説明

生理活性組成物

【課題】より優れた抗アレルギー性活性、抗高血圧性活性、免疫賦活活性等の生理活性を有する生理活性組成物を提供する。
【解決手段】アスパラガスに水を加え破砕して得られた抽出液に酵母エキス及びグルタミン酸ナトリウムを添加した培地に、乳酸菌を添加し培養を行って得られた培養液を凍結乾燥後、破砕し得られたγ−アミノ酪酸を含有する粉末と、市販のハナビラタケ子実体を凍結乾燥後、破砕し得られたハナビラタケ粉末とを有効成分とすることを特徴とする抗アレルギー活性、抗高血圧活性及び免疫賦活活性を有する生理活性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ−アミノ酪酸及びきのこ由来成分を含む抗アレルギー活性、抗高血圧活性、免疫賦活活性などの生理活性を有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
γ−アミノ酪酸(以下、GABAと略す。)は、哺乳類の脳や脊髄に存在する抑制性の神経伝達物質であり、経口摂取することで血圧を降下させることが多くの哺乳類で確認されている。この血圧降下作用は高血圧症を発症している者に対してのみ効果があり、健常者に対しては血圧を降下させず、低血圧症を引き起こすことがない。また、GABAは哺乳類の脳や脊髄以外にも、発芽玄米や茶葉等の植物、キムチやたくあん等の発酵食品中にも含有され食経験が豊富であり、また、医薬品としてグラム単位の静脈注射等が行われているが、GABA摂取による副作用の報告は無い。
【0003】
また、きのこ類は古くから食用として利用されているが、最近その成分の生理活性が明らかにされている。きのこの子実体は、糖、タンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどからできており、きのこの持つこの成分に病気の予防や治療に対する高い効果があることがわかり、数種のきのこから医薬品や特定保健用食品が誕生した。ある種のきのこには、高脂血症、高血圧症、糖尿病などの食生活とも深く関連性のある生活習慣病の予防と治療にも有効であることが解明されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、アスパラガスは、繊維質が豊富でカロリーの低い野菜であり、全国で年間約28000tが収穫されている他、海外からの輸入も盛んである。国内で収穫量の多い都道府県としては、長野県、北海道、佐賀県、福島県、香川県、長崎県、秋田県などが挙げられる。これまで、アスパラガスには食物繊維の他、アスパラギン酸、ビタミンU(メチルメチオニン)、ルチン、葉酸、サポニン類、グルタチオンなどの有用成分が多く含まれていることが知られており、例えば美白作用(例えば、特許文献1参照)などが報告されていた。また、GABAも比較的多量に含有されていることが報告されている。
【特許文献1】特開平5−271045号公報
【非特許文献1】「きのこの生理活性と機能」、p.16〜25(2005)シーエムシー出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまできのこ類をはじめ優れた抗アレルギー活性、抗高血圧活性又は免疫賦活活性を持つといわれる食品は利用されているが、必ずしも充分な効果が発揮されていない。
【0006】
本発明は、より優れた抗アレルギー性活性、抗高血圧性活性、免疫賦活活性等の生理活性を有する生理活性組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する組成物を開発すべく、鋭意研究を重ねた結果、血圧降下作用をはじめとして様々な生理活性を有するGABAと、高脂血症、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病の予防と治療に有効であるきのこ類を併用して経口摂取することにより、極めて相乗的に抗アレルギー性活性、抗高血圧性活性又は免疫賦活活性を促進させることを突き止め、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、γ−アミノ酪酸及びきのこ由来成分を有効成分とすることを特徴とする生理活性組成物を要旨とするものであり、好ましくは、乳酸菌の菌体をさらに含むものであり、また好ましくは、γ−アミノ酪酸が、アスパラガス抽出物を含む培地に乳酸菌を添加した後、培養して得られたγ−アミノ酪酸を含む培養物であるものであり、また好ましくは、生理活性が、抗アレルギー活性、抗高血圧活性又は免疫賦活活性である前記した生理活性組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全に且つ効果的に抗アレルギー活性、抗高血圧活性、免疫賦活活性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明で用いられるGABAは、食品の成分として茶、野菜類、穀類等に微量含まれているアミノ酸の一種である。本発明においてはGABA純品を用いても、またGABAを含有する複合物を用いてもよい。本発明で用いられるGABAの製造方法は特に限定するものではなく、化学合成法、GABA産生能を有する微生物を培養する方法、グルタミン酸脱炭酸酵素やその酵素を含有する動植物を用いた発酵法など、いずれの方法を用いたものでも構わないが、大量且つ安価にGABAを得ることができることから食品原料を含んだ培地にGABA産生能を有する乳酸菌を添加し培養して得られた培養物を用いる方法が好ましい。
