部材5が入れられると、毛細管部材5を挟み込むように、板部材52がさらに曲げられる。これにより、接合面52a及び接合面52cが対面する。そして、図21(C)に示すように、曲げられた板部材52の接合部53が加圧され、接合面52a及び接合面52cが拡散接合により接合される。拡散接合により加圧される部分は、図18に示す接合部53であり、四角形の端部の4辺のうち3辺である。また、この拡散接合工程において、図21(C)に示すように、毛細管部材5が板部材52の上板部52d及び下板部52eに拡散接合により接合される。
【0099】
この熱輸送デバイス110の場合、容器51が1つの板部材52により形成されるので、部品数が減り、コストを削減することができる。また、2つ以上の部材で容器51が形成される場合、これらの部材の位置を合わせる必要があるが、本実施形態では、部材の位置を合わせる必要がない。従って、熱輸送デバイス110を容易に製造することができる。
【0100】
[変形例]
図22は、上記熱輸送デバイス110の変形例を説明するための図であり、板部材の展開図である。
【0101】
図22に示すように、板部材52は、板部材52の中央において、長手方向(Y軸方向)に沿うように、溝54を有している。溝54は、例えば、プレス加工や、エッチング加工により形成されるが、溝54の形成方法は、特に限定されない。
【0102】
板部材52に溝54が設けられることで、板部材52を曲げ易くすることができる。これにより、さらに容易に、熱輸送デバイス110を製造することができる。なお、板部材52は長手方向で(Y方向を軸として)折り曲げる構造を示したが、短辺(短手方向)で(X方向を軸として)折り曲げるようにしてもよい。
【0103】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。なお、第7の実施形態では、上述の第6の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0104】
図23は、第7の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図24は、図23に示すA−A間の断面図である。図25は、熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【0105】
図23及び図24に示すように、熱輸送デバイス120は、一方向(Y軸方向)に長い矩形の薄板形状を有する容器61を備えている。
【0106】
この容器61は、図25に示す板部材62が中央から折り返されて形成される。板部材62は、板部材62の中央において、板部材62の長手方向に沿うように、2つの開口65が設けられている。このように開口65が設けられることにより、板部材62の左側の板と右側の板とが、3つの領域66で接続されたような形状となっている。
【0107】
容器61は、長手方向(Y軸方向)に沿う方向での側部61c、61dと、短手方向(x軸方向)に沿う方向での側部61e、61fとに接合部63を有している。この接合部63において、斜線で示す接合面62aと、凸形状の接合面62bとが拡散接合により接合されて、容器61が形成される。
【0108】
このように上板と下板とが接合された結果、側部61cから突出した3つの突出部64が形成される。
【0109】
熱輸送デバイス120では、板部材62に開口65が設けられるため、板部材62を容易に曲げることができる。これにより、さらに容易に熱輸送デバイス120を製造することができる。
【0110】
板部材62の、開口65及び縁部62cとの間の領域66と、2つの開口65の間の領域66とに、例えば、プレス加工により形成された溝が設けられていてもよい。これによりさらに容易に、板部材62を折り曲げることができる。
【0111】
図18以降に示した実施形態のうちいずれか1つの特徴部分と、図12〜図15に示した実施形態のうちいずれか1つの特徴部分とが組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す模式的な分解斜視図である。
【図3】図1における熱輸送デバイスの部分的な拡大図である。
【図4】第1の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【図5】上板部材の凸形状の接合面とフレーム部材の接合面との接触領域Zを示した模式的な図である。
【図6】シミュレーションのために想定される、隙間(ボイド)を有する熱輸送デバイスを説明する模式的な断面図である。
【図7】リークパスに対するリークレートをシミュレーションしたグラフである。
【図8】第2の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【図9】比較対象の熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【図10】2つの部材が拡散接合される場合の、接合過程を説明するグラフである。
【図11】温度を一定とした場合の、圧力、接合率、及び最も寄与率が大きい接合機構の関係を示すグラフである。
【図12】第3の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【図13】第4の実施形態に係る、治具部を用いた熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【図14】第5の実施形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を説明する図である。
【図15】凸形状の接合面の具体的な形状の例を示した図である。
【図16】本発明に係る実施形態の変形例を示す図である。
【図17】気相側に近い側に熱源が配置された第1の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す模式的な断面図である。
【図18】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図19】図18に示すA−A間の断面図である。
【図20】図18に示す熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【図21】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を示す図である。
【図22】変形例に係る熱輸送デバイスを説明するための図であり、板部材の展開図である。
【図23】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図24】図23に示すA−A間の断面図である。
【図25】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【符号の説明】
【0113】
1、201、301、401、501、601、701、801、901、1001…上板部材
1a、3a、201a、301a、301b、303a、303b、501a、601a、702a、702b、801a、802a…凸形状の接合面
2、302、702、802…フレーム部材
3、203、303、403、503、603、703、803、903、1003…下板部材
