説明

燃料電池電源システムが搭載された車両

【課題】車両における搭載スペースおよびコストの節約を図りつつ、燃料電池電源システムを構成する各構成物品群の適切な使用温度範囲に鑑みて、各構成物品群を効率よく冷却または加熱することができる車両を提供する。
【解決手段】燃料電池電源システムが搭載された車両11は、少なくとも燃料電池1と、燃料電池1と接続されたキャパシタ2と二次電池6とからなる蓄電ユニット12と、燃料電池1および蓄電手段12の出力部が接続された、車両11の動力源である電動機5と、該出力部と電動機5との間に設けられたPDU4とを備え、燃料電池1と蓄電ユニット12とPDUとを含む電源システムの構成物品群は、車両11の内部を流れる冷却媒体によって発熱量が小さい順に冷却されるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、キャパシタ及び二次電池を備える燃料電池電源システムが搭載された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池電源システムが搭載された車両としては、特許文献1の図2に見られるように、フロントシートの下方領域に燃料電池を集約して配置し、リアシートの下方領域には蓄電手段(二次電池)を集約して配置したものが知られている。
【0003】
かかる従来の車両では、燃料電池と蓄電手段とでは定格温度(使用上限温度)が異なる(例えば、二次電池は60℃以下、燃料電池は80℃前後である)ため、燃料電池については水冷を行い、蓄電手段については空冷を行っている。
【特許文献1】特開2007−186200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両では、燃料電池と蓄電手段とに対して、各々独立の冷却機構を用いて個別に冷却を行っていたため、車両に占める冷却機構の搭載スペース大きくなると共に、冷却機構に掛かるコストが嵩むという問題があった。
【0005】
このように、燃料電池電源システムを構成する構成物品は、それぞれ適切な使用温度範囲が異なるが、各構成物品毎にその温度調節のための冷却または加熱機構を設けることとすると温度調整機構のスペースやコストの増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、車両における搭載スペースおよびコストの節約を図りつつ、燃料電池電源システムを構成する各構成物品の適切な使用温度範囲に鑑みて、各構成物品群を効率よく冷却または加熱することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料電池電源システムが搭載された車両であって、少なくとも燃料電池と、該燃料電池と接続されたキャパシタまたは二次電池のいずれか一方または両方からなる蓄電手段と、該燃料電池および蓄電手段の出力部が接続された、前記車両の動力源である電動機と、該出力部と電動機との間に設けられた電動機駆動装置とを備え、前記燃料電池と蓄電手段と電動機駆動装置とを含む第1構成物品群は、前記車両の内部を流れる冷却媒体によって発熱量が小さい順に冷却されるように配置されていることを特徴とするものである(第1発明)。
【0008】
かかる第1発明によれば、燃料電池等を含む発熱量を有する第1構成物品群は、発熱量の小さいものが優先的に冷却される。そのため、先に冷却された構成物品によって冷却媒体が昇温されても、次に冷却される構成物品の発熱量がより大きく、昇温された冷却媒体を用いて次の構成物品を冷却することができる。
【0009】
すなわち、発熱量の大きな構成物品が後で冷却されるため、冷却媒体が後に配置された構成物品を冷却できない程度に前側で温められることを回避して、該冷却媒体を利用して構成物品群を効率よく冷却することができる。
【0010】
また、共通の冷却媒体によって、第1構成物品群のすべてを順番に冷却していくことができる。そのため、各構成物品毎に個別の冷却機構を設ける必要がなく、車両における冷却機構等の省スペース化を図ることができ、コストも抑えることができる。
【0011】
このように、第1発明の車両によれば、搭載スペースおよびコストの節約を図りつつ、燃料電池電源システムを構成する各構成物品の適切な使用温度範囲に鑑みて、各構成物品群を効率よく冷却することができる。
【0012】
前記第1発明において、前記燃料電池に燃料を供給する燃料タンクを含む第2構成物品群が、前記冷却媒体の流れにおいて前記第1構成物品群の下流に配置されている(第2発明)。
【0013】
かかる第2発明によれば、燃料タンクを含む加熱の必要な第2構成物品群が、第1構成物品群の下流に配置される。そのため、第1構成物品群によって昇温された冷却媒体を利用して、第2構成物品群を加熱することができる。これにより、加熱機構を搭載するスペースやコストを節約して、第2構成物品の適切な使用温度範囲に鑑みて、該構成物品を効率よく加熱することができる。
