説明

現像剤収納容器、現像装置および画像形成装置

【課題】新規現像剤の補給構造において物流コストの上昇や構造の複雑化を抑えることができると共に、新規現像剤の残留を少なく抑えて補給湯コストの上昇を低減することができる構成を備えた現像装置を提供する。
【解決手段】減溶可能な柔軟性部材で構成された袋体を用いた現像剤収納手段31に減溶時の収縮変形を可能にする屈曲部としての折り目31A1を設け、現像剤収納手段31の搭載側33には折り目31A1に対向する位置に屈曲させやすくする凸部33Aを設け、現像剤収納手段内を負圧吸引することにより補給現像剤を気流搬送する構成29を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、二成分系現像剤を用いる場合の現像剤交換構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリあるいはプリンタさらには印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に担持されている静電潜像に対してトナーなどの現像剤を用いて可視像処理が行われる。
【0003】
可視像処理に用いられる現像剤の一つとして、トナーとキャリアとからなる二成分系現像剤が知られている。
二成分系現像剤を用いる場合には、可視像処理に用いられることで消費されたトナーを補給して現像剤濃度を一定に保つことが必要であり、このための構成として次のようなものが提案されている。
【0004】
新規トナーを収容しているトナーボトルやトナータンク等のハード容器からなるトナー収容容器を現像装置におけるトナー補給部に設置する構成、さらには、トナー補給部に設置されたトナー収容容器から吐出されるトナーを吸引負圧を生起させて現像槽内に導入する構成(例えば、特許文献1乃至3)、また、トナー収容容器として袋状の容器を用いてトナーを補給する構成(例えば、特許文献4乃至8)、そして、トナー収容容器からトナーを吐出させる構成としてはトナー収容容器に非対称往復動作を行わせることによる振動により容器下面に形成されている開口からトナーを流出させる構成(例えば、特許文献9)、現像槽と近接する位置にトナー貯蔵容器を配置し、主として重力によりトナーの流出により現像槽内に新たなトナーを補給する構成(例えば、特許文献10乃至12)がある。
【0005】
二成分系現像剤はトナーが消費されると、現像剤濃度の変化を防止するために新規トナーが補給される一方、キャリアは概ね新規トナーの補給に拘わらす使用されることが多い。このため、キャリアの経時的な変化として、攪拌頻度の増加による劣化がある。キャリアの劣化には、キャリア自体の摩滅などによる疲労、帯電性を上げるために表面に形成されている被覆層の破損さらには、トナーが表面に融着してしまうトナーフィルミングなどがあり、これら劣化現象によりトナーの帯電能力を損ねることがある。
このようなキャリアの劣化によるトナーの帯電能力の低下を防止するために、トナーの補給とは別にキャリアを補給することにより過剰となった現像剤を現像層内から排出して劣化したキャリアを含む現像剤を新規な現像剤に置換するトリクル現像方式と称される現像剤交換システムが提案されている。
【0006】
この方式においては、現像装置にトナーとキャリアとの混合剤(通称、プリミックス現像剤と称されている)を補給する方式(例えば、特許文献13乃至16)、また、現像装置にトナーとキャリアとを独立して補給し、現像槽内の余剰現像剤を回収する方式(例えば、特許文献17乃至19)、さらに、トナー消費量に対応したトナー補給、補給トナー量に対応したキャリアの補給及び現像剤の排出をそれぞれ制御する方式(例えば、特許文献20、21)、さらには、キャリア補給部を複数の現像装置に対して共通化した方式(例えば、特許文献22,23)、そして現像手段と異なる箇所に配置されているトナー及びキャリアを、その混合比を調合して現像槽内に供給する方式(例えば、特許文献24,25)がある。
【0007】
【特許文献1】特開平7−219324号公報
【特許文献2】特開平7−219329号公報
【特許文献3】特開平9−15957号公報
【特許文献4】特開平11−282238号公報
【特許文献5】特開平12−47464号公報
【特許文献6】特開平12−14789号公報
【特許文献7】特開平12−351445号公報
【特許文献8】特開平12−356898号公報
【特許文献9】特開平9−244372号公報
【特許文献10】特開平7−20701号公報
【特許文献11】特開平7−20703号公報
【特許文献12】特開平7−114260号公報
【特許文献13】特公平2−21591号公報
【特許文献14】特開平9−166912号公報
【特許文献15】特開平9−218575号公報
【特許文献16】特開平9−244376号公報
【特許文献17】特開平9−204105号公報
