説明

燃料電池車両

【課題】水素センサを車室外に配置したとしても検出精度を低下させることのない燃料電池車両を提供する。
【解決手段】水素タンクモジュール13の上部に水素センサ20が設けられており、フロアパネル2には、水素センサ20から側方に延びる点検用ガス導入配管30Aがステー31を介して取り付けられている。点検用ガス導入配管30Aの先端には、水素センサ20の検出部21,21の正面を覆うセンサ保護部材40Aが設けられている。このセンサ保護部材40Aによって、検出部21への水や埃などの異物の付着が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素漏れを検出する水素センサの点検用配管が設けられた燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車では、水素漏れを検知するための水素センサが設けられている。また、水素は空気に比べて比重が軽いため、燃料電池システムの上方に配置することが一般的に行われている。しかし、燃料電池システムの上方に配置すると水素センサが燃料電池システムによって視認できない位置となる。このため水素センサの点検時には、水素センサを視認できるように燃料電池システムを車両から取り外す必要が生じて、水素センサの点検作業が煩雑になるという問題がある。そこで、特許文献1では、車両に予め水素センサ点検用の配管を取り付けておくことで、点検作業を容易にする技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−329786号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、燃料電池自動車では水素が車室内に浸入するのを避けるために、燃料電池システム(例えば、燃料電池スタック、水素タンク、水素配管等)を車室外に配置している。このため、水素センサも当然に車室外に配置されることになるが、水素センサを車室外に配置すると、水素センサの検出部が水や埃などの異物に曝されてしまい、水素センサの検出精度が低下するおそれがあるという問題があった。
【0004】
また、点検用配管をステーを介してボディに取り付ける場合、ステーから点検用配管の水素吹出し口までの距離が長いと、水素センサと吹出し口とのクリアランスの管理が困難であった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、水素センサを車室外に配置したとしても良好な検出精度を得ることができる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室外に燃料電池システムが配置され、前記燃料電池システムの上方に水素漏れを検知する水素センサが設けられた燃料電池車両において、前記検出部から前記燃料電池車両の外部に向けて延び、前記検出部に点検用ガスを供給して前記水素センサの点検を行う点検用ガス導入配管と、前記点検用ガス導入配管に設けられ、前記水素センサの検出部が異物に曝されるのを防ぐセンサ保護部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、新たに水素センサ用の保護部品を取り付けることなく、水素センサの検出部への異物(水や埃など)の付着を防止することが可能になる。よって、水素センサにおいて良好な検出精度を得ることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記センサ保護部材は、前記点検用ガス導入配管の先端部に設けられていることを特徴とする。これによれば、水素センサの検出部への異物の付着を効果的に防止できる。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記センサ保護部材は、前記水素センサの検出部を正面視したときに、前記検出部の全体と重なるように構成されていることを特徴とする。これによれば、水素センサの検出部の正面全体が覆われるので、水素センサの検出部への異物の付着をさらに効果的に防止できる。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記センサ保護部材は、板状であることを特徴とする。これによれば、他のデバイスの邪魔になることなく水素センサの検出部への異物の付着を防止することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記センサ保護部材は、前記点検用ガス導入配管を軸として前記水素センサ側に傾くように折り曲げられていることを特徴とする。これによれば、水素センサの側方からの異物の侵入を効果的に防止できる。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記センサ保護部材は、通気性を有し、かつ、水滴を通さないフィルタを有していることを特徴とする。これによれば、センサ保護部材が漏れた水素を遮ることがないため、水素センサの検出精度が損なわれることがない。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記センサ保護部材は、つば状に形成されていることを特徴とする。これによれば、点検用ガス導入配管を伝っての水素センサへの水の付着を防止することができる。
