説明

生物活性ステントおよびその使用方法

本発明は、ステントを、ステント移植部位での内因性治癒過程を促進する生物分解性生物活性ポリマーでコートできるという発見に基づく。ポリマーは時間経過と共に生物分解し、動脈における自然治癒過程を構築または再構築する薬物が放出される。好ましくは、ステントは、血管形成術の際など動脈が損傷した時に移植され、平滑筋細胞の増殖を開始させる有害な血液由来の因子に対し、損傷した動脈を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、移植可能な(implantable)ステントに関し、特に、血管治癒を促進する生物分解性(biodegradable)ポリマーでコートした移植可能なステントに関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
血管の内側を覆う正常な内皮は、独自にかつ完全に血液と適合する。内皮細胞は、血管壁において血小板沈着および血栓形成を能動的に阻止するプロスタシリン(prostacylin)および内皮由来弛緩因子(EDRF)の分泌のような、代謝過程を開始する。しかしながら、脈管系内の損傷した動脈表面は、非常に血栓形成を受けやすい。血栓症となる異常な血小板沈着は、内皮、中膜および外膜の損傷が起きた血管において、より起こりやすい。全身性の薬物を使用して凝固および血小板凝集を阻止しているが、損傷を受けた血管を直接治療して、血栓形成、その後の血管内膜平滑筋細胞の増殖を阻止することができる手段が必要とされている。
【0003】
狭窄または閉塞した血管に対する現在の治療法としては、機械的介入(mechanical intervention)が挙げられる。しかしながら、これらの技術はまた、損傷を悪化させ、新しい平滑筋細胞増殖および新生内膜増殖を誘発する。例えば、狭窄した動脈はしばしば、バルーン血管形成術により治療され、この治療には、拡張カテーテルによる血管の機械的拡張が含まれる。この手順の有効性は、患者によっては限られている。治療自体により血管が損傷を受け、これにより平滑筋細胞の増殖および血管の再閉塞または再狭窄が引き起こされるからである。バルーン血管形成術および/またはステントにより治療された患者の約30〜40%が、処置1年以内に再狭窄を経験するかもしれない。
【0004】
これらの問題を克服するために、損傷を受けた脈管構造の修復に有益なステントを提供するように多くのアプローチがとられている。1つの局面では、ステント自体が、より大きな管腔を提供することにより機械的に再狭窄を軽減する。例えば、幾つかのステントは時間経過に伴い徐々に拡張する。ステントの移植中に管腔壁に損傷を与えないように、多くのステントは、バルーンカテーテルの部分的に膨張したバルーン上に載置された収縮形態で移植され、その後、インサイチューで拡張され、管腔壁と接触する。米国特許第5,059,211号では、ステント本体が多孔質の生物吸収性材料で作製された冠状動脈の内壁を支持するための拡張型ステントが開示されている。そのようなステントの移植中に脈管構造に損傷を与えないように支援するために、米国特許第5,662,960号では、ステントの表面に適用することができる高分子プラスチック、ゴムまたは金属基板に適用するのに適した混合ヒドロゲルの摩擦減少コーティングが開示されている。
【0005】
平滑筋細胞の増殖を遅らせる、または阻止するために、狭窄および再狭窄に対する薬理学的治療として細胞増殖に影響する多くの薬剤が試験されている。これらの組成物には、ヘパリン、クマリン、アスピリン、魚油、カルシウム拮抗剤、ステロイド、プロスタサイクリン、紫外線照射などが含まれている。そのような薬剤は全身投与してもよく、または薬物送達カテーテルまたは薬物溶出ステントを使用してより局所的に送達させてもよい。特に、薬剤を添加した生物分解性ポリマーマトリクスを治療部位に移植してもよい。ポリマーが分解するにつれ、治療部位で薬剤が直接放出される。薬剤が送達される速度は、ポリマーマトリクスが身体に再吸収される速度に依存する。Kaplanの米国特許第5,342,348号およびNorcisoの米国特許第5,419,760号はこの技術の典型的な例である。米国特許第5,766,710号では、異なる融点の複合生物分解性ポリマーから形成されたステントが開示されている。
【0006】
米国特許第5,843,172号に開示されているように、損傷を受けた脈管内で治療剤を放出するために、多孔質ポリマーまたは焼結金属粒子もしくは繊維から形成した多孔質ステントもまた、使用されている。しかしながら、多孔質ステントの周囲の組織は細孔内に浸潤する傾向がある。一定の適用では、組織の内部成長を促進する細孔は逆効果であると考えられる。というのは、新生内膜の増殖により、ステントが配置されている動脈または他の体腔を閉塞することがあるからである。
【0007】
損傷した動脈壁成分への薬物送達もまた、治療タンパク質、例えばt-PAを分泌するように設計された、ヒツジ内皮細胞が播種された格子(latticed)血管内ステントを用いて探求されている(D.A.Dichekら、Circulation、80:1347-1353、1989)。しかしながら、内皮は凝固および血栓溶解の両方を促進することができることが知られている。
【0008】
損傷した動脈または血管の治癒を制御する別のアプローチは、新生内膜細胞においてアポトーシスを誘導し、狭窄病変サイズを減少させるものである。Gibbonsらの米国特許第5,776,905号(参照により全体として本明細書に組み入れられる)では、新生内膜細胞により高レベルで発現される抗アポトーシス遺伝子、bc1-xに対抗するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することによるアポトーシスの誘導が記述されている。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは抗アポトーシス遺伝子bc1-xの発現を阻止するものであり、そのため新生内膜細胞はプログラムされた細胞死を受けるように誘導される。
【0009】
一定の条件下では、身体は自然に、多くの効果のうちの1つとして細胞アポトーシスに影響する別の薬物を産生する。Aminらの米国特許第5,759,836号(参照により全体として本明細書に組み入れられる)において説明されているように、動脈恒常性に有益なタンパク質ファミリーに属する誘導酵素、一酸化窒素シンターゼにより一酸化窒素(NO)が産生される。
【0010】
しかしながら、アポトーシスの調節における一酸化窒素の影響は複雑である。アポトーシス促進効果は、多量のNOが誘導一酸化窒素シンターゼにより産生される病態生理学的条件に関連すると考えられる。対照的に、抗アポトーシス効果は、内皮NOの連続した低レベルの放出に由来し、これによりアポトーシスが阻害され、NOの抗アテローム動脈硬化症機能に貢献すると考えられる。Dimmelerは「Nitric Oxide and Apoptosis:Another Paradigm For The Double-Edged Role of Nitric Oxide」(Nitric Oxide 1(4):275-281、1997)において、一酸化窒素のアポトーシス促進効果および抗アポトーシス効果を論述している。
【0011】
狭窄または再狭窄に至る新生内膜増殖を阻止するために、Edelmanらの米国特許第5,766,584号では、内皮細胞を含むマトリクスを作製し、外科的手術により外膜の周囲をマトリクスで包むことにより、内皮細胞内壁(lining)の損傷後の血管平滑筋細胞増殖を阻止するための方法が記述されている。マトリクス、とりわけマトリクスに結合された内皮細胞は、周囲の組織内に拡散する産生物を分泌するが、損傷した血管の内皮細胞内壁に移動しない。
【0012】
健康な個人では、内皮損傷に応じて、血管内皮は、正常な創傷治癒のために重要な多くのホメオスタシス機構、血管緊張の調節および血栓症の阻止に関与する。これらの機能の主なメディエータは内皮由来弛緩因子(EDRF)である。1980年にFurchgottおよびZawadzkiらにより初めて記述された(Furchgott and Zawadzki、Nature(Lond.)288:373-376、1980)のは、一酸化窒素(Moncada et al.、Pharmacol Rev. 43:109-142、1991)(NO)または密接に関連するNO含有分子(Myers et al.、Nature(Lond.)、345:161-163、1990)のいずれかである。
【0013】
内皮の除去または内皮への損傷は、バルーン血管形成術後のアテローム硬化型の血管の再狭窄の基礎をなす、一般的な機構である新生内膜の増殖に対する強力な刺激である(Liu et al.、Circulation、79:1374-1387、1989);(Fems et al.、Science、253:1129-1132、1991)。ステントにより誘発された再狭窄は、動脈の管腔壁の局所的な損傷に起因する。さらに、再狭窄は、慢性的に刺激された創傷治癒サイクルの結果である。
【0014】
創傷治癒の自然の過程は2段階のサイクルを含む:創部位での血液凝固および炎症。健康な個人では、これらの2つのサイクルは均衡し、各々が過剰刺激を阻止する自然の負のフィードバック機構を含む。例えば、凝固酵素経路では、トロンビン因子Xaが因子VIIに作用し血栓形成を制御し、同時に、炎症促進性単球およびマクロファージによるPAR(プロテアーゼ活性化受容体)の産生が刺激される。内皮細胞により内因性に産生された一酸化窒素は炎症促進性単球およびマクロファージの侵入を調節する。動脈の管腔では、この2段階のサイクルにより、内皮の破壊による治癒細胞の流入および増殖が起こる。この自然の2段階均衡過程による血管平滑筋細胞集団の安定化が、再狭窄に至る新生内膜増殖を阻止するのに必要である。脈管構造における内皮層への損傷により引き起こされる内因性に産生される一酸化窒素が存在しない、または不足すると、血管傷害後、例えば血管形成術後の再狭窄に至る血管平滑筋細胞の増殖の一因となると考えられる。
【0015】
一酸化窒素は血管を拡張し(Vallance et al.、Lancet、2:997-1000、1989)、血小板の活性および接着を阻止し(Radomski et al.、Br. J Pharmacol、92:181-187、1987)、インビトロで、一酸化窒素は血管平滑筋細胞の増殖を制限する(Garg et al.、J.Clin.Invest.、83:1774-1777、1986)。同様に、動物モデルでは、一酸化窒素による血小板由来マイトジェンの抑制により、血管内膜の増殖が減少する(Fems et al.、Science、253:1129-1132、1991)。傷害後の動脈再構築の制御における内皮由来一酸化窒素の潜在的な重要性は、全身NO供与体により、バルーン血管形成術6ヶ月後に血管造影-再狭窄が減少することを示唆するヒトにおける最近の仮報告によってさらに支持される(The ACCORD Study Investigations、J.Am.Coll.Cardiol.23:59A.(Abstr.)、1994)。
【0016】
血管の内皮層および中膜層への損傷は、例えば、バルーン血管形成術およびステント処置の過程でしばしば起こるが、新生内膜増殖を刺激し、これによりアテローム硬化型血管の再狭窄に至ることが見出されている。
【0017】
動脈内の内皮機能で最も最初に理解されたものは、高い反応性の血液由来物質と動脈の内膜との間の障壁としての機能である。血小板、単球および好中球が内膜に浸潤すると、動脈内で様々な生物学的活性が発生する。これらの反応は、血小板由来のATPおよびPDGFならびに単球および好中球由来のIL-1、IL-6、TNFaおよびbFGFなどの活性化因子の放出に起因する。これらの活性化因子の放出の重要な結果は、平滑筋細胞の細胞構造の変化であり、これにより、細胞は静止性から移動性へとシフトする。この細胞変化が血管薬では特に重要である。動脈の静止平滑筋細胞の活性化により、制御されない増殖に至り、これにより狭窄または再狭窄として周知の動脈の遮断または狭細に至る。
【0018】
遮断された動脈の非外科的処置に対する標準治療は、血管形成バルーンを用いて遮断部を再び開き、その後、多くの場合、ステントと呼ばれるワイヤ金属構造を配置し、動脈内で開口を維持するものである。この処置の不運な結果は、血管形成バルーンの膨張により内皮層がほとんど完全に破壊し、ステントに対する異物炎症応答が促進することである。そのため、血管形成術において使用したバルーンカテーテルを除去した後、動脈は直ちに活性化因子の流入に曝される。機械的介入により自然の血液/動脈バリヤが破壊されているので、平滑筋細胞による局所的な制御されていない応答が起こり、再狭窄に至ることがあまりにも多い。
【0019】
このように、当技術分野においては、内膜に損傷を有する脈管構造において新生内膜増殖を阻止するために、一酸化窒素の内因性内皮産生を刺激し補足するための新規のより良好な方法および装置が必要である。特に、損傷した動脈または他の血管における自然の創傷治癒過程を修復するためのより良好な方法および装置が必要である。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、ステントを、ステント移植部位で内因性治癒過程を促進する生物分解性の生物活性ポリマーでコートすることができるという発見に基づく。ポリマーは時間経過と共に生物分解し、動脈において自然の治癒過程を確立するまたは回復する生物活性薬剤が放出される。放出された生物活性薬剤は標的細胞内に吸収され、そこでは細胞内、細胞質、核、もしくはその両方のいずれかで作用し、または生物活性剤は細胞表面受容体分子に結合することができ、細胞に入らなくとも細胞応答を引き起こすことができる。または、ポリマー(例えば、ポリマー骨格)に結合された活性剤は、ステントが移植された周囲、例えば、自然または治療血液成分、動脈壁などと接触することによりステント移植部位で内因性治癒過程を促進する。後者の場合、ステントの治癒特性は、ステントの生物分解前であっても生じる。
【0021】
1つの態様では、ポリマー骨格を有する生物分解性の生物活性ポリマーの表面コーティングを備えたステント構造を含む移植可能な生物活性ステントが提供され、少なくとも1つの生物活性剤がポリマー骨格に共有結合により結合され、そのため、ポリマーの生物分解の結果、生物活性剤がインサイチューで生成される。
【0022】
別の態様では、生物分解性の生物活性ポリマーの表面コーティングを備えたステント構造を含む生物活性血管ステントが提供され、内皮前駆細胞(PEC)に結合された(すなわちそれらの細胞を捕捉した)少なくとも1つのリガンドがポリマーに共有結合により結合されている。このリガンドはそれ自体生物活性であり、PECの活性化も行い、または別の生物活性PEC活性化剤と共に作用してもよい。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は多孔質ステント構造;およびステント構造を被包する多層管状コーティングを有する移植可能な生物活性ステントを提供する。多層管状コーティングは少なくとも3つの層を有する:1)非結合薬剤を隔離する外側の薬剤溶出(drug-eluting)生物分解性ポリマー層;2)生物分解性の生物活性ポリマーの内側層であって、このポリマーに共有結合により結合され、インサイチューで治療効果を生成する少なくとも1つの生物活性剤を有する内側層;および3)外側層と内側層との間に、それらと接触して存在する薬物不浸透性の生物分解性障壁層。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、内皮が損傷した血管を有する患者に対して、本発明のステントをその血管内の損傷部位に移植し、ステントをその血管内で生物分解させることにより治療するための方法を提供する。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、機械的介入により損傷した内皮を有する動脈の自然治癒を促進するための方法を提供する。この方法では、本発明のステントは、動脈の自然治癒を促進するのに適した条件下で、機械的介入後に動脈に移植される。
【0026】
本発明の詳細な説明
本発明は、損傷した動脈内にステントを配置すると同時に血液/動脈障壁を回復するように設計されたステントおよび方法を提供する。本発明のステントは、ステント構造を被包する、適合性のある、再吸収性ポリマーシースを備える。本発明の方法の好ましい態様では、ステントは、血管形成処置、または動脈内皮を損傷する他の医学的処置の終わりに配置され、血流から動脈壁内へと炎症因子が浸潤するのに十分な時間経過を与えない。この方法では、ステントは損傷位置に配置され、好ましくは直ちに損傷した内皮の領域を被覆、保護し、そのため、血流から動脈壁内への炎症因子の浸潤が阻止され、これにより平滑筋細胞の増殖が制限される。
【0027】
言い換えると、本発明のステントは、本明細書に記述するような自然の内皮治癒サイクルを促進しながら、人工の内皮層として機能する。ポリマーシースは、動脈の治癒に寄与する追加の特徴を有してもよい。1つの態様では、本発明のシースまたはカバーリングは多層を備え、各層は安定した損傷の回復および損傷動脈壁の治癒への寄与において別個の機能を実施することができる。
【0028】
図1はステントストラット10および多層シースまたはカバーリングを備えた本発明のステント11の一例の概略断面図である。多層ステントを移植すると、ステントシースの外側層16は動脈壁のすぐ隣に存在する。拡散障壁層14は外側層16と内側層12との間に、両者に接触して存在する。
【0029】
外側層は、生物活性剤および/または追加の生物活性剤、またはそれらの組み合わせ、とりわけ、例えば、本明細書で開示したような細胞の増殖を制限し、または炎症を軽減するものを添加したポリマー層を含む。これらの細胞増殖制限および/または炎症軽減薬および生物活性剤はポリマー固体相に溶解させることができ、このため、好ましくは、外側層のポリマーに結合されないが、ポリマー中に添加され、ステントが定位置に配置されるまでそこに隔離される。いったん移植されると、外側層16中の活性剤は動脈壁内に拡散する。本発明の多層ステントの外側層中に加える好ましい別の生物活性剤としては、ラパマイシンおよびその類似体または誘導体のいずれか、パクリタキセルおよび任意のその類似体または誘導体、エベロリムスまたは任意のその類似体もしくは誘導体、ならびにシムバスタチンなどのスタチンが挙げられる。外側層では、非共有結合により結合した生物活性剤および/または別の生物活性剤が、当技術分野で周知のいずれかの生体適合性の生物分解性ポリマーと混合され、またはそのポリマー中に「添加される」。本発明のこの態様では、外側層は血液と接触しないからである。
【0030】
外側層中に含まれる薬剤または生物製剤(biologic)に対する拡散障壁として機能する再吸収性ポリマーの拡散障壁層12がカバーリングの外側層の内面に沿って存在し、被覆している。この拡散障壁の目的は、薬物/および生物製剤の溶出を動脈壁中に誘導し、平滑筋細胞の増殖を阻止しながら、薬物/生物製剤の内側層への経路を制限または阻止することである。拡散障壁層12は、ポリマー固体相中の生物活性剤の溶解度に関連する疎水性/親水性相互作用により薬物を分配する目的を達成することができる。例えば、外側層中の生物活性剤または追加の生物活性剤が疎水性であれば、ポリマー障壁層は、薬剤よりも疎水性が低くなるように選択され、外側層中の生物活性剤または追加の生物活性剤が親水性であれば、障壁層は疎水性となるように選択される。例えば、障壁層は、ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステルウレタン)、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリ(エステルエーテル)、またはこれらのコポリマーなどのポリマーから選択することができる。これらの帯電特性は当業者には周知である。
【0031】
内皮前駆細胞を有する循環血液に曝される、本発明の多層生物吸収性ステントの内側層12を製造するために、特に本明細書で記述される型の(例えば、本明細書において構造I〜VIにより記述される化学構造を有する)、血液適合性ポリマーを使用する。1つまたは複数の生物活性剤(「追加の生物活性剤」(すなわち、内皮形成(endothelialization)の自然の過程に関係しないもの)ではない)は、本明細書に記述の技術を使用して内側層中のポリマーに共有結合により結合する。本発明のステントの他の態様におけるように、生物活性剤は循環内皮前駆細胞を活性化させ、シースの内側に引き付けるように選択され、これにより、天然の内皮細胞層の回復過程が開始する。
【0032】
1つの態様では、本発明の多層ステントの製造において使用されるステント構造は、従来のステント、例えばステンレス鋼またはワイヤメッシュステント構造にとって代わる十分な強度および剛性を有する生物吸収性材料から作製される。本明細書で記述されているように架橋ポリ(エステルアミド)、ポリカプロラクトン、またはポリ(エステルウレタン)をこの目的に使用することができ、そのため、例えば3〜12ヶ月の期間にわたり、ステントは完全に生物吸収される。この場合、時間の経過と共に、各層およびステント構造は、天然の酵素作用により体内に再吸収され、これにより、内皮細胞層が回復し、血液/動脈障壁として作用する機能、および一酸化窒素の産生により動脈壁内の細胞内マトリクスの自然制御と安定化とを提供する機能といった2つの機能が再開される。
【0033】
別の態様では、本発明は生物分解性の生物活性ポリマーの表面コーティングを備えたステント構造を含む移植可能な生物活性ステントを提供する。この場合、ポリマーは共有結合によりポリマーに結合された少なくとも1つの生物活性剤を含み、ポリマーの生物分解により、少なくとも1つの治療用生物活性剤がインサイチューで生成される。
【0034】
本明細書で使用されるように、「生物分解性」という用語は、本発明のステントの少なくともポリマーコーティングが、身体の正常な機能において無害で生物活性な生成物に分解されることを意味する。好ましい態様では、ステント全体、例えばステント構造が生物分解性である。生物分解性の生物活性ポリマーは生物分解性を提供する加水分解性エステル結合を有し、典型的にはカルボキシル基が鎖の末端である。
【0035】
本発明の実施に使用するのに適したポリマーは、生物活性剤をポリマーに共有結合により容易に結合させることができる官能性を有する。例えば、カルボキシル基を有するポリマーは、アミノ部分を有する生物活性剤と容易に反応することができ、これにより、得られたアミド結合により、生物活性剤はポリマーに共有結合により結合される。本明細書で以下、説明するように、生物分解性の生物活性ポリマーおよび生物活性剤は、生物活性剤を生物分解性の生物活性ポリマーに共有結合により結合させるのに使用することができる多くの相補的な官能基を含むことができる。
【0036】
本明細書で使用されるように、「生物活性」という用語は、ポリマーの生物分解中に生物活性剤または治療剤を放出することにより、ステント移植部位で内皮治癒過程において、ポリマーが積極的な役割を果たすことを意味する。本発明のステントのコーティングにおいて使用されるポリマーへの共有結合が考慮される生物活性剤としては、ポリマー分解中にポリマー骨格から遊離すると、自然の創傷治癒治療剤、例えば内皮細胞により内性的に産生される一酸化窒素の内皮産生を促進する薬剤が挙げられる。または、分解中にポリマーから放出される生物活性剤は、損傷部位の血管の平滑筋細胞の増殖を制御しながら、内皮細胞による自然の創傷治癒過程を直接促進してもよい。これらの生物活性剤は、一酸化窒素を供与する、移動させす、または放出する、一酸化窒素の内因性レベルを上昇させる、一酸化窒素の内因性合成を刺激する、または一酸化窒素シンターゼの基質として機能する、あるいは平滑筋細胞の増殖を阻止するいずれの薬剤であってもよい。そのような薬剤としては、例えば、アミノキシル、フロキサン、ニトロソチオール、ニトレートおよびアントシアニン;アデノシンなどのヌクレオシドおよびアデノシン二リン酸(ADP)およびアデノシン三リン酸(ATP)などのヌクレオチド;神経伝達物質/神経修飾物質、例えばアセチルコリンおよび5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン/5-HT);ヒスタミンおよびカテコールアミン、例えばアドレナリンおよびノルアドレナリン;スフィンゴシン-1-ホスフェートおよびリゾホスファチジン酸などの脂質分子;アルギニンおよびリシンなどのアミノ酸;ペプチド、例えばブラジキニン、サブスタンスPおよびカルシウム遺伝子関連ペプチド(CGRP)、およびタンパク質、例えばインスリン、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびトロンビンが挙げられる。
【0037】
さらに、PECを捕獲するための生物活性剤の例は、周知のPEC表面マーカに対し誘導されるモノクローナル抗体である。内皮細胞の表面を装飾することが報告されている相補決定基(CD)としては、CD31、CD34+、CD34-、CD102、CD105、CD106、CD109、CDw130、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147およびCD166が挙げられる。これらの細胞表面マーカは様々な特性を有することができ、特別な細胞/発現型/段階に対する特異性の程度は、多くの場合において、完全には特徴づけされない。さらに、抗体が作られているこれらの細胞マーカ分子は(抗体認識の観点から)とりわけ、同じ系統の細胞上のCDとオーバーラップする:内皮細胞の場合、単球。循環する内皮前駆細胞は、(骨髄)単球から成熟内皮細胞への発展経路にしばらく沿う。CD106、142および144は、成熟内皮細胞をいくつかの特異性でマークすることが報告されている。CD34は現在のところ、内皮前駆細胞に対し特異的であり、そのため、ステントが移植される血管内を循環する血液から内皮前駆細胞を捕獲するのに好ましい。そのような抗体の例としては、単鎖抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、Fabフラグメント、IgA、IgG、IgM、IgD、IgEおよびヒト化抗体が挙げられる。
【0038】
小タンパク性モチーフ、例えば細菌性タンパク質AのBドメインおよびタンパク質Gの機能的に等価な領域は、そのような抗体分子に結合し、これにより、そのような抗体分子を捕獲することが知られているが、それらは、ステント構造のポリマーコーティングに結合することができ、患者の血流からのFc領域により抗体を捕獲するリガンドとして作用する。そのため、タンパク質Aおよびタンパク質G機能領域を用い、ポリマーコーティングに結合させることができる抗体の型はFc領域を含むものである。捕獲された抗体は、ポリマー表面近くの上皮前駆細胞に次々に結合し、捕獲した内皮前駆細胞を維持し、一方、他の活性化因子、例えばブラジキニンが内皮前駆細胞を活性化する。
【0039】
生物活性剤として使用することが企図されているアミノキシルは下記構造を有する。