【特許文献18】特開平9−251235号公報
【特許文献19】特開平9−269644号公報
【特許文献20】特開平10−63074号公報
【特許文献21】特開平10−63075号公報
【特許文献22】特開平7−234575号公報
【特許文献23】特開2001−194860号公報
【特許文献24】特開平11−143196号公報
【特許文献25】特開平11−272075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記各公報に開示されている構成及び方式においては、次のような問題がある。
トナーの補給に関しては、トナー収容容器がハードボトルを用いることが多く、この廃棄処分に際してボトルの容量が嵩むことにより回収時での単位体積当たりの回収量が少なくなるために物流コストが上昇する。減容可能な袋状の構成を備えたトナー回収容器もあるが、内部のトナーを殆ど全て消費するための構成がないことにより残留トナーも多く、消費コストが高いものとなる。
【0009】
補給トナーの移送構造として、近年多用されている構成にスクリューオーガを用いたオーガ方式があるが、オーガの敷設構造に関係して現像装置あるいはトナー収容容器と一体化若しくはきわめて近い位置に設ける必要があることから構造が複雑となることによるコスト上昇を招くばかりでなく、メンテナンスに際しても必要な箇所のみでなく一体化部分をも対象として取り外し作業が必要となることで、ユーザによる交換作業が難しくなるという問題がある。
【0010】
従来行われていた補給現像剤の交換に際しては、現像装置の解体、収容容器の取り出しおよび再装填そして現像装置の再組み立てなどのきわめて専門的な知識を有する作業が必要となるために、ユーザ自身での作業は困難な場合が多く、サービスマンによる作業を依頼するのが現状である。このため、交換作業のための画像形成処理作業の中断、いわゆる機械のダウンタイムが生じたりユーザへの交換費用の負担が強いられるなどの不具合が生じていた。
このような不具合を軽減する現像方式であるトリクル現像方式においても、補給現像剤の交換に関しては上述した作業が必要であり、この作業に係る不具合は未だ解消されないままである。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の現像装置、特に二成分系現像剤を用いる場合の問題に鑑み、新規現像剤の補給構造において物流コストの上昇や構造の複雑化を抑えることができると共に、新規現像剤の残留を少なく抑えて補給コストの上昇を低減することができる構成を備えた現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、潜像担持体上に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤により可視像処理するための現像装置において、可視像処理により消費された現像剤の補給を行う現像剤を収容した現像剤収納手段と、上記潜像担持体に向けて供給する上記二成分系現像剤を収容している現像槽と上記現像剤収納手段との間で上記現像剤収納手段からの補給現像剤を流動化して移送する移送手段と、上記現像槽に設けられていて、過剰な二成分系現像剤を外部に排出可能な余剰現像剤排出部とを備え、上記現像剤収納手段は、少なくとも一部が柔軟構造とされた袋体で構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に加えて、上記現像剤収納手段に用いられる袋体の一部には、内部に向けて谷折り部とされた折り目が設けられ、該折り目が減溶時に生じる収縮変形時での屈曲部として構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明に加えて、上記現像剤収納手段は不動部に設けられている受け部に搭載可能であり、該受け部には、上記折り目に対向する位置に折り目を屈曲させる習性を有する凸部が設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のうちの一つに記載の発明に加えて、上記移送手段は、吸引圧力を生起可能な一軸偏心スクリューポンプが用いられ、該吸引圧力により、現像剤収納手段が自らの柔軟性により変形可能であることを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のうちの一つに記載の発明に加えて、可視像処理に用いられる現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比率が、通常