【0014】
請求項8に係る発明は、前記センサ保護部材は、車両のボディに突き当たるように構成されていることを特徴とする。これによれば、運搬時に点検用ガス導入配管が多少曲がったとしても、センサ保護部材が位置決め部材となって、水素センサと点検用ガス導入配管の吐出口とのクリアランスを点検に必要な距離確保できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水素センサを車室外に配置したとしても検出精度が良好な燃料電池車両を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本実施形態の燃料電池自動車における燃料電池システムの配置を示し、(a)は透視側面図、(b)透視上面図、図2は燃料電池システムを示すブロック図、図3はセンサ保護部材を備えた点検用ガス導入配管とその周辺の配置を車両後方から見たときの斜視図、図4はセンサ保護部材の形状を示し、(a)は水素センサの検出部を正面側から見たときの平面図、(b)は点検用ガス導入配管の径方向であるA−A線で切断したときの断面図、(c)は点検用ガス導入配管に沿う方向であるB−B線で切断したときの断面図、図5は水素センサの内部構造の一例を示す斜視図である。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態の燃料電池自動車1は、燃料電池システム10、水素センサ20、点検用ガス導入配管30A、センサ保護部材40A(図3参照)などで構成されている。また、燃料電池自動車1は、フロアパネル2によって車室内Q1と車室外Q2とに区画されており、フロアパネル2の下方の車室外Q2に燃料電池システム10が配置されている。なお、車室内Q1とは、客室および荷室を含む空間を意味し、車室外Q2とは、車室内Q1を除く部分を意味する。また、フロアパネル2は、車室外Q2に設置された燃料電池システム10からの漏れ水素が車室内Q1内に流入しないように構成されている。
【0018】
前記燃料電池システム10は、燃料電池11、補機12、水素タンクモジュール13、水素供給配管14などで構成されている。燃料電池11および補機12は、フロアパネル2のフロント側のフロントフロアパネル2aに形成された凸状のセンターコンソール2a1内に配置され、水素タンクモジュール13は、フロアパネル2のリア側のリアフロアパネル2bの後輪RWと後輪RWとの間に横置きに配置されている(図1(b)参照)。なお、リアフロアパネル2bは、その一部が水素タンクモジュール13のタンク形状に沿うように上側に凸状に湾曲して形成されている。
【0019】
また、燃料電池11および補機12は、サブフレーム15上に固定された状態で、サブフレーム15がフロアパネル2側の車体(メインフレーム、図示せず)に取り付けられている。また、水素タンクモジュール13は、サブフレーム16上にリアサスペンション(図示せず)などとともに固定され、サブフレーム16がフロアパネル2側の車体(図示せず)に取り付けられている。
【0020】
前記水素タンクモジュール13は、高圧水素タンク、一次遮断弁、一次減圧弁などで構成されている。高圧水素タンクは、高純度の水素を非常に高い圧力で充填した円筒状の容器である。一次遮断弁は、例えばインタンク式のものであり、ソレノイドを有する電磁作動式のものである。一次減圧弁は、高圧水素タンクからの高圧の水素を所定圧に減圧する機能を有する。
【0021】
前記水素供給配管14は、補機12と水素タンクモジュール13とを接続し、水素タンクモジュール13から供給される水素を補機12に導入するための流路を構成している。
【0022】
前記燃料電池11は、固体高分子形の燃料電池であり、電解質膜を触媒を含むアノードとカソードとで挟み、さらに一対の導電性のセパレータで挟んで構成した単セルを厚み方向に複数積層した構造を有している。
【0023】
