説明

燃料電池車両用空調装置

【課題】燃料電池の最大出力の低下を抑制しつつ、車両全体の電力を効率よく利用して暖房を行うことができる燃料電池車両用空調装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ暖房モードを行う際に、燃料電池2の温度を基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量と、ヒートポンプサイクルによる暖房を行うために必要な燃料の消費量との合計である第1燃料消費量M1を算出し、冷却水暖房モードを行う際に、燃料電池2の温度を基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量と、冷却水が有する熱を利用した暖房を行うために必要な燃料の消費量との合計である第2燃料消費量M2を算出し、第1燃料消費量M1が第2燃料消費量M2より少ない場合にヒートポンプ暖房モードを実行することを決定し、第1燃料消費量M1が第2燃料消費量M2より多い場合に冷却水暖房モードを実行すること決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に適用される燃料電池車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池システムを用いる燃料電池車両の空調装置には、燃料電池を冷却した高温の冷却水の熱を車室内暖房用のヒータコアに供給することで、暖房効果を向上させているものがある。このような燃料電池車両用空調装置では、冷却水の温度が低下した場合、ヒータコアへの冷却水の供給を制限するとともに、別途設けられた電気ヒータ等の加熱手段によって冷却水を加熱する必要があった。
【0003】
これに対し、特許文献1には、冷却水の温度を検出する冷却水温度センサを設け、当該冷却水温度センサにより検出された冷却水温度が所定温度以下になった場合に、燃料電池から放出される熱を増加させる燃料電池車両用空調装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の従来技術では、燃料電池から放出される熱を増加させる手段として、空気(酸化剤ガス)ストイキ比を通常運転時より小さく設定し、電力損失を大きくして燃料電池の温度を上昇させている。なお、空気ストイキ比とは、燃料電池で消費される空気量に対する燃料電池に供給する空気量の比である。
【0005】
さらに、特許文献1の従来技術では、車室内を暖房するためのヒートポンプを備えており、燃料電池から放出される熱を増加させるために必要な燃料の消費量と、ヒートポンプの駆動量を増加させるために必要な燃料の消費量とを算出し、暖房に必要な電力を発生させる際に、各消費量の合計値が最小となるように、燃料電池から放出される熱およびヒートポンプの駆動量を制御している。これにより、車両全体の電力を効率よく利用して暖房効果の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−113539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般にヒートポンプの成績係数(COP)は1より大きいので、暖房に必要な燃料消費量は小さくなる。このため、特許文献1に記載の従来技術において暖房を行う際には、ほとんどの領域でヒートポンプ単独の運転となる。
【0008】
また、一般の燃料電池車両では、空気(外気)との熱交換を効率的に行うために、車両前端部分にヒートポンプの室外熱交換器が配置されている。そして、室外熱交換器の空気流れ下流側に送風機が配置されており、さらに送風機の空気流れ下流側に燃料電池が配置されている。
【0009】
ヒートポンプサイクルの暖房運転時には、室外熱交換器は低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発用熱交換部として機能する。このため、室外熱交換器で低圧冷媒と熱交換されて低温になった空気が、送風機の空気流れ下流側に配置された燃料電池に供給される。このため、室外熱交換器において冷却された低温空気により燃料電池が冷却されてしまうこととなり、燃料電池の最大出力が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、燃料電池の最大出力の低下を抑制しつつ、車両全体の電力を効率よく利用して暖房を行うことができる燃料電池車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内の暖房手段として、ヒートポンプサイクル(6)による第1暖房手段と、第1暖房手段とは異なる第2暖房手段とのいずれを使用するか決定する制御手段(5)を備え、制御手段(5)は、第1暖房手段を使用する際に、燃料電池(2)の温度を予め定めた基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量と、第1暖房手段を使用した暖房を行うために必要な燃料の消費量との合計である第1燃料消費量(M1)を算出し、第2暖房手段(41)を使用する際に、燃料電池(2)の温度を基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量と、第2暖房手段(41)を使用した暖房を行うために必要な燃料の消費量との合計である第2燃料消費量(M2)を算出し、第1燃料消費量(M1)が第2燃料消費量(M2)より少ない場合に第1暖房手段を使用することを決定し、第1燃料消費量(M1)が第2燃料消費量(M2)より多い場合に第2暖房手段(41)を使用すること決定することを特徴とする。