、1.5〜5.0トナー重量%、上記現像剤収納手段に収容されている現像剤のトナーとキャリアとの混合比率が70〜90トナー重量%にそれぞれ設定されていることを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のうちの一つに記載の現像装置を画像形成装置に用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、移送手段を介して現像槽に向けて補給される現像剤を収容している現像剤収納手段が柔軟構造を有する袋体で構成されているので、収容している現像剤が内部から吐出されるのに伴い減容し、内部の現像剤がなくなったときには最少容積とすることができる。これにより、現像剤収納手段を廃棄処分する際の回収体積を小さくして物流コストを低減することが可能となる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、現像剤収納手段に屈曲部を構成する折り目が設けられているので、屈曲部となる折り目を基準として折り畳まれることになり、減溶時での変形形状を最小体積が得られる形状に自動的に設定することが可能となる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、現像剤収納手段の搭載部である受け部に現像剤収納手段の折り目を屈曲させる習性を有する凸部が設けられているので、減溶時での収縮変形を確実に行わせることが可能となる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、移送手段からの吸引圧力を用いるだけで柔軟性を利用した減容が可能となる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、現像剤収納手段に収容されている現像剤が可視像処理用としてトナーとキャリアとの混合比率を1.5〜5.0トナー重量%に対して、70〜90トナー重量%とすることにより、キャリアの増加による質量増加によって移送手段内での移送距離や揚程に悪影響が及ばないようにして円滑な補給を行うことが可能となる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、補給用現像剤を収容している現像剤収納手段の廃棄処分時での嵩ばりをなくせることにより、物流コストの上昇や補給現像剤の移送効率を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る現像装置を用いる画像形成装置の一例を示す模式図であり、同図に示す画像形成装置は、色分解に対応する色の補色現像剤による複数の色画像を形成可能なカラープリンタである。本発明では、カラープリンタに限らず、複写機、ファクシミリ装置あるいは印刷機などの画像形成装置に適用可能である。
【0026】
図1において、カラープリンタ1は、色分解毎の画像を形成可能な画像形成ユニット2(便宜上、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを意味する頭文字Y、M、C、Bを符号2に添えて表示する)が並置されており、これら各画造形性ユニット2Y、2M、2C、2Bの下方には、露光ユニット3が配置されている。
【0027】
各画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Bはいずれも同じ構成を備え手織り、今、イエロー画像を形成するユニットを代表してその構成を説明すると次の通りである。
画像形成ユニット2Yには、潜像担持体である感光体ドラム4Yが備えられており、感光体ドラム4Yの周囲には、図示矢印方向に沿って画像形成プロセスを実行するための帯電装置5Y、露光ユニット3からの書き込み光の入射部6Y、現像装置7Y、転写装置8、クリーニング装置9Yがそれぞれ配置されている。
【0028】
図1に示すカラープリンタにおける現像装置7Yは、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤が用いられ、トナーとキャリアとの混合比率が1.5から5.0トナー重量%に設定されて現像が行われる。現像により現像剤が消費されるのに伴い、現像剤の濃度を維持するための新たな現像剤が後述する補給部から補給されるようになっており、本実施形態では、予め、トナーとキャリアとの混合比率が設定されて両者が混合されているプリミックス現像剤が補給現像剤として用いられる。補給部の構成に関しては後で説明する。
【0029】
図1において転写装置8は、各画像形成ユニットの感光体ドラムと対向当接しながら移動することができる転写ベルト8Aを備えており、転写ベルト8Aをはさんで感光体ドラム4Yと対向する位置に転写バイアスを印加可能な転写ローラ8Yが設けられている。
【0030】
本実施形態における転写装置8は、各画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Bにおいて感光体ドラム上に担持されている可視像を転写ベルト8Aに順次重畳転写する1次転写行程と、重畳された画像を給紙装置10から繰り出される記録紙などに対して一括転写する2次転写行程とを実施する構成とされている。このため、2次転写行程を実施できる位置には、転写バイアスを印加可能な転写ローラを備えた2次転写装置11が配置されている。
