説明

燃料電池システム

【課題】水分を好適にパージ可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック110と、セル電圧モニタ115と、水素タンク121と、水素供給流路と、エゼクタ1と、水素オフガス流路と、パージ弁125と、コンプレッサ131と、空気供給流路と、空気の圧力を制御する圧力制御手段と、空気供給流路から分岐し、空気の圧力をエゼクタ1にパイロット圧として入力するパイロット圧入力流路と、パージ弁125及び圧力制御手段を制御する制御手段と、を備える燃料電池システム100であって、エゼクタ1は、パイロット圧入力流路から入力されるパイロット圧が高くなるとノズル11の噴射口12が大きくなり、二次側圧力が高くなる圧力制御機構を有し、制御手段は、燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判定した場合、圧力制御手段によって空気の圧力及びパイロット圧を高めた後、パージ弁125を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス)と、酸素を含む空気(酸化剤ガス)とが供給されることで発電する燃料電池の開発が進められ、例えば、燃料電池車(移動体)の電力源として期待されている。
【0003】
このような燃料電池が発電すると、そのカソードで水蒸気(生成水)が生成し、この生成水の一部は、MEA(Membrane Electrode Assembly)を透過し、アノード流路(燃料ガス流路)にクロスリークする。そして、クロスリークした水分の一部は、アノード流路に滞留し、MEAの表面等に付着する。このように水分が付着すると、この付着した水分に邪魔されて、水素がアノード(アノードを形成する触媒)に供給されにくくなり、燃料電池の電圧(出力)が目標電圧以下に低下し、燃料電池の発電状態が不調となる場合がある。
【0004】
そこで、このように燃料電池の発電状態が不調となった場合、アノード流路におけるガスの圧力を一時的に高めると共に、アノード流路の下流に設けられたパージ弁(排出弁)を一時的に開き、アノード流路に滞留するガス及び水分を、外部にパージ(排出)する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−112585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ソレノイドで駆動するエゼクタによって、アノード流路におけるガスの圧力(アノード圧)を制御しているので、ソレノイド等の電磁駆動装置を備える必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、システム構成を簡易にしつつ、水分を好適にパージ可能な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料電池の発電状態を検出する発電状態検出手段と、燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段と前記燃料ガス流路の入口とを接続する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス供給流路に設けられたエゼクタと、前記燃料ガス流路の出口と前記エゼクタとを接続する燃料オフガス流路と、前記燃料オフガス流路に接続され、開くことで、前記燃料オフガス流路のガスを外部に排出する排出弁と、酸化剤ガス供給手段と、前記酸化剤ガス供給手段と前記酸化剤ガス流路の入口とを接続する酸化剤ガス供給流路と、前記酸化剤ガス流路における酸化剤ガスの圧力を制御する圧力制御手段と、前記酸化剤ガス供給流路から分岐し、酸化剤ガスの圧力を前記エゼクタにパイロット圧として入力するパイロット圧入力流路と、前記排出弁及び前記圧力制御手段を制御する制御手段と、を備える燃料電池システムであって、前記エゼクタは、前記燃料ガス供給手段からの燃料ガスを噴射するノズルと、前記ノズルの軸線上に配置されたニードルと、前記ノズルから噴射された燃料ガスと前記燃料オフガス流路からの燃料オフガスとを混合するディフューザと、を備え、前記パイロット圧入力流路から入力されるパイロット圧が高くなると前記ノズルの噴射口が大きくなり、二次側圧力が高くなる圧力制御機構を有し、前記制御手段は、前記発電状態検出手段の検出する前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、前記圧力制御手段によって酸化剤ガスの圧力及びパイロット圧を高めた後、前記排出弁を開くことを特徴とする燃料電池システムである。
【0009】
このような燃料電池システムによれば、圧制御機構を備えるエゼクタによって、エゼクタの二次側圧力、つまり、下流の燃料ガス流路におけるガスの圧力は制御される。
すなわち、エゼクタの圧力制御機構によって、パイロット圧入力流路から入力されるパイロット圧が高くなると、ノズルの噴射口が大きくなり、二次側圧力が高くなる。一方、パイロット圧入力流路から入力されるパイロット圧が低くなると、ノズルの噴射口が小さくなり、二次側圧力が低くなる。
【0010】
そして、制御手段が、燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、圧力制御手段によって酸化剤ガスの圧力を高めるので、パイロット圧入力流路を介してエゼクタに入力されるパイロット圧が高くなる。そうすると、エゼクタを構成するノズルの噴射口が大きくなり、ノズルから噴射される燃料ガスの流量が増加し、エゼクタの二次側圧力、つまり、燃料ガス流路におけるガスの圧力が高くなる。
【0011】
このように燃料ガス流路におけるガスの圧力が高くなっている状態において、制御手段が排出弁を開くので、燃料ガス流路に滞留するガスと共に、燃料ガス流路に滞留する水分(水蒸気)、燃料電池を構成するMEAの表面や燃料ガス流路を囲む流路壁面に付着した水分(結露水)が、開かれた排出弁を介して速やかに外部に排出される。そうすると、水分に邪魔されることなく、燃料ガスがMEAのアノードに良好に供給され、アノードにおける電極反応が良好に進行し、燃料電池の発電状態は速やかに回復する。
【0012】
このように、燃料電池システムによれば、ソレノイド等の電磁駆動装置を備えず、パイロット圧によって駆動する空圧駆動型のエゼクタを備えるので、システム構成が簡易となる。また、燃料ガスの圧力制御に際して、前記電磁駆動装置によって電力消費することもない。
【0013】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記酸化剤ガス流路を通流する酸化剤ガスの流量を制御する流量制御手段を備え、前記制御手段は、前記圧力制御手段によって酸化剤ガスの圧力を高める場合、前記酸化剤ガス流路に滞留する水分が排出されるように、前記流量制御手段によって酸化剤ガスの流量も増加させることを特徴とする。
【0014】
このような燃料電池システムによれば、制御手段は、圧力制御手段によって酸化剤ガスの圧力を高める場合、流量制御手段によって酸化剤ガスの流量も増加させる。そうすると、酸化剤ガス流路に滞留する水分(水蒸気、結露水等)が外部に排出される。これにより、水分に邪魔されることなく、酸化剤ガスがMEAのカソードに良好に供給され、カソードにおける電極反応が良好に進行し、燃料電池の発電状態は速やかに回復する。
【0015】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、前記圧力センサの検出する圧力が、発電要求量に基づいて算出される通常圧力よりも高い第1圧力に到達した後、前記排出弁を開くことを特徴とする。
【0016】
このような燃料電池システムによれば、圧力センサの検出する圧力が、通常圧力よりも高い第1圧力に到達した後、排出弁を開くので、燃料ガス流路に滞留する水分を確実に排出できる。すなわち、圧力センサによって、エゼクタの下流における燃料ガス流路のガスの圧力が、通常圧力よりも高い第1圧力に到達したか否か確認できる。
【0017】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、前記圧力制御手段による酸化剤ガスの圧力の増圧開始から、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力が発電要求量に基づいて算出される通常圧力よりも高い第1圧力に到達するまでに要する第1時間の経過後、前記排出弁を開くことを特徴とする。