【0040】
例示的なアミノキシルとしては下記化合物

2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ(1);2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシ(2);および2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシ-3-カルボニル(3)。使用が企図されている別のアミノキシルとしては、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ(TEMPAMINE);4-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシル)アンモニウム-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、ヨウ化物(CAT16);4-(N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル))アンモニウム-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ(TEMPOコリン);4-(N,N-ジメチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウム-2,2,6-6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ;N-(4-(ヨードアセチル)アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ(TEMPO1A);N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ-4-イル)マレイミド(TEMPOマレイミド、MAL-6);および4-トリメチルアンモニウム-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、ヨウ化物(CAT1);3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシ;およびN-(3-ヨードアセチル)アミノ)-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシ(PROXYL1A);スクシンイミジル2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-1-オキシ-3-カルボキシレートおよび2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-1-オキシ-3-カルボン酸などが挙げられる。
【0041】
生物活性剤として使用することが企図されているフロキサンは下記構造を有する。

【0042】
例示的なフロキサンは、下記の4-フェニル-3-フロキサンカルボニトリルである。

【0043】
ニトロソチオールには、下記の例示的なニトロソチオールのような、-S-N=O部分を有する化合物が含まれる。

【0044】
アントシアニンもまた、生物活性剤として使用されるように企図されている。アントシアニンはグリコシル化アントシアニンであり、下記構造

(式中、糖は3-ヒドロキシ位に結合する)を有する。アントシアニンは、NOの産生をインビボで刺激することがわかっており、そのため、本発明の実施において生物活性剤として使用するのに適している。
【0045】
別の態様では、生物活性剤は、血管内の血流中に浮遊している内皮前駆細胞に結合し、またはそれらを捕獲するためのリガンドである。1つの態様では、リガンドは「粘着性」ペプチドまたはポリペプチド、例えばタンパク質Aおよびタンパク質Gである。タンパク質Aは、特別な抗体または免疫グロブリン分子のFc領域に結合するブドウ球菌(staphylococcus)A細菌の構成要素であり、これらの分子を同定、単離するために大規模に使用される。例えば、タンパク質Aリガンドは、下記アミノ酸配列としてもよく、もしくはこの配列を含んでいてもよい。

またはタンパク質Aリガンドは、機能的に等価なそのペプチド誘導体、例えば、下記アミノ酸配列を有する機能的に等価なペプチドとしてもよい。

【0046】
タンパク質GはG群連鎖球菌細菌の構成要素であり、タンパク質Aと同様の活性を示し、すなわち、特別な抗体または免疫グロブリン分子のFc領域に結合する。例えば、タンパク質Gリガンドは、下記アミノ酸配列を有するタンパク質Gとしてもよく、もしくはこの配列を有するタンパク質Gを含んでいてもよい。

またはンパク質Gリガンドは、機能的に等価なそのペプチド誘導体、例えば、下記アミノ酸配列を有する機能的に等価なペプチドとしてもよい。

【0047】
本発明の医療装置を被覆するポリマーコーティング(例えば、ステント構造を被覆するためのステントおよびシースの表面コーティング)中のポリマー骨格に結合するように企図された他の生物活性ペプチドとしてはブラジキニンが挙げられる。ブラジキニンは、キニノーゲンに対するプロテアーゼの作用により形成された血管作動性ペプチドである。この作用により、デカペプチドカリジン(KRPPGFSPFR)(SEQ ID NO:5)が得られ、これはさらにC末端蛋白分解性開裂を受け、ブラジキニン1ナノペプチド:(KRPPGFSPF)(SEQ ID NO:6)が、または、N末端蛋白分解性開裂を受け、ブラジキニン2ナノペプチド:(RPPGFSPFR)(SEQ ID NO:7)が得られる。ブラジキニン1および2はそれぞれ、特定のブラジキニン細胞表面受容体B1およびB2の作用薬として機能的に異なる:カリジンおよびブラジキニン2はどちらもB2受容体に対する天然のリガンドであり、それらのC末端代謝産物(それぞれ、ブラジキニン1およびオクタペプチドRPPGFSPF(SEQ ID NO:8))はB1受容体に対するリガンドである。循環ブラジキニンペプチドの一部はさらに、翻訳後修飾を受けることがある:配列中の第2のプロリン残基のヒドロキシル化(ブラジキニン2アミノ酸番号においてPro3からHyp3へ)。ブラジキニンは非常に強力な血管拡張薬であり、後毛細管細静脈の透過性を増大させ、内皮細胞に作用し、カルモジュリン、およびこれにより一酸化窒素シンターゼを活性化する。
【0048】
ブラジキニンペプチドを、本発明のステントにおいて使用するポリマー中に、そのペプチドの一端で結合させることにより組み入れる。ブラジキニンの結合されていない端は自由にポリマーから延在し、血管壁内の内皮細胞および、ステントが移植される血管中に浮遊する内皮前駆細胞と接触し、これにより接触した内皮細胞が活性化される。このようにして活性化された内皮細胞はさらに、接触した内皮前駆細胞を活性化し、これにより、損傷部位で内皮細胞活性化のカスケードが引き起こされ、一酸化窒素の内因性産生が起こる。
【0049】
さらに別の局面では、生物活性剤はヌクレオシド、例えば、アデノシンとすることができ、これは、内皮細胞の強力な活性化剤としても周知であり、内因的に一酸化窒素が産生される。
【0050】
本発明のステントにおいて血液適合性の、親水性コーティングまたは内側層を形成するのに使用するように企図されたポリマーとしては、ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリウレタン、またはこれらのコポリマーが挙げられる。特に、生物分解性ポリエステルの例としては、Biomedical Application of Polymeric Materials、Tsuruta、T.、et al.、eds.、CRC Press、1993中、179ページの、Kimura、Y.、「Biocompatible Polymers」において記述されている、ポリ(α-ヒドロキシC1〜C5アルキルカルボン酸)、例えば、ポリグリコール酸、ポリ-L-ラクチド、およびポリ-D,L-ラクチド;ポリ-3-ヒドロキシブチラート;ポリヒドロキシバレレート;ポリカプロラクトン、例えばポリ(ε-カプロラクトン);ならびに修飾(modified)ポリ(α-ヒドロキシ酸)ホモポリマー、例えば、環状ジエステルモノマー、式4(式中Rは低級アルキルである)を有する3-(S)[(アルキルオキシカルボニル)メチル]-1,4-ジオキサン-2,5-ジオンのホモポリマーが挙げられる。
【0051】
本発明のステントにおいて血液適合性の、親水性コーティングまたは内側層を形成するのに有益な生物分解性コポリマーポリエステルの例としては、コポリエステルアミド、コポリエステルウレタン、グリコリド-ラクチドコポリマー、グリコリド-カプロラクトンコポリマー、ポリ-3-ヒドロキシブチラート-バレレートコポリマー、および環状ジエステルモノマー、3-(S)[(アルキルオキシカルボニル)メチル]-1,4-ジオキサン-2,5-ジオンのL-ラクチドとのコポリマーが挙げられる。グリコリド-ラクチドコポリマーとしては、グリコール酸のL-乳酸に対するモノマーモル比5:95〜95:5を用いて形成したポリ(グリコリド-L-ラクチド)コポリマーが挙げられ、好ましくは、グリコール酸のL-乳酸に対するモノマーモル比は45:65〜95:5である。グリコリド-カプロラクトンコポリマーとしては、グリコリドおよびε-カプロラクトンブロックコポリマー、例えばモノクリル(Monocryl)またはポリグレカプロン(Poliglecaprone)が挙げられる。
【0052】
本発明の実施において使用することが企図されるポリマーの別の例としては、米国特許第5,516,881号;第6,338,047号;第6,476,204号;第6,503,538号ならびに米国特許出願第10/096,435号;第10/101,408号;第10/143,572号;および第10/194,965号において記述されているものが挙げられる。これらの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
生物分解性ポリマーおよびコポリマーは好ましくは10,000〜125,000の重量平均分子量を有し;これらのポリマーおよびコポリマーは典型的には、25℃で標準の粘度測定法により決定される、0.3〜4.0の範囲の固有粘度を有し、好ましくは0.5〜3.5である。
【0054】
使用するように企図されたポリ(カプロラクトン)は下記のような例示的な構造(I)を有する。