【0012】
これによれば、第1暖房手段を使用する場合および第2暖房手段(41)を使用する場合の双方において、燃料電池(2)の温度を維持するために必要な燃料の消費量と、暖房を行うために必要な燃料の消費量との合計燃料消費量を算出して、合計燃料消費量のより少ない暖房手段により暖房を行うことができる。また、車室内の暖房手段として第1暖房手段と第2暖房手段とのいずれを使用するか決定する際に、燃料電池(2)の温度を維持するために必要な燃料の消費量を考慮しているので、燃料電池(2)の温度が低下して最大出力が低下することを抑制できる。したがって、燃料電池(2)の最大出力の低下を抑制しつつ、車両全体の電力を効率よく利用して暖房を行うことが可能となる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料電池車両用空調装置において、さらに、燃料電池(2)を冷却する熱媒体を燃料電池(2)に供給する熱媒体回路(3)と、空調用空気と熱媒体とを熱交換させる熱媒体側加熱用熱交換器(41)と、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段(36)と、熱媒体回路(3)から熱媒体側加熱用熱交換器(41)への熱媒体の供給を遮断または許容する制御弁(42)とを備え、制御手段(5)は、熱媒体温度検出手段(36)により検出された熱媒体の温度が予め定めた基準熱媒体温度(Tw1)以上である場合に、制御弁(42)を開弁させるとともに、熱媒体温度検出手段(36)により検出された熱媒体の温度が基準熱媒体温度(Tw1)を下回っている場合に、燃料電池(2)から放出される熱を増加させ、第2暖房手段は、熱媒体側加熱用熱交換器(41)であることを特徴とする。
【0014】
これによれば、熱媒体の温度が低下した場合には、燃料電池(2)から放出される熱を増加させることができるので、燃料電池(2)の排熱により効率よく暖房を行うことができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の燃料電池車両用空調装置において、制御手段(5)は、燃料電池(2)の発電効率を通常運転時より低下させることで、燃料電池(2)から放出される熱を増加させてもよい。
【0016】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料電池車両用空調装置において、第2暖房手段は、電気ヒータであってもよい。また、請求項5に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料電池車両用空調装置において、第2暖房手段は、燃料を燃焼させることにより熱を発生する燃焼式ヒータであってもよい。
【0017】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料電池車両用空調装置において、制御手段(5)は、車室内の暖房手段として第1暖房手段を使用することを決定した場合に、加熱用熱交換器(62)に流入する高圧冷媒の温度が予め定めた基準冷媒温度より低いときには、車室内の暖房手段として第2暖房手段を使用することを決定することを特徴とする。
【0018】
これによれば、第2暖房手段による暖房が行われている場合に、第1暖房手段による暖房に変更するときは、加熱用熱交換器(62)に流入する高圧冷媒の温度が基準冷媒温度になるまで、第2暖房手段による暖房を継続することができる。これにより、第2暖房手段から第1暖房手段に切り替わる際に、空調風温度が急激に低下して空調フィーリングが悪化することを抑制できる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池車両用空調装置において、さらに、熱媒体の温度(Tw)を検出する熱媒体温度検出手段(36)と、車速(Vv)を検出する車速検出手段(27)と、外気温(Ta)を検出する外気温検出手段(28)とを備え、制御手段(5)は、熱媒体温度検出手段(36)により検出された熱媒体の温度(Tw)、車速検出手段(27)により検出された車速(Vv)および外気温検出手段(28)により検出された外気温(Ta)に基づいて、燃料電池(2)の温度を基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量を算出するようにしてもよい。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池自動車用空調装置を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置の車両搭載状態を示す模式図である。
【図3】第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】燃料電池の発電量と熱量との関係を示す特性図である。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。図1は本第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置を示す全体構成図である。この燃料電池車両用空調装置は、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータ等の電気負荷に電力を供給するものである。