【0031】
給紙装置10には、記録紙を収容している給紙カセット10A及び給送路中に配置されているレジストローラ10Bとが備えられており、レジストローラ10Bは、手差し給紙トレイ10Cから導入される記録紙の搬送路が給紙カセット10Aからの搬送路と合流する位置に設けられている。
図1において符号12は転写ベルト10Aのクリーニング装置を、符号13は転写ベルト10Aの除電装置をそれぞれ示している。
【0032】
図1に示すカラープリンタ1では、各画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Bにおいて形成された色画像が転写装置8の転写ベルト8Aに対して1次転写行程により順次重畳転写され、重畳画像が2次転写行程において記録紙に一括転写された記録紙が定着装置14に移動することにより画像を定着されて排紙トレイ1A上に排出されるようになっている。
【0033】
カラープリンタ1の内部において各画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Bの上方空間には、トリクル現像方式に用いられるトナーおよびキャリアが予め設定された混合比率によって混合されたプリミックス現像剤の補給部15Y、15M、15C、15Bが配置されている。
現像剤の補給部は、感光体ドラムに供給されようとしているトナーとは別に新規なプリミックス現像剤を現像装置(便宜上、図1に示した符号7Yを用いる)に補給するための構成であり、その構成が図2および図3に示されている。
図2において、現像剤の補給部(便宜上、符号15Yを用いて説明するが、他の色のトナー補給部に関しても同様な構成である)15Yは、現像剤収納手段として、減容可能な柔軟性を有する袋体で構成されて内部にプリミックス現像剤を収容している収容部材15Y1と、収容部材15Y1を載置した状態で往復動可能な収容部材支持構造体15Y2とを備えている。本実施形態でのプリミックス現像剤は、トナーとキャリアとの混合比率が、現像槽内での混合比率として1.5〜5.0トナー重量%に設定されている場合に、70〜90トナー重量%に設定されている。
【0034】
収容部材15Y1は、図2および図3に示すように、50μm〜300μm程度の厚さを有して一部に開口15Y1aが形成されている樹脂フィルムなどの柔軟性材質が用いられた袋体であり、開口15Y1aには、接着若しくは溶着されて一体化された吐出部材15Y3が設けられている。収容部材15Y1には底板15Y4が一体化されており、底板15Y4は、収容部材15Y1に比べて厚さが厚く剛性が高められる0.5mm程度の樹脂により構成されている。
【0035】
収容部材15Y1および底板15Y4との組み合わせにより、収容部材15Y1の減容により内部に収容されているプリミックス現像剤が全消費されると丈が小さくなり廃棄処分時での回収の際に収容部材15Y1同士を比較的大量に積層することができるので回収効率を上げることが可能となり、また、底板15Y4が比較的剛性が高い構成であることにより収容部材支持構造体15Y2への装着を容易化できるとともに収容部材支持構造体15Y2の往復動時での変形を抑えてプリミックス現像剤の排出が阻害されるのを防止できるようになっている。
【0036】
吐出部材15Y3には、漏斗状の底面が形成され、その底面の一部には吐出口15Y3Aが形成されている。吐出開口15Y3Aの下方には、長手方向一端が閉塞しているパイプ部15Y3Bが設けられている。
パイプ部15Y3Bの内部には、閉塞端側から順に、コイルバネなどの弾性体17,キャップ18,シールホルダ(図3参照)19,シール20および吐出ノズル21が装填されるようになっている。パイプ部15Y3Bは、収容部材15Y3側に設けられており、上記各部材のうちで、弾性体17,キャップ18,シールホルダ19及びシール20が予め装填され、キャップ18が弾性体17の付勢により吐出開口15Y3Aを閉鎖するようになっており、この状態はキャップ18の頭部がシールホルダ19に衝止されることにより保持される。これにより、底板15Y4と一体の収容部材15Y1が収容部材支持構造体15Y2に搭載されるまでの間、収容部材15Y1内部からのプリミックス現像剤の漏出を防ぐようになっている。
吐出ノズル21は、吐出部材15Y3のパイプ部15Y3B内に挿入されると、図2に示すように、吐出部材15Y3の吐出開口15Y3Aと連通することができ、吐出開口15Y3Aと反対側の端部には、後述する吸引ポンプとの間に連結されるチューブ22の一端が装着されている。
【0037】