【0055】
使用するように企図されたポリ(グリコリド)は下記のような例示的な構造(II)を有する。

【0056】
使用するように企図されたポリ(ラクチド)は下記のような例示的な構造(III)を有する。

【0057】
アミノキシル部分を含む適したポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)の例示的な合成を以下に記述する。第1工程は、触媒としてオクチル酸スズを使用し、ベンジルアルコールの存在下、ラクチドとε-カプロラクトンを共重合させ、構造(IV)のポリマーを形成させる段階を含む。

【0058】
ヒドロキシ末端ポリマー鎖は、その後、無水マレイン酸でキャップすることができ、構造(V)を有するポリマー鎖が形成される。

【0059】
この時点で、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシをカルボキシル末端基と反応させると、4-アミノ基とカルボン酸末端基との間の反応で得られたアミド結合を介しアミノキシル部分をコポリマーに共有結合により結合させることができる。または、マレイン酸によりキャップされたコポリマーは、ポリアクリル酸とグラフトさせることができ、別のアミノキシル基をその後に結合させるための追加のカルボン酸部分が提供される。
【0060】
例示的なポリエステルアミドは下記構造(VI)

(式中、
mは約0.1〜約0.9であり;
pは約0.9〜約0.1であり;
nは約50〜約150であり;
各R1は独立に(C2〜C20)アルキレンであり;
各R2は独立に水素、または(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキルであり;
各R3は独立に水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、または(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキルであり;かつ
各R4は独立に(C2〜C20)アルキレンである)を有する。
【0061】
本発明の実施において使用するように企図されているポリマーは当技術分野において周知の様々な方法により合成することができる。例えば、トリブチルスズ(IV)触媒を通常使用し、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などを形成する。しかしながら、様々な触媒を使用して、本発明の実施に使用するのに適したポリマーを形成することができることは理解される。
【0062】
生物活性剤は、様々な適した官能基を介して生物分解性の生物活性ポリマーに共有結合により結合させることができる。例えば、生物分解性の生物活性ポリマーがポリエステルである場合、カルボキシル基末端を使用して、生物活性剤上の相補部分、例えば、ヒドロキシ、アミノ、チオなどと反応させることができる。様々な適した試薬および反応条件が、例えば「Advanced Organic Chemistry,Reactions, Mechanisms, and Structure」第5版、(2001);および「Comprehensive Organic Transformations」第2版、Larock(1999)において開示されている。
【0063】
別の態様では、生物活性剤は、アミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィドなど、または直接結合を介して構造(I)〜(VI)のポリマーのいずれかに結合させることができる。そのような結合は、適した官能性開始材料から、当技術分野において周知の合成手順を用いて形成することができる。
【0064】
本発明の1つの態様では、本発明のポリマーは、ポリマーのカルボキシル基(例えば、COOH)を介して生物活性剤に結合させることができる。特に、構造(I)〜(VI)の化合物は生物活性剤のアミノ官能基と、または生物活性剤のヒドロキシル官能基と反応することができ、それぞれ、アミド結合またはカルボン酸エステル結合を介して結合された生物活性剤を有する生物分解性の生物活性ポリマーが提供される。別の態様では、ポリマーのカルボキシル基は、ハロゲン化アシル、アシル無水物/「混合」無水物、または活性エステル内に変換させることができる。
【0065】
また、生物活性剤はリンカーを介してポリマーに結合させてもよい。実際、生物分解性の生物活性ポリマーの表面疎水性を改善し、生物分解性の生物活性ポリマーの酵素活性化に対する接触性を改善し、生物分解性の生物活性ポリマーの放出プロファイルを改善するために、リンカーを使用して生物活性剤を生物分解性の生物活性ポリマーに間接的に付着させてもよい。一定の態様では、リンカー化合物としては、分子量(MW)が約44〜約10,000、好ましくは44〜2000のポリ(エチレングリコール);セリンなどのアミノ酸;1〜100の繰り返しユニットを有するポリペプチド;および他の任意の適した低分子量ポリマーが挙げられる。リンカーは典型的には生物活性剤を、ポリマーから約5オングストローム〜最大約200オングストロームだけ分離する。
【0066】
さらに別の態様では、リンカーは式W-A-Qの二価ラジカルであり、式中、Aは(C1〜C24)アルキル、(C2〜C24)アルケニル、(C2〜C24)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、または(C6〜C10)アリールであり、WおよびQはそれぞれ、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、RはそれぞれHまたは(C1〜C6)アルキルである。
【0067】
本明細書で使用されるように、「アルキル」という用語は、直鎖または分枝炭化水素基を示し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどが挙げられる。
【0068】
本明細書で使用されるように、「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝ヒドロカルビル基を示す。
【0069】
本明細書で使用されるように、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝ヒドロカルビル基を示す。
【0070】
本明細書で使用されるように、「アリール」という用語は、6〜14の炭素原子を有する芳香族基を示す。
【0071】
一定の態様では、リンカーは約2個〜最大約25個のアミノ酸を有するポリペプチドとしてもよい。使用するように企図した、適したペプチドとしては、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リシン-L-チロシンなどが挙げられる。
【0072】
リンカーは最初にポリマーまたは生物活性剤に結合させることができる。リンカーを介して間接的に結合された生物活性剤を含むポリマーを合成する際には、当業者に周知の様々な保護基を使用し、リンカーを非保護形態または保護形態のいずれかとすることができる。
【0073】
保護リンカーの場合、リンカーの非保護末端を、最初にポリマーまたは生物活性剤に結合することができる。その後、Pd/H2水素溶解(lysis)、弱酸もしくは塩基加水分解、または当技術分野で周知の任意の他の一般的な脱保護法を用いて、保護基を脱保護することができる。脱保護したリンカーをその後、生物活性剤に結合させることができる。リンカーとしてポリ(エチレングリコール)を使用する例をスキーム1に示す。
【0074】
スキーム1
ポリマーと薬物/生物製剤との間のリンカーとして、ポリ(エチレングリコール)

