説明

燃料噴射装置

【課題】装置の大型化を回避しつつ、ピストン摺動長を拡大可能にする。
【解決手段】コモンレール1の取付筒部101に、フローダンパ20が螺合される雄ねじ106を形成するとともに、取付筒部先端面103をピストン210のストッパとして機能させることにより、螺合部とピストン摺動部を軸方向にずらした構成を実現しつつ、従来の燃料噴射装置におけるフローダンパのキャップを廃止可能にしている。そして、キャップの廃止により、装置の大型化(すなわち、長さHの増加)を回避しつつ、ピストン摺動長の拡大を可能にしている。したがって、摺動クリアランス内でのピストン210の倒れを小さくし、ピストン210の摺動性の悪化や作動流量性能の悪化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンレールに蓄えた高圧燃料をインジェクタから噴射させる燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料噴射装置は、インジェクタに過剰燃料流出などの異常が生じて、コモンレールからインジェクタに流れる燃料の流量が異常増加したときに、コモンレールからインジェクタに至る燃料通路をフローダンパにて閉じるようになっている。
【0003】
このフローダンパは、バルブボデーに摺動孔が形成され、摺動孔内に配置されたピストンが摺動するようになっている。また、バルブボデーに形成された雄ねじとコモンレールに形成された雌ねじを螺合させて、フローダンパをコモンレールに締結するようになっている。そして、螺合部に生じる歪みによりバルブボデーとピストンの摺動クリアランスが減少して、ピストンの摺動性が悪化してしまう。
【0004】
そこで、図4に示すように、キャップ99により螺合部とピストン摺動部を軸方向にずらしてピストン210の摺動性の悪化を防止している(例えば、特許文献1参照)。この際、キャップ99の追加による装置の大型化を回避するために、具体的には、コモンレール1の中心部からフローダンパ20の端部までの長さHが増加しないようにするために、ピストン摺動長を短くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−180210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の燃料噴射装置におけるフローダンパ20は、ピストン摺動時に摺動クリアランス内でピストン210の倒れが発生する。この倒れによりピストン角部に高い面圧が発生するため、ピストン210の摺動性が悪化する。また、この倒れにより、ピストン角部およびバルブボデー200の摺動孔203に摩耗が発生し、作動流量性能も悪化する。そして、ピストン摺動長を短くした場合、ピストン210の倒れが大きくなるため、ピストン210の摺動性の悪化や作動流量性能の悪化が顕著になるという問題が発生する。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、装置の大型化を回避しつつ、ピストン摺動長を拡大可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、蓄圧室(102)に高圧燃料を蓄えるコモンレール(1)と、コモンレール(1)からインジェクタ(2)に流れる燃料の流量が異常増加したときに、コモンレール(1)からインジェクタ(2)に至る燃料通路を閉じるフローダンパ(20)とを備える燃料噴射装置において、コモンレール(1)は、フローダンパ(20)が螺合される雄ねじ(106)が形成された取付筒部(101)を備え、フローダンパ(20)は、取付筒部(101)の雄ねじ(106)に螺合される雌ねじ(201)が一端側に形成されるとともに、燃料通路を構成する摺動孔(203)および摺動孔(203)の下流側に位置する弁座(204)を有するバルブボデー(200)と、摺動孔(203)内に摺動自在に配置され、弁座(204)に着座することにより燃料通路を遮断するピストン(210)と、摺動孔(203)内に配置され、ピストン(210)を開弁向きに付勢するスプリング(220)とを備え、ピストン(210)における上流側端面が取付筒部(101)の先端面(103)に当接して、ピストン(210)の開弁向きの移動範囲が規制されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
これによると、螺合部とピストン摺動部を軸方向にずらした構成を実現しつつ、従来の燃料噴射装置におけるフローダンパのキャップを廃止することができる。そして、キャップの廃止により、装置の大型化を回避しつつ、ピストン摺動長を拡大することが可能になる。また、キャップを廃止することができるため、フローダンパ(20)の部品点数を少なくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射装置において、取付筒部(101)の先端面(103)は焼き入れされていることを特徴とする。
【0011】
これによると、ピストン(210)の着座面である取付筒部(101)の先端面(103)の耐摩耗性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料噴射装置において、コモンレール(1)は、バルブボデー(200)の一端側端面(202)に対向して形成されたレールシート面(107)を備え、レールシート面(107)にバルブボデー(200)の一端側端面(202)が当接して、コモンレール(1)とバルブボデー(200)間がシールされていることを特徴とする。
