物体検出方法および物体検出装置
【課題】複数種類の物体の検出が可能であり、かつ、検出精度の向上をはかることができる物体検出装置を提供すること。
【解決手段】カメラ1とレーダ2とから得られる情報に基づいて物体を検出するコントロールユニットCUが、入力した情報に対して物体検出用の所定の変換を行う情報変換処理と、入力情報と変換情報との少なくとも一方の情報に対し、検出対象となる物体との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理と、この重み付けした後の情報に基づいて物体の検出を行う検出処理と、を実行するようにした。
【解決手段】カメラ1とレーダ2とから得られる情報に基づいて物体を検出するコントロールユニットCUが、入力した情報に対して物体検出用の所定の変換を行う情報変換処理と、入力情報と変換情報との少なくとも一方の情報に対し、検出対象となる物体との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理と、この重み付けした後の情報に基づいて物体の検出を行う検出処理と、を実行するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダやカメラなどのセンサを用いて物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において衝突防止装置、車間距離制御装置、追従走行装置などの運転支援装置が提案されている。これらの運転支援装置では、自車両の前方を走行する車両などの物体(障害物)を検出する物体検出装置が用いられている。
【0003】
このような物体検出装置では、高い精度で物体を検出することが求められる。また、検出した物体の種類を判別することも重要となる。例えば、検出している物体が、車両であるのか道路構造物であるかなどの種類を特定する必要がある。
【0004】
このような検出精度の向上や物体の種類判定精度の向上を図る従来技術として、例えば、検出センサとしてカメラとレーダとを備え、検出対象として先行車両に限定した車両認識装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
この従来技術は、カメラから得られる情報とレーダから得られる情報とに基づいて、両方で検出されている物体を取り出し、さらに、車両はその後部に左右対称でリフレクタ(反射素材)を持つという特徴から、車両の車幅方向の中央位置や車幅などを車両特徴量として検出し、自車両の前方車両を正確に認識するようになっている。
【0006】
したがって、この従来技術では、カメラとレーダとの両方で検出されているものを物体として検出しているため、誤検出を減らして検出精度を向上させることができる。
【特許文献1】特開2005−157875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、先行車両以外の種類の物体を検出することができないもので、精度高く複数の種類の物体を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、センサを増やすことなく、高精度で複数種類の物体の検出が可能な物体検出方法および物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述事情に鑑みなされたもので、物体に関する情報を入力し、入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行い、入力情報および変換情報に対し、検出対象としての物体に関する相関性に対応して重み付けを行い、この重み付けした情報に基づいて物体の検出を行うことを最も主要な特徴とする物体検出方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、物体に関する相関性に対応した重み付けを行い、この重み付けを行なった後の情報に基づいて物体の検出を行うようにしたため、重み付けを行なわない場合に比べ、検出対象となる物体の種類と情報との相関性や情報と情報との相関性など物体に関する相関性を高め、物体の検出精度を高めることができるとともに、物体の判別精度を高めることが可能となる。
【0011】
このように、本発明では、センサを増やすことなく、物体の検出精度および物体の種類の判別の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
この実施の形態の物体検出装置は、車両MBに設けられ、外界に存在する物体に関する情報を入力するカメラ1およびレーダ2から得られる情報に基づいて、物体を検出するコントロールユニットCUを備えた物体検出装置であって、コントロールユニットCUが、入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行う情報変換処理と、入力情報と変換情報との少なくとも一方の情報に対し、検出対象となる物体との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理と、この重み付けした後の情報に基づいて物体の検出を行う検出処理と、を実行することを特徴とする。
【実施例1】
【0014】
図1〜図14に基づいて本発明の最良の実施の形態の実施例1の物体検出装置について説明する。
【0015】
実施例1の物体検出装置は、図1に示すように、車両MBに搭載されており、物体センサとしてカメラ1とレーダ2とを備えている。
【0016】
カメラ1は、例えば、車室内の図示を省略したルームミラーの近傍位置に搭載されている。このカメラ1としては、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いた輝度画像を撮像する輝度カメラと赤外線画像を撮像する赤外カメラとの少なくとも一方を用いることができるが、本実施例1では、輝度カメラを用いている。
【0017】
レーダ2は、車両MBの前部に取り付けられ、車両前方(矢印FR方向)を水平方向にスキャニングし、車両前方に存在する物体(検知点)の距離と反射強度を検出する。なお、検知点は、物体を検出した位置であって、図1に示すXZ軸の座標上の位置として検出する。
【0018】
このレーダ2としては、ミリ波レーダやレーザレーダや超音波レーダを用いることができるが、本実施例1では、レーザレーダを使用している。なお、ミリ波レーダの場合、検出物体の情報として、距離・反射強度・相対速度を得ることができる。また、レーザレーダの場合、検出物体の情報として、距離と光の反射強度とを得ることができる。
【0019】
カメラ1およびレーダ2で得られた情報は、検出処理手段としてのコントロールユニットCUに入力される。コントロールユニットCUは、物体センサとしてのカメラ1やレーダ2を含む車載のセンサから信号を入力して、物体を検出しかつその種類を判別する物体検出制御を行うもので、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),CPU(Central Processing Unit)などを備えた周知のものである。
【0020】
このコントロールユニットCUにおける物体検出制御における処理の流れを、図2により、簡単に説明すると、まず、カメラ1とレーダ2を含むセンサから情報を入力し、図示を省略したメモリに保存する入力処理を実行する(ステップS1)。
【0021】
次に、保存した検知点に関する情報に対し、これ以降の処理において使用する情報に変換する情報変換処理を実行する(ステップS2)。
【0022】
次に、保存した入力情報および変換処理を行った変換情報に対し、検出対象である物体の種類との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理を実行する(ステップS3)。
【0023】
次に、重み付けを行なった後の情報を含む情報の中から必要な情報を抽出する有効情報抽出処理を実行する(ステップS4)。
【0024】
そして、この有効情報抽出処理で抽出された情報を用いて検出領域内に存在する物体を検出するとともに、その物体の種類を判定する物体検出処理を実行する(ステップS5)。なお、本実施例1では、物体の種類として、車両AB(以下、車両ABと車両MBとを区別するために、前者を先行車両AB、後者を自車両MBと称する)、二輪車MS、人PE、道路構造物(壁WOなど)を判別する。
【0025】
次に、上記各処理について詳細に説明する。
まず、入力処理では、図3に示すように、カメラ1が撮像した画像情報(輝度画像情報)と、レーダ2が検知した検知点の情報とを、コントロールユニットCU内のメモリ(図示省略)に保存する。本実施例1では、画像情報として、画素の輝度値を保存する。また、レーダ2の検知点の情報としては、レーダ2の水平方向のスキャン分解能ごとに、各角度における物体までの距離と反射強度とを保存する。
【0026】
ここで、カメラ1による画像情報の一例を図4および図5に示す。
図4および図5は、自車両(車両MB)の前方に先行車両ABと人(歩行者)PEと道路構造物としての壁WOとが存在する場合の画像の一例を示しており、これらがカメラ1の撮像面1aにおいて同図(b)に示すように投影される。なお、図4(a)は、横から見た状態を示し、図5(a)は上から見た状態を示している。また、両図において、(c)はカメラ1として赤外線カメラを用いた場合の赤外画像を示している。
【0027】
これら図4、5では、カメラ1の路面への垂直投影点PAから点PFまでの距離をz、点PAと点PFとのx軸方向の間隔をxsとしている。
【0028】
そこで、基準座標をカメラ1のレンズ1bの中心を原点とすると、基準座標系における点PFの位置は、(xs,−H,z)と表され、撮像面1aの画像上において点PFが位置する座標(xc,yc)は、焦点距離fを用いて、下記の式(1)および式(2)の関係で表される。
xc=xs・f/z ・・・(1)
yc=−H・f/z ・・・(2)
【0029】
次に、レーダ2による検知点の情報の一例を図8に示す。
図8では(a)に示す図4および図5に示した画像情報と同様の物体の検知例を(b)に示している。この図に示すように、自車両(車両MB)の前方に存在する先行車両ABと人(歩行者)PEと壁WOとにおいて、光波が反射することで、物体が存在することを検出できる。なお、図において円形で示すqP,qA,qWが、それぞれ各物体の検知点を示している。
【0030】
次に、ステップS2の変換処理を説明する。
この変換処理では、図3に示すように、輝度画像情報に対して、縦エッジ、横エッジ、エッジ強度を形成するエッジ検出処理と、方向ベクトルを形成する方向ベクトル算出処理と、オプティカルフローを形成するオプティカルフロー処理を実行する。
【0031】
まず、エッジ検出処理におけるエッジの検出は、ソーベルフィルダなどとのコンボリューション(たたみこみ(掛け合わせ))演算により算出できる。
【0032】
図6は、単純なソーベルフィルタの例であり、(a)(b)が縦エッジ用のフィルタ、(c)(d)が横エッジ用のフィルタである。このようなフィルタと画像情報とを掛け合わせることで、縦エッジと横エッジとを求めることができる。なお、これらのエッジ強度は、例えば、これらの値の絶対値として求めることができる。
【0033】
また、方向ベクトルは、縦エッジの強度をDx、横エッジの強度をDyとしたときに下記の式(3)の演算により求めることができる。
方向ベクトル=Dx/Dy ・・・(3)
【0034】
なお、この方向ベクトルの角度とエッジ強度との関係を図7に示す。
【0035】
次に、オプティカルフローについて説明する。
オプティカルフローとは、ある時刻の画像上において、画像上のある点(xc、yc)に表示された映像と、その映像がΔt秒後に位置する画像上の点を結んだ矢印のことであり、一般的に画像上に撮像されたある物体上のある点の動きを示すこととなる。このようなオプティカルフローは、ブロックマッチングや勾配法など、従来提案されているいずれかの手法を適用して求めることができる。
【0036】
このオプティカルフローについて、図8および図9を用いて具体的に説明する。
これらの図8および図9では、人PEが止まっていて、先行車両ABが自車両MBと同方向に前進している場合を示しており、図9は図8に示す時点からΔt秒後の状態を示している。また、両図において、(a)は図4,図5で示したのと同様のカメラ1の画像であり、(b)はレーダ2による検出範囲を上方から見た状態を示している。
【0037】
ここで図8において人PEを示す値xc1,yc1,hc1は、図9に示すΔt秒後には、前述した式(1)(2)において、分母となるzの値だけが小さくなるため、自車両MBの前進に伴って大きくなる。そこで、オプティカルフローの矢印は原点から遠ざかる方向に長くなる。
【0038】
同様に、壁WOの上にある点なども、止まっているため、オプティカルフローは長くなる。また、これらのオプティカルフローは、消失点VP(画像上の前方の無限遠点が撮像される点のことであり、図4,5の設定のように、カメラ1の光軸LZを路面RSと平行にした場合は、画像中心が消失点VPとなる)を中心としてそこから画像の外側に向く矢印となる。
【0039】
そこで、図9の(a)に示す人PEのオプティカルフローは、足元では右下向きとなり、画像の中心近くの頭部付近では右向きとなる。
【0040】
一方、先行車両ABは、自車両MBと等速運動をしていて、距離関係が略一定で前述の式(1)(2)においてzの値が変化しないため、先行車両ABの上方となる値に変化が殆ど無いことから、オプティカルフローの長さは短くなる.
