説明

特性判定方法、記録装置、評価方法

人間又は動物の生体の構造の画像から、この構造の1又は複数の構造/機能特性を判定する特性判定方法では、画像に基づいて、構造の構造モデルを生成する。構造モデルに基づいて、第1の生体力学的量を算出する。構造モデルを変更して、変形モデルを生成する。変形モデルに基づいて、第2の生体力学的量を算出する。第1及び第2の生体力学的量を比較し、構造の構造/機能特性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2004年9月30日に出願された米国の仮特許出願番号第60/614,605号、発明の名称「骨の構造的質の評価(ASSESSMENT OF BONE STRUCTURAL QUALITY)」の優先権を主張し、この特許文献の開示内容は、引用により本願に援用される。本発明は、米国国立衛生研究所の研究助成金、契約番号AR41481号に基づく国庫補助によって発明された。米国政府は、本発明に対する所定の権利を有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、人間又は動物の生体の骨又は他の構造の構造/機能特性を評価する評価方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国国立骨粗鬆症財団及び米国国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)によれば、骨粗鬆症は、国民の健康を損なう大きな脅威であり、推定4400万人の米国人、50歳以上に限れば、人口の半数以上の骨量が低下している。米国では、今日、既に1000万人が骨粗鬆に罹患していると推定され、3400万人の米国人は、骨量が不足し、骨粗鬆症に罹患する危険が高いと言われている。人口の高齢化が進み、国民が長寿になれば、骨粗鬆症になる人口も増え、骨粗鬆症の治療のためのコストは増加し続ける。また、関節炎や心血管疾患等の症状にも同様のことが言える。骨関節炎は、約2000万人の米国人が患っている。また、約5700万人の米国人が、ある種の心血管疾患を患い、1年あたり約100万人(米国の全死亡者の42%)が死亡していると推定されている。しかしながら、心臓発作を予測することは困難である。そこで、患者に応じて、リスクの高さを予測する技術の向上が望まれている。
【0004】
骨粗鬆症:骨粗鬆症の診断及び測定のための現在の臨床基準である二重エネルギX線吸収(dual-energy x-ray absorptiometry:DXA(「デキサ」と発音される))スキャンは、骨の生体力学的完全性を評価するための技術として、様々な制約を有する。第1に、DXAスキャンは、立体的な体積を有する骨密度情報の二次元投影である。したがって、ミネラル密度の面的測定は、ミネラルがどのように構成され、骨内で立体的にどのように分布しているかといった潜在的に重要な構造が無視される。DXAは、骨梁から皮質を区別せず、背部の要素の存在のために、背骨の測定には不向きである。
【0005】
定量的コンピュータ断層撮影法(Quantitative Computed Tomography:QCT、CAT又はCTスキャンの一種)は、3次元的であり、DXAスキャンの2次元的性質に起因する制約を克服している。CTスキャンは、3次元手的な性質のために、例えば、骨の前部領域又は後部領域、若しくは、皮質、内部皮質及び骨梁等、領域又は骨の種類によってミネラル密度を区別することができる。しかしながら、QCTは、単なる放射線評価であり、骨密度及び形状の測定値を提供するだけである。したがって、QCTスキャンで観察される変化を解釈することは困難である。
【0006】
如何なる構造の機械的挙動も、基本的には、その形状及び材料特性によって支配されている。しかしながら、骨及び人体の殆どの器官に特徴的であるように、形状が不均等であり、材料特性の空間的分布が不均等である、不均一な構造の総合的な機械的応答を算出することは困難である。また、このような形状及び材料特性分布の複雑性のために、このような応答の経時的な又は治療による変化を理解することも難しい。
【0007】
骨全体は、それぞれが固有の物質的な強度特性を有する骨梁及び皮質骨といった2つの異なる種類の骨組織を含む。したがって、骨全体(例えば、椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端)の強度特性は、骨の平均密度、質量及び寸法だけではなく、骨内における骨密度の空間的に変化する分布、骨の立体的形状、及び皮質に対する骨梁の相対的役割等によって決まる。更に、生体内の骨全体には、複雑且つ多軸的に負荷が掛かり、変化する負荷条件の下で破損することがある。例えば、骨粗鬆症の腰骨の骨折は、例えば、歩行等の習慣的な活動に比べて、骨に対して多くの異なる負荷条件を作り出す転倒の際に生じやすい。また、骨の強度は、これらの異なる負荷条件毎に異なる。背骨の骨折については、脊椎骨の強度は、前方に曲がっている場合と、真っ直ぐな場合とでは大きく異なる。
【0008】
心臓血管:心臓血管及びこれに関連する応用例では、体内の多くの血管領域を評価するするために、例えば、デジタル減算血管造影法(digital subtraction angiography:DSA)等の技術が用いられる。現在では、DSAに代えて、より侵襲性が低いCTベースの血管造影法も臨床的に用いられている。骨粗鬆症の骨の解析にQCTを適用した場合と同様に、CT血管造影法は、基底にある臨床的な問題の生体力学的側面を明らかにせず、したがって、CT画像における情報を最大限に利用できない。血管における血流の制限は、CT血管造影法による単純な視覚的分析で観察される変化より微妙な血管の変化に影響を受ける場合もある。したがって、CT画像に基づく血管の生体力学的解析によって、臨床的な問題を更に洞察することができる。
【0009】
移植システム:生体に対する様々な種類の移植を行い、負傷又は罹患した生体の一部を修復することができる。例えば、米国では、年間約15万の腰及び膝のプロテーゼが移植されており、全世界ではこの倍のプロテーゼ移植が行われている。医師は、患者のために最適な移植を選択する必要があるが、所定の医学的徴候について、選択できる機器の選択肢が多ければ、その選択は困難である。構造/機能特性に関する情報を有する患者固有のモデルを用いることができれば、適切な移植を選択する際に、有益な情報が提供される。同様の問題は、例えば、ステント等、心臓血管の治療にも適用され、すなわち、治療を成功させるには、ステントのサイズを適切に選択することが重要となる。このサイズの決定は、患者特有の生体力学的構造/機能特性に基づいて行うことが望ましい。
【0010】
他の応用例:患者固有の構造/機能特性を明らかにする必要がある他の応用例として、関節炎及び脊椎骨折の治療がある。関節軟骨に加わる応力は、関節の下層の骨の密度及び構造に依存すると考えられるため、関節炎については、関節の生体力学的振る舞い、例えば、骨密度、サイズ及び構造に関する患者固有の詳細な情報等を知ることによって、診断及び治療の評価が改善される。背骨の骨折の治療は、骨折した椎体に骨セメントを注入することによって行われる。システムの硬さは、注入された骨セメントの量及び位置に依存するため、このような施術は、施術により得られる骨−骨セメントシステムの構造/機能特性を知ることによって最適化できる。また、金属又は他の種類のプロテーゼを用いる骨折の治療は、寸法及び形状等の因子、プロテーゼの材料、生体部分の密度及び構造等、骨移植システムの構造的な応答を評価することによって改善できる。これにより、医師は、施術の前に、提案された外科的処置の適合性を評価でき、この結果、個々の患者について、最適な処置を選択することができる。現在のところ、殆どの医師は、質的な経験のみに頼り、様々なオプションを評価するための量的な基準を有していない。骨移植システムの構造/機能特性に関する様々な種類の知識によって、治療の結果が改善されることが予想される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、人間又は動物の生体の構造の画像から人間又は動物の生体の構造の1又は複数の構造/機能特性を判定する特性判定方法を提供する。特性判定方法は、人間又は動物の生体の構造の画像を受信するステップを有する。そして、この画像に基づいて、構造の構造モデルを生成する。そして、構造モデルに基づいて、第1の生体力学的量を算出する。そして、この構造モデルを変更し、変形モデルを生成する。そして、変形モデルに基づいて、第2の生体力学的量を算出する。そして、第1及び第2の生体力学的量を比較する。比較の結果は、デジタルメディアに保存される。
【0012】
特性判定方法は、更に、比較に基づいて、1又は複数の構造/機能特性を判定するステップを有していてもよい。特性判定方法は、更に、負荷条件を変更してもよく、特性判定方法を後に繰り返し、構造の1又は複数の構造/機能特性に関して、治療、老化又は病気若しくはこれらの組合せの1又は複数の作用を判定してもよい。
