説明

生体組織中の微量元素分析装置、試料台及びこれを用いた分析方法

【課題】 簡単に目的とする分析エリアについてのみ分析を行うことができ、最適な分析条件を決定することができる生体組織中の微量元素分析装置、試料台及びこれを用いた分析方法を提供する。
【解決手段】 X線マイクロアナライザーで分析する生体組織の分析エリアを決定する分析エリア決定手段21を備えた。また、分析エリア決定手段21で決定された生体組織の分析エリアにおける分析条件を決定する分析条件決定手段31を備えた。さらに、生体組織の染色画像を取得する染色画像取得手段51と、染色画像取得手段51で得られた生体組織の染色画像とX線マイクロアナライザーで得られた微量元素分布画像とを合成する画像合成手段41とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析するための生体組織中の微量元素分析装置、試料台及びこれを用いた分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルソン病など一部の疾病では、金属元素がたんぱく質などの生体分子に結合し、異常に蓄積する。このような疾病において、特殊な染色法により金属が蓄積した部位を色の違いとして表し、病理組織的に確認する伝統的な方法がある。しかしながら、この方法は染色液調合条件の不安定さ、染色時の温度、染色時間、染色液の疲労度などで結果が大きく左右され、信頼性に問題があった。
【0003】
また、肺胞内に取り込まれた微粒子を分析する場合には、その微粒子の大部分が酸化物などの無機化合物であるために染色することはできず、その元素分析はこれまで不可能とされていた。
【0004】
ところで、X線マイクロアナライザー(以下、EPMAという)という装置が知られている。これは、電子線を試料に照射し、そこから発生する元素固有のX線(特性X線)を検出することで、元素の種類や量を分析する装置である。したがって、この装置による元素分析がウイルソン病などの疾病や肺胞内の微粒子の分析など、生体組織中の金属元素の分析へ応用できれば、上記の問題を解決し病理診断の信頼性を向上することができるものと期待される。
【0005】
しかし、生体組織には分析対象の金属元素が非常に微量しか含まれていないため元素の特性X線がバックグラウンドノイズと区別できなくなってしまうという理由と、特性X線強度を高めて検出感度を増すために電子線の強度を上げると熱に弱い生体組織切片が電子線によって破壊されたり変形したりするという理由により、EPMAにより生体組織内の金属元素を分析することはできなかった。
【0006】
なお、特許文献1には、シリコン製、石英製などの板状体にカーボンなどの導電性薄膜をコーティングしたEPMA用の生体試料用試料台が開示されている。この試料台によれば、導電性の薄膜により電子のチャージが防止され、EPMAにより生体組織内の金属元素を分析することができるというものである。
【特許文献1】特開2003−177108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1に開示されている試料台を用いた場合には、試料台に形成された導電性薄膜により電子のチャージを防止することができるとしても、バックグラウンドノイズが大きく、微量元素の検出感度に限界があった。すなわち、上記の試料台は、シリコン製、石英製などの板状体にカーボンなどの膜厚が10〜100Åの導電性薄膜をコーティングしたものであり、導電性薄膜をEPMAの電子線が透過してシリコン製、石英製などの板状体から連続X線が多量に発生し、この連続X線がバックグラウンドノイズとなり、微量元素の検出感度が低下するという問題があった。
【0008】
また、生体組織中に含まれる微量金属元素を、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することが可能になったとしても、微量金属元素を高感度で分析するには分析の解像度を上げる必要があり、長時間を要する。したがって、効率よく短時間に分析を行なうためには目的とするエリアに絞って分析する必要がある。
【0009】
ところで、生体組織における分析エリアは、疾病の診断を目的とする場合には、染色された生体組織の切片の写真などをもとにして医師によって指示されることが多い。しかし、X線マイクロアナライザーの分析対象となる生体組織は染色されておらず、試料台に載置された生体組織から、医師によって指示された分析エリアのみを、分析担当者が的確に探し出して分析を行なうのは困難である。
【0010】
さらに、金属元素の種類や濃度によって電子線の強度、走査速度などの最適な分析条件が異なるが、疾病によって分析対象となる微量金属元素の種類が異なるほか、生体組織中に含まれる微量金属元素の種類や濃度の予測が難しいため、分析する金属元素を決定し、さらに最適な分析条件を決定するためには熟練を要するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて生体組織中に含まれる微量金属元素を分析する際に、簡単に目的とする分析エリアについてのみ分析を行うことができるとともに、最適な分析条件を決定することができ、さらに、生体組織中に含まれる微量金属元素を高感度で分析することを可能にする生体組織中の微量元素分析装置、試料台及びこれを用いた分析方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1記載の生体組織中の微量元素分析装置は、生体組織が載置される試料台