説明

燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置

【課題】燃料供給に場所の制約を受けず、且つ燃料を容易に供給できること。
【解決手段】車体後部の運転シート11下に燃料電池ユニット12が搭載され、この燃料電池ユニットからの電力供給によりモータが後輪13を駆動すると共に、車体前部に設けられたハンドル14により前輪15が操舵されるハンドル型電動車椅子車両10の燃料供給装置10Aにおいて、燃料電池ユニットの燃料タンク16が車体前部に設置され、燃料タンクよりも上方に、燃料を貯溜した燃料カートリッジ20を保持可能で、且つ燃料タンク16に接続されたカートリッジ保持部21が設けられ、燃料カートリッジが燃料供給部33及び空気導入部34を備え、燃料供給部がカートリッジ保持部に装着されることにより開口され、更に空気導入部が開口されて、燃料カートリッジから燃料タンクへ燃料が供給されるよう構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置にかかり、特に、ダイレクトメタノール型燃料電池を搭載したハンドル型電動車椅子車両の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタノールを燃料として燃料電池に直接投入することで発電し、その電力でモータを駆動して走行するハンドル型電動車椅子車両にあっては、車両の燃料タンクに、燃料供給場所に備えられたポンプを用いて燃料を供給するか、或いは燃料容器から燃料タンクへ直接燃料を注入している。
【0003】
また、燃料電池搭載車両に着脱可能な燃料カートリッジを用いて、車両の燃料タンクへ燃料を供給するものが特許文献1に提案されている。
【特許文献1】特開2005−112095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の如く、ポンプを用いて燃料タンク内へ燃料を供給する場合には、ポンプを駆動するための電源が必要となる。この場合、商用電源を使用すれば、燃料供給場所はコンセントがある場所に限定される。また、電池を使用する場合には、電池切れによって燃料供給が不可能となることがある。
【0005】
また、燃料容器から燃料を直接注入する方式では、燃料が人体に付着する恐れがある。更に、ポンプを用いる場合にも直接注入する場合にも、燃料供給場所は必然的に燃料保管場所となる。また、いずれの場合にも、燃料供給中に車両を走行させることは不可能である。
【0006】
また、特許文献1に記載の燃料電池搭載車両の場合には、燃料タンク及びカートリッジホルダがシートに覆われているので、運転者は車両から降りて燃料供給の度にシートを取り外す必要があり、このため、燃料供給が煩雑な作業となってしまう。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、燃料供給に場所の制約を受けず、且つ燃料を容易に供給できる燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車体後部のシート下に燃料電池ユニットが搭載され、この燃料電池ユニットからの電力供給によりモータが車輪を駆動すると共に、車体前部に設けられたハンドルにより操舵される燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置において、前記燃料電池ユニットの燃料タンクが前記車体前部に配置され、当該燃料タンクよりも上方に、燃料を貯溜した燃料カートリッジを保持可能で、且つ前記燃料タンクに接続されたカートリッジ保持部が設けられ、前記燃料カートリッジが燃料供給部及び空気導入部を備え、上記燃料供給部が前記カートリッジ保持部に装着されることにより開口され、更に上記空気導入部が開口されて、当該燃料カートリッジから前記燃料タンクへ燃料が供給されるよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料電池ユニットの燃料タンクへ燃料カートリッジから燃料が供給されるので、燃料供給に場所の制約を受けることがない。また、燃料カートリッジの燃料供給部がカートリッジ保持部に装着されて開口され、更に燃料カートリッジの空気導入部が開口されて、当該燃料カートリッジからシートより前方に設けられた燃料タンクへ燃料が供給されるので、燃料を容易に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0011】
[A]第1の実施の形態(図1〜図5)
