説明

物質測定方法と物質測定装置

【課題】 被測定物の形状が不揃い、かつ微量でも、測定精度良くかつ測定時間を短くすることを可能とする。
【解決手段】 物質測定装置は、被測定物を高温に熱し柔らかくする溶融ステーション3と、被測定物をプレスするプレスステーション4と、被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定ステーション5と、被測定物を前記各装置間で移動させる回転テーブル1とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線で被測定物に含まれる微少物質を測定する場合に実施する被測定物の測定方法とその測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質測定方法として、X線を利用した蛍光X線分光分析装置が知られている。この方法では測定精度を高めるためにさまざまな工夫がなされており、被測定物を小さく切断して測定ステーションに供給し測定する方法もその一つである。
上述したような従来の測定方法において測定する試料を小さく切断し、その小片をそのまま測定する方法がとられている。しかし、材料特にプラスチックの中に含まれる微少物質を蛍光X線で測定する場合、X線を投射する部分の材料表面の形状が不均一ゆえに発生する蛍光X線が不十分かつ不規則であった。このために、測定結果に基く演算において測定精度をあげるための補正が必要であり、その補正用のソフトウェアを動作させる時間が必要となっていた。そのため、測定結果を出すために時間が長くかかっていた。また、プラスチック等に微少に(1000ppm以下)含まれる金属の検出は、蛍光X線装置の分析精度では測定が困難であった。
【0003】
また、材料中に偏在する物質についてはX線が照射される面から遠くにあると、その物質特有に発生する蛍光X線が弱くなり、測定できないことがあるという欠点があった。
これらの改善策として、被測定物を粉にした後プレスして測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。図9はこの方法による測定方法を示すための説明図であって、測定部分の断面図である。
【特許文献1】特公平6−43974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような被測定物を粉にした後にプレスして測定する方法では、被測定物の中に存在する微量物質を均一な状態で粉の中に分散させることは難しい。つまり、粉をプレスして測定した場合、被測定物の中に偏在する物質の測定に時間がかかり、また正確な量を測定することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、被測定物に存在する微量物質の測定を短時間でかつ正確に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物質測定方法は、被測定物を高温に熱して柔らかくする溶融ステップと、被測定物をプレスするプレスステップと、被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定ステップとを備えている。
この方法では、溶融ステップとプレスステップによって、被測定物である材料の測定面が平らになり、蛍光X線の発生が均一になる。この結果、短時間でも精度良く、材料中の物質を測定することができる。
【0007】
溶融ステップでは、被測定物を攪拌することが好ましい。材料を温めて柔らかくしながら攪拌することによって、微量物質が材料全体に分散される。その結果、X線投射後に材料から発生する微量物質の蛍光X線量が増えて、微量物質を精度良く測定することができる。
【0008】
本発明に係る物質測定装置は、被測定物を高温に熱し柔らかくする溶融手段と、被測定物をプレスするプレス手段と、被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定手段と、被測定物を前記各手段間で移動させる移動手段とを備えている。
この装置では、溶融手段とプレス手段によって、被測定物である材料の表面の均一化が進む。その結果、測定時間が短くなり、さらに測定精度が向上する。
【0009】
被測定物を攪拌する攪拌手段をさらに備えていることが好ましい。攪拌手段によって、微量物質が被測定物中に均一に分散させられる。
移動手段は回転テーブルを含んでいてもよい。移動手段はコンベアを含んでいてもよい。
【0010】
測定手段は、移動手段により被測定物が測定手段に移動させられて所定位置に設置されたことを検出して、測定を開始することが好ましい。したがって、測定手段が短縮される。
本発明に係る物質測定方法は、被測定物を高温に熱し有機物をガス化して減量化させるガス化ステップと、被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定ステップとを備えている。