(式中、

はポリマーを示し;
Rは薬物または生物活性剤のいずれかとすることができ;かつ
nは1〜200の範囲とすることができ;好ましくは1〜50である)を使用した。
【0075】
本発明による生物分解性の生物活性ポリマー(ここで、生物活性剤はアミノキシルである)の例示的な合成を下記で記述する。
【0076】
ポリエステルは、N,N'-カルボニルジイミダゾールの存在下、アミノキシル、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応させることができ、ポリエステルの鎖末端のカルボキシル基内のヒドロキシル基が、アミノキシルを含むラジカルに結合されたイミノと置換され、そのため、イミノ部分がカルボキシル基のカルボニル残基の炭素に共有結合により結合する。N,N'-カルボニルジイミダゾールはポリエステルの鎖末端のカルボキシル基内のヒドロキシル部分を中間生成物部分に変換し、この中間生成物部分はアミノキシル、例えば、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシと反応する。アミノキシル反応物は典型的には、反応物のポリエステルに対するモル比が1:1〜100:1の範囲で使用される。N,N'-カルボニルジイミダゾールのアミノキシルに対するモル比は好ましくは約1:1である。
【0077】
典型的な反応は下記の通りである。ポリエステルを反応溶媒に溶解する。反応は溶解のために使用する温度で容易に起こる。反応溶媒は、ポリエステルが溶解すればいずれの溶媒であってもよく;この情報は通常、ポリエステルの製造者から入手可能である。ポリエステルがポリグリコール酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸のL-乳酸に対するモノマーモル比は50:50を超える)である場合、115℃〜130℃の高精製(99.9+%純粋)ジメチルスルホキシドまたは室温のヘキサフルオロイソプロパノールはポリエステルを溶解するのに適している。ポリエステルがポリ-L-乳酸、ポリ-DL-乳酸またはポリ(グリコリド-L-ラクチド)(グリコール酸のL-乳酸に対するモノマーモル比は50:50または50:50未満である)である場合、室温〜50℃のテトラヒドロフラン、塩化メチレンおよびクロロホルムはポリエステルを溶解するのに適している。
【0078】
反応は典型的には、実質的に完了するまで、30分〜5時間実施する。ポリグリコール酸またはグリコール-リッチのモノマー混合物から得られたポリ(グリコリド-L-ラクチド)がポリエステルを構成する場合、2〜3時間の反応時間が好ましい。ポリ-L-乳酸がポリエステルである場合、反応は、室温で1時間、実質的に完了するまで容易に実施される。反応は好ましくは、不活性窒素雰囲気下、乾燥窒素をパージしながら実施され、反応が完了に向かう。
【0079】
生成物に対する冷非溶媒を添加することにより、反応混合物から生成物を沈澱させてもよい。例えば、アミノキシル含有ポリグリコール酸およびグリコール酸リッチモノマー混合物から形成されたアミノキシル含有ポリ(グリコリド-L-ラクチド)は、冷メタノールまたは冷アセトン/メタノール混合物を添加することにより熱ジメチルスルホキシドから容易に沈澱し、その後、濾過により回収する。生成物が、生成物に対する冷溶媒を添加することにより容易に沈澱しない場合、生成物および溶媒は真空技術を使用することにより分離してもよい。例えば、アミノキシル含有ポリ-L-乳酸は都合よく、このように溶媒から分離される。回収した生成物は、さらに、生成物を溶解しない溶媒、例えば、本明細書の修飾ポリグリコール酸、ポリ乳酸およびポリ(グリコリド-L-ラクチド)生成物の場合はメタノールで水および副生成物(例えば、尿素)を洗い流すことにより、容易に精製することができる。そのような洗浄後残った溶媒は真空乾燥を使用して除去してもよい。
【0080】
本発明によるステントは典型的には円筒形状である。円筒構造の壁は、中に開口がある、例えばメッシュの、金属またはポリマーから形成することができる。ステントを体腔、例えば血管に移植し、ステントはそこに永久に存在し、血管を開いたままとし、心筋への血流を改善し、損傷した内皮の位置で自然の創傷治癒過程を促進する。ステントはまた、身体の別の部分、例えば腎臓もしくは脳の脈管構造内に配置することができる。ステント挿入手順はかなり一般的であり、様々な型のステントが開発され、当技術分野において周知である。
【0081】
本明細書に記述のポリマーは、当技術分野で周知のように、本明細書に記述の多くの様式、例えば浸漬コーティング、噴霧コーティング、イオン堆積などにより多孔質ステント構造または他の医療装置の表面上にコートすることができる。多孔質ステントをコーティングする際、ステント構造内の細孔を塞がないように注意しなければならない。細孔は、創傷治癒の自然の生物学的過程に関与する血液内皮前駆細胞および他の血液因子を血管内部から血管壁へと接触および移動させるのに必要である。
【0082】
または、ステント構造の表面上のポリマーコーティングはステント構造全体に適用されるポリマーシースとして形成することができる。この態様では、シースはマクロファージに対する部分的な物理的バリヤとして機能し、活性化により新生内膜増殖を引き起こす平滑筋細胞の数はかなり少なくなる。多孔質ステント構造を横切る生物活性材料、例えば血流由来の前駆内皮細胞を十分移動させるために、シースをレーザにより除去し、ポリマーコーティング内に開口を形成することができる。レーザを固定したままステント構造を移動させ、構造をパターン化することができ、または、熟練者に周知の方法により予め決められたパターンに沿って移動するようにレーザをプログラムすることができる。両方を組み合わせる、すなわち、レーザおよび構造の両方を移動させることも可能である。本発明では、複雑なステントパターンを有するコートステントであっても高精度で作製することができる。
【0083】
ステント構造は、本明細書に記述の多孔質の表面特徴を含むように、適合させる(例えば、成形、スタンプ、織など)ことができるいずれかの適した物質、例えば、当技術分野において周知のものから形成することができる。例えば、ステント本体は生体適合性金属、例えば、ステンレス鋼、タンタル、ニチノール、エルジロイなど、およびそれらの適した組み合わせから形成することができる。
【0084】
例えば、金属ステント構造は、均一に配置され3次元不織マトリクスを形成し、焼結され高い多孔度、典型的には約50%〜約85%、好ましくは少なくとも約70%を示す迷路構造を形成する金属繊維を含む材料から形成することができる。金属繊維は典型的には約1ミクロン〜25ミクロンの範囲の直径を有する。ステント構造内の細孔は、約30ミクロン〜約65ミクロンの範囲の平均直径を有することができる。冠状動脈内で使用するためには、ステント構造は100%ステンレス鋼で製造すべきであり、完全にアニールしたステンレス鋼が好ましい金属である。ステント構造は、当業者に周知なように膨張可能なバルーンの形態をとることができる。
【0085】
1つの態様では、ステント構造はそれ自体完全に生物分解性であり、当業者に周知の、架橋可能な「星構造ポリマー」、またはデンドリマーから製造される。1つの局面では、ステント構造は、本明細書で記述されるように、生物分解性の架橋ポリ(エステルアミド)、ポリカプロラクトン、またはポリ(エステルウレタン)から形成される。本発明の多層生物分解性ステントでは、ステント構造(すなわち、「ステントストラット」)は好ましくは生物分解性であり、このため、そのような架橋可能なポリマーまたはデンドリマーから製造される。
【0086】
ポリマー/生物活性剤の結合
1つの態様では、本明細書で記述されるように、本発明のステントおよび他の医療装置のための表面カバーリングを製造するのに使用されるポリマーは、ポリマーに直接結合された血管の自然の再内皮形成(re-endothelialization)を促進する1つまたは複数の生物活性剤を有する。ポリマーの残基は、1つまたは複数の生物活性剤の残基に結合させることができる。例えば、ポリマーの1つの残基は生物活性剤の1つの残基に直接結合させることができる。ポリマーおよび生物活性剤はそれぞれ1つの自由原子価(open valence)を有することができる。または、血管の自然の再内皮形成を促進する複数の生物活性剤、または生物活性剤混合物を直接ポリマーに結合させることができる。しかしながら、各生物活性剤の残基はポリマーの対応する残基に結合させることができるので、1つまたは複数の生物活性剤の残基数はポリマーの残基上の自由原子価の数に対応させることができる。
【0087】
本明細書で使用されるように、「ポリマーの残基」という用語は、1つまたは複数の自由原子価を有するポリマーのラジカルを示す。本発明のポリマー(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上)の合成により実現可能な1つの原子、複数の原子、または官能基のいずれも除去することができ、自由原子価が得られる。ただし、ラジカルが生物活性剤の残基に結合されている場合、生物活性が実質的に保持されることを条件とする。さらに、合成により実現可能な官能基(例えば、カルボキシル)はいずれも、ポリマー上(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上)で生成させることができ、自由原子価が得られる。ただし、ラジカルが生物活性剤の残基に結合されている場合、生物活性が実質的に保持されることを条件とする。所望の結合に基づき、当業者は、当技術分野において周知の手順を用い本発明のポリマーから誘導することができる適切に官能性をもたせた開始材料を選択することができる。本明細書で使用されるように、「式(*)の化合物の残基」という用語は、1つまたは複数の自由原子価を有する式(VI)の化合物のラジカルを示す。式(I〜VI)の化合物(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上)の合成により実現可能な1つの原子、複数の原子、または官能基のいずれも除去することができ、自由原子価が得られる。ただし、ラジカルが生物活性剤の残基に結合されている場合、生物活性が実質的に保持されることを条件とする。さらに、合成により実現可能な官能基(例えば、カルボキシル)はいずれも、式(I〜VI)の化合物上(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上)で生成させることができ、自由原子価が得られる。ただし、ラジカルが生物活性剤の残基に結合されている場合、生物活性が実質的に保持されることを条件とする。所望の結合に基づき、当業者は、当技術分野において周知の手順を用い式(I〜VI)の化合物から誘導することができる適切に官能性をもたせた開始材料を選択することができる。
【0088】
生物活性剤の残基は、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接結合(例えば、C-C結合)を介して式(I)〜(VI)の化合物の残基に結合させることができる。式中、各Rは独立に、Hまたは(C1〜C6)アルキルである。そのような結合は適切に官能性をもたせた開始材料から当業者に周知の合成手順を使用し、形成することができる。所望の結合に基づき、当業者は、当技術分野において周知の手順を用い、式(I)〜(VI)の化合物の残基および生物活性剤の所定の残基から誘導できる適切な官能性開始材料を選択することができる。生物活性剤の残基は、式(I)〜(VI)の化合物の残基上の合成により可能な位置のいずれにも直接結合させることができる。さらに、本発明はまた、式(I)〜(VI)の化合物に直接結合された1つの生物活性剤または複数の生物活性剤の複数の残基を有する化合物を提供する。
【0089】
1つまたは複数の生物活性剤を、直接ポリマーに結合させることができる。特に、生物活性剤の各々の残基はそれぞれ、ポリマーの残基に直接結合させることができる。任意の適切な数の生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合することができる。ポリマーに直接結合させることができる生物活性剤の数は典型的にはポリマーの分子量に依存しうる。例えば、式(VI)の化合物(式中、nは約50〜約150である)では、最大約450までの生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合させることができ、最大約300までの生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合させることができ、または、最大約150までの生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合させることができる。同様に、式(IV)の化合物(式中、nは約50〜約150である)では、最大約450までの生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合させることができ、最大約300までの生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合させることができ、または、最大約150までの生物活性剤(すなわち、その残基)をポリマー(すなわち、その残基)に直接結合させることができる。
【0090】
本発明のポリマーの残基、式(VI)の化合物の残基、および/または式(IV)の化合物の残基は、任意の適した試薬および反応条件を使用し形成させることができる。適した試薬および反応条件は、例えば「Advanced Organic Chemistry, Part B:Reactions and Synthesis」第2版、Carey and Sundberg(1983);「Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structures」、第2版、March(1977);および「Comprehensive Organic Transformations」第2版、Larock(1999)に開示されている。
【0091】
本発明の1つの態様では、ポリマー(すなわち、その残基)は、ポリマーのカルボキシル基(例えば、COOR2)を介して生物活性剤(すなわち、その残基)に結合させることができる。とりわけ、式(VI)の化合物(式中、R2は独立に、水素、または(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキルである)は生物活性剤のアミノ官能基または生物活性剤のヒドロキシル官能基と反応することができ、それぞれ、アミド結合を有するポリマー/生物活性剤またはカルボン酸エステル結合を有するポリマー/生物活性剤が得られる。別の態様では、ポリマーのカルボキシル基は、ハロゲン化アシルまたはアシル無水物に変換することができる。
【0092】
追加の生物活性剤
本明細書で使用されるように、「追加の生物活性剤」は、本明細書で開示されている血管の再内皮形成の自然の創傷治癒過程を促進する上記「生物活性」剤以外の治療剤または診断用薬剤を示す。そのような追加の生物活性剤もまた、本発明のステントの表面上のポリマーコーティングまたは、当業者に周知の異なる治療目的を有する他の型の挿入可能なもしくは移植可能な医療または治療装置をコートするために使用されるポリマーに結合させることができる。ここで、ポリマーコーティングが治療表面または血液細胞もしくは因子と接触するか、または生物分解によりポリマーコーティングからの放出があることが望ましい。しかしながら、そのような追加の生物活性剤は、本発明の多層ステントの内側層では使用されておらず、内側層は血管の再内皮形成の自然創傷治癒過程を促進する生物活性剤のみを含む。
【0093】
特に、そのような追加の生物活性剤としては、下記のもののうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない:ポリヌクレオチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、遺伝子治療剤、ヌクレオチド類似体、ヌクレオシド類似体、ポリ核酸デコイ、治療用抗体、アブシキシマブ、抗炎症剤、血液修飾因子(modifier)、抗血小板薬、抗凝固剤、免疫抑制剤、抗腫瘍剤、抗癌剤、抗細胞増殖剤、および一酸化窒素放出剤。
【0094】
ポリヌクレオチドとしては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA/RNA二重鎖、アンチセンスポリヌクレオチド、機能RNA、またはこれらの組み合わせが挙げられる。1つの態様では、ポリヌクレオチドはRNAとすることができる。別の態様では、ポリヌクレオチドはDNAとすることができる。別の態様では、ポリヌクレオチドはアンチセンスポリヌクレオチドとすることができる。別の態様では、ポリヌクレオチドはセンスポリヌクレオチドとすることができる。別の態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むことができる。別の態様では、ポリヌクレオチドはホスホジエステル結合3'-5'および5'-3'ポリヌクレオチド骨格を含むことができる。また、ポリヌクレオチドは、非ホスホジエステル結合、例えばホスホチオエート型、ホスホラミデートおよびペプチド-ヌクレオチド骨格を含むことができる。別の態様では、部分をポリヌクレオチドの骨格の糖に結合させることができる。そのような結合を生成する方法は当業者に周知である。
【0095】
ポリヌクレオチドは一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。ポリヌクレオチドは任意の適した長さを有することができる。特に、ポリヌクレオチドは、長さ約2〜約5,000ヌクレオチド(両数字を含む);約2〜約1000ヌクレオチド(両数字を含む);約2〜約100ヌクレオチド(両数字を含む);または約2〜約10ヌクレオチド(両数字を含む)とすることができる。
【0096】
アンチセンスポリヌクレオチドは典型的には、標的タンパク質をコードするmRNAに相補的なポリヌクレオチドである。例えば、mRNAは癌促進タンパク質、すなわち、発癌遺伝子産物をコードすることができる。アンチセンスポリヌクレオチドは一本鎖mRNAに対し相補的であり、二重鎖を形成し、これにより標的遺伝子の発現を阻止、すなわち、発癌遺伝子の発現を阻止する。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは標的タンパク質をコードするmRNAと二重鎖を形成することができ、標的タンパク質の発現を阻止する。
【0097】
「機能RNA」はリボザイムまたは翻訳されない他のRNAを示す。
【0098】
「ポリ核酸デコイ」は、ポリ核酸デコイに細胞因子が結合すると細胞因子の活性を阻害するポリ核酸である。ポリ核酸デコイは細胞因子に対する結合部位を含む。細胞因子の例としては、転写因子、ポリメラーゼおよびリボソームが挙げられるが、これらに限定されない。翻訳因子デコイとして使用するためのポリ核酸デコイの一例は、転写因子のための結合部位を含む二本鎖ポリ核酸である。または、転写因子のためのポリ核酸デコイはそれ自体にハイブリダイズし、標的転写因子のための結合部位を含むスナップバック(snap-back)二本鎖を形成する一本鎖核酸とすることができる。転写因子デコイの一例はE2Fデコイである。E2Fは細胞周期調節に関連し、細胞の増殖を引き起こす遺伝子の転写において役割を果たす。E2Fを制御すると、細胞増殖の調節が可能となる。例えば、損傷(例えば、血管形成術、手術、ステント挿入)後、平滑筋細胞は損傷に応じて増殖する。増殖により治療領域の再狭窄(細胞増殖による動脈の閉鎖)が引き起こされる。そのため、E2F活性の調整により細胞増殖が制御され、E2F活性の調整を使用して、増殖を減少させ、動脈の閉鎖を避けることができる。他のそのようなポリ核酸デコイおよび標的タンパク質の例としては、ポリメラーゼを阻害するためのプロモータ配列およびリボソームを阻害するためのリボソーム結合配列が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は任意の標的細胞因子を阻害するように構成されたポリ核酸デコイを含むことは理解される。
【0099】
「遺伝子治療剤」は遺伝子を標的細胞に導入し、発現させることにより、標的細胞において遺伝子産物の発現を引き起こす薬剤を示す。そのような遺伝子治療剤の一例は、細胞内に導入されると、タンパク質、例えばインスリンの発現を引き起こす遺伝子構築物である。または、遺伝子治療剤は標的細胞内での遺伝子の発現を減少させることができる。そのような遺伝子治療剤の一例は、ポリ酢酸セグメントを細胞内へ導入すると、標的遺伝子と一体となり、遺伝子の発現を阻止するものである。そのような薬剤の例としては、相同組み換えにより遺伝子を阻止することができるウイルスおよびポリヌクレオチドが挙げられる。細胞を用いて遺伝子を導入、阻止する方法は当業者に周知である。
【0100】
本発明のオリゴヌクレオチドは任意の適した長さを有することができる。特に、オリゴヌクレオチドの長さは約2〜約100ヌクレオチド(両数字を含む);最大約20ヌクレオチド(数字を含む);または約15〜約30ヌクレオチド(両数字を含む)とすることができる。オリゴヌクレオチドは一本鎖または二本鎖とすることができる。1つの態様では、オリゴヌクレオチドは一本鎖とすることができる。オリゴヌクレオチドはDNAまたはRNAとすることができる。1つの態様では、オリゴヌクレオチドはDNAとすることができる。1つの態様では、オリゴヌクレオチドは一般に周知の化学的方法により合成することができる。別の態様では、オリゴヌクレオチドは商業的供給元から得ることができる。オリゴヌクレオチドとしては、少なくとも1つのヌクレオチド類似体、例えばブロモ類似体、アジド類似体、蛍光類似体またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチド類似体は当業者に周知である。オリゴヌクレオチドは連鎖停止剤(chain terminator)を含むことができる。オリゴヌクレオチドはまた、架橋剤または蛍光タグとして使用することもできる。多くの一般的な結合を使用して、オリゴヌクレオチドを別の部分、例えば、ホスフェート、ヒドロキシルなどに結合することができる。または、オリゴヌクレオチドに組み込んだヌクレオチド類似体を介して、ある部分をオリゴヌクレオチドに結合させてもよい。別の態様では、オリゴヌクレオチドはホスホジエステル結合3'-5'および5'-3'オリゴヌクレオチド骨格を含むことができる。または、オリゴヌクレオチドは非ホスホジエステル結合、例えば、ホスホチオエート型、ホスホラミデートおよびペプチド-ヌクレオチド骨格を含むことができる。別の態様では、部分はオリゴヌクレオチドの骨格の糖に結合させることができる。そのような結合を生成する方法は当業者に周知である。
【0101】
ヌクレオチドおよびヌクレオシド類似体は当技術分野で周知である。そのようなヌクレオシド類似体の例としては、サイトベン(Cytovene(登録商標)、Roche Laboratories)、エピビル(Epivir(登録商標)、Glaxo Wellcome)、ジェムザール(Gemzar(登録商標)、Lilly)、ハイビッド(Hivid(登録商標)、Roche Laboratories)、レベトロン(Rebetron(登録商標)、Schering)、ヴァイデックス(Videx(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、ゼリット(Zerit(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、およびゾビラックス(Zovirax(登録商標)、Glaxo Wellcome)が挙げられるが、これらに限定されない。「Physician's Desk Reference」2001年版を参照のこと。
【0102】
本発明のステントカバーリングおよび他の医療装置においてポリマーに結合された追加の生物活性剤として機能するポリペプチドは任意の適した長さを有することができる。特に、ポリペプチドの長さは、約2〜約5,000アミノ酸(両数字を含む);約2〜約2,000アミノ酸(両数字を含む);約2〜約1,000アミノ酸(両数字を含む);または約2〜約100アミノ酸(両数字を含む)とすることができる。
【0103】
ポリペプチドはまた「ペプチド模倣体(mimetics)」を含むことができる。ペプチド類似体は、製薬産業において、鋳型ペプチドと類似する性質を有する非ペプチド生物活性剤として一般に使用される。これらの型の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣体(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics」と呼ばれる。Fauchere、J.(1986)Adv. Bioactive agent Res.、15:29;Veber and Freidinger(1985)TINS p.392;およびEvans et al.(1987)J. Med. Chem.、30:1229;ならびに、通常、コンピュータ分子モデリングの支援により開発される。一般に、ペプチド模倣体は構造上、パラダイムポリペプチド(すなわち、生物化学特性または薬理活性を有するポリペプチド)に類似するが、当技術分野で周知の方法、およびさらに下記参考文献

に記述されている方法により、以下からなる群より選択される結合により置換されていてもよい1つまたは複数のペプチド結合を有する:--CH2NH--、--CH2S--、CH2−CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--。そのようなペプチド模倣体はポリペプチド態様よりもかなりの利点を有することがあり、例えば、以下を含む:より経済的な製造、より大きな化学的安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効能、有効性など)、変動した特異性 (例えば、広域生物活性)、抗原性の減少など。
【0104】
さらに、ポリペプチド内の1つまたは複数のアミノ酸をL-リシンの代わりにD-リシンにより置換させて、より安定なポリペプチドおよび内因性プロテアーゼに耐性のあるポリペプチドを生成してもよい。
【0105】
1つの態様では、本発明の医療装置のためのポリマーコーティングに結合された追加の生物活性剤ポリペプチドは抗体とすることができる。1つの態様では、抗体は細胞接着分子、例えば、カドヘリン、インテグリンまたはセレクチンに結合することができる。別の態様では、抗体は細胞外基質分子、例えばコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチンまたはラミニンに結合することができる。さらに別の態様では、抗体は受容体、例えば、アドレナリン受容体、B細胞受容体、補体受容体、コリン受容体、エストロゲン受容体、インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体、成長因子受容体またはT細胞受容体に結合することができる。(本発明の医療装置において、直接またはリンカーにより)ポリマーに結合させた抗体はまた、血小板凝集因子(例えば、フィブリノーゲン)、細胞増殖因子(例えば、成長因子およびサイトカイン)、ならびに血液凝固因子(例えば、フィブリノーゲン)に結合することができる。別の態様では、抗体は活性剤、例えば毒素に結合することができる。別の態様では、抗体はアブシキシマブ(Abciximab(ReoProR))とすることができる。アブシキシマブは、β(3)インテグリンに結合するキメラ抗体のFabフラグメントである。アブシキシマブは、例えば、血液細胞上の、血小板糖タンパク質IIb/IIIa受容体に対し特異的である。ヒト大動脈平滑筋細胞はα(v)β(3)インテグリンをその表面に発現する。β(3)発現平滑筋細胞を処理すると、他の細胞の接着が阻止され、細胞遊走または増殖が減少し、これにより、経皮冠動脈介入(CPI)、例えば、狭窄、血管形成術、ステント挿入後の再狭窄が減少する。アブシキシマブはまた、血小板の凝集を阻止する。
【0106】
1つの態様では、ペプチドはグリコペプチドとすることができる。「グリコペプチド」はサッカライド基により置換されていてもよい多重環ペプチドコアにより特徴づけられるオリゴペプチド(例えば、ヘプタペプチド)抗生物質、例えばバンコマイシンを示す。この定義に含まれるグリコペプチドの例はRaymond C. RaoおよびLouise W. Crandallによる「Glycopeptides Classification, Occurrence, and Discovery」(Marcal Dekker、Inc.により発行された、Ramakrishnan Nagarajan編集の「Bioactive agents and the Pharmaceutical Sciences」Volume 63)において見出すことができる。グリコペプチドの他の例は下記に開示されている。