【0014】
前記第1発明において、前記冷却媒体は、前記第1構成物品群が配置される内部空間を流れる空気であって、該内部空間は、前記車両が走行したときに、該車両外の空気を該内部空間に流入させる流入部と、流入した流入空気を該内部空間から流出させる流出部とを備える(第3発明)。
【0015】
かかる第3発明によれば、第1構成物品群は、車両の移動時に流入空気が流れる内部空間に配置される。流入空気を冷却媒体とするため、特別な冷却媒体を準備する必要が無く、
これらの構成物品を流入部と流出部とその間に形成される内部空間という簡単な構成で効率よく冷却することができる。
【0016】
前記第3発明において、前記燃料電池に燃料を供給する燃料タンクを含む第2構成物品群が、前記内部空間と前記流出部との間に配置される(第4発明)。
【0017】
かかる第4発明によれば、燃料タンクを含む加熱の必要な第2構成物品群を内部空間と流出部との間に配置することにより、前記第1構成物品群により熱せられた流入空気を第2構成物品群に供給して加熱することができる。このように、第1構成物品群によって昇温された流入空気を利用して第2構成物品群を加熱することにより、加熱機構を搭載するスペースやコストを節約して、第2構成物品群を簡易な構成で効率よく加熱することができる。
【0018】
前記第1発明において、前記冷却媒体は、前記車両内に設けられた循環路を流れる冷却液であって、該循環路は、発熱量が最大となる前記構成物品から最小となる前記構成物品へ至る経路上に前記冷却液の熱を放熱する放熱部が設けられている(第5発明)。
【0019】
かかる第5発明によれば、循環路には、放熱部が発熱量が最大となる前記構成物品から最小となる前記構成物品へ至る経路上に設けられているため、放熱部で冷却された冷却液により発熱量の小さい構成物品から順に冷却され、後に配置された構成物品を冷却できないとの不都合を回避して、共通の循環路を用いて構成物品群を効率よく冷却することができる。
【0020】
また、第5発明では、冷却媒体としての冷却液を循環路に循環させて第1構成物品群を冷却するため、主に当該車両の停車時等のように流入空気による冷却が期待できない場合にも、冷却液を循環路に循環させることにより構成物品群を強制的に冷却することができる。
【0021】
前記第5発明において、前記放熱部は、前記燃料電池に燃料を供給する燃料タンクを含む第2構成物品群を循環する循環路部分によって構成される(第6発明)。
【0022】
かかる第6発明によれば、発熱量が最大となる構成物品から最小となる構成物品へ至る経路上で循環路を第2構成物品群に循環させることで、加熱する必要がある第2構成物品群へ冷却媒体の熱を放熱させる。これにより、第1構成物品群から吸収した熱を第2構成物品群の加熱に用いて放熱させることができ、加熱機構を搭載するスペースやコストを節約して、冷却媒体の放熱と第2構成物品群の加熱とを効率よく行うことができる。
【0023】
前記第4または第5発明において、前記循環路には、前記冷却液の温度を計測する温度センサと、該冷却液による冷却を行う対象物を前記構成物品群の全部または一部に切り換える切換弁とが設けられ、前記切換弁は、前記温度センサの計測温度に基づいて切り替えられる(第7発明)。
【0024】
かかる第7発明によれば、各構成物品の適切な使用温度範囲を考慮して、冷却液の供給先を切換手段によって切り換えることができる。そのため、構成物品群の一部が過冷または過熱されることを回避することができる。例えば、当該車両の起動時に、燃料電池が安定動作温度に到達する前に冷却媒体が該燃料電池に循環することを回避できると共に、燃料電池が安定動作温度以上に達した場合には、冷却媒体を循環させて燃料電池の温度上昇を抑制することができる。
【0025】
前記第1〜第7発明では、第1構成物品群が、冷却媒体によって発熱量が小さい順に冷却されるように配置すればよいが、燃料電池と蓄電手段と電動機駆動装置とは、次のように配置することが好ましい。
【0026】
すなわち、前記燃料電池と蓄電手段と電動機駆動装置とは、前記冷却媒体によって該蓄電手段、燃料電池および電動機駆動装置の順に冷却されるように配置されることが好ましい(第8発明)。
【0027】