前記補機12は、図2に示すように、水素タンクモジュール13から供給された水素を燃料電池11のアノードに供給するアノード系補機であり、二次遮断弁12a、二次減圧弁12b、エゼクタ12c、パージ弁12dなどで構成されている。二次遮断弁12aは、例えばソレノイドを有する電磁作動式のものであり、二次減圧弁12bなどに不具合が生じたときなどに閉弁するものである。二次減圧弁12bは、一次減圧弁で減圧された水素をさらに低い所定圧に減圧する機能を有する。エゼクタ12cは、燃料電池11のアノードから排出された未反応の水素を再びアノードに供給して再循環させる真空ポンプの一種である。パージ弁12dは、例えば定期的に開弁して、アノード循環経路に蓄積した不純物(窒素、生成水など)を排出する機能を有する。
【0024】
なお、燃料電池システム10は、エアコンプレッサ(図示せず)から導入された圧縮空気を燃料電池11のカソードに供給するカソード系補機を有している。カソード系補機としては、例えばエアコンプレッサから供給された空気を加湿するための加湿器である。また、パージ弁12dの下流側には希釈器(図示せず)が設けられており、この希釈器においてアノード側から排出された水素をカソードオフガスで希釈して車外に排出するように構成されている。
【0025】
燃料電池11では、アノードに対向するセパレータに水素(燃料ガス)が供給され、カソードに対向するセパレータに空気(酸化剤ガス)が供給される。これにより、アノードでは、触媒の作用により水素から電子が分離して、水素イオン(プロトン)が電解質膜を介してカソードに透過し、電子が外部負荷(例えば、走行モータ)を介してカソードに移動する。カソードでは、水素イオンと電子と空気中の酸素との反応により水が生成される。
【0026】
図3に示すように、前記水素センサ20は、燃料電池システム10からの水素漏れを検出する機能を有し、水素タンクモジュール13の上方のフロアパネル2(リアフロアパネル2b)の天井面に、その検出部21,21が下向きになるように取り付けられている。すなわち、水素センサ20は、水素タンクモジュール13が取り付けられた状態では、車両下側からは確認できない位置となっている。なお、水素は空気に比べて比重が非常に小さいことから、水素センサ20は、水素が漏れたときに水素が最も溜まり易い位置(例えば、最も高い位置)に設けられている。水素センサ20の内部構造については図5を参照して後記する。
【0027】
前記点検用ガス導入配管30Aは、水素センサ20の点検時に水素を導入して水素センサ20の検出部21,21に点検用ガスを吹き付ける流路を構成し、先端部が水素センサ20の正面に位置し、基端部が車両の外部に向けて延びて構成されている。本実施形態における点検用ガス導入配管30Aは、フロアパネル2(リアフロアパネル2b)の壁面に沿って車幅方向の左側に向けて延び、後輪RWおよびタイヤハウスカバー(図示せず)を外したときに、その先端部が車両側面から視認できる位置まで延びて形成されている。
【0028】
なお、点検用ガス導入配管30Aの長さは、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、後輪RWおよびタイヤハウスカバーを外して視認できる位置であれば、さらに短く形成されていてもよい。
【0029】
また、点検用ガス導入配管30Aは、水素センサ20の検出部21,21の並び方向と、点検用ガス導入配管30Aの軸方向とが一致するように構成されている。また、点検用ガス導入配管30Aは、ステー31,31によって支持され、各ステー31がねじ32によってフロアパネル2にねじ止めされている。なお、検出部21,21の並び方向と点検用ガス導入配管30Aの軸方向とは、一致するものに限定されず、直交するように配置してもよい。
【0030】
前記各ステー31には、水素センサ20へ電力を供給するとともに水素センサ20からの検出信号を取得するためのハーネス41が支持部材42によって支持されるように構成されている。なお、ハーネス41の一端は、水素センサ20のケースに設けられたコネクタ部20aに接続され、他端は図示しない制御部に接続されている。また、点検用ガス導入配管30Aとステー31とを溶接などで固定しており、点検用ガス導入配管30Aをフロアパネル2に固定したときに、その吐出口30a(図4において後記する)が検出部21側に向くようになっている。
【0031】
図4(a)に示すように、点検用ガス導入配管30Aの先端部には、センサ保護部材40Aが設けられている。このセンサ保護部材40Aは、例えば楕円板状に形成されたものであり、水素センサ20の検出部21,21に対して正面視したときに、センサ保護部材40Aが検出部21,21の全体に重なるように、つまり検出部21,21の全体を覆うように構成されている。また、点検用ガス導入配管30Aの先端部には、各検出部21に対向する位置に吐出口30aがそれぞれ形成されている。
【0032】