【0041】
次に、図3に戻り、レーダ2で検出した検知点の情報の変換処理について説明する。
レーダ2の検知点情報の変換処理としては、距離データに基づいて相対速度を求める処理を行う。この相対速度は、時周期的に(例えば、0.1秒ごとに)レーダ2からの距離情報を取得する場合、同一の検知点に対する距離変化/観測時間の長さで求めることができる。
【0042】
次に、重み付け処理について説明する。
この重み付け処理は、物体の種類と各情報(縦エッジ、横エッジ、エッジ強度、方向ベクトル、オプティカルフロー、相対速度)との相関性に基づいて行なわれ、本実施例1では、図10(a)に示す必要度特性に基づいてフラグを添付し、図10(b)に示す有効度特性に基づいて重み付けを行う。
【0043】
この図10の必要度および有効度の説明を、ステップS5における物体検出処理と併せて説明する。
【0044】
物体検出処理では、物体の検出および判別として、先行車両AB、二輪車MS、人(歩行者)PE、道路構造物(壁WOなど)を検出および判別する。そこで、以下に、それぞれの物体の種類と、カメラ1およびレーダ2から入力された情報と、の相関について説明する。
【0045】
一般的に、先行車両ABや二輪車MSはリフレクタ(反射板)を備え、レーダ2では、その検知点の反射強度が高い。よって、先行車両ABや二輪車MSの検出および判別には、反射強度の有効度が高く、正確に距離を検出することができる。また、距離の精度が高いことから相対速度の有効度も高い。
【0046】
一方、先行車両ABと二輪車MSとの差異として、一般的に、画像上では、先行車両ABの場合は、水平エッジが強く長いのに対して、二輪車MSの場合、形状が歩行者と似ていて、特徴的な直線エッジが無く、かつ、エッジの方向ベクトルの分散が大きい(エッジがいろいろな方向を向く)という特徴がある。
【0047】
そこで、図10(a)に示すように、先行車両ABと二輪車MSとでは、その必要度が、図10(a)に示すように、縦エッジ・横エッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散、反射強度・相対速度の必要度を高く「1」に設定し、これ以外を「0」に設定している。
【0048】
また、先行車両ABと二輪車MSとの検出および判別の有効度は、図10(b)に示すように、先行車両ABの場合は、横エッジ・エッジ強度・反射強度・相対速度が「高く」設定され、それ以外は「低く」設定されている。これに対し、二輪車MSは、縦エッジ・斜めエッジ・方向ベクトル分散・相対速度が「高く」設定され、それ以外は「低く」設定されている。
【0049】
このように先行車両ABと二輪車MSとでは、必要度は同じに設定しているが、有効度は、縦エッジ・横エッジ・斜めエッジ・方向ベクトル分散で逆の設定としている。すなわち、情報と物体の種類との相関性に応じた特性の設定が成され、両者に異なる重み付けを行なって、両者の判別を行うようにしている。
【0050】
一方、人(歩行者)PEは、レーダ2でも検出できる場合もあるが反射強度が低いため、形状の特徴などからカメラ1による画像情報により判別する。すなわち、人PEは形状が縦長であり、かつ、歩行者独特の足などの動き(つまりオプティカルフローの分布)などに特徴を有している。
【0051】
そこで、人PEの場合、必要度は、図10(a)に示すように、縦エッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散・相対速度を高く「1」に設定され、その他は「0」に設定されている。また、有効度は、上記のような形状の特徴から、図10(b)に示すように、縦エッジ・斜めエッジ・方向ベクトル分散が「高く」設定され、横エッジ・エッジ強度・反射強度・相対速度が「低く」設定されている。
【0052】
また、先に述べた二輪車MSは、形状が人PEと類似しているが、前述したように、リフレクタを有していることで、人PEとは横エッジ・反射強度の設定が相違している。すなわち、二輪車MSは、リフレクタを有していることから横エッジおよび反射強度が強く検出されるのに対し、人PEは、反射物が少なく反射強度が低くなるとともに、横に長い人工物を有していないことから横エッジの値が低くなる。そこで、二輪車MSの必要度は、図10(a)に示すように、人PEの必要度に、横エッジ・反射強度を加えた設定とされている。
【0053】
道路構造物(壁WOなど)は、一般的に形状の規定が難しいが、道路に沿って並んで配置されており、かつ、人工物であることから、直線成分(エッジの強度と直線性)が強いという特徴がある。また、道路構造物(壁WOなど)は、停止物であることから、時系列的な観測において、動かない物体である。そして、このような停止物は、画像上のオプティカルフローやレーダ2から求められる物体の距離変化から算出した相対速度が、自車両MBに近づく速度として観測される。したがって、道路構造物(壁WOなど)は、この相対速度の特徴と、形状や物体の位置が、道路よりも外で道路に沿う並びであることなどから判別することができる。
【0054】
そこで、道路構造物(壁WOなど)は、その必要度は、図10(a)に示すように、縦エッジ・横エッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散・相対速度が高く「1」に設定され、その他が「0」に設定されている。また、有効度は、図10(b)に示すように、縦エッジ・横エッジ・斜めエッジ・エッジ強度が「高く」設定されている一方、その他の方向ベクトル分散・反射強度・相対速度が「低く」設定されている。
【0055】
以上のことから本実施例1では、ステップS4の重み付け処理において、図10(a)に示すように、必要度が「1」に設定されているものに、それぞれの物体の種類に応じたフラグを添付する。そして、各情報は、後述する投票表TSに投票するが、このとき、フラグが添付された情報のみを抽出して、それぞれフラグに対応した種類の物体用の投票表に投票し、フラグの添付のない情報は投票しない。さらに、投票の際には、その情報に対して、図10(b)に示す有効度に応じて、有効度が高い場合には、有効度が低い場合よりも大きな係数を掛ける。
【0056】
このように、重み付け処理においては、必要な情報のみを抽出する処理、および、有効度の高さに応じた係数を掛ける処理、から成る重み付けを行う。
【0057】
また、実施例1では、人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応した重み付けを行った情報を投票表TSに投票する。この投票表TSとして、人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応した投票表を用意している。あるいは、投票表TSにおいて、分割された各領域を、人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応した階層を並列に設定している。そして、判別する物体の種類である人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応して重み付けが行われた情報を、それぞれ物体の種類に対応した投票表あるいは階層に並列に投票する。この投票は、同時に並行して行ってもよいし、あるいは、投票時間をずらして行ってもよい。
【0058】
次に、この投票表TSへの投票を含むステップS4の有効情報抽出処理について説明する。
本実施例1では、この有効情報抽出処理を実行するにあたり、図11に示す投票表TSへの加算を行う。なお、図では、投票表TSに加えて、カメラ1からの情報である輝度画像KP、そのエッジ成分距離EK、レーダ2からの情報である反射強度RK、距離LK、および後述する実施例で示す赤外カメラからの情報である温度画像SPを示している。また、図11では、検出例として、先行車両AB、人PE、道路構造物としての樹木TRを検出する場合を示している。
【0059】
投票表TSは、前述した基準座標系におけるXZ平面に相当し、このXZを、Δx,Δzの小領域に分割している。このΔx,Δzは、例えば、1mや50cm程度の分解能とする。また、投票表TSの大きさ、すなわち、z軸方向寸法、x軸方向寸法は、物体検出の要求距離や、物体検出精度などに応じて任意に設定する。
【0060】
そして、図11では、投票表TSとして、1つの表のみを示しているが、前述したように、本実施例1では、投票表TSとして、人PE用のもの、先行車両AB用のもの、二輪車MS用のもの、道路構造物(壁WO、樹木TRなど)用のものがそれぞれ設定されている(図示省略)。あるいは、投票表TSの各領域において、物体の種類毎に並列に投票が行われるようになっている。
【0061】
次に、画像情報と投票表TSとの関係を説明する。すなわち、画像上でも図12(a)、図13(a)に示すx,y座標の画像表PSを設定する。この画像表PSの分解能Δx、Δyは、図14に示すように、実座標系上ではある微小角度θを示すこととなる。本実施例1では、画像処理結果の投票のしやすさから画像上に表を設け、その角度分解能をx方向とy方向ともθとし、その範囲に求められたエッジをXZ軸の投票表TSに投票する。また、ここでθは、例えば1度から5度程度の間の角度に設定している。この分解能角度も、物体判別処理の精度や物体検出の要求距離や位置精度に応じて適宜設定すればよい。
【0062】
なお、XZ平面の投票表TSと同様に基準座標系におけるXY平面上に投票表を設定することもできる。
【0063】
次に、図12、図13に示すように先行車両AB、二輪車MS、人(歩行者)PE、壁WOが存在する場合の投票表TSへの投票例について説明する。なお、この投票例の説明として、カメラ1による画像情報を変換したエッジと、レーダ2による距離情報の投票例を説明する。
【0064】
まず、レーダ2による距離情報の投票例として、人PEを観測した場合の点Qへの投票について説明する。
【0065】
図12に示すように、レーダ2により投票表TS上の点Qに相当する位置Qxzにおいて物体を計測した場合、投票表TSのQの位置が含まれる小領域Snに投票値を加算する。また、この際、投票値は、本実施例1の場合には、図10(b)の有効度に応じた値とする。なお、この投票値は、図10(b)のあらかじめ設定した有効度に応じた数を投票するのに替えて、「1」などの固定値を用いてもよいし、あるいは、反射強度などの検出した情報に相当する値としてもよい。
【0066】
次に、カメラ1の画像情報から得られたエッジの投票例を説明する。
まず、図12(a)に示すように、XY軸をΔx,Δyで分割した画像表PSを設定しこれに投票する。図13(a)は、エッジ処理した情報の投票例としての画像表PSeであり、このようなエッジが存在する場合、このエッジが存在する小領域に対応する投票表(XZ軸)TSの小領域に、このエッジを示す値に、図10(b)の有効度を掛けた値、すなわち重み付けを行った値を加算する。
【0067】
この際、XY軸の投票表の小領域と投票表TSの小領域との対応は、以下のようにして求める。例えば、画像表PSeのΔxe,Δyeの大きさは、図13(b)に示すようにΔxe=f×tanθ,Δye=f×tanθのようにある微小角度θに相当する大きさとして設定する。ここで、fは焦点距離である。
【0068】
そして、画像表PSeの小領域が画像の原点(x=0,y=0の点)に対してなす角度を、投票表TSにおける小領域がXZ表の原点(x=0,z=0の点)に対してなす角度に換算すればよい。具体的には、図13(a)において、x=xceの位置に存在している縦エッジBeを、投票表TSに投票する場合を説明する。
【0069】
この縦エッジBeは、画像表PSeの原点からΔxeの5個目に相当する位置に存在している。ここで、Δxeは、投票表TSの角度θに相当することから、x=xceは、投票表TSの原点からα=5×θだけ左に位置する。そこで、投票表TSでは、原点から左側にα=5×θだけ回動した位置において、角度θの幅の部分に相当する小領域に投票を行う(図においてBに示す扇形の領域に投票する)。
【0070】
また、同様の考えで先行車両ABに相当する物体の位置の投票を考える。この場合、角度の計算は同じである。しかし、レーダ2からの情報の投票に基づいて、先行車両ABまでの距離がわかっている場合は、その距離に相当する位置(ここでは、z=z0付近)だけの小領域に投票を行う(図13(b)において符号ABRの部分)。