かかる第8発明によれば、構成物品群の中で、蓄電手段、燃料電池および電動機駆動装置は、特に、発熱量が大きく、定格温度(使用上限温度)が制限されている。そして、蓄電手段、燃料電池および電動機駆動装置は、これらの順番にそれぞれ発熱量および定格温度が大きくなる。そのため、少なくとも蓄電手段、燃料電池および電動機駆動装置をこれらの順序で冷却することにより、前記冷却媒体を利用して、燃料電池電源システム全体のヒートバランスを適当に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における燃料電池電源システムの全体構成図である。図1に示すように、本発明の電源システムである燃料電池電源システムは、燃料電池車両11(本発明の車両に相当する、以下、単に車両11という)に搭載されるものであって、燃料電池1、燃料電池1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(以下、単にキャパシタ2という)、入力部が燃料電池1及びキャパシタ2に接続されると共に、出力部がPDU4(Power Drive Unit、本発明の電動機駆動装置に相当する)を介して電動機5(本発明の負荷に相当する)に接続された昇圧手段3(Voltage Boost Unit)、及び入力部が昇圧手段3に接続されると共に出力部が二次電池6(本実施の形態では、リチウムイオンバッテリを使用)に接続された電圧変換手段7を備えている。
【0030】
燃料電池1は、例えば燃料電池スタックを250個直列に接続して構成され、出力電圧が約225V(出力電流0A)〜180V(出力電流210A)の範囲で変動するものである。また、キャパシタ2は図示しない複数のキャパシタセルから構成され、出力電圧が200Vを中心とした範囲(約下限154V〜上限243Vの範囲)で変動するものである。また、二次電池6は、図示しない複数の二次電池(リチウムイオン電池)を相互に接続してなる電池ユニットであって、出力電圧は約290V〜350Vの範囲で変動する。
【0031】
昇圧手段3は、例えば、定格100kwで昇圧比1.5〜2.4のDC/DCコンバータであって、少なくとも昇圧機能を有し、降圧機能は必要に応じて付加される。また、電圧変換手段7は、例えば、定格10kwで昇圧比1.36〜1.70のDC/DCコンバータである。
【0032】
さらに、燃料電池電源システムは、二次電池6と電圧変換手段7との間で、二次電池6と電圧変換手段7とに並列に接続された補機8とを備える。補機8は、水素燃料タンク17(図2および図3参照、本発明の燃料タンクに相当する)に貯蔵された水素ガスを図示しないレギュレータや各種バルブ等を介して燃料電池1に供給するポンプや、後述する循環路30(図3参照)に冷却媒体としての冷却液を循環させるための循環ポンプ等である。補機8は、PDU9(Power Drive Unit)を介して、二次電池6及び電圧変換手段7に直結する第2電力供給ラインL2に接続されている。尚、本実施形態の燃料電池電源システムにおいて、説明の都合上、燃料電池1及びキャパシタ2に直結する電力供給ラインを第1電力供給ラインL1とし、二次電池6及び電圧変換手段7に直結する電力供給ラインを第2電力供給ラインL2、第1電力供給ラインL1を昇圧手段3により昇圧した電力供給ラインを第3電力供給ラインL3としている。
【0033】
燃料電池電源システムは、電子制御ユニット10を備え、電子制御ユニット10は、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6の各々に設けられた図示しない電圧センサ及び電流センサの検出信号を取得し、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6から出力される電圧、電流及び電力を検知する。
【0034】
さらに、電子制御ユニット10は、キャパシタ2の出力電圧と出力電流とから開路電圧を推定し、推定した開路電圧とキャパシタ2の残容量(以下、SOCという)との関係を規定したマップやデータテーブル(以下、マップ等という)を参照して、キャパシタ2のSOCを推定する。また、電子制御ユニット10は、二次電池6の出力電圧と出力電流とから該二次電池の開路電圧を推定し、推定した二次電池の開路電圧とSOCとの関係を規定したマップ等を参照して、二次電池6のSOCを推定する。
【0035】
また、電子制御ユニット10は、燃料電池1の出力、キャパシタ2及び二次電池6の各SOCに基づいて、燃料電池1の作動制御と、昇圧手段3または電圧変換手段7の作動制御とを実行し、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6から電動機5への電力供給と、燃料電池1からキャパシタ2及び二次電池6の充電とを行う。
【0036】
電子制御ユニット10は、電動機5は当該車両11が減速する際には発電機として機能するため、車両11の減速時に電動機5で生じる回生電力を回収して、該回生電力によりキャパシタ2及び二次電池2の充電を実行する。尚、このとき、電子制御ユニット10は、PDU4に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)により、電動機5の回生電力を検知して昇圧手段3または電圧変換手段7の作動制御を実行し、電動機5からキャパシタ2及び二次電池6への充電を行う。
【0037】