図4(b),(c)に示すように、検出部21と点検用ガス導入配管30Aとは所定距離離れて配置している。なお、この所定距離は、点検用ガス(水素)に用いる水素濃度に応じて適宜選択することができる。ただし、水素は拡散性が高いので、検出部21の直近において吐出させることが好ましい。
【0033】
図5に示すように、水素センサ20は、ガス検出室Qとなる円筒空間を有し、このガス検出室Qに、基準検出素子50A(検出部)と、常用検出素子50B(検出部)とを備えている。なお、円筒体の先端(下面)は、基準検出素子50A、常用検出素子50Bと対向する位置に開口部20b(図3参照)が形成され、この開口部20bが水素の取り込み口となっている。
【0034】
基準検出素子50Aと常用検出素子50Bは、それぞれ検出素子51と温度補償素子52の対により構成されている。検出素子51と温度補償素子52は、互いに近接して配置され、基準検出素子50Aと常用検出素子50Bも互いに近接して配置されている。検出素子51は、周知の素子であって、電気抵抗に対する温度係数が高い白金等を含む金属線のコイル51aが、触媒51bを担持したアルミナ等の担体で被覆されて形成されている。触媒51bは、水素などの被検出ガスに対して活性な貴金属などからなる。温度補償素子52は、被検出ガスに対して不活性とされ、例えば検出素子51と同等のコイル52aの表面が、アルミナ等の担体で被覆されて形成されている。被検出ガス(水素)が触媒51bに接触した際に生じる反応熱により検出素子51が高温になると、検出素子51と温度補償素子52の抵抗値に差が生じるので、この差から水素濃度を検出することができる。なお、雰囲気温度による電気抵抗値の変化は、温度補償素子52を利用することにより相殺されるようになっている。
【0035】
なお、本実施形態では、水素センサ20が水素タンクモジュール13の上部のフロアパネル2に設けられているので、仮に水素タンクモジュール13の一次遮断弁や一次減圧弁のシール部分や水素供給配管14の継ぎ目などから水素が漏れたとしても、水素センサ20によって直ちに水素漏れが検出される。水素漏れが検出された場合には、警告音や警告ランプ(図示せず)などによって運転者に告知する。
【0036】
本実施形態の燃料電池自動車1における水素センサ20の点検手順としては、例えば、車両をジャッキアップして、一方の後輪RWおよびタイヤハウスカバー(図示せず)を取り外す。これにより、点検用ガス導入配管30Aの基端を視認することができるようになる。そして、水素センサ20を起動した状態において、点検用ガスとしての水素を点検用ガス導入配管30Aの基端部の開口から供給する。供給された水素は点検用ガス導入配管30A内を通って、先端の吐出口30a,30aから検出部21,21に向けて水素が吐出される。このようにして水素センサ20が正常に機能しているかどうかを確認することができる。
【0037】
本実施形態によれば、センサ保護部材40Aが点検用ガス導入配管30Aに設けられているので、新たに水素センサ20用のセンサ保護部品を取り付ける必要がない。しかも、水素センサ20の検出部21に水や埃などの異物が付着するのをセンサ保護部材40Aによって遮断できるので、水素センサ20への水や埃などの付着を防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では、センサ保護部材40Aは、水素センサ20を正面視したときに水素センサ20の検出部21,21と重なるように配置されているので、水素センサ20の検出部21への水や埃などの付着を効果的に防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、センサ保護部材40Aは板状に形成されているので、他のデバイスの邪魔をすることがなく、検出部21への水や埃などの付着を防止できる。
【0040】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、図6ないし図8に示すような構成にしてもよい。図6(a),(b)はそれぞれセンサ保護部材の他の実施形態を示す斜視図、図7はフィルタからなるセンサ保護部材の機能を模式的に示す断面図、図8(a),(b)はそれぞれセンサ保護部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。なお、前記した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図6に示す実施形態は、センサ保護部材40Aに替えてセンサ保護部材40Bにした構成である。このセンサ保護部材40Bは、図6(a),(b)に示すように、配管を軸として水素センサ20側に傾くように断面V字状に折り曲げ形成されている。この実施形態によれば、水素センサ20の検出部21への側部からの水や埃などの付着を防止できる。なお、この場合のセンサ保護部材40Bも、前記した実施形態と同様に、水素センサ20を正面視したときに検出部21,21の全体と重なるように構成されていてもよい。