と、この試料台に載置された生体組織に電子線を照射して微量金属元素を分析するX線マイクロアナライザーと、このX線マイクロアナライザーで分析する生体組織の分析エリアを決定する分析エリア決定手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2記載の生体組織中の微量元素分析装置は、請求項1において、前記分析エリア決定手段で決定された生体組織の分析エリアにおける前記X線マイクロアナライザーの分析条件を決定する分析条件決定手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3記載の生体組織中の微量元素分析装置は、請求項1又は2において、生体組織の染色画像を取得する染色画像取得手段と、この染色画像取得手段で得られた生体組織の染色画像と前記X線マイクロアナライザーで得られた微量元素分布画像とを合成する画像合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4記載の生体組織中の微量元素分析装置は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記試料台は、超高純度ガラス状カーボンから形成されるとともに、生体組織が載置される表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5記載の生体組織中の微量元素分析装置は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記分析エリア決定手段は、前記試料台に載置された生体組織の試料画像を取得する試料画像取得手段と、生体組織の分析エリア情報を取得する分析エリア情報取得手段と、前記試料画像取得手段で得られた生体組織の試料画像と前記分析エリア情報取得手段で得られた生体組織の分析エリア情報とを対応させる画像対応手段と、この画像対応手段で対応させた試料画像と分析エリア情報に基づき前記試料台に載置された生体組織のステージ座標を決定するステージ座標決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6記載の生体組織中の微量元素分析装置は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記分析条件決定手段は、前記分析エリア決定手段で決定された生体組織の分析エリアにおいて前記X線マイクロアナライザーに微量元素の予備定量分析を行なわせて予備定量分析値を取得する予備定量分析手段と、この予備定量分析手段で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーにより分析する元素を決定する分析元素決定手段と、前記予備定量分析手段で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーにより照射する電子線の強度を決定する電子線強度決定手段と、前記予備定量分析手段で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーによる分析時間を決定する分析時間決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項7記載の試料台は、X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析するための試料台であって、超高純度ガラス状カーボンから形成されるとともに、生体組織が載置される表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項8記載の分析方法は、請求項7記載の試料台に厚さ1〜4μmの生体組織切片を密着固定し、X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1記載の生体組織中の微量元素分析装置によれば、生体組織の分析エリアを決定する分析エリア決定手段を備えたことにより、効率よく短時間に目的とする分析エリアに絞って分析することができるとともに、試料台に載置された生体組織から、医師によって指示された分析エリアのみを、分析担当者が的確に探し出して分析を行なうことができる。
【0021】
本発明の請求項2記載の生体組織中の微量元素分析装置によれば、分析エリアにおける分析条件を決定する分析条件決定手段を備えたことにより、分析エリアにおける金属元素の種類や濃度によって、分析する金属元素の種類や、電子線の強度、走査速度などの最適な分析条件を簡単に決定することができる。
【0022】
本発明の請求項3記載の生体組織中の微量元素分析装置によれば、生体組織の染色画像と微量元素分布画像とを合成する画像合成手段を備えたことにより、医師が見慣れた染色画像に微量元素分析画像を対比させることができ、医師が診断に用いる際に見やすい分析画像を提供することができる。
【0023】
本発明の請求項4記載の生体組織中の微量元素分析装置によれば、試料台の表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることにより試料台に生体組織の切片を接着剤無しで、密着固定することができること、試料台が熱伝導性に優れた超高純度ガラス状カーボンから形成されていることにより、大電流の電子線を照射した場合においても、カーボン内に発生した熱は速やかに拡散し、局部温度上昇が阻止されるとともに、生体組織内に発生した熱も試料台に速やかに吸収、拡散されるので、熱による生体組織の破壊が防止され、生体組織中に含まれる微量金属元素について、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することができる。