【0013】
この構造は、例えば、骨等の筋骨格組織又は器官、又は例えば、心臓又は血管等の心臓血管組織又は器官を含んでいてもよく、これらは移植された部位を有していても、有していなくてもよい。変形モデルは、均質化されたモデルを含んでいてもよく、特性判定方法は、構造モデルの1又は複数の要素に平均密度を割り当てるステップを更に有していてもよい。
【0014】
変形モデルは、基準モデルを含んでいてもよく、特性判定方法は、構造モデルの1又は複数の要素に基準密度を割り当てるステップを更に有していてもよい。変形モデルは、副構造モデル(sub-structure model)を含んでいてもよく、特性判定方法は、構造モデルから構造の一部を取り除くステップを更に有していてもよい。取り除かれる構造の一部は、周辺構造を含んでいてもよい。
【0015】
また、変形モデルは、軸モデル又は湾曲モデルを含んでいてもよい。変形モデルは、均質化されたモデル、副構造モデル、軸モデル、湾曲モデル、及び基準モデルの2つ以上の組合せを含んでいてもよい。
【0016】
変形モデルは、境界条件が変更された構造モデルの変形を含んでいてもよい。境界条件は、力、圧力、曲げモーメント、変形、偏位、速度、加速度、流量、温度、エネルギ、歪み又は応力又はこれらの組合せを含んでいてもよい。
【0017】
特性判定方法は、更に、構造をスキャニングし、構造の画像を生成するステップを更に有していてもよい。スキャニングは、コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)及び磁気共鳴撮影(magnetic resonance imageMRI)スキャンを含んでいてもよく、構造モデルは、構造の有限要素モデルを含んでいてもよい。また、特性判定方法は、第1の画像が取得された時刻とは異なる時刻に構造の第2の画像を受信するステップを有していてもよい。第2の画像に基づいて、構造の第2の構造モデルを生成してもよい。第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出してもよい。第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成してもよい。そして、第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出し、比較は、第3及び第4の生体力学的量の比較を含んでいてもよい。比較は、第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、第3及び第4の生体力学的量の比較の結果との比較を含んでいてもよい。
【0018】
特性判定方法は、構造とは異なる生体の部分の第2の画像を受信するステップを有していてもよい。第2の画像に基づいて、第2の構造モデルを生成してもよい。第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出してもよい。第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成してもよい。第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出し、比較は、第3及び第4の生体力学的量の比較を含んでいてもよい。比較は、第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、第3及び第4の生体力学的量の比較の結果との比較を含んでいてもよい。
【0019】
本発明は、他の実施の形態として、人間又は動物の生体の構造に対する治療の作用を判定する評価方法を提供する。評価方法は、第1の期間において、生体の構造の画像を受信するステップと、画像に基づいて、構造の構造モデルを生成するステップと、構造モデルに基づいて、第1の生体力学的量を算出するステップと、構造モデルを変更して、変形モデルを生成するステップと、変形モデルに基づいて、第2の生体力学的量を算出するステップと、第1及び第2の生体力学的量を比較するステップと、第1及び第2の生体力学的量の比較に基づいて、1又は複数の構造/機能特性を判定するステップと、第2の期間に取得された構造の第2の画像を受信するステップと、第2の画像に基づいて、構造の第2の構造モデルを生成するステップと、第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出するステップと、第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成するステップと、第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出するステップと、第3及び第4の生体力学的量を比較するステップと、第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、第3及び第4の生体力学的量の比較の結果とを比較し、構造の老化、病気又は治療に関する作用を判定するステップとを有する。
【0020】
本発明に基づく方法は、人間又は動物の治療に適用できる。また、本発明は、生体内及び生体外でのスキャニングにも適用できる。臨床検査は、人間の生体の検査のみを目的としているが、本発明は、動物及び死体についても、治療、老化及び病気の影響を調べることができる。
【0021】
また、本発明は、プロセッサによって読み込み可能なコードを有する1つ以上のプロセッサによって読出可能な記録装置を提供する。このプロセッサによって読出可能な記録装置は、上述した何れかの方法を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、当業者が本発明を理解できるように、本発明者が想定する本発明の最良の実施の形態について説明する。なお、当業者は、以下の実施の形態の様々な変形例を想到できる。これらの変形例、等価物及び代替物は、本発明の精神及び範囲内にある。
【0023】
骨折のリスクが高い患者を予測し、及び治療の効能を評価するには、骨密度のDXA測定値では限界があり、したがって、年齢、病気及び治療によって、「骨の品質」の如何なる側面が変化したかを定量化する手法の実現が望まれている。本発明は、このような骨全体の品質の定量化を実現する。本発明により、骨粗鬆症の診断、治療の経過の監視、新たな治療の評価が改善され、したがって、骨粗鬆症の患者にとって有益である。
【0024】
本明細書では、骨の品質を定義するために「構造/機能特性(structure-function characteristics)」という用語を用いる。「構造/機能特性」とは、撮像された骨全体の構造の測定値と、骨全体の何らかの生体力学的振る舞いとの間のあらゆる関係を意味する。また、本明細書で用いる「構造」という用語には、人間又は動物の生体の任意の部分、例えば、器官、骨又は心臓又は椎間板又は関節、又は腰、膝関節、又はこれらの任意の器官の一部が含まれると解釈される。また、構造には、例えば、骨梁、軟骨組織、椎間板、靭帯、腱、血管等の組織、又は例えば、骨髄、血液、又は他の何らかの体液等の流体成分を含む生体の何らかの組織も含まれる。したがって、本明細書で用いる「構造」という用語は、任意の物理的寸法を有する生体内のあらゆる部分が含まれる。また、構造は、生体の一部に移植されたインプラントを含んでいてもよく、例えば、骨移植システム大腿骨近位部に移植された人工の臀部インプラント、又は血管内に移植された心臓血管ステント等を含んでいてもよい。構造の形状、形態、質量又は密度を特徴付ける如何なる定量的測定値用いて構造を定量化し、構造/機能関係を特徴付けてもよい、例えば、体重、伸長、骨密度骨密度分布(骨内の骨密度値の空間的分布の標準偏差によって特徴付けられる)、臀部の軸の長さ(hip-axis length)、血管の直径、血管の軸方向に沿った厚さの変化(血管の軸方向に沿った厚さ値の標準偏差によって特徴付けられる)、軟骨組織厚、筋肉の向きと長さ、筋肉の断面積、骨梁組織の数、骨梁組織の接続、又は体液の粘度等の測定値によって構造を特徴付けてもよい。
【0025】
また、「機能」という用語は、画像の生体力学的解析によって算出された、構造の何らかの生体力学的特徴を指す。「機能」には、以下に限定されるものではないが、例えば、強さ、硬さ、耐疲労性、破砕強度、強度、変形、破砕のリスク、流体せん断応力及び圧力等の機械的パラメータが含まれる。温度及び熱輸送に関連する生体力学的問題では、温度勾配、熱流束、及び熱膨脹ストレス等のパラメータも「機能」の定量的測定値となる。
【0026】