【0018】
このような燃料電池システムによれば、圧力制御手段による酸化剤ガスの圧力の増圧開始から、エゼクタの下流におけるガスの圧力が通常圧力よりも高い第1圧力に到達するまでに要する第1時間の経過後、排出弁を開くので、燃料ガス流路の水分を確実に排出できる。
なお、第1時間は、事前試験やシミュレーションによって、エゼクタの下流(燃料ガス流路)におけるガスの圧力が通常圧力よりも高い第1圧力に到達するまでに要する時間に設定される。
【0019】
また、前記燃料電池システムにおいて、システム温度又はシステムの周囲温度を検出する温度センサを備え、前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合において、前記温度センサの検出する温度が所定温度以下であると判定したとき、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力を、前記第1圧力よりも高い第2圧力に到達させた後、前記排出弁を開くことを特徴とする。
【0020】
ここで、システム温度又はシステムの周囲温度が低くなると、燃料ガス流路に滞留する水蒸気は、その後に結露しやすくなる。
そこで、このような燃料電池システムによれば、制御手段が、燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合において、温度センサの検出する温度が所定温度以下であると判定したとき、エゼクタの下流(燃料ガス流路)におけるガスの圧力を、第1圧力よりも高い第2圧力に到達させた後、排出弁を開くので、より多量の水分を排出できる。
【0021】
このようにして、第1圧力よりも高い第2圧力に到達させた後、排出弁を開き、より多量の水分を排出するので、その後に燃料ガス流路で結露しにくくなる。
なお、所定温度は、事前試験等によって、その後に水蒸気が結露し、燃料電池の発電状態が不調となると判断される温度に設定される。
【0022】
また、前記燃料電池システムにおいて、前記燃料電池の発電開始から発電停止までの発電継続時間が、所定時間以下であるか否か判定する発電継続時間判定手段を備え、前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定し、前記温度センサの検出する温度が所定温度以下であると判定した場合において、前記発電継続時間判定手段が発電継続時間は所定時間以下であると判定したとき、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力を、前記第2圧力よりも高い第3圧力に到達させた後、前記排出弁を開くことを特徴とする。
【0023】
ここで、燃料電池の発電継続時間が短くなると、燃料電池を通流した燃料ガス及び酸化剤ガスの総流量も少なくなり、発電に伴って生成した水分が燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路にそのまま滞留し、現在滞留している水分の量が多くなる。特に、現在のシステム温度又はシステムの周囲温度が前記した所定温度以下であると、その後に滞留する多量の水分が結露し、燃料電池が不調となりやすい。
【0024】
そこで、このような燃料電池システムによれば、制御手段が、燃料電池の発電状態が不調であると判定し、温度センサの検出する温度が所定温度以下であると判定した場合において、発電継続時間判定手段が発電継続時間は所定時間以下であると判定したとき、エゼクタの下流(燃料ガス流路)におけるガスの圧力を、前記した第2圧力よりも高い第3圧力に到達させた後、排出弁を開くので、より多量の水分を排出できる。
【0025】
このようにして、第2圧力よりも高い第3圧力に到達させた後、排出弁を開き、より多量の水分を排出するので、その後に燃料ガス流路で結露しにくくなる。
なお、所定時間は、事前試験等によって、燃料電池を通流する燃料ガス及び酸化剤ガスの総流量が少なく、燃料電池内に多量の水分が滞留していると判断される時間に設定される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、システム構成を簡易にしつつ、水分を好適にパージ可能な燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る空圧駆動型のエゼクタの側断面図であり、パイロット圧が低く、ノズルが後退し、噴射口が小さく、アノード圧(二次側圧力)が低い状態を示す。
【図3】本実施形態に係る空圧駆動型のエゼクタの側断面図であり、パイロット圧が高く、ノズルが前進し、噴射口が大きく、アノード圧(二次側圧力)が高い状態を示す。
【図4】発電要求量と、目標アノード圧、目標カソード圧との関係を示すマップである。
【図5】発電要求量と、背圧弁の目標開度との関係を示すマップである。
【図6】発電要求量と、コンプレッサの目標回転速度との関係を示すマップである。
【図7】本実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0029】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示す本実施形態に係る燃料電池システム100は、図示しない燃料電池車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム100は、燃料電池スタック110と、セル電圧モニタ115と、燃料電池スタック110のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック110のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、燃料電池スタック110の掃気時に掃気ガスをカソード系からアノード系に導く掃気ガス導入系と、これらを電子制御するECU160(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0030】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック110は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セル111が積層して構成されたスタックであり、複数の単セル111は直列で接続されている。単セル111は、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟む2枚の導電性を有するセパレータと、を備えている。MEAは、1価の陽イオン交換膜等からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソード(電極)とを備えている。
【0031】
アノード及びカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体と、これに担持され、アノード及びカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)と、を含んでいる。
各セパレータには、各MEAの全面に水素又は空気を供給するための溝や、全ての単セル111に水素又は空気を給排するための貫通孔が形成されており、これら溝及び貫通孔がアノード流路112(燃料ガス流路)、カソード流路113(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0032】
そして、アノード流路112を介して各アノードに水素が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路113を介して各カソードに空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セル111で電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、燃料電池スタック110とモータ等の外部負荷とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック110が発電するようになっている。
2H→4H+4e …(1)
+4H+4e→2HO …(2)
【0033】
<セル電圧モニタ>