【0011】
この方法では、ガス化ステップによって、プラスチック等の有機物をガス化され、含有微少金属の含有濃度が高くなる。したがって、微少金属を精度良く測定できる。
ガス化ステップと測定ステップとの間に、被測定物をプレスするプレスステップをさらに備えていることが好ましい。プレスステップによって、被測定物である材料の表面の均一化が進む。
【0012】
本発明に係る物質測定装置は、蛍光X線分析方法を用いた物質測定装置であって、被測定物を高温に熱し有機物をガス化するガス化手段と、被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定手段と、被測定物を各手段間で移動させる移動手段とを備えている。
【0013】
この装置では、ガス化手段によって、プラスチック等の有機物をガス化され、含有微少金属の含有濃度が高くなる。したがって、微少金属を精度良く測定できる。
被測定物をプレスするプレス手段をさらに備えていることが好ましい。プレス手段によって、被測定物である材料の表面の均一化が進む。
【0014】
移動手段は回転テーブルを含んでいてもよい。移動手段はコンベアを含んでいてもよい。
測定手段は、移動手段により被測定物が測定手段に移動させられて所定位置に設置されたことを検出して、測定を開始することを特徴とする。したがって、測定時間が短縮される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の物質測定装置は、測定面を平らにして蛍光X線の発生を均一化させることにより、短時間でも精度良く材料中の物質を測定することができる。
また、材料を温めて柔らかくしながら攪拌することによって、微量物質が材料全体に分散される。したがって、X線投射後に材料から発生する微量物質の蛍光X線量が増えて、その結果、材料に含まれる微量物質を精度良く測定することができる
また、プラスチック等の有機物をガス化して微少金属の含有濃度を高めることで、微少金属を精度良く測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の物質測定装置は、試料にX線を照射する前に、被測定物の試料に様々な加工を施すことに特徴を有するものであり、たとえば試料の一例であるプラスチックを、加工装置のプレス装置でプレスして、X線が照射される面を平らにする。プラスチックは、プレスする前に粉にしておくとさらに良い。
【0017】
また被測定物の試料に熱を加えることにより、試料の一例であるプラスチックを正確に成型する加工を施す。
さらに、被測定物の試料を熱で熱し、溶融させて、攪拌することにより、試料中の微量物質が材料全体に均一な状態で分散されるため、微量物質の含有量を正確に測定することが可能となる。
【0018】
また、被測定物の試料に金属等の塊が混入している場合は、溶融させて攪拌している間に、下側(X線照射側)に金属等は沈殿し、入ってはならない微少金属の測定確率がアップする。
また、プラスチック等の被測定物を高温にして有機物をガス化することに特徴を有するものであり、焼成後加工装置のプレス機でプレスする。この結果、第1に、被測定物の容量が小さくなり、第2に、X線が照射される面を平らにすることにより測定精度がアップする。
【0019】
これらの測定方法を実践する物質測定装置の具体的な動作を、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の物質測定装置の実施の形態の一例の平面の断面図であって、1は回転テーブル、2〜5はそれぞれ動作を行う装置(ステーション)である。被測定物である試料は、回転テーブル1によって各ステーションを移動するように構成されている。その各装置は、2は被測定物設置ステーション、3は溶融ステーション、4はプレスステーション、5は測定ステーションである。
【0020】
また6は被測定物を入れるための容器、7は被測定物、9はヒーター、10はカバーAである。
図2は同装置の正面の部分断面図であって、1〜7および9、10は図1と同様であり、さらに8は攪拌棒、11はベース、12はカバー駆動部、13は取付板、14はカバーB、15はプッシャー、16は被測定物検出センサー、17はカバーC、18はセンサー、19はX線管、20は検出器、21は回転テーブル駆動部である。また、図示はしていないが、各ステーションと、回転テーブル駆動部21、カバー駆動部12、被測定物検出センサー16などの各機器は、一つの制御部につながっており、この制御部へ各機器から情報が送られ、またこの制御部からの信号により、それぞれの機器が動作するようにコントロールされている。
【0021】
この物質測定装置の動作を以下に説明する。
被測定物7を被測定物設置ステーション2において設置し、この物質測定装置を稼動させると、回転テーブル駆動部21で回転テーブル1を回転させ、被測定物7を溶融ステーション3に移動する。次にカバーA10がカバー駆動部12により下降し、溶融ステーション3はカバーA10で覆われる。