そして、以上のような投票処理を図10に示した各情報について行う。すなわち、縦エッジ・横エッジ・斜めエッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散・反射強度・相対速度について、これらの情報が得られた観測点について、XZ軸の投票表TS上で対応する位置を求め、その領域に投票を行い、これらを加算する。この結果を示すのが、図11であり、先行車両ABに対応する投票部分を符号tAB、人PEに対応する投票部分を符号tPE、樹木TRに対応する投票部分を符号tTRで示している。
【0071】
次に、この投票表TSへの投票が終了した後の、検出処理について説明する。
一般に、何らかの物体が存在する場合、距離やエッジなどの情報が多く存在することが多い。つまり、図11に示す先行車両tAB、人(歩行者)tPE、樹木tTRの領域のように、投票結果の値が高い位置には物体が存在すると判定する。
【0072】
すなわち、その検出した物体の位置は、投票結果そのものが小領域の位置を示すことになるため、例えば、図13の先行車両ABの位置(ABR)であれば、方位が左にα,距離z0の位置に物体が検出されたと判定する。
【0073】
次に、この検出された物体の種類の判別は、この表に加算された情報の内容に基づいて行う。すなわち、図10(b)に示す有効度の特性などと照合することで求める。
【0074】
例えば、反射強度が非常に強く、横エッジも強ければ先行車両ABであると判別する。また、反射強度も横エッジも弱いがエッジの方向ベクトルの分散が高ければ人PEと判別する。さらに、人と同様に、横エッジ、エッジ強度が弱く、方向ベクトル分散が強いが、反射強度が強かったり、相対速度が小さかったりした場合には、走行中の二輪車MSと判別する。また、相対速度が高く、縦エッジやエッジ強度が強い場合には、道路構造物(壁WOなど)と判別する。
【0075】
本実施例1では、これらの判定を、各物体の種類用の投票表あるいは領域の各階層において行い、その種類判別結果を1つの投票表TSに反映させるもので、物体の種類により特徴が異なることから、複数種類の判定結果が出ることはない。すなわち、人用の投票表あるいは階層において、人PEであると判別された場合、同じ領域では、他の種類用の投票表あるいは階層において、先行車両ABや二輪車MSなどと判定されることはない。
【0076】
以上説明したように、本実施例1の物体検出装置では、カメラ1からの入力情報およびレーダ2からの入力情報に所定の変換を行い、この変換情報および入力情報を投票表TSに投票し、この投票結果に基づいて物体の種類を判別するようにした。
【0077】
このため、検出対象となる物体に対し、どのセンサが検出していなければならないという条件(例えば、カメラ1とレーダ2との両方で検出しなければならないというような条件)が無くなる。よって、カメラ1とレーダ2との一方で検出できないような環境であっても、物体の検出およびその種類の判別が可能となり、ロバストな検出が可能となるという効果が得られる。しかも、この効果と同時に、カメラ1とレーダ2という複数の物体センサを搭載していることによる、信頼度の高い計測という効果も同時に得ることができるという利点も維持できる。
【0078】
加えて、本実施例1では、判別する物体の種類に応じて、その種類に応じた情報を抽出して投票し、さらに、この投票の際には、情報の有効度に応じた重み付けを行うようにしている。このため、後段の検出処理で必要とされ、かつ、有効度の高い情報だけを活用した物体の検出および物体の種類判定が可能となり、物体の検出信頼度および物体種類判別の信頼度を向上させることができる。しかも、物体の検出に利用される必要情報だけを抽出するため、情報の保管用のメモリ容量の削減や計算量の削減にも効果がある。また、検出処理において使用する情報の数を減らして、検出処理の単純化を図ることも可能となる。
【0079】
すなわち、本実施例1では、図10(a)の必要度特性に基づいて物体の種類毎に、必要な情報にフラグを添付し、実際に後段の処理で利用されるデータだけを後段の処理に渡すようにしている。したがって、検出処理で扱う情報の量や計算量を削減することができる。しかも、有効度に応じた重み付けを行うことで、上記のように不必要な情報を減らすだけではなく、残ったデータは信頼性が高くなり、正確な検出や種類の判別が可能となる。
【0080】
さらに、本実施例1では、入力情報を変換する情報変換処理において、画像情報からエッジを形成するとともに、オプティカルフローを形成し、これらの変換情報を後段の検出処理で使用するようにしたため、物体の種類の判別における信頼性を向上させることができる。すなわち、一般に先行車両ABやガードレールなど路上に存在する道路構造物(壁WOなど)などの人工物はエッジ強度が強い場合が多いのに対し、人PEや乗車状態の二輪車MSは、エッジ強度が弱い。また、オプティカルフローによる方向ベクトル分散は、相対速度が低くい先行車両ABや先行する二輪車MSなどは低いのに対し、相対速度が高くなる人PEや道路構造物(壁WOなど)は高くなる、というように物体の種類との相関性が高い。このような物体の種類との相関性の高い情報に変換して、物体検出処理を行うようにしているため、高い検出信頼性を得ることができる。加えて、前述したように、このような信頼性の高い情報を投票により加算して物体の検出および種類判別を行なっていることからも、信頼性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0081】
次に、図15に基づいて本発明実施の形態の実施例2の物体検出装置について説明する。なお、この実施例2を説明するにあたり、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0082】
この実施例2の物体検出装置は、実施例1のごく一部を変更した例である。すなわち、この実施例2では、有効情報抽出処理において、投票表TSに投票するにあたり、投票する値と投票数との少なくとも一方にしきい値を設定しており、このしきい値を越えた情報のみを投票するようにしている。
【0083】
図15は、その投票結果を示している。図15と実施例1の図11とを比較すると分かるように、図11では投票されていた小さな値が削除されている。
【0084】
すなわち、図11に示す投票値(高さ)が低いデータはノイズである可能性が高い。そこで、本実施例2のように、投票する値と投票数との少なくとも一方にしきい値を設定することにより、ノイズを取り除いて、誤検出を防止し、検出精度の向上を図ることができる。
【0085】
さらに、これにより、比較的少ない情報の種類数だけを用いた物体の種類判別が可能になり、情報の保管用のメモリ容量の削減や計算量の削減を図る効果が、さらに高まる。
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
【実施例3】
【0086】
次に、本発明実施の形態の実施例3の物体検出装置について説明する。なお、この実施例3を説明するにあたり、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0087】
実施例3の物体検出装置では、重み付け処理および物体検出処理が実施例1とは相違する。
【0088】
この実施例3では、重み付け処理において、所定の情報の相関の高さを必要度とし、所定の情報の強さを有効度としている。
【0089】
例えば、先行車両ABや道路構造物(壁WOなど)などのような人工物は直線成分が多く、先行車両ABや二輪車MSの場合、反射強度が強い場合が多い。さらに、情報の有効度を考える場合、他の情報との相関があれば有効度が高い可能性が高い。
【0090】
このような特徴から、検出対象を人工物とする場合、画像のエッジの強さとレーダ2の反射強度の強さとに基づいて有効度を設定し、また、オプティカルフローと相対速度との相関の高さを必要度としている。このような設定の重み付けを行うことで、人工物に適した情報とすることができる。
【0091】
このような重み付けを行なった情報は、実施例1と同様に、図11に示す投票表TSに投票する。
【0092】
また、この実施例3では、物体検出処理において、図16に示す種類判別表を用いる。この種類判別表は、判別する物体の種類と情報との相関性に基づいて設定されている。
【0093】
そこで、図11に示した投票表TSに各領域において、所定数以上の情報が投票されている場合、物体が存在すると判断し、さらに、その情報の種類とその値の高低とを、図16の種類判別表と比較し、各領域で検出されている物体の種類を判別する。
【0094】
この実施例3にあっても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例4】
【0095】
次に、本発明実施の形態の実施例4の物体検出装置について説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0096】
実施例4の物体検出装置は、物体センサとして、カメラ1と並列に赤外カメラ(図示省略)を用いた例である。なお、これらのカメラ1と赤外カメラとの画像例を、図4(b)(c)、図5の(b)(c)に示している。また、図11、図15にも温度画像SPを示している。
【0097】
赤外カメラは、温度に相当する値を画素値に変換できるカメラである。ここで、一般に二輪車MSに乗った人物と、人(歩行者)PEとは、図10の特性図にも示すように、輝度のカメラ1の画像処理だけからは区別しにくい。この図の設定でも、両者の画像上の相違は、横エッジだけである。
【0098】
また、両者は、レーダ2からの情報である、反射強度および相対速度が相違するが、特に、二輪車MSの速度が低い場合には、相対速度の差異が小さくなり、人PEと二輪車MSとの判別が難しくなる。
【0099】
そこで、本実施例5では、二輪車MSが持つマフラの温度が、人PEの温度よりもはるかに高いことを利用し、赤外カメラから得られる温度情報に基づいて、投票された情報のうち、温度が高い情報が含まれる場合には、二輪車MSと判別し、温度が高い情報が含まれない場合には、人(歩行者)PEと判別する。
【0100】
さらに説明を加えると、温度が高い領域の有無は、赤外画像上で人PEまたは二輪車MSが検出された位置の(複数の)画素値を判定し、その画素の中に、しきい値以上の画素値を持つ画素が、所定の個数(例えば3画素)以上存在する場合に、二輪車MSと判定する。ここで、しきい値以上の画素値を持つ画素の個数は、ノイズにはならない程度となるように、単独(1画素)ではなく、例えば、少なくとも3画素が連続していることなどから判定する。また、温度(画素値)のしきい値は、人体では観測されることがありえない温度として、例えば、45℃以上程度に設定する。
【0101】
以上のように、実施例4の物体検出装置では、通常、形状が似ているために、判別が難しい人PEと二輪車MSとの判別の精度を向上させることができる。
【0102】
また、人工物という点で、共通点が存在する先行車両ABと道路構造物(壁WOなど)との判別においても、温度の要素を判別に加えることで、両者の差異を明確にして、判別精度を向上させることができる。
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
【実施例5】
【0103】
次に、本発明実施の形態の実施例5の物体検出装置について説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0104】
この実施例5の物体検出装置は、重み付け処理の内容が実施例1とは異なる。すなわち、実施例5の物体検出装置では、変換処理を経て得られた情報の全てを投票表TSの対応する領域へ投票するようにしている。
【0105】
そして、各領域へ投票された情報の数に基づいて、その領域に物体が存在するか否かの判断、すなわち物体検出の判断を行う。さらに、投票された情報の種類から物体の種類の判別を行う。この判別には、例えば、図10(b)に示した、有効度の特性や図16に示した特性に基づいて判断する。
【0106】
したがって、この実施例5にあっても、実施例1と同様に、複数の物体センサ(本実施例6では、カメラ1とレーダ2)のうちの少なくとも一つから情報が得られていれば物体の検出およびその種類の判別が可能となるため、ロバストな物体の検出が可能となるという効果を奏する。
【0107】