本発明の「構造/機能特性」は、構造の定量的測定値と、機能の定量的測定値との間の何らかの数学的関係を意味する。例えば、複数の骨の強度値と密度値の間のプロットである密度/強度の関係は、骨について知られている構造/機能関係である。単一の骨又は骨組織の一片の密度に対する強度の比率は、構造/機能特性の別の表現である。構造/機能特性の他の具体例として、血管の直径と、血管壁のせん断応力との間の関係がある。
【0027】
更に、本発明の「構造/機能特性」は、構造の画像のモデルの変化を用いて算出された何らかの生体力学的パラメータ間の又はa)構造の画像のモデルの変化を用いて算出された他の何らかの生体力学的パラメータ又はb)例えば、上述したような構造の定量的測定値又は機能の定量的測定値の何れかの任意の組合せ間の何らかの数学的関係を示す。例えば、人間の椎体のモデルから2mmの周囲の骨を取り除いた後の骨梁組織の強度と、(完全な)椎体の強度との比率も、構造/機能特性であるとみなすことができる。
【0028】
現在も多くの新薬が開発されているが、本発明の好ましい実施の形態に基づく評価ツールは、この開発に著しく有益である。本明細書では、このようなツールを提供する手法を開示する。一実施の形態においては、情報を臨床的に用いて、個々の患者のための治療を最適化することができる。現在、異なる生物作用を有する多くの骨粗鬆症薬物療法が市販されている(例えば、アレンドロネートは、骨吸収を抑制し、PTHは、新たな骨形成を促進する)。より多くの治療法が開発されると、患者に投与できる薬剤の選択肢も多くなる。本明細書は、臨床医が、特定の患者について、各薬物療法を最適化できるツールを提供する。
【0029】
本発明は、骨の強度の生体力学的構造/機能特性を定量化し、骨粗鬆症等の病気の診断、観察、評価及び治療の一部にこの情報を利用するための様々な手法を提供する。これは、パラメータを制御しながら、条件を様々に変更して、骨の強度又は他の生体力学的性質を定量化し、患者の骨を調べることによって実現される。好ましい実施の形態では、個々の患者について管理された手法で骨又は骨データを変更し、経時的な骨粗鬆症の診断、又は治療法の評価のための患者固有のデータを生成する。正常な、健康な骨に由来するデータベースに対して、又は同じ骨の以前の振る舞いに対して、骨の構造/機能特性の比較を行うことにより、骨量、密度又は強度等の単一のメトリックを用いた場合に比べて、病気の評価及び治療効果について、より詳細で有益な情報が提供される。骨の構造/機能特性の変化は、特定の時刻において定量化でき(横の比較)及び経時的にも定量化でき(縦の比較)、特に経時的な定量化は、骨の強度の治療法、又は病気又は老化の進行に関連する生体力学的メカニズムを理解するために有益である。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態に基づく手法は、単なる骨の強度及び骨粗鬆症の検査に比べて汎用性が高い。この手法は、骨の強度に関連する応用例、及び組織又は器官の機械的挙動が臨床的に重要な他の組織及び器官に関連する応用例に適用可能である。例えば、心血管疾患では、血管の構造/機能関係の分析に基づいて、石灰化したプラーク又は血管破裂の存否によって凝固のリスクを定量化し、心臓病の診断を改善させることができる。関節炎では、軟骨組織の生体力学的解析によって、外科的施術及び薬物療法の応答の予測が向上する。また、本発明によって、患者の病気の観察及び治療の監視も向上する。また、本発明により、人工関節、若しくはバイオマテリアル又は組織再生、又は何らかの物質の移植に対する生体の生体力学的応答も詳細に観察でき、特定の患者に関して、移植されたアイテムの適合性等を検証することができる。
【0031】
患者毎に、非観血的に骨の強度を評価する技術及びモデリングが望まれている。このようなモデルに関して、好ましくは、パラメータを制御した検査を用いて、更なるデータを取得し、これを用いて、患者に応じた手法で、治療を診断又は評価し、又は病気の進行を追跡し、又は組織又は器官の何らかの変化を追跡する。本発明の包括的な概念は、骨梁等の組織及び大腿骨近位部又は椎体等の器官の両方に適用できる。また、本発明は、患者特有の画像を用いて、非観血的な手法で機械的挙動を評価する生体力学的システムに適用できる。
【0032】
具体的には、例えば、骨、軟骨組織、腱又は他の筋骨格組織、又は血管等の生物学的構造又は物質に関する患者特有の有限要素モデルに関してパラメータ研究を行い、生体力学的構造/機能特性を特徴付ける手法を開示する。例えば、以下に限定されるものではないが、MRI、CT、超音波、QCT、マイクロCT、マイクロMRI、有限要素モデリング等の患者固有の画像を取得する3次元又は2次元の撮影の任意の組合せ、又はビーム理論又は連続体力学の原理を用いた他の解析モデリング、又は機械的応答を生成する材料力学、流体力学、熱輸送、質量輸送又は熱力学等、如何なる非観血的な技術を用いて機械的挙動を評価してもよい。
【0033】
例えば、骨全体の分析については、本発明に基づく好適な技術は、骨全体の様々な要素が強度にどのように貢献するかについて、量的な測定値を提供する。これらの関係のうちで非常に強い相関関係の存在(図2参照)により、骨の強度が正常に見えても、正常な骨の構造/機能挙動の典型的な範囲内に収まらない骨を特定することができる。この手法は、単一の強度メトリック(圧縮強度等)の使用に比べて、骨の生体力学的状態について、より正確な尺度を提供し、骨全体の構造/機能特性を変更する老化、病気、及び薬物療法又は他の治療の生体力学的効果の評価について、追加的且つ固有の洞察を行うことができる。この分析は、所定の時点で行ってもよく、経時的に繰り返し行ってもよい。
【0034】
本発明に用いる有限要素モデリング又は他の何らかの機械的分析の患者特有の性質は、組織又は器官に適用される非観血的な撮像によるこのようなモデルの生成によって得られ、このような撮像には、例えば、以下に限定されるものではないが、コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)、二重エネルギX線吸収(dual-energy x-ray absorptiometry:DXA)、ポジトロン放射断層撮影(positron emission tomography:PET)、マイクロCT、周辺CT、定量的CT(quantitative CT:QCT)、又は患者の組織又は器官の2次元画像又は3次元画像を生成する何らかのスキャン又はスキャンの組合せが含まれる。組織又は器官のコンピュータモデルが生成された後、例えば、典型的には、硬度又は強度等、関連する機械的特性が計算又は算出される。また、スキャンを分析することによって、組織又は器官の密度及び/又は形状又は形態の様々な側面を定量化できる。
【0035】
そして、様々な1つ以上の制御された手法を用いてコンピュータモデルを変更し、これにより、機械的特性値を算出する。相互に及び/又は密度及び形状プロパティに対して機械的特性をプロットすることによって様々な構造/機能特性が定量化される。これらのある数学的関数、例えば、密度と強度との比率、又は導出された1つの機械的特性と、他の特性、強度又は密度との比率も構造/機能特性の要素を表す。主な機械的特性(例えば、強度又は硬度)に加えて、組織/器官状態を評価するために構造/機能特性を用いることも有益である。これにより、元のモデルに関して、パラメータを制御しながら、患者固有の医療画像から新たなデータを取得し、これらのデータは、病気の診断、治療、変化、又は老化した状態の評価に用いることができる。
【0036】
例えば、骨梁のマイクロ構造に関して骨粗鬆症薬物療法の効果を評価する際に、患者の手首の高解像度マイクロCTスキャンを用いた有限要素モデリングを実行することができる。コンピュータモデルを用いて患者の骨に関してパラメータが制御された研究を実行することによって、幾何学的なマイクロ構造における石灰化の分布におけるあらゆる変化の個別の役割を抽出することができる。これにより、薬物療法の生体力学的作用を更に深く調べることができる。同様に、患者の心臓の臨床的CTスキャンから得られた情報を用いて、異なる石灰化の度合いの下で、血管の物理的一体性を評価することもできる。
【0037】
以下では、薬物療法の評価のうち、椎体の解析に適用される処理の詳細な具体例を説明する。なお、本発明は、このような特定用途に限定されるわけではない。
【0038】
まず、患者をQCTスキャンし、患者の椎体のデジタル画像を生成する。次に、例えばクロフォード(Crawford)他の論文に開示されている手続きに従って、脊椎骨又は例えば、L1又はT9椎体等、対象となる椎体のQCT画像を有限要素モデルに変換する。簡潔に言えば、スキャンの形状情報を用いて、骨の有限要素メッシュが生成される。そして、スキャンの骨密度情報を用いて、要素毎に、モデル内の各有限要素の材料特性が算出される。骨組織の弾性及び強度特性は、モデル内の各骨要素に割り当てられる(Crawford Trans Orthopaedic Research Society 2004; or Faulkner et al..: "Effect of bone distribution on vertebral strength: assessment with patient-specific nonlinear finite element analysis." Radiology 179:669-674, 1991)。適用された負荷に関連する有限要素モデル境界条件(finite element model boundary conditions)がモデルに適用され、コンピュータがこのモデルを解決し、強度又は対象となる他の構造特性、例えば、硬度又は変形を判定する。