【0024】
図1に示すように、燃料電池車両用空調装置1は、空気(酸化剤ガス)と水素(燃料ガス)との電気化学反応により電力を発生する燃料電池2、および燃料電池2に冷却水(熱媒体)を循環供給する冷却水循環回路3等を備えている。
【0025】
燃料電池2は、空気および水素の供給を受けて発電する複数の単セルを積層したスタック構造により構成されている。燃料電池2にて生じた直流の電力の一部は、インバータ21を介して交流電流に変換されて車両走行用電動モータ22等の各種電気負荷に供給される。また、燃料電池2にて生じた直流の電力の一部は、DC/DCコンバータ23によって昇降圧され、電力貯蔵手段である二次電池24に充電される。
【0026】
冷却水循環回路3は、冷却水を燃料電池2および後述するラジエータ35に循環供給する冷却水循環流路31と、冷却水のラジエータ35への流入を回避させるバイパス流路32と、冷却水を冷却水循環流路31やバイパス流路32に循環させる冷却水循環ポンプ33と、冷却水を循環させる流路を制御する電気式の第1三方弁34とを備えている。
【0027】
冷却水循環流路31には、送風ファン35aから送風された送風空気と冷却水とを熱交換させて冷却水を放熱させる放熱用熱交換器としてのラジエータ35が設けられている。また、冷却水循環流路31のうち燃料電池2の出口側には、冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ36が設けられている。
【0028】
冷却水循環ポンプ33は、冷却水循環回路3において冷却水を燃料電池2へ圧送する電動式のポンプであり、後述する制御装置5から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0029】
第1三方弁34は、冷却水循環流路31とバイパス流路32とを切り替える回路切替手段である。この第1三方弁34は、制御装置5から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0030】
具体的には、第1三方弁34は、第一入口、第二入口および出口を形成する三つの弁を有する。第1三方弁34の第一入口は、ラジエータ35の出口側に冷却水循環流路31を介して接続されており、第1三方弁34の第二入口は、バイパス流路32の出口に接続されている。第1三方弁34の出口は冷却水循環ポンプ33の入口側に冷却水循環流路31を介して接続されている。
【0031】
そして、第1三方弁34は、冷却水の温度が低い場合(例えば、燃料電池2の暖機が必要な場合)には、第一入口が閉弁され、第二入口が開弁される。これにより、冷却水がラジエータ35を経由することなくバイパス流路32を通って循環するため、冷却水の温度が上昇する。一方、冷却水の温度が高い場合(例えば、燃料電池2が安定して運転できる上限温度を超える場合)には、第一入口を開弁し、第二入口を閉弁する。これにより、冷却水がラジエータ35によって冷却されるため、冷却水の温度が低下する。
【0032】
冷却水循環流路31には、ヒータコア41に冷却水を供給するヒータコア供給流路4が接続されている。冷却水循環流路31から分岐したヒータコア供給流路4には、シャットバルブ42が設けられている。シャットバルブ42は、ヒータコア供給流路4におけるヒータコア41の冷却水流れ上流側に配置されている。また、ヒータコア供給流路4は、冷却水循環流路31における冷却水循環ポンプ33の入口側に接続されている。
【0033】
ヒータコア41は、送風機71により送風された送風空気(空調用空気)と冷却水とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。シャットバルブ42は、冷却水循環流路31からヒータコア41への冷却水の供給を遮断または許容する電気式の制御弁であり、制御装置5から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0034】
燃料電池車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル6を備えている。ヒートポンプサイクル6は、燃料電池車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される車室内送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。
【0035】
したがって、このヒートポンプサイクル6は、冷媒流路を切り替えて、熱交換対象流体である車室内送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)、車室内送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)を実行できる。
【0036】
まず、圧縮機61は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル6において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機を電動モータにて駆動する電動圧縮機である。
【0037】
電動モータは、制御装置5から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機61の冷媒吐出能力が変更される。