セル電圧モニタ115(発電状態検出手段)は、燃料電池スタック110を構成する複数の単セル111毎のセル電圧を検出する機器であり、モニタ本体と、モニタ本体と各単セルとを接続するワイヤハーネスとを備えている。モニタ本体は、所定周期で全ての単セル111をスキャニングし、各単セル111のセル電圧を検出し、平均セル電圧及び最低セル電圧を算出するようになっている。そして、モニタ本体(セル電圧モニタ115)は、平均セル電圧及び最低セル電圧をECU160に出力するようになっている。
【0034】
ここで、平均セル電圧や最低セル電圧は、燃料電池スタック110の発電状態に依存するパラメータであるから、セル電圧モニタ115は、燃料電池スタック110の発電状態を検出する発電状態検出機能を備えている。
因みに、アノード流路112、カソード流路113に滞留する水分(水蒸気、結露水)が多くなり、MEAの表面に結露水が付着すると、アノードに水素が、カソードに空気が供給されにくくなる。そして、このように、水素、空気が供給されにくくなると、平均セル電圧や最低セル電圧が低下し、燃料電池スタック110の発電状態は不調に近づく。
【0035】
<アノード系>
アノード系は、水素タンク121(燃料ガス供給手段)と、常閉型の遮断弁122と、エゼクタ1と、気液分離器124と、常閉型のパージ弁125(排出弁)と、常閉型の掃気ガス排出弁126(排出弁)と、常閉型のドレン弁127(排出弁)と、圧力センサ128と、温度センサ129とを備えている。
【0036】
<アノード系−上流側>
水素タンク121は、配管121a、遮断弁122、配管122a、エゼクタ1、配管122bを介して、アノード流路112の入口に接続されている。そして、ECU160からの指令によって遮断弁122が開かれると、水素が、水素タンク121から遮断弁122等を通って、アノード流路112に供給されるようになっている。
【0037】
すなわち、水素タンク121と、アノード流路112との入口とを接続する水素供給流路(燃料ガス供給流路)は、配管121aと、配管122aと、配管122bとを備えて構成されている。そして、エゼクタ1は、前記水素供給流路に設けられている。
【0038】
<エゼクタ>
ここで、図2、図3を参照して、エゼクタ1の具体的構造を説明する。
エゼクタ1は、水素タンク121からの水素をノズル11で噴射することで発生する負圧によって、アノードオフガスを吸引し、これらをディフューザ41で混合した後、アノード流路112に供給する機能を備えている。
【0039】
また、エゼクタ1は、カソード系から入力されるパイロット圧に基づいて、固定状態のニードル21に対してノズル11が軸方向において変位することで、ノズル11の噴射口12の面積が可変し、これにより、ノズル11の下流の圧力(二次側圧力)、つまり、アノード流路112におけるガスの圧力(アノード圧)を制御する機能を備えている。
すなわち、エゼクタ1は、ソレノイド(電磁駆動装置)によって駆動するものではなく、入力されるパイロット圧に基づいて、ノズル11が機械的に変位することで、二次側圧力を制御する空圧駆動型のものである。
【0040】
このようなエゼクタ1は、例えば、ノズル11と、ニードル21と、第1ボディ31及び第2ボディ32と、ディフューザ41と、第1ダイアフラム51及び第2ダイアフラム52と、第1圧縮コイルばね61及び第2圧縮コイルばね62と、を備えている。
そして、エゼクタ1内は、第1ダイアフラム51及び第2ダイアフラム52によって、水素タンク121からの水素が流入する第1ボディ31内の第1室A1と、ノズル11で噴射された水素及びアノードオフガスを混合するディフューザ41内の第2室A2(混合室)と、カソード系からの空気が流入する第3室A3(パイロット室)と、に仕切られている。
【0041】
ニードル21は、リング状のブラケット22を介して、第1ボディ31及び第2ボディ32に固定されており、固定状態となっている。なお、ブラケット22には、軸方向において複数の連通孔(図示しない)が形成されており、図2、図3におけるブラケット22の左右の空間は、前記連通孔を介して連通しており、いずれも第1室A1である。
【0042】
また、ニードル21は、内部に通路25を有する筒状の胴部23と、胴部23の一端側(前側)に形成された針状の先端部24と、を有している。そして、先端部24に対して、ノズル11が変位することで、ノズル11の噴射口12が可変するようになっている。なお、胴部23の外周面には、ノズル11との径方向における相対位置を決めるための軸受26が取り付けられている。
【0043】
さらに説明すると、水素タンク121からの水素は、第1ボディ31に形成された入口ポート33、リング状の第1室A1、胴部23の周壁に周方向で90°間隔に形成された連通孔27を通って、通路25に流入するようになっている。
次いで、水素は、通路25をニードル21の先端部24に向かって通流した後、胴部23の先端側に周方向で90°間隔にスロット状(長孔状)で形成された連通孔28を通って、一旦、ノズル11内に流出した後、ノズル11の噴射口12から第2室A2に噴射されるようになっている。なお、水素が、通路25を通流することで、軸受26を軸方向において横切るように設計されている。
【0044】
そして、ノズル11から第2室A2に水素が噴射されると、第2室A2で負圧が生成し、この負圧によって、ディフューザ41に形成された吸気ポート42を介してアノードオフガスを吸引されるようになっている。次いで、噴射された水素と、吸引されたアノードオフガスとは、ディフューザ41で混合されながら、アノード流路112に向かうようになっている。
【0045】
ノズル11は、軸受26の外側に摺動自在に設けられており、これにより、ノズル11がニードル21に対して変位自在となっている。
なお、ノズル11が変位すると、ノズル11の噴射口12とニードル21の先端部24との距離が可変し、噴射口12の面積が可変するように構成されている。すなわち、ノズル11が前進し、噴射口12と先端部24との距離が長くなると、噴射口12の面積が大きくなるように構成されている。一方、ノズル11が後退し、噴射口12と先端部24との距離が短く、つまり、先端部24が噴射口12に挿通した状態に近づくと、噴射口12の面積が小さくなるように構成されている。
【0046】
ここで、噴射口12の面積が大きくなると、ノズル11から噴射される水素量が増加するから、エゼクタ1の下流、つまり、アノード圧(アノード流路112のガスの圧力)は高くなる。一方、噴射口12の面積が小さくなると、ノズル11から噴射される水素量が減少するから、アノード圧は低くなる。
【0047】
また、ノズル11は、ノズル11に外嵌した第1リング部材13とで、第1ダイアフラム51の内周縁を挟んでいる。一方、第1ダイアフラム51の外周縁は、第1ボディ31とディフューザ41とで挟まれており、第1ダイアフラム51は、第1室A1と第2室A2とを仕切っている。
【0048】
さらに、第1リング部材13とディフューザ41との間には、第1圧縮コイルばね61が縮設されている。そして、第1圧縮コイルばね61は、ノズル11を後退させる向き(図2、図3において左向き)に付勢している。
【0049】
また、ノズル11は、ブラケット22を貫通するボルト14を介して、側断面視でハット状を呈する基部15と連結されている。
なお、ボルト14とブラケット22との間には、円筒状のカラー16が取り付けられている。カラー16は、ブラケット22に対して摺動自在であると共に、軸方向におけるノズル11と基部15との間隔を所定距離で保持している。すなわち、ノズル11は、ボルト14、カラー16、基部15、後記する第2リング部材17及び第3リング部材18と、一体に構成されている。
【0050】
基部15は、ニードル21の後端部に外嵌し、かつ、摺動自在に設けられており、基部15には第2リング部材17及び第3リング部材18が外嵌している。そして、第2リング部材17及び第3リング部材18は、第2ダイアフラム52の内周縁を挟んでいる。一方、第2ダイアフラム52の外周縁は、第1ボディ31と第2ボディ32とで挟まれており、第2ダイアフラム52は、第1室A1と第3室A3とを仕切っている。
【0051】
第3室A3(パイロット室)は、第2ボディ32内に形成された空間であり、カソード系からの空気が、第2ボディ32に形成された入口ポート34を通って、第3室A3に流入するようになっている。
