説明

物標検出装置、物標検出方法、およびコンピュータが実行するためのプログラム

【課題】ピーク周波数成分が低周波領域に埋もれた状態から復帰してきた場合に、このピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを高精度に判定し、衝突寸前まで高精度な物標検出を行うことが可能な物標検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る物標検出装置は、FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う第1の検出手段と、前記第1の検出手段と異なる方式で物標検出を行う第2の検出手段と、低周波数成分に埋もれていた前記ピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の検出手段の物標検出方法を選択する選択手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物標検出装置、物標検出方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関し、詳細には、二つの検出手段を用いて物標を検出する物標検出装置、物標検出方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先行車を検知して車間距離を適切に保つ車間距離制御装置や、車間距離が必要以上に接近した場合に運転者に報知する車間距離警報装置等に利用される車載レーダの一つとして、ミリ波帯を使用するFMCW方式のレーダ(以下「FMCWレーダ」という)が知られている。
【0003】
このFMCWレーダでは、時間に対して周波数が三角波状に直線的に増減するよう変調されたレーダ波を使用し、このレーダ波の送信信号と、物標に反射したレーダ波(反射波)の受信信号とを混合することにより得られるビート信号に基づいて、レーダ波を反射した物標についての情報を得るようにされている。
【0004】
具体的には、レーダ波の周波数が増加する上り区間、及び周波数が減少する下り区間のそれぞれについて、ビート信号に対し高速フーリエ変換(FFT)に代表される周波数解析処理を施すことにより、ビート信号の各区間毎のパワースペクトルを求める。そして、パワースペクトルから抽出したピーク周波数成分を両区間の間で適宜組み合わせて、その組み合わせたピーク周波数成分(以下では「ピークペア」という)の周波数を、FMCWレーダにおいて周知の計算式に当てはめることにより、そのピークペアにて特定される物標との距離や相対速度を求めている。
【0005】
ところで、FMCWレーダでは、レーダ波を入出力する開口部分に取り付けられたレドーム等による至近距離からの反射や、送受信アンテナ間の結合等により、ビート信号の低周波領域にノイズが発生する。このため、この低周波ノイズが発生する領域(以下では「低周波領域」という。)NAにピークが発生すると、これを抽出できず、そのピークを発生させた物標を検出することができないという問題があった。
【0006】
これに対して、前サイクルにて検出された認識物標から、その物標(前サイクル物標)が今サイクルでも検出された場合に持っているべき情報(相対速度,距離,方位)の予測値を求め、その予測値に適合するピークが、上り区間又は下り区間のいずれか一方でのみ検出された場合には、未検出ピークの周波数が低周波領域に属するか、或いは前サイクル物標について併走フラグがセットされていれば、未検出ピークは低周波領域又は他の物標のピークに埋もれているものとみなして、前サイクル物標の外挿許可フラグをセットするレーダ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−205279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、ピーク周波数成分が低周波領域に埋もれた状態から復帰してきた場合については、十分には考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ピーク周波数成分が低周波領域に埋もれた状態から復帰してきた場合に、このピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを高精度に判定し、衝突寸前まで高精度な物標検出を行うことが可能な物標検出装置、物標検出方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う第1の検出手段と、前記第1の検出手段と異なる方式で物標検出を行う第2の検出手段と、低周波数成分に埋もれていた前記ピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の検出手段の物標検出方法を選択する選択手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記判定手段は、前記ピーク周波数成分のペアの一方が前記低周波数成分に埋もれて復帰するまでの間、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該ピーク周波数成分のペアの一方の推移を予測することが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記判定手段は、前記復帰したピーク周波数成分と、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分とが略一致しない場合に、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であると判定することが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記選択手段は、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分である場合には、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分と、他方のピーク周波数成分とに基づいた物標検出方法を選択する一方、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分でない場合には、前記ピーク周波数成分のペアを用いた物標検出方法を選択することが望ましい。
【0014】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う第1の検出工程と、前記第1の検出手段と異なる方式で物標検出を行う第2の検出工程と、低周波数成分に埋もれていた前記ピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する判定工程と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の検出手段の物標検出方法を選択する選択工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記判定工程では、前記ピーク周波数成分のペアの一方が前記低周波数成分に埋もれて復帰するまでの間、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該ピーク周波数成分のペアの一方の推移を予測することが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記判定工程では、前記復帰したピーク周波数成分と、前記第2の検出工程の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分とが略一致しない場合に、