【0038】
圧縮機61の冷媒吐出口には、利用側熱交換器としての室内凝縮器62の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器62は、燃料電池車両用空調装置1の室内空調ユニット7のケーシング70内のうち、ヒータコア41よりも空気流れの下流側に配置されて、その内部を流通する高温高圧冷媒と後述する室内蒸発器67通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット7の詳細構成については後述する。
【0039】
室内凝縮器62の冷媒出口側には、暖房運転時に室内凝縮器62から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房運転用の減圧手段として、絞り開度を変更可能に構成された暖房用可変絞り63が接続されている。暖房用可変絞り63は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有し、制御装置5から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0040】
より具体的には、暖房用可変絞り63では、冷媒を減圧させる絞り状態となると、絞り通路面積が所定範囲となるように絞り開度を変化させる。さらに、絞り開度を全開とすると、冷媒減圧作用を発揮させないようにすることもできる。
【0041】
暖房用可変絞り63の出口側には、室外熱交換器64の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器64は、内部を流通する冷媒と送風ファン35aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。この室外熱交換器64は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発用熱交換器として機能し、冷房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱用熱交換器として機能する。
【0042】
室外熱交換器64の冷媒出口側には、電気式の第2三方弁65が接続されている。この第2三方弁65は、制御装置5から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、冷媒流路切替手段を構成している。
【0043】
より具体的には、第2三方弁65は、暖房運転時には、室外熱交換器64の出口側と圧縮機61の吸入側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、室外熱交換器64の出口側と冷房用可変絞り66の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0044】
冷房用可変絞り66は、冷房運転時に室外熱交換器64から流出した冷媒を減圧膨張させる冷房運転用の減圧手段であり、その基本的構成は、暖房用可変絞り63と同様である。冷房用可変絞り66の出口側には、室内蒸発器67の冷媒入口側が接続されている。
【0045】
室内蒸発器67は、室内空調ユニット7のケーシング70内のうち、室内凝縮器62およびヒータコア41よりも空気流れの上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と車室内送風空気とを熱交換させ、車室内送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器67の冷媒出口側には、圧縮機61の吸入側が接続されている。
【0046】
次に、室内空調ユニット7について説明する。室内空調ユニット7は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング70内に送風機71、ヒータコア41、室内凝縮器62、室内蒸発器67を収容したものである。
【0047】
ケーシング70は、車室内に送風される車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング70内の車室内送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置(図示せず)が配置されている。
【0048】
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機71が配置されている。この送風機71は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、制御装置5から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0049】
送風機71の空気流れ下流側には、室内蒸発器67、ヒータコア41および室内凝縮器62が、車室内送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器67は、ヒータコア41および室内凝縮器62に対して、車室内送風空気の流れ方向の上流側に配置されている。
【0050】