【0012】
GABA生産能を有する微生物としては、乳酸菌が挙げられ、乳酸菌としては、グルタミン酸デカルボキシラーゼ生産能を有し、食品に添加しても支障がないものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillushilgardii)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcuslactis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)等がある。
【0013】
上記した微生物を培養するための培地は特に限定されず、乳酸菌培養に一般的なGYP培地(D−グルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス1%、酢酸ナトリウム3水和物0.2%、ツイン80 0.05%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、硫酸マンガン4水和物10ppm、硫酸鉄7水和物10ppm、塩化ナトリウム10ppm)FYP培地(GYP培地の糖がD−フルクトースになったもの)の他、市販のGAM培地(日水製薬)、MRS培地(Difco)等を使用することもできるし、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、魚肉エキス、大豆分解物、ペプトン、ポリペプトン、ポテト浸出液等を単独で又は2種以上を水に溶解させた培地を使用することもできる。
【0014】
また、上記した培地に食品原料を加えてもよいし、また上記した培地に替えて食品原料を培地として乳酸菌を培養してもよい。そのような食品原料としては、乳酸菌が増殖可能であればいかなるものでもよく、例としては、野菜類、果実類、種実類、穀類、いも類、豆類、藻類、きのこ類、魚介類、肉類、乳類、卵類等が挙げられる。これらの各種食品原料は、そのまま用いてもよいし、洗浄、粉砕、細断、抽出、圧搾、濃縮、固液分離、加熱滅菌、ろ過滅菌等公知の技術を単独あるいは2つ以上組み合わせて処理してから用いてもよい。また、必要に応じて水分含量調整、pH調整、加糖、上記した培地に用いられる成分の添加等の操作を行ってもよい。これらの中でも好ましくは野菜類の抽出物にGABA産生能を有する乳酸菌を接種する方法が好ましく、さらに好ましくはアスパラガス抽出物にGABA産生能を有する乳酸菌を接種する方法である。
【0015】
例えば、アスパラガスから得られた抽出物に、グルタミン酸及び/又はグルタミン酸ナトリウム塩を添加し、GABAを産生する能力のある乳酸菌を添加して、GABAを富化させる方法が挙げられる。この富化処理に用いられるアスパラガスは、本発明の効果を損なうものでない限りいかなるものでも良い。アスパラガスには、日光に当てて栽培するグリーンアスパラガス、土などで遮光しながら栽培するホワイトアスパラガス、細かく短いうちに刈り取りを行うミニアスパラガス、グリーンアスパラガスとは別種で紫色を呈するムラサキアスパラガスなどがあるがこれらの中ではアミノ酸やルチン等の栄養成分に富むグリーンアスパラガスがさらに好ましい。産地は特に限定されず、国産でも海外からの輸入品でもよい。使用する部位も特に限定されず、若茎、地上茎、貯蔵根が使用できるがこれらの中で若茎が好ましい。若茎は根元部分でも先端部分でもよいが、商品となるアスパラガスの長さを揃える時にカットされた根元部分は安価で入手できることから最も好ましい。アスパラガスはそのまま使用してもよいし、破砕、切断、凍結乾燥、脱水などの処理を行った後に使用してもよい。
【0016】
上記のようにして得られるアスパラガス抽出物を含む培地に、GABA産生能を有する乳酸菌を添加し、乳酸菌の培養における通常の方法により培養して得られる培養物には、GABAをはじめ、その他のアミノ酸、多糖類、オリゴ糖類、D−グルコース、D−フルクトース、D−ガラクトース等の単糖類、タンパク質、ペプチド類、サポニン類、ポリフェノール類等が含有される。アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、リジン、アラニン、セリン、プロリンなどが比較的多く含まれる。
【0017】
本発明において用いられるきのこ由来成分は、きのこから得られる成分であってそのきのこは食用であれば、その種類に特に制限はない。具体的には、きのこを生のまま、乾燥したもの、乾燥粉末又は溶媒抽出物としても使用でき、きのこ由来成分を含むものならばその使用形態は制限されない。また、きのこは天然のものでもよいし、あるいは人工栽培によって得られたものであってもよい。
【0018】
本発明で用いられるきのこの種類としては、例えば、ナメコ、ハツタケ、ヤマブシタケ、マッシュルーム、キシメジ、シイタケ、エノキタケ、マイタケ、アミタケ、ヒラタケ、フクロタケ、キクラゲ、アガリスク、エリンギ、ハタケシメジ、マンネンタケ、シャカシメジ、マツタケ、ハナビラタケ、ブナハリタケ、ブナシメジ、クリタケ、カワラタケ、スエヒロタケ、マンネンタケ、ホンジメジ、トリュフ、および冬虫夏草よりなる群から選ばれる少なくとも一種類のきのこを用いることができる。これらのなかでも好ましくはハナビラタケ、ハタケシメジ、ホンシメジ、シャカシメジが好ましい。