なお、入口ポート34には、図1に示すように、カソード系の後記する配管131a(酸化剤ガス供給流路)から分岐し、カソード流路113における圧力(カソード圧)をパイロット圧としてエゼクタ1に入力する配管123a(パイロット圧入力流路)が接続されている。また、配管123aにはエゼクタ1に向かう空気の流量を絞るためのオリフィス123bが設けられている。さらに、オリフィス123bの下流の配管123aは、配管123cを介して、ECU160によって開閉制御(PWM制御)される常閉型のインジェクタ123に接続されている。すなわち、ECU160によってインジェクタ123が開かれると、エゼクタ1に入力されるパイロット圧が低下するようになっている。
【0052】
図2、図3に戻って説明を続ける。
第3リング部材18と第2ボディ32との間には、第2圧縮コイルばね62が縮設されている。そして、第2圧縮コイルばね62は、ノズル11を前進させる向き(図2、図3において右向き)に付勢している。
【0053】
ここで、第1圧縮コイルばね61及び第2圧縮コイルばね62のばね力と、第3室A3(パイロット室)における圧力(パイロット圧)と、ノズル11のポジションとの関係を説明する。
システムが停止、つまり、コンプレッサ131が停止し、第3室A3(エゼクタ1)に入力されるパイロット圧が低い場合、第1圧縮コイルばね61のばね力によって、ノズル11が後退し、ノズル11の噴射口12が小さくなるように構成されている(図2参照)。
【0054】
これに対し、コンプレッサ131が作動し、第3室A3に入力されるパイロット圧が高くなると、第3室A3に流入した空気が基部15及び第3リング部材18を、図2の右向きに押圧し、これにより、基部15等と一体であるノズル11が前進し、噴射口12が大きくなり、アノード圧(エゼクタ1の二次側圧力)が高くなるように構成されている(図3参照)。
【0055】
なお、アノード圧とカソード圧との差圧(ΔP)が大きいと、MEAが変形する虞があるため、通常は、アノード圧とカソード圧とが略一致、または、アノード圧が若干高くなるように、第1圧縮コイルばね61及び第2圧縮コイルばね62のばね力は設定されている。
【0056】
ここで、エゼクタ1において、配管123a(パイロット圧入力流路)から入力されるパイロット圧が高くなるとノズル11の噴射口12が大きくなり、二次側圧力を高くする圧力制御機構は、固定状態のニードル21と、パイロット圧に基づいて変位するノズル11と、エゼクタ1内を仕切る第1ダイアフラム51及び第2ダイアフラム52と、第1圧縮コイルばね61及び第2圧縮コイルばね62と、を備えて構成されている。
【0057】
<アノード系−下流側>
図1に戻って説明を続ける。
アノード流路112の出口は、配管124a、気液分離器124、配管124bを介して、エゼクタ1の吸気ポート42(図2参照)に接続されている。そして、アノード流路112から排出された未消費の水素を含むアノードオフガス(燃料オフガス)は、配管124a等を通って、エゼクタ1に戻された後、アノード流路112に再供給されるようになっている。
すなわち、アノード流路112の出口と、エゼクタ1の吸気ポート42とを接続するアノードオフガス流路(水素オフガス流路、燃料オフガス流路)は、配管124aと、配管124bとを備えて構成されており、水素を循環させる水素循環ラインとして機能している。
【0058】
<気液分離器>
気液分離器124は、アノードオフガスに含まれる水分(結露水、水蒸気)を分離すると共に、分離した水分を一時的に、例えば底部(タンク部)に貯溜するものである。
気液分離器124における気液分離方式としては、例えば、(1)アノードオフガスの流路断面積を増大させることで、その流速を低下させると共に、水分をその自重によってその場に留まらせることで分離する方式や、(2)低温冷媒が通流する冷媒管によってアノードオフオフガスの水蒸気を結露させて分離する方式や、(3)アノードオフガスを蛇行又は旋回させ、水分に遠心力を作用させて分離する方式、等を採用できる。
【0059】
<パージ弁>
配管124bは、配管125a、パージ弁125、配管125bを介して、後記する希釈器133に接続されている。
パージ弁125は、燃料電池スタック110の発電時や発電停止時において、アノード流路112から排出され、配管124a及び配管124bを循環するアノードオフガスに含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合、ECU160によって開かれる。
なお、ECU160は、例えば、燃料電池スタック110を構成する単セルの電圧(セル電圧)が所定セル電圧以下となった場合、不純物を排出する必要があると判定し、パージ弁125を開く設定となっている。
【0060】
また、パージ弁125は、アノード流路112の掃気時において、アノード流路112から配管124a、124bに排出された掃気ガス及び押し出された水分を、希釈器133(外部)に速やかに排出するため、掃気ガス排出弁126及びドレン弁127と共に開かれる設定となっている。
【0061】
<掃気ガス排出弁>
また、配管125a(パージ弁125)の接続位置よりも上流の配管124bは、配管126a、掃気ガス排出弁126、配管126bを介して、後記する希釈器133に接続されている。
掃気ガス排出弁126は、アノード流路112の掃気時において、アノード流路112から排出された掃気ガス及び押し出された水分を、希釈器133(外部)に排出するため、パージ弁125等と共に開かれる設定となっている。
【0062】
<ドレン弁>
気液分離器124の底部は、配管127a、ドレン弁127、配管127bを介して、後記する希釈器133に接続されている。ドレン弁127は、気液分離器124の底部に貯溜された水分、つまり、アノード流路112からアノードオフガス流路(配管124a等)に排出された水分を、希釈器133に排出する場合、ECU160によって開かれる。
なお、気液分離器124における貯溜水量は、水位センサや、燃料電池スタック110の積算電流値に基づいて検出(算出)される。
【0063】
また、ドレン弁127は、アノード流路112の掃気時において、アノード流路112から配管124a、124bに排出(導入)された掃気ガス及び押し出された水分を、希釈器133(外部)に速やかに排出するため、掃気ガス排出弁126等と共に開かれる設定となっている。
【0064】
圧力センサ128は、配管122bに取り付けられており、その検出値を現在のアノード流路112内の圧力(アノード圧P11)として、ECU160に出力するようになっている。
ただし、圧力センサ128の取付位置はこれに限定されず、例えば、アノード流路112や、配管124aに取り付けられた構成でもよい。
【0065】
温度センサ129は、配管124aに取り付けられており、配管124a内の温度を、システム温度T11として検出し、ECU160に出力するようになっている。
ただし、システム温度を検出する温度センサ129の取付位置はこれに限定されず、例えば、配管132aや、燃料電池スタック110から排出された冷媒が通流する配管(図示しない)に取り付けられた構成でもよい。
【0066】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ131(酸化剤ガス供給手段、掃気ガス供給手段)と、常開型の背圧弁132と、希釈器133とを備えている。
コンプレッサ131は、配管131a(酸化剤ガス(空気)供給流路)を介して、カソード流路113の入口に接続されている。そして、コンプレッサ131は、ECU160の指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込み、配管131aを介して、カソード流路113に供給するようになっている。また、コンプレッサ131は、燃料電池スタック110の掃気時には、掃気ガスを供給する掃気ガス供給手段として機能する。
【0067】
なお、配管131aと配管132aとを跨ぐように加湿器(図示しない)が設けられている。この加湿器は、水分透過性を有する中空糸膜を複数本内蔵し、この中空糸膜を介して、カソード流路113に向かう空気と、カソード流路113から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路113に向かう空気を加湿するものである。
【0068】
カソード流路113の出口は、配管132a、背圧弁132、配管132bを介して、希釈器133に接続されている。そして、カソード流路113(カソード)から排出されたカソードオフガスは、配管132a等を通って希釈器133に導かれるようになっている。
【0069】
背圧弁132は、例えばバタフライ弁から構成され、その開度がECU160によって制御されることで、カソード流路113における空気の圧力を制御するものである。
【0070】