さらに、全ての情報を加算していることから、検出経験の無い初めて検出するような物体の検出が可能となる。加えて、検出結果の内容を再確認し、物体別に利用されたデータを調査し直すことで、必要度のデータの更新だけでなく、ある種類の物体を検出対象とするときの必要データが分かることから、最適センサ構成の選択にも役立てることができる。
【0108】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
【0109】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1ないし実施例6を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1ないし実施例6に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0110】
例えば、実施例では、本発明の物体検出方法および物体検出装置として、車両に搭載して実行するものを示したが、これに限定されず、産業ロボットなど車両以外にも適用することができる。
【0111】
なお、実施例1では、重み付け処理と有効情報抽出処理とを分けた例を示したが、これらを1つの処理とすることもできる。例えば、抽出処理において有効情報を抽出することを重み付けとすることもできる。
【0112】
また、重み付け処理について、実施例1では、必要度および有効度をそれぞれあらかじめ設定した図10に示す特性を参照して決定した。また、実施例3では、所定の情報(具体的には、オプティカルフローと相対速度)の相関の高さを必要度とし、所定の情報の強さ(具体的には、エッジの強さと反射強度の強さ)を有効度としている。しかし、これらに限定されるものではなく、必要度は、あらかじめ設定した表を参照し、有効度は、入力された情報の強さなどに基づいて算出するようにしてもよい。
【0113】
また、実施例3において、必要度を決定する相関の高さとして、画像から得られたオプティカルフローとレーダ2から得られた相対速度との相関を示したが、例えば、相対速度に替えて、この相対速度から求めたオプティカルフロートを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置を搭載した車両MBを示す概略図であり、(a)は側方から見た図、(b)は上方から見た図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置の物体検出制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置の物体検出制御における入力処理と情報変換処理との概略を説明する概念図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報を説明する図であって、(a)は実施例1の物体検出装置を横から見た状態を示し、(b)はカメラ1の撮像面1aに投影された輝度画像を示しており、(c)はカメラ1として赤外線カメラを用いた場合の赤外画像を示している。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報を説明する図であって、(a)は実施例1の物体検出装置を上方から見た状態を示し、(b)はカメラ1の撮像面1aに投影された輝度画像を示しており、(c)はカメラ1として赤外線カメラを用いた場合の赤外画像を示している。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理で用いるソーベルフィルタを示す概略図である。
【図7】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理において、エッジの方向ベクトルの求め方の説明図であり、(a)は垂直エッジ成分算出用のフィルタを示し、(b)は水平エッジ成分算出用のフィルタを示し、(c)はエッジ強度とエッジ方向ベクトルとの関係を示している。
【図8】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理において、オプティカルフローとレーダの距離検出の状態を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理において、オプティカルフローとレーダの距離検出の状態を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置における重み付け処理で用いる重み付けの特性を示す特性図であって、(a)は必要度、(b)は有効度を示している。
【図11】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置における重み付け処理で用いる投票表TSへの投票例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1による画像情報とレーダ2による距離情報との関係を説明する説明図であり、(a)は画像情報を示し、(b)は距離情報を示している。
【図13】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1による画像情報とレーダ2による距離情報と投票との関係を説明する説明図であり、(a)はエッジ処理を行った画像情報を示し、(b)は距離情報と投票する領域との関係を示している。
【図14】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1による画像情報を投票表TSへ投票する位置関係を説明する説明図であり、(a)は側方から見た状態を示し、(b)は上方から見た状態を示す。
【図15】本発明の実施の形態の実施例2の物体検出装置における重み付け処理で用いる投票表TSへの投票例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態の実施例3の物体検出装置における種類判別表を示す特性図である。
【符号の説明】
【0115】
1 カメラ(物体センサ)
2 レーダ(物体センサ)
AB 車両(物体)
CU コントロールユニット(検出処理手段)
MB 車両
MS 二輪車(物体)
PE 人(物体)
TR 樹木(物体)
WO 壁(物体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダやカメラなどのセンサを用いて物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において衝突防止装置、車間距離制御装置、追従走行装置などの運転支援装置が提案されている。これらの運転支援装置では、自車両の前方を走行する車両などの物体(障害物)を検出する物体検出装置が用いられている。
【0003】
このような物体検出装置では、高い精度で物体を検出することが求められる。また、検出した物体の種類を判別することも重要となる。例えば、検出している物体が、車両であるのか道路構造物であるかなどの種類を特定する必要がある。
【0004】
このような検出精度の向上や物体の種類判定精度の向上を図る従来技術として、例えば、検出センサとしてカメラとレーダとを備え、検出対象として先行車両に限定した車両認識装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
この従来技術は、カメラから得られる情報とレーダから得られる情報とに基づいて、両方で検出されている物体を取り出し、さらに、車両はその後部に左右対称でリフレクタ(反射素材)を持つという特徴から、車両の車幅方向の中央位置や車幅などを車両特徴量として検出し、自車両の前方車両を正確に認識するようになっている。
【0006】
したがって、この従来技術では、カメラとレーダとの両方で検出されているものを物体として検出しているため、誤検出を減らして検出精度を向上させることができる。
【特許文献1】特開2005−157875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、先行車両以外の種類の物体を検出することができないもので、精度高く複数の種類の物体を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、センサを増やすことなく、高精度で複数種類の物体の検出が可能な物体検出方法および物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述事情に鑑みなされたもので、物体に関する情報を入力し、入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行い、入力情報および変換情報に対し、検出対象としての物体に関する相関性に対応して重み付けを行い、この重み付けした情報に基づいて物体の検出を行うことを最も主要な特徴とする物体検出方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、物体に関する相関性に対応した重み付けを行い、この重み付けを行なった後の情報に基づいて物体の検出を行うようにしたため、重み付けを行なわない場合に比べ、検出対象となる物体の種類と情報との相関性や情報と情報との相関性など物体に関する相関性を高め、物体の検出精度を高めることができるとともに、物体の判別精度を高めることが可能となる。
【0011】
このように、本発明では、センサを増やすことなく、物体の検出精度および物体の種類の判別の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
この実施の形態の物体検出装置は、車両MBに設けられ、外界に存在する物体に関する情報を入力するカメラ1およびレーダ2から得られる情報に基づいて、物体を検出するコントロールユニットCUを備えた物体検出装置であって、コントロールユニットCUが、入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行う情報変換処理と、入力情報と変換情報との少なくとも一方の情報に対し、検出対象となる物体との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理と、この重み付けした後の情報に基づいて物体の検出を行う検出処理と、を実行することを特徴とする。
【実施例1】
【0014】
図1〜図14に基づいて本発明の最良の実施の形態の実施例1の物体検出装置について説明する。
【0015】
実施例1の物体検出装置は、図1に示すように、車両MBに搭載されており、物体センサとしてカメラ1とレーダ2とを備えている。
【0016】
カメラ1は、例えば、車室内の図示を省略したルームミラーの近傍位置に搭載されている。このカメラ1としては、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いた輝度画像を撮像する輝度カメラと赤外線画像を撮像する赤外カメラとの少なくとも一方を用いることができるが、本実施例1では、輝度カメラを用いている。
【0017】
レーダ2は、車両MBの前部に取り付けられ、車両前方(矢印FR方向)を水平方向にスキャニングし、車両前方に存在する物体(検知点)の距離と反射強度を検出する。なお、検知点は、物体を検出した位置であって、図1に示すXZ軸の座標上の位置として検出する。
【0018】
このレーダ2としては、ミリ波レーダやレーザレーダや超音波レーダを用いることができるが、本実施例1では、レーザレーダを使用している。なお、ミリ波レーダの場合、検出物体の情報として、距離・反射強度・相対速度を得ることができる。また、レーザレーダの場合、検出物体の情報として、距離と光の反射強度とを得ることができる。
【0019】
カメラ1およびレーダ2で得られた情報は、検出処理手段としてのコントロールユニットCUに入力される。コントロールユニットCUは、物体センサとしてのカメラ1やレーダ2を含む車載のセンサから信号を入力して、物体を検出しかつその種類を判別する物体検出制御を行うもので、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),CPU(Central Processing Unit)などを備えた周知のものである。
【0020】
このコントロールユニットCUにおける物体検出制御における処理の流れを、図2により、簡単に説明すると、まず、カメラ1とレーダ2を含むセンサから情報を入力し、図示を省略したメモリに保存する入力処理を実行する(ステップS1)。