【0024】
本発明の請求項5記載の生体組織中の微量元素分析装置によれば、試料台に載置された生体組織のステージ座標を決定するステージ座標決定手段を備えたことにより、分析エリア情報に基づき生体組織のステージ座標を決定して、効率よく短時間に目的とする分析エリアに絞って分析することができる。
【0025】
本発明の請求項6記載の生体組織中の微量元素分析装置によれば、分析する元素を決定する分析元素決定手段と、照射する電子線の強度を決定する電子線強度決定手段と、分析時間を決定する分析時間決定手段とを備えたことにより、分析エリアにおける金属元素の種類や濃度によって、分析する金属元素の種類や、電子線の強度、走査速度などの最適な分析条件を簡単に決定することができる。
【0026】
本発明の請求項7記載の試料台によれば、試料台の表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることにより試料台に生体組織の切片を接着剤無しで、密着固定することができること、試料台が熱伝導性に優れた超高純度ガラス状カーボンから形成されていることにより、大電流の電子線を照射した場合においても、カーボン内に発生した熱は速やかに拡散し、局部温度上昇が阻止されるとともに、生体組織内に発生した熱も試料台に速やかに吸収、拡散されるので、熱による生体組織の破壊が防止され、生体組織中に含まれる微量金属元素を、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することができる。
【0027】
本発明の請求項8記載の分析方法によれば、厚さ1〜4μmの生体組織切片を密着固定することで、熱による生体組織の破壊が防止され、生体組織中に含まれる微量金属元素について、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の生体組織中の微量元素分析装置、試料台及びこれを用いた分析方法について、詳細に説明する。
【0029】
はじめに、本発明の生体組織中の微量元素分析装置の一実施例について、説明する。
【0030】
本実施例の生体組織中の微量元素分析装置は、生体組織に電子線を照射して微量金属元素を分析するX線マイクロアナライザー(EPMA)を備えている。なお、X線マイクロアナライザー(EPMA)の基本構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0031】
図1に示すブロック図は、本実施例の生体組織中の微量元素分析装置において、図示しないX線マイクロアナライザー(EPMA)を制御する制御部の構成の概略を示すものである。21はX線マイクロアナライザー(EPMA)で分析する生体組織切片の分析エリアを決定する分析エリア決定手段である。この分析エリア決定手段21により生体組織の分析エリアが決定されると、この分析エリアにおけるX線マイクロアナライザーの分析条件が分析条件決定手段31により決定され、最適な分析条件でX線マイクロアナライザーによる分析が行なわれるように構成されている。
【0032】
そして、X線マイクロアナライザーにより分析が行なわれると、その分析結果は微量元素分布画像として画像合成手段41へ送られるようになっている。また、分析された生体組織切片と隣り合った切片の染色画像が染色画像取得手段51で取得され、この染色画像が、画像合成手段41において、分析で得られた微量元素分布画像と合成されるようになっている。
【0033】
このほか、本発明の生体組織中の微量元素分析装置は、生体組織が載置される試料台を備えている。なお、この試料台については、後述する本発明の試料台と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0034】
図2に、分析エリア決定手段21の構成を示す。本実施例において、分析エリア決定手段21は、試料台に載置された生体組織の試料画像を取得する試料画像取得手段22と、生体組織の分析エリア情報を取得する分析エリア情報取得手段23と、試料画像取得手段22で得られた生体組織の試料画像と分析エリア情報取得手段23で得られた生体組織の分析エリア情報とを対応させる画像対応手段24と、この画像対応手段24で対応させた試料画像と分析エリア情報に基づき試料台に載置された生体組織のステージ座標を決定するステージ座標決定手段25とを備えている。
【0035】
試料画像取得手段22は、CCDカメラによって構成され、微量元素分析装置に設置された試料台に載置された生体組織切片の試料画像を取得して、その画像データを画像対応手段24へ送るように構成されている。
【0036】
分析エリア情報取得手段23は、スキャナーによって構成され、試料台に載置された生体組織切片と隣り合った切片のHE染色による染色画像を取得するようになっている。なお、この染色画像には、医師が指示した分析エリアがマーキングされており、この分析エリアの情報を染色画像とともに取り込むことで、分析エリア情報取得手段23に生体組織の分析エリア情報が取得されるように構成されている。そして、この分析エリア情報は、染色画像の画像データとともに、画像対応手段24へ送られるようになっている。なお、この分析エリア情報取得手段23は、染色画像取得手段51と兼用してもよい。
【0037】