【0022】
溶融ステーション3のヒーター9により、被測定物7は熱せられる(図3のステップS1)。このヒーター9は電熱線や電磁波を利用することができる。攪拌が必要な被測定物7は、攪拌棒8が下降して攪拌され、被測定物7の中に偏在する微少物質を均一に分布させる。攪拌棒8が上昇後カバーA10がカバー駆動部12で上昇させられた後、再び回転テーブル1が回転し、被測定物7はプレスステーション4に移動する。
【0023】
溶融攪拌が不要なものは、予め人が判断し投入時にインプットしておけば、溶融攪拌せずに測定することも可能である。
また、溶融の具合に応じて撹拌が必要か否かを制御部が判断することも可能である。その場合は、溶融のみ行って撹拌せずに次のステーションに移動させることも可能である。
【0024】
カバーB14が下降し、プレスステーション4はカバーB14で覆われる。プッシャー15が下降し、被測定物7をプレスし、測定し易い形状を作り上げる(図3のステップS2)。すなわちX線が照射される面である被測定物7の底面を平らにする。なお被測定物が入った容器6はX線を通過させるとともに熱にも強いガラスを利用して作られ、被測定物7が入る内面の下側を平らに仕上げてある。
【0025】
プレス終了後、プッシャー15が上昇した後にカバーB14がカバー駆動部12で上昇させられ、その後回転テーブル1が回転し、被測定物7は測定ステーション5に移動する。
次にカバーC17が下降して、測定ステーション5はカバーC17で覆われる。カバーC17が確実に閉まったことをセンサー18で検知すると、被測定物7があることを被測定物検出センサー16は検出する。この結果、制御部が即座に測定を開始する。
【0026】
すなわち、X線管19からX線が照射され、容器6を貫通して被測定物7に照射される。X線が照射された被測定物7からは、2次X線とも呼ばれる蛍光X線が発生し、この蛍光X線を検出器20で検出する(図3のステップS3)。
測定終了後、カバーC17がカバー駆動部12によって上昇させられ、回転テーブル1が回転し、被測定物7は被測定物設置ステーション2に移動する。
【0027】
被測定物7は、被測定物設置ステーション2において除去され、次に新しい被測定物7を設置することにより引き続き測定を行うことができる。
また、同じ被測定物で再度測定を行う場合には、被測定物7は、被測定物設置ステーション2では止められずに、溶融ステーション3、もしくはプレスステーション4、もしくは測定ステーション5に移される。
【0028】
回転テーブル駆動部21は、被測定物7の状態を、測定ステーション5において測定された結果などから判断することができ、その状態に応じて被測定物7を適切なステーションに自動的に移動させることができる。たとえば、一度測定ステーション5において測定された後で、測定結果から被測定物7の溶融が十分に行われていないと判断したら(図4のステップS4)、回転テーブル1の移動により、測定ステーション5から溶融ステーション3に被測定物7を移動させ、そこで被測定物7を再溶融する(図4のステップS5)。同様に、被測定物7の測定面の状態が良くないと判断したら(図4のステップS6)、プレスステーション4に被測定物7を移動させ、そこで被測定物7を再プレスする(図4のステップS7)。回転テーブル1の回転方向は一定方向でなくてもよく、測定時間を短くするように自由に回転ができる。
【0029】
以上のように、溶融ステーション3にて被測定物7に50℃から200℃の熱をヒーター9で加えて柔らかくした後にプレスすることにより、被測定物7を上手く成型することができる。また、ガラスの容器6の下面を鏡面仕上げにしておくことにより被測定物の面も平らになり、X線照射により蛍光X線の発生を均一化させることができる。
【0030】
また、測定ステーション5において蛍光X線装置にかける前に、被測定物7を120℃から220℃にヒーター9で熱し、溶融させた後、攪拌棒8で容器6の中の被測定物7を攪拌することにより、含有微少物質が被測定物7の中で均一に分散された状態になる。被測定物7の中の含有微少物質が均一に分散された状態で測定されるため、含有微少物質量を正確に測定できるという効果がある。
【0031】
また、被測定物7をプッシャー15でプレスして表面を平らにすることによって、測定ステーション5においてX線を照射する面の状態が平らになる。この結果、蛍光X線の発生量が一定になり測定精度が良くなり、測定した後補正したり、測定時間を長くしたりする必要がなくなるという効果がある。
【0032】
さらに本実施の形態の物質測定装置を用いることにより、被測定物7を被測定物設置ステーション2に設置すると、自動的に被測定物7を溶融ステーション3に移動し、被測定物7を120℃から220℃にヒーター9で熱し溶融させながら攪拌棒8で容器6の中の被測定物7を攪拌する。これにより、含有微少物質が被測定物7の中で均一に分散された状態になる。その後、被測定物7は、プレスステーション4にてプッシャー15にてプレスされる。これにより、被測定物7の中の含有微少物質が均一に分散された状態でプレスされる。以上のように、自動的に、溶融→プレスを連続して行うため、含有微少物質量を自動的に常に同一条件で正確に測定できるという効果がある。