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であると判定することが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記選択工程では、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分である場合には、前記第2の検出工程の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分と、他方のピーク周波数成分とに基づいた物標検出方法を選択する一方、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分でない場合には、前記ピーク周波数成分のペアを用いた物標検出方法を選択することが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明に係る標検出方法の各工程をコンピュータがプログラムを実行することにより実現することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う第1の検出手段と、前記第1の検出手段と異なる方式で物標検出を行う第2の検出手段と、低周波数成分に埋もれていた前記ピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の検出手段の物標検出方法を選択する選択手段と、を備えているので、ピーク周波数成分が低周波領域に埋もれた状態から復帰してきた場合に、このピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるかを否かを高精度に判定でき、衝突寸前まで高精度な物標検出を行うことが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、この発明に係る物標検出装置、物標検出方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る物標検出装置の機能構成を示すブロック図である。同図に示す物標検出装置1は、四輪自動車等の車両に搭載され、車両の周囲の所定の範囲に存在する物体を検出する装置である。物標検出装置1は、二つのレーダ2および3と、レーダ2および3による検出結果を受信し、この受信した内容に基づいた出力信号を生成する演算部4と、演算部4における演算結果や各種設定情報を記憶する記憶部5と、を備える。
【0022】
演算部4は、2つのレーダ2および3で検出した物標情報が所定の条件を満たすか否かを判定する判定部41と、判定部41での判定結果に基づいて2つのレーダ2および3の検出結果のフュージョン処理を行うフュージョン処理部42を有する。かかる演算部4は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて実現される。また、記憶部5は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を用いて実現される。
【0023】
物標検出装置1で検出した物標情報は、車両制御装置6に出力される。車両制御装置6では、物標検出装置1からの出力に応じて車間距離制御や自動ブレーキ制御等の制御を行う。このように、物標検出装置1および車両制御装置6は、全体としてACC(自動車間制御装)、PBA(プリクラッシュブレーキアシスト)、PSB(プリクラッシュシートベルト)等のシステムを構成する。この意味で、物標検出装置1は、前述したシステムにおけるセンサとしての機能を果たす。
【0024】
以下、物標検出装置1が備える2つのレーダ2および3について詳細に説明する。図2は、第1の検出手段であるレーダ2の構成を示す図である。同図に示すレーダ2は、連続波に周波数変調を乗じた送信信号を用いるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダである。また、レーダ2は、物標の方向を検出する際にデジタルビームフォーミング(DBF)技術によるアンテナビームの形成および走査を行うDBFレーダでもある。
【0025】
レーダ2は、ミリ波帯の高周波送信信号に応じた電磁波(レーダ波)を所定の範囲に放射出力する送信アンテナ11と、n個の受信用アンテナ素子(CH1〜CHn)を有する受信用アレーアンテナ12とを備える。各アンテナ素子CH1〜CHnは、アイソレータ群13を構成する個々のアイソレータを介して、対応するミキサ14−1〜14−nにそれぞれ接続されている。以後、ミキサ14−1〜14−nを総称する場合には、ミキサ群14と呼ぶ。
【0026】
ミキサ14−1〜14−nは、各アンテナ素子に到達した受信信号に、送信信号の一部をミキシングすることによってビート信号を得る。ミキサ14−1〜14−nには、ローカル信号としての送信信号成分が与えられる。この送信信号成分は、電圧制御型の発振器(VCO)15から、分岐回路16およびアイソレータ群17を介してミキサ14−1〜14−nに与えられる。
【0027】
発振器15は、中心周波数がf0(例えば60GHz)のバラクタ制御型ガン発振器であり、変調用の直流電源(DC)18から出力される制御電圧によって所定の周波数帯域の被変調波を出力する。発振器15に入力される制御電圧が上昇すると、発振器15から出力される電圧の周波数が高くなり、発振器15に入力される制御電圧が低下すると、発振器15から出力される電圧の周波数が低くなる。
【0028】
直流電源18は、変調用信号源(SG)19の制御のもと周期的に出力電圧値を変化させる。発振器15へ入力される制御電圧は三角波であるとする。発振器15から出力されたFM被変調波は、分岐回路16を介して送信アンテナ11に出力され、電磁波(レーダ波)として所定の範囲に放射出力される。送信アンテナ11から出力される送信信号の周波数の時間波形は、発振器15へ入力される制御電圧に比例するので三角波となる。
【0029】
一方、発振器15から出力され、分岐回路16によって分岐されてローカル信号となったFM被変調波は、ミキサ群14において各チャネルの受信信号とそれぞれミキシングされてチャネル別のビート信号を生成する。各チャネルのビート信号は、物標までの距離や相対速度に応じて変化する。
【0030】
ここで、図3〜図6を参照して、FMCWレーダの探知原理の概要を説明する。図3および図4は、送信周波数の変化を実線で示し、距離Rの位置にあって相対速度が零の物標から反射された受信周波数の変化を破線で示した図である。より具体的には、図3は物標の自車両に対する相対速度が0の場合の送信信号と受信信号の時間変化を示した図であり、図4は物標の自車両に対する相対速度が0でない場合の送信信号と受信信号の時間変化を示した図である。なお、両図ともに横軸tは時間、縦軸fは周波数を表している。これらの図に示す場合、連続波に三角波を乗じて周波数変調した変調信号を送信信号として用いている。
【0031】
かかる送信信号を放射しているときの受信信号は、物標の相対速度の値によらず、送信信号に対して自車両から物標までの距離Rに応じた時間の遅れT(T=2R/c,cは光速)を生じる。以後、送信信号の中心周波数すなわち搬送波周波数をf0、周波数偏移幅をΔF、三角波の周波数をfmとする。
【0032】
また、受信信号は、物標の相対速度に応じてドップラー効果による周波数偏移を生じる(図3の場合、この周波数偏移は生じない)。なお、図4では、受信信号周波数が送信信号周波数よりも大きな周波数を有するように縦軸方向上方に偏移しているが、これは物標が自車両に対して接近する場合を示している。
【0033】
ここで、相対速度が「0」のときに送信信号と受信信号をミキシングして得られるビート信号の周波数(ビート周波数)をfr、ドップラー効果による周波数偏移を示すドップラー周波数をfd、周波数が増加する区間(アップ区間)のビート周波数をfb1、周波数が減少する区間(ダウン区間)のビート周波数をfb2とそれぞれおくと、