代表的なグリコペプチドとしては、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB-65、アクタプラニン、アクチノイジン、アルダシン、アボパルシン、アズレオマイシン、バルヒミエイン、クロロオリエンチエイン、クロロポリスポリン、デカプラニン、-デメチルバンコマイシン、エレモマイシン、ガラカルジン、ヘルベカルジン、イズペプチン、キブデリン、LL-AM374、マノペプチン、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA-7653、オレンチシン、パルボジシン、リストセチン、リストマイシン、シンモニシン、テイコプラニン、UK-68597、UD-69542、UK-72051、バンコマイシンなどとして同定されるものが挙げられる。本明細書で使用されるように「グリコペプチド」または「グリコペプチド抗生物質」という用語はまた、糖部分のない、上記で開示した一般クラスのグリコペプチド、すなわちアグリコンシリーズのグリコペプチドを含むものとする。例えば、穏やかな加水分解によるバンコマイシン上のフェノールに結合された二糖部分を除去すると、バンコマイシンアグリコンが得られる。上記で開示した一般クラスのグリコペプチドの合成誘導体もまた、「グリコペプチド抗生物質」の用語の範囲内に含まれ、例えば、アルキル化およびアシル化誘導体が含まれる。その上、バンコマイシンと同様に、追加のサッカライド残基、とりわけアミノグリコシドが、さらに結合されたグリコペプチドはこの用語の範囲内に含まれる。
【0107】
「脂質化グリコペプチド」という用語は、特に、合成により脂質置換基を含むように修飾されたグリコペプチド抗生物質を示す。本明細書で使用されるように、「脂質置換基」という用語は、5またはそれ以上の炭素原子、好ましくは、10〜40の炭素原子を含む任意の置換基を示す。脂質置換基は、任意に、ハロ、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される1〜6のヘテロ原子を含んでもよい。脂質化グリコペプチド抗生物質は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,840,684号、同第5,843,889号、同第5,916,873号、同第5,919,756号、同第5,952,310号、同第5,977,062号、同第5,977,063号、EP 667,353、WO 98/52589、WO 99/56760、WO 00/04044、WO 00/39156を参照のこと。これらの開示内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0108】
本発明のステントおよび他の医療装置のポリマーコーティングに付着させる、または本発明の多層ステントの外側層中に添加するのに有益な抗炎症剤としては、例えば、鎮痛薬(例えば、NSAIDSおよびサリチラート)、抗リウマチ薬、胃腸薬、痛風薬、ホルモン(グルココルチコイド)、鼻内薬、点眼薬、耳薬(例えば、抗生物質およびステロイドの組み合わせ)、呼吸器薬、ならびに皮膚および粘膜薬が挙げられる。「Physician's Desk Reference」2001年版を参照のこと。とりわけ、抗炎症剤としてはデキサメタゾンが挙げられ、これは化学的には、(11β,16α)-9-フルオロ-11,17,21-トリヒドロキシ-16-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンとして示される。または、抗炎症剤としてはシロリムス(ラパマイシン)が挙げられ、これはストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)から単離されたトリエンマクロライド抗生物質である。
【0109】
抗血小板薬または抗凝固剤としては、例えば、クマジン(Coumadin(登録商標)、DuPont)、フラグミン(Fragmin(登録商標)、Pharmacia&Upjohn)、ヘパリン(Heparin(登録商標)、Wyeth-Ayerst)、ロベノクス(Lovenox(登録商標))、ノルミフロ(Normiflo(登録商標))、オルガラン(Orgaran(登録商標)、Organon)、アグラスタット(Aggrastat(登録商標)、Merck)、アグリリン(Agrylin(登録商標)、Roberts)、エコトリン(Ecotrin(登録商標)、Smithkline Beecham)、フロラン(Flolan(登録商標)、Glaxo Wellcome)、ハーフプリン(Halfprin(登録商標)、Kramer)、インテグリリン(Integrillin(登録商標)、COR Therapeutics)、インテグリリン(Integrillin(登録商標)、Key)、ペルサンチン(Persantine(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、プラヴィクス(Plavix(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、レオプロ(ReoPro(登録商標)、Centecor)、チクリド(Ticlid(登録商標)、Roche)、アボキナーゼ(Abbokinase(登録商標)、Abbott)、アクチバーゼ(Activase(登録商標)、Genentech)、エミナーゼ(Eminase(登録商標)、Roberts)、およびストレパーゼ(Strepase(登録商標)、Astra)が挙げられる。「Physician's Desk Reference」2001年版を参照のこと。とりわけ、抗血小板または抗凝固剤としては、トラピジル(アバントリン)、シロスタゾール、ヘパリン、ヒルジン、またはイルプロストが挙げられる。
【0110】
トラピジルは、化学的にN,N-ジメチル-5-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,-5-a]ピリミジン-7-アミンとして示される。
【0111】
シロスタゾールは、化学的に6-[4-(1-シクロヘキシル-1H-テトラゾール-5-イル)-ブトキシ]-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンとして示される。
【0112】
ヘパリンは、抗凝固活性を有するグリコサミノグリカン;D-グルコサミンおよびL-イズロン酸またはD-グルクロン酸のいずれかの繰り返しユニットから構成される様々なスルホン化された多糖鎖の不均一混合物である。
【0113】
ヒルジンはヒル、例えばヒルド・メジシナリス(Hirudo medicinalis)から抽出した抗凝固タンパク質である。
【0114】
イロプロストは、化学的に5-[ヘキサヒドロ-5-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-4-メチル-1-オクタン-6-イニル)-2(1H)-ペンタレニリデン]ペンタン酸として示される。
【0115】
免疫抑制剤としては、例えば、アザチオプリン(Azathioprine(登録商標)、Roxane)、BayRho-D(登録商標)(Bayer Biological)、セルセプト(CellCept(登録商標)、Roche Laboratories)、イムラン(Imuran(登録商標)、Glaxo Wellcome)、MiCRhoGAM(登録商標)(Ortho-Clinical Diagnostics)、ネオラン(Neoran(登録商標)、Notvartis)、オルソクローンOKT3(Orthoclone OKT3(登録商標)、Ortho Biotech)、プログラフ(Prograf(登録商標)、Fujisawa)、PhoGAM(登録商標)(Ortho-Clinical Diagnostics)、サンドイミューン(Sandimmune(登録商標)、Novartis)、シムレクト(Simulect(登録商標)、Novartis)、およびゼナパックス(Zenapax(登録商標)、Roche Laboratories)が挙げられる。
【0116】
特に、免疫抑制剤としては、ラパマイシンまたはサリドマイドが挙げられる。ラパマイシンはストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)から単離したトリエンマクロライドである。
【0117】
サリドマイドは化学的に2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-1H-イソ-インドール-1,3(2H)-ジオンとして示される。
【0118】
例えば、本発明の多層ステントの外側層において追加の生物活性剤として使用することができる抗癌剤または抗細胞増殖剤としては、例えば、ヌクレオチドおよびヌクレオシド類似体、例えば2-クロロ-デオキシアデノシン、補助抗腫瘍剤、アルキル化剤、ナイトロジェン・マスタード、ニトロソ尿素、抗生物質、代謝拮抗薬、ホルモン作用薬/拮抗薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、エストロゲン&ナイトロジェン・マスタードの組み合わせ、ゴナドトロピン放出ホルモン(GNRH)類似体、プロゲストリン(progestrin)、免疫調節剤、種々の抗腫瘍剤、感光剤、および皮膚および粘膜薬が挙げられる。「Physician's Desk Reference」2001年版を参照のこと。
【0119】
適した補助抗腫瘍剤としては、アンゼメット(Anzemet(登録商標)、Hoeschst Marion Roussel)、アレジア(Aredia(登録商標)、Novartis)、ジドロネル(Didronel(登録商標)、MGI)、ジフルカン(Diflucan(登録商標)、Pfizer)、エポゲン(Epogen(登録商標)、Amgen)、エルガミソール(Ergamisol(登録商標)、Janssen)、エチオール(Ethyol(登録商標)、Alza)、キトリル(Kytril(登録商標)、SmithKline Beecham)、ロイコボリン(Leucovorin(登録商標)、Immunex)、ロイコボリン(Leucovorin(登録商標)、Glaxo Wellcome)、ロイコボリン(Leucovorin(登録商標)、Astra)、ロイキン(Leukine(登録商標)、Immunex)、マリノール(Marinol(登録商標)、Roxane)、メスネックス(Mesnex(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ニューポゲン(Neupogen)(Amgen)、プロクリット(Procrit(登録商標)、Ortho Biotech)、サラゲン(Salagen(登録商標)、MGI)、サンドスタチン(Sandostatin(登録商標)、Novartis)、ジネカード(Zinecard(登録商標)、Phamacia and Upjohn)、ゾフラン(Zofran(登録商標)、Glaxo Wellcome)およびジロプリム(Zyloprim(登録商標)、Glaxo Wellcome)が挙げられる。
【0120】
適した種々のアルキル化剤としては、ミレラン(Myleran(登録商標)、Glaxo Wellcome)、パラプラチン(Paraplatin(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、プラチノール(Platinol(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)およびチオプレックス(Thioplex(登録商標)、Immunex)が挙げられる。
【0121】
適したナイトロジェン・マスタードとしては、アルケラン(Alkeran(登録商標)、Glaxo Wellcome)、サイトキサン(Cytoxan(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、イフレックス(Iflex(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ロイケラン(Leukeran(登録商標)、Glaxo Wellcome)およびマスタージェン(Mustargen(登録商標)、Merck)が挙げられる。
【0122】
適したニトロソ尿素としてはBiCNU(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、CeeNU(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、グリアデル(Gliadel(登録商標)、Rhone-Poulenc Rover)およびザノサール(Zanosar(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)が挙げられる。
【0123】
適した抗生物質としては、アドリアマイシンPFS/RDF(Adriamycin PFS/RDF(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)、ブレノキサン(Blenoxane(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、セルビジン(Cerubidine(登録商標)、Bedford)、コスメゲン(Cosmegen(登録商標)、Merck)、ダウノキソム(DaunoXome(登録商標)、NeXstar)、ドキシル(Doxil(登録商標)、Sequus)、ドキソルビシンヒドロクロリド(Doxorubicin Hydrochloride(登録商標)、Astra)、イダマイシンPFS(Idamycin PFS(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)、ミトラシン(Mithracin(登録商標)、Bayer)、ミタマイシン(Mitamycin(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ニペン(Nipen(登録商標)、SuperGen)、ノバントロン(Novantrone(登録商標)、Immunex)およびルベックス(Rubex(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)が挙げられる。
【0124】
適した代謝拮抗薬としては、サイトスター-U(Cytostar-U(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)、フルダラ(Fludara(登録商標)、Berlex)、ステリルFUDR(Sterile FUDR(登録商標)、Roche Laboratories)、ロイスタチン(Leustatin(登録商標)、Ortho Biotech)、メトトレキセート(Methotrexate(登録商標)、Immunex)、パリネトール(Parinethol(登録商標)、Glaxo Wellcome)、チオグアニン(Thioguanine(登録商標)、Glaxo Wellcome)およびキセローダ(Xeloda(登録商標)、Roche Laboratories)が挙げられる。
【0125】
適したアンドロゲンとしては、ニランドロン(Nilandron(登録商標)、Hoechst Marion Roussel)およびテスラック(Teslac(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)が挙げられる。
【0126】
適した抗アンドロゲンとしてはカソデックス(Casodex(登録商標)、Zeneca)およびオウレキシン(Eulexin(登録商標)、Shering)が挙げられる。
【0127】
適した抗エストロゲンとしては、アリミデックス(Arimidex(登録商標)、Zeneca)、ファレストン(Fareston(登録商標)、Shering)、フェマラ(Femara(登録商標)、Novartis)およびノルバデックス(Nolvadex(登録商標)、Zeneca)が挙げられる。
【0128】
適したエストロゲンおよびニトロジェン・マスタードの組み合わせとしてはエムシト(Emcyt(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)が挙げられる。
【0129】
適したエストロゲンとしてはエストレース(Estrace(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)およびエストラブ(Estrab(登録商標)、Solvay)が挙げられる。
【0130】
適したゴナドトロピン放出ホルモン(GNRH)類似体としては、ロイプロンデポト(Leupron Depot(登録商標)、TAP)およびゾラデックス(Zoladex(登録商標)、Zeneca)が挙げられる。
【0131】
適したプロゲスチンとしては、デポ-プロベラ(Depo-Provera(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)およびメガス(Megace(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)が挙げられる。
【0132】
適した免疫調節剤としては、エルガニソール(Erganisol(登録商標)、Janssen)およびプロロイキン(Proleukin(登録商標)、Chiron Corporation)が挙げられる。
【0133】
適した種々の抗腫瘍剤としては、カンプトサル(Camptosar(登録商標)、Pharmacia and Upjohn)、セレストン(Celestone(登録商標)、Schering)、DTIC-Dome(登録商標)(Bayer)、エルスパー(Elspar(登録商標)、Merck)、エトポフォス(Etopophos(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、エトポキシド(Etopoxide(登録商標)、Astra)、ゲムザール(Gemzar(登録商標)、Lilly)、ヘキサレン(Hexalen(登録商標)、U.S.Bioscience)、ハイカンチン(Hycantin(登録商標)、SmithKline Beecham)、ハイドリア(Hydrea(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ヒドロキシウレア(Hydroxyurea(登録商標)、Roxane)、イントロンA(Intron A(登録商標)、Schering)、リソドレン(Lysodren(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ナベルビン(Navelbine(登録商標)、Glaxo Wellcome)、オンカスパー(Oncaspar(登録商標)、Rhone-Poulenc Rover)、オンコビン(Oncovin(登録商標)、Lilly)、プロロイキン(Proleukin(登録商標)、Chiron Corporation)、リツキサン(Rituxan(登録商標)、IDEC)、リツキサン(Rituxan(登録商標)、Genentech)、ロフェロン-A(Roferon-A(登録商標)、Roche Laboratories)、タキソール(Taxol(登録商標)、パクリタキソール/パクリタキセル、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、タキソテレ(Taxotere(登録商標)、Rhone-Poulenc Rover)、TheraCys(登録商標)(Pasteur Merieux Connaught)、Tice BCG(登録商標)(Organon)、ベルバン(Velban(登録商標)、Lilly)、ベペシド(VePesid(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、ベサノイド(Vesanoid(登録商標)、Roche Laboratories)およびブモン(Vumon(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)が挙げられる。
【0134】
適した感光剤としてはフォトフリン(Photofrin(登録商標)、Sanofi)が挙げられる。
【0135】
特に、抗癌剤または抗細胞増殖剤としては、タキソール(Taxol(登録商標)、パクリタキソール)、一酸化窒素様化合物、またはNicOX(NCX-4016)が挙げられる。タキソール(Taxol(登録商標))(パクリタキソール)は化学的に、(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンを有する5β,20-エポキシ-1,2α4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4,10-ジアセテート2-ベンゾエート13-エステルとして示される。
【0136】
一酸化窒素様化合物には、一酸化窒素放出官能基が結合した任意の化合物(例えば、ポリマー)が含まれる。適した一酸化窒素様化合物はウシまたはヒト血清アルブミンのS-ニトロソチオール誘導体(付加物)であり、例えば、米国特許第5,650,447号において開示されている。例えば「Inhibition of neointimal proliferation in rabbits after vascular injury by a single treatment with a protein adduct of nitric oxide」;David Marks et al.、J Clin. Invest.(1995);96:2630-2638を参照のこと。NCX-4016は化学的に、2-アセトキシ-ベンゾエート2-(ニトロキシメチル)-フェニルエステルとして示され、抗血栓薬である。
【0137】
当業者であれば、本発明において有益な生物活性剤が、上記で開示した生物活性剤のいずれかに存在する生物活性物質であることが理解されることは認識される。例えば、タキソール(Taxol(登録商標))は典型的には、注射用の、わずかに黄色の粘性溶液として入手可能である。しかしながら、生物活性剤は化学名が、(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンを有する5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4,10-ジアセテート2-ベンゾエート13-エステルの結晶粉末である。「Physician's Desk Reference(PDR)」Medical Economics Company(Montvale、NJ)、(第53版)、pp.1059-1067を参照のこと。
【0138】
本明細書で使用されるように、「生物活性剤の残基」または「追加の生物活性剤の残基」は、1つまたは複数の自由原子価を有する本明細書で開示されるような生物活性剤のラジカルである。生物活性剤の任意の合成により実現可能な原子または複数の原子を除去すると自由原子価を提供することができる。ただし、ラジカルが式(I)または(VI)の化合物の残基に結合される場合、生物活性が実質的に保持されることを条件とする。所望の結合により、当業者は、当技術分野において周知の手順を用い、生物活性剤から誘導することができる、適切に官能性をもたせた開始材料を選択することができる。
【0139】
生物活性剤の残基は、任意の適した試薬および反応条件を採用することにより形成することができる。適した試薬および反応条件は、例えば「Advanced Organic Chemistry, Part B:Reactions and Synthesis」第2版、Carey and Sundberg(1983);「Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms and Structure」第2版、1977年3月;および「Comprehensive Organic Transformations」第2版、Larock(1999)。
【0140】