【0042】
図7に示す実施形態は、センサ保護部材40Aに替えてセンサ保護部材40Cにした構成である。このセンサ保護部材40Cは、図7に示すように、水蒸気を透過できる(通気性を有する)が、水(水滴)を透過させることのできないフィルタで形成されている。このような機能を有するセンサ保護部材40Cとしては、例えば、撥水フィルタや通気フィルタなどを用いることができる。なお、撥水性と通気性の双方の特性を有するフィルタを用いることにより、水素を透過することができるので、走行時(発電時)において、水素センサ20の検出部21への水滴や埃などの付着を遮断でき、しかも水素センサ20の水素検出精度が損なわれることがない。
【0043】
図8(a),(b)に示す実施形態は、センサ保護部材40Aに、センサ保護部材40D,40Eを追加した構成である。センサ保護部材40Dは、図8(a)に示すように、センサ保護部材40Aよりも上流の点検用ガス導入配管30Aにつば状に形成したものである。このセンサ保護部材40Dは、略半円板状に形成されたものであり、点検用ガス導入配管30Aの径方向に突出して形成されている。なお、図8に示す実施形態は、センサ保護部材40Aと40D,40Eの双方を設けた構成であるが、センサ保護部材40D,40Eのみであってもよい。また、センサ保護部材40Dは、1箇所に限定されるものでなく、複数個所に設けてもよい。
【0044】
また、センサ保護部材40Eは、図8(b)に示すように、つば状に形成されたものであり、点検用ガス導入配管30Aを支持するステー31と一体に形成されたものである。なお、ハーネス41と点検用ガス導入配管30Aのステー31とを共用化する場合などハーネス41と点検用ガス導入配管30Aとが互いに近い位置にある構成では、センサ保護部材をハーネス41側に取り付けてもよい。
【0045】
図8に示すセンサ保護部材40D,40Eによれば、点検用ガス導入配管30Aを伝って流れる水滴が水素センサ20側に流れるのを遮断できるので、水素センサ20の検出部21への水滴の付着を防止できる。また、この実施形態によれば、点検用ガスの基端側(点検用ガス導入側)を水素センサ20に対して高さ方向に対して上側に位置するように設けた場合、点検用ガス導入配管30Aを伝っての水滴が検出部21に付着するのを特に効果的に防止できる。また、この実施形態によれば、水素センサ20の検出部21を上向きに取り付けて、水素センサ20の上側から点検用ガスを吹き付ける構成において、さらに有効である。
【0046】
なお、図8では、センサ保護部材40D,40Eの形状をつば状に形成したが、点検用ガス導入配管30Aを伝う水滴を遮断できる構成であればよく、例えば、点検用ガス導入配管30AをU字状に曲げるような構成であってもよい。
【0047】
また、図9(a)に示すように、センサ保護部材40D,40Eの面40sを、フロアパネル2(ボディ)の表面2cに突き当てるように形成してもよい。すなわち、点検用ガス導入配管30Aのステー31(図8参照)から吐出口30aまでの長さが長いと、水素センサ20と吐出口30aとのクリアランスの管理(基本的には、製作時にステー31の溶接角度、位置で管理)が困難であったが、センサ保護部材40D,40Eがフロアパネル2に突き当たるように構成することにより、水素センサ20を車両に取り付けた後、点検用ガス導入配管30Aのステー31から先端(吐出口30a)までの部分が運搬時に多少曲げられたとしても、センサ保護部材40D,40Eが位置決め部材として機能するので、水素センサ20と吐出口30aとのクリアランスCL(図9(b)参照)を、点検に必要な距離確保できるようになる。
【0048】
また、図9(b)に示すように、センサ保護部材40D,40Eと水素センサ2との距離Lを短く設定することにより、水素センサ20と吐出口30aとのクリアランスCLを点検に必要な距離に設定する点において、水素センサ20とセンサ保護部材40D,40Eとが離れている場合よりも有利となる。
【0049】
なお、前記した実施形態では、車幅方向に延びる点検用ガス導入配管30Aを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、図10(a)に示すように、水素タンクモジュール13の高圧水素タンクに沿って前方に延びる点検用ガス導入配管30Bとしてもよく、図10(b)に示すように、高圧水素タンクに沿って後方に延びる点検用ガス導入配管30Cとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、水素タンクモジュール13側に水素センサ20を設けた場合を例に挙げて説明したが、同様に燃料電池11の上部のフロアパネル2(フロントフロアパネル2a)の天井面に取り付けられた水素センサから延びるように、センサ保護部材40Aなどを備えた点検用ガス導入配管を設ける構成であってもよい。