fb1=fr−fd…(1)
fb2=fr+fd…(2)
が成り立つ。式(1)および(2)において、物標の相対速度が0の場合、ドップラー周波数fdは「0」なので、fb1=fb2=frとなる(図3を参照)。
【0034】
したがって、変調サイクルのアップ区間とダウン区間のビート周波数fb1およびfb2を別々に測定することにより、frおよびfdは、
【0035】
【数1】

と求められる。図5は、送信信号および受信信号が図3に示す時間変化を行う場合(物標の相対速度=0)のビート周波数fbの時間変化を示す図であり、図3と図5のt1、t2、t3、t4はそれぞれ同じ時間であることを意味する。また、図6は、送信信号および受信信号が図4に示す時間変化を行う場合(物標の相対速度≠0)のビート周波数fbの時間変化を示す図であり、図4と図6のt1、t2、t5、t6もそれぞれ同じ時間であることを意味する。
【0036】
上述した式(3)および(4)によって求めたfrおよびfdを用いることにより、物標の距離Rおよび相対速度vRは、
【数2】

と求めることができる。なお、ここでの相対速度vRは、説明の便宜上、正負によって物標の向きを指定する場合を示しているが、より一般には、ベクトルの演算を行うことによって物標の向きを求めればよい。
【0037】
再び図2を参照してレーダ2の構成の説明を続ける。レーダ2は、アイソレータ群13および17、ミキサ群14、発振器15、分岐回路16によって構成される高周波回路20の後段に、低雑音増幅器21、高速A/D変換器22、DBF信号処理部23、および複素FFT演算部24が設けられている。
【0038】
低雑音増幅器21は、ミキサ群14から出力されたチャネル数nのビート信号をパラレルに増幅する。また、低雑音増幅器21は、アンチエリアシングのために所定のカットオフ周波数(例えば77kHz)のローパスフィルタを内蔵している。
【0039】
高速A/D変換器22は、各ビート信号をパラレルかつ同時にA/D変換する回路である。具体的には、所定のサンプリング周波数(例えば200kHz)で、FM変調における三角波の周波数アップ区間と周波数ダウン区間の所定数のサンプリングを行う。
【0040】
DBF信号処理部23は、高速A/D変換器22からチャネル別のデジタルビート信号を取得し、DBF処理および距離、速度演算を施すことによって物標の認識処理を行う。
【0041】
複素FFT演算部24は、DBF信号処理部23における一連の処理の中の高速フーリエ変換(FFT)演算を代行して実行する。すなわち、DBF信号処理部23からチャネル別デジタルビート信号を受け取り、これに対して複素FFT演算を実施してその結果をDBF信号処理部23に戻す。なお、チャネルごとに得られるビート信号を複素FFT演算して得られるパワースペクトルは、周波数が物標までの距離Rに対応するため、以後の説明では「距離パワースペクトル」と呼ぶ。
【0042】
距離パワースペクトルは、チャネル毎のアップ区間とダウン区間それぞれ別個に求められるが、各々の距離パワースペクトルには、周波数軸上のビート周波数fb1およびfb2に対応しているところにピークが現れる。図7は、物標が自車両に対して近づいてくる場合に求めた距離パワースペクトルのピーク周波数成分の概要を模式的に示す図である。具体的には、周波数が小さい方のピークP1がアップ成分のビート周波数fb1によるピークであり、周波数が大きい方のピークP2がダウン成分のビート周波数fb2によるピークである。このようにして得られる2つのピーク周波数成分P1およびP2を「ピークペア」と称する。
【0043】
DBF信号処理部23では、フェーズドアレーアンテナレーダの移相器の機能をデジタル信号処理によって実現することで、ビーム走査やサイドローブ特性等の調整をデジタル状態で行う。ここでは、全てのアンテナのチャネルからの受信信号をA/D変換後にいったん取り込んだ後、各チャネルのビート信号に基づいて、物標の方位θにおける距離と相対速度を演算する。なお、ビーム走査の方位は任意に設定することができる。
【0044】
DBF方式の利点の一つは、全アンテナ素子(全受信チャネル)の信号をいったんデジタル信号として取り込んでしまうと、それをもとに任意の方向にビーム合成ができるため、一回の信号取り込みで複数のビームを形成することができる点にある(DBF方式の詳細については、例えば特開平11−133142号を参照)。
【0045】
ところで、FMCW方式では、至近距離に位置する物標からの反射や送受信アンテナ間の結合によってビート周波数の低周波数領域にノイズが発生する。図8は、アップ成分およびダウン成分の距離パワースペクトルSpを示す図であり、本来出現するはずのビート周波数fb1によるピークP1が低周波数領域LAにおけるノイズに埋もれてしまい、そのピークを判別することができなくなった状態を模式的に示す図である。このように、低周波数領域LAにビート周波数に対応するピークが発生すると、アップ成分のビート周波数がノイズに紛れてしまいそのピークを抽出することができず、結果的に物標を検出することができない場合がある。
【0046】
図8に示すような状況は、例えば空間的には離れていても、物標の相対速度が大きい値を有して自車両に接近してくる場合、すなわち自車両に対する物標までの距離をその物標の自車両に対する相対速度で割って得られる衝突予測時間(TTC)が短い場合に起こり得る。換言すれば、物標までの距離が短くても、物標と自車両との相対速度が「0」であれば、図8に示すような状況は起こらない。
【0047】
図9は、判定部41の処理の概略を説明するためのフローチャートである。判定部41では、図8に示すような状況、すなわち、ピークペアの一方(アップ成分のピークP1またはダウン成分のピークP2)が低周波領域LAに埋もれてピークペアのうちのいずれか一方のピークしか抽出できない状況が発生しているか否かを判定し(ステップS1)、かかる状況が発生した場合には(ステップS1の「Yes」)、PCS外挿フラグを「1」とセットする(ステップS2)。その後、演算部4では所定の外挿を行う。この外挿を行う際には、それまでに記憶部5で記憶している物標情報(物理量、フラグ)や、ピークペアの他方のピーク値(図8に示す場合にはダウン区間のピーク値)等を参照する。
【0048】
次に、第2の検出手段であるレーダ3の構成を説明する。図10は、レーダ3の構成を示す図である。同図に示すレーダ3は、2チャンネルモノパルス方式レーダであり、レーダ2と同じくFMCW方式を採用している。ここでいうモノパルス方式とは、互いの一部が重なり合った2個のアンテナビームを一組として用い、角度誤差を検出する方式のことである。
【0049】
レーダ3は、ミリ波帯の高周波信号を発生する発振器31、発振器31で発生した送信信号に応じた電磁波(レーダ波)を所定の範囲に放射出力する送信アンテナ32、離隔配置されて物標からの反射波をそれぞれ受信する2つの受信アンテナ33−1および33−2、受信アンテナ33−1および33−2からの信号に発振器31の出力(ローカル信号)をそれぞれミキシングするミキサ34−1および34−2、ならびにミキサ34−1および34−2で各々ミキシングしたビート信号を取得する信号処理部35を備える。
【0050】
信号処理部35は、ミキサ34−1および34−2から入力される2つの受信信号の位相差Δφを計測し、物標の方向を示す角度θを求める。この際のθは、次のようにして求められる。受信アンテナ33−1と受信アンテナ33−2の間隔をdとし、受信アンテナ33−1の受信信号と受信アンテナ33−2の受信信号との経路差をxとすると、車両の前方方向からの角度、すなわち受信信号の入射角θ(≪1)は、x=dsinθ≒dθで与えられ、経路差xに応じた位相差Δφは、Δφ=2π(x/λ)で与えられる。したがって、θ≒(x/d=)Δφ・λ/(2πd)となる。なお、位相差Δφは、2つの受信信号を方形波に変換し、方形波間の排他的論理和などをとり、その出力の期間をカウンタでカウントすれば求めることができる。