図1は、本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第1の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の概略構成図である。図2は、図1のフロントバスケットを示し、(A)が燃料カートリッジの非装着時、(B)が燃料カートリッジの装着時をそれぞれ示す概略構成図である。
【0012】
図1に示す燃料電池を搭載した小型電動車両としてのハンドル型電動車椅子車両10は、車体後部の運転シート11下に燃料電池ユニット12が搭載され、この燃料電池ユニット12からの電力供給により、図示しないモータが左右一対の後輪13を駆動して走行可能に設けられると共に、車体前部に取り付けられたハンドル14により左右一対の前輪15が操舵可能に構成される。
【0013】
燃料電池ユニット12は、燃料電池(セルスタック)の負極へ、燃料としてのメタノールを水で希釈したメタノール水溶液を供給し、正極へ空気(酸素)を供給して、電気化学反応により電力を発生させるダイレクトメタノール型燃料電池を有する。
【0014】
ハンドル型電動車椅子車両10では、車体前部における左右一対の前輪15間に燃料電池ユニット12の燃料タンク16が配置されると共に、車体前部がフロントカバー17で覆われている。ハンドル型電動車椅子車両10では、このフロントカバー17の前方に、荷物収納部材であるフロントバスケット18が設置されている。
【0015】
さて、本実施の形態の燃料供給装置10Aでは、燃料タンク16よりも上方に位置するフロントバスケット18の底部19は厚肉構造に構成され、この底部19の一部が凹形状に形成されて、燃料カートリッジ20を保持可能なカートリッジ保持部21として構成される。このカートリッジ保持部21は弁機構部24(図2(B))を備え、この弁機構部24が燃料配管22等を介して燃料タンク16に接続される。また、フロントバスケット18の底部19には、図2(A)に示すように、凹形状のカートリッジ保持部21を閉塞可能とする蓋23が開閉自在、実施の形態においてはスライド自在に設けられている。カートリッジ保持部21は、非使用時にはこの蓋23により閉塞される。
【0016】
弁機構部24は、図4(A)に示すように、燃料配管22に接続される筒体25の一端に設置された弁本体26と、この弁本体26内にスプリング27により付勢状態で配置された弁体28とを有して構成される。弁本体26には、弁体28が接触する弁座部にシール部材29が装着されている。
【0017】
弁体28には先端部分に被押圧部30が設けられ、この被押圧部30がスプリング27の付勢力に抗して押圧されて、弁体28がシール部材29から離れることで、弁機構部24が開弁される。弁体28がスプリング27の付勢力の作用でシール部材29に接触することで、弁機構部24が閉弁される。また、弁本体26には、基端側に通路31が、先端内周にディテント部32がそれぞれ形成されている。
【0018】
図1に示す燃料カートリッジ20は、燃料であるメタノール(液体)を貯溜して持ち運び可能に設けられ、内部の燃料に直接触れることなく供給可能に構成されたものである。この燃料カートリッジ20は、例えば500〜1000ccの容積のポリプロピレン製容器であり、図3に示すように、例えば燃料供給状態における底部に燃料供給部33を、天部に空気導入部34をそれぞれ備える。
【0019】
燃料供給部33は、燃料カートリッジ20の底部の突部35(例えばキャップ)に設置され、図4(A)に示すように、突部35に固定された燃料供給側弁本体36と、この燃料供給側弁本体36内にスプリング37によって付勢状態で配置された燃料供給側弁体38とを有して構成される。燃料供給側弁本体36には、燃料供給側弁体38が接触する弁座部にシール部材39が装着されている。
【0020】
燃料供給側弁体38には先端部分に被押圧部40が設けられ、この被押圧部40が、スプリング37の付勢力に抗して押圧されて、燃料供給側弁体38がシール部材39から離れることで燃料供給部33が開弁される。燃料供給側弁体38がスプリング37の付勢力の作用でシール部材39に接触することで、燃料供給部33が閉弁される。また、燃料供給側弁本体36には、基端側に通路41が、先端側外周にディテント部42がそれぞれ形成されている。
【0021】
図3に示すように、空気導入部34は、燃料カートリッジ20の天部の凹陥部43に設置され、図5(A)に示すように、凹陥部43に固定された空気導入側弁本体44と、この空気導入側弁本体44内にスプリング45により付勢状態で配置された空気導入側弁体46とを有して構成される。空気導入側弁本体44には、空気導入側弁体46が接触する弁座部にシール部材47が装着されている。
【0022】