【0033】
以上のように、本実施の形態の物質測定装置では、各機能を果たす装置(ステーション)を別々に持たせてそれぞれ動作させると共に、各ステーション間を移動手段を使って被測定物を移動させることができる。また、各ステーションの動作状態や、被測定物の状態を一つの制御手段によって管理することで、被測定物を適切なステーションに移動させることができるので、X線による測定の前に、被測定物の状態を最適なものとすることができる。この結果、本実施の形態の物質測定装置では、蛍光X線による物質測定を、正確で精度が高く、しかも短時間で行うことを実現することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図5は、本発明の物質測定装置の実施の形態の一例の正面の断面図であって、2は被測定物設置ステーション、3は溶融ステーション、4はプレスステーション、5は測定ステーション、6は容器、7は被測定物、8は攪拌棒、9はヒーター、10カバーA、14はカバーB、15はプッシャー、16は被測定物検出センサー、17はカバーC、18はセンサー、19はX線管、20は検出器、22はコンベアである。また、(実施の形態1)と同様、図示はしていないが、各ステーションと、コンベア22、カバー駆動部12、被測定物検出センサー16などの各機器は、一つの制御部につながっており、この制御部へ各機器から情報が送られ、またこの制御部からの信号により、それぞれの機器が動作するようにコントロールされている。
【0035】
被測定物7を被測定物設置ステーション2に設置してコンベアを稼動させると、被測定物7が入った容器6が溶融ステーション3に移動する。カバーA10がカバー駆動部12aにより下降し、溶融ステーション3はカバーA10で覆われる。
溶融ステーション3のヒーター9により被測定物7は熱せられる。このヒーター9は電熱線や電磁波を利用することができる。攪拌が必要な被測定物7は攪拌棒8が下降し、攪拌して被測定物7の中に偏在する微少物質を均一に分布させる。攪拌棒8が上昇後、カバーA10がカバー駆動部12により上昇させられ、その後、コンベア22が駆動し、被測定物7はプレスステーション4に移動する。
【0036】
カバーB14が下降し、プレスステーション4はカバーB14で覆われる。プッシャー15が下降し、被測定物7をプレスし測定し易い形状、すなわちX線が照射される面を平らに加工される。なお容器6はX線を通過させるとともに熱にも強いガラスを利用し、また被測定物7が入る内面の下側を平らに仕上げてある。
【0037】
プレス終了後プッシャー15が上昇した後カバーB14がカバー駆動部12で上昇させられた後コンベア22が駆動し被測定物7は測定ステーション5に移動する。
カバーC17が下降し、測定ステーション5はカバーC17で覆われる。カバーC17が確実に閉まったことをセンサー18で検知するとともに被測定物7があることを被測定物検出センサー16で検出し、即座に測定を開始する。
【0038】
X線管19からX線が照射され容器6を貫通し被測定物7に照射され発生した蛍光X線を検出器で検出する。
測定終了後カバーC17がカバー駆動部12で上昇させられた後コンベア22が駆動し被測定物7は被測定物設置ステーション2に移動する。被測定物7を除去し新しい被測定物7を設置することにより引き続き測定を行うことができる。
【0039】
このように(実施の形態1)の回転テーブルによって被測定物が移動される物質測定装置にくらべ、本実施の形態のコンベアタイプによる被測定物を移動させる物質測定装置では、その構造がコンパクトで簡単な構造で作りやすく、また操作が簡単である。
(実施の形態3)
図6は、本発明の物質測定装置の実施の形態の一例の平面の断面図であって、1は回転テーブル、2〜5はそれぞれ動作を行う装置(ステーション)であり、被測定物である試料は回転テーブル1によって各ステーションを移動するように構成されている。その各装置は、2は被測定物設置ステーション、3aは焼成ステーション、4はプレスステーション、5は測定ステーションである。
【0040】
また6は被測定物を入れるための容器、7aは被測定物、9はヒーター、10はカバーAである。
図7は同装置の正面の部分断面図であって、1〜7aおよび9、10は図6と同様であり、さらに8aは排気部、11はベース、12はカバー駆動部、13は取付板、14はカバーB、15はプッシャー、16は被測定物検出センサー、17はカバーC、18はセンサー、19はX線管、20は検出器、21は回転テーブル駆動部である。また、図示はしていないが、各ステーションと、回転テーブル駆動部21、カバー駆動部12、被測定物検出センサー16などの各機器は、一つの制御部につながっており、この制御部へ各機器から情報が送られ、またこの制御部からの信号により、それぞれの機器が動作するようにコントロールされている。