【0051】
本実施の形態1では、レーダ3もFMCW方式を採用しているため、信号処理部35では、ビート信号を高速フーリエ変換することによって物標までの距離に応じた距離パワースペクトルを得ることができる。この距離パワースペクトルについては、レーダ2の場合と同様に、アップ成分またはダウン成分のいずれか一方のピークが低周波数領域に埋もれてしまい、抽出できないことが起こりうる(図8参照)。この場合も、判定部41がピークペアの一方のピークが低周波数領域に埋もれているか否かの判定を行い、埋もれていると判定した場合にはPCS外挿フラグを「1」とし、該当する物標の位置や相対速度を所定の外挿によって求める。
【0052】
以上説明した二つのレーダ2および3を比較した場合、DBF方式を採用するレーダ2の方が距離パワースペクトルを得るのに必要な演算量が多いが、解像度は高い。このため、レーダ2の方がより遠距離に存在する物標を検出を行うことが可能である。
【0053】
図11は、レーダ2とレーダ3の検出領域を模式的に示す図である。同図においては、物標検出装置1が車両C0に搭載されており、レーダ2の検出領域R2とレーダ3の検出領域R3はそれぞれ扇型をなしている。各検出領域の扇形の中心角は等しく、その径はレーダ2の検出領域R2の方がレーダの検出領域R3よりも大きい。すなわち、レーダ2の方がレーダ3よりも遠方まで検出することができる。なお、本実施の形態1においては、レーダ3の検出領域R3が、レーダ2の検出領域R2とレーダ3の検出領域R3との重複領域R23と一致するようにレーダ2およびレーダ3の指向性がそれぞれ調整されている。図11では、車両C0が道路Rdに沿って速さv0で走行し、その重複領域R23が通過する道路Rdを車両C1が道路Rdに沿って速さv1で走行している場合を示している。
【0054】
以後の説明においては、上述した各レーダの検出領域に鑑み、レーダ2によって検出された物標を「遠距離ミリ波物標」、レーダ3によって検出された物標を「近距離ミリ波物標」と称する。また、物標検出装置1を搭載している車両C0を「自車C0」と称し、物標となる車両C1を「他車C1」と称する。
【0055】
図12は、図11に示す状況でレーダ2および3がそれぞれ検知した結果を模式的に示す図である。図12では、自車C0のレーダ取付位置を原点とし、鉛直方向(図11の道路Rdに平行な方向)をz軸方向、横方向(図11の道路Rdに垂直な方向)をx軸方向とする座標系を採用している。レーダ2によって検出された遠距離ミリ波物標の位置座標を(zf,xf)とし、自車C0に対する他車C1の相対速度の大きさをvRfとする。また、レーダ3によって検出された近距離ミリ波物標を(zn,xn)とし、自車C0に対する他車C1の相対速度の大きさをvRnとする。なお、説明の便宜上、自車C0および他車C1は、z軸正の方向の成分のみを有しているとするが、各車両の速度がx軸方向の成分を有していてもかまわない。
【0056】
図13は、本実施の形態1に係る物標検出方法における物標情報更新処理の概要を示す図である。レーダ2および3は、上述したように物標を検出するまでの計算量が違うため、検出結果を出力するまでの時間も異なる。したがって、検出結果の更新周期も異なり、レーダ2の更新周期Tfは、レーダ3の更新周期Tnよりも長い(Tf>Tn)。本実施の形態1では、レーダ2の更新周期Tfとレーダ3の更新周期Tnの比が1:2であるとする。すなわち、近距離ミリ波の更新カウンタが更新されるタイミング(図13でt=T1、T2、・・・、T6)のうち、2回に1回は遠距離ミリ波の更新カウンタも更新される(図13でt=T1、T3、T5)。なお、より一般には、Tf:Tn=m:n(m<n;mおよびnは正の整数)となるように調整されていればよい。
【0057】
上述した2種類の更新タイミングのうち、遠距離ミリ波物標および近距離ミリ波物標がともに更新されるタイミングでは、フュージョン処理部42が、レーダ2の検出領域R2とレーダ3の検出領域R3との重複領域R23において、遠距離ミリ波物標の距離、横位置、相対速度を基準として融合すべき近距離ミリ波物標を探索する。以後、このミリ波フュージョン処理によって得られる物標を「フュージョンミリ波物標」と称する。これに対して、近距離ミリ波のみが更新されるタイミングでは、その直前のフュージョン処理の結果に応じた物標情報の更新処理を行う。以下、この2つの場合に分けて各々の処理を説明する。
【0058】
まず、ミリ波フュージョン処理について説明する。このミリ波フュージョン処理では、物標が検出される検出領域に応じて処理の内容が異なる。図14は、かかる領域の設定例を示す図である。同図においては、検出領域が4つの領域D1〜D4に分けられており、D1、D2、D3、D4の順に自車C0からの距離が近い領域である。これら4つの領域によって図10に示す重複領域R23がカバーされていることはいうまでもない。なお、隣接する領域の境界のz座標z1、z2、z3、z4は任意であり、各種条件に応じて定めればよく、分割する領域の数も4に限定されるわけではない。
【0059】
図15−1〜15−4は、各領域D1〜D4におけるミリ波フージョン処理の規則を示す図である。これらの図において、「○」は物標が検出された場合を示し、「×」は物標が未検出であった場合を示している。また、「△」は上述したPCS外挿によって物標が検出された場合を示している。なお、PCS外挿以外の外挿によって検出された場合は○に含まれるものとする。
【0060】
本実施の形態1においては、レーダ2および3はともにFMCW方式を採用しているため、遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標とがともに3通りの検出結果をとり得る。このため、各検出領域における検出結果の組み合わせは9(=3×3)通りとなり、各々の組み合わせに応じたミリ波フュージョン処理が図15−1〜図15−4で規定されている。これらの組み合わせは記憶部5で記憶されており、演算部4のフュージョン処理部42で検出結果に応じたフュージョン処理を行う際に参照される。
【0061】
以下、具体的なミリ波フュージョン処理の内容を説明する。まず、遠距離ミリ波物標のPCS外挿フラグと近距離ミリ波物標のPCS外挿フラグがともに「0」である場合、すなわち遠距離ミリ波物標および近距離ミリ波物標がPCS外挿なしで検出された場合(○)には、判定部41では、近距離ミリ波物標が、遠距離ミリ波物標に対して以下に示す3つの条件
条件1.|zf−zn|<Δzmax
条件2.|xf−xn|<Δxmax
条件3.|vRf−vRn|<ΔvRmax
を満たすか否かを判定する。ここで、Δzmaxは前後距離差評価最大値、Δxmaxは左右距離差最大値、ΔvRmaxは前後相対速度差最大値である。図12においては、他車C1の遠距離ミリ波物標Ofに対して条件2および3を満たすフュージョン可能領域F内に他車C1の近距離ミリ波物標Onが入っている場合を例示している。
【0062】
上記3つの条件を満たす場合は、検出領域D1〜D4のパターンaにしたがう。本実施の形態1では、どの検出領域にある場合にであっても、遠距離ミリ波物標の物理量(物標距離、物標横位置、物標相対速度、物標相対加速度)および各種フラグをフュージョンミリ波物標の物理量および各種フラグとしてそのまま登録する。この場合、近距離ミリ波物標の情報自体は物理量や各種フラグの中に含まれないが、フュージョン対象としての近距離ミリ波物標の情報は記憶部5に登録される。
【0063】