【0019】
上記したきのこから溶媒抽出物を得るために用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、アセトン、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、エーテルなどが使用できる。また、有効性、安全性をさらに高めるため抽出液を希釈又は濃縮した後、限外ろ過または逆浸透膜処理したもの若しくはそれらを活性炭または各種樹脂で処理したもの、またはそれらの処理液を希釈又は濃縮したものを使用することもできる。
【0020】
本発明の生理活性組成物に含まれるそれぞれの成分の量としては、特に限定されず、適宜選択すればよいが、混合比率が乾燥重量にして乳酸菌培養物を1とした場合、きのこ由来成分が0.1〜1000、より好ましくは0.5〜800、さらに好ましくは1〜400である。
【0021】
本発明の生理活性組成物においては、上記したGABA及びきのこ由来成分のほかに乳酸菌の菌体を含ませることが好ましい。ここで用いられる乳酸菌としては、GABA産生能を有する微生物として上述した乳酸菌が好適に用いられる。また、乳酸菌は生菌に限らず、死菌を用いても構わない。
【0022】
本発明の生理活性組成物に含ませる乳酸菌の量としては、特に限定されず、適宜選択すればよいが、本生理活性組成物固形分重量に対して0.005〜20%、より好ましくは0.02〜10%、さらに好ましくは0.01〜5%である。
【0023】
本発明の生理活性組成物は、一般的な食品加工原料と組み合わせて任意の食品へ加工することが可能である。例えば、錠剤、カプセル又は飲料、菓子、パンといった任意の食品への加工が可能であり、本発明による生理活性組成物の機能を損なうものではない。一般的な食品加工原料と組み合わせる場合、本発明の生理活性組成物の配合量としては、特に限定されるものでなはないが、1日当たり20〜2000mgになるように配合することが好ましい。この範囲より少ない場合は効果が望めない可能性があり、この範囲より多い場合はもはや効果の増大は見込めない。
【0024】
本発明の生理活性組成物は、摂取した場合、抗アレルギー活性、抗高血圧活性又は免疫賦活活性を奏するものである。本発明における抗アレルギー活性、抗高血圧活性及び免疫賦活活性の作用メカニズムは不明であるが、交感神経抑制性物質であるGABAによる抗高血圧活性、脳機能改善作用、きのこ由来成分による抗アレルギー作用、抗高血圧作用、免疫賦活作用による相補的な働きによって相乗効果を発揮するものと思われる。さらに、乳酸菌を含ませた場合には、乳酸菌によるアレルギー改善作用、抗高血圧作用、免疫賦活作用が相補的な働きによって加えられるものと思われる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
なお、実施例中、GABA、アミノ酸の含有量は、以下の方法により求めた値である。すなわち、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により以下の条件で測定し、蛍光検出器を用いて検出した。
HPLC:島津製作所(株)製LC−9A
カラム:Shim−pack ISC−07/S1504
移動相:0.2規定クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)
流速:0.3ml/分
温度:55℃
反応液:オルト−フタルアルデヒド
検出波長:励起波長348nm、蛍光波長450nm
【0027】
製造例1〔乳酸菌含有GABA粉末〕
1.0質量%のグルタミン酸ナトリウムを含有するGYP培地5Lに、前培養した乳酸菌(FERM P−20710)菌体縣濁液100mlを添加して30℃、20rpm、通気無しの条件で培養を開始した。培養開始から1日後に、40質量%グルタミン酸ナトリウム水溶液を2.5L添加し、同時に2倍濃度のGYP培地2.5Lを追加して総量を10Lとし、その後は6N塩酸を適時添加してpH4.8±0.5に維持しながら同条件で培養を続けた。培養液量10Lとしてから40時間経過した後の培養液を凍結乾燥後、破砕しGABAを55%含有する淡褐色の粉末960gを得た。
【0028】
製造例2〔アスパラガス由来GABA粉末〕
グリーンアスパラガス若茎10kgに水10Lを加え、ミキサーで破砕し、不織布を用いて絞ることでアスパラガス圧搾液を得た。これをさらに濾過助剤に珪藻土を用い、ろ紙(ADVANTEC東洋製No.5C)を用いて吸引濾過を行い、薄茶色の抽出液を得た。この抽出液に1質量%の酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア製)を添加し、オートクレーブで121℃、15分間滅菌した。放冷後、グルタミン酸ナトリウムを2質量%添加してよく撹拌して溶解した。ここに、150mlのMRS培地(Difco製)で1日間前培養した乳酸菌(FERM AP−20710)を全量添加し、30℃で24時間静置培養を行った。得られた培養液を遠心分離機で菌体を集菌し、上清を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、菌体を除去した。このようにして得られた上清を凍結乾燥後、破砕し、GABAを39%含む茶褐色の粉末515gを得た。