【0021】
次に、保存した検知点に関する情報に対し、これ以降の処理において使用する情報に変換する情報変換処理を実行する(ステップS2)。
【0022】
次に、保存した入力情報および変換処理を行った変換情報に対し、検出対象である物体の種類との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理を実行する(ステップS3)。
【0023】
次に、重み付けを行なった後の情報を含む情報の中から必要な情報を抽出する有効情報抽出処理を実行する(ステップS4)。
【0024】
そして、この有効情報抽出処理で抽出された情報を用いて検出領域内に存在する物体を検出するとともに、その物体の種類を判定する物体検出処理を実行する(ステップS5)。なお、本実施例1では、物体の種類として、車両AB(以下、車両ABと車両MBとを区別するために、前者を先行車両AB、後者を自車両MBと称する)、二輪車MS、人PE、道路構造物(壁WOなど)を判別する。
【0025】
次に、上記各処理について詳細に説明する。
まず、入力処理では、図3に示すように、カメラ1が撮像した画像情報(輝度画像情報)と、レーダ2が検知した検知点の情報とを、コントロールユニットCU内のメモリ(図示省略)に保存する。本実施例1では、画像情報として、画素の輝度値を保存する。また、レーダ2の検知点の情報としては、レーダ2の水平方向のスキャン分解能ごとに、各角度における物体までの距離と反射強度とを保存する。
【0026】
ここで、カメラ1による画像情報の一例を図4および図5に示す。
図4および図5は、自車両(車両MB)の前方に先行車両ABと人(歩行者)PEと道路構造物としての壁WOとが存在する場合の画像の一例を示しており、これらがカメラ1の撮像面1aにおいて同図(b)に示すように投影される。なお、図4(a)は、横から見た状態を示し、図5(a)は上から見た状態を示している。また、両図において、(c)はカメラ1として赤外線カメラを用いた場合の赤外画像を示している。
【0027】
これら図4、5では、カメラ1の路面への垂直投影点PAから点PFまでの距離をz、点PAと点PFとのx軸方向の間隔をxsとしている。
【0028】
そこで、基準座標をカメラ1のレンズ1bの中心を原点とすると、基準座標系における点PFの位置は、(xs,−H,z)と表され、撮像面1aの画像上において点PFが位置する座標(xc,yc)は、焦点距離fを用いて、下記の式(1)および式(2)の関係で表される。
xc=xs・f/z ・・・(1)
yc=−H・f/z ・・・(2)
【0029】
次に、レーダ2による検知点の情報の一例を図8に示す。
図8では(a)に示す図4および図5に示した画像情報と同様の物体の検知例を(b)に示している。この図に示すように、自車両(車両MB)の前方に存在する先行車両ABと人(歩行者)PEと壁WOとにおいて、光波が反射することで、物体が存在することを検出できる。なお、図において円形で示すqP,qA,qWが、それぞれ各物体の検知点を示している。
【0030】
次に、ステップS2の変換処理を説明する。
この変換処理では、図3に示すように、輝度画像情報に対して、縦エッジ、横エッジ、エッジ強度を形成するエッジ検出処理と、方向ベクトルを形成する方向ベクトル算出処理と、オプティカルフローを形成するオプティカルフロー処理を実行する。
【0031】
まず、エッジ検出処理におけるエッジの検出は、ソーベルフィルダなどとのコンボリューション(たたみこみ(掛け合わせ))演算により算出できる。
【0032】
図6は、単純なソーベルフィルタの例であり、(a)(b)が縦エッジ用のフィルタ、(c)(d)が横エッジ用のフィルタである。このようなフィルタと画像情報とを掛け合わせることで、縦エッジと横エッジとを求めることができる。なお、これらのエッジ強度は、例えば、これらの値の絶対値として求めることができる。
【0033】
また、方向ベクトルは、縦エッジの強度をDx、横エッジの強度をDyとしたときに下記の式(3)の演算により求めることができる。
方向ベクトル=Dx/Dy ・・・(3)
【0034】
なお、この方向ベクトルの角度とエッジ強度との関係を図7に示す。
【0035】
次に、オプティカルフローについて説明する。
オプティカルフローとは、ある時刻の画像上において、画像上のある点(xc、yc)に表示された映像と、その映像がΔt秒後に位置する画像上の点を結んだ矢印のことであり、一般的に画像上に撮像されたある物体上のある点の動きを示すこととなる。このようなオプティカルフローは、ブロックマッチングや勾配法など、従来提案されているいずれかの手法を適用して求めることができる。
【0036】
このオプティカルフローについて、図8および図9を用いて具体的に説明する。
これらの図8および図9では、人PEが止まっていて、先行車両ABが自車両MBと同方向に前進している場合を示しており、図9は図8に示す時点からΔt秒後の状態を示している。また、両図において、(a)は図4,図5で示したのと同様のカメラ1の画像であり、(b)はレーダ2による検出範囲を上方から見た状態を示している。
【0037】
ここで図8において人PEを示す値xc1,yc1,hc1は、図9に示すΔt秒後には、前述した式(1)(2)において、分母となるzの値だけが小さくなるため、自車両MBの前進に伴って大きくなる。そこで、オプティカルフローの矢印は原点から遠ざかる方向に長くなる。
【0038】
同様に、壁WOの上にある点なども、止まっているため、オプティカルフローは長くなる。また、これらのオプティカルフローは、消失点VP(画像上の前方の無限遠点が撮像される点のことであり、図4,5の設定のように、カメラ1の光軸LZを路面RSと平行にした場合は、画像中心が消失点VPとなる)を中心としてそこから画像の外側に向く矢印となる。
【0039】
そこで、図9の(a)に示す人PEのオプティカルフローは、足元では右下向きとなり、画像の中心近くの頭部付近では右向きとなる。
【0040】
一方、先行車両ABは、自車両MBと等速運動をしていて、距離関係が略一定で前述の式(1)(2)においてzの値が変化しないため、先行車両ABの上方となる値に変化が殆ど無いことから、オプティカルフローの長さは短くなる.
【0041】
次に、図3に戻り、レーダ2で検出した検知点の情報の変換処理について説明する。
レーダ2の検知点情報の変換処理としては、距離データに基づいて相対速度を求める処理を行う。この相対速度は、時周期的に(例えば、0.1秒ごとに)レーダ2からの距離情報を取得する場合、同一の検知点に対する距離変化/観測時間の長さで求めることができる。
【0042】
次に、重み付け処理について説明する。
この重み付け処理は、物体の種類と各情報(縦エッジ、横エッジ、エッジ強度、方向ベクトル、オプティカルフロー、相対速度)との相関性に基づいて行なわれ、本実施例1では、図10(a)に示す必要度特性に基づいてフラグを添付し、図10(b)に示す有効度特性に基づいて重み付けを行う。
【0043】
この図10の必要度および有効度の説明を、ステップS5における物体検出処理と併せて説明する。
【0044】
物体検出処理では、物体の検出および判別として、先行車両AB、二輪車MS、人(歩行者)PE、道路構造物(壁WOなど)を検出および判別する。そこで、以下に、それぞれの物体の種類と、カメラ1およびレーダ2から入力された情報と、の相関について説明する。
【0045】
一般的に、先行車両ABや二輪車MSはリフレクタ(反射板)を備え、レーダ2では、その検知点の反射強度が高い。よって、先行車両ABや二輪車MSの検出および判別には、反射強度の有効度が高く、正確に距離を検出することができる。また、距離の精度が高いことから相対速度の有効度も高い。
【0046】
一方、先行車両ABと二輪車MSとの差異として、一般的に、画像上では、先行車両ABの場合は、水平エッジが強く長いのに対して、二輪車MSの場合、形状が歩行者と似ていて、特徴的な直線エッジが無く、かつ、エッジの方向ベクトルの分散が大きい(エッジがいろいろな方向を向く)という特徴がある。
【0047】
そこで、図10(a)に示すように、先行車両ABと二輪車MSとでは、その必要度が、図10(a)に示すように、縦エッジ・横エッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散、反射強度・相対速度の必要度を高く「1」に設定し、これ以外を「0」に設定している。
【0048】
また、先行車両ABと二輪車MSとの検出および判別の有効度は、図10(b)に示すように、先行車両ABの場合は、横エッジ・エッジ強度・反射強度・相対速度が「高く」設定され、それ以外は「低く」設定されている。これに対し、二輪車MSは、縦エッジ・斜めエッジ・方向ベクトル分散・相対速度が「高く」設定され、それ以外は「低く」設定されている。
【0049】
このように先行車両ABと二輪車MSとでは、必要度は同じに設定しているが、有効度は、縦エッジ・横エッジ・斜めエッジ・方向ベクトル分散で逆の設定としている。すなわち、情報と物体の種類との相関性に応じた特性の設定が成され、両者に異なる重み付けを行なって、両者の判別を行うようにしている。
【0050】
一方、人(歩行者)PEは、レーダ2でも検出できる場合もあるが反射強度が低いため、形状の特徴などからカメラ1による画像情報により判別する。すなわち、人PEは形状が縦長であり、かつ、歩行者独特の足などの動き(つまりオプティカルフローの分布)などに特徴を有している。
【0051】
そこで、人PEの場合、必要度は、図10(a)に示すように、縦エッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散・相対速度を高く「1」に設定され、その他は「0」に設定されている。また、有効度は、上記のような形状の特徴から、図10(b)に示すように、縦エッジ・斜めエッジ・方向ベクトル分散が「高く」設定され、横エッジ・エッジ強度・反射強度・相対速度が「低く」設定されている。
【0052】
また、先に述べた二輪車MSは、形状が人PEと類似しているが、前述したように、リフレクタを有していることで、人PEとは横エッジ・反射強度の設定が相違している。すなわち、二輪車MSは、リフレクタを有していることから横エッジおよび反射強度が強く検出されるのに対し、人PEは、反射物が少なく反射強度が低くなるとともに、横に長い人工物を有していないことから横エッジの値が低くなる。そこで、二輪車MSの必要度は、図10(a)に示すように、人PEの必要度に、横エッジ・反射強度を加えた設定とされている。
【0053】
道路構造物(壁WOなど)は、一般的に形状の規定が難しいが、道路に沿って並んで配置されており、かつ、人工物であることから、直線成分(エッジの強度と直線性)が強いという特徴がある。また、道路構造物(壁WOなど)は、停止物であることから、時系列的な観測において、動かない物体である。そして、このような停止物は、画像上のオプティカルフローやレーダ2から求められる物体の距離変化から算出した相対速度が、自車両MBに近づく速度として観測される。したがって、道路構造物(壁WOなど)は、この相対速度の特徴と、形状や物体の位置が、道路よりも外で道路に沿う並びであることなどから判別することができる。
【0054】
そこで、道路構造物(壁WOなど)は、その必要度は、図10(a)に示すように、縦エッジ・横エッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散・相対速度が高く「1」に設定され、その他が「0」に設定されている。また、有効度は、図10(b)に示すように、縦エッジ・横エッジ・斜めエッジ・エッジ強度が「高く」設定されている一方、その他の方向ベクトル分散・反射強度・相対速度が「低く」設定されている。
【0055】
以上のことから本実施例1では、ステップS4の重み付け処理において、図10(a)に示すように、必要度が「1」に設定されているものに、それぞれの物体の種類に応じたフラグを添付する。そして、各情報は、後述する投票表TSに投票するが、このとき、フラグが添付された情報のみを抽出して、それぞれフラグに対応した種類の物体用の投票表に投票し、フラグの添付のない情報は投票しない。さらに、投票の際には、その情報に対して、図10(b)に示す有効度に応じて、有効度が高い場合には、有効度が低い場合よりも大きな係数を掛ける。