ところで、上記3つの条件を満たす近距離ミリ波物標が複数ある場合も想定される。この場合には、演算部4で所定の評価値を求める評価値演算処理を行い、求めた評価値が最小または最大(定義による)の近距離ミリ波物標をフュージョンミリ波物標として登録する。評価値Hは、例えば
H=αZZ+βXX+γVRR ・・・(7)
と定義される。ここで、Zは前後距離差評価値であり、Z=|zf−zn|/Δzmaxである。また、Xは左右距離差評価値であり、X=|xf−xn|/Δxmaxである。さらに、VR=前後相対速度差評価値であり、VR=|vRf−vRn|/ΔvRmaxである。αZ、βX、およびγVRは、Z、X、およびVRの和を取るときのウェイトを与える定数であり、3つのウェイトの比は予め定義されている。なお、評価値Hも一致した場合には、近距離ミリ波物標を登録する際に付与された物標番号の小さい方(大きい方でも可)を採用すればよい。
【0064】
次に、遠距離ミリ波物標のPCS外挿フラグおよび近距離ミリ波物標のPCS外挿フラグの少なくともいずれか一方が「1」であり、遠距離ミリ波物標に対して近距離ミリ波物標が、上記3つの条件を満たす場合について説明する(各領域のパターンd,e,f)。
【0065】
パターンd(遠距離ミリ波物標が○、近距離ミリ波物標が△)では、全ての領域で遠距離ミリ波物標単独でフュージョンミリ波物標を構成する。この際、近距離ミリ波物標の方は続く処理へは持ち越さず、探索対象から消去する。
【0066】
パターンe(遠距離ミリ波物標が△、近距離ミリ波物標が○)およびパターンf(遠距離ミリ波物標が△、近距離ミリ波物標が△)の場合には、低周波領域埋もれから復帰した片ピークが折り返し周波数でない場合は、D1〜D3の領域では、近距離ミリ波物標単独でフュージョンミリ波物標を構成し、遠距離ミリ波物標の方は続く処理へは持ち越さずに探索対象から消去する一方、D4の領域では、遠距離ミリ波物標単独でフュージョンミリ波物標を構成し、近距離ミリ波物標の方は続く処理へは持ち越さずに探索対象から消去する。
【0067】
続いて、PCS外挿フラグに関わらず上記3つの条件を満たさない遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標について説明する(各領域のパターンb,c,g,h,i)。まず、遠距離ミリ波物標はPCS外挿の有無によらず検出され(○または△)、近距離ミリ波物標が未検出(×)の場合(パターンbおよびc)、直前の遠距離ミリ波物標をフュージョンミリ波物標とし、その遠距離ミリ波物標の物理量と各種フラグをそのまま登録する。
【0068】
パターンi(遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標がともに未検出(×))の場合、「物標なし」として登録する。
【0069】
パターンh(遠距離ミリ波物標が未検出(×)、近距離ミリ波物標が検出(○))では、領域によって処理が異なる。領域D1では、近距離ミリ波物標単独でフュージョンミリ波物標を構成する。領域D2では、先行車に対応する物標があり、この先行車が発進した場合のみ近距離ミリ波物標単独でフュージョンミリ波物標を構成し、それ以外の場合は「物標なし」として登録する。領域D3およびD4では、「物標なし」として登録する。
【0070】
パターンg(遠距離ミリ波物標が未検出(×)、近距離ミリ波物標がPCS外挿により検出(△))の場合にも、領域によって処理が異なる。この場合、領域D1、D2、およびD3では近距離ミリ波物標単独でフュージョンミリ波物標を構成する一方、領域D4では「物標なし」として登録する。
【0071】
次に、近距離ミリ波更新処理について、図16を参照して説明する。同図に示すように、近距離ミリ波更新処理は、その直前(1周期Tnの分だけ前)に行われたミリ波フュージョン処理の内容と今回更新すべき近距離ミリ波物標の検出内容に応じて処理が異なる。
【0072】
まず、直前で実質的にフュージョンされている場合、すなわち直前のミリ波フュージョン処理が図15−1〜15−4のパターンaのいずれかに該当する場合を説明する(パターンj、k、l)。この場合、フュージョンミリ波物標は遠距離ミリ波物標の物理量と各種フラグを受け継いでいるため、今回更新する近距離ミリ波物標の検出内容に応じて縦方向距離zfのみを推定し、更新する。各種フラグは前回値を保持するが、新規フラグに関しては、その値が「1」ならば「0」へと更新する。
【0073】
続いて、直前がフュージョンされていない場合について説明する。まず、直前が近距離ミリ波物標単独で構成されており(例えば領域D1のパターンe,f,g,h等)、今回の近距離ミリ波物標がPCS外挿の有無によらず検出(○または△)された場合(パターンmおよびn)、新たな近距離ミリ波物標を単独でフュージョンミリ波物標として記憶部5へ登録する。また、直前が近距離ミリ波物標単独で構成されており、近距離ミリ波物標が未検出(×)である場合(パターンo)、物理量は更新しない。この場合、各種フラグは前回値を保持するが、物標ロストフラグに関しては、その値が「1」ならば「0」へと更新する。
【0074】
これに対して、直前がフュージョンされてなく、その際のフュージョンミリ波物標が遠距離ミリ波物標単独で構成されている場合(領域D1〜D3のパターンb,c,d、領域D4のパターンb,c,d,e,f)は、今回近距離ミリ波物標として更新すべき情報がない。この場合には、遠距離の縦方向距離zfのみを推定し、更新する。各種フラグについては原則として前回値を保持するが、新規フラグの値が「1」である場合には「0」へ更新する。
【0075】
なお、図16には示していないが、直前のミリ波フュージョン処理が物標登録されていない場合であっても、図15−1〜15−4において「近距離単独」条件を満たす場合が起こり得る。この場合には、近距離ミリ波物標の物理量および各種フラグを出力物標として記憶部5へ登録すればよい。
【0076】
上述したように、PSCの衝突判定で重要となる近距離領域において、低周波領域に遠距離ミリ波レーダ(レーダ2)の片側のピーク周波数成分が埋もれた場合、PCS外挿フラグを「1」として、遠距離ミリ波物標を外挿によって求めているが、さらに、本実施の形態では、衝突寸前まで高精度な物標検出を行うために、低周波領域に埋もれた遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分が復帰してきた場合に、近距離ミリ波レーダの検出結果に基づいて、このピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて、遠距離ミリ波物標の検出方法(演算方法)を選択する。
【0077】
図17は、遠距離ミリ波レーダおよび近距離ミリ波レーダの送信信号の一例を示す図である。同図において、横軸は時間、縦軸は周波数を示しており、遠距離ミリ波レーダおよび近距離ミリ波レーダの送信信号の変調パターンをそれぞれ示している。
【0078】
図18は、他車C1が自車C0に対して近づいてくる状態を示す図である。図19は、図18に示すような状況で、遠距離ミリ波レーダおよび近距離ミリ波レーダの受信信号の距離パワースペクトルにおけるアップ成分およびダウン成分のピーク周波数成分P1,P2を模式的に示す図である。同図において、(a)、(b)、(c)は、遠距離ミリ波レーダの受信信号の距離パワースペクトル、(d)、(e)、(f)は、近距離ミリ波レーダの受信信号の距離パワースペクトルを示しており、(a)と(d)、(b)と(e)、(c)と(f)は、それぞれ同じ時間であるものとする。
【0079】