【0029】
製造例3〔アスパラガス由来乳酸菌含有GABA粉末〕
製造例2と全く同様にして培養を行い、得られた培養液をそのまま凍結乾燥した後、破砕し、GABAを36%含む茶褐色の粉末550gを得た。
【0030】
製造例4〔ハナビラタケ粉末〕
市販のハナビラタケ子実体(ユニチカ製)2kgを凍結乾燥後、破砕し、ハナビラタケ粉末を213g得た。
【0031】
実施例1
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と市販のGABA製品(協和発酵製、商品名:GABA協和)とを質量比で1:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0032】
実施例2
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と製造例1で得られた乳酸菌含有GABA粉末とを質量比で1:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0033】
実施例3
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と製造例2で得られたアスパラガス由来GABA粉末とを質量比で1:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0034】
実施例4
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と製造例3で得られたアスパラガス由来乳酸菌含有GABA粉末とを質量比で1:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0035】
実施例5
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と市販のGABA製品(協和発酵製、商品名:GABA協和)とを質量比で399:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0036】
実施例6
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と製造例1で得られた乳酸菌含有GABA粉末とを質量比で399:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0037】
実施例7
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と製造例2で得られたアスパラガス由来GABA粉末とを質量比で399:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0038】
実施例8
製造例4で得られたハナビラタケ粉末と製造例3で得られたアスパラガス由来乳酸菌含有GABA粉末とを質量比で399:1の割合で混合して組成物を作製した。
【0039】
比較例1〜5
製造例4で得られたハナビラタケ粉末を比較例1とし、市販のGABA製品(協和発酵製、商品名:GABA協和)を比較例2とし、製造例1で得られたた乳酸菌含有GABA粉末を比較例3とし、製造例2で得られたアスパラガス由来GABA粉末を比較例4とし、製造例3で得られたアスパラガス由来乳酸菌含有GABA粉末を比較例5とした。
【0040】
試験例1〔抗アレルギー活性試験〕
抗アレルギー活性の指標としては血中IgE量、インターロイキン4(IL−4)産生量およびインターフェロンγ(IFN−γ)産生量を用いた。マウス(BALB/c、6週齢、メス)72匹を8匹ずつ9群に分け、day0に腹腔内投与で卵白アルブミン(OVA)感作し、Day5に背部皮下投与により追加感作した。day18から7日間、局所感作を連日行った。day25から、実施例1〜4及び比較例1〜5のサンプルを100mg/mlの添加量でそれぞれ入れた餌を摂取させた。day38に採血を行い、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて常法に従い、血中OVA特異的IgE濃度を測定した。コントロールはサンプル未添加の標準飼料のみを与えた。測定後、脾臓を単離し、100μg/mlのOVAを含む培地で7日間培養後、培養上清を回収し、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて常法に従い、IFN−γとIL−4を測定した。
【0041】
得られた測定結果を図1、2及び3に示す。抗アレルギー作用のあるハナビラタケとGABAを同時に摂取することで抗アレルギー活性が増加することが明らかとなった。また、乳酸菌を含むアスパラガス由来GABAではより効果的であるということが分かった。
【0042】
試験例2〔抗高血圧活性試験〕