なお、本実施形態の燃料電池電源システムにおいて、燃料電池1と昇圧手段3及びキャパシタ2との間には、ダイオードDが設けられており、ダイオードDにより燃料電池1への電流の流入が禁止されている。また、ダイオードDに替えてトランジスタ等の他の整流素子を用いることにより、または、キャパシタ2を降圧手段(ダウンコンバータ)を介して燃料電池1に接続することにより、燃料電池1への電流の流入を禁止してもよい。
【0038】
以上が、本実施の形態における燃料電池電源システムの全体構成である。
【0039】
次に、図2および図3を参照して、燃料電池1、キャパシタ2、PDU4および二次電池6を含む本実施形態の燃料電池電源システムを構成する構成物品群のレイアウトについて説明する。
【0040】
図2は、車両11を側方から見た部分断面図であり、図3は、車両11を上方から見た部分断面図である。図2および図3において、キャパシタ2と二次電池6とは、これらを一体とした蓄電ユニット12内に収納されている。
【0041】
図2および図3に示すように、車両前方より後方に向かって、車両11のエンジンルームに相当する部位に蓄電ユニット12が配置され、2つのフロントシート13の下側で車両下部フレーム14との間に、分離した形で燃料電池1,1が配置され、リアシート15の下側で車両下部フレーム14との間でセンタトンネル16に連通する部位にPDU4が配置される。さらに、PDU4の後方でリアシート15の背もたれの陰には水素燃料タンク17が配置され、車両11の後輪T,Tにはこれを駆動輪とする電動機5が設けられている。
【0042】
また、これら蓄電ユニット12、燃料電池1,1、PDU4および水素燃料タンク17は、車両11の室内空間の下方に形成された内部空間20に配置されている。内部空間20は、一端が車両11のフロントグリル18(本発明の流入部に相当する)で開放されるとともに、フロントグリル18からエンジンルームを経てセンタトンネル16に連通する。すなわち、内部空間20の一部はセンタトンネル16により構成されている。さらに、内部空間20は、センタトンネル16から水素燃料タンク搭載領域を経て、他端が水素燃料タンク17の後方で、下部フレーム14における間隙や下部フレーム14と車体フレームとの間の間隙等により構成された流出部19により外部開放されている。
【0043】
これにより、車両11の走行時に車速に応じた外部空気が内部空間20に流入して、該外部空間20内を流れる。そのため、これら蓄電ユニット12、燃料電池1、PDU4および水素燃料タンク17の構成物品群を一度に冷却することができる。
【0044】
さらに、内部空間20には、蓄電ユニット12の後方に2つの対流ファン21,21が設けられており、フロントグリル18から流入した冷却媒体としての流入空気をセンタトンネル16側に強制的に対流させる。そのため、車両11の後方側において内部空間の対流が小さくなることや車両11の車速が小さく流入空気が少ない場合にも、内部空間内に流入空気が滞留することを抑制して、常に一定の冷却効率を維持することができる。
【0045】
ここで、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4は、この順番に発熱量が大きくなる。また、使用上限温度も、蓄電ユニット12が60℃以下(二次電池6の使用上限温度)、燃料電池1が90℃以下、PDU4が120℃以下であり、この順番に高くなる。そのため、流入空気が車両11の前側で温められ後側に配置されたPDU4等の高温となる構成物品を冷却できないとの不都合を回避して、構成物品群を効率よく冷却することができる。
【0046】
また、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4により熱せられた流入空気は、水素燃料タンク17やこれに接続されたレギュレータや各種バルブ等の部材を通過して外部へと流出する。そのため、水素燃料タンク17およびこれに接続された部材を加熱してこれらの温度低下を抑制することができる。すなわち、水素燃料タンク17は、一般に水素ガスの充填時に温度が低下するほか、水素燃料タンク17からの水素ガスの供給(水素吸蔵物質からの水素の放出反応)が吸熱反応であることから水素ガスの供給により温度が低下するが、熱せられた流入空気を水素燃料タンク17部分を通過させることにより、水素燃料タンク17およびこれに接続された部材が凍結したり、結露を生じたりすることを防止することができ、ひいては、これらの劣化を防止することができる。
【0047】
さらに、図3に示すように、蓄電ユニット12と燃料電池1とPDU4とには、これらを環状に管路で結ぶ循環路30が形成されている。循環路30は、図では簡略的に記載しているが、蓄電ユニット12と燃料電池1とPDU4の各々の筐体全体や発熱部位を冷却するように、適切な配管がなされている。
【0048】