図18に示すように、他車C1が自車両C0に遠距離領域から近距離領域に近づいてくる場合、ミリ波フージョン処理の規則(図15−1〜図15−4)は、規則b→規則a(図19の(a)、(d))→規則e(図19の(b)、(e))となる。図19の(a)、(d)に示すように、遠距離ミリ波レーダおよび近距離ミリ波レーダのピーク周波数成分P1,P2のピークペアの検出が可能である状態(規則a)から、さらに他車C1が自車C0に近づくと、図19の(b)に示すように、遠距離ミリ波レーダのアップ成分のピーク周波数成分P1が低周波ノイズに紛れて検出できなくなる。この場合、上述したように、遠距離ミリ波物標については、PSC外挿フラグをONさせて、PSC外挿を行う(規則e)。
【0080】
さらに、図19(c)に示すように、低周波領域に埋もれた片側のピーク周波数成分P1が復帰してきた場合、この片側のピーク周波数成分P1は、0Hzを折り返して復帰した折り返しピーク周波数成分である場合と、0Hzを折り返すことなく復帰した通常のピーク周波数成分である場合がある。
【0081】
具体的には、PCSの制御タイミングが衝突寸前になると、片側のピーク周波数成分が0Hzを折り返し、上記式(3)〜(6)より、本来は自車C0に向かってきている物標があたかも減速したかのように見えてしまう。図19(c)の波線部分は、実際の片側のピーク周波数成分P1を示している。これは、ピーク周波数成分が0Hz以下になると周波数の低い方から高い方へシフトするためのである。特に、相対速度が大きいほど、顕著にシフトする傾向がある。他方、対象となる物標の急減速等で0Hzを折り返すことなく、片側のピーク周波数成分P1が低周波数領域の埋もれから復帰する場合がある。
【0082】
そこで、フュージョン処理部42では、遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1が低周波領域に埋もれた場合、片側のピーク周波数成分P1が再度復帰するまで、近距離ミリ波レーダのピークペアの検出が可能であるので(図19の(e)、(f)参照)、近距離ミリ波レーダの物標情報(距離情報と相対速度情報等)を用いて、遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1の位置を推定し、遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1の推移を予測する。
【0083】
図20は、上記フュージョン処理部42の折り返し判定処理の概略を説明するためのフローチャートである。同図において、遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1が低周波領域から復帰したか否かを判定する(ステップS11)。遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1が復帰した場合には(ステップS11の「Yes」)、近距離ミリ波レーダの物標情報で予測した片側のピーク周波数成分P1‘の推移状況に基づいて、0Hzを折り返して低周波数領域の埋もれから復帰した折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、低周波数領域の埋もれから復帰した片側のピーク周波数成分P1(遠距離ミリ波レーダの検出結果)と、近距離ミリ波レーダの物標情報で予測した遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1‘とが略一致する場合に、0Hzを折り返すことなく低周波数成分の埋もれから復帰したと判断し、略一致しない場合には、折り返しピーク周波数成分であると判定する。
【0084】
折り返した周波数成分の場合は(ステップS12の「Yes」)、0Hzを折り返した周波数成分を考慮して、遠距離ミリ波レーダのピークペアリングを行って物標情報を生成する(ステップS13)。具体的には、近距離ミリ波レーダの物標情報に基づいて予測した遠距離ミリ波レーダの片側のピーク周波数成分P1‘と、遠距離ミリ波レーダの他方のピーク周波数成分P2とのピークペアリングを行って物標情報を生成する。すなわち、遠距離ミリ波物標は、PCS外挿状態のままとして、遠距離ミリ波物標を生成する(規則e)。
【0085】
他方、折り返し周波数成分ではなく、通常のピーク周波数成分である場合には(ステップS12の「No」)、遠距離ミリ波レーダのアップ成分とダウン成分のピーク周波数成分P1、P2のピークペアリングを行って、物標情報を生成する(ステップS14)。すなわち、外挿ではなく、遠距離ミリ波レーダのアップ成分とダウン成分のピーク周波数成分P1、P2のピークペアリングを行って、遠距離ミリ波物標を生成する(規則a)。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態によれば、FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う遠距離ミリ波レーダと、遠距離ミリ波レーダと異なる方式で物標検出を行う近距離ミリ波レーダと、低周波数成分に埋もれていた遠距離ミリ波レーダのピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、近距離ミリ波レーダの検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定し、判定結果に基づいて、遠距離ミリ波レーダの物標検出方法を選択するフュージョン処理部42とを備えているので、低周波領域から出現したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを高精度に判定することができ、衝突寸前まで高精度な物標検出を行うことが可能となる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、フュージョン処理部42は、遠距離ミリ波レーダのピーク周波数成分のペアの一方が低周波数成分に埋もれて復帰するまでの間、近距離ミリ波レーダの検出結果に基づいて、当該ピーク周波数成分のペアの一方の推移を予測することとしたので、ピーク周波数成分のペアの一方が低周波数成分に埋もれた場合でも当該ピーク周波数成分のペアの一方の推移を高精度に予測することが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、フュージョン処理部42は、遠距離ミリ波レーダの復帰したピーク周波数成分と、近距離ミリ波レーダの検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分とが略一致しない場合に、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であると判定することとしたので、低周波領域から出現したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かの判定精度を向上させることが可能となる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、フュージョン処理部42は、遠距離ミリ波レーダの復帰した片側のピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分である場合には、近距離ミリ波レーダの検出結果に基づいて予測した片側のピーク周波数成分と、遠距離ミリ波レーダの他方のピーク周波数成分とに基づいた物標検出方法を選択する一方、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分でない場合には、遠距離ミリ波レーダの通常のピークペアを用いた物標検出方法を選択することとしたので、復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かに応じて、高精度な物標検出方法を選択することが可能となる。