さらに、室内蒸発器67の空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア41の空気流れ上流側には、室内蒸発器67通過後の送風空気のうち、ヒータコア41および室内凝縮器62を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア72が配置されている。また、室内凝縮器62の空気流れ下流側には、室内凝縮器62にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と室内凝縮器62を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間73が設けられている。
【0051】
ケーシング70の空気流れ最下流部には、混合空間73にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0052】
したがって、エアミックスドア72がヒータコア41および室内凝縮器62を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間73にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア72は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア72は、制御装置5から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0053】
次に、図2により、本実施形態の燃料電池車両用空調装置1の車両搭載状態について説明する。図2は本第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置の車両搭載状態を示す模式図である。
【0054】
図2に示すように、車両の前端部には、ヒートポンプサイクル6の室外熱交換器64、冷却水循環回路3のラジエータ35、および送風ファン35aが、空気流れ上流側(車両前方側)から、この順に配置されている。また、燃料電池2は、送風ファン35aの空気流れ下流側(車両後方側)に配置されている。
【0055】
次に、図3により、本実施形態の電気制御部について説明する。図3は本第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【0056】
図3に示すように、制御装置5は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0057】
制御装置5の出力側には、インバータ21、DC/DCコンバータ23、冷却水循環ポンプ33、三方弁34、65、送風ファン35a、シャットバルブ42、圧縮機61、可変絞り63、66、送風機71、エアミックスドア72等が接続されている。
【0058】
また、制御装置5の入力側には、燃料電池2の出力電流を検出する電流センサ25、燃料電池2の出力電圧を検出する電圧センサ26、車速Vvを検出する車速センサ27(車速検出手段)、外気温Taを検出する外気温センサ28(外気温検出手段)、燃料電池2の出口側の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ36等が接続されている。
【0059】
なお、制御装置5は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0060】
次に、図4により、上記構成における本実施形態の燃料電池車両用空調装置1の作動を説明する。図4は本第1実施形態に係る燃料電池車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、燃料電池車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)が投入された状態で、暖房スイッチ(図示せず)が投入されるとスタートする。
【0061】
まず、ステップS1では、冷却水温度センサ36により燃料電池2の出口側の冷却水温度(以下、出口側冷却水温度Twともいう)を検出する。続いて、ステップS2では、ステップS1で検出された出口側冷却水温度Twが、予め定めた暖房要求冷却水温度Tw1を下回っているか否か判定する。
【0062】
ステップS2にて、燃料電池2の出口側冷却水温度Twが暖房要求冷却水温度Tw1を下回っていない、すなわち暖房要求冷却水温度Tw1以上になっていると判定された場合には、冷却水温度が充分に高くなっていると判断し、ステップS3に進み、燃料電池2に通常発電(通常運転)を行わせる。
【0063】
次のステップS4では、暖房モードを冷却水暖房モードに決定し、ステップS1へ戻る。ここで、冷却水暖房モードとは、ヒータコア41において冷却水の有する熱で送風空気を加熱して車室内の暖房を行うモードであり、本発明における第2暖房手段を使用した暖房に相当する。
【0064】
具体的には、ヒートポンプサイクル6を停止するとともに、シャットバルブ42を開弁する。これにより、高温の冷却水がヒータコア供給流路4を介してヒータコア41に流入するので、ヒータコア41において送風空気を充分に加熱でき、充分な暖房を実現することができる。
【0065】
一方、ステップS2にて、出口側冷却水温度Twが暖房要求冷却水温度Tw1を下回っていると判定された場合には、冷却水温度が充分に高くなっていないと判断し、ステップS5に進む。
【0066】
ステップS5では、暖房モードとしてヒートポンプ暖房モードを選択した際において、燃料電池2を所定温度(基準燃料電池温度)に維持するために必要な燃料消費量と、暖房に必要な燃料消費量との合計である第1燃料消費量M1を算出する。