【0013】
従来の装置では、コモンレールとフローダンパ間のシール部が2箇所であるのに対し、請求項3の発明によると、コモンレール(1)とフローダンパ(20)間のシール部を1箇所にすることができ、それにより漏れが発生し難くなる。
【0014】
また、従来の装置では、コモンレールの雌ねじ穴底部にレールシート面を形成する必要があるが、穴底部は加工性がよくない。これに対し、請求項3の発明によると、レールシート面(107)はコモンレール(1)の外表面に形成されるため、レールシート面(107)の加工性が向上する。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の燃料噴射装置において、レールシート面(107)は焼き入れされていることを特徴とする。これによると、シール性を確保することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料噴射装置において、コモンレール(1)は、バルブボデー(200)の一端側端面(202)に対向して形成されたレールシート面(107)を備え、レールシート面(107)とバルブボデー(200)の一端側端面(202)との間にガスケット(16)が挟持されて、コモンレール(1)とバルブボデー(200)間がシールされていることを特徴とする。
【0017】
これによると、シール性能を向上させることができる。また、レールシート面(107)はコモンレール(1)の外表面に形成されるため、レールシート面(107)の加工性が向上する。
【0018】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、コモンレール(1)は、蓄圧室(102)の下流側に形成されたレールオリフィス(104)と、レールオリフィス(104)よりも通路面積が広くレールオリフィス(104)と摺動孔(203)とを連通させるダンパ室(105)とを備えることを特徴とする。
【0019】
これによると、レールオリフィス(104)とダンパ室(105)とによって圧力脈動を低減させるため、レールオリフィス(104)の径を従来よりも大きくすることができ、レールオリフィス(104)の加工性が向上する。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料噴射装置を示す構成図である。
【図2】図1のコモンレールおよびフローダンパの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料噴射装置におけるコモンレールおよびフローダンパの断面図である。
【図4】従来の燃料噴射装置におけるコモンレールおよびフローダンパの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る燃料噴射装置を示す構成図、図2は図1のコモンレールおよびフローダンパの断面図である。
【0024】
図1に示すように、燃料噴射装置は、エンジン(例えばディーゼルエンジン:図示しない)の各気筒に燃料噴射を行うシステムであり、コモンレール1、インジェクタ2、サプライポンプ3、ECU4(エンジン制御ユニット)、EDU5(駆動ユニット)等から構成される。
【0025】
コモンレール1は、インジェクタ2に供給する高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器であり、燃料噴射圧に相当するコモンレール圧が蓄圧されるように高圧ポンプ配管6を介して高圧燃料を圧送するサプライポンプ3の吐出口と接続されるとともに、各インジェクタ2へ高圧燃料を供給する複数のインジェクタ配管7が接続されている。なお、コモンレール1とインジェクタ配管7の接続部分には、フローダンパ20が設けられており、フローダンパ20の詳細は後述する。
【0026】
コモンレール1から燃料タンク8へ燃料を戻すリリーフ配管9には、プレッシャリミッタ10が取り付けられている。このプレッシャリミッタ10は圧力安全弁であり、コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁して、コモンレール圧を限界設定圧以下に抑える。また、コモンレール1には、減圧弁11が取り付けられている。この減圧弁11は、ECU4から与えられる開弁指示信号によって開弁してリリーフ配管9を介してコモンレール圧を急速に減圧するものである。このように、コモンレール1に減圧弁11を搭載することによって、ECU4はコモンレール圧を車両走行状態に応じた圧力へ素早く低減制御できる。なお、この減圧弁11が設けられない機種もある。
【0027】
インジェクタ2は、エンジンの各気筒毎に搭載されて燃料を各気筒内に噴射供給するものであり、コモンレール1より分岐する複数のインジェクタ配管7の下流端に接続されて、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料を各気筒内に噴射供給する燃料噴射ノズル、およびこの燃料噴射ノズル内に収容されたニードルのリフト制御を行う電磁弁等を搭載している。なお、インジェクタ2からのリーク燃料も、リリーフ配管9を経て燃料タンク8に戻される。