【0090】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、物標までの衝突予測時間(TTC)を用いてミリ波フュージョン処理する遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標との混合比を制御することを特徴とする。すなわち、本実施の形態2では、ミリ波フュージョン処理によって物理量を求める際、遠距離ミリ波物標の物理量と近距離ミリ波物標の物理量を物標までの衝突予測時間に応じた所定のウェイトで混合する。
【0091】
本実施の形態2に係る物標検出装置の構成は、上記実施の形態1に係る物標検出装置1の構成と同じである。また、ミリ波フュージョン処理を行う際の規則は、図15−1〜15−4にしたがうものとする。
【0092】
以下、ミリ波フュージョン処理で行う物理量の演算処理を説明する。この際、各領域のパターンaに相当するフュージョンミリ波物標は、遠距離ミリ波物標のTTCに基づいて遠距離ミリ波物標の物理量と近距離ミリ波物標の物理量とを所定のウェイトによってフュージョンする。具体的には、遠距離ミリ波物標の物理量をPf、近距離ミリ波物標の物理量をPnとしたとき、対応するフュージョンミリ波物標の物理量Pfusionは、遠距離ミリ波物標の物理量Pfのウェイトをwとして、
fusion=wPf+(1−w)Pn ・・・(8)
と定義される。演算部4のフュージョン処理部42では、この定義に従って物理量の演算を行い、記憶部5に登録する。図21は、式(8)に基づいて算出されたフュージョンミリ波物標Ofusionの例を示す図である。同図においては、遠距離ミリ波物標Ofや近距離ミリ波物標Onの中間付近にフュージョンミリ波物標Ofusionが生成された状況を模式的に示している。
【0093】
図22は、遠距離ミリ波物標の物理量のウェイトwと物標までの衝突予測時間(TTC)の関係を示す図である。同図に示すウェイト曲線Lwは、TTCの値が大きいときには1であるが、TTCが0に近づくにつれて徐々に減少していき、TTCが所定の閾値t0(>0)よりも小さいときにw=0となる。すなわち、TTCが小さいほど近距離ミリ波物標の物理量をより重視したフュージョン処理を行う。なお、閾値t0の値は、各種条件に応じて適宜設定すればよい。
【0094】
本実施の形態2では、各種フラグに関しても、フュージョンミリ波物標を構成する際に所定の規則に従ったフラグの設定の切り替えを行う。この規則は予め記憶部5に格納しておき、フュージョン処理部42で適宜読み出す構成としておけばよい。
【0095】
次に、近距離ミリ波更新処理について説明する。図23は、本実施の形態2における近距離ミリ波更新処理の概要を示す図であり、実施の形態1で説明した図16に対応する図である。本実施の形態2における近距離ミリ波更新処理において、上記実施の形態1における近距離ミリ波更新処理と異なるのは、直前がフュージョンされており、今回の近距離ミリ波物標が検出(○)、またはPCS外挿による検出(△)の場合、すなわちパターンjおよびkの場合である。この場合、物理量の演算に関しては、直前のミリ波フュージョン処理更新と同じウェイトwを用いることによって遠距離の縦方向距離zfのみを推定し更新する。この点を除く近距離ミリ波更新処理は、上記実施の形態1と同じである。
【0096】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、ミリ波フュージョン処理で物理量を演算する際に、TTCに基づくウェイトに加えて、物標を一時的にロストした場合に補間する外挿カウンタの値に応じたウェイトを加味することによってフュージョンミリ波物標の物理量を算出することを特徴とする。
【0097】
本実施の形態3に係る物標検出装置は、上記実施の形態1および2に係る物標検出装置と同じ構成を有する。また、本実施の形態3に係る物標検出方法は、上述したフュージョンミリ波物標の物理量演算処理を除いて、上記実施の形態2に係る物標検出方法と同じである。
【0098】
図24は、遠距離ミリ波物標/近距離ミリ波物標の物理量のウェイトと対応する物理量の外挿回数との関係を示す図である。同図においてウェイト曲線は4本あるが、これは、遠距離ミリ波物標と近距離ミリ波物標の各々に対して、TTCの範囲に応じた2種類のウェイト曲線を適用しているからである。具体的には、ウェイト曲線Luf1およびLuf2が遠距離ミリ波物標のウェイトと外挿回数の関係であり、ウェイト曲線Lun1およびLun2が近距離物標のウェイトと外挿回数の関係を示している。このうち、ウェイト曲線Luf1およびLun1はTTCが相対的に大きい領域におけるウェイト曲線であり、ウェイト曲線Luf2およびLun2はTTCが相対的に小さい領域におけるウェイト曲線である。
【0099】
図19からも明らかなように、どのウェイト曲線も、所定の外挿回数を超えるとウェイトuの値が一定となる。また、ウェイト曲線相互間の大小関係は、同じ外挿回数で比較した場合に常に変わらないが、設定によってある外挿回数を超えると等しくなる場合がある。
【0100】
本実施の形態3では、フュージョンミリ波物標の物理量Pfusionは、
【数3】

と求められる。式(9)において、Pfは遠距離ミリ波物標の物理量、Pnは近距離ミリ波物標の物理量、wは遠距離ミリ波物標の物理量Pfのウェイトである。また、ufは外挿回数に基づく遠距離ミリ波物標に対応するウェイト(ウェイト曲線Luf1およびLuf2に対応)であり、unは外挿回数に基づく近距離ミリ波物標に対応するウェイト(ウェイト曲線Lun1およびLun2に対応)である。
【0101】
なお、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1〜3を詳述してきたが、本発明はそれら3つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、2つの検出手段の組み合わせは、必ずしも上述した2つのレーダに限られるわけではなく、一方が高解像度のレーダであり、2つのレーダの検出領域が異なっていれば如何なる形式のレーダを適用しても構わない。また、レーダ2,3のハードウェア構成を物理的に分離した構成(図2,10参照)としたが、一体の構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る物体検出装置、物体検出方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムは、ACC(自動車間制御)、PBA(プリクラッシュブレーキアシスト)、PSB(プリクラッシュシートベルト)等の走行安全システムに使用されるレーダ装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置が備えるレーダ(第1の検出手段)の構成を示す図である。
【図3】FMCWレーダの探知原理の概要を説明するための図(物標の相対速度が0の場合)である。
【図4】FMCWレーダの探知原理の概要を説明するための図(物標の相対速度≠0の場合)である。
【図5】物標の相対速度が0の場合のビート周波数の時間変化を示す図である。
【図6】物標の相対速度が0でない場合のビート周波数の時間変化を示す図である。
【図7】デジタルビート信号に信号処理を施すことによって得られた距離パワースペクトルの例を示す図である。
【図8】距離パワースペクトルにおいて一方のピークが低周波ノイズ領域に埋もれた状況を示す図である。
【図9】判定部41の処理の概略を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置が備えるレーダ(第2の検出手段)の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る物標検出装置が備える二つのレーダの検出領域を模式的に示す図である。