ここで、カソード流路113におけるガスの圧力(カソード圧)は、コンプレッサ131の回転速度(吐出圧)及び/又は背圧弁132の開度によって制御される。すなわち、コンプレッサ131の回転速度が高まり、その吐出圧が高くなると、カソード圧は高くなり、また、背圧弁132の開度が小さくなっても、カソード圧は高くなる。したがって、カソード流路113における空気の圧力(カソード圧)を制御する圧力制御手段は、コンプレッサ131と、背圧弁132とを備えて構成されている。
なお、カソード圧が制御されると、これに連動して、配管123aを通ってエゼクタ1に入力されるパイロット圧も制御される。つまり、カソード圧が高くなるとパイロット圧も高くなり、カソード圧が低くなるとパイロット圧も低くなる。
【0071】
また、カソード流路113を通流する空気の流量は、コンプレッサ131の回転速度(吐出量)及び/又は背圧弁132の開度によって制御される。すなわち、コンプレッサ131の回転速度が高くなると、空気の流量は増加し、また、背圧弁132の開度が大きくなっても空気の流量が増加する。したがって、カソード流路113を通流する空気の流量を制御する流量制御手段は、コンプレッサ131と、背圧弁132とを備えて構成されている。
【0072】
希釈器133は、パージ弁125からのアノードオフガスと、配管132bからのカソードオフガス(希釈用ガス)とを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する容器であり、その内部に希釈空間を備えている。そして、希釈後のガスは、配管133aを通って車外に排出されるようになっている。
【0073】
<掃気ガス導入系>
掃気ガス導入系は、常閉型の掃気ガス導入弁141を備えている。掃気ガス導入弁141の上流は配管141aを介して配管131aに接続されており、掃気ガス導入弁141の下流は配管141bを介して配管122bに接続されている。
そして、燃料電池スタック110(アノード流路112)の掃気時に、コンプレッサ131が作動した状態で、ECU160によって掃気ガス導入弁141が開かれると、コンプレッサ131からの掃気ガスが、アノード流路112に導入されるようになっている。
【0074】
<その他機器>
温度センサ151は、燃料電池システム100の周囲温度である外気温度T12を検出するセンサであり、燃料電池車の適所に取り付けられている。そして、温度センサ151は、検出した外気温度T12を、ECU160に出力するようになっている。
【0075】
アクセル152は、運転者が燃料電池車を走行させるために踏み込むペダルであり、運転席の足元に配置されている。そして、アクセル152は、その開度(踏み込み量)をECU160に出力するようになっている。
【0076】
<ECU>
ECU160は、燃料電池システム100を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御するようになっている。
【0077】
<ECU−弁制御機能>
ECU160(弁制御手段)は、遮断弁122、パージ弁125、掃気ガス排出弁126、ドレン弁127及び掃気ガス導入弁141を、開閉制御する機能を備えている。
【0078】
<ECU−不調判定機能>
ECU160は、セル電圧モニタ115から入力される平均セル電圧及び/又は最低セル電圧に基づいて、現在、燃料電池スタック110の発電状態が不調であるか否か判定する機能を備えている。
具体的には、ECU160は、(1)平均セル電圧が所定平均セル電圧以下である場合、(2)最低セル電圧が所定最低セル電圧以下である場合、現在、燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判定するように設定されている。所定平均セル電圧、所定最低セル電圧は、事前試験等によって求められた電圧であって、アノード流路112、カソード流路113に多量の水分が滞留し、MEAに結露水が付着し、燃料電池スタック110の発電状態が不調と判断される電圧である。
なお、このように燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判定した場合、ECU160は、後記するように、アノード圧P11を目標アノード圧P1〜P3のいずれかに高めた後、パージ弁125を開き、水分を排出し、燃料電池スタック110の発電状態を回復させるように設定されている。
【0079】
<ECU−低温判定機能>
ECU160は、温度センサ129から入力されるシステム温度T11、及び/又は、温度センサ151から入力される外気温度T12に基づいて、現在、低温であり、その後にアノード流路112、カソード流路113に滞留する水蒸気が結露する虞が高いか否か判定する機能を備えている。
具体的には、ECU160は、(1)システム温度T11が所定システム温度T1以下である場合、(2)外気温度T12が所定外気温度以下である場合、現在、低温であると判定するように設定されている。
【0080】
なお、所定システム温度T1、所定外気温度は、事前試験等によって求められた温度であって、現在、低温であり、その後にアノード流路112等に滞留する水蒸気が結露すると判断される温度(例えば、0〜5℃)に設定される。また、後記する動作説明では、システム温度T11に基づいて判定する場合を例示する。
その他に例えば、現在のシステム温度T11が所定システム温度T1以下でなかったとしても、システム起動時(発電開始時)におけるシステム温度T11が所定システム温度T1以下である場合、低温であると判断する構成でもよい。外気温度T12についても同様である。
【0081】
<ECU−発電継続時間判定機能>
ECU160(発電継続時間判定手段)は、内蔵するクロックを利用して、燃料電池スタック110の直近における発電継続時間Δt21を算出する機能を備えている。直近における発電継続時間Δt21とは、直近の発電開始から直近の発電停止までの時間である。
なお、ここでは、ECU160からの指令に従って、燃料電池スタック110から電流を取り出す制御が実行されている場合、燃料電池スタック110は発電中であると判断する。因みに、燃料電池スタック110の出力端子にはDC−DCチョッパ回路等を含む電力制御装置が接続されており、この電力制御装置がECU160からの指令電流値及び指令電圧値に従って作動することで、燃料電池スタック110の発電電力が0を含めて制御される。
【0082】
そして、ECU160は、前記したように低温であると判定した場合において、算出した発電継続時間Δt21に基づいて、燃料電池スタック110の直近における発電(発電継続時間Δt21)が、短時間発電であるか否か判定する機能を備えている。
具体的には、ECU160は、発電継続時間Δt21が所定発電継続時間Δt0以下である場合、燃料電池スタック110の直近における発電は、短時間発電であると判定するように設定されている。
なお、所定発電継続時間Δt0は、事前試験等によって求められた時間であり、短時間発電であるため、発電に伴ってアノード流路112を通流した水素の総流量、カソード流路113を通流した空気の総流量が少なすぎ、発電に伴って生成した水分が、アノード流路112、カソード流路113にそのまま滞留していると判断される時間(例えば5〜30分)に設定される。
【0083】
<ECU−圧力設定機能>
ECU160(圧力設定手段)は、アクセル152からのアクセル開度等に基づいて、燃料電池スタック110に対しての発電要求量(モータ等の負荷からの負荷要求量)を算出する機能を備えている。なお、アクセル開度が大きくなると発電要求量は大きくなる。
そして、ECU160は、算出した発電要求量と、図4のマップとに基づいて、目標とするアノード圧(目標アノード圧P0〜P3)と、目標とするカソード圧(目標カソード圧P0〜P3)とを算出する機能を備えている。
なお、ここでは、MEAの両側における圧力バランスを考慮して、目標アノード圧P0〜P3と、目標カソード圧P0〜P3とが等しい場合を例示するが、その他に例えば、目標アノード圧P0〜P3が、目標カソード圧P0〜P3に対して、高めに設定される構成でもよいし、逆でもよい。
【0084】
さらに説明すると、目標アノード圧P0〜P3と、目標カソード圧P0〜P3とは、図4に示すように、発電要求量が大きくなると、高くなる関係となっている。また、目標アノード圧P0〜P3、目標カソード圧P0〜P3は、P0、P1、P2、P3の順で徐々に高くなるように設定されている。