5週齢SHRラット(雄)を63匹入手し、7匹ずつ9群に分け、2週間馴化飼育を行った後、16週齢まで飼育を行った地点で血圧測定を行い、高血圧症を発症していることを確認した。その24、48、72時間後の3回(1日1回)、実施例5〜8及び比較例1のサンプルについては200mg/mlの添加量で、比較例2〜5のサンプルについては0.5mg/mlの添加量でそれぞれ入れた餌を摂取させた。コントロールはサンプル未添加の標準飼料のみを与えた。24、48、72時間における餌摂取時からそれぞれ0時間後、4時間後、8時間後に血圧を測定した。測定はTail−cuff法(非観血式自動血圧測定法)により行った。
【0043】
測定結果を図4、5に示す。各群の血圧は平均値を示してある。これらの図から明らかなように、ハナビラタケだけでは抗高血圧効果は低いが、GABAと同時に摂取することで即時的な効果が上がるとともに持続して投与することで平常時の血圧値も正常な値に近づいた。また、実施例8の結果から分かるようにハナビラタケと乳酸菌含有アスパラガス由来GABAを同時に摂取することで飛躍的にこのような効果が増強されるということが証明された。
【0044】
試験例3〔免疫賦活活性試験〕
免疫賦活活性の指標としてはナチュラルキラー細胞(NK細胞)活性化を指標とした。マウス(BALB/c、雌、12週齡)72匹を8匹ずつ9群に分け、1週間(1日1回)、実施例1〜4及び比較例1〜5のサンプルを200mg/mlの添加量で入れた餌を摂取させた。コントロールにはサンプル未添加の標準飼料のみを与えた。その後、脾臓を摘出し、速やかにEMEM−10%FBS培養液に移し、大きな細胞塊を破砕した。その後、遠心分離を行い、沈殿(細胞)をEMEM−10%FBS培養液で数回洗浄した後、2×10個/ml以下の濃度に調製した。さらにこの溶液にリンパ球分離液を加え、遠心分離を行い、リンパ球を回収した。得られたリンパ球はRPMI1640−10%FBS培養液で数回洗浄した後、5×10個/mlの濃度に調製し、5%COインキュベータ内で一晩培養した。
【0045】
標的細胞にはYAC−1細胞を用い、1×10個/mlの濃度に調製したYAC−1細胞にBCECF−AM試薬を添加して30分間標識した。その後、遠心分離を行い、沈殿を回収した。得られた沈殿を1640−10%FBS培養液で数回洗浄後、5×10個/mlの濃度に調製した。
【0046】
上記脾臓リンパ球細胞液(5×10個/ml濃度)250μlとBCECF−AM標識YAC−1細胞液(5×10個/ml)25μlを混合し、37℃で2時間静置した。それから遠心分離を行い、上清を回収した(溶液A)。また、沈殿に0.25%TritonX−100を含むRPMI1640−10%FBS培養液を275μl添加し、遠心分離を行い上清を回収した(溶液B)。溶液A、Bについて励起波長500nm、蛍光波長540nmの蛍光測定を行った。また、ブランクとしてBCECF標識YAC−1細胞のみを同様に処理したもの(ブランクA、B)について蛍光測定を行った。細胞障害活性は次式から算出した。
細胞障害活性(%)=[{溶液A÷(溶液A+溶液B)}−{ブランクA÷(ブランクA+ブランクB)}]×100
溶液A:自発的な遊離による蛍光と細胞障害による遊離の蛍光の和
ブランクA:自発的な遊離による蛍光
【0047】
測定結果を表1に示す。表1から明らかなようにハナビラタケが非常に強いNK細胞活性を示すことが明らかとなった。また、この効果はGABAとの同時摂取により向上するということが判明した。さらに、その効果は乳酸菌含有アスパラガス由来GABAとの摂取でNK細胞活性が飛躍的に向上するということが判明した。
【0048】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】試験例1におけるOVA感作マウスの血中IgE濃度を示す図である。
【図2】試験例1におけるIL−4の産生量を示す図である。
【図3】試験例1におけるIFN−γの産生量を示す図である。
【図4】試験例2(比較例)における高血圧症マウスの血圧値の経時変化を示す図である。
【図5】試験例2(実施例)における高血圧症マウスの血圧値の経時変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−アミノ酪酸及びきのこ由来成分を有効成分とすることを特徴とする生理活性組成物。
【請求項2】
乳酸菌の菌体をさらに含む請求項1記載の生理活性組成物。
【請求項3】
γ−アミノ酪酸が、アスパラガス抽出物を含む培地に乳酸菌を添加した後、培養して得られたγ−アミノ酪酸を含む培養物である請求項1又は2記載の生理活性組成物。
【請求項4】
生理活性が、抗アレルギー活性である請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性組成物。
【請求項5】
生理活性が、抗高血圧活性である請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性組成物。
【請求項6】
生理活性が、免疫賦活活性である請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−50296(P2008−50296A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227858(P2006−227858)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】