循環路30は、管路内に冷却液(例えば、不凍性のエチレングリコールなど)が充填されており、図示しない循環ポンプにより冷却液が矢印の向きに循環する。循環路30上には、ラジエータ31がフロントグリル18の後側に設けられており、フロントグリル18から流入した流入空気の一部がラジエータを通過することにより熱せられた冷却液が冷却される。なお、ラジエータ31には、後方にファン32と遮蔽板33が設けられている。ファン32は、フロントグリル18から流入した流入空気をラジエータ31側に対流させ、ラジエータ31の冷却効率を向上させる。遮蔽板33は、ラジエータ31の上端から下方に傾斜して設けられて、ラジエータ31を通過した流入空気が前記内部空間20の導入部側に流れ込むのを防止する。
【0049】
また、循環路30には、燃料電池1への導入部分に温度センサ34と切換弁35とが設けられており、図示しないコントローラにより温度センサ34の検出温度に基づいて、切換弁35が制御される。切換弁35は、循環路30の冷却液を燃料電池1に循環させる状態と循環を回避する状態とを切り換える弁であって、図3に示す場合では、循環路30の冷却液が燃料電池1,1に循環して再び循環路30へ戻るが、ここから弁を所定角度(図では−45°)回転させることにより、循環路30が燃料電池1の上流側と下流側とが接続されて、冷却液が燃料電池1へ流入せずにパイパスされる。
【0050】
次に、図4を参照して、前記コントローラによる切換弁35の具体的な制御タイミング等について説明する。図4は、コントローラによる処理を示すフローチャートであり、コントローラは、所定の演算処理周期で図4に示す処理を実行する。
【0051】
まず、車両11の図示しない運転スイッチ(イグニッションスイッチ)が運転者によりONに操作された状態(車両11の走行状態を含む)で、コントローラは、温度センサ34による冷却液の計測温度を取得し、該冷却液の計測温度が燃料電池1の安定動作温度(例えば25℃)以上か否かを判定する(STEP1)。
【0052】
そして、冷却液の計測温度が安定動作温度以上の場合には(STEP1でYES)、循環ポンプをONすると同時に、切換弁35を燃料電池1への循環状態に切り換えるか、切換弁35が既に循環状態になっている場合には循環状態を維持させる(STEP2)。
【0053】
これにより、循環路30内の冷却液が、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4に循環して、これらの構成物品を冷却する。このとき、冷却液は、ラジエータ31で冷却された後、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4の順番に循環する。そのため、上述の流入空気による冷却の場合と同様、発熱量の小さい構成物品から順番に冷却され、後側に配置された構成物品を冷却できないとの不都合を回避して、構成物品群を効率よく冷却することができる。
【0054】
この場合の各構成物品群の温度変化(冷却効果)を図5を参照して説明する。図5は、車両11の始動(走行開始)後の各構成物品の温度変化を示したものであり、横軸が時間で、縦軸が蓄電ユニット12、燃料電池1、PDU4、水素燃料タンク17および冷却液の各温度である。
【0055】
図5は、常温(約25℃)で車両11を始動した場合であり、時刻t1で、車両11が始動され走行を開始すると、上記図4のSTEP1,2に従って、循環ポンプがONされ、切換弁35が燃料電池1への循環状態となる。
【0056】
このとき、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4が発熱して、それぞれの温度が上昇する。また、これに伴ってこれらの構成物品の間を循環する冷却液の温度も上昇する。一方で、水素燃料タンク17の温度は、水素ガスの燃料電池1への供給により温度が低下する。
【0057】
ここで、図4に破線で示す冷却を行わない場合のPDU4の温度変化に対して、流入空気および冷却液の循環による冷却を行った場合には、PDU4の温度上昇が若干緩やかになると共に、安定状態(熱平衡状態)での温度を低下させることができる。
【0058】
また、この場合には、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4により熱せられた流入空気が水素燃料タンク17に供給されるため、図4に破線で示す加熱しない場合のタンク温度に対して、タンク温度が低下することを抑制してタンク温度を常に0℃より高い温度に維持することができる。これにより、水素燃料タンク17から水素ガスを燃料電池1に安定供給することができる。また、タンクの凍結や結露を防止することもできる。
【0059】
次に、図4のフローチャートに戻って、冷却液の計測温度が燃料電池1の安定動作温度より低い場合の処理について説明する。
【0060】
冷却液の計測温度が安定動作温度より低い場合には(STEP1でNO)、循環ポンプをOFFする(STEP3)。また、切換弁35を燃料電池1への循環を回避したバイパス状態に切り換える(STEP3)。