画像対応手段24は、試料画像取得手段22からの試料画像と、分析エリア情報取得手段23から染色画像とともに送られた分析エリア情報とを対応させるようになっている。具体的には、試料画像と染色画像のデータをそれぞれ二値化し、公知のパターン認識の手法によって、試料画像と染色画像の倍率と向きを一致させるようになっている。そして、試料画像と染色画像とを一致させることで、試料画像と分析エリア情報を対応させて、試料画像のどのエリアを分析すべきかという情報が得られるようになっている。
【0038】
ステージ座標決定手段25は、画像対応手段24で対応させた試料画像と分析エリア情報に基づいて、試料台に載置された生体組織のステージ座標を決定するように構成されている。すなわち、分析エリアをX軸、Y軸の座標軸で表現されたステージ座標に変換し、その座標データをつぎの分析条件決定手段31へ送るようになっている。
【0039】
図3に、分析条件決定手段31の構成を示す。本実施例において、分析条件決定手段31は、分析エリア決定手段21で決定された生体組織の分析エリアにおいてX線マイクロアナライザーに微量元素の予備定量分析を行なわせて予備定量分析値を取得する予備定量分析手段32と、この予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づきX線マイクロアナライザーにより分析する元素を決定する分析元素決定手段33と、予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づきX線マイクロアナライザーにより照射する電子線の強度を決定する電子線強度決定手段34と、予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づきX線マイクロアナライザーによる分析時間を決定する分析時間決定手段35とを備えている。
【0040】
予備定量分析手段32は、分析エリア内で、予備定量分析として任意の3点の自動簡易定量分析を行なうように構成されている。そして、この予備定量分析で得られた微量元素の予備定量分析値のデータは、分析元素決定手段33へ送られるようになっている。なお、自動簡易定量分析は、3点に限らず、1点又は2点、或いは4点以上であってもよいが、予備分析の時間効率と正確性のバランスを考慮すると、3点が望ましい。
【0041】
分析元素決定手段33は、予備定量分析によって一定以上の濃度が検出された元素について、分析を決定するように構成されている。具体的には、図示しないデータベースに蓄積された元素とその元素を分析するための最低濃度についての情報と、予備定量分析値とを比較して、分析する元素を自動的に決定するようになっている。また、分析担当者が分析する元素を指定することができるようにもなっている。
【0042】
電子線強度決定手段34は、予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づき分析する元素が決定されると、その元素に適した電子線の強度を決定するように構成されている。X線マイクロアナライザーによる元素分析においては、元素の種類によって適した電子線の強度が決まっており、図示しないデータベースに蓄積された元素とその元素に適した電子線の強度についての情報から、照射する電子線の強度を自動的に決定するようになっている。
【0043】
分析時間決定手段35は、予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づき、分析時間を決定するように構成されている。例えば、図示しないデータベースに蓄積された情報をもとに、予備定量分析で一定以上の元素濃度が検出され、通常の分析時間で十分な分析ができると判断した場合には、短時間の分析時間で高速マッピングを行なうように決定するようになっている。これとは反対に、予備定量分析で一定以上の元素濃度が検出されず、通常の分析時間で十分な分析ができないと判断した場合には、長時間の分析時間で高信頼マッピングを行なうように決定するようになっている。なお、本実施例では、高速マッピングと高信頼マッピングの2通りとしたが、さらに細かく条件を設定して、3通り以上の分析時間から最適な分析時間を選択できるように構成してもよい。
【0044】
なお、以上の分析エリア決定手段21及び分析条件決定手段31における一連の操作は、すべて自動で行なわれるように構成されている。
【0045】
また、生体組織の形態は、窒素を対象とした元素分析によって得られる分析画像とよく一致するので、金属元素の分析画像と対応させて医師が診断しやすくするために、窒素についても元素分析するように構成してもよい。
【0046】
つぎに、本実施例の生体組織中の微量元素分析装置を用いた分析方法について、図4に基づき説明する。
【0047】
まず、ステップS1において、試料画像取得手段22により、試料台に載置された生体組織切片の試料画像を取得して、その画像データを画像対応手段24へ送る。
【0048】
ステップS2においては、試料台に載置された生体組織切片と隣り合った切片のHE染色による染色画像を取得する。この染色画像には、医師が指示した分析エリアがマーキングされており、この分析エリアの情報を染色画像とともに取り込むことで、分析エリア情報取得手段23に生体組織の分析エリア情報が取得される。この分析エリア情報は、染色画像の画像データとともに、画像対応手段24へ送られる。
【0049】