吐出ノズル21は、収容部材支持構造体15Y2に一体化されて設けられている作動片23に締結されて共に移動する構成を備えている。
作動片23が一体化されている収容部材支持構造体15Y2は、図2に示すように、トナー補給部15Yに設けられている支持台24に対してコイルバネなどの弾性体25により押圧付勢されており、押圧付勢による移動は作動片23の一端が対向当接している作動カム26によって規制されている。
【0038】
作動カム26は、収容部材支持構造体15Yを符号B−Cで示す方向に往復動させる駆動部材であり、小径部が作動片23に対向した場合には、符号Bで示す方向に収容部材支持構造体15Y2を移動させ、大径部が作動片23に対向した場合には、符号Cで示す方向に収容部材支持構造体15Y2を移動させる。図2では、作動カム26の小径部に作動片23が対向した状態が示されており、この状態では、吐出部材15Y3の吐出開口15Y3Aと吐出ノズル21とが連通する。
【0039】
収容部材支持構造体15Y2は、その底面に配置されている転動体27を介して支持台23上を往復動することができ、さらに、作動カム26が配置されている側には作動片23と平行する片部24Aが設けられている。片部24Aには、作動片23を衝止するための緩衝部材28が取り付けられている。
緩衝部材28は、作動カム25の大径部から小径部に当接状態が変化した場合に作動片23が衝突するストッパであり、ゴムやスポンジ等の弾性部材が用いられる。
【0040】
収容部材支持構造体15Y2は、作動片23が作動カム26の大径部から小径部に対向状態を変化させるときに弾性体25の押圧付勢を介して緩衝部材28に衝突する。このため、収容部材支持構造体15Y2は衝突により急激な加速度変化を来す。従って、収容部材支持構造体15Y2に搭載されている収容部材15Y1内のトナーには、大きな慣性力が発生し、一方向、つまり、図2において吐出部材15Y3側に向けて大きく移動することができ、この移動に際しても、突き崩された状態で流動性が高められて移動することになる。
【0041】
図2において吐出ノズル21に一端が装着されているチューブ22を備えたトナー移送手段としての吸引ポンプ29は、粉体ポンプを構成するものであり、一軸偏心スクリューポンプ(通称、モーノポンプ)が用いられている。吸引ポンプ29の構成としては、金属または樹脂などの剛性部材を用いて偏心させたスクリュー形状のローラ29Aと、ゴム材料により内側が2条のスクリュー形状とされたステータ29Bと、これら両部材を内包するホルダ29Cとを備えている。吸引ポンプ29では、ロータ19Aが回転すると、ポンプに自吸力(吸引圧力)が発生し、チューブ22内を吸引負圧化傾向とすることにより収容部材15Y1内のプリミックス現像剤を吸引することができる。
【0042】
吸引ポンプ29の吸引吐出側には、図2に示すように現像装置(便宜上、図1において用いた符号7Yで示す)が連結されており、収容部材15Y1から吸引されたプリミックス現像剤を導入できるようになっている。
現像装置7Yには、図4および図5に示すように、吸引ポンプ29側に対向する壁面に開口7Y1が形成されており、プリミックス現像剤を導入できるようになっている。現像装置7Yには、感光体ドラム4Yと対向して二成分系現像剤を供給可能な現像ローラ7Y2及び一対の攪拌供給ローラ7Y3,7Y4および現像ローラ7Y2での現像剤層厚を規定するドクター部材7Y5がそれぞれ配置され、現像ローラ7Y2に供給される現像剤濃度は、現像槽7Y6に設けられている現像剤濃度センサ30により検出されるようになっている。本実施形態では、トナーとキャリアとの混合比率が1.5〜5.0重量%に設定された現像剤が用いられる。現像剤中のトナー量は現像剤濃度センサ30による透磁率変化を検出することで行われ、不足した場合には吸引ポンプ29側に設けられている駆動モータM1(図2参照)および作動カム26の駆動モータ(図示されず)の回転量を制御することが行われる。
【0043】
現像装置7Yおける現像槽7Y6には、槽内に収容される現像剤の量を一定化するために過剰な現像剤を溢れ出さすための堰部7Y7が設けられており、堰部7Y7からオーバーフローした現像剤が図示しない回収部に排出されるようになっている。オーバーフローする現像剤の回収部は、現像槽内に設けることに限らず、図5に示すように、堰部7Y7を現像装置7Yの外部に取り付けることも可能である。
【0044】
図6は、収容部材15Y1内のプリミックス現像剤が吸引移送される際の挙動を示す図であり、同図では、プリミックス現像剤が吸引移送されるに従い減少するのに伴い、収容部材15Y1の減容状態が(A)から(D)の順で示されている。