【0061】
STEP3の処理に次いで、コントローラは、PDU4の図示しない温度センサによる検出温度が冷却基準温度以上であるか否かを判定する(STEP4)。ここで冷却基準温度は、PDU4の冷却を開始すべきトリガとなる温度である。
【0062】
そして、PDU4の検出温度が冷却基準温度以上である場合には(STEP4でYES)、切換弁35をバイパス状態に維持したままで循環ポンプをONさせる(STEP5)。一方、PDU4の検出温度が冷却基準温度に満たない場合には(STEP4でNO)、循環ポンプがOFFの状態で、切換弁35がバイパス状態で維持される。
【0063】
この場合の各構成物品群の温度変化(冷却効果)を図6を参照して説明する。図6は、車両11の始動(走行開始)後の各構成物品の温度変化を示したものであり、横軸が時間で、縦軸が蓄電ユニット12、燃料電池1、PDU4、水素燃料タンク17および冷却液の各温度である。
【0064】
図6は、氷点下(約−10℃)で、車両11を始動した場合であって、時刻t1で、車両11が始動され走行を開始すると、上記図4のSTEP3〜5に従った処理がコントローラにより実行される。
【0065】
まず、図6の時刻t1〜t2では、車両11の始動により発熱する各構成物品の温度が上昇する。ここで、冷却液の温度は、車両11が始動を開始しても、PDU4の検出温度が冷却基準温度に達する時刻t2まで循環ポンプがOFFされるため、冷却液の温度は初期温度のまま維持される(STEP3)。また、水素燃料タンク17については、上述のように、水素ガスの供給によりタンクの温度が低下する。
【0066】
そして、時刻t2で、PDU4の検出温度が冷却基準温度に達すると(STEP4)、循環ポンプがONされて(STEP5)、冷却液がPDU4および蓄電ユニット12により熱せられる。これにより、時刻t2〜t3の間で、冷却液の温度が上昇すると共に、PDUの検出温度は、その温度上昇の傾きが緩やかになっている。
【0067】
次いで、時刻t3で冷却液の温度が燃料電池1の安定動作温度に達すると、(STEP1でYESとなり)切換弁35が燃料電池1への循環状態となる(STEP2)。これにより、時刻t3の直後、燃料電池1の温度が安定温度まで急激に上昇する。
【0068】
このように、冷却液の温度が燃料電池1の安定動作温度より低い場合には、該冷却液が燃料電池1に循環することを回避することができる。そして、PDUの検出温度に応じて、切換弁35をパイパス状態に維持しつつ、循環ポンプを作動さえることで、冷却液の温度を燃料電池1の安定動作温度以上にすることができ、かかる安定温度以上となった冷却液を燃料電池1に循環させることにより、燃料電池1を加熱することができる。
【0069】
時刻t3以降については、上記図5の常温における始動と同様に、図6に破線で示す冷却を行わない場合のPDU4の温度変化に対して、安定状態(熱平衡状態)での温度を低下させることができる。また、蓄電ユニット12、燃料電池1およびPDU4により熱せられた流入空気が水素燃料タンク17に供給されることにより、図6に破線で示す加熱しない場合のタンク温度に対して、タンク温度が低下することを抑制してタンク温度を常に0℃より高い温度に維持することができる。これによりタンク温度を凍結温度、さらに好ましくは露天(結露点)に以上に維持することが可能となる。
【0070】
なお、本実施形態では、蓄電手段としてキャパシタ2と二次電池6との両方を用いているが、これに限定されるものではなく、これらのいずれか一方を蓄電手段として用いるようにしてもよい。また、本実施形態では、キャパシタ2と二次電池6とを備えた蓄電ユニット12を一体として冷却しているが、キャパシタ2と二次電池6を別個独立に配置し、発熱量の小さなキャパシタから冷却するように構成することが好ましい。
【0071】
また、本実施形態では、放熱部をラジエータ31により構成したが、これに限定されるものではなく、循環路30がPDU4を循環した後に水素燃料タンク17をも循環するように構成し、該水素燃料タンク17を循環する循環路部分によって放熱部を構成してもよい。さらに、循環路30の一部を車両11の外部に露呈させることにより、該露呈部分によって放熱部を構成してもよい。
【0072】
また、本実施形態では、車両として四輪自動車を例として説明したが、車両はこれに限定されるものではなく二輪車や鉄道車両等であってもよい。
【0073】
さらに、本実施形態では、切換弁35を循環路30上の燃料電池1への導入部に設けたが、これに限定されるものではなく、循環路30に接続された各構成物品の導入部に設けて該構成物品への冷却液の供給を制御するようにしてもよい。この場合、各構成物品の導入部に冷却液の温度を検出する温度センサを設けて、該温度センサの検出温度に基づいて、各構成物品に対して冷却液の温度が適温であるかを否かを判定し、該判定結果に基づいて供給を制御することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態の燃料電池電源システムの全体構成図。