空気導入側弁体46には、先端部分に被押圧部48が設けられ、この被押圧部48がスプリング45の付勢力に抗して押圧されて、空気導入側弁体46がシール部材47から離れることで空気導入部34が開弁される。空気導入側弁体46がスプリング45の付勢力の作用でシール部材47に接触することで、空気導入部34が閉弁される。また、空気導入側弁本体44には、先端側に第1空気導入路49が、基端側に第2空気導入路50がそれぞれ形成されている。更に、空気導入側弁本体44の先端には、被支持部51が拡径して形成されている。
【0023】
図1及び図2(B)に示すように、フロントバスケット18には、内側にステー部材52が枢支され、このステー部材52に押圧・支持部53が突設されている。この押圧・支持部53は、作動時に、図5(B)に示すように、燃料カートリッジ20の空気導入部34における空気導入側弁体46の被押圧部48を押圧すると同時に、空気導入側弁本体44の被支持部51に係合または嵌合する。
【0024】
ハンドル型電動車椅子車両10の燃料タンク16内へ燃料カートリッジ20から燃料を供給する際には、図2(B)に示すように、燃料カートリッジ20の底部の突部35を、フロントバスケット18の底部19における凹形状のカートリッジ保持部21に嵌合して装着し、この装着状態の燃料カートリッジ20側へステー部材52を回動して倒し、このステー部材52を作動させる。
【0025】
図4(B)に示すように、燃料カートリッジ20の突部35をカートリッジ保持部21に嵌合して装着することにより、燃料カートリッジ20の底部を保持する。と同時に、燃料カートリッジ20の燃料供給部33における燃料供給側弁体38の被押圧部40が、カートリッジ保持部21の弁機構部24における弁体28の被押圧部30に接触し、これらの被押圧部40と30が互いに相手側を押圧して、燃料供給部33及び弁機構部24を開弁して開口状態とする。このとき、弁機構部24の弁本体26におけるディテント部32と、燃料供給部33の燃料供給側弁本体36におけるディテント部42とが係合する。
【0026】
更に、ステー部材52の作動により、図5(B)に示すように、このステー部材52の押圧・支持部53が燃料カートリッジ20の空気導入部34における空気導入側弁本体44の被支持部51に係合または嵌合して、燃料カートリッジ20の天部を支持する。と同時に、ステー部材52の押圧・支持部53が空気導入部34の空気導入側弁体46における被押圧部46を押圧して、空気導入部34を開弁して開口状態とする。
【0027】
空気導入部34の開弁により燃料カートリッジ20内が大気に開放されて、図5(B)の矢印Aの如く、大気が第1空気導入路49、空気導入部34内、第2空気導入路50を順次経て燃料カートリッジ20内へ導入される。更に、燃料供給部33及び弁機構部24の開弁により、図4(B)の矢印Bに示す如く、燃料カートリッジ20内の燃料が大気圧の作用で、通路41を経て空気導入部34及び弁機構部24内を通り、通路31を経て燃料タンク16内へ供給される。
【0028】
従って、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(6)を奏する。
【0029】
(1)燃料電池ユニット12の燃料タンク16へ燃料カートリッジ20から燃料が供給され、この燃料カートリッジ20が容易に持ち運び可能に構成されているので、燃料供給に場所の制約を受けることがない。
【0030】
(2)燃料カートリッジ20には、開口可能な燃料供給部33と、開口可能な空気導入部34が設けられているので、燃料カートリッジ20内の燃料を大気圧の作用で、燃料タンク16内へスムーズに供給することができ、高齢者でも燃料供給を容易に実施できる。
【0031】
(3)燃料カートリッジ20の燃料供給部33は、カートリッジ保持部21に装着されることで開口され、カートリッジ保持部21から離脱することで閉じ、また、燃料カートリッジ20の空気導入部34は、ステー部材52の作動により開口され、ステー部材52の非作動により閉じる。これらのことから、燃料供給部33及び空気導入部34の開閉操作を取り立てて実施する必要がなく、また、燃料カートリッジ20内に燃料が残存した状態で燃料供給を止めた場合にも、燃料カートリッジ20内の燃料の漏洩を防止することができる。
【0032】
(4)ステー部材52を作動させることで、押圧・支持部53が燃料カートリッジ20の被支持部51に係合または嵌合して、燃料カートリッジ20の天部を支持すると同時に、当該ステー部材52が空気導入部34を開弁して開口状態とするので、燃料カートリッジ20の支持と空気導入を一つの動作で同時に実施できる。
【0033】
(5)燃料カートリッジ20の底部の突部35がフロントバスケット18の凹形状のカートリッジ保持部21に嵌合して保持され、燃料カートリッジ20の天部の空気導入部34における被支持部51がステー部材52の押圧・支持部53に係合または嵌合して支持されることから、燃料供給中の安定性が向上し、たとえば燃料供給中においてもハンドル型電動車椅子車両10を走行させることができる。また、カートリッジ保持部21を簡素化(小型化)することもできる。