【0039】
次に、元のモデルに関して、複数のパラメータ研究を行い、モデルを変更し、これにより得られる強度の値(又は骨全体の機械的挙動に関するパラメータ)を算出する。図1は、このようなパラメータ研究の具体例を示しており、この場合、7つの個々の有限要素解析を実行し、5つの比率を含む合計13個の結果パラメータを算出している。
【0040】
このような分析の1つでは、外側の2mmの骨を取り除き、これにより得られる骨梁組織部の強度を算出する。これにより、骨梁組織部の構造的な役割が定量化される(図1の変数trab)。図2は、女性の健康なグループの椎体の構造/機能関係の具体例を示しており、ここでは、強度値は、被験者毎のFEMによって算出され、正常な人間の脊椎骨のグループについて、周囲の骨が2mm浸食された場合の強度を示している。このグラフは、13個の健康な椎体のサンプルについて、骨梁部の強度対椎体全体の強度をプロットしたものである。ここでは、老化、病気又は治療のために経時的に生じる個々の振る舞いの変化について、3個の仮定的状況を示している。この関係において、高いR値(R=0.99)は、この関係からの比較的小さい偏りが、正常な構造/機能挙動から外れる振る舞いを示すことを表している。このような偏りは、骨全体の「品質」の変化として解釈でき、この情報は、臨床的に有用である。
【0041】
また、図2は、老化、病気又は治療のため生じる構造/機能特性の変化について、3つの可能な仮定的状況を示している。このように変化を分析することによって、変化の生体力学的メカニズムを理解し、骨全体の品質の変化を洞察し、実際に定量化することができる。まず、初期の時点であるポイントAから、個々のサンプルは、3つのポイントに移行できる。ポイントCは、「正常な」構造/機能挙動の回帰直線上にプロットされているため、品質の変化はない。ポイントDは、回帰直線の下に位置するため、骨梁組織部の強度は、比較的低く、構造/機能挙動が変化したことを意味する。ポイントBでは、骨梁組織部の強度は比較的高く、これも、構造/機能挙動の変化を意味する。何れの場合も、椎体全体の強度の増加量は同じであり、したがって、何れの場合も、脊椎の強度の最終的な値は同じである。例えば、薬物研究において、ポイントBの結果が得られた場合、薬物療法によって、骨梁組織部の強度が好適に高められ、総合的な強度増進効果が達成されたことが確認される。この情報は、薬物療法の生体力学的作用を明らかにするために役立つ。
【0042】
このモデルを変更して、副構造モデルが生成され、この副構造モデルから、必ずしも周囲の骨でなくてもよいが、骨のある一部を取り除く。例えば、椎体のモデルでは、骨梁の内核(inner core)を取り除き、取り除かれる内核の直径を順次大きくし、骨全体から取り除かれる内部の骨の量を変化させる。
【0043】
モデルの他の変形例では、モデル内の骨材料の一部又は全部に、その椎体の平均密度を割り当てる。これにより、骨が均質化され、脊椎内の密度の変化の一部又は全部が除外される。この結果、椎体の骨材料の材料特性も均質化され、椎体全体について同じ値が使用される。そして、この新たなモデルの強度(図1のhom)が算出される。この強度値と、以前に完全な椎体について算出した強度との間の比率(図1のstd)は、構造/機能特性の量的な側面として、脊椎骨内の密度の変化の重要度の測定値を提供する。通常の椎体の場合std/hom比は、1未満である(図3)。密度の変化の一部又は全部を無視するために、均質化の度合いを変更することもできる。
【0044】
骨がより均質になると、この比率の値は1に近付き、骨は、構造的な見地から、より最適になる。したがって、1に近い値は、構造的に効率的な骨を示し、より低い値は、最適ではない骨を示す。薬物療法によって、この比率が変化することがあり、これは、治療による骨の総合的な構造/機能特徴が変化したことを意味する。例えば、治療によってこの比率が高まった場合、これは、治療によって、骨の構造的効率性が高まり、すなわち、所定の量の骨量の強度が強くなったことを意味する。理論的には、骨の強度が弱くなっても、骨の構造的効率性が高くなる場合もある。したがって、std/hom比は、単なる強度の測定値より優れた追加的情報を提供する。
【0045】
また、この情報を用いて、患者毎に最適な治療を選択することができる。例えば、所定の患者について、この比率の値が0.90であった場合、この患者は、構造的に効率的な骨を有しているので、この患者については、(患者の骨の強度が弱い場合であっても)薬物療法によって、骨の空間的分布を変更する必要がないことがわかる。一方、この比率の値が0.70の患者の場合、骨の構造的効率性は低い。このような患者の場合、治療によって、骨密度の空間的分布を均質化し、所定の骨量の強度を最適化することが望ましい。実際には、医師は、患者からこの比率の測定値を取得し、その値が1にどれくらい近いかに応じて、(図3Bに示すデータ点を用いて、「正常」であるか否かを判定してもよい。)、患者に適切な種類の薬物療法を勧めることができる。また、これらの新たなメトリックを用いることも有益である。
【0046】
図3Aのグラフは、均質化された強度に対して標準強度をプロットしたグラフである。これは、構造/機能特性の他の側面である。丸で囲まれた点は、主回帰直線から外れているため、他の標本の平均的な振る舞いから外れる振る舞いを示している。図3Bは、同じデータについて、標準強度と均質化された強度との比率を、標準強度に対してプロットしたグラフである。これは、構造/機能特性の他の側面である。この比率の値が1に近付くほど、脊椎骨が構造的に効率的な振る舞いをすることが示され、低い値は、密度分布が劣った脊椎骨を表す。図3Aと同様に丸で囲まれた点は、異常値であることが遙かに明確である。水平線は、均質化された強度比率の平均値及び±2SD標準偏差を示し、これにより、図3Aでは明瞭ではなかった他の2つの異常値も特定できる。強調された標本は、強度の平均を僅かに下回っているのみであるが、均質な強度に対する標準値の比率が非常に低く、密度分布は、強度を提供するために効率的でないので、品質が劣っている。
【0047】
モデルの他の変形例では、モデル内の骨材料に所定の密度の基準値(例えば、100mg/cm、なお、実際の値は、任意である)を割り当てる。この手法により、脊椎内及び脊椎間の密度の変化を除外し、分析された脊椎骨の密度を同じにすることができる(均質化されたモデルでは、各脊椎骨には、それ自身の平均密度の固有値が割り当てられる)。この結果、脊椎骨内又は脊椎骨間には、材料特性に関する根本的な相違がなくなる。これにより得られるこれらのモデルの「基準(reference)」強度(図1)を骨間で比較した場合、相互の違いは、骨の形状に起因する。このように、この分析では、強度に関する骨形状の独立した効果を分離できる。異なる脊椎骨についての「基準」の強度と、「標準」の強度との比較は、構造/機能特性の定量化の他の具体例である。薬物療法により、ref強度測定値が変化することがあり、この変化は、形状のみの変化に起因する総合的な強度の変化を意味する。このパラメータは、骨の構造/機能特性の他の側面を表している。この測定値は、特に、骨等の複雑な幾何学的構造体では、形状の如何なる側面が強度に最も関連しているかを事前に知ることが困難である場合があるため、有用である。ref強度測定値は、形状の総合的な効果を統合し、したがって、特定の形状的特徴(高さ、幅等)を事前に知る必要はない。
【0048】
実際には、このような測定値は、診断又は治療の評価に役立つ。例えば、腰部の骨粗鬆症及び骨折のリスクの診断において、老化又は病気によって骨の形状がどう変化するかを評価するために、単一の形状的特徴を選択することは非常に困難である。これは、大腿骨近位部の形状が複雑なためである。ref強度測定値により、この制約がなくなる。したがって、他の実施の形態では、ref強度測定値を用いて、骨、又は他の器官又は組織の正味の幾何学的な生体力学的効果を定量化する。異なる時点におけるref強度の比較は、構造/機能特性の他の具体例である。
【0049】