【図12】図11に示す状態での二つのレーダの検知結果を模式的に示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る物標検出方法の概要を示す図である。
【図14】ミリ波フュージョン処理を行う領域を示す図である。
【図15−1】図14の領域D1におけるフージョン処理の規則を示す図である。
【図15−2】図14の領域D2におけるフージョン処理の規則を示す図である。
【図15−3】図14の領域D3におけるフージョン処理の規則を示す図である。
【図15−4】図14の領域D4におけるフージョン処理の規則を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態1における近距離ミリ波更新処理の概要を示す図である。
【図17】遠距離ミリ波レーダおよび近距離ミリ波レーダの送信信号の一例を示す図である。
【図18】他車C1が自車C0に対して近づいてくる状態を示す図である。
【図19】図18に示すような状況で、遠距離ミリ波レーダおよび近距離ミリ波レーダの受信信号の距離パワースペクトルにおけるアップ成分およびダウン成分のピーク周波数成分P1,P2を模式的に示す図である。
【図20】折り返し判定処理の概略を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の実施の形態2に係る物標検出方法の物理量算出処理で算出されたフュージョンミリ波物標の例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態2に係る物標検出方法の物理量算出処理で用いるウェイトと衝突予測時間との関係を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態2における近距離ミリ波更新処理の概要を示す図である。
【図24】本発明の実施の形態3に係る物標検出方法の物理量算出処理で用いるウェイトと外挿回数との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1 物標検出装置
2、3 レーダ
4 演算部
5 記憶部
6 車両制御装置
11、32 送信アンテナ
12 受信用アレーアンテナ
13、17 アイソレータ群
14 ミキサ群
14−1、14−2、・・・、14−n ミキサ
15、31 発振器
16 分岐回路
18 直流電源
20 高周波回路
21 低雑音増幅器
22 高速A/D変換器
23 DBF信号処理部
24 複素FFT演算部
33−1、33−2 受信アンテナ
34−1、34−2 ミキサ
35 信号処理部
41 判定部
42 フュージョン処理部
0 自車(車両)
1 他車(車両)
CH1、CH2、・・・CHn アンテナ素子
F フュージョン可能領域
LA 低周波数領域
Luf1、Luf2、Lun1、Lun2、Lw ウェイト曲線
f 遠距離ミリ波物標
fusion フュージョンミリ波物標
n 近距離ミリ波物標
2、R3 検出領域
23 重複領域
Rd 道路
Sp 距離パワースペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う第1の検出手段と、
前記第1の検出手段と異なる方式で物標検出を行う第2の検出手段と、
低周波数成分に埋もれていた前記ピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の検出手段の物標検出方法を選択する選択手段と、
を備えたことを特徴とする物標検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記ピーク周波数成分のペアの一方が前記低周波数成分に埋もれて復帰するまでの間、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該ピーク周波数成分のペアの一方の推移を予測することを特徴とする請求項1に記載の物標検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記復帰したピーク周波数成分と、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分とが略一致しない場合に、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であると判定することを特徴とする請求項2に記載の物標検出装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分である場合には、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分と、他方のピーク周波数成分とに基づいた物標検出方法を選択する一方、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分でない場合には、前記ピーク周波数成分のペアを用いた物標検出方法を選択することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の物標検出装置。
【請求項5】
FMCW方式を用いて検出した信号に周波数解析処理を施すことによって得られるピーク周波数成分のペアを用いて物標検出を行う第1の検出工程と、
前記第1の検出手段と異なる方式で物標検出を行う第2の検出工程と、
低周波数成分に埋もれていた前記ピーク周波数成分のペアの一方が復帰した場合、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の検出手段の物標検出方法を選択する選択工程と、
を含むことを特徴とする物標検出方法。
【請求項6】
前記判定工程では、前記ピーク周波数成分のペアの一方が前記低周波数成分に埋もれて復帰するまでの間、前記第2の検出手段の検出結果に基づいて、当該ピーク周波数成分のペアの一方の推移を予測することを特徴とする請求項5に記載の物標検出方法。
【請求項7】
前記判定工程では、前記復帰したピーク周波数成分と、前記第2の検出工程の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分とが略一致しない場合に、当該復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分であると判定することを特徴とする請求項6に記載の物標検出方法。
【請求項8】
前記選択工程では、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分である場合には、前記第2の検出工程の検出結果に基づいて予測したピーク周波数成分と、他方のピーク周波数成分とに基づいた物標検出方法を選択する一方、前記復帰したピーク周波数成分が折り返しピーク周波数成分でない場合には、前記ピーク周波数成分のペアを用いた物標検出方法を選択することを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1つに記載の物標検出方法。
【請求項9】
請求項5〜請求項8のいずれか1つに記載の物標検出方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータが実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図15−4】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−82973(P2008−82973A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265733(P2006−265733)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】