【0028】
サプライポンプ3は、コモンレール1へ高圧燃料を圧送する高圧燃料ポンプであり、燃料タンク8内の燃料をフィルタ12を介してサプライポンプ3へ吸引するフィードポンプを搭載し、このフィードポンプによって吸い上げられた燃料を高圧に圧縮してコモンレール1へ圧送する。フィードポンプおよびサプライポンプ3は共通のカムシャフト13によって駆動される。なお、このカムシャフト13は、エンジンによって回転駆動されるものである。
【0029】
サプライポンプ3には、燃料を高圧に加圧する加圧室内に燃料を導く燃料流路に、その燃料流路の開度度合を調整するためのSCV14(吸入調量弁)が搭載されている。このSCV14は、ECU4からのポンプ駆動信号によって制御されることにより、加圧室内に吸入される燃料の吸入量を調整し、コモンレール1へ圧送する燃料の吐出量を変更するバルブであり、コモンレール1へ圧送する燃料の吐出量を調整することにより、コモンレール圧を調整するものである。即ち、ECU4はSCV14を制御することにより、コモンレール圧を車両走行状態に応じた圧力に制御するものである。
【0030】
ECU4には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、スタンバイRAMまたはEEPROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路等の機能を含んで構成される周知構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、ECU4に読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジンの運転状態等に応じた信号)に基づいて各種の演算処理を行うようになっている。なお、ECU4には、運転状態等を検出する手段として、コモンレール圧を検出するレール圧センサ15の他に、アクセル開度を検出するアクセルセンサ、エンジン回転数を検出する回転数センサ、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ等のセンサ類が接続されている。
【0031】
ECU4における具体的な演算の一例を示すと、ECU4は、インジェクタ2の駆動制御を行うインジェクタ制御系、およびSCV14の駆動制御を行うレール圧制御系の制御を実施する。インジェクタ制御系は、燃料の噴射毎に、ROMに記憶されたプログラムと、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)とに基づいて、噴射形態、目標噴射量、噴射開始時期を算出し、インジェクタ開弁信号を算出する。レール圧制御系は、ROMに記憶されたプログラムと、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)とに基づいて、目標レール圧を算出し、レール圧センサ15から算出される実レール圧を目標レール圧に一致させるためのSCV駆動信号を算出する。
【0032】
EDU5は、ECU4から与えられるインジェクタ開弁信号に基づいてインジェクタ2の電磁弁へ開弁駆動電流を与えるインジェクタ駆動回路と、ECU4から与えられるSCV駆動信号(デューティ信号)に基づいてSCV14へ駆動電流値を与えるポンプ駆動回路とを備える。なお、このEDU5は、ECU4と同一のケース内に搭載されるものであっても良い。
【0033】
図2に示すように、コモンレール1は、鉄系金属(例えば炭素鋼)よりなり、略円筒状のレール本体100、および、レール本体100の外周面からレール本体100の径方向に突出する円筒状の取付筒部101を備えている。この取付筒部101は、レール本体100の軸方向に沿って複数個設けられている。
【0034】
レール本体100の内部には、高圧燃料を蓄える蓄圧室102が形成されている。この蓄圧室102は、レール本体100の軸方向に沿って延びている。
【0035】
レール本体100および取付筒部101の内部には、蓄圧室102の燃料出口部に位置する燃料通路としてのレールオリフィス104、および、このレールオリフィス104から取付筒部101の先端面103(以下、取付筒部先端面という)まで延びる燃料通路としてのダンパ室105が形成されている。この取付筒部先端面103は、部分焼き入れ(例えば高周波焼き入れ)により硬度が高められている。
【0036】
レールオリフィス104は、蓄圧室102の燃料流れ下流側に位置し、流れる燃料の圧力脈動を減衰させる機能を有する。ダンパ室105は、レールオリフィス104の燃料流れ下流側に位置し、レールオリフィス104よりも通路面積を広くして、流れる燃料の圧力脈動を減衰させることが可能な容積が確保されている。
【0037】
取付筒部101の外周面には、フローダンパ20が螺合される雄ねじ106が形成されている。また、レール本体100と取付筒部101の外表面境界部には、雄ねじ106の軸線に対して垂直な平面のレールシート面107が形成されている。このレールシート面107は、部分焼き入れ(例えば高周波焼き入れ)により硬度が高められている。
【0038】
フローダンパ20は、コモンレール1からインジェクタ2に流れる燃料の流量が異常増加したときに、コモンレール1からインジェクタ2に至る燃料通路を閉じる機能を有するものである。