吸引ポンプ29により吸引負圧化傾向とされた収容部材15Y1の内部からはプリミックス現像剤が順次吐出されることになるが、作動片23と作動カム26の小径部とが対向する際には作動片23と一体の収容部材支持構造体15Y2に加速度変化が発生する。このため、プリミックス現像剤には、大きな衝撃慣性力が生起されることにより一方向、つまり、吐出部材15Y3側に向けて流動することになる。衝撃慣性力はプリミックス現像剤の残量に関係なく発生し、残量が多い場合でもその重量による慣性力が大きくなるので、プリミックス現像剤の流動は阻害されることなく安定した移送が行われることになる。
【0045】
本実施形態では、衝撃慣性力の大きさについて検討したところ、剛体を対象とした場合に比べてプリミックス現像剤などの流動性がある物質においては大きな加速度が必要となることを考慮して、900g程度の収容量である場合には40m/sec(重力加速度の約4倍)以上の加速度が設定されている。これ以下の加速度である場合には安定した流動性が得られないことが実験により確認されており、逆に加速度が大き過ぎる場合には、衝撃力が強すぎて吐出開口付近でトナーの凝集固化による吐出開口の閉塞現象が発生し、プリミックス現像剤の補給量が不安定となる。このような結果から、実験により確認された加速度の上限値は、200m/secであった。収容部材支持構造体15Y2の往復動の繰り返しにより内部からプリミックス現像剤が流出すると、収容部材15Y1は吸引ポンプ29による負圧化傾向により内部が減容し、殆ど全てのプリミックス現像剤が排出された場合には、未補給時での容積の1/10〜1/5程度に減少させることができ、使用後の廃棄処分時に減容した収容部材を重畳する数を増大させて回収効率の向上と保管スペースの低減化が図れる。
【0046】
現像剤補給部では、吸引ポンプ29でのロータとステータとの歯の位相が異なる噛み合い状態により間欠的に吸引力が発生するので、この発生時期に整合するように収容部材支持構造体15Y2の往復動サイクルが規定されており、吸引力が発生してチューブ22内が負圧化傾向とされた時期に収容部材15Y1の内部からプリミックス現像剤が吐出される状態を設定されている。これにより、吐出開口が開放された際には補給される現像剤のみがチューブ22内に導入されることになるので、外気の取り込みが防止され、空気の存在によるとプリミックス現像剤の吐出量に変化がない状態を維持できるようになっている。
【0047】
本実施形態では、現像剤濃度センサ30により現像槽内の現像剤のトナーとキャリアとの混合比率が変化し、いわゆる現像剤濃度が低下した場合には、吸引ポンプ29が作動され、これにより生起される吸引圧力が現像剤収納手段を構成する収容部材15Y1内に作用するとプリミックス現像剤が吸引されて吸引ポンプ29内に導入され、現像装置15Yに向けて流動される。
【0048】
収容部材15Y1内に収容されているプリミックス現像剤は、トナーとキャリアとの混合比率が70〜90トナー重量%に設定されているが、その理由は次の通りである。
補給されるプリミックス現像剤は、キャリアの混合比率を高める方が流動性がよくなり、移送時での流量変化などが抑制され経時的に安定した補給が可能となる反面、トナーの混合比率が低くなるためにトナーの補給量を増加する目的で現像剤収納手段としての容積を大きくしなければならなくなる。これにより、現像剤収納手段の体積が大きくなることにより装置内での設置スペースも大型化してしまう。しかも、キャリアを多くした場合には、移送手段として用いられる吸引ポンプ29内に有する部材、特に耐摩耗性の低いゴム製のステータがキャリアによって摩耗しやすくなり、吸引ポンプ29の耐久性が悪化したり現像剤の移送距離やキャリアの質量増加による揚程に悪影響を及ぼす。このような理由から、上記混合比率に設定することで移送の際の不具合を解消するようになっている。
【0049】
現像剤収納手段を構成する収容部材15Y1は、減容可能な柔軟性を有する袋体で構成されているので、内部に収容されているプリミックス現像剤が減少するに従い収縮変形し、プリミックス現像剤が全消費された場合には殆ど容積を持たない状態に潰れる。この結果、補給部において現像剤収納手段を交換する際の取り出しおよび廃棄処分時での単位体積当たりでの重ね量も多くでき、回収効率を高めて丈が嵩張る場合のような物流コストの上昇を抑えることができる。
【0050】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図7は、本発明の別の実施形態による現像装置における現像剤の補給部を示す図2相当の図であり、同図における構成においては、現像剤収納手段の減容時での変形状態を促進することを特徴としている。なお、図7において、図2に示した構成部材と同じものに関しては同符号により示してある。
図7において、吸引ポンプ29に連結されているチューブ22における現像剤収納手段31側の端部にはノズル(便宜上、符号21’で示す)が連結されており、このノズル21’は現像剤収納手段31に挿入されるようになっている。本実施形態におけるノズル21’は、現像剤収納手段31が縦置きされる設置状態に合わせて後述する口金部材の下面から上方に向けて現像剤収納手段31の内部に挿入される構成とされているので、その先端部に設けられている現像剤の導入口21A’が図2に示した構成と違って、周方向に複数箇所に設けられている。