【0051】
また、本実施形態では、センサ保護部材40Aを備えた点検用ガス導入配管30Aをフロアパネル2に取り付けた場合を例に挙げて説明したが、水素タンクモジュール13の高圧水素タンクにセンサ保護部材40Aを備えた点検用ガス導入配管を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の燃料電池自動車における燃料電池システムの配置を示し、(a)は透視側面図、(b)透視上面図である。
【図2】燃料電池システムを示すブロック図である。
【図3】センサ保護部材を備えた点検用ガス導入配管とその周辺の配置を示す斜視図である。
【図4】センサ保護部材の形状を示し、(a)は水素センサの検出部を正面側から見たときの平面図、(b)は点検用ガス導入配管の径方向であるA−A線で切断したときの断面図、(c)は点検用ガス導入配管に沿う方向であるB−B線で切断したときの断面図である。
【図5】水素センサの内部構造の一例を示す斜視図である。
【図6】(a),(b)はそれぞれセンサ保護部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】フィルタからなるセンサ保護部材の機能を模式的に示す断面図である。
【図8】(a),(b)はそれぞれセンサ保護部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図9】図8に示すセンサ保護部材の変形例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図10】(a),(b)はそれぞれ点検用ガス導入配管の他の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料電池自動車(燃料電池車両)
2 フロアパネル
10 燃料電池システム
13 水素タンクモジュール
20 水素センサ
21 検出部
30A〜30C 点検用ガス導入配管
40A〜40E センサ保護部材
Q1 車室内
Q2 車室外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外に燃料電池システムが配置され、前記燃料電池システムの上方に水素漏れを検知する水素センサが設けられた燃料電池車両において、
前記水素センサの検出部から前記燃料電池車両の外部に向けて延び、前記検出部に点検用ガスを供給して前記水素センサの点検を行う点検用ガス導入配管と、
前記点検用ガス導入配管に設けられ、前記検出部が異物に曝されるのを防止するセンサ保護部材と、を備えることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記センサ保護部材は、前記点検用ガス導入配管の先端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記センサ保護部材は、前記水素センサの検出部を正面視したときに、前記検出部の全体と重なるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
前記センサ保護部材は、板状であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料電池車両。
【請求項5】
前記センサ保護部材は、前記点検用ガス導入配管を軸として前記水素センサ側に傾くように折り曲げられていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池車両。
【請求項6】
前記センサ保護部材は、通気性を有し、かつ、水滴を通さないフィルタを有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池車両。
【請求項7】
前記センサ保護部材は、つば状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項8】
前記センサ保護部材は、車両のボディに突き当たるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−277594(P2009−277594A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129916(P2008−129916)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】