モデルの他の変形例では、骨に関する負荷条件を変更できる。例えば、あるケースでは、曲げモーメントを骨に適用し、他のケースでは、一定の圧縮負荷と比較した。これら比率(図1のbend/axial)は、一方の負荷モードに対する他方の負荷モードの抵抗の相対的な測定値を提供する。例えば、薬物療法によってbend/axial比率が高くなったということは、治療によって、曲げに類する負荷に対する骨の抵抗が強くなったことを意味する。ここでも、この情報は、単なる骨の強度が向上したことを示す情報に比べて、治療にとってより有益な情報である。また、理論的には、治療(又は老化、病気)によって、骨の強度が低下しても、bend/axial比率が増加することもある。したがって、この比率は、単に強度の個々の測定値を考慮することに加えて、更に有益な情報を提供する。実際には、圧縮強度が正常であるが、bend/axialの値が低い患者は、骨折のリスクがより高いと考えられる。このように、好ましい実施の形態に基づき、診断及び治療の評価において、この比率を用いることは、非常に有益である。
【0050】
他の側面においては、骨材料特性、すなわちQCT又は他の何らかの医療的なスキャンを生体力学的有限要素モデル又は他の生体力学モデル(分析モデルを含む)に変換する際に用いられた入力特性に骨密度をマッピングするために用いられた関係は、薬物又は他の治療の作用を反映するように変更することができる。また、例えば、骨組織について、これらの関係の変化に関する情報を提供してもよい。このようにして、骨組織の材料特性に対する治療の効果を、骨全体の構造分析に統合でき、及び骨全体の強度に関する効果を定量化できる。また、材料特性について、密度/機械的特性関係が変更された骨と変更されていない骨との応答を比較することによって、特にこの変更に起因する強度の如何なる変化も分離することができる。これにより、椎体の機械的挙動の全体の強度に関して、骨材料の構造機能特性の変更の効果を定量化することができる。
【0051】
これらの分析において、モデルの変化に関連する負荷の割合は、生成された元のモデル(図1における標準モデル又は同様なモデル)に対する比較によって、定量化される。他の手法でデータを表現してもよく、例えば、変更されたモデルにおける負荷の大きさの絶対値、又は差分の絶対値対標準モデル又は他の何らかのモデルによってデータを表現してもよい。そして、分析されている骨のデータ点を母集団の応答に対して比較し、検査中の骨が構造/機能挙動の正常範囲内に収まるかを判定する。また、データ点は、同じ患者の以前の測定値に対して、経時的に比較することもできる。また、体内の他の部分の骨に対してデータ点を比較することもでき、例えば、一方が治療によって変更された個人の左右の大腿骨を比較してもよい。コンピュータプログラムを介して、全ての処理を自動化することが好ましい。
【0052】
図4のフローチャートは、好適な実施の形態及び変形例に基づいて、様々な組合せで実行できる処理を示している。
【0053】
1.患者の骨又は他の組織をCTスキャン又は定量的コンピュータ断層撮影により画像を取得する。
【0054】
2.骨又は他の構造の標準化された基準の向きを用いて、及びCTスキャンからの形状及び骨密度情報を用いて、骨又は他の構造の有限要素モデルを生成する。
【0055】
3.モデルを変更し、上述した変数を生成する。所望の生体力学的特性を求める。
【0056】
4.変形されたモデルの強度の相互の又は標準モデル強度との間の又は何れかの測定値と、形状密度又は形態の何らかの定量的測定値との間の関係を評価し、骨又は他の構造の構造/機能特性を定量化する。
【0057】
5.構造/機能関係の確立された基準と比較する。標準からの偏りは、対象となる特定の負荷条件について、異常な骨を示す。
【0058】
6.負荷条件を変更して、処理を繰り返す。
【0059】
7.経時的変化(例えば、薬物療法又は自然老化の作用)を分析する場合、第2の時点(すなわち、治療後又は一定期間経過後)のCTデータについて上述した処理を繰り返し、応答と、確立された基準値とを比較する。
【0060】
8.部分的な変化(例えば、生体の異なる部分に関する薬物療法の効果)を分析する場合、第2の生体の部分のCTデータについて上述した処理を繰り返し、応答を相互に、及び確立された基準に対して比較する。
【0061】
9.薬物療法又は他の治療を分析する場合、適切であれば、骨の組織材料特性に対する薬物の作用を反映するように、入力モデルにおける密度材料特性を仮定した関係を変更する。骨全体に対する薬物の効果を評価するために上述の分析を繰り返す。
【0062】
実際の臨床現場では、これらの処理は、好ましくは、コンピュータによって自動化され、すなわち、本発明の実施の形態に基づいてプログラミングされたソフトウェアがコンピュータによって実行される。そして、最終的な出力を含む処理の出力の一部及び/又は全部をデジタル媒体に保存してもよい。
【0063】
更に、異なる時点にマッピングすることができる骨の特定の点における生体力学的機能の変化を追跡することによって、年齢、病気又は治療の効果の評価に特異性を加えることができる。例えば、ある時点から他の時点への骨の局部的な領域の変化によって、どこの構造がどのように変化しているかをより詳細に区別することができる。第1の時点における対応する有限要素材料特性と共に第2の時点の有限要素の形状を用いれば、治療の幾何学的な作用を分離することができる。同様に、第1の時点における対応する有限要素形状と共に、第2の時点における有限要素の材料特性を用いれば、材料特性の変化及びその分布の作用を詳細に分離することができる。
【0064】
ここでは、本発明の概念について、骨、特に骨粗鬆症への応用例を用いて説明している。患者毎にパラメータが制御された研究を実行し、構造/機能特性と、母集団標準又は別の時刻の構造/機能特性とを比較する包括的な手法は、患者へのスキャン(例えば、QCT、pQCT、CT、マイクロCT、MRI、マイクロMRI、US、DXA、PET、エックス線及びこれらの任意の組合せを含む。)から生体力学的コンピュータモデルが生成される全ての分野に応用できる。また、生体力学的分析を用いて、強度又は対象となる他の生体力学的特徴(例えば、硬度、応力、変形、エネルギ吸収、疲労特性、耐久性、破砕強度、亀裂伝搬特性、流体応力、圧力)の測定値を非観血的に生成することができる。このような分析法は、有限要素法に制限されず、分析モデリング、ビーム理論又は複合ビーム理論、又は他の形式のビーム理論、破壊力学、複合材料分析、又は固体及び流体力学を含む連続体力学の一種、熱輸送及び質量輸送分析、動的分析又は他の機械的分析の一種、又は有限差分法を含む他の数値分析の一種等も含まれる。例えば、骨移植システムの分析では、骨/移植界面条件を変更し、又は骨及び/又は移植の材料特性を変更してもよい。血流分析のモデルでは、血管の弾性特性を変更してもよく、血流条件を変更してもよく、血管の形状を変更してもよく、血管間の合流点の形状を変更してもよく、又はプラーク又は他の遮蔽物の形状を変更してもよく、血流に障害を加えてもよい。何れの場合も、適切な医療画像及び工学理論が用いられる。
【0065】
また、本発明は、将来の可能な条件のリスク又は適合性を評価するために、将来の仮説的な変化のシミュレートにも適用できる。これは、手術の計画、薬物療法の決定及び予防療法の考慮に有用である。例えば、椎体形成術及びこれに類する医療的施術では、骨折を治療し、骨を補強するために、骨セメントを導入する。この場合、導入される骨セメントの量又は位置が異なるように患者の骨の画像ベースのモデルを変更することによって、想定された負荷条件の下で、これにより得られる骨全体の強度又は変形の変化を測定し、相互に又は導入される骨セメントの相対的な量に対してこの特徴をプロットすることによって、骨移植システムの構造/機能特性を定量化できる。この情報を用いて、患者にとって最適な治療を判定でき、すなわち、導入する骨セメント材料の量と、骨内に骨セメントを導入する位置とを適切に判断することができる。
【0066】
他の骨移植の具体例として、移植前の患者の骨の画像のモデルを、移植を含むように変更できる。そして、移植前後の生体力学的パラメータ、例えば、骨の応力等を比較することができる。また、移植されるプロテーゼの材料特性、形状、位置又は寸法を変更できる。そして、例えば、所定の負荷条件の組に対する骨の応力の低下を最小化する骨等、所定の基準に基づいて、移植を選択できる。これにより、外科医は、特定の患者について適切な移植構成を選択することができる。
【0067】