【0051】
図7に示す現像剤収納手段31は、ポリエチレンやナイロンなどの柔軟性を有する60〜200μm程度の厚さの袋体からなる収容部材31Aを備えている。収容部材31Aは、上述した樹脂を用いたシートあるいはフィルムを単層あるいは複数の層を積層して形成されている。
【0052】
図8は、収容部材31Aのみを示した斜視図であり、同図において、収容部材31Aは、4つのシートを組み合わせて重ね合わせ、各片縁を熱溶着することにより一体化されたガゼット容器と称される袋状の容器構造をなし、膨縮することができるようになっている。
収容部材31Aの外表面の一部には、図中、符号31A1で示すように、内側に向けた谷折り部で構成された折り目が形成されており、折り目31A1は、収縮時に屈曲部として内側に屈曲することにより収容部材31Aを折り畳まれた状態に変形させるようになっている。
【0053】
図8は収容部材31Aが膨張した状態であり、この状態が内部にプリミックス現像剤を充満された状態であり、図9は内部が減溶されて収縮した状態であり、この状態が内部のプリミックス現像剤を全消費した状態である。
【0054】
図7において、収容部材31に設けられている開口部には口金部材32が取り付けられている。
口金部材32は、樹脂製のケース32Aと、スポンジなどで構成されたシール部材32Bとを備え、ケース32Aが現像剤補給部に設けられている容器ホルダ33に嵌合されることによりノズル21’を挿入できる状態とし、ノズル21’が挿入された場合にはシール32Bがノズル21’の外周面に密着して収容部材31Aの内部を密封するようになっている。
【0055】
図10は、図7中、符号(10)で示す方向の断面図であり、同図において、
符号33は現像剤収納手段31を搭載可能な受け部をなす容器トレイであり、容器トレイ33には、収容部材31Aの折り目に対向する内面に内側に向けて突出する凸部33Aが設けられている。
凸部33Aは、収容部材31Aに設けられている折り目31A1に対向しており、折り目31A1に対して、2〜10mm程度食い込むことにより折り目の屈曲性を高めるようになっている。
【0056】
本実施形態においては、吸引ポンプ29の作動により現像剤収納手段31からのプリミックス現像剤が現像装置に向けて補給され際には、図2に示した構成と同様に、プリミックス現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比率によってトナーのみでの移送に比べて流動性を高めた状態で補給することができる。
【0057】
現像剤収納手段31の収容部材31Aの内部は、吸引ポンプ29からの吸引圧力によって負圧化傾向とされることによりプリミックス現像剤が吸引されると、ノズル21’が挿入されているシール32によって密封されていることにより、減溶する。これに伴い、収容部材31Aは収縮変形するが、その変形時には折り目31A1が容器トレイ33の凸部33Aに規制されて屈曲しやすい状態とされているので、減溶するに従い、折り畳まれた状態、つまり図9に示した状態に形状が近付いていく。このように、折り目31A1を屈曲部として用いることにより、減溶時での収容部材31Aの形状が通常の袋体の減溶時に見られるような、ねじれた形状となることがなく、対向する片部同士が折り重なるように畳まれた状態で収縮変形することができる。これにより、収容されているプリミックス現像剤が全消費された場合には、図9に示すように、収容部材31Aがきちんと折り畳まれた状態となり、廃棄処理時での積載高さを低くして単位体積当たりの回収数を多くすることができる。しかも、収容部材31Aが潰れる際の形状を監視する必要もなく、収容部材31A自体の収縮変形動作に応じて予め希望する形状である折り畳まれた形状に変形させることができる。この結果、ねじれた形状の場合と違って、ねじれによる残余空間にプリミックス現像剤が滞ることもなく殆ど全てを補給に費やすことができ、残留現像剤がないことによる補給コストを低減することができる。
【0058】