目標アノード圧P0、目標カソード圧P0は、燃料電池スタック110の発電状態が通常である場合(不調でない場合)に目標とされる通常圧力である。
目標アノード圧P1、目標カソード圧P1は、燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判定された場合に目標とされる第1圧力である。
目標アノード圧P2、目標カソード圧P2は、燃料電池スタック110の発電状態が不調であって、システム温度T11等が低温であると判定された場合に目標とされる第2圧力である。
目標アノード圧P3、目標カソード圧P3は、燃料電池スタック110の発電状態が不調であって、システム温度T11等が低温であり、燃料電池スタック110の直近における発電が短時間発電であると判定された場合に目標とされる第3圧力である。
なお、発電状態が不調である場合における目標アノード圧P1〜P3、目標カソード圧P1〜P3は、事前試験等によって求められる圧力であって、発電状態が不調である等と判断された燃料電池スタック110内に滞留する水分が、その後に開かれるパージ弁125を介して、好適に排出される圧力にそれぞれ設定される。
【0085】
<ECU−背圧弁、コンプレッサ制御機能>
ECU160は、現在のアノード圧P11が目標アノード圧P0〜P3に、現在のカソード圧が目標カソード圧P0〜P3となるように、発電要求量と図5及び図6のマップとに基づいて、背圧弁132の目標開度θ0〜θ1、コンプレッサ131の目標回転速度R0〜R3を算出し、これに従って、背圧弁132及びコンプレッサ131を制御する機能を備えている。
【0086】
背圧弁132の目標開度θ0は、燃料電池スタック110の発電状態が通常であると判断される場合に目標とされる開度であり、目標開度θ1は、燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判断される場合に目標とされる開度である。
そして、図5に示すように、背圧弁132の目標開度θ0、θ1は、発電要求量が大きくなると、カソード圧が高くなるように小さくなる関係となっている。また、燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判断される場合に参照される目標開度θ1は、カソード流路113を通流する空気の流量が増加するように、通常であると判断される場合に参照される目標開度θ0よりも大きくなる関係となっている。
【0087】
なお、目標開度θ1は、全開位置(開度最大)に設定してもよい。また、目標開度θ1は、コンプレッサ131の目標回転速度R1〜R3と同様に、(1)不調である場合、(2)不調であって低温である場合、(3)不調かつ低温であって、短時間発電である場合、の順で徐々に大きくなるように、さらに詳細に設定してもよい。
【0088】
コンプレッサ131の目標回転速度R0は、燃料電池スタック110の発電状態が通常であると判断される場合に目標とされる回転速度であり、目標回転速度R1は、発電状態が不調であると判断される場合に目標とされる回転速度である。また、目標回転速度R2は、発電状態が不調であってシステム温度T11等が低温であると判断される場合に目標とされる回転速度であり、目標回転速度R3は、発電状態が不調であってシステム温度T11等が低温であり、短時間発電であると判断される場合に目標とされる回転速度である。
【0089】
そして、図6に示すように、コンプレッサ131の目標回転速度R0〜R3は、発電要求量が大きくなると、カソード圧及びアノード圧が高くなり、カソード流路113を通流する空気の流量が増加するように、高くなる関係となっている。なお、カソード圧が高くなると、前記したように、エゼクタ1に入力されるパイロット圧が高くなり、エゼクタ1の二次側圧力であるアノード圧が高くなる設計となっている。
また、目標回転速度R0、目標回転速度R1、目標回転速度R2、目標回転速度R3の順で、徐々に高くなる関係となっている。
【0090】
なお、このような背圧弁132の目標開度θ0、θ1、目標回転速度R0〜R3は、目標アノード圧P0〜P3、目標カソード圧P0〜P3となるように、事前試験等によって求められ、ECU160に予め記憶されている。また、目標開度θ1、目標回転速度R1〜R3は、増圧開始から同一時間(Δt1、Δt2、Δt3)の経過後に、アノード圧P11が目標アノード圧P0〜P3に、カソード圧が目標カソード圧P0〜P3となるように、設定されている(図8参照)。
【0091】
≪燃料電池システムの動作≫
次に、燃料電池システム100の動作について、図7を参照して説明する。
初期状態において、燃料電池スタック110の発電状態は通常であり、ECU160は、アクセル開度(発電要求量)に基づいて、目標アノード圧P0、目標カソード圧P0、コンプレッサ131の目標回転速度R0、背圧弁132の目標開度θ0を算出し、算出された目標回転速度R0、目標開度θ0に従って、コンプレッサ131及び背圧弁132を制御している。
【0092】
ステップS101において、ECU160は、セル電圧モニタ115から入力される平均セル電圧及び/又は最低セル電圧に基づいて、燃料電池スタック110の発電状態が不調であるか否か判定する。
燃料電池スタック110の発電状態が不調であると判定した場合(S101・Yes)、ECU160の処理はステップS102に進む。一方、燃料電池スタック110の発電状態は不調でないと判定した場合(S101・No)、ECU160の処理はステップS114に進む。
【0093】
ステップS102において、ECU160は、温度センサ129から入力されるシステム温度T11と所定システム温度T1とに基づいて、低温であるか否か判定する。
システム温度T11は所定システム温度T1以下であり、低温であると判定した場合(S102・Yes)、ECU160の処理は、ステップS106に進む。一方、システム温度T11は所定システム温度T1以下でなく、低温でないと判定した場合(S102・No)、ECU160の処理は、ステップS103に進む。
【0094】
ステップS103において、ECU160は、アクセル開度(発電要求量)と、図4〜図6のマップとに基づいて、目標アノード圧P1、目標カソード圧P1、背圧弁132の目標開度θ1、コンプレッサ131の目標回転速度R1を算出する。
【0095】
ステップS104において、ECU160は、ステップS103で算出した目標開度θ1、目標回転速度R1に従って、背圧弁132、コンプレッサ131を制御する。すなわち、通常制御時に対して、コンプレッサ131の回転速度を増加し、背圧弁132の開度を大きくする。
そうすると、カソード圧が高くなると共に、カソード流路113を通流する空気の流量が増加し、カソード流路113や、MEAのカソード側表面に付着する水分等が、速やかにカソード流路113から排出される。その結果、カソードにおける電極反応は良好に進み、燃料電池スタック110の発電状態は回復方向に向かう。
【0096】
また、カソード圧が高くなると、エゼクタ1に入力されるパイロット圧が高くなる。このようにパイロット圧が高くなると、ノズル11が前進し、ノズル11の噴射口12が大きくなり(図3参照)、ノズル11から噴射される水素の流量が増加し、アノード圧P11が目標アノード圧P1に向かって上昇し始める。
なお、アノード圧P11を上昇させる場合、インジェクタ123を閉状態で維持することが好ましい。インジェクタ123については、後記するステップS107、S111においても同様である。
【0097】
ステップS105において、ECU160は、圧力センサ128から入力される現在のアノード圧P11が、ステップS103で設定した目標アノード圧P1以上であるか否か判定する。
現在のアノード圧P11は目標アノード圧P1以上であると判定した場合(S105・Yes)、ECU160の処理はステップS113に進む。一方、現在のアノード圧P11は目標アノード圧P1以上でないと判定した場合(S105・No)、ECU160は、ステップS105の判定を繰り返す。
【0098】
次に、ステップS102の判定結果がYesの場合に進むステップS106を説明する。
ステップS106において、ECU160は、直近における燃料電池スタック110の発電が、短時間発電であるか否か判定する。なお、前記したように、直近における発電継続時間Δt21が所定発電継続時間Δt0以下である場合、短時間発電であると判定される。
【0099】
そして、短時間発電であると判定した場合(S106・Yes)、ECU160の処理はステップS110に進む。一方、短時間発電でないと判定した場合(S106・No)、ECU160の処理はステップS107に進む。