【0041】
この物質測定装置の動作を以下に説明する。
被測定物7aを被測定物設置ステーション2において設置し、この物質測定装置を稼動させると、回転テーブル駆動部21で回転テーブル1を回転させ、被測定物7aは焼成ステーション3aに移動する。次にカバーA10がカバー駆動部12により下降し、焼成ステーション3aはカバーA10で覆われる。
【0042】
焼成ステーション3aのヒーター9により被測定物7は焼かれる。このヒーター9は電熱線や電磁波を利用することができる。有機物をガス化した後カバーA10がカバー駆動部12で上昇させられた後、再び回転テーブル1が回転し、被測定物7aはプレスステーション4に移動する。
【0043】
プレスが不必要なものは、予め人が判断し投入時にインプットしておけば、プレスせずに測定することも可能である。
また、焼成の具合に応じてプレスが必要か否かを制御部が判断することも可能で、その場合は、焼成のみ行ってプレスせずに次のステーションに移動させることも可能である。
【0044】
カバーB14が下降し、プレスステーション4はカバーB14で覆われる。プッシャー15が下降し、被測定物7aをプレスし、測定し易い形状を作り上げる。すなわちX線が照射される面である被測定物7aの底面を平らにする。なお被測定物が入った容器6はX線を通過させるとともに熱にも強いガラスを利用して作られ、被測定物7aが入る内面の下側を平らに仕上げてある。
【0045】
プレス終了後、プッシャー15が上昇した後カバーB14がカバー駆動部12で上昇させられ、その後回転テーブル1が回転し、被測定物7aは測定ステーション5に移動する。
次にカバーC17が下降して、測定ステーション5はカバーC17で覆われる。カバーC17が確実に閉まったことをセンサー18で検知すると、被測定物7aがあることを被測定物検出センサー16は検出し、即座に制御部が測定を開始する。
【0046】
すなわち、X線管19からX線が照射され、容器6を貫通して被測定物7aに照射される。X線が照射された被測定物7aからは、2次X線とも呼ばれる蛍光X線が発生し、この蛍光X線を検出器20で検出する。
測定終了後、カバーC17がカバー駆動部12で上昇させられ、回転テーブル1が回転し、被測定物7aは被測定物設置ステーション2に移動する。
【0047】
被測定物7aは、被測定物設置ステーション2において除去され、次に新しい被測定物7aを設置することにより引き続き測定を行うことができる。
また、同じ被測定物で再度測定を行う場合には、被測定物7aは、被測定物設置ステーション2では止められずに、焼成ステーション3a、もしくはプレスステーション4、もしくは測定ステーション5に移される。
【0048】
回転テーブル駆動部21は、被測定物7aの状態を、測定ステーション5において測定された結果などから判断することができ、その状態に応じて被測定物7aを適切なステーションに自動的に移動させることができる。たとえば、一度測定ステーション5において測定された後で、測定結果から被測定物7aの焼成が十分に行われていないと判断したら、回転テーブル1の移動により、測定ステーション5から焼成ステーション3aに被測定物7aを移動させる。同様に、被測定物7aの測定面の状態が良くないと判断したら、プレスステーション4に被測定物7aを移動させる。回転テーブル1の回転方向は一定方向でなくてもよく、測定時間を短くするように自由に回転ができる。
【0049】
以上のように、焼成ステーション3aにて被測定物7aに200℃から800℃の熱をヒーター9で加えてガス化した後に、被測定物7aをプッシャー15でプレスして表面を平らにすることによって、測定ステーション5においてX線を照射する面の状態が平らになる。この結果、蛍光X線の発生量が一定になり測定精度が良くなり、測定した後補正したり測定時間を長くしたりする必要がなくなるという効果がある。
【0050】
さらに本実施の形態の物質測定装置を用いることにより、被測定物7aを被測定物設置ステーション2に設置すると、自動的に被測定物7aを焼成ステーション3aに移動し、被測定物7aを200℃から800℃にヒーター9で熱し焼成させた後排気部8aで容器6の中のガスを排気する。有機物をガス化することにより、被測定物7aの中の微少物質の含有率が高くなる。その後、被測定物7aは、プレスステーション4にてプッシャー15にてプレスされて、被測定物7aのX線が当たる部分が平らになる。この実施形態でも、含有微少物質量を自動的に常に同一条件で正確に測定できるという効果がある。
【0051】