図2および図9に示した実施形態によれば、収容部材に対してノズル21あるいは21’を介してチューブ22を吸引ポンプ29に連結するだけで補給態勢を採ることができるので、収容部材の設置箇所に制約を受けることがなく、しかも、粉塵の飛散なども殆ど起こらないことにより装置内部の汚損を防止することができる。また、従来現像剤の移送に用いられているスクリューオーガと比較して、気流搬送が可能な本実施形態では、移送途中でのスクリューによる押し固めによる凝集固化なども発生することがないので、ブロッキング現象の発生もなくこれに伴う駆動源での消費電力の増加や部材の破損なども未然に防止することができる。特に、移送距離が長くなると、スクリューオーガ方式の場合にはスクリューオーガを多段に連結することになり、移送過程での現像剤の摩擦熱による変質や部品点数の増加さらにはメンテナンスコストの増加をそれぞれ解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る現像装置が用いられる画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る現像装置に用いられる現像剤補給部の構成を示す図である。
【図3】図2に示した現像剤補給部に用いられる現像剤収納手段の構成の一部を示す斜視図である。
【図4】図1に示した現像装置の一つの構成を説明するための模式図である。
【図5】図5に示した現像装置における補給現像剤の導入部を示す斜視図である。
【図6】図2に示したトナー補給部に後いられる収容部材におけるトナーの挙動を説明するための図である。
【図7】本発明の別の実施形態による現像装置に用いられる現像剤補給部の構成を示す図である。
【図8】図7に示した現像剤補給部に用いられる現像剤収納手段の一態様を示す斜視図である。
【図9】図7に示した現像剤収納手段の他の態様である収縮変形時の耐用を示す斜視図である。
【図10】図7中、符号(10)で示す方向の矢視断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
7Y、7M、7C、7B 現像装置
15Y、15M、15C、15B 現像剤補給部
15Y1,31A 収容部材
15Y2 収容部材支持構造体
26 作動カム
29 移送手段をなす吸引ポンプ
30 現像剤濃度検知センサ
31 現像剤収納手段
31A1 折り目
32 口金部材
33 現像剤収納手段の搭載部をなす容器トレイ
33A 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体上に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤により可視像処理するための現像装置において、
可視像処理により消費された現像剤の補給を行う現像剤を収容した現像剤収納手段と、
上記潜像担持体に向けて供給する上記二成分系現像剤を収容している現像槽と上記現像剤収納手段との間で上記現像剤収納手段からの補給現像剤を流動化して移送する移送手段と、
上記現像槽に設けられていて、過剰な二成分系現像剤を外部に排出可能な余剰現像剤排出部とを備え、
上記現像剤収納手段は、少なくとも一部が柔軟構造とされた袋体で構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
上記現像剤収納手段に用いられる袋体の一部には、内部に向けて谷折り部とされた折り目が設けられ、該折り目が減溶時に生じる収縮変形時での屈曲部として構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の現像装置において、
上記現像剤収納手段は不動部に設けられている受け部に搭載可能であり、該受け部には、上記折り目に対向する位置に折り目を屈曲させる習性を有する凸部が設けられていることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの一つに記載の現像装置において、
上記移送手段は、吸引圧力を生起可能な一軸偏心スクリューポンプが用いられ、該吸引圧力により、現像剤収納手段が自らの柔軟性により変形可能であることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちの一つに記載の現像装置において、
可視像処理に用いられる現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比率が、通常、1.5〜5.0トナー重量%、上記現像剤収納手段に収容されている現像剤のトナーとキャリアとの混合比率が70〜90トナー重量%にそれぞれ設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの一つに記載の現像装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−114806(P2007−114806A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508(P2007−508)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【分割の表示】特願2006−14479(P2006−14479)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】