【0100】
ステップS107において、ECU160は、アクセル開度(発電要求量)と、図4〜図6のマップとに基づいて、目標アノード圧P2、目標カソード圧P2、背圧弁132の目標開度θ1、コンプレッサ131の目標回転速度R2を算出する。
【0101】
ステップS108において、ECU160は、ステップS107で算出した目標開度θ1、目標回転速度R2に従って、背圧弁132、コンプレッサ131を制御する。
そうすると、カソード圧が高くなると共に、カソード流路113を通流する空気の流量が増加し、カソード流路113の水分等が、速やかにカソード流路113から排出され、燃料電池スタック110の発電状態は回復方向に向かう。
この場合において、カソード圧及び空気流量は、ステップS104におけるカソード圧等よりも高くなるので、カソード流路113に滞留する水分は、ステップ104よりも確実に排出される。
また、カソード圧が高くなると、エゼクタ1に入力されるパイロット圧も高くなり、ノズル11が前進して噴射口12が大きくなり(図3参照)、ステップS103よりも高い目標アノード圧P2に向かって上昇し始める。
【0102】
ステップS109において、ECU160は、現在のアノード圧P11が、ステップS107で設定した目標アノード圧P2以上であるか否か判定する。
現在のアノード圧P11は目標アノード圧P2以上であると判定した場合(S109・Yes)、ECU160の処理はステップS113に進む。一方、現在のアノード圧P11は目標アノード圧P2以上でないと判定した場合(S109・No)、ECU160は、ステップS109の判定を繰り返す
【0103】
次に、ステップS106の判定結果がYesの場合に進むステップS110を説明する。
ステップS110において、ECU160は、アクセル開度(発電要求量)と、図4〜図6のマップとに基づいて、目標アノード圧P3、目標カソード圧P3、背圧弁132の目標開度θ1、コンプレッサ131の目標回転速度R3を算出する。
【0104】
ステップS111において、ECU160は、ステップS110で算出した目標開度θ1、目標回転速度R3に従って、背圧弁132、コンプレッサ131を制御する。
そうすると、カソード圧が高くなると共に、カソード流路113を通流する空気の流量が増加し、カソード流路113の水分等が、速やかにカソード流路113から排出され、燃料電池スタック110の発電状態は回復方向に向かう。
この場合において、カソード圧及び空気流量は、ステップS108におけるカソード圧等よりも高くなるので、カソード流路113に滞留する水分は、ステップ108よりも確実に排出される。
また、カソード圧が高くなると、エゼクタ1に入力されるパイロット圧も高くなり、ノズル11が前進して噴射口12が大きくなり(図3参照)、アノード圧P11がステップS107よりも高い目標アノード圧P3に向かって上昇し始める。
【0105】
ステップS112において、ECU160は、現在のアノード圧P11が、ステップS110で設定した目標アノード圧P3以上であるか否か判定する。
現在のアノード圧P11は目標アノード圧P3以上であると判定した場合(S112・Yes)、ECU160の処理はステップS113に進む。一方、現在のアノード圧P11は目標アノード圧P3以上でないと判定した場合(S112・No)、ECU160は、ステップS112の判定を繰り返す
【0106】
ステップS113において、ECU160は、パージ弁125を、所定の開弁時間にて開く。そうすると、アノード流路112、気液分離器124、配管124a、124b等に滞留する水分(水蒸気、結露水)は、開かれたパージ弁125を通って、希釈器133(外部)に排出され、燃料電池スタック110の発電状態は回復する。
【0107】
この場合において、アノード流路112等に滞留する水分の量が多くなると予測されるほど、つまり、(1)発電状態が不調である場合、(2)不調であって低温である場合、(3)不調であって低温であり、短時間発電である場合、となるほど、アノード圧P11は、目標アノード圧P1、P2、P3(P1<P2<P3)に高められているので、アノード流路112等に滞留する水分を確実に排出できる。
なお、アノード圧P11が高くなると、パージ弁125が開いた場合における単位時間当たりのパージ流量(L/s)及びパージ流速が大きくなるので(図8参照)、アノード圧を高めない場合に対して(図8の比較例1参照)、パージ弁125の開時間を短くすることもできる(図8の実施例1〜3参照)。
【0108】
ステップS114において、ECU160は、アクセル開度(発電要求量)と、図4〜図6のマップとに基づいて、目標アノード圧P0、目標カソード圧P0、背圧弁132の目標開度θ0、コンプレッサ131の目標回転速度R0を算出し、これに従って、コンプレッサ131、背圧弁132を通常に制御する。これにより、カソード圧、アノード圧及び空気流量は通常となる。
その後、ECU160の処理は、リターンを通って、スタートに戻る。
【0109】
≪燃料電池システムの効果≫
このような燃料電池システム100から得られる効果について、図8を参照して説明する。なお、図8は、説明を簡単にするため、アクセル開度(発電要求量)が一定である場合を例示している。
燃料電池スタック110の発電状態が不調あり、これを回復させるべくパージ弁125を開き、パージを実行すべき場合(S101・Yes)、低温であるか否か(S102)、短時間発電であるか否かを判定し(S106)、目標アノード圧P1〜P3を設定し、現在のアノード圧P11が目標アノード圧P1〜P3に到達した後(S105・Yes、S109・Yes、S112・Yes)、パージ弁125を開くので(S113)、アノード流路112、気液分離器124、配管124a等に滞留する水分を適切に排出し、燃料電池スタック110の発電状態を速やかに回復できる。
【0110】
また、このようにアノード圧P11が目標アノード圧P1〜P3に高まっているので、パージ弁125を開いた場合におけるパージ流速等が大きくなり、これにより、アノード圧を高めない比較例1に対して、パージ弁125の開時間を短くできる(実施例1〜3参照)。
【0111】
さらに、アノード圧P11を増加させる場合、カソード流路113を通流する空気の流量も増加させるので、カソード流路113に滞留する水分も速やかに排出できる。さらに、アノード圧を増加させるためにカソード圧を増加させる場合、空気流量、つまり、コンプレッサ131の吐出量も増加させるので、コンプレッサ131における仕事率を維持したまま、カソード圧を速やかに増加できる。なぜなら、コンプレッサ131の回転速度の増加による消費電力の増加は微小であるから、吐出流量を増加させつつ、吐出圧を増加させる方が、コンプレッサ131の仕事率を維持しやすいからである。
【0112】
さらにまた、このような燃料電池システム100は、アノード圧P11を制御するためのソレノイド等の電磁駆動装置を備えず、空圧駆動型のエゼクタ1を備えるものであるから、システムを容易に構成できる。また、機械的なエゼクタ1であるから、アノード圧P11を制御するに際して、エゼクタ1で電力消費されることもなく、燃料電池車の走行距離が長くなる。
【0113】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更できる。
前記した実施形態では、圧力センサ128の検出する現在のアノード圧P11が、設定した目標アノード圧P1〜P3に到達した後(S105・Yes、S109・Yes、S112・Yes)、パージ弁125を開く構成としたが(S113)、次のようにしてもよい。
すなわち、カソード圧及びアノード圧P11の増圧開始からの時間Δt11が、目標アノード圧P1〜P3に到達したと判断される第1時間Δt1、第2時間Δt2、第3時間Δt3以上となった場合(S105・Yes、S109・Yes、S112・Yes)、パージ弁125を開く構成としてもよい(S113)。
【0114】
この場合において、第1時間Δt1、第2時間Δt2、第3時間Δt3は、増圧開始時おいて最も低くなると予想される例えばアイドリング時のアノード圧P11を基準として、目標アノード圧P1〜P3に到達するまでに要する時間を設定すればよい。