【0067】
ここで、ヒートポンプ暖房モードとは、ヒートポンプサイクル6の室内凝縮器62において高温高圧冷媒の有する熱により送風空気を加熱して車室内の暖房を行うモードであり、本発明の第1暖房手段を使用した暖房に相当する。また、ヒートポンプ暖房モードにおける暖房に必要な燃料消費量とは、ヒートポンプサイクル6(より詳細には圧縮機61)を駆動させて暖房したときに消費される燃料の消費量である。
【0068】
次のステップS6では、暖房モードとして冷却水暖房モードを選択した際において、燃料電池2を所定温度に維持するために必要な燃料消費量と、暖房に必要な燃料消費量との合計である第2燃料消費量M2を算出する。ここで、冷却水暖房モードにおける暖房に必要な燃料消費量とは、後述するステップS10において燃料電池2から放出させる熱を増加させて暖房したときに消費される燃料の消費量である。
【0069】
ところで、燃料電池2から大気への放熱量(以下、大気放熱量Qhpともいう)は、以下の数式F1により算出される。
Qhp=f(外気温Ta、車速Vv、出口側冷却水温度Tw、放熱係数)…(F1)
ここで、放熱係数は、車両毎に決定される係数であり、送風ファン35aの作動または停止により異なる値である。例えば、送風ファン35aの作動時にはQhpが大きくなるように設定される。通常、ステップS9のヒートポンプ暖房モードでは、外気熱を室外熱交換器64で効率よく汲み上げるために送風ファン35aを作動させ、ステップS11の冷却水暖房モードでは、送風ファン35aを停止させる。
【0070】
図5は燃料電池2の発電量と熱量との関係を示す特性図である。図5に示すように、燃料電池2の発電量が増加するに伴い、燃料電池2の発熱量は増加する。また、燃料電池2の発熱量が大気放熱量Qhpより小さいと、燃料電池2の温度は徐々に低下していく。
【0071】
例えば、燃料電池2の発電量が図5中のA点である場合、燃料電池2の発熱量が大気放熱量Qhpを下回っているので、このままだと燃料電池2の温度を維持することができない。このため、燃料電池2の発電量をΔWだけ増加させてB点とすることで、燃料電池2の発熱量が大気放熱量Qhpと等しくなるので、燃料電池2の温度を維持することができる。ここで、燃料電池2の発電量をΔWだけ増加させたときに消費される燃料の消費量が、ステップS5およびステップS6における燃料電池2を所定温度(本例では現状温度)に維持するために必要な燃料消費量である。
【0072】
図4に戻り、次のステップS7では、ステップS6で算出された第2燃料消費量M2が、ステップS5で算出された第1燃料消費量M1より大きいか否かを判定する。
【0073】
ステップS7において、第2燃料消費量M2が第1燃料消費量M1より大きいと判定された場合、ヒートポンプ暖房モードを実行するのに必要な燃料消費量が、冷却水暖房モードを実行するのに必要な燃料消費量より小さいと判断され、ステップS8に進み、燃料電池2に通常発電(通常運転)を行わせる。なお、ステップS8の通常発電では、燃料電池2の温度を現状温度(所定温度)に維持するか、あるいは、現状温度(所定温度)以上に維持するように発電する。
【0074】
次のステップS9では、暖房モードをヒートポンプ暖房モードに決定し、ステップS1へ戻る。具体的には、シャットバルブ42を閉弁するとともに、ヒートポンプサイクル6を作動させる。これにより、圧縮機61から吐出された高温高圧冷媒が室内凝縮器62に流入するので、室内凝縮器62において送風空気を充分に加熱でき、充分な暖房を実現することができる。
【0075】
一方、ステップS7において、第2燃料消費量M2が第1燃料消費量M1より大きくない、すなわち第2燃料消費量M2が第1燃料消費量M1以下であると判定された場合、冷却水暖房モードを実行するのに必要な燃料消費量が、ヒートポンプ暖房モードを実行するのに必要な燃料消費量以下であると判断され、ステップS10に進む。
【0076】
このとき、出口側冷却水温度Twが暖房要求冷却水温度Tw1を下回っている、すなわち出口側冷却水温度Twが充分に高くなっていないので、このままではヒータコア41において送風空気を充分に加熱することができない。このため、ステップS10では、燃料電池2に発電効率の低い運転(以下、低効率発電という)を行わせる。
【0077】
具体的には、空気のストイキ比Stを通常運転時(St=1.5〜2.0)より小さく設定(St=1.0〜1.2)する。これにより、水素と酸素との反応によって取り出せるエネルギーのうち、電力損失分(すなわち熱損失分)が積極的に増大されるため、燃料電池2から放出される熱を増加させることができる。このように、燃料電池2から放出される熱を増加させると、燃料電池2からの排熱を吸収する冷却水の温度を上昇させることができるので、ヒータコア41において送風空気を充分に加熱することができる。
【0078】
また、他の方法としては、燃料電池2の出力電流を維持させながら、出力電圧をDC/DCコンバータ23で降圧させる。これにより、同じ燃料消費量で、出力電圧を低下させることができるため、その分、燃料電池2に低効率発電を行わせることができ、燃料電池2から放出される熱を増大させることができる。なお、ステップS10の抵効率発電では、燃料電池2の温度を現状温度(所定温度)に維持するか、あるいは、現状温度(所定温度)以上に維持するように発電する。
【0079】
次のステップS11では、暖房モードを冷却水暖房モードに決定し、ステップS1へ戻る。