以上のように、本実施の形態の物質測定装置では、各機能を果たす装置(ステーション)を別々に持たせてそれぞれ動作させると共に、かくステーション間を移動手段によって被測定物を移動させることができる。また、各ステーションの動作状態や、被測定物の状態を一つの制御手段によって管理することで、被測定物を適切なステーションに移動させることができるので、X線による測定の前に、被測定物の状態を最適なものとすることができる。この結果、本実施の形態の物質測定装置では、蛍光X線による物質測定を、正確で精度が高く、しかも短時間で行うことを実現することができる。
(実施の形態4)
図8は、本発明の物質測定装置の実施の形態の一例の正面の断面図であって、2は被測定物設置ステーション、3aは焼成ステーション、4はプレスステーション、5は測定ステーション、6は容器、7aは被測定物、8aは排気部、9はヒーター、10カバーA、14はカバーB、15はプッシャー、16は被測定物検出センサー、17はカバーC、18はセンサー、19はX線管、20は検出器、22はコンベアである。また、(実施の形態1)と同様、図示はしていないが、各ステーションと、コンベア22、カバー駆動部12、被測定物検出センサー16などの各機器は、一つの制御部につながっており、この制御部へ各機器から情報が送られ、またこの制御部からの信号により、それぞれの機器が動作するようにコントロールされている。
【0052】
被測定物7を被測定物設置ステーション2に設置してコンベアを稼動させると、被測定物7aが入った容器6が焼成ステーション3aに移動する。カバーA10がカバー駆動部12aにより下降し、焼成ステーション3aはカバーA10で覆われる。
焼成ステーション3aのヒーター9により被測定物7は焼かれる。このヒーター9は電熱線や電磁波を利用することができる。有機物をガス化した後カバーA10がカバー駆動部12で上昇させられた後、コンベア22が駆動し、被測定物7aはプレスステーション4に移動する。
【0053】
カバーB14が下降し、プレスステーション4はカバーB14で覆われる。プッシャー15が下降し、被測定物7aをプレスし測定し易い形状、すなわちX線が照射される面を平らに加工される。なお、容器6は、X線を通過させるとともに熱にも強いガラスを利用し、また被測定物7aが入る内面の下側を平らに仕上げてある。
【0054】
プレス終了後プッシャー15が上昇した後カバーB14がカバー駆動部12で上昇させられた後に、コンベア22が駆動して被測定物7aは測定ステーション5に移動する。
カバーC17が下降し、測定ステーション5はカバーC17で覆われる。カバーC17が確実に閉まったことをセンサー18で検知するとともに被測定物7aがあることを被測定物検出センサー16で検出し、即座に制御部が測定を開始する。
【0055】
X線管19からX線が照射され容器6を貫通し被測定物7aに照射され発生した蛍光X線を検出器20で検出する。
測定終了後にカバーC17がカバー駆動部12で上昇させられた後、コンベア22が駆動し被測定物7aは被測定物設置ステーション2に移動する。被測定物7aを除去して新しい被測定物7aを設置することによって、引き続き測定を行うことができる。
【0056】
このように(実施の形態3)の回転テーブルによって被測定物が移動される物質測定装置にくらべ、本実施の形態のコンベアタイプによる被測定物を移動させる物質測定装置では、その構造がコンパクトで簡単な構造で作りやすく、また操作が簡単である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、いろいろな製造会社、税関、空港または港での各種素材・各種部品の製造時の受け入れ検査、または出荷検査において、いろいろな物に含まれる微量物質の測定を高精度でかつ高速に行うことを可能とするもので、大いに有用できるものである。
また、連続性ある測定装置であるので、大量の検査物に対する検査を扱うのに適するものである。特にリサイクル産業において、各種の廃棄物に対する検査には有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】被測定物をプレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するために回転テーブルをもちいた装置の平面の断面図(実施の形態1)
【図2】被測定物をプレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するために回転テーブルをもちいた装置の正面の断面図(実施の形態1)
【図3】物質測定装置の動作を説明するフローチャート(実施の形態1)
【図4】物質測定装置の動作を説明するフローチャート(実施の形態1)
【図5】被測定物をプレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するためにコンベアをもちいた装置の正面の断面図(実施の形態2)
【図6】被測定物を焼成後プレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するために回転テーブルをもちいた装置の平面の断面図(実施の形態3)