【0039】
フローダンパ20は、コモンレール1に締結される略円筒状のバルブボデー200と、このバルブボデー200の内部で摺動するピストン210と、このピストン210を付勢するスプリング220とを備えている。
【0040】
バルブボデー200は、鉄系金属(例えばSCM)よりなり、その内部の一端側には、取付筒部101の雄ねじ106に螺合される雌ねじ201が形成されている。バルブボデー200の一端側端面202は、レールシート面107に対向している。そして、バルブボデー200をコモンレール1に螺合すると、バルブボデー200の一端側端面202とレールシート面107とが当接して、コモンレール1とバルブボデー200間がシールされるようになっている。
【0041】
バルブボデー200の内部には、その軸方向中間部に、ピストン210を摺動自在に保持する燃料通路としての摺動孔203が形成されている。また、バルブボデー200の内部には、摺動孔203の燃料流れ下流側に、ピストン210が接離するテーパ状の弁座204が形成され、この弁座204の燃料流れ下流側に、燃料通路としてのボデー燃料通路205が形成されている。なお、バルブボデー200は、焼き入れにより硬度が高められている。
【0042】
ピストン210は、鉄系金属(例えばSCM)よりなり、摺動孔203に摺動自在に保持される摺動筒部211と、この摺動筒部211よりも小径で摺動筒部211の燃料流れ下流側に位置する突出筒部212と、この突出筒部212における燃料流れ下流側の端部に形成され、弁座204に着座することにより燃料通路を遮断する弁部213とを備えている。
【0043】
ピストン210の内部には、摺動筒部211の燃料流れ上流側端面と突出筒部212の外周面とを連通する燃料通路としての絞り通路214が形成されている。この絞り通路214は、摺動筒部211の燃料流れ上流側端面から突出筒部212の軸方向中間部まで延びるピストン燃料通路215、および、このピストン燃料通路215と突出筒部212の外周面とを連通するピストンオリフィス216で構成される。なお、ピストン210は、焼き入れにより硬度が高められている。
【0044】
ピストン210は、摺動孔203内に配置されたスプリング220によって、弁部213が弁座204から離れる向きに(すなわち開弁向きに)付勢されている。そして、燃料が流れていないときや微少流量のときには、摺動筒部211の燃料流れ上流側端面が取付筒部先端面103に当接して、ピストン210の開弁向きの移動範囲が規制されるようになっている。すなわち、取付筒部先端面103は、ピストン210のストッパとして機能する。
【0045】
なお、フローダンパ20の作動値(すなわち、コモンレール1からインジェクタ2に流れる燃料の流量が異常増加したときに燃料通路を閉じるセット値)は、スプリング220の荷重、ピストンオリフィス216の径等によって設定される。
【0046】
上記構成において、コモンレール1からフローダンパ20に流れる燃料は、レールオリフィス104とダンパ室105とによって圧力脈動が低減される。そして、微少噴射などインジェクタ2に流れる燃料の流量が少ない場合、絞り通路214の前後の圧差が小さいためピストン210が取付筒部先端面103に着座した状態であり、ダンパ室105を通過した燃料は絞り通路214のみを通ってインジェクタ2に導かれる。
【0047】
大噴射などインジェクタ2に流れる燃料の流量が正常範囲で増加した場合、絞り通路214の前後の圧差が増加するためピストン210が弁座204側に向かって移動し、ピストン210が取付筒部先端面103から離れる。すると、ダンパ室105を通過した燃料は、絞り通路214と、摺動筒部211と摺動孔203の間の摺動クリアランスとを通ってインジェクタ2に供給される。
【0048】
インジェクタ2に過剰燃料流出などの異常が生じるなどして、インジェクタ2に流れる流量が異常増加し、絞り通路214の前後の圧差が予め設定された差圧以上になると、ピストン210が弁座204側に向かってさらに移動し、弁部213が弁座204に着座し、ボデー燃料通路205を閉塞する。このようにして、フローダンパ20は、何らかの不具合が生じて、コモンレール1からインジェクタ2に流れる燃料の流量が規定量以上に増加すると、コモンレール1からインジェクタ2に至る燃料通路を閉じて高圧燃料の流出を停止させる。
【0049】
本実施形態では、コモンレール1の取付筒部101に、フローダンパ20が螺合される雄ねじ106を形成するとともに、取付筒部先端面103をピストン210のストッパとして機能させることにより、螺合部とピストン摺動部を軸方向にずらした構成を実現しつつ、従来の燃料噴射装置におけるフローダンパのキャップを廃止可能にしている。そして、キャップの廃止により、装置の大型化(すなわち、長さHの増加)を回避しつつ、ピストン摺動長の拡大を可能にしている。したがって、摺動クリアランス内でのピストン210の倒れを小さくし、ピストン210の摺動性の悪化や作動流量性能の悪化を抑制することができる。
【0050】
また、キャップを廃止することができるため、フローダンパ20の部品点数を少なくすることができる。
【0051】
さらに、ピストン210の着座面である取付筒部先端面103は、焼き入れにより硬度が高められているため、その耐摩耗性を向上させることができる。
【0052】