一定の態様では、ポリマー/生物活性剤の結合は分解し、適切かつ有効量の遊離生物活性剤が得られる。当業者であれば認識するように、生物学的薬剤(biological agent)の化学的および治療特性により、一定の他の態様では、本明細書において「リガンド」として周知の、「粘着性」ポリペプチドタンパク質Aおよびタンパク質G、ならびにブラジキニンおよび抗体の場合のように、ポリマーに結合された生物活性剤は、ポリマーに結合したまま治療効果をもたらす。このリガンドはポリマーに結合したまま、標的分子をポリマーに近接して保持するように機能し、ブラジキニンおよび抗体は、受容体を標的分子上で接触させる(例えば、衝突させる)ことにより機能する。任意の適したおよび有効量の生物活性剤を放出させることができ、典型的には、選択した、特定のポリマー、生物活性剤、およびポリマー/生物活性剤の結合に依存する。典型的には、ポリマー/生物活性剤の結合の分解により、最大約100%までの生物活性剤をポリマーから放出させることができる。特に、最大約90%、最大75%、最大50%、または最大25%までの生物活性剤をポリマーから放出させることができる。ポリマーから放出される生物活性剤の量に典型的に影響を与える因子は、ポリマー/生物活性剤の結合の種類、および製剤中に存在する追加の物質の性質および量である。
【0141】
ポリマー/生物活性剤の結合は、時間経過に伴い分解し、適切かつ有効量の生物活性剤の持続放出が可能となる。いずれの適切かつ有効な期間も選択できる。典型的には、適切かつ有効量の生物活性剤が約24時間、約7日、約30日、約90日、または約120日放出できる。生物活性剤がポリマー/生物活性剤から放出される時間の長さに典型的に影響を与える因子としては、例えば、ポリマーの性質および量、生物活性剤の性質および量、ポリマー/生物活性剤の結合の性質、ならびに製剤中に存在する追加の物質の性質および量が挙げられる。
【0142】
ポリマー/リンカー/生物活性剤の結合
式(I)〜(VI)の化合物の残基に直接結合させる以外に、生物活性剤の残基はまた、適切なリンカーによっても式(I)〜(VI)の化合物の残基に結合させることができる。リンカーの構造は重要ではない。ただし、得られた本発明の化合物が生物活性剤として効果的な治療指数を有することを条件とする。
【0143】
適したリンカーとしては、式(I)〜(VI)の化合物残基を生物活性剤残基から約5オングストローム〜約200オングストローム(両数字を含む)の距離だけ分離するリンカーが挙げられる。他の適したリンカーとしては、式(I)〜(VI)の化合物残基と生物活性剤残基とを約5オングストローム〜約100オングストローム(両数字を含む)の距離だけ分離するリンカー、および式(I)〜(VI)の化合物残基と生物活性剤残基とを約5オングストローム〜約50オングストローム、または約5オングストローム〜約25オングストローム(両数字を含む)の距離だけ分離するリンカーが挙げられる。
【0144】
リンカーは式(I)〜(VI)の化合物残基上の合成的に実現可能な任意の位置で結合させることができる。望ましい結合に基づき、当業者であれば、当技術分野において周知の手順を用い、式(I)〜(VI)の化合物および生物活性剤から導くことができる、適切に官能性をもたせた開始材料を選択することができる。
【0145】
リンカーは、好都合なことに、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(-O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、アミノ(例えば、-N(R)-)または直接(例えば、C-C)結合を介して、式(I)〜(VI)の化合物残基または生物活性剤残基に結合させることができる。式中、各Rは独立に、Hまたは(C1〜C6)アルキルである。結合は、当技術分野で周知の合成手順を用い、適切に官能性をもたせた開始材料から形成させることができる。望ましい結合に基づき、当業者であれば、当技術分野において周知の手順を用い、式(I)〜(VI)の化合物残基、生物活性剤残基、および所定のリンカーから導くことができる、適切に官能性をもたせた開始材料を選択することができる。
【0146】
特に、リンカーは式W-A-Qの二価ラジカルとすることができる。式中、Aは(C1〜C24)アルキル、(C2〜C24)アルケニル、(C2〜C24)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、または(C6〜C10)アリールであり、WおよびQはそれぞれ独立に、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、OC(=O)-、-C(=O)O-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-、または直接結合(すなわち、Wおよび/またはQが存在しない)であり、各RはそれぞれHまたは(C1〜C6)アルキルである。
【0147】
特に、リンカーは式W-(CH2)n-Qの二価ラジカルとすることができ、式中、nは約1〜約20、約1〜約15、約2〜約10、約2〜約6、約4〜約6であり;式中、WおよびQはそれぞれ独立に、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S-S-、-C(=O)-、-N(R)-、または直接結合(すなわち、Wおよび/またはQが存在しない)であり;各Rは独立にHまたは(C1〜C6)アルキルである。
【0148】
特に、WおよびQはそれぞれ、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-N(R)-、-C(=O)O-、-O-、または直接結合(すなわち、Wおよび/またはQが存在しない)である。
【0149】
特に、リンカーはサッカライドから形成した二価ラジカルとすることができる。
【0150】
特に、リンカーはシクロデキストリンから形成した二価ラジカルとすることができる。
【0151】
特に、リンカーは二価ラジカル、すなわち、ペプチドまたはアミノ酸から形成した二価ラジカルとすることができる。ペプチドは2〜約25のアミノ酸、2〜約15のアミノ酸、または2〜約12のアミノ酸を含むことができる。
【0152】
特に、ペプチドはポリ-L-リシン(すなわち、[-NHCH[(CH2)4NH2]CO-]m-Q、式中、QはH、(C1〜C14)アルキル、または適したカルボキシ保護基であり;式中、mは約2〜約25である)とすることができる。ポリ-L-リシンは約5〜約15残基を含むことができる(すなわち、mが約5〜約15である)。例えば、ポリ-L-リシンは約8〜約11残基を含むことができる(すなわち、mが約8〜約11である)。
【0153】
特に、ペプチドはまた、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-セリン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、またはポリ-L-リシン-L-チロシンとすることもできる。
【0154】
特に、リンカーは1,6-ジアミノヘキサンH2N(CH2)6NH2、1,5-ジアミノペンタンH2N(CH2)5NH2、1,4-ジアミノブタンH2N(CH2)4NH2、または1,3-ジアミノプロパンH2N(CH2)3NH2から調製することができる。
【0155】
1つまたは複数の生物活性剤を、リンカーを介して、ポリマーに結合させることができる。特に、各生物活性剤の残基をそれぞれ、リンカーを介してポリマー残基に結合させることができる。任意の適した数の生物活性剤(すなわち、その残基)を、ポリマー(すなわち、その残基)に、リンカーを介して結合することができる。リンカーを介してポリマーに結合させることができる生物活性剤の数は典型的には、ポリマーの分子量に依存することができる。例えば、nが約50〜約150である式(VI)の化合物では、最大約450までの生物活性剤(すなわち、その残基)をリンカーを介してポリマー(すなわち、その残基)に結合させることができ、最大約300までの生物活性剤(すなわち、その残基)をリンカーを介してポリマー(すなわち、その残基)に結合させることができ、または最大約150までの生物活性剤(すなわち、その残基)をリンカーを介してポリマー(すなわち、その残基)に結合させることができる。同様に、nが約50〜約150である式(IV)の化合物では、約10〜約450までの生物活性剤(すなわち、その残基)をリンカーを介してポリマー(すなわち、その残基)に結合させることができ、最大約300までの生物活性剤(すなわち、その残基)をリンカーを介してポリマー(すなわち、その残基)に結合させることができ、または最大約150までの生物活性剤(すなわち、その残基)をリンカーを介してポリマー(すなわち、その残基)に結合させることができる。
【0156】
本発明の1つの態様では、本明細書で開示されるポリマー(すなわち、その残基)は、ポリマーのカルボキシル基(例えば、COOR2)を介してリンカーに結合させることができる。
【0157】
例えば、R2が独立に、水素、または(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキルである、式(VI)の化合物は、リンカーのアミノ官能基またはリンカーのヒドロキシル官能基と反応することができ、それぞれ、アミド結合を有するポリマー/リンカーまたはカルボキシルエステル結合を有するポリマー/リンカーが得られる。別の態様では、カルボキシル基はハロゲン化アシルまたはアシル無水物に変換することができる。
【0158】
本発明の1つの態様では、生物活性剤(すなわち、その残基)は、リンカーのカルボキシル基(例えば、COOR、ここでRは水素、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキルまたは(C1〜C6)アルキルである)を介して、リンカーに結合させることができる。特に、生物活性剤のアミノ官能基または生物活性剤のヒドロキシル官能基はリンカーのカルボキシル基と反応することができ、それぞれ、アミド結合を有するリンカー/生物活性剤またはカルボン酸エステル結合を有するリンカー/生物活性剤が得られる。別の態様では、リンカーのカルボキシル基はハロゲン化アシルまたはアシル無水物に変換することができる。
【0159】
ポリマー/リンカー/生物活性剤の結合は分解し、適切かつ有効量の生物活性剤が提供される。任意の適切かつ有効量の生物活性剤を放出することができ、それは、典型的には、例えば、選択した特定のポリマー、生物活性剤、リンカーおよびポリマー/リンカー/生物活性剤の結合に依存する。特に、最大約90%、最大75%、最大50%、最大25%までの生物活性剤がポリマー/リンカー/生物活性剤から放出される。ポリマー/リンカー/生物活性剤から放出される生物活性剤の量に典型的に影響を与える因子としては、例えば、ポリマーの性質および量、生物活性剤の性質および量、リンカーの性質および量、ポリマー/リンカー/生物活性剤の結合の性質、ならびに製剤中に存在する追加の物質の性質および量が挙げられる。
【0160】
ポリマー/リンカー/生物活性剤の結合は、時間経過に伴い分解し、適切かつ有効量の生物活性剤が提供される。いずれの適切かつ有効な期間も選択できる。典型的には、適切かつ有効量の生物活性剤が約24時間、約7日、約30日、約90日、または約120日で放出できる。生物活性剤がポリマー/リンカー/生物活性剤から放出される時間の長さに典型的に影響を与える因子としては、例えば、ポリマーの性質および量、生物活性剤の性質および量、リンカーの性質、ポリマー/リンカー/生物活性剤の結合の性質、ならびに製剤中に存在する追加の物質の性質および量が挙げられる。
【0161】
生物活性剤または追加の生物活性剤と混合したポリマー
直接またはリンカーを介して、1つまたは複数の生物活性剤に結合させる他に、医療装置をコートするために、または本明細書に記述のステント構造のためのシースを作製するために使用されるポリマーを物理的に、1つまたは複数の生物活性剤または追加の生物活性剤と混合し、製剤を提供することができる。
【0162】
本明細書で使用されるように、「混合された(intermixed)」という用語は、本発明のポリマーが生物活性剤と物理的に混ざる、または本明細書で記述されるポリマーが生物活性剤と物理的に接触することを示す。
【0163】
本明細書で使用されるように、「製剤」という用語は、1つまたは複数の生物活性剤または追加の生物活性剤と混合した、本明細書に記述のポリマーを示す。製剤は、ポリマー表面上に存在し、部分的にポリマー内に埋め込まれ、または完全にポリマーに埋め込まれた1つまたは複数の生物活性剤を有するそのようなポリマーを含む。さらに、製剤は、均一組成物(すなわち、均一製剤)を形成する本明細書に記述のポリマーおよび生物活性剤を含む。
【0164】
対照的に、本発明の多層ステントでは、外側層において、非共有結合により結合された生物活性剤および/または追加の生物活性剤を、当技術分野で周知の任意の生体適合性の生物分解ポリマーと混合させる、「それらに添加する」ことができる。本発明のこの態様では外側層は血液と接触しないからである。しかしながら、内側層は、本明細書で記述されているように親水性の血液適合性ポリマーに共有結合により結合された生物活性剤のみを有する。
【0165】
任意の適した量のポリマーおよび生物活性を使用して製剤を提供することができる。ポリマーは、製剤の約0.1wt%〜約99.9wt%の量で存在することができる。典型的には、ポリマーは製剤の約25wt%;製剤の約50wt%;製剤の約75wt%;または製剤の約90wt%を超える量で存在することができる。同様に、生物活性剤は、製剤の約0.1wt%〜約99.9wt%の量で存在することができる。典型的には、生物活性剤は製剤の約5wt%;製剤の約10wt%;製剤の約15wt%;または製剤の約20wt%を超える量で存在することができる。
【0166】
本発明のさらに別の態様では、ポリマー/生物活性剤、ポリマー/リンカー/生物活性剤、製剤、または本明細で記述されているそれらの組み合わせを、ポリマー膜として医療装置(例えば、ステント構造)の表面に適用することができる。医療装置の表面はポリマー膜でコートすることができる。医療装置上のポリマー膜は任意の適した厚さとすることができる。例えば、医療装置上のポリマー膜の厚さは約1〜約50ミクロンまたは約5〜約20ミクロンとすることができる。本発明のステントおよび多層ステントでは、各層は0.1ミクロン〜50ミクロン、例えば0.5ミクロン〜5ミクロンの厚さとすることができる。
【0167】
ポリマー膜は、医療装置、例えばステント構造上の生物活性剤溶出ポリマーコーティングとして効果的に機能することができる。この生物活性剤溶出ポリマーコーティングは、任意の適したコーティング法、例えば、医療装置上でのポリマー膜の浸漬コーティング、真空蒸着、噴霧コーティングにより、医療装置上で形成させることができる。さらに、生物活性剤溶出ポリマーコーティング系は、本明細書で記述されるように、ステント、血管送達カテーテル、送達バルーン、分離ステントカバーシート構造、またはステント生物活性剤送達シースの表面上に適用することができ、1つの型の局所生物活性剤送達システムが作製される。
【0168】
生物活性剤溶出ポリマーをコートしたステントおよび他の医療装置は、ヒドロゲル系生物活性剤送達システムと共に使用することができる。例えば、1つの態様では、上記ポリマーをコートしたステントおよび医療装置は、サンドイッチ型構造として、ポリマーコートしたステント表面上に適用された追加の製剤層でコートすることができ、血管に、自然の再内皮形成過程を促進し、ステント内再狭窄を阻止または軽減する生物活性剤が送達される。そのような、ヒドロゲル系薬物放出製剤の追加の層は、ヒドロゲルと混合した様々な生物活性剤を含むことができ(例えば、米国特許第5,610,241号を参照のこと。この特許は参照により全体として本明細書に組み入れられる)、ステント構造または医療装置表面上のポリマー/活性剤コーティングの溶出速度とは異なる溶出速度が提供される。
【0169】
任意の適したサイズのポリマーおよび生物活性剤を使用して、そのような製剤を提供することができる。例えば、ポリマーは約1×10-4メートル未満、約1×10-5メートル未満、約1×10-6メートル未満、約1×10-7メートル未満、約1×10-8メートル未満、または約1×10-9メートル未満のサイズを有することができる。
【0170】
製剤は分解し、適切かつ有効量の生物活性剤を提供することができる。任意の適切かつ有効量の生物活性剤を放出させることができ、その量は典型的には、例えば、選択した特定の製剤に依存する。典型的には、最大約100%までの生物活性剤を製剤から放出させることができる。特に、最大約90%、最大75%、最大50%、または最大25%までの生物活性剤を製剤から放出させることができる。製剤から放出される生物活性剤の量に典型的に影響を与える因子としては、例えば、ポリマーの性質および量、生物活性剤の性質および量、ならびに製剤中に存在する追加の物質の性質および量が挙げられる。
【0171】
製剤は時間の経過に伴い分解し、適した有効量の生物活性剤を提供する。任意の適切かつ有効な期間を選択することができる。典型的には、適切かつ有効量の生物活性剤は、約24時間、約7日、約30日、約90日、または約120日で放出することができる。生物活性剤が製剤から放出される時間の長さに典型的に影響を与える因子としては、ポリマーの性質および量、生物活性剤の性質および量、ならびに製剤中に存在する追加の物質の性質および量が挙げられる。
【0172】
本発明はまた、1つまたは複数の生物活性剤と物理的に混合された、本明細書で記述されるようなポリマーを含む製剤でコートされた本発明のステントも提供する。製剤中に存在するポリマーは、直接またはリンカーを介して、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つまたは4つ)の生物活性剤に結合させることができる。そのようなものとして、ポリマーは1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つまたは4つ)の生物活性剤と混合することができ、直接またはリンカーを介して、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つまたは4つ)の生物活性剤に結合させることができる。
【0173】
本発明のステントを作製するのに使用されるポリマーは1つまたは複数の生物活性剤を含むことができる。1つの態様では、ポリマーは物理的に1つまたは複数の生物活性剤と混合される。別の態様では、ポリマーは1つまたは複数の生物活性剤に、直接またはリンカーを介して結合される。別の態様では、ポリマーは直接またはリンカーを介して1つまたは複数の生物活性剤に結合され、得られたポリマーはまた、1つまたは複数の生物活性剤と物理的に混合することができる。
【0174】
本発明のステントを作製するのに使用されるポリマーは、本明細書に記述されるように製剤中に存在するかどうか、本明細書に記述されるように生物活性剤に結合されているかどうか、本明細書に記述されるように生物活性剤と混合されているかどうかに関わらず、医学的療法または医学的診断において使用することができる。例えば、ポリマーは医療装置の製造に使用することができる。適した医療装置としては、例えば、人工関節、人工骨、心血管医療装置、ステント、シャント、血管形成療法において有益な医療装置、人工心臓弁、人工バイパス、縫合糸、人工動脈、血管送達カテーテル、薬物送達バルーン、分離管状ステントカバーシート構造(本明細書では「シース」と呼ばれる)、および局所生物活性剤送達システム用のステント生物活性剤送達スリーブ型が挙げられる。
【0175】
全ての出版物、特許、および特許文書は、各々が参照により組み入れられるように、参照により本明細書に組み入れられる。本発明について様々な特定の好ましい態様および技術を参照して記述してきた。しかしながら、本発明の精神および特許請求の範囲内で多くの変更および改変が可能であることを理解すべきである。
【0176】
下記実施例を参照することにより、本発明はさらに理解されるであろう。下記実施例は単に例示的なものであり、特許請求の範囲に記述される本発明の真の範囲を制限するものと考えるべきではない。
【0177】
実施例
実施例1
アミド結合の形成:
この実施例は、ポリマーのカルボキシル基と生物活性剤のアミノ官能基との結合、または同様に、生物活性剤のカルボキシル基とポリマーのアミノ官能基との結合を説明するものである。
【0178】
予め形成させた活性エステルを介した結合;カルボジイミド媒介結合
4-アミノ-Tempoのポリマーへの結合(conjugation)
遊離カルボン酸形態のPEAポリマーを最初に、活性スクシンイミジルエステル(PEA-OSu)またはベンゾトリアゾリルエステル(PEA-OBt)に変換する。この変換は、乾燥PEA-HポリマーをN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)または1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および適した脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と、無水CH2Cl2中、室温で16時間、反応させることにより達成することができる。沈澱したジシクロヘキシル尿素(DCU)を濾過して除去した後、PEA-OSu生成物を沈澱により単離してもよく、またはさらに精製せずに使用してもよく、この場合、PEA-OSu溶液を丸底フラスコに移し、所望の濃度になるまで希釈し、0℃まで冷却する。次に、遊離アミン含有生物活性剤-求核試薬、とりわけ、4-アミノ-Tempo--を含むCH2Cl2溶液を、0℃で、単回(single shot)で添加する。(同様に、生物活性剤のアンモニウム塩をヒンダード塩基、好ましくは第3アミン、例えば、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミンと、適した非プロトン溶媒、例えばジクロロメタン(DCM)中で処理することにより、求核試薬をインサイチューで明らかにしてもよい)。反応は、ニンヒドリン染色により示されるように、TLCにより遊離アミンの消費を追跡することによりモニタする。ポリマーに対する処理(work-up)には、反応溶液の、非溶剤混合物、例えばヘキサン/酢酸エチル中への反応溶液の慣例的な析出が含まれる。その後、溶媒をデカントし、ポリマー残渣を適した溶媒中で再懸濁させ、濾過し、回転蒸発(roto-evaporation)により濃縮し、清浄なテフロントレー上で鋳造し、真空下で乾燥させると、PEA-生物活性剤結合物、とりわけ、PEA-4-アミノ-Tempoが得られる。
【0179】
アミニウム/ウロニウム塩およびホスホニウム塩媒介結合
この型のカップリングのための2つの効果的な触媒としては、HBTU、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、およびBOP、1-ベンゾトリアゾリオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(Castro試薬)が挙げられる。これらの試薬を、等モル量の、ポリマーのカルボキシル基および生物活性剤(中性またはアンモニウム塩として)のアミノ官能基の存在下で、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、またはジメチル置換ピリジン(DMAP)などの第3アミンと共に、DMF、THF、またはアセトニトリルなどの溶媒中で使用する。
【0180】
実施例2
エステル結合形成:
この実施例は、ポリマーのカルボキシル基と生物活性剤のヒドロキシル官能基との結合、または、同様に、生物活性剤のカルボキシル基とポリマーのヒドロキシル官能基との結合について説明する。
【0181】
カルボジイミド媒介エステル化
結合のために、カルボキシル基含有ポリマーの試料をDCMに溶解した。このわずかに粘性の溶液に、ヒドロキシル含有薬物/生物製剤およびDMAPを含むDCM溶液を添加した。その後、フラスコを氷浴中に置き、0℃まで冷却した。次に、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)を含むDCM溶液を添加し、氷浴を除去し、反応物を室温まで温めた。結合反応物を室温で16時間撹拌し、その間、TLCを定期的に実施し、生物活性剤のヒドロキシル官能基の消費をモニタした。割り当てた時間後、反応混合物を沈澱させ、実施例1で上述したようにポリマー-生物活性剤結合体を単離した。
【0182】
実施例3
この実施例はゼラチンコート表面での、上皮細胞(EC)および平滑筋細胞(SMC)の接着および増殖に対する異なる濃度の生物活性剤の効果を説明する。
【0183】
ゼラチンコート培養プレート上に播いたヒト冠状動脈内皮細胞(EC)は、表1に示す様々な濃度で表1の生物活性剤の1つを含むEC特別培地を用いて、共培養した。
【0184】
(表1)