【0080】
本実施形態によれば、上述したステップS5〜S7に示すように、ヒートポンプ暖房モードおよび冷却水暖房モードの双方において、燃料電池2の温度を維持するために必要な燃料の消費量と、暖房を行うために必要な燃料の消費量との合計燃料消費量を算出して、合計燃料消費量のより少ない暖房モードにより暖房を行うことができる。また、暖房モードとしてヒートポンプ暖房モードと冷却水暖房モードとのいずれのモードにするか決定する際に、燃料電池2の温度を維持するために必要な燃料の消費量を考慮しているので、燃料電池2の温度が低下して最大出力が低下することを抑制できる。したがって、燃料電池2の最大出力の低下を抑制しつつ、車両全体の電力を効率よく利用して暖房を行うことが可能となる。
【0081】
また、上述したステップS10に示すように、冷却水暖房モードにおいて、出口側冷却水温度Twが暖房要求冷却水温度を下回っている場合には、燃料電池2から放出される熱を増加させることができる。これにより、燃料電池2の排熱により効率よく暖房を行うことができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態と比較して、ヒートポンプサイクル6の暖機を行う点が異なるものである。
【0083】
本実施形態では、制御装置5の入力側に、室内凝縮器62に流入する冷媒の温度、すなわち圧縮機61吐出冷媒温度Tcを検出する吐出冷媒温度センサが接続されている。
【0084】
図6は本第2実施形態に係る燃料電池車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS8で燃料電池2に通常発電を行わせた後、ステップS81に進む。ステップS81では、現在の暖房モードとして冷却水暖房モードが実行されているか否かを判定する。なお、ステップS8の通常発電では、燃料電池2の温度を現状温度(所定温度)に維持するか、あるいは、現状温度(所定温度)以上に維持するように発電する。
【0085】
ステップS81において、現在の暖房モードとして冷却水暖房モードが実行されていないと判定された場合は、現在の暖房モードとしてヒートポンプ暖房モードが実行されている、または、冷却水暖房モードおよびヒートポンプ暖房モードのいずれも実行されていないと判断し、ステップS9に進み、暖房モードをヒートポンプ暖房モードに決定する。
【0086】
一方、ステップS81において、現在の暖房モードとして冷却水暖房モードが実行されていると判定された場合は、ステップS82に進み、吐出冷媒温度センサにより検出された圧縮機61吐出冷媒温度Tcが、予め定めた基準冷媒温度Tc1以上になっているか否かを判定する。
【0087】
ステップS82において、圧縮機61吐出冷媒温度Tcが基準冷媒温度Tc1以上になっていないと判定された場合は、ヒートポンプサイクル6の暖機が完了していないものとして、再度ステップS82に戻る。したがって、圧縮機61吐出冷媒温度Tcが基準冷媒温度Tc1以上になるまで、冷却水暖房モードによる暖房が継続される。
【0088】
一方、ステップS82において、圧縮機61吐出冷媒温度Tcが基準冷媒温度Tc1以上になっていると判定された場合は、ヒートポンプサイクル6の暖機が完了しているものとして、次のステップS9に進み、暖房モードをヒートポンプ暖房モードに決定する。
【0089】
本実施形態によれば、冷却水暖房モードによる暖房が行われている場合に、ヒートポンプ暖房モードに移行するときは、圧縮機61吐出冷媒温度Tcが基準冷媒温度Tc1以上になるまで、すなわちヒートポンプサイクル6の暖機が完了するまで、冷却水暖房モードによる暖房を継続することができる。これにより、冷却水暖房モードからヒートポンプ暖房モードに切り替わる際に、空調風温度が急激に低下して空調フィーリングが悪化することを抑制できる。
【0090】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0091】
(1)上記各実施形態では、第2暖房手段として、燃料電池2の排熱、すなわち燃料電池2の冷却水が有する熱により送風空気を加熱するヒータコア41を採用した例について説明したが、第2暖房手段はこれに限定されない。
【0092】
例えば、第2暖房手段として、PTCヒータ等の電気ヒータ(ただし、燃料電池2によって発生した電力を使用して作動する電気ヒータ)を採用してもよいし、燃料(水素)を燃焼させることにより熱を発生する燃焼式ヒータを採用してもよい。
【0093】
(2)上記第2実施形態では、ステップS82にて圧縮機61吐出冷媒温度Tcが基準冷媒温度Tc1以上になっているか否かを判定することにより、ヒートポンプサイクル6の暖機が完了しているか否かを判断した例について説明したが、これに限らず、予め定めた基準時間を経過したか否かを判定することにより、ヒートポンプサイクル6の暖機が完了しているか否かを判断してもよい。
【0094】
(3)上記各実施形態では、冷却水循環流路31とバイパス流路32とを切り替える回路切替手段として、電気式の第1三方弁34を採用した例を説明したが、回路切替手段はこれに限定されない。例えば、サーモスタット弁を採用してもよい。サーモスタット弁は、温度によって体積変化するサーモワックス(感温部材)によって弁体を変位させて冷却水通路を開閉する機械的機構で構成される冷却水温度応動弁である。
【符号の説明】
【0095】
2 燃料電池
3 冷却水循環回路(熱媒体回路)