また、従来の装置では、コモンレールとフローダンパ間のシール部が2箇所であるのに対し、本実施形態ではコモンレール1とフローダンパ20間のシール部を1箇所(すなわち、バルブボデー200の一端側端面202とレールシート面107との当接部のみ)にすることができ、それにより漏れが発生し難くなる。
【0053】
さらにまた、従来の装置では、コモンレールの雌ねじ穴底部にレールシート面を形成する必要があるが、穴底部は加工性がよくない。これに対し、本実施形態では、レールシート面107はコモンレール1の外表面に形成されるため、レールシート面107の加工性が向上する。
【0054】
また、レールオリフィス104とダンパ室105とによって圧力脈動を低減させるため、レールオリフィス104の径を従来よりも大きくすることができ、レールオリフィス104の加工性が向上する。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態に係る燃料噴射装置におけるコモンレールおよびフローダンパの断面図である。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0056】
図3に示すように、バルブボデー200の一端側端面202とレールシート面107との間に、例えば銅合金よりなるガスケット16が挟持されて、コモンレール1とバルブボデー200間がシールされている。なお、レールシート面107は、焼き入れされていない。
【0057】
本実施形態によると、ガスケット16を用いているため、シール性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 コモンレール
2 インジェクタ
20 フローダンパ
101 取付筒部
102 蓄圧室
103 取付筒部の先端面
106 雄ねじ
200 バルブボデー
201 雌ねじ
203 摺動孔
204 弁座
210 ピストン
220 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄圧室(102)に高圧燃料を蓄えるコモンレール(1)と、前記コモンレール(1)からインジェクタ(2)に流れる燃料の流量が異常増加したときに、コモンレール(1)からインジェクタ(2)に至る燃料通路を閉じるフローダンパ(20)とを備える燃料噴射装置において、
前記コモンレール(1)は、前記フローダンパ(20)が螺合される雄ねじ(106)が形成された取付筒部(101)を備え、
前記フローダンパ(20)は、前記取付筒部(101)の雄ねじ(106)に螺合される雌ねじ(201)が一端側に形成されるとともに、前記燃料通路を構成する摺動孔(203)および前記摺動孔(203)の下流側に位置する弁座(204)を有するバルブボデー(200)と、前記摺動孔(203)内に摺動自在に配置され、前記弁座(204)に着座することにより前記燃料通路を遮断するピストン(210)と、前記摺動孔(203)内に配置され、前記ピストン(210)を開弁向きに付勢するスプリング(220)とを備え、
前記ピストン(210)における上流側端面が前記取付筒部(101)の先端面(103)に当接して、前記ピストン(210)の開弁向きの移動範囲が規制されるように構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
前記取付筒部(101)の先端面(103)は焼き入れされていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記コモンレール(1)は、前記バルブボデー(200)の一端側端面(202)に対向して形成されたレールシート面(107)を備え、
前記レールシート面(107)に前記バルブボデー(200)の一端側端面(202)が当接して、前記コモンレール(1)と前記バルブボデー(200)間がシールされていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記レールシート面(107)は焼き入れされていることを特徴とする請求項3に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記コモンレール(1)は、前記バルブボデー(200)の一端側端面(202)に対向して形成されたレールシート面(107)を備え、
前記レールシート面(107)と前記バルブボデー(200)の一端側端面(202)との間にガスケット(16)が挟持されて、前記コモンレール(1)と前記バルブボデー(200)間がシールされていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
前記コモンレール(1)は、前記蓄圧室(102)の下流側に形成されたレールオリフィス(104)と、前記レールオリフィス(104)よりも通路面積が広く前記レールオリフィス(104)と前記摺動孔(203)とを連通させるダンパ室(105)とを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64362(P2013−64362A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203973(P2011−203973)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】