他の特定の具体例として、骨のマイクロCTスキャン又は骨のマイクロMRIスキャンから生成されたモデルの分析を用いる骨梁の分析に本発明を適用してもよい。ニューイット(Newitt)他(骨粗鬆症国際学会13:278−287,2002)には、患者の橈骨遠位端(手首)の高解像度MRIスキャンに由来する有限要素モデルを用いて、骨梁の異方性弾性特性を非観血的に推定する手法が開示されている。このような分析技術、若しくは画像から有限要素モデル又は他の種類の構造モデルを生成する他の技術を用いて、このようなモデルを管理された手法で変更し、構造/機能特性を定量化することによって治療の作用のメカニズムを判定することができる。ある変形例では、ニューイットの技術を用いて、患者の手首のマイクロMRIスキャンに基づいて、標準モデルを生成し、手首の骨梁の小さな標本を分離し、標準強度(又は同等な尺度)の分析を実行する。このモデルは、外側の骨組織の構造的な役割を判定するために、個々の骨梁組織の外側のボクセル(outer voxel)を取り除くことによって変形される。元のモデルの強度と、骨が取り除かれたモデルの強度との間の関係に基づき、骨の構造/機能特性が定量化される。他の変形例として、1つ以上の個々の骨梁組織を取り除き、又は追加してもよい。他の変形例として、特定の種類の薬物療法の可能な効果をシミュレートするために、骨の層を追加してもよく、又は様々な療法の作用に関する他の研究から既知である所定の基準に基づいて、骨を追加してもよい。他の変形例として、骨梁組織の表面に沿って小さい空洞を設け、総合的な機械的特性に対する骨吸収空間の効果を調べてもよい。他の変形例として、このような骨吸収空間に所定の材料を埋め込んだ場合の機械的特性を算出してもよい。なお、骨吸収空間の生成、個々の骨梁組織の削除、又は既存の骨吸収空間の埋め込みは、何れも、病気及び治療が骨梁の機械的特性に影響する可能性があるメカニズムである。他の変形例として、所定数の骨梁組織がなくなるまで、骨材料を取り除き、又はある所定の基準に基づいて、ある質量の骨を取り除いてもよい。何れの場合も、変更の前後の骨の機械的特性を算出し、構造/機能特性を定量化する。上述したような定量化は、診断ツールとして、又は治療の評価、若しくは新たな又は理解が不十分な治療の作用の検査のために実行してもよい。
【0068】
上述したような、パラメータを制御した研究によって、特定の患者毎に適切な治療を判定する技術が提供される。例えば、患者の骨は、個々の骨梁組織の支柱が損失しやすい場合があり、これを知ることにより、その患者にとって、ある治療が他の治療より適切であると判断できることがある。また、他の患者は、骨吸収阻害又は同様の治療に関連する小さな空洞の埋め込みの効果が低い場合もあり、このために、異なる種類の治療を勧めることもできる。
【0069】
また、マイクロCT及び有限要素モデリングを臨床的に用いて、及び新世代のマイクロCT及び周辺QCTスキャナ(例えば、Scanco社(Scanco, Inc)製のエクストリームCT(Extreme CT))を臨床的に用いて骨梁の強度と弾性特性を評価することができる。このような分析技術を用いて、患者毎に固有の骨梁マイクロ構造のモデルを生成することができる(図5参照)。そして、これらの画像を有限要素又は他のモデルに変換し、総合的な骨試料の強度又は硬度を算出することができる。通常、このような処理は、橈骨遠位端において行われるが、例えば、踵骨及び脛骨等の部位についても可能である。ストーバー(Stauber)他は、このような応用例の1つを開示している("A finite element beam-model for efficient simulation of large-scale porous structures." Comput Methods Biomech Biomed Engin.7:9-16, 2004)。この技術は、非観血的に行うことができ、又は患者から得られた生体組織検査に適用でき、又は基礎科学研究において死体に適用してもよく、前臨床試験研究において動物に適用してもよい。
【0070】
図6は、骨密度の変化を示す3DマイクロCTベースの有限要素モデルの典型的な断面を示している。このようなモデルに対して有限要素法分析を実行し、強度又は硬度又は他の機械的特性を非観血的に推定することができる。他の実施の形態では、パラメータが制御された研究を実行し、構造/機能特性を定量化してもよい。
【0071】
他の実施の形態では、マイクロCTスキャンから標準モデルを生成した後に、このモデルについて、一組のパラメータが制御された研究を実行する。上述のように、マイクロMRIモデルについても、同じような変形を作成することができる。CTスキャンは、MRIスキャンと異なり、骨組織の石灰化の度合いに関する定量的データを提供できる。したがって、他の制御された変形を行うことができ、例えば、骨全体の臨床的QCTモデルに関連して上述したhom分析と同様に、各ボクセルにおける骨密度を平均化し、幾つか又は全ての要素において平均化された骨密度を用いることができる。石灰化の空間的変化のあるモデルとないモデルとを比較することによって、石灰化の空間的分布の変化に関する機械的応答を抽出することができる。更なる変形例として、椎体のref強度測定値について上述した手法と同様の手法によって、患者の骨梁に固定された値の骨密度を割り当て、マイクロ構造の形状の効果を分離することもできる。
【0072】
図6は、マイクロCTを用いて約70ミクロンの空間分解能によって撮像された骨梁の5mm立方の標本の典型的な断面を示している。白い領域は、石灰化が進んだより密度が高い骨を表し、グレーの領域は、石灰化の程度が低い、低密度な領域を表している。黒い領域は、骨髄を表している。標本内における石灰化の空間的変化の独立した効果を評価するために、標本を均質化でき、すなわち、幾つか又は全ての要素に、同じ値の密度を割り当て、均質化された標本の強度と、均質化されていない同じ標本の強度とを比較することができる。
【0073】
本明細書に開示した技術によって、罹患している又は構造的に異常な骨を、より包括的に、より敏感に及び/又はより明確に特定できる。更に、本発明は、骨全体の強度に影響する老化、病気、様々な治療及び時間の経過を評価する処理を提供する。本発明の実施の形態は、骨全体だけではなく、生体力学的振る舞いが臨床的に注目される骨組織及び他の如何なる組織又は器官にも適用できる。
【0074】
心臓血管に本発明を適用すれば、MRI画像又はCT画像及びこれらの組合せを含む様々な形式の画像から患者の血管のモデルを生成できる。このようなモデルによって、患者固有の血管の形状を検査することができる。また、プラークの存在を明らかにすることもできる。そして、有限要素モデリング又は他の演算モデリングを用いて、せん断応力を含む血管内の応力を算出できる。仮定的な又は患者固有の血流状態を推定することもできる。
【0075】
このようなモデルに対する制御可能なパラメータの組を用いた研究によって、プラークの存在を完全又は部分的に取り除くことができ、これにより得られるストレス又は他の結果パラメータの変化を評価することができる。患者固有のモデルの他の変形例として、血管の材料特性を変更してもよく、プラークの空間的分布又は他の材料分布を部分的又は完全に追加又は除外することができる。他の変形例として、何らかの手法で血管の形状を追加、削減又は変更することもできる。同じ所定の形状特性について調べ、その幾何学的性質を用いた演算に対して応答を比較してもよい。他の変形例として、血流状態を変更してもよい。例えば、患者固有の血流の推定値を用いることに代えて、共通の「公称(nominal)」血流条件を患者に適用し、患者固有の血流と、「公称」血流条件との間の応答の差分を定量化してもよい。これに代えて、異なる種類の「公称」血流条件を患者に適用し、異なる負荷条件に対する応答の違いを定量化してもよい。これらは、病気の診断、又は老化、病気又は治療の評価のための追加的情報を提供するために患者固有のモデルを変更する一例に過ぎない。他にも多くの応用例及びモデルが利用できることは、当業者にとって明らかである。
【0076】
本発明は、当業者に明らかなように、ここに示した本発明の説明に基づいてプログラミングされた、従来の汎用用途の又は特定用途のデジタルコンピュータ又はマイクロプロセッサを用いて好適に実現することができる。
【0077】
また、ソフトウェア分野の知識を有する者には明らかであるが、ここに示した本発明の説明に基づいて、プログラマは適切なソフトウェアコーディングを容易に行うことができる。更に、当業者に明らかなように、本発明は、特定用途向け集積回路、又は従来の電気部品回路の適切なネットワークを相互接続することによっても実現できる。
【0078】
本発明は、コンピュータを制御して本発明の処理を行わせるために使用される命令を記録した記録媒体(媒体)であるコンピュータプログラム製品を含む。記録媒体には、以下に限定するものではないが、フロッピィディスク(商標)、ミニディスク(MD、商標)、光ディスク、DVD、CD−ROM、マイクロドライブ、光磁気ディスク、ROM、RAM、EPROM、DRAM、VRAM、フラッシュメモリ(フラッシュカードを含む)、磁気又は光カード、ナノシステム(分子メモリICを含む)、RAIDデバイス、遠隔データ記憶装置/アーカイブ/ウェアハウス、或いは命令及び/又はデータを記憶する任意の種類の適当な媒体又は装置が含まれる。
【0079】