【0034】
(6)カートリッジ保持部21がフロントバスケット18内に設けられたので、カートリッジ保持部21が外部から見えず、ハンドル型電動車椅子車両10の外観性を向上させることができる。また、カートリッジ保持部21に装着された燃料カートリッジ20は、フロントバスケット18により保護されるので、燃料供給中に外力を受けることを防止できる。更に、燃料の非供給時には、フロントバスケット18の底部19の蓋23を閉じることで、フロントバスケット18を通常の荷物収納部材として使用できる。
【0035】
[B]第2の実施の形態(図6)
図6は、本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第2の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の一部概略構成図である。この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0036】
本実施の形態の燃料電池搭載電動車両としてのハンドル型電動車椅子車両60の燃料供給装置60Aが、前記第1の実施の形態の燃料供給装置10Aと異なる点は、荷物収納部材としてのフロントバスケット61の底部62に支持開口63が形成されると共に、フロントカバー65においてフロントバスケット61の底部62の下方部分に、凹形状のカートリッジ保持部64が設けられ、このカートリッジ保持部64が弁機構部24を備えて構成された点である。
【0037】
フロントバスケット61の支持開口63は、燃料供給時に燃料カートリッジ20が挿通されて、この燃料カートリッジ20の上部を支持し、燃料の非供給時には、蓋23(図2(A)参照)と同様な蓋により閉塞される。また、燃料カートリッジ20の燃料供給部33は、カートリッジ保持部64に装着されることにより、弁機構部24との相互作用で開弁されて開口状態となる。但し、本実施の形態では、燃料カートリッジ20の空気導入部34の開操作は、手動により実施する必要がある。
【0038】
なお、蓋23の代わりに、ステー部材52(図2(B)参照)をフロントバスケットの底部62近傍に設けてもよい。この場合、このステー部材52が、燃料供給時に燃料カートリッジ20の空気導入部34を開口し、燃料非供給時に支持開口63を閉塞する。
【0039】
従って、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(7)〜(9)を奏する。
【0040】
(7)燃料カートリッジ20の底部の突部35がフロントカバー65のカートリッジ保持部64に嵌合して保持され、燃料カートリッジ20の上部がフロントバスケット61の支持開口63に支持されることから、燃料供給中の燃料カートリッジ20の安定性が向上し、例えば燃料供給中においてもハンドル型電動車椅子車両60を走行させることができる。また、カートリッジ保持部64を簡素化(小型化)することもできる。
【0041】
(8)フロントカバー65のカートリッジ保持部64に保持された燃料カートリッジ20は、上部が、支持開口63に支持されると共にフロントバスケット61により保護されるので、燃料供給中に外力を受けることを防止できる。更に、燃料の非供給時には、フロントバスケット61の支持開口63を閉じることで、フロントバスケット61を通常の荷物収納部材として使用できる。
【0042】
(9)フロントバスケット61の底部62が厚肉構造でないため、フロントバスケット61の容量を減少させず良好に確保できる。
【0043】
[C]第3の実施の形態(図7)
図7は、本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第3の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の概略構成図である。この第3の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を簡略化し、または省略する。
【0044】
本実施の形態における燃料電池搭載車両としてのハンドル型電動車椅子車両70の燃料供給装置70Aが、前記第1の実施の形態の燃料供給装置10Aと異なる点は、車体前部がフロントカバー71で覆われ、このフロントカバー71の前方に荷物収納部材としてのフロントバスケット72が設置されると共に、上記フロントカバー71の上部にカートリッジ保持部73が設けられ、このカートリッジ保持部73が弁機構部24を備えて構成された点である。
【0045】