【0056】
このように、重み付け処理においては、必要な情報のみを抽出する処理、および、有効度の高さに応じた係数を掛ける処理、から成る重み付けを行う。
【0057】
また、実施例1では、人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応した重み付けを行った情報を投票表TSに投票する。この投票表TSとして、人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応した投票表を用意している。あるいは、投票表TSにおいて、分割された各領域を、人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応した階層を並列に設定している。そして、判別する物体の種類である人PE、先行車両AB、二輪車MS、道路構造物(壁WOなど)のそれぞれに対応して重み付けが行われた情報を、それぞれ物体の種類に対応した投票表あるいは階層に並列に投票する。この投票は、同時に並行して行ってもよいし、あるいは、投票時間をずらして行ってもよい。
【0058】
次に、この投票表TSへの投票を含むステップS4の有効情報抽出処理について説明する。
本実施例1では、この有効情報抽出処理を実行するにあたり、図11に示す投票表TSへの加算を行う。なお、図では、投票表TSに加えて、カメラ1からの情報である輝度画像KP、そのエッジ成分距離EK、レーダ2からの情報である反射強度RK、距離LK、および後述する実施例で示す赤外カメラからの情報である温度画像SPを示している。また、図11では、検出例として、先行車両AB、人PE、道路構造物としての樹木TRを検出する場合を示している。
【0059】
投票表TSは、前述した基準座標系におけるXZ平面に相当し、このXZを、Δx,Δzの小領域に分割している。このΔx,Δzは、例えば、1mや50cm程度の分解能とする。また、投票表TSの大きさ、すなわち、z軸方向寸法、x軸方向寸法は、物体検出の要求距離や、物体検出精度などに応じて任意に設定する。
【0060】
そして、図11では、投票表TSとして、1つの表のみを示しているが、前述したように、本実施例1では、投票表TSとして、人PE用のもの、先行車両AB用のもの、二輪車MS用のもの、道路構造物(壁WO、樹木TRなど)用のものがそれぞれ設定されている(図示省略)。あるいは、投票表TSの各領域において、物体の種類毎に並列に投票が行われるようになっている。
【0061】
次に、画像情報と投票表TSとの関係を説明する。すなわち、画像上でも図12(a)、図13(a)に示すx,y座標の画像表PSを設定する。この画像表PSの分解能Δx、Δyは、図14に示すように、実座標系上ではある微小角度θを示すこととなる。本実施例1では、画像処理結果の投票のしやすさから画像上に表を設け、その角度分解能をx方向とy方向ともθとし、その範囲に求められたエッジをXZ軸の投票表TSに投票する。また、ここでθは、例えば1度から5度程度の間の角度に設定している。この分解能角度も、物体判別処理の精度や物体検出の要求距離や位置精度に応じて適宜設定すればよい。
【0062】
なお、XZ平面の投票表TSと同様に基準座標系におけるXY平面上に投票表を設定することもできる。
【0063】
次に、図12、図13に示すように先行車両AB、二輪車MS、人(歩行者)PE、壁WOが存在する場合の投票表TSへの投票例について説明する。なお、この投票例の説明として、カメラ1による画像情報を変換したエッジと、レーダ2による距離情報の投票例を説明する。
【0064】
まず、レーダ2による距離情報の投票例として、人PEを観測した場合の点Qへの投票について説明する。
【0065】
図12に示すように、レーダ2により投票表TS上の点Qに相当する位置Qxzにおいて物体を計測した場合、投票表TSのQの位置が含まれる小領域Snに投票値を加算する。また、この際、投票値は、本実施例1の場合には、図10(b)の有効度に応じた値とする。なお、この投票値は、図10(b)のあらかじめ設定した有効度に応じた数を投票するのに替えて、「1」などの固定値を用いてもよいし、あるいは、反射強度などの検出した情報に相当する値としてもよい。
【0066】
次に、カメラ1の画像情報から得られたエッジの投票例を説明する。
まず、図12(a)に示すように、XY軸をΔx,Δyで分割した画像表PSを設定しこれに投票する。図13(a)は、エッジ処理した情報の投票例としての画像表PSeであり、このようなエッジが存在する場合、このエッジが存在する小領域に対応する投票表(XZ軸)TSの小領域に、このエッジを示す値に、図10(b)の有効度を掛けた値、すなわち重み付けを行った値を加算する。
【0067】
この際、XY軸の投票表の小領域と投票表TSの小領域との対応は、以下のようにして求める。例えば、画像表PSeのΔxe,Δyeの大きさは、図13(b)に示すようにΔxe=f×tanθ,Δye=f×tanθのようにある微小角度θに相当する大きさとして設定する。ここで、fは焦点距離である。
【0068】
そして、画像表PSeの小領域が画像の原点(x=0,y=0の点)に対してなす角度を、投票表TSにおける小領域がXZ表の原点(x=0,z=0の点)に対してなす角度に換算すればよい。具体的には、図13(a)において、x=xceの位置に存在している縦エッジBeを、投票表TSに投票する場合を説明する。
【0069】
この縦エッジBeは、画像表PSeの原点からΔxeの5個目に相当する位置に存在している。ここで、Δxeは、投票表TSの角度θに相当することから、x=xceは、投票表TSの原点からα=5×θだけ左に位置する。そこで、投票表TSでは、原点から左側にα=5×θだけ回動した位置において、角度θの幅の部分に相当する小領域に投票を行う(図においてBに示す扇形の領域に投票する)。
【0070】
また、同様の考えで先行車両ABに相当する物体の位置の投票を考える。この場合、角度の計算は同じである。しかし、レーダ2からの情報の投票に基づいて、先行車両ABまでの距離がわかっている場合は、その距離に相当する位置(ここでは、z=z0付近)だけの小領域に投票を行う(図13(b)において符号ABRの部分)。
そして、以上のような投票処理を図10に示した各情報について行う。すなわち、縦エッジ・横エッジ・斜めエッジ・エッジ強度・方向ベクトル分散・反射強度・相対速度について、これらの情報が得られた観測点について、XZ軸の投票表TS上で対応する位置を求め、その領域に投票を行い、これらを加算する。この結果を示すのが、図11であり、先行車両ABに対応する投票部分を符号tAB、人PEに対応する投票部分を符号tPE、樹木TRに対応する投票部分を符号tTRで示している。
【0071】
次に、この投票表TSへの投票が終了した後の、検出処理について説明する。
一般に、何らかの物体が存在する場合、距離やエッジなどの情報が多く存在することが多い。つまり、図11に示す先行車両tAB、人(歩行者)tPE、樹木tTRの領域のように、投票結果の値が高い位置には物体が存在すると判定する。
【0072】
すなわち、その検出した物体の位置は、投票結果そのものが小領域の位置を示すことになるため、例えば、図13の先行車両ABの位置(ABR)であれば、方位が左にα,距離z0の位置に物体が検出されたと判定する。
【0073】
次に、この検出された物体の種類の判別は、この表に加算された情報の内容に基づいて行う。すなわち、図10(b)に示す有効度の特性などと照合することで求める。
【0074】
例えば、反射強度が非常に強く、横エッジも強ければ先行車両ABであると判別する。また、反射強度も横エッジも弱いがエッジの方向ベクトルの分散が高ければ人PEと判別する。さらに、人と同様に、横エッジ、エッジ強度が弱く、方向ベクトル分散が強いが、反射強度が強かったり、相対速度が小さかったりした場合には、走行中の二輪車MSと判別する。また、相対速度が高く、縦エッジやエッジ強度が強い場合には、道路構造物(壁WOなど)と判別する。
【0075】
本実施例1では、これらの判定を、各物体の種類用の投票表あるいは領域の各階層において行い、その種類判別結果を1つの投票表TSに反映させるもので、物体の種類により特徴が異なることから、複数種類の判定結果が出ることはない。すなわち、人用の投票表あるいは階層において、人PEであると判別された場合、同じ領域では、他の種類用の投票表あるいは階層において、先行車両ABや二輪車MSなどと判定されることはない。
【0076】
以上説明したように、本実施例1の物体検出装置では、カメラ1からの入力情報およびレーダ2からの入力情報に所定の変換を行い、この変換情報および入力情報を投票表TSに投票し、この投票結果に基づいて物体の種類を判別するようにした。
【0077】
このため、検出対象となる物体に対し、どのセンサが検出していなければならないという条件(例えば、カメラ1とレーダ2との両方で検出しなければならないというような条件)が無くなる。よって、カメラ1とレーダ2との一方で検出できないような環境であっても、物体の検出およびその種類の判別が可能となり、ロバストな検出が可能となるという効果が得られる。しかも、この効果と同時に、カメラ1とレーダ2という複数の物体センサを搭載していることによる、信頼度の高い計測という効果も同時に得ることができるという利点も維持できる。
【0078】
加えて、本実施例1では、判別する物体の種類に応じて、その種類に応じた情報を抽出して投票し、さらに、この投票の際には、情報の有効度に応じた重み付けを行うようにしている。このため、後段の検出処理で必要とされ、かつ、有効度の高い情報だけを活用した物体の検出および物体の種類判定が可能となり、物体の検出信頼度および物体種類判別の信頼度を向上させることができる。しかも、物体の検出に利用される必要情報だけを抽出するため、情報の保管用のメモリ容量の削減や計算量の削減にも効果がある。また、検出処理において使用する情報の数を減らして、検出処理の単純化を図ることも可能となる。
【0079】
すなわち、本実施例1では、図10(a)の必要度特性に基づいて物体の種類毎に、必要な情報にフラグを添付し、実際に後段の処理で利用されるデータだけを後段の処理に渡すようにしている。したがって、検出処理で扱う情報の量や計算量を削減することができる。しかも、有効度に応じた重み付けを行うことで、上記のように不必要な情報を減らすだけではなく、残ったデータは信頼性が高くなり、正確な検出や種類の判別が可能となる。
【0080】
さらに、本実施例1では、入力情報を変換する情報変換処理において、画像情報からエッジを形成するとともに、オプティカルフローを形成し、これらの変換情報を後段の検出処理で使用するようにしたため、物体の種類の判別における信頼性を向上させることができる。すなわち、一般に先行車両ABやガードレールなど路上に存在する道路構造物(壁WOなど)などの人工物はエッジ強度が強い場合が多いのに対し、人PEや乗車状態の二輪車MSは、エッジ強度が弱い。また、オプティカルフローによる方向ベクトル分散は、相対速度が低くい先行車両ABや先行する二輪車MSなどは低いのに対し、相対速度が高くなる人PEや道路構造物(壁WOなど)は高くなる、というように物体の種類との相関性が高い。このような物体の種類との相関性の高い情報に変換して、物体検出処理を行うようにしているため、高い検出信頼性を得ることができる。加えて、前述したように、このような信頼性の高い情報を投票により加算して物体の検出および種類判別を行なっていることからも、信頼性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0081】
次に、図15に基づいて本発明実施の形態の実施例2の物体検出装置について説明する。なお、この実施例2を説明するにあたり、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0082】
この実施例2の物体検出装置は、実施例1のごく一部を変更した例である。すなわち、この実施例2では、有効情報抽出処理において、投票表TSに投票するにあたり、投票する値と投票数との少なくとも一方にしきい値を設定しており、このしきい値を越えた情報のみを投票するようにしている。
【0083】
図15は、その投票結果を示している。図15と実施例1の図11とを比較すると分かるように、図11では投票されていた小さな値が削除されている。
【0084】