【図7】被測定物を焼成後プレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するために回転テーブルをもちいた装置の正面の断面図(実施の形態3)
【図8】被測定物を焼成後プレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するためにコンベアをもちいた装置の正面の断面図(実施の形態4)
【図9】被測定物を焼成後プレス成型した後蛍光X線で含有微少物質を測定するための従来の装置の正面の断面図(従来例)
【符号の説明】
【0059】
1 回転テーブル(移動手段)
2 被測定物設置ステーション
3 溶融ステーション(溶融手段)
3a 焼成ステーション(ガス化手段)
4 プレスステーション(プレス手段)
5 測定ステーション(測定手段)
6 容器
7 被測定物
7a 被測定物
8 攪拌棒(攪拌手段)
8a 排気部
9 ヒーター
10 カバーA
11 ベース
12 カバー駆動部
13 取付板
14 カバーB
15 プッシャー
16 被測定物検出センサー
17 カバーC
18 センサー
19 X線管
20 検出器
21 回転テーブル駆動部
22 コンベア(移動手段)
30 装置本体
31 カバー
32 プレスされた被測定物
33 テーブル
34 センサー
35 検出器
36 X線管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を高温に熱して柔らかくする溶融ステップと、
前記被測定物をプレスするプレスステップと、
前記被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定ステップと、
を備えたことを特徴とする物質測定方法。
【請求項2】
前記溶融ステップでは、前記被測定物を攪拌することを特徴とする、請求項1に記載の物質測定方法。
【請求項3】
被測定物を高温に熱し柔らかくする溶融手段と、
前記被測定物をプレスするプレス手段と、
前記被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定手段と、
前記被測定物を前記各手段間で移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする物質測定装置。
【請求項4】
前記被測定物を攪拌する攪拌手段をさらに備えている、請求項3に記載の物質測定装置。
【請求項5】
前記移動手段は回転テーブルを含むことを特徴とする請求項3または4に記載の物質測定装置。
【請求項6】
前記移動手段はコンベアを含むことを特徴とする請求項3または4に記載の物質測定装置。
【請求項7】
前記測定手段は、前記移動手段により前記被測定物が前記測定手段に移動させられて所定位置に設置されたことを検出して測定を開始することを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の物質測定装置。
【請求項8】
被測定物を高温に熱し有機物をガス化して減量化させるガス化ステップと、
前記被測定物に含まれる物質を蛍光X線分析方法によって測定する測定ステップと、
を備えたことを特徴とする物質測定方法。
【請求項9】
前記ガス化ステップと前記測定ステップとの間に、前記被測定物をプレスするプレスステップをさらに備えたことを特徴とする、請求項8に記載の物質測定方法。
【請求項10】
蛍光X線分析方法を用いた物質測定装置であって、
被測定物を高温に熱し有機物をガス化するガス化手段と、
前記被測定物に含まれる物質を測定する測定手段と、
前記被測定物を前記各手段間で移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする物質測定装置。
【請求項11】
前記被測定物をプレスするプレス手段をさらに備えていることを特徴とする請求項10に記載の物質測定装置。
【請求項12】
前記移動手段は回転テーブルを含むことを特徴とする請求項10または11に記載の物質測定装置。
【請求項13】
前記移動手段はコンベアを含むことを特徴とする特許請求項10または11に記載の物質測定装置。
【請求項14】
前記測定手段は、前記移動手段により前記被測定物が前記測定手段に移動させられて所定位置に設置されたことを検出して測定を開始することを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の物質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−30174(P2006−30174A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173318(P2005−173318)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】