本発明は、コンピュータにより読み取り可能な、任意の媒体に記憶され、汎用/専用コンピュータのハードウェア又はマイクロプロセッサを制御し、コンピュータ又はマイクロプロセッサを人であるユーザとインタラクトさせ、或いは他のメカニズムにより本発明の成果を利用する、ソフトウェアを含む。この種のソフトウェアは、限定する意味でなく、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、及びユーザアプリケーションを含む。更に、この種のコンピュータにより読み取り可能な媒体は上述したように、本発明を実施するソフトウェアを含む。
【0080】
本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、上述の好ましい具体例を様々な分野に応用し、又は変更できることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明は、添付の請求の範囲に基づき、上述した具体例とは異なる形態でも実現できることは明らかである。本発明は、本明細書に開示した実施の形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義した本発明の範囲及びその構造的及び機能的な等価物から逸脱することなく、これらの実施の形態を変形又は変更できる。
【0081】
以上では、好ましい実施の形態及び/又は特許請求の範囲の定義に基づいて実行される処理について、選択された活字のシーケンスを用いて記述した。なお、これらのシーケンスは、印刷の都合のために選択されたものであり、本発明の処理を実行する順序を特に指定することを意図しない。
【0082】
更に、本明細書の背景技術、課題を解決するための手段及び発明を実施するための最良の形態に引用した全ての文献は、好ましい実施の形態の変形例及び要素を開示するものとして、全て本願に引用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】骨の強度及び/又は骨の品質を判定するために用いられる脊椎の強度に関する有限要素パラメータ研究における結果変数を示す。
【図2】骨梁組織部強度に対して全体の脊椎の強度をプロットしたのグラフ図である。
【図3】図3Aは、均質化された強度に対して標準強度をプロットしたグラフ図であり、図3Bは、標準強度と均質化された強度との比率を、標準強度に対してプロットしたグラフ図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態の処理を示すフローチャートである。
【図5】骨梁のミクロ構造のバリエーションを示す図である。
【図6】個々の骨梁組織内で骨密度が変化する骨梁の断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間又は動物の生体の構造の画像から該人間又は動物の生体の構造の1又は複数の構造/機能特性を判定する特性判定方法において、
上記生体内の構造の画像を受信するステップと、
上記画像に基づいて、該構造の構造モデルを生成するステップと、
上記構造モデルに基づいて、第1の生体力学的量を算出するステップと、
上記構造モデルを変更して、変形モデルを生成するステップと、
上記変形モデルに基づいて、第2の生体力学的量を算出するステップと、
上記第1及び第2の生体力学的量を比較するステップと、
上記比較の結果をデジタルメディアに保存するステップとを有する特性判定方法。
【請求項2】
上記比較に基づいて、1又は複数の構造/機能特性を判定するステップを更に有する請求項1記載の特性判定方法。
【請求項3】
変更された負荷条件について、当該特性判定方法を繰り返すステップを更に有する請求項1記載の特性判定方法。
【請求項4】
当該特性判定方法を後に繰り返し、上記構造の1又は複数の構造/機能特性に関して、治療、老化又は病気若しくはこれらの組合せの1又は複数の作用を判定するステップを更に有する請求項1記載の特性判定方法。
【請求項5】
上記構造は、筋骨格組織、器官、関節又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項6】
上記構造は、骨を含むことを特徴とする請求項5記載の特性判定方法。
【請求項7】
上記構造は、心臓血管組織、器官又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項8】
上記構造は、心臓、血管又はこれらの両方を含むことを特徴とする請求項7記載の特性判定方法。
【請求項9】
上記変形モデルは、均質化されたモデルを含み、当該特性判定方法は、構造モデルの1又は複数の要素に平均密度を割り当てるステップを更に有することを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項10】
上記変形モデルは、基準モデルを含み、当該特性判定方法は、上記構造モデルの1又は複数の要素に基準密度を割り当てるステップを更に有することを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項11】
上記変形モデルは、副構造モデルを含み、当該特性判定方法は、上記構造モデルから構造の一部を取り除くステップを更に有することを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項12】
上記取り除かれる構造の一部は、周辺構造を含むことを特徴とする請求項11記載の特性判定方法。
【請求項13】
上記構造モデルは、上記構造の有限要素モデルを含むことを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項14】
上記変形モデルは、均質化されたモデル、副構造モデル及び2つの基準モデルの2つ以上の組合せを含むことを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項15】
上記変形モデルは、境界条件が変更された構造モデルの変形を含むことを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項16】
上記境界条件は、力、圧力、曲げモーメント、変形、偏位、速度、加速度、流量、温度、エネルギ、歪み又は応力又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項15記載の特性判定方法。
【請求項17】
上記構造をスキャニングし、上記構造の画像を生成するステップを更に有する請求項1記載の特性判定方法。
【請求項18】
上記スキャニングは、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴、DXA、X線レントゲン写真、超音波、PETスキャン又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項17記載の特性判定方法。
【請求項19】
上記第1の画像が取得された時刻とは異なる時刻に上記構造の第2の画像を受信するステップと、
上記第2の画像に基づいて、上記構造の第2の構造モデルを生成するステップと、
上記第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出するステップと、
上記第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成するステップと、
上記第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出するステップとを有し、上記比較は、上記第3及び第4の生体力学的量の比較を含むことを特徴とする請求項1記載の特性判定方法。
【請求項20】
上記比較は、上記第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、上記第3及び第4の生体力学的量の比較の結果との比較を含むことを特徴とする請求項19記載の特性判定方法。
【請求項21】
上記構造とは異なる生体の部分の第2の画像を受信するステップと、
上記第2の画像に基づいて、第2の構造モデルを生成するステップと、
上記第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出するステップと、
上記第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成するステップと、
上記第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出するステップとを有し、上記比較は、第3及び第4の生体力学的量の比較を含むことを特徴とするを有する請求項1記載の特性判定方法。
【請求項22】
上記比較は、第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、第3及び第4の生体力学的量の比較の結果との比較を含むことを特徴とする請求項21記載の特性判定方法。