すなわち、図11に示す投票値(高さ)が低いデータはノイズである可能性が高い。そこで、本実施例2のように、投票する値と投票数との少なくとも一方にしきい値を設定することにより、ノイズを取り除いて、誤検出を防止し、検出精度の向上を図ることができる。
【0085】
さらに、これにより、比較的少ない情報の種類数だけを用いた物体の種類判別が可能になり、情報の保管用のメモリ容量の削減や計算量の削減を図る効果が、さらに高まる。
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
【実施例3】
【0086】
次に、本発明実施の形態の実施例3の物体検出装置について説明する。なお、この実施例3を説明するにあたり、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0087】
実施例3の物体検出装置では、重み付け処理および物体検出処理が実施例1とは相違する。
【0088】
この実施例3では、重み付け処理において、所定の情報の相関の高さを必要度とし、所定の情報の強さを有効度としている。
【0089】
例えば、先行車両ABや道路構造物(壁WOなど)などのような人工物は直線成分が多く、先行車両ABや二輪車MSの場合、反射強度が強い場合が多い。さらに、情報の有効度を考える場合、他の情報との相関があれば有効度が高い可能性が高い。
【0090】
このような特徴から、検出対象を人工物とする場合、画像のエッジの強さとレーダ2の反射強度の強さとに基づいて有効度を設定し、また、オプティカルフローと相対速度との相関の高さを必要度としている。このような設定の重み付けを行うことで、人工物に適した情報とすることができる。
【0091】
このような重み付けを行なった情報は、実施例1と同様に、図11に示す投票表TSに投票する。
【0092】
また、この実施例3では、物体検出処理において、図16に示す種類判別表を用いる。この種類判別表は、判別する物体の種類と情報との相関性に基づいて設定されている。
【0093】
そこで、図11に示した投票表TSに各領域において、所定数以上の情報が投票されている場合、物体が存在すると判断し、さらに、その情報の種類とその値の高低とを、図16の種類判別表と比較し、各領域で検出されている物体の種類を判別する。
【0094】
この実施例3にあっても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例4】
【0095】
次に、本発明実施の形態の実施例4の物体検出装置について説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0096】
実施例4の物体検出装置は、物体センサとして、カメラ1と並列に赤外カメラ(図示省略)を用いた例である。なお、これらのカメラ1と赤外カメラとの画像例を、図4(b)(c)、図5の(b)(c)に示している。また、図11、図15にも温度画像SPを示している。
【0097】
赤外カメラは、温度に相当する値を画素値に変換できるカメラである。ここで、一般に二輪車MSに乗った人物と、人(歩行者)PEとは、図10の特性図にも示すように、輝度のカメラ1の画像処理だけからは区別しにくい。この図の設定でも、両者の画像上の相違は、横エッジだけである。
【0098】
また、両者は、レーダ2からの情報である、反射強度および相対速度が相違するが、特に、二輪車MSの速度が低い場合には、相対速度の差異が小さくなり、人PEと二輪車MSとの判別が難しくなる。
【0099】
そこで、本実施例5では、二輪車MSが持つマフラの温度が、人PEの温度よりもはるかに高いことを利用し、赤外カメラから得られる温度情報に基づいて、投票された情報のうち、温度が高い情報が含まれる場合には、二輪車MSと判別し、温度が高い情報が含まれない場合には、人(歩行者)PEと判別する。
【0100】
さらに説明を加えると、温度が高い領域の有無は、赤外画像上で人PEまたは二輪車MSが検出された位置の(複数の)画素値を判定し、その画素の中に、しきい値以上の画素値を持つ画素が、所定の個数(例えば3画素)以上存在する場合に、二輪車MSと判定する。ここで、しきい値以上の画素値を持つ画素の個数は、ノイズにはならない程度となるように、単独(1画素)ではなく、例えば、少なくとも3画素が連続していることなどから判定する。また、温度(画素値)のしきい値は、人体では観測されることがありえない温度として、例えば、45℃以上程度に設定する。
【0101】
以上のように、実施例4の物体検出装置では、通常、形状が似ているために、判別が難しい人PEと二輪車MSとの判別の精度を向上させることができる。
【0102】
また、人工物という点で、共通点が存在する先行車両ABと道路構造物(壁WOなど)との判別においても、温度の要素を判別に加えることで、両者の差異を明確にして、判別精度を向上させることができる。
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
【実施例5】
【0103】
次に、本発明実施の形態の実施例5の物体検出装置について説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して、相違する部分を中心として説明する。
【0104】
この実施例5の物体検出装置は、重み付け処理の内容が実施例1とは異なる。すなわち、実施例5の物体検出装置では、変換処理を経て得られた情報の全てを投票表TSの対応する領域へ投票するようにしている。
【0105】
そして、各領域へ投票された情報の数に基づいて、その領域に物体が存在するか否かの判断、すなわち物体検出の判断を行う。さらに、投票された情報の種類から物体の種類の判別を行う。この判別には、例えば、図10(b)に示した、有効度の特性や図16に示した特性に基づいて判断する。
【0106】
したがって、この実施例5にあっても、実施例1と同様に、複数の物体センサ(本実施例6では、カメラ1とレーダ2)のうちの少なくとも一つから情報が得られていれば物体の検出およびその種類の判別が可能となるため、ロバストな物体の検出が可能となるという効果を奏する。
【0107】
さらに、全ての情報を加算していることから、検出経験の無い初めて検出するような物体の検出が可能となる。加えて、検出結果の内容を再確認し、物体別に利用されたデータを調査し直すことで、必要度のデータの更新だけでなく、ある種類の物体を検出対象とするときの必要データが分かることから、最適センサ構成の選択にも役立てることができる。
【0108】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であり、説明を省略する。
【0109】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1ないし実施例6を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1ないし実施例6に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0110】
例えば、実施例では、本発明の物体検出方法および物体検出装置として、車両に搭載して実行するものを示したが、これに限定されず、産業ロボットなど車両以外にも適用することができる。
【0111】
なお、実施例1では、重み付け処理と有効情報抽出処理とを分けた例を示したが、これらを1つの処理とすることもできる。例えば、抽出処理において有効情報を抽出することを重み付けとすることもできる。
【0112】
また、重み付け処理について、実施例1では、必要度および有効度をそれぞれあらかじめ設定した図10に示す特性を参照して決定した。また、実施例3では、所定の情報(具体的には、オプティカルフローと相対速度)の相関の高さを必要度とし、所定の情報の強さ(具体的には、エッジの強さと反射強度の強さ)を有効度としている。しかし、これらに限定されるものではなく、必要度は、あらかじめ設定した表を参照し、有効度は、入力された情報の強さなどに基づいて算出するようにしてもよい。
【0113】
また、実施例3において、必要度を決定する相関の高さとして、画像から得られたオプティカルフローとレーダ2から得られた相対速度との相関を示したが、例えば、相対速度に替えて、この相対速度から求めたオプティカルフロートを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置を搭載した車両MBを示す概略図であり、(a)は側方から見た図、(b)は上方から見た図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置の物体検出制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置の物体検出制御における入力処理と情報変換処理との概略を説明する概念図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報を説明する図であって、(a)は実施例1の物体検出装置を横から見た状態を示し、(b)はカメラ1の撮像面1aに投影された輝度画像を示しており、(c)はカメラ1として赤外線カメラを用いた場合の赤外画像を示している。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報を説明する図であって、(a)は実施例1の物体検出装置を上方から見た状態を示し、(b)はカメラ1の撮像面1aに投影された輝度画像を示しており、(c)はカメラ1として赤外線カメラを用いた場合の赤外画像を示している。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理で用いるソーベルフィルタを示す概略図である。
【図7】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理において、エッジの方向ベクトルの求め方の説明図であり、(a)は垂直エッジ成分算出用のフィルタを示し、(b)は水平エッジ成分算出用のフィルタを示し、(c)はエッジ強度とエッジ方向ベクトルとの関係を示している。
【図8】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理において、オプティカルフローとレーダの距離検出の状態を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1の画像情報の情報変換処理において、オプティカルフローとレーダの距離検出の状態を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置における重み付け処理で用いる重み付けの特性を示す特性図であって、(a)は必要度、(b)は有効度を示している。
【図11】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置における重み付け処理で用いる投票表TSへの投票例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1による画像情報とレーダ2による距離情報との関係を説明する説明図であり、(a)は画像情報を示し、(b)は距離情報を示している。
【図13】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1による画像情報とレーダ2による距離情報と投票との関係を説明する説明図であり、(a)はエッジ処理を行った画像情報を示し、(b)は距離情報と投票する領域との関係を示している。
【図14】本発明の実施の形態の実施例1の物体検出装置におけるカメラ1による画像情報を投票表TSへ投票する位置関係を説明する説明図であり、(a)は側方から見た状態を示し、(b)は上方から見た状態を示す。
【図15】本発明の実施の形態の実施例2の物体検出装置における重み付け処理で用いる投票表TSへの投票例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態の実施例3の物体検出装置における種類判別表を示す特性図である。
【符号の説明】
【0115】
1 カメラ(物体センサ)
2 レーダ(物体センサ)
AB 車両(物体)
CU コントロールユニット(検出処理手段)
MB 車両
MS 二輪車(物体)
PE 人(物体)
TR 樹木(物体)