ステップS3において、画像対応手段24は、試料画像取得手段22からの試料画像と、分析エリア情報取得手段23からの染色画像のデータをそれぞれ二値化し、公知のパターン認識の手法によって、試料画像と染色画像の倍率と向きを一致させる。試料画像と染色画像とを一致させることで、試料画像と、染色画像にマーキングされた分析エリア情報とを対応させて、試料画像のどのエリアを分析すべきかという情報を得る。
【0050】
ステップS4において、ステージ座標決定手段25は、画像対応手段24で対応させた試料画像と分析エリア情報に基づいて、分析エリアをX軸、Y軸の座標軸で表現されたステージ座標に変換し、その座標データをつぎの分析条件決定手段31へ送る。
【0051】
ステップS5において、予備定量分析手段32は、分析エリア内で、予備定量分析として任意の3点の自動簡易定量分析を行なう。この予備定量分析で得られた微量元素の予備定量分析値のデータは、分析元素決定手段33へ送られる。
【0052】
ステップS6において、分析元素決定手段33は、データベースに蓄積された元素とその元素を分析するための最低濃度についての情報と、予備定量分析値とを比較して、分析する元素を自動的に決定する。また、分析担当者が分析する元素を指定した場合には、優先的にその元素を分析することに決定する。
【0053】
ステップS7において、データベースに蓄積された元素とその元素に適した電子線の強度についての情報から、照射する電子線の強度を自動的に決定する。
【0054】
ステップS8において、分析時間決定手段35は、データベースに蓄積された情報をもとに、予備定量分析で一定以上の元素濃度が検出され、通常の分析時間で十分な分析ができると判断した場合には、短時間の分析時間で高速マッピングを行なうように決定する。これとは反対に、予備定量分析で一定以上の元素濃度が検出されず、通常の分析時間で十分な分析ができないと判断した場合には、長時間の分析時間で高信頼マッピングを行なうように決定する。
【0055】
ステップS9において、X線マイクロアナライザー(EPMA)による分析を行なう。
【0056】
ステップS10において、分析により得られた情報が十分かどうかを判定する。情報が十分でない場合は、ステップS8に戻り、ステップS8でさらに長時間の分析を行なうように決定する。情報が十分である場合は、分析結果が微量元素分布画像として画像合成手段41へ送られる。
【0057】
ステップS11において、分析された生体組織切片と隣り合った切片の染色画像が染色画像取得手段51で取得され、この染色画像は画像合成手段41へ送られる。
【0058】
ステップS12において、画像合成手段41は、分析で得られた微量元素分布画像と、染色画像取得手段51で取得された染色画像とを合成する。
【0059】
つぎに、本発明の試料台及びこれを用いた分析方法について、説明する。
【0060】
本発明の試料台は、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて生体組織中の微量金属元素を分析するための試料台であって、超高純度ガラス状カーボンのみから形成されている。この超高純度ガラス状カーボンは、気孔のない緻密な等方性組織を有するアモルファス状のカーボンであり、導電性、熱伝導性を有し、耐熱、耐薬品性、耐腐食性に優れ、熱膨張が小さく、熱衝撃に強く、気密性が高い材料である。
【0061】
EPMAによる測定において、電子線は生体組織切片を一部突き抜け、試料台からも特性X線や連続X線が発生するが、カーボンは原子番号6の軽い元素であるため、ノイズとなる連続X線の発生量が少なく、効率よく目的とする元素の特性X線を検出できる。
【0062】
また、本発明の試料台に用いる超高純度ガラス状カーボンは、微量金属元素を分析することから非常に高純度であることが要求され、不純物元素に関しては、EPMAにおける20kV、0.8μA、一画素0.35秒の2次元分析条件で、それぞれ表1に示したカウント数以下であることが必要である。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明の試料台の大きさは、任意の大きさとすることができるが、本実施例では、生体組織を載置する面の外寸が縦25mm、横20mmであって、厚み1mmとした。なお、試料台の厚さは、少なくとも、EPMAの電子線が透過できない厚さにする。こうすることによって、バックグラウンドノイズを確実に低く抑えることができる。
【0065】
また、試料台の生体組織を載置する表面の平均粗さ(Ra)は、1〜5nmとするのが望ましい。平均粗さをこの範囲にすることが重要であって、この適度な凹凸によって、厚さ1〜4μmの生体組織切片が接着剤なしで試料台に密着固定される。わずかな温度上昇でも変形しがちな生体組織切片を接着剤なしで試料台に密着固定することで、電子線により生体組織に発生した熱が試料台に速やかに吸収、拡散され、生体組織切片への熱の影響を最小限に抑えることができる。
【0066】
なお、この試料台の表面の平均粗さは、超高純度ガラス状カーボンの表面を平面研磨して鏡面上げすることによって達成できる。この研磨の際には、試料台の表面に不純物が付着しないように十分留意する必要がある。
【0067】
つぎに、上記試料台を用いた生体組織の分析における分析用試料の作製方法について、図5を参照しながら説明する。
【0068】
はじめの組織採取、ホルマリン固定、脱水、パラフィン包埋、切り出しまでは、一般的な生体組織切片の作製方法と全く同じである。切り出しでは、試料ブロック1から生体組織切片としての試料切片2をナイフ3で切り出す。そして、この試料切片2を試料台4に貼付する。なお、5は濾紙、6は蒸留水であり、試料台4に蒸留水6を介して試料切片2を載置し、余分な蒸留水6を濾紙5で吸い取ることで、試料切片2を試料台4に密着固定する。