また、前記した実施形態における目標回転速度R1〜R3、目標開度θ1に設定すれば、第1時間Δt1、第2時間Δt2、第3時間Δt3は同一の時間となるが(図8参照)、例えば、コンプレッサ131の回転速度は増加させず、目標回転速度R0で維持した場合、目標アノード圧P1〜P3、目標カソード圧P1〜P3になるにつれて時間を要することになるから、第1時間Δt1、第2時間Δt2、第3時間Δt3の順で長くなる(Δt1<Δt2<Δt3)。
【0115】
前記した実施形態では、図2、図3に示すように、ニードル21が内部に通路25を有し、水素タンク121からの水素が、一旦、通路を通流した後、連通孔28を通って、ノズル11内に流出する構成としたが、その他に例えば、軸受26を肉厚で形成すると共に、その周壁内に軸方向で連通孔を形成し、水素タンク121からの水素が、軸受26の前記連通孔を通って、ノズル11内に流出する構成としてもよい。この場合において、前記連通孔は、軸受26の周壁内に周方向で複数(例えば60°間隔)形成することが好ましい。
【0116】
前記した実施形態では、図2、図3に示すように、固定状態のニードル21に対して、ノズル11がパイロット圧に基づいて変位することで、二次側圧力(アノード圧)が制御される構成を例示したが、その他に例えば、固定状態のノズルに対して、ニードルがパイロット圧に基づいて変位することで、ノズルの噴射口が可変し、二次側圧力が制御される構成でもよい。
【0117】
前記した実施形態では、パージ弁125を開き、水分を排出する構成としたが、その他に例えば、パージ弁125に加えて、又は代えて、掃気ガス排出弁126やドレン弁127を開く構成としてもよい。
【0118】
前記した実施形態では、セル電圧モニタ115から入力される平均セル電圧及び/又は最低セル電圧に基づいて、ECU160は燃料電池スタック110の発電状態が不調であるか否か判定するとしたが、次のようにしてもよい。
燃料電池スタック110の出力(電流値、電圧値)を制御する電力制御装置への指令電流値及び指令電圧値と、電流センサ(発電状態検出手段)が検出する実際の電流値、電圧センサ(発電状態検出手段)が検出する実際の電圧値との差が、所定値以上である場合、不調であると判断する構成としてもよい。
また、現在のアノード圧、カソード圧、空気流量から得られるべき燃料電池スタック110のIV(電流−電圧)曲線と、実際のIV曲線とが、所定差以上である場合、不調であると判断する構成としてもよい。
【0119】
前記した実施形態では、燃料電池システム100が四輪や二輪の燃料電池車に搭載された場合を例示したが、その他の移動体、例えば列車、船舶に搭載された燃料電池システムでもよい。また、定置型の燃料電池システムに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 エゼクタ
11 ノズル(圧力制御機構)
12 噴射口
21 ニードル(圧力制御機構)
100 燃料電池システム
110 燃料電池スタック(燃料電池)
112 アノード流路(燃料ガス流路)
113 カソード流路(酸化剤ガス流路)
115 セル電圧モニタ(発電状態検出手段)
121 水素タンク(燃料ガス供給手段)
121a、122a、122b 配管(燃料ガス供給流路)
123a 配管(パイロット圧入力流路)
124a、124b 配管(燃料オフガス流路)
125 パージ弁(排出弁)
126 掃気ガス(排出弁)
127 ドレン弁(排出弁)
128 圧力センサ
129、152 温度センサ
131 コンプレッサ(酸化剤ガス供給手段、圧力制御手段、流量制御手段)
131a 配管(酸化剤ガス供給流路)
132 背圧弁(圧力制御手段、流量制御手段)
160 ECU(制御手段、発電継続時間判定手段)
P0 目標アノード圧(通常圧力)
P1 目標アノード圧(第1圧力)
P2 目標アノード圧(第2圧力)
P3 目標アノード圧(第3圧力)
P11 現在のアノード圧
T11 システム温度
T12 外気温度(燃料電池システムの周囲温度)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料電池の発電状態を検出する発電状態検出手段と、
燃料ガス供給手段と、
前記燃料ガス供給手段と前記燃料ガス流路の入口とを接続する燃料ガス供給流路と、
前記燃料ガス供給流路に設けられたエゼクタと、
前記燃料ガス流路の出口と前記エゼクタとを接続する燃料オフガス流路と、
前記燃料オフガス流路に接続され、開くことで、前記燃料オフガス流路のガスを外部に排出する排出弁と、
酸化剤ガス供給手段と、
前記酸化剤ガス供給手段と前記酸化剤ガス流路の入口とを接続する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス流路における酸化剤ガスの圧力を制御する圧力制御手段と、
前記酸化剤ガス供給流路から分岐し、酸化剤ガスの圧力を前記エゼクタにパイロット圧として入力するパイロット圧入力流路と、
前記排出弁及び前記圧力制御手段を制御する制御手段と、
を備える燃料電池システムであって、
前記エゼクタは、前記燃料ガス供給手段からの燃料ガスを噴射するノズルと、前記ノズルの軸線上に配置されたニードルと、前記ノズルから噴射された燃料ガスと前記燃料オフガス流路からの燃料オフガスとを混合するディフューザと、を備え、前記パイロット圧入力流路から入力されるパイロット圧が高くなると前記ノズルの噴射口が大きくなり、二次側圧力が高くなる圧力制御機構を有し、
前記制御手段は、前記発電状態検出手段の検出する前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、前記圧力制御手段によって酸化剤ガスの圧力及びパイロット圧を高めた後、前記排出弁を開く
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記酸化剤ガス流路を通流する酸化剤ガスの流量を制御する流量制御手段を備え、
前記制御手段は、前記圧力制御手段によって酸化剤ガスの圧力を高める場合、前記酸化剤ガス流路に滞留する水分が排出されるように、前記流量制御手段によって酸化剤ガスの流量も増加させる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記エゼクタの下流におけるガスの圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、前記圧力センサの検出する圧力が、発電要求量に基づいて算出される通常圧力よりも高い第1圧力に到達した後、前記排出弁を開く
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合、前記圧力制御手段による酸化剤ガスの圧力の増圧開始から、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力が発電要求量に基づいて算出される通常圧力よりも高い第1圧力に到達するまでに要する第1時間の経過後、前記排出弁を開く
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
システム温度又はシステムの周囲温度を検出する温度センサを備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定した場合において、前記温度センサの検出する温度が所定温度以下であると判定したとき、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力を、前記第1圧力よりも高い第2圧力に到達させた後、前記排出弁を開く
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池の発電開始から発電停止までの発電継続時間が、所定時間以下であるか否か判定する発電継続時間判定手段を備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の発電状態が不調であると判定し、前記温度センサの検出する温度が所定温度以下であると判定した場合において、前記発電継続時間判定手段が発電継続時間は所定時間以下であると判定したとき、前記エゼクタの下流におけるガスの圧力を、前記第2圧力よりも高い第3圧力に到達させた後、前記排出弁を開く
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−272439(P2010−272439A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124952(P2009−124952)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】