WO 壁(物体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体センサから得られる外界に存在する物体に関する情報を入力して物体の検出を行う物体検出方法であって、
前記物体に関する情報を入力し、
入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行い、
入力情報および変換情報に対し、検出対象としての物体に関する相関性に対応して重み付けを行い、
この重み付けした情報に基づいて物体の検出を行うことを特徴とする物体検出方法。
【請求項2】
外界に存在する物体に関する情報を入力する物体センサと、
この物体センサから得られる情報に基づいて、物体を検出する検出処理手段と、
を備えた物体検出装置であって、
前記検出処理手段が、入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行う情報変換処理と、入力情報と変換情報との少なくとも一方の情報に対し、検出対象となる物体との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理と、この重み付けした後の情報に基づいて物体の検出を行う検出処理と、を実行することを特徴とする物体検出装置。
【請求項3】
前記物体センサは、車両に搭載され、少なくとも車両の進行方向に存在する物体を検出することを特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記物体センサは、可視光領域の画像を時系列に撮影するカメラと、光波・電波・超音波などを照射し、その反射により物体を捉えるレーダと、の少なくとも一方を備えている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記検出処理手段は、前記情報変換処理として、
前記可視光領域の画像情報に基づいて、時系列微分により得られる物体の動き情報と、水平と垂直の少なくとも一方向の微分により得られる画像エッジ強度および画像エッジの方向成分と、の少なくとも1つを求める画像情報変換処理と、
前記レーダにより得られる、物体の方位毎の反射強度と、物体との距離と、物体との相対速度と、の少なくとも1つをデジタル情報に変換するレーダ情報変換処理と、
の少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記検出処理手段は、前記重み付け処理として、検出対象となる物体の種類ごとに、物体の種類と各情報の必要度あるいは有効度の大きさに応じた重み付けの程度が予め設定されており、この設定に基づいて各情報に重み付けを行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記検出処理手段は、前記重み付け処理として、前記入力情報および変換情報の相関の高さに基づいて、各情報に重み付けを行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記重み付け処理において、必要度に対応した重み付けは、あらかじめ前記物体の種類ごとに設定された各情報の必要度を参照して行い、有効度に対応した重み付けは、画像のエッジ強度と、レーダの反射強度と、複数データの相関の高さとのうちで、すべてまたはいずれかの値から算出された値に基づいて行うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記検出処理手段の前記重み付け処理に、物体センサの検出範囲を、所定の分解能で区切った表を用意し、この表を投票表として、各情報を投票表の対応する位置に投票する投票処理が含まれ、
前記検出処理では、前記投票表において、投票された情報の数に基づいて物体の検出を行い、かつ、投票された情報の種類から物体の種類判定を行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記投票処理において、投票する情報は、そのときの検出対象物の種類に応じ、必要度が高いと判定された情報を抽出し、この抽出した情報に、有効度の値に応じた重みを掛け合わせて重み付けを行った値を投票表に加算することを特徴とする請求項9に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記判別する物体の種類に人工物が含まれ、
前記検出処理手段は、人工物の判定に用いる重み付け処理として、必要度を、情報どうしの相関の高さに基づいて決定し、有効度を、画像情報から得られたエッジの強さとレーダ情報から得られた反射強度との少なくとも一方に基づいて決定することを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項12】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記検出処理手段は、
前記変換処理において、画像情報からオプティカルフローを求める処理と、レーダ情報としての距離から得た相対速度からオプティカルフローを求める処理を行い、
前記重み付け処理では、2つのオプティカルフローの相関を必要度、エッジ強度を有効度とした重み付けを行なって、その領域内に存在するエッジ強度、エッジ方向のベクトル、相対速度の情報を抽出し、
前記検出処理では、抽出した情報に基づいて、車両、走行中の二輪車、歩行者、道路構造物を判別することを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項13】
前記物体センサとして、赤外波長の画像を撮影する赤外線カメラが含まれ、
前記検出処理手段は、前記情報変換処理において、前記赤外線カメラの出力画像の画素毎に温度値を求める処理を実行し、
前記検出処理では、車両、乗車中の二輪車、歩行者、道路構造物の種類の判別において、投票表の結果の物体検出領域内の情報から、あらかじめ設定されたしきい値以上の温度が観測されている場合は歩行者ではないと判別することを特徴とする請求項4〜12のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項1】
物体センサから得られる外界に存在する物体に関する情報を入力して物体の検出を行う物体検出方法であって、
前記物体に関する情報を入力し、
入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行い、
入力情報および変換情報に対し、検出対象としての物体に関する相関性に対応して重み付けを行い、
この重み付けした情報に基づいて物体の検出を行うことを特徴とする物体検出方法。
【請求項2】
外界に存在する物体に関する情報を入力する物体センサと、
この物体センサから得られる情報に基づいて、物体を検出する検出処理手段と、
を備えた物体検出装置であって、
前記検出処理手段が、入力した情報のうち、少なくとも1種類の情報に対して物体検出用の所定の変換を行う情報変換処理と、入力情報と変換情報との少なくとも一方の情報に対し、検出対象となる物体との相関性に対応して重み付けを行う重み付け処理と、この重み付けした後の情報に基づいて物体の検出を行う検出処理と、を実行することを特徴とする物体検出装置。
【請求項3】
前記物体センサは、車両に搭載され、少なくとも車両の進行方向に存在する物体を検出することを特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記物体センサは、可視光領域の画像を時系列に撮影するカメラと、光波・電波・超音波などを照射し、その反射により物体を捉えるレーダと、の少なくとも一方を備えている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記検出処理手段は、前記情報変換処理として、
前記可視光領域の画像情報に基づいて、時系列微分により得られる物体の動き情報と、水平と垂直の少なくとも一方向の微分により得られる画像エッジ強度および画像エッジの方向成分と、の少なくとも1つを求める画像情報変換処理と、
前記レーダにより得られる、物体の方位毎の反射強度と、物体との距離と、物体との相対速度と、の少なくとも1つをデジタル情報に変換するレーダ情報変換処理と、
の少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記検出処理手段は、前記重み付け処理として、検出対象となる物体の種類ごとに、物体の種類と各情報の必要度あるいは有効度の大きさに応じた重み付けの程度が予め設定されており、この設定に基づいて各情報に重み付けを行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記検出処理手段は、前記重み付け処理として、前記入力情報および変換情報の相関の高さに基づいて、各情報に重み付けを行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記重み付け処理において、必要度に対応した重み付けは、あらかじめ前記物体の種類ごとに設定された各情報の必要度を参照して行い、有効度に対応した重み付けは、画像のエッジ強度と、レーダの反射強度と、複数データの相関の高さとのうちで、すべてまたはいずれかの値から算出された値に基づいて行うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記検出処理手段の前記重み付け処理に、物体センサの検出範囲を、所定の分解能で区切った表を用意し、この表を投票表として、各情報を投票表の対応する位置に投票する投票処理が含まれ、
前記検出処理では、前記投票表において、投票された情報の数に基づいて物体の検出を行い、かつ、投票された情報の種類から物体の種類判定を行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記投票処理において、投票する情報は、そのときの検出対象物の種類に応じ、必要度が高いと判定された情報を抽出し、この抽出した情報に、有効度の値に応じた重みを掛け合わせて重み付けを行った値を投票表に加算することを特徴とする請求項9に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記判別する物体の種類に人工物が含まれ、
前記検出処理手段は、人工物の判定に用いる重み付け処理として、必要度を、情報どうしの相関の高さに基づいて決定し、有効度を、画像情報から得られたエッジの強さとレーダ情報から得られた反射強度との少なくとも一方に基づいて決定することを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項12】
前記物体センサとして、カメラとレーダとを備え、
前記検出処理手段は、
前記変換処理において、画像情報からオプティカルフローを求める処理と、レーダ情報としての距離から得た相対速度からオプティカルフローを求める処理を行い、
前記重み付け処理では、2つのオプティカルフローの相関を必要度、エッジ強度を有効度とした重み付けを行なって、その領域内に存在するエッジ強度、エッジ方向のベクトル、相対速度の情報を抽出し、
前記検出処理では、抽出した情報に基づいて、車両、走行中の二輪車、歩行者、道路構造物を判別することを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項13】
前記物体センサとして、赤外波長の画像を撮影する赤外線カメラが含まれ、
前記検出処理手段は、前記情報変換処理において、前記赤外線カメラの出力画像の画素毎に温度値を求める処理を実行し、
前記検出処理では、車両、乗車中の二輪車、歩行者、道路構造物の種類の判別において、投票表の結果の物体検出領域内の情報から、あらかじめ設定されたしきい値以上の温度が観測されている場合は歩行者ではないと判別することを特徴とする請求項4〜12のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−255977(P2007−255977A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78484(P2006−78484)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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