【0069】
試料切片2の厚さに関しては、分析対象となる元素の量が少ないため、検出感度の観点からは厚い方が望ましい。その一方、厚くなりすぎると試料台4への接着が不十分となり、EPMAの電子線による熱の影響によって試料切片2が変形したりはがれやすくなったりする。そのため、試料切片2の厚さは、1〜4μmになるようにするのが好ましい。この厚さにすることによって、EPMAの電子線照射による熱が試料台4に速やかに吸収、拡散され、試料切片2への熱の影響が抑えられる。
【0070】
つぎに、試料台4に載置された試料切片2を乾燥し、その後、ビーカー7に入れたキシレン8に浸漬して脱パラフィンを行なう。試料台4の表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることによって、確実に試料切片2が試料台4に密着固定され、脱パラフィンにおいても試料切片2がはがれることがない。なお、不純物の混入を防止するために、キシレン8は純度の高い新しいものを常に用いる。
【0071】
そして、試料台4と試料切片2の表面に残っているキシレンを、蒸発する前に濾紙9で吸い取り、3時間程度保管する。
【0072】
最後に、電子線照射に備えて導電性を確保するために、試料切片2の上からカーボン12を蒸着する。なお、一般にEPMA用の試料においては薄くて一様な膜が形成できることから金スパッタ膜が多用されているが、僅かなバックグラウンドノイズの増加も避けるため、カーボン蒸着するのが望ましい。
【0073】
このように作製した分析用試料中の微量金属元素を、X線マイクロアナライザーを用いて分析する。
【0074】
実際に、生体組織内の銅の蓄積部位を分析した結果を図6に示す。左は従来の染色法(ロダニン染色)による結果であり、微細な点の部分に銅が存在することを示している。右は本発明の試料台を用いた分析方法により、EPMAで分析した結果であり、生体組織内に微量にしか含まれていない銅の濃度分布が色分けされて明瞭に確認できた(添付した図面はモノクロであるが、実際はカラー)。従来の染色法の場合、銅の蓄積部位を判断するためにはある程度の経験が必要であるが、本発明の分析方法では、微量金属元素の濃度分布が一目瞭然に識別できた。この分析結果より、原発性胆汁性肝硬変と診断された。
【0075】
また、肺胞内の微粒子を元素分析した結果を図7に示す。肺胞内の微粒子は酸化物などの無機化合物であるため、従来の染色法では元素の確認が不可能であったが、本発明の分析方法によれば元素分析が可能である。左下のHE染色で病変部であると推定された四角で囲んだ領域を分析した。窒素分布はHE染色標本と形態的に対応させるために利用できる。アルミニウムとシリコンの濃度分布がそれぞれ色分けされて明瞭に確認できた(添付した図面はモノクロであるが、実際はカラー)。
【0076】
以上のとおり、本発明の生体組織中の微量元素分析装置によれば、生体組織が載置される試料台4と、この試料台4に載置された生体組織に電子線を照射して微量金属元素を分析するX線マイクロアナライザーと、このX線マイクロアナライザーで分析する生体組織の分析エリアを決定する分析エリア決定手段21を備えている。生体組織の分析エリアを決定する分析エリア決定手段21を備えたことにより、効率よく短時間に目的とする分析エリアに絞って分析することができるとともに、試料台4に載置された生体組織から、医師によって指示された分析エリアのみを、分析担当者が的確に探し出して分析を行なうことができる。
【0077】
また、前記分析エリア決定手段21で決定された生体組織の分析エリアにおける前記X線マイクロアナライザーの分析条件を決定する分析条件決定手段31を備えている。分析エリアにおける分析条件を決定する分析条件決定手段31を備えたことにより、分析エリアにおける金属元素の種類や濃度によって、分析する金属元素の種類や、電子線の強度、走査速度などの最適な分析条件を簡単に決定することができる。
【0078】
また、生体組織の染色画像を取得する染色画像取得手段51と、この染色画像取得手段51で得られた生体組織の染色画像と前記X線マイクロアナライザーで得られた微量元素分布画像とを合成する画像合成手段41とを備えている。生体組織の染色画像と微量元素分布画像とを合成する画像合成手段41を備えたことにより、医師が見慣れた染色画像に微量元素分析画像を対比させることができ、医師が診断に用いる際に見やすい分析画像を提供することができる。
【0079】
また、前記試料台4は、超高純度ガラス状カーボンから形成されるとともに、生体組織が載置される表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmである。試料台4の表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることにより試料台4に生体組織の切片を接着剤無しで、密着固定することができること、試料台4が熱伝導性に優れた超高純度ガラス状カーボンから形成されていることにより、大電流の電子線を照射した場合においても、カーボン内に発生した熱は速やかに拡散し、局部温度上昇が阻止されるとともに、生体組織内に発生した熱も試料台に速やかに吸収、拡散されるので、熱による生体組織の破壊が防止され、生体組織中に含まれる微量金属元素について、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することができる。
【0080】