生物剤を添加せずに同様の条件下で培養した細胞は「対照」と考える。
【0185】
24時間後、細胞を、顕微鏡により観察し、トリパンブルーにより染色し、計数した。試験した生物剤の存在下でECを培養した場合の、細胞形態および集密度の顕微鏡観察結果を下記表2に示す。ECの接着および増殖に対する様々な生物剤の効果を図2でグラフにより示す。
【0186】
(表2)生物剤(bioagent)の存在下におけるEC形態および集密度についての顕微鏡観察

【0187】
上記表1で列挙した異なる濃度の生物剤の効果を、ECに対し記述したのと同様の条件下で、ヒト大動脈平滑筋細胞(SMC)を用いても試験した。ゼラチンコート培養プレート上に播いたSMCの接着および増殖に対する生物剤の結果を下記表3にまとめ、図3でグラフにより示す。
【0188】
(表3)生物剤の存在下におけるSMC形態および集密度についての顕微鏡観察

【0189】
実施例4
この実施例は、下記3段階で、TEMPOポリマーでコートしたBlue Medical冠状動脈ステントステンレス鋼ステント構造(Blue Medical Devices、BV、Helmund、オランダ)の前臨床動物モデル評価を報告したものである:1)移植後損傷および炎症応答の評価、2)ステント内新生内膜過形成の評価、および3)TEMPOコートステントと非コートステントとの比較。
【0190】
ステント移植
体重20〜25kgの両方の性の国内の雑種ブタを研究に使用した。ブタには脂質またはコレステロールを補充していない標準の天然穀物食餌を、研究を通して与えた。全ての動物は、研究動物の世話および使用に対するベルギー国立研究所健康指針(Belgium National Institute of Health Guide)に従い処理し、世話した。
【0191】
急性研究:
急性研究では、2つの非コートステント、および5つの別個の用量のコーティング(0% TEMPOγ、50% TEMPOγ、0% TEMPO ETO、50% TEMPO ETO、100% TEMPO+トップレイヤー(Top Layer)ETO)の各々2をランダムに、6匹のブタの冠動脈に移植した。ブタを5日後に屠殺し、ステントの移植により引き起こされる急性炎症応答および血栓形成について評価した。
TEMPO=ポリマー中の4-アミノTempoでコートしたステント;(γ=γ線照射により滅菌したステント;およびETO=酸化エチレンにより滅菌したステント
【0192】
慢性研究:
この研究では、8個の非コートステントおよび8個のTEMPOコートステント(50%TEMPOを有する4個および100%TEMPOを有する4個)をランダムに、選択したブタの冠状動脈内に移植した。ブタを6週間後に屠殺し、ストラット周囲(peri-strut)の炎症および新生内膜過形成を評価した。冠状動脈における外科的処置およびステント移植は、De Scheerderらにより記述されている方法に従い実施した(Atherosclerosis.(1995)114:105-114およびCoron Artery Dis.(1996)7:161-166)
【0193】
ステント移植前に、参照としてバルーンカテーテルを使用し、ステントを拡張させ、動脈を10%〜20%のオーバーサイズとし、これにより内皮を損傷させる。
【0194】
定量的冠状動脈血管造影:
ステントを挿入する血管セグメントの血管造影解析をステント挿入前、直後および追跡時に、ポリトロン1000(polytron 1000(登録商標)-システムを用い、De Scheerderらにより以前記述されたように実施した。血管セグメントの直径をステント移植前および直後、移植後6週間の追跡時に測定した。オーバーサイズの程度を、(測定最大バルーンサイズ−選択した動脈直径)/選択した動脈直径により表した。
【0195】
組織病理および形態計測:
冠状動脈セグメントを、ステントの近位および遠位の両方に結合した1cmの最小血管長を残し、注意深く解剖した。セグメントを10%ホルマリン溶液中で固定した。各セグメントを組織病理分析のために、近位、中位および遠位ステントセグメントに切断した。組織試料を冷重合樹脂(Technovit 7100、Heraus Kulzer GmbH、Wehrheim、ドイツ)中に埋め込んだ。5ミクロンの厚さの切片を、超硬金属ナイフを備えた回転強力ミクロトーム(HM360、Microm、Walldorf、ドイツ)で切断し、ヘマトキシリン-エオシン、弾性染色およびリンタングステン酸ヘマトキシリン染色により染色した。検査は光学顕微鏡を用いて熟練した病理学者が実施した。彼らには検査するステントの型はわかっていない。ステント配置による動脈壁の損傷(および、最終的にはポリマーにより誘発される炎症)を、各ステントフィラメントに対し評価し、Schwartzらにより記述されているように格付けした(J Am Coll Cardiol 1992;19(2):267-74)。
グレード0=内弾性板は無傷、中膜(media)は圧縮されたが破裂せず;グレード1=内弾性板破裂;グレード2=中膜が明白に破裂;外弾性板は圧縮されたが破裂せず;グレード3=外弾性板または外膜に存在するステントフィラメントを通って延在する中膜の大きな破裂
各ステントフィラメントでの炎症反応を注意深く検査し、炎症細胞を探し、下記のように格付けした。
1=ステントフィラメントの周囲のわずかに局在化した組織リンパ球;2=ステントフィラメントを被覆して組織リンパ球がより密集して位置するが、リンパ肉芽腫および/または巨細胞の形成は見られない;3=組織リンパ球、リンパ肉芽腫および/または巨細胞が広汎に位置し、中膜にも浸潤。
各フィラメントに対するスコアを加算し、存在するフィラメント数で割ることにより、各ステントに対する平均スコアを計算した。
【0196】
収集した冠状動脈セグメントの形態計測分析を、コンピュータ形態計測プログラム(Leitz CBA 8000)を用いて実施した。管腔面積、内弾性板内側の管腔面積、および外弾性板内側の管腔の測定を実施した。さらに、狭窄および新生内膜過形成の面積も計算した。
【0197】
統計:
異なる群間で比較するために、非対t検定を使用した。データは平均値±SDで表した。p値<0.05は統計学的に有意であると考えた。
【0198】
結果
定量的冠状動脈血管造影
急性試験のために使用したステントの数は限られているので、急性試験ステントは、慢性試験からのステントを用いて分類し、生じたオーバーサイズの程度を評価した。血管造影測定により、TEMPOコート群の選択した動脈セグメントおよび反跳率(recoil ratio)は裸の対照群に対するものと同様であることが示された(下記表4)。0% TEMPOγ、50% TEMPO ETO、および100% TEMPO+トップレイヤーETO群のバルーンサイズは、裸ステント(bare stent)群に対するバルーンサイズよりもかなり低かった。しかしながら、裸ステント群に比べ、異なる群においてはオーバーサイズの有意な差は見られなかった。
【0199】
(表4)定量的冠状動脈血管造影

* 裸ステント群との比較
** 反跳率=(1−移植直後の最小管腔直径/最大バルーン半径)×100(%)
【0200】
組織病理
追跡5日で、ステントフィラメント周囲の残留ポリマー材料を検出した。TEMPOコートステントおよび裸ステントの全ての炎症反応は低かった:裸ステント(1.03±0.07)に比べ、0% TEMPOγ、1.00±0.00;50% TEMPOγ、1.00±0.00;0% TEMPO ETO、1.06±0.10;50% TEMPO ETO、1.00±0.00;および100% TEMPO+トップレイヤーETO、1.00±0.00。ステントフィラメントに隣接して数個の炎症細胞が観察された。中程度の炎症反応を有するステントストラットは稀であった。ステントフィラメントを被覆する薄い血栓性網目構造が観察された。内弾性板膜がステントフィラメントの真下に存在し、中膜は中程度圧縮された。ステント配置により引き起こされる動脈損傷は低く、複数の群で同一であった(0% TEMPOγ、0.24±0.10;50% TEMPOγ、0.32±0.18;0% TEMPO ETO、0.28±0.01;50% TEMPO ETO、0.25±0.01;100% TEMPO+トップレイヤーETO、0.13±0.08;および裸ステント、0.19±0.13)。
【0201】
追跡6週で、内弾性板の破壊が、裸ステント群でしばしば観察された。いくつかのセクションでは、数個のステントストラットが外弾性板を引き裂き、外膜にさえ侵入した。TEMPOコートステント群では、ステントストラットが動脈中膜層を圧縮した。いくらかの内弾性板が破裂した。動脈中膜および/または外弾性板の破壊を示したのは数セクションだけであった。裸ステント群に比べ、TEMPOコートステント群の平均損傷スコアは減少した(表2)。さらに、TEMPOコートステント群は、軽度の炎症応答を示したにすぎなかった。余分の炎症細胞がステントストラット周囲で観察された。幾つかのステントストラットは、中程度の炎症応答を示した。中膜内に浸潤した炎症細胞はみられなかった。0% TEMPOγ、50%TEMPOγおよび50%TEMPO ETO群の平均炎症スコアは裸ステント群に比べかなり低かった。
【0202】
形態計測
追跡6週で(下記表5に示されるように)、100% TEMPO+トップレイヤーETOの管腔面積は、群の中で最も小さかった。しかしながら、裸ステント群の管腔面積に比べ、有意の差は観察されなかった(4.29±2.28対3.60±0.99、P>0.05)。全てのTEMPO群の新生内膜過形成および狭窄域(area stenosis)は、裸ステント群よりも低かったが、0% TEMPOγおよび50% TEMPOγ群のみで、新生内膜過形成および狭窄域のかなりの減少が見られた。50% TEMPOγ群の新生内膜過形成が最も低かった。
【0203】
(表5)追跡6週でのステント挿入した血管セグメントの組織形態測定分析