更に、カートリッジ保持部73は、ペットボトル等のドリンク容器を保持可能なボトルホルダ機能を有する形状に形成されている。また、本実施の形態では、燃料カートリッジ20に空気導入部34(図5参照)が形成され、この空気導入部34を手動により開弁及び閉弁操作してもよいが、この空気導入部を、突起物などにより破損可能なラミネート状の薄板を用いて構成し、燃料供給時にこれを破損させて開口させてもよい。
【0046】
従って、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(10)及び(11)を奏する。
【0047】
(10)フロントカバー71の上部にカートリッジ保持部73が設けられたので、位置の視認性が良好で、燃料供給作業を容易化できる。
【0048】
(11)燃料の非供給時には、カートリッジ保持部にボトル容器を保持することができるので、利便性を向上させることができる。
【0049】
[D]第4の実施の形態(図8)
図8は、本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第4の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の概略構成図である。この第4の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を簡略化し、または省略する。
【0050】
本実施の形態における燃料電池搭載車両としてのハンドル型電動車椅子車両80の燃料供給装置80Aが、前記第1の実施の形態の燃料供給装置10Aと異なる点は、車体前部がフロントカバー81で覆われ、このフロントカバー81の前方に荷物収納部材としてのフロントバスケット82が設置されると共に、フロントカバー81の後方にインナーボックス83が設けられ、このインナーボックス83の底部に、弁機構部24を備えたカートリッジ保持部84が設けられた点である。
【0051】
本実施の形態においても、燃料カートリッジ20に空気導入部34(図5参照)が形成され、この空気導入部34を手動により開弁及び閉弁操作してもよいが、この空気導入部を、突起物などにより破損可能なラミネート状の薄板を用いて構成し、燃料供給時にこれを破損させて開口させてもよい。
【0052】
従って、本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(12)及び(13)を奏する。
【0053】
(12)インナーボックス83の底部にカートリッジ保持部84が設けられたので、このカートリッジ保持部84が外部から見えず、ハンドル型電動車椅子車両80の外観性を向上させることができる。また、カートリッジ保持部84に装着された燃料カートリッジ20は、インナーボックス83により保護されるので、燃料供給中に外力を受けることを防止できる。
【0054】
(13)インナーボックス83の底部にカートリッジ保持部84が設けられたことから、このカートリッジ保持部84に装着された燃料カートリッジ20は、その大部分がインナーボックス80により支持される。このため、燃料カートリッジ20をカートリッジ保持部84に装着した燃料供給中であっても、燃料カートリッジ20の安定性が良好となり、この状態でハンドル型電動車椅子車両80を走行させることができる。
【0055】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、燃料カートリッジ20に設けられた燃料供給部33と空気導入部34の少なくとも一方は、弁機構ではなく、突起物により破損可能なラミネート状の薄板を用いて構成されてもよい。但し、この場合には、燃料カートリッジ20から燃料タンク16へ燃料供給を始めた後には、燃料供給を途中で止めて、燃料カートリッジ20をカートリッジ保持部21等から離脱することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第1の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の概略構成図。
【図2】図1のフロントバスケットを示し、(A)が燃料カートリッジの非装着時、(B)が燃料カートリッジの装着時をそれぞれ示す概略構成図。
【図3】図1の燃料カートリッジを示す斜視図。
【図4】図1の燃料カートリッジの燃料供給部及びカートリッジ保持部を示し、(A)が非装着時、(B)が装着時のそれぞれ断面図。
【図5】図1の燃料カートリッジの空気導入部及びステー部材の一部を示し、(A)が非作動時、(B)が作動時のそれぞれ断面図。
【図6】本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第2の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の一部概略構成図。