5 制御装置(制御手段)
6 ヒートポンプサイクル
27 車速センサ(車速検出手段)
28 外気温センサ(外気温検出手段)
36 冷却水温度センサ(熱媒体温度検出手段)
41 ヒータコア(第2暖房手段、熱媒体側加熱用熱交換器)
42 シャットバルブ(制御弁)
62 室内凝縮器(加熱用熱交換器)
64 室外熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて発電する燃料電池(2)と、
高圧冷媒と空調用空気とを熱交換させて前記空調用空気を加熱する加熱用熱交換器(62)、および、少なくとも低圧冷媒と外気とを熱交換させて前記低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室外熱交換器(64)を含んで構成されるヒートポンプサイクル(6)とを備え、
前記燃料電池(2)が、前記室外熱交換器(64)よりも前記外気の流れ方向の下流側に配置されている燃料電池車両用空調装置であって、
車室内の暖房手段として、前記ヒートポンプサイクル(6)による第1暖房手段と、前記第1暖房手段とは異なる第2暖房手段とのいずれを使用するか決定する制御手段(5)を備え、
前記制御手段(5)は、
前記第1暖房手段を使用する際に、前記燃料電池(2)の温度を予め定めた基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量と、前記第1暖房手段を使用した暖房を行うために必要な前記燃料の消費量との合計である第1燃料消費量(M1)を算出し、
前記第2暖房手段(41)を使用する際に、前記燃料電池(2)の温度を前記基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量と、前記第2暖房手段(41)を使用した暖房を行うために必要な前記燃料の消費量との合計である第2燃料消費量(M2)を算出し、
前記第1燃料消費量(M1)が前記第2燃料消費量(M2)より少ない場合に前記第1暖房手段を使用することを決定し、前記第1燃料消費量(M1)が前記第2燃料消費量(M2)より多い場合に前記第2暖房手段(41)を使用すること決定することを特徴とする燃料電池車両用空調装置。
【請求項2】
さらに、前記燃料電池(2)を冷却する熱媒体を前記燃料電池(2)に供給する熱媒体回路(3)と、
前記空調用空気と前記熱媒体とを熱交換させる熱媒体側加熱用熱交換器(41)と、
前記熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段(36)と、
前記熱媒体回路(3)から前記熱媒体側加熱用熱交換器(41)への前記熱媒体の供給を遮断または許容する制御弁(42)とを備え、
前記制御手段(5)は、前記熱媒体温度検出手段(36)により検出された前記熱媒体の温度が予め定めた基準熱媒体温度(Tw1)以上である場合に、前記制御弁(42)を開弁させるとともに、前記熱媒体温度検出手段(36)により検出された前記熱媒体の温度が前記基準熱媒体温度(Tw1)を下回っている場合に、前記燃料電池(2)から放出される熱を増加させ、
前記第2暖房手段は、前記熱媒体側加熱用熱交換器(41)であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(5)は、前記燃料電池(2)の発電効率を通常運転時より低下させることで、前記燃料電池(2)から放出される熱を増加させることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両用空調装置。
【請求項4】
前記第2暖房手段は、電気ヒータであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両用空調装置。
【請求項5】
前記第2暖房手段は、前記燃料を燃焼させることにより熱を発生する燃焼式ヒータであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御手段(5)は、前記車室内の暖房手段として前記第1暖房手段を使用することを決定した場合に、前記加熱用熱交換器(62)に流入する前記高圧冷媒の温度が予め定めた基準冷媒温度より低いときには、前記車室内の暖房手段として前記第2暖房手段を使用することを決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料電池車両用空調装置。
【請求項7】
さらに、前記熱媒体の温度(Tw)を検出する熱媒体温度検出手段(36)と、
車速(Vv)を検出する車速検出手段(27)と、
外気温(Ta)を検出する外気温検出手段(28)とを備え、
前記制御手段(5)は、前記熱媒体温度検出手段(36)により検出された前記熱媒体の温度(Tw)、前記車速検出手段(27)により検出された前記車速(Vv)および前記外気温検出手段(28)により検出された前記外気温(Ta)に基づいて、前記燃料電池(2)の温度を前記基準燃料電池温度以上に維持するために必要な燃料の消費量を算出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32144(P2013−32144A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149411(P2012−149411)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】