【請求項23】
プロセッサによって読み込み可能なコードを有する1つ以上のプロセッサによって読出可能な記録装置において、上記プロセッサによって読み込み可能なコードは、人間又は動物の生体の構造の画像から該人間又は動物の生体の構造の1又は複数の構造/機能特性を判定する特性判定方法を実行させるように該1又は複数のプロセッサをプログラミングし、該特性判定方法は、
生体内の構造の画像を受信するステップと、
上記画像に基づいて、該構造の構造モデルを生成するステップと、
上記構造モデルに基づいて、第1の生体力学的量を算出するステップと、
上記構造モデルを変更して、変形モデルを生成するステップと、
上記変形モデルに基づいて、第2の生体力学的量を算出するステップと、
上記第1及び第2の生体力学的量を比較するステップと、
上記比較の結果をデジタルメディアに保存するステップとを有する記録装置。
【請求項24】
上記特性判定方法は、上記比較に基づいて、1又は複数の構造/機能特性を判定するステップを更に有することを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項25】
上記特性判定方法は、変更された負荷条件について、該特性判定方法を繰り返すステップを更に有することを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項26】
上記特性判定方法は、該特性判定方法を後に繰り返し、上記構造の1又は複数の構造/機能特性に関して、治療、老化又は病気若しくはこれらの組合せの1又は複数の作用を判定するステップを更に有することを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項27】
上記構造は、筋骨格組織、器官、関節又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項28】
上記構造は、骨を含むことを特徴とする請求項27記載の記録装置。
【請求項29】
上記構造は、心臓血管組織、器官又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1記載の請求項23記載の記録装置。
【請求項30】
上記構造は、心臓、血管又はこれらの両方を含むことを特徴とする請求項29記載の記録装置。
【請求項31】
上記変形モデルは、均質化されたモデルを含み、上記特性判定方法は、構造モデルの1又は複数の要素に平均密度を割り当てるステップを更に有することを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項32】
上記変形モデルは、基準モデルを含み、上記特性判定方法は、上記構造モデルの1又は複数の要素に基準密度を割り当てるステップを更に有することを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項33】
上記変形モデルは、副構造モデルを含み、上記特性判定方法は、上記構造モデルから構造の一部を取り除くステップを更に有することを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項34】
上記取り除かれる構造の一部は、周辺構造を含むことを特徴とする請求項33記載の記録装置。
【請求項35】
上記構造モデルは、上記構造の有限要素モデルを含むことを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項36】
上記変形モデルは、均質化されたモデル、副構造モデル、軸モデル、湾曲モデル、及び基準モデルの2つ以上の組合せを含むことを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項37】
上記変形モデルは、境界条件が変更された構造モデルの変形を含むことを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項38】
上記境界条件は、力、圧力、曲げモーメント、変形、偏位、速度、加速度、流量、温度、エネルギ、歪み又は応力又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項37記載の記録装置。
【請求項39】
上記構造をスキャニングし、上記構造の画像を生成するステップを更に有する請求項23記載の記録装置。
【請求項40】
上記スキャニングは、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴、DXA、X線レントゲン写真、超音波、PETスキャン又はこれらの組合せを含むことを特徴とする請求項39記載の記録装置。
【請求項41】
上記特性判定方法は、上記第1の画像が取得された時刻とは異なる時刻に上記構造の第2の画像を受信するステップと、上記第2の画像に基づいて、上記構造の第2の構造モデルを生成するステップと、上記第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出するステップと、上記第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成するステップと、上記第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出するステップとを有し、上記比較は、上記第3及び第4の生体力学的量の比較を含むことを特徴とする請求項23記載の記録装置。
【請求項42】
上記比較は、上記第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、上記第3及び第4の生体力学的量の比較の結果との比較を含むことを特徴とする請求項41記載の記録装置。
【請求項43】
上記特性判定方法は、上記構造とは異なる生体の部分の第2の画像を受信するステップと、上記第2の画像に基づいて、第2の構造モデルを生成するステップと、上記第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出するステップと、上記第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成するステップと、上記第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出とを有し、上記比較は、第3及び第4の生体力学的量の比較を含むことを特徴とするを有する請求項23記載の記録装置。
【請求項44】
上記比較は、第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、第3及び第4の生体力学的量の比較の結果との比較を含むことを特徴とする請求項43記載の記録装置。
【請求項45】
人間又は動物の生体の構造に関して、老化、病気又は治療の効果を評価するための評価方法において、
第1の期間において、上記生体の構造の画像を受信するステップと、
上記画像に基づいて、該構造の構造モデルを生成するステップと、
上記構造モデルに基づいて、第1の生体力学的量を算出するステップと、
上記構造モデルを変更して、変形モデルを生成するステップと、
上記変形モデルに基づいて、第2の生体力学的量を算出するステップと、
上記第1及び第2の生体力学的量を比較するステップと、
上記第1及び第2の生体力学的量の比較に基づいて、1又は複数の構造/機能特性を判定するステップと、
第2の期間に取得された上記構造の第2の画像を受信するステップと、
上記第2の画像に基づいて、上記構造の第2の構造モデルを生成するステップと、
上記第2の構造モデルに基づいて、第3の生体力学的量を算出するステップと、
上記第2の構造モデルを変更して第2の変形モデルを生成するステップと、
上記第2の変形モデルに基づいて、第4の生体力学的量を算出するステップと、
上記第3及び第4の生体力学的量を比較するステップと、
第1及び第2の生体力学的量の比較の結果と、第3及び第4の生体力学的量の比較の結果とを比較し、上記構造の老化、病気又は治療に関する効果を評価及び/又は診断するステップとを有する評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−514368(P2008−514368A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534740(P2007−534740)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/034892
【国際公開番号】WO2006/039358
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(501109828)ザ リージェント オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】