【図7】本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第3の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の概略構成図。
【図8】本発明に係る燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置における第4の実施の形態を示すハンドル型電動車椅子車両の概略構成図。
【符号の説明】
【0057】
10 ハンドル型電動車椅子車両(燃料電池搭載電動車両)
10A 燃料供給装置
11 運転シート
12 燃料電池ユニット
13 後輪
14 ハンドル
15 前輪
16 燃料タンク
17 フロントカバー
18 フロントバスケット(荷物収納部材)
19 底部
20 燃料カートリッジ
21 カートリッジ保持部
24 弁機構部
33 燃料供給部
34 空気導入部
51 被支持部
52 ステー部材
53 押圧・支持部
60 ハンドル型電動車椅子車両(燃料電池搭載電動車両)
60A 燃料供給装置
61 フロントバスケット(荷物収納部材)
62 底部
63 支持開口
64 カートリッジ保持部
65 フロントカバー
70 ハンドル型電動車椅子車両(燃料電池搭載電動車両)
70A 燃料供給装置
71 フロントカバー
73 カートリッジ保持部
80 ハンドル型電動車椅子車両(燃料電池搭載電動車両)
80A 燃料供給装置
81 フロントカバー
83 インナーボックス
84 カートリッジ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部のシート下に燃料電池ユニットが搭載され、この燃料電池ユニットからの電力供給によりモータが車輪を駆動すると共に、車体前部に設けられたハンドルにより操舵される燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置において、
前記燃料電池ユニットの燃料タンクが前記車体前部に配置され、当該燃料タンクよりも上方に、燃料を貯溜した燃料カートリッジを保持可能で、且つ前記燃料タンクに接続されたカートリッジ保持部が設けられ、
前記燃料カートリッジが燃料供給部及び空気導入部を備え、前記燃料供給部が前記カートリッジ保持部に装着されることにより開口され、更に前記空気導入部が開口されて、当該燃料カートリッジから前記燃料タンクへ燃料が供給されるよう構成されたことを特徴とする燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料電池搭載電動車両は、車体前部の前方に荷物収納部材が設けられると共に、この荷物収納部材の底部にカートリッジ保持部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。
【請求項3】
前記荷物収納部材は、作動時に、燃料カートリッジを支持すると共に、当該燃料カートリッジの空気導入部を開口するよう構成されたステー部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。
【請求項4】
前記燃料電池搭載電動車両は、車体前部の前方に荷物収納部材が設けられると共に、この荷物収納部材の底部下方の前記車体前部にカートリッジ保持部が設けられ、前記荷物収納部材の底部に、燃料カートリッジ支持用の支持開口が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。
【請求項5】
前記燃料電池搭載電動車両は、車体前部がフロントカバーで覆われ、このフロントカバーの上部にカートリッジ保持部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。
【請求項6】
前記カートリッジ保持部は、ドリンク容器を保持するドリンクホルダ機能を有する形状に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。
【請求項7】
前記燃料電池搭載電動車両は、車体前部がフロントカバーで覆われると共に、このフロントカバーの後方にインナーボックスが設けられ、このインナーボックスの底部にカートリッジ保持部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−82618(P2009−82618A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259042(P2007−259042)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】