【0204】
結論
TEMPOコートステントおよび裸ステントは、追跡5日で同様の組織応答を引き起こした。その時点では、TEMPOコートステントでは、追加の炎症応答または血栓形成の増加は観察されなかった。追跡6週で、TEMPOコートステント群により誘発された新生内膜形成は、裸ステント群に対してよりも低かった。0% TEMPOγおよび50% TEMPOγコートステントの狭窄域および新生内膜過形成のどちらもが、裸ステントに比べてかなり低かった。さらに、裸ステント群に比べ、0% TEMPOγ、50%TEMPOγおよびTEMPO ETOでコートしたステントでは、ストラット周囲炎症がかなり減少することが観察された。結論として、TEMPOコーティングは組織応答の増加を誘発しなかった。γ線照射により滅菌したTEMPOコートステントは、追跡6週での新生内膜形成に対し、特に50% TEMPO群において、有益な効果を示した。TEMPO添加濃度の増加または/および脱保護したポリエステルアミドポリマー-PEA(H)-の上面層追加では、新生内膜過形成および狭窄域に対し一貫した阻害効果が見られなかった。
【0205】
実施例5
Noblesse臨床試験
試験設計
Noblesse(安全性および有効性のための生物分解性層を介する一酸化窒素の選択試験、Nitric Oxide through Biodegradable Layer Elective Study for Safety and Efficacy)臨床試験をヒト患者において実施し、ヒトに、薬物無しで、冠状動脈ステント上の官能性を持たせたポリマーコーティングを移植する効果を決定した。使用したステントは、PEA-Tempo、(ポリ(エステル)アミド-4-アミンTempo)官能性ポリマー(MediVas LLC、San Diego、CA)でコートしたGenicステンレス鋼ステント構造(Blue Medical Devices、BV、Helmund、オランダ)とした。
【0206】
臨床試験は、4ヶ月の血管造影追跡ならびに12ヶ月の血管造影およびIVUS追跡を含む45人の患者の多施設予測無作為化試験とした。試験は3カ所で実施した:コルドバ(アルゼンチン)、クリティバ(ブラジル)およびアイントホーフェン(オランダ)。
【0207】
全ての患者に、試験に登録する前に書面によるインフォームド・コンセントを提供した。患者は安定もしくは不安定狭心症を有するかまたは積極的な運動試験を受けること、少なくとも18歳であること、自然の冠状動脈に1つの新規標的病変を有すること、基準血管が視覚的に2.75mmを超え3.50mm未満の直径を有すること、50%を超え100%未満の標的病変狭窄を有すること、標的病変の長さが15mm未満であることが必要とされた。
【0208】
試験の第1エンドポイントは、ステント留置後4ヶ月および12ヶ月での管腔面積の遅延型損失であった。第2エンドポイントは30日、60日、120日、および12ヶ月MACE(主要冠状動脈事象)、死亡、再発性心筋梗塞、標的病変血行再建(再ステント挿入が必要)であった。
【0209】
移植処置前、各患者はステント挿入前に少なくとも100mgのアスピリンを投与され、PTCA前に300mgのクロピドグレルの経口投与を受けた。各患者は、ベースライン血管造影前、後ステント配置中、最後の後拡張血管造影後に50〜200μgの冠動脈内投与を受けた。各患者はまた、十分なヘパリンを受け、250〜300秒のACTを維持した。処置後28日間、各患者は75mg/dのクロピドグレルを受けた。
【0210】
患者人工統計
45人の患者のうち、31人(69%)が男性であった。患者の年齢は38〜83歳であり、平均年齢は62歳であった。22人の患者がブラジルで、18人がアルゼンチンで、5人がオランダで登録された。

病変特徴:
患者の治療した心臓中の血管
右冠動脈 40.0%
左前下行動脈 7.5%
左回旋動脈 22.5%
AHA/ACCクラスa
A: 14.3%
B1: 61.9%
B2: 23.8%
TIMI3(血流測定)b 100%
角形成(angulation)>45%c 19.1%
中程度の血管ねじれ率d 23.8%
平均基準血管直径e 2.98±0.32mm
ステント挿入前の平均最小管腔直径f 1.05±0.34mm
ステント挿入4ヶ月後の平均最小管腔直径g 2.74±0.26mm
ステント挿入前の平均狭窄直径h 64.69±11.59%
ステント挿入4ヶ月後の平均狭窄直径i 8.74±4.52%
平均急性ゲインj 1.69±0.42mm
患者は全て処置後24時間で退院し、合併症はなかった
心臓死 0
Q波梗塞(心電図による読み取り)k 0
非Q波梗塞 0
CABG要求l 0
TLR* 0
追跡12ヶ月での患者の結果は以下の通りである:
心臓死 0
Q波梗塞(心電図による読み取り) 0
非Q波梗塞 0
冠動脈バイパス術要求 0
TLRm 1
ステント挿入後12ヶ月での平均最小管腔直径: 2.87±0.31mm

a AHA/ACCクラスは、閉塞の重篤度に対する米国心臓病協会/米国心臓病学会格付けシステムを示す。重篤度は軽度(A1)〜中程度(B1)〜重篤(B2)と増大する。完全閉塞はCである。
b TIMI3は心筋梗塞における血栓溶解を示す。これらは血液流動性の格付けであり、1〜3に進み、3が最も流動性が高い(または、血栓症に最もなりにくい)。TIMI4は完全閉塞である。
c 角形成>45%は、標的病変内での曲がりが45%以上である標的動脈のパーセンテージを意味する。
d 中程度の血管ねじれ率(スライド5)は動脈の「ねじれ」の程度についての調停者(interventionalist)による客観評定である。
e 基準血管直径は標的病変に最も近接した自然の動脈のサイズである。
f MLD Preは「最小管腔直径」を示し、ステント留置前の病変部位の動脈の最も小さな断面を示す。
g MDL Postは「最小管腔直径」を示し、ステント留置後の病変部位の動脈の最も小さな断面を示す。
h 狭窄直径Preは、MLD Preを基準血管直径から減算し、基準血管直径で除算することにより計算される。
i 狭窄直径Postは、MLD Postを基準血管直径から減算し、基準血管直径で除算することにより計算される。
j 急性ゲインは、狭窄直径Postから狭窄直径Preを減算したものである。
k Q波MIおよび非Q波MIは心電図により示される2つの形態の心筋梗塞(心臓発作)である。
l CABGは冠動脈バイパス術であり、バイパス手術を示す。
m TLRは全病変血行再建であり、第1のステントの不具合を修正するための第2のステントの配置を示す。
【0211】
結論
PEA-4アミンTempoポリマーは、安全な形態の生体吸収性ポリマーであり、ステント留置12ヶ月後に、平均最小管腔直径が、処置した心臓動脈では増大していることで測定されるように、ポリマー単独で薬物を添加せずとも、冠動脈において本発明のステントの有益な効果を維持し、増強できる独特の能力を証明した。
【0212】
本発明について上記実施例を参照して説明してきたが、本発明の精神および特許請求の範囲内に改変および変更が含まれることは理解されるであろう。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】本発明の多層ポリマーコートステントの概略断面図である。
【図2】ゼラチンコート表面上で増殖する内皮細胞の接着および増殖に対する本発明のステントにおいて使用した様々な生物剤(表1を参照のこと)の効果を示したグラフであり、対照=生物剤の濃度0である。
【図3】ゼラチンコート表面上で増殖する平滑筋細胞の接着および増殖に対する本発明のステントにおいて使用した様々な生物剤(表1を参照のこと)の効果を示したグラフであり、対照=生物剤の濃度0である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物分解性の生物活性ポリマーの表面コーティングを有するステント構造を備えた移植可能な生物活性ステントであって、ポリマーは、共有結合によりそのポリマーに結合された少なくとも1つの生物活性剤を含み、少なくとも1つの生物活性剤はインサイチューで治療効果をもたらす、ステント。
【請求項2】
少なくとも1つの生物活性剤が、ポリマーの生物分解の結果インサイチューで生成される、請求項1記載のステント。
【請求項3】
脈管構造内に移植されるようなサイズとされ、かつ移植部位で内因性創傷治癒過程を促進する、請求項1記載のステント。
【請求項4】
少なくとも1つの生物活性剤が、血管に対する内皮損傷部位で内皮細胞による一酸化窒素産生を促進し、かつ/または損傷部位の血管内の平滑筋細胞の増殖を制御するように選択される、請求項1記載のステント。
【請求項5】
少なくとも1つの生物活性剤が、一酸化窒素を供与する、移動させる、もしくは放出する、一酸化窒素の内因性レベルを増加させる、一酸化窒素の内因性合成を刺激する、または一酸化窒素シンターゼに対する基質として機能する、請求項4記載のステント。
【請求項6】
少なくとも1つの生物活性剤が、アルギニン、リシン、アミノキシル、フロキサン、ニトロソチオール、ニトレート、アントシアニン、スフィンゴシン-1-ホスフェート、リン脂質リゾホスファチジン酸から選択される、請求項5記載のステント。
【請求項7】
少なくとも1つの生物活性剤がアルギニンである、請求項5記載のステント。
【請求項8】
少なくとも1つの生物活性剤が、スフィンゴシン-1-ホスフェートである、請求項5記載のステント。
【請求項9】
少なくとも1つの生物活性剤が、リン脂質リゾファチジル酸である、請求項5記載のステント。
【請求項10】
少なくとも1つの生物活性剤が、アミノキシルである、請求項5記載のステント。
【請求項11】
アミノキシルが、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ、フリーラジカル(4-アミノ-TEMPO)である、請求項10記載のステント。
【請求項12】
ポリマーが、ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリウレタン、またはそれらのコポリマーである、請求項1記載のステント。
【請求項13】
ポリエステルが、ポリラクチド、ポリラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ-カルボン酸)、ポリ(グリコール酸)、またはポリ(3-ヒドロキシブチレート)、またはそれらのコポリマーである、請求項12記載のステント。
【請求項14】
ポリラクトンが、ポリカプロラクトンである、請求項13記載のステント。
【請求項15】
生物活性剤が、リンカーを介して生物分解性の生物活性ポリマーに結合される、請求項1記載のステント。
【請求項16】
リンカーが式W-A-Qの二価ラジカルであり、式中、Aは(C1〜C24)アルキル、(C2〜C24)アルケニル、(C2〜C24)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、または(C6〜C10)アリールであり、WおよびQはそれぞれ独立に、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、Rは独立にHまたは(C1〜C6)アルキルである、請求項15記載のステント。
【請求項17】
リンカーが、2個〜最大約25個のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項15記載のステント。
【請求項18】
ポリペプチドが、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、またはポリ-L-リシン-L-チロシンである、請求項17記載のステント。
【請求項19】
リンカーが、生物分解性の生物活性ポリマーから、約5オングストローム〜最大約200オングストロームだけ生物活性剤を分離する、請求項15記載のステント。
【請求項20】
生物分解性の生物活性ポリマーの表面コーティングを有するステント構造を備えた生物活性血管ステントであって、内皮細胞の再内皮形成を促進するための少なくとも1つのリガンドが共有結合によってポリマーに結合される、ステント。
【請求項21】
リガンドが、内皮細胞増殖を促進するペプチドから選択される、請求項20記載のステント。
【請求項22】
内皮細胞の増殖を促進するペプチドが、タンパク質Aおよびタンパク質Gから選択される、請求項21記載のステント。
【請求項23】
リガンドが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質Aである、請求項21記載のステント。
【請求項24】
リガンドが、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質Gである、請求項21記載のステント。
【請求項25】
リガンドがブラジキニン1および2から選択される、請求項21記載のステント。
【請求項26】
ポリマーが、ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリウレタン、またはそれらのコポリマーを含む、請求項20記載のステント。
【請求項27】
ポリエステルが、ポリラクチド、ポリラクトン、ポリ(α-ヒドロキシ-カルボン酸)、ポリ(グリコール酸)、またはポリ(3-ヒドロキシブチレート)、またはそれらのコポリマーである、請求項26記載のステント。
【請求項28】
ポリラクトンが、ポリカプロラクトンである、請求項27記載のステント。
【請求項29】
生物活性剤が、リンカーを介して生物分解性の生物活性ポリマーに結合される、請求項20記載のステント。
【請求項30】
リンカーが式W-A-Qの二価ラジカルであり、式中、Aは(C1〜C24)アルキル、(C2〜C24)アルケニル、(C2〜C24)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、または(C6〜C10)アリールであり、WおよびQはそれぞれ独立に、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2-、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、式中、Rは独立にHまたは(C1〜C6)アルキルである、請求項29記載のステント。
【請求項31】
リンカーが、2個〜最大約25個のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項29記載のステント。
【請求項32】
ポリペプチドが、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、またはポリ-L-リシン-L-チロシンである、請求項31記載のステント。
【請求項33】
リンカーが、生物分解性の生物活性ポリマーから、約5オングストローム〜最大約200オングストロームだけ生物活性剤を分離する、請求項29記載のステント。
【請求項34】
血管内挿入に適したサイズとされる、請求項1または17記載のステント。
【請求項35】
生物分解性の生物活性ポリマーを含む管状シースであって、ポリマーは、共有結合によりそのポリマーに結合された少なくとも1つの生物活性剤を含む、管状シース。
【請求項36】
少なくとも1つの生物活性剤が、ポリマーの生物分解の結果インサイチューで生成される、請求項35記載のシース。
【請求項37】
生物分解性の生物活性ポリマーがエラストマー系(elastomeric)である、請求項35記載のシース。
【請求項38】
生物分解性の生物活性ポリマーの表面コーティングを有するステント構造を備えた移植可能な生物活性ステントであって、ポリマーは、ポリマーの生物分解の結果インサイチューで治療効果をもたらす、ステント。
【請求項39】
架橋した生物分解性ポリマーを含む、生物分解性ステント。
【請求項40】
架橋した生物分解性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エステルエーテル)、ポリ(エステルウレタン)、またはそれらの組み合わせである、請求項39記載の生物分解性ステント。
【請求項41】
動脈の自然治癒を促進するために適した条件下、請求項1または17記載のステントを動脈内に移植する段階を含む、損傷した動脈の自然治癒を促進するための方法。
【請求項42】
自然治癒に動脈壁の再内皮形成が含まれる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
ポリマーを医療装置として、薬剤として、または生物活性剤の共有結合による固定のための担体として使用する方法であって、ポリマーは、共有結合によりポリマーに結合された少なくとも1つの生物活性剤を含む、方法。
【請求項44】
少なくとも1つの生物活性剤が、ポリマーの生物分解の結果インサイチューで生成される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
ポリマーが移植可能な医療装置をコートし、生物活性剤が、医療装置が移植された周囲の身体領域と接触することによりインサイチューで自然創傷治癒過程を促進する、請求項42記載の方法。
【請求項46】
多孔質ステント構造と
ステント構造を被包する多層管状コーティングとを備える移植可能な生物活性ステントであって、多層コーティングは、
非結合薬物を隔離する外側の薬物溶出生物分解性ポリマー層;
生物分解性の生物活性ポリマーの内側層であって、ポリマーが、共有結合によりポリマーに結合された少なくとも1つの生物活性剤を含み、少なくとも1つの生物活性剤がインサイチューで治療効果をもたらす、内側層;および
外側層と内側層の間に、それらと接触して存在し、薬物に対し不透過性の生物分解性障壁層
を備える、移植可能な生物活性ステント。
【請求項47】
少なくとも1つの生物活性剤が、共有結合により内側ポリマー層に結合され内皮細胞の再内皮形成を促進するリガンドを含む、請求項46記載のステント。
【請求項48】
リガンドが、内皮細胞増殖を促進するペプチドから選択される、請求項47記載のステント。
【請求項49】
内皮細胞の増殖を促進するペプチドが、タンパク質Aおよびタンパク質Gから選択される、請求項48記載のステント。
【請求項50】
リガンドが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質Aを含む、請求項48記載のステント。
【請求項51】
リガンドが、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質Gを含む、請求項48記載のステント。
【請求項52】
リガンドがブラジキニン1および2から選択される、請求項47記載のステント。
【請求項53】
生物活性剤が、リンカーを介して内側層の生物分解性の生物活性ポリマーに結合される、請求項46記載のステント。
【請求項54】
リンカーが、2個〜最大約25個のアミノ酸を含むポリペプチドである、請求項53記載のステント。
【請求項55】
ポリペプチドが、ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、またはポリ-L-リシン-L-チロシンである、請求項54記載のステント。
【請求項56】
追加の生物活性剤をさらに含む、請求項46記載のステント。
【請求項57】
追加の生物活性剤が、ラパマイシン、パクリタキセル、エベロリムス、スタチン、またはそれらの類似体もしくは誘導体である、請求項56記載のステント。
【請求項58】
薬物が疎水性であり、障壁層が薬物よりも疎水性が低い、請求項57記載のステント。
【請求項59】
薬物が親水性であり、障壁層が疎水性である、請求項57記載のステント。
【請求項60】
ポリマー障壁層が、ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(エステルウレタン)、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリ(エステルエーテル)、またはそれらのコポリマーを含む、請求項58または59記載のステント。
【請求項61】
血管内挿入に適したサイズとされる、請求項46記載のステント。
【請求項62】
動脈の自然治癒を促進するのに適した条件下、機械的介入後直ちに請求項1〜46記載のステントを動脈内に移植する段階を含む、機械的介入により損傷した内皮を有する動脈の自然治癒を促進するための方法。
【請求項63】
自然治癒に動脈の再内皮形成が含まれる、請求項62記載の方法。
【請求項64】
ステントが物理的に平滑筋細胞の活性化を阻止する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
機械的介入が血管形成術である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
機械的介入がバルーン血管形成術である、請求項62記載の方法。
【請求項67】
機械的介入により損傷した内側の動脈壁部分を実質的に被覆するようにステントを移植する段階を含む、請求項62記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−520217(P2006−520217A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503904(P2006−503904)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/005940
【国際公開番号】WO2004/075781
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】