また、前記分析エリア決定手段21は、前記試料台4に載置された生体組織の試料画像を取得する試料画像取得手段22と、生体組織の分析エリア情報を取得する分析エリア情報取得手段23と、前記試料画像取得手段22で得られた生体組織の試料画像と前記分析エリア情報取得手段で得られた生体組織の分析エリア情報とを対応させる画像対応手段24と、この画像対応手段24で対応させた試料画像と分析エリア情報に基づき前記試料台4に載置された生体組織のステージ座標を決定するステージ座標決定手段25とを備えている。試料台4に載置された生体組織のステージ座標を決定するステージ座標決定手段25を備えたことにより、分析エリア情報に基づき生体組織のステージ座標を決定して、効率よく短時間に目的とする分析エリアに絞って分析することができる。
【0081】
また、前記分析条件決定手段31は、前記分析エリア決定手段21で決定された生体組織の分析エリアにおいて前記X線マイクロアナライザーに微量元素の予備定量分析を行なわせて予備定量分析値を取得する予備定量分析手段32と、この予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーにより分析する元素を決定する分析元素決定手段33と、前記予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーにより照射する電子線の強度を決定する電子線強度決定手段34と、前記予備定量分析手段32で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーによる分析時間を決定する分析時間決定手段35とを備えている。分析する元素を決定する分析元素決定手段33と、照射する電子線の強度を決定する電子線強度決定手段34と、分析時間を決定する分析時間決定手段35とを備えたことにより、分析エリアにおける金属元素の種類や濃度によって、分析する金属元素の種類や、電子線の強度、走査速度などの最適な分析条件を簡単に決定することができる。
【0082】
また、本実施例の試料台は、X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析するための試料台4であって、超高純度ガラス状カーボンから形成されるとともに、生体組織が載置される表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmである。試料台4の表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることにより試料台に生体組織の切片を直接、密着固定することができること、試料台4が熱伝導性に優れた超高純度ガラス状カーボンから形成されていることにより、大電流の電子線を照射した場合においても熱が生体組織から試料台4に速やかに吸収、拡散されるので、熱による生体組織の破壊が防止され、生体組織中に含まれる微量金属元素を、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することができる。
【0083】
また、本実施例の分析方法は、上記試料台4に厚さ1〜4μmの生体組織切片2を密着固定し、X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析するので、厚さ1〜4μmの生体組織切片2を密着固定することで、熱による生体組織の破壊が防止され、生体組織中に含まれる微量金属元素を、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて高感度で分析することができる。
【0084】
本実施例の生体組織中の微量元素分析装置、試料台及びこれを用いた分析方法は、ウイルソン病などで肝臓や腎臓に銅が蓄積する病気の診断、あるいは呼吸器疾患において肺胞内に取り込まれた微粒子の元素分析で塵肺、超硬合金肺などの診断など、さまざまな原因で生体組織中に異常濃度で存在する微量金属元素を高感度で分析することが可能である。
【0085】
また、生体組織の微量金属元素の測定時に窒素の分布も同時に測定すれば、微量金属元素の蓄積部位と、従来の方法で得られた染色標本の病変部位とを容易に対応させることができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において、あらゆる生体組織切片内の金属元素検出に応用可能である。
【0087】
以下、本発明の試料台及びそれを用いた分析方法によって分析し、その結果から病理診断が確定した実施例を列挙する。
【実施例1】
【0088】
試料:肺組織
主訴:10年来の乾性咳そう
職歴:8〜4年前まで加工工場に在籍。液体インジュウムを噴霧し固体化する作業に従事。
結果:病変部の肺組織をマッピング分析した結果、広範囲にインジュウムの沈着が確認され、職業に起因する疾患であることが確認された。
【実施例2】
【0089】
試料:胸腔鏡下肺生検組織
主訴:超硬合金肺の疑い
職歴:超硬合金による研磨歴12年勤務。
結果:病変部の肺組織をマッピング分析した結果、タングステンの沈着を確認し超硬合金肺と診断された。
【実施例3】
【0090】
試料:肺洗浄液(マクロファージ)
主訴:胸部検診異常
職歴:溶接工
結果:肺洗浄液内のマクロファージをマッピング分析した結果、Fe,Si,Al,Mnを貪食しているマクロファージが確認され、溶接工肺と診断された。
【実施例4】
【0091】
試料:胸腔鏡下肺生検組織
主訴:胸部検診異常
職歴:金属加工業