4、204、304、404、904、1004…容器
5…毛細管部材
6…第1のメッシュ層
7…第2のメッシュ層
8…メッシュ部材
10…熱源
21、23…フレーム部材の接合面
100、200、300、400、500、900、1000…熱輸送デバイス
231、931、1031…下板部材の接合面
411、911、1011…上板部材の接合面
415…上板部材の面
450a…治具部の凸部
450、460、550、560…治具部
950…ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の、前記容器の内部空間を囲む側壁の一部を構成するための凸形状の接合面と、前記容器を構成する第2の板の接合面とを対面させ、
前記容器を形成するために、前記第1の板の前記接合面と、前記第2の板の前記接合面とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記第1の板は、複数の前記凸形状の接合面を有する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記拡散接合工程は、前記複数の凸形状の接合面を変形させる
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記変形した複数の凸形状の接合面の各幅の合計は、100μm〜1cmである
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、さらに、
機械研磨、エッチング、又は金型加工により、前記凸形状の接合面を形成する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記拡散接合工程は、前記凸形状の接合面を変形させる
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記変形した凸形状の接合面の幅は、100μm〜1cmである
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項8】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の、前記容器の内部空間を囲む側壁の一部を構成するための凸形状の接合面と、前記側壁を構成するフレーム部材の第1の接合面とを対面させ、
前記容器を構成する第2の板の接合面と、前記フレーム部材の、前記第1の接合面の反対側にある第2の接合面とを対面させ、
前記容器を形成するために、前記第1の板の前記接合面と前記第1の接合面とを拡散接合し、かつ、前記第2の板の前記接合面と前記第2の接合面とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記第2の板の接合面は、前記側壁の一部を構成するために凸形状に形成されている
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項10】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の接合面と、前記容器の内部空間を囲む側壁を構成するフレーム部材の、前記側壁の一部を構成するための凸形状の第1の接合面とを対面させ、
前記容器を構成する第2の板の接合面と、前記フレーム部材の、前記第1の接合面の反対側にある第2の接合面とを対面させ、
前記容器を形成するために、前記第1の板の前記接合面と前記第1の接合面とを拡散接合し、かつ、前記第2の板の前記接合面と前記第2の接合面とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の熱輸送デバイスの製造方法であって、
前記フレーム部材の第2の接合面は、前記側壁の一部を構成するために凸形状に形成されている
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項12】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する第1の板の接合面と、前記容器を構成する第2の板の接合面とが対面するように、かつ、環状の凸部を有する治具部の、前記凸部が前記第1の板の接合面の反対側から前記第1の板に向くように、前記治具部、前記第1の板及び前記第2の板を積層し、
前記積層方向に前記治具部、前記第1の板及び前記第2の板に荷重を加えることで、前記第1の板の前記接合面が前記容器の内部空間を囲む側壁の一部として構成されるように、前記凸部により前記第1の板の前記接合面を凸形状に形成し、
前記容器を形成するために、前記荷重を利用して前記第1の板の前記接合面と前記第2の板の前記接合面とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項13】
作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイスの容器を構成する板を曲げることにより、前記作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を、前記曲げられて形成される前記板の第1の部位及び第2の部位で挟み、
前記容器の内部空間を囲む側壁の一部を構成するための、前記第1の部位に形成された凸形状の接合面と、前記第2の部位の接合面とを対面させ、
前記容器を形成するために、前記第1の部位の前記接合面と、前記第2の部位の前記接合面とを拡散接合する
熱輸送デバイスの製造方法。
【請求項14】
内部空間を囲む側壁を有する容器であって、前記側壁の一部を構成するための凸形状の接合面を有する第1の板と、前記凸形状の接合面に拡散接合により接合された第2の板とを有する容器と、
前記容器内で相変化することにより熱を輸送する作動流体と
を具備する熱輸送デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の熱輸送デバイスであって、
前記第1の板は、複数の前記凸形状の接合面を有する
熱輸送デバイス。
【請求項16】
内部空間を囲む側壁を有する容器であって、前記側壁の一部を構成するための凸形状の接合面を有する第1の板と、前記凸形状の接合面に拡散接合により接合された第1の接合面を有する、前記側壁を構成するフレーム部材と、前記フレーム部材の前記第1の接合面の反対側にある第2の接合面に拡散接合により接合された第2の板とを有する容器と、
前記容器内で相変化することにより熱を輸送する作動流体と
を具備する熱輸送デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の熱輸送デバイスであって、
前記第2の板は、前記フレーム部材の前記第2の接合面に拡散接合により接合された、前記側壁の一部を構成するための凸形状の接合面を有する
熱輸送デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−151352(P2010−151352A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328868(P2008−328868)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】