【図2】本実施形態の燃料電池車両を側方から見た部分断面図。
【図3】本実施形態の燃料電池車両を上方から見た部分断面図。
【図4】コントローラによる処理を示すフローチャート。
【図5】常温で車両を始動した場合の各構成物品の温度変化を示す図。
【図6】氷点下で車両を始動した場合の各構成物品の温度変化を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1…燃料電池、2…キャパシタ、3…昇圧手段、4…PDU(電動機駆動装置)、5…電動機、6…二次電池、7…電圧変換手段、10…電子制御ユニット、11…燃料電池車両(車両)、12…蓄電ユニット(蓄電手段)、13…フロントシート、14…車両下部フレーム、15…リアシート、16…センタトンネル、17…水素燃料タンク、18…フロントグリル(流入部)、19…流出部、20…内部空間、30…循環路、31…ラジエータ(放熱部)、34…温度センサ、35…切換弁(切換手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池電源システムが搭載された車両であって、
少なくとも燃料電池と、該燃料電池と接続されたキャパシタまたは二次電池のいずれか一方または両方からなる蓄電手段と、該燃料電池および蓄電手段の出力部が接続された、前記車両の動力源である電動機と、該出力部と電動機との間に設けられた電動機駆動装置とを備え、
前記燃料電池と蓄電手段と電動機駆動装置とを含む第1構成物品群は、前記車両の内部を流れる冷却媒体によって発熱量が小さい順に冷却されるように配置されていることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両において、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料タンクを含む第2構成物品群が、前記冷却媒体の流れにおいて前記第1構成物品群の下流に配置されていることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1記載の車両において、
前記冷却媒体は、前記第1構成物品群が配置される内部空間を流れる空気であって、該内部空間は、前記車両が走行したときに、該車両外の空気を該内部空間に流入させる流入部と、流入した流入空気を該内部空間から流出させる流出部とを備えることを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3項記載の車両において、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料タンクを含む第2構成物品群が、前記内部空間と前記流出部との間に配置されることを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1記載の車両において、
前記冷却媒体は、前記車両内に設けられた循環路を流れる冷却液であって、該循環路は、発熱量が最大となる前記構成物品から最小となる前記構成物品へ至る経路上に前記冷却液の熱を放熱する放熱部が設けられていることを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5記載の車両において、
前記放熱部は、前記燃料電池に燃料を供給する燃料タンクを含む第2構成物品群を循環する循環路部分によって構成されることを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項5または6記載の車両において、
前記循環路には、前記冷却液の温度を計測する温度センサと、該冷却液による冷却を行う対象物を前記構成物品群の全部または一部に切り換える切換弁とが設けられ、
前記切換弁は、前記温度センサの計測温度に基づいて切り替えられることを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項1乃至7記載のうちいずれか1項記載の車両において、
前記燃料電池と蓄電手段と電動機駆動装置とは、前記冷却媒体によって該蓄電手段、燃料電池および電動機駆動装置の順に冷却されるように配置されることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−126452(P2009−126452A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305900(P2007−305900)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】