結果:病変部の肺組織をマッピング分析した結果、タングステンの沈着を確認し超硬合金肺と診断された。
【実施例5】
【0092】
試料:肝臓組織
主訴:ウイルソン病の疑い
職歴:不明
結果:病変部の肝臓組織をマッピング分析した結果、銅が組織内に高濃度で蓄積していることが確認され、ウイルソン病と確定診断された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の生体組織中の微量元素分析装置の一実施例を示す制御部のブロック図である。
【図2】同上分析エリア決定手段の構成を示すブロック図である。
【図3】同上分析条件決定手段の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の生体組織中の微量元素分析装置を用いた分析方法の一実施例を示すフロー図である。
【図5】本発明の分析方法の一実施例を示す説明図である。
【図6】本発明の分析方法により生体組織内の銅の蓄積部位を分析した結果を示す。
【図7】本発明の分析方法により肺胞内の微粒子を元素分析した結果を示す。
【符号の説明】
【0094】
2 試料切片(生体組織切片)
4 試料台
21 分析エリア決定手段
22 試料画像取得手段
23 情報取得手段
24 画像対応手段
25 ステージ座標決定手段
31 分析条件決定手段
32 予備定量分析手段
33 分析元素決定手段
34 電子線強度決定手段
35 分析時間決定手段
41 画像合成手段
51 染色画像取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織が載置される試料台と、この試料台に載置された生体組織に電子線を照射して微量金属元素を分析するX線マイクロアナライザーと、このX線マイクロアナライザーで分析する生体組織の分析エリアを決定する分析エリア決定手段を備えたことを特徴とする生体組織中の微量元素分析装置。
【請求項2】
前記分析エリア決定手段で決定された生体組織の分析エリアにおける前記X線マイクロアナライザーの分析条件を決定する分析条件決定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の生体組織中の微量元素分析装置。
【請求項3】
生体組織の染色画像を取得する染色画像取得手段と、この染色画像取得手段で得られた生体組織の染色画像と前記X線マイクロアナライザーで得られた微量元素分布画像とを合成する画像合成手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の生体組織中の微量元素分析装置。
【請求項4】
前記試料台は、超高純度ガラス状カーボンから形成されるとともに、生体組織が載置される表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の生体組織中の微量元素分析装置。
【請求項5】
前記分析エリア決定手段は、前記試料台に載置された生体組織の試料画像を取得する試料画像取得手段と、生体組織の分析エリア情報を取得する分析エリア情報取得手段と、前記試料画像取得手段で得られた生体組織の試料画像と前記分析エリア情報取得手段で得られた生体組織の分析エリア情報とを対応させる画像対応手段と、この画像対応手段で対応させた試料画像と分析エリア情報に基づき前記試料台に載置された生体組織のステージ座標を決定するステージ座標決定手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の生体組織中の微量元素分析装置。
【請求項6】
前記分析条件決定手段は、前記分析エリア決定手段で決定された生体組織の分析エリアにおいて前記X線マイクロアナライザーに微量元素の予備定量分析を行なわせて予備定量分析値を取得する予備定量分析手段と、この予備定量分析手段で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーにより分析する元素を決定する分析元素決定手段と、前記予備定量分析手段で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーにより照射する電子線の強度を決定する電子線強度決定手段と、前記予備定量分析手段で得た予備定量分析値に基づき前記X線マイクロアナライザーによる分析時間を決定する分析時間決定手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の生体組織中の微量元素分析装置。
【請求項7】
X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析するための試料台であって、超高純度ガラス状カーボンから形成されるとともに、生体組織が載置される表面の平均粗さ(Ra)が1〜5nmであることを特徴とする試料台。
【請求項8】
請求項7記載の試料台に厚さ1〜4μmの生体組織切片を密着固定し、X線マイクロアナライザーを用いて生体組織中の微量金属元素を分析することを特徴とする分析方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−105792(P2006−105792A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293053(P2004−293053)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(802000019)株式会社新潟ティーエルオー (27)
【Fターム(参考)】