説明

画像入力装置、画像入力方法およびこれを用いた記録媒体

【課題】デジタルスチルカメラやスキャナ等において、画像を撮像して画像データを生成する際、画質の劣化しない高品質な画像データを出力先に提供する画像入力装置、画像入力方法およびこれを用いた記録媒体の提供を課題とする。
【解決手段】撮像して得られた画像信号から出力画像データを生成する際、出力画像データを出力する出力先の情報を取得し、この出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像データに色変換する色変換係数を取得し、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうエンコード情報を取得し、前記色変換係数を用いて前記画像信号に色変換を行い、前記エンコード情報に基づいてエンコードを行ない、出力画像データを生成することで前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撮像素子等を用いて得られる画像信号から出力画像データを生成するデジタルスチルカメラやスキャナ等の画像入力装置、画像入力方法およびこれを用いた記録媒体の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】今日、パーソナルコンピュータやデジタルスチルカメラやスキャナ等が高性能化し、また、広範囲に普及したことにより、デジタルスチルカメラやスキャナで取り込んだデジタル画像を、パーソナルコンピュータに取り込んでモニタに表示したり、あるいは家庭用テレビモニタ等に表示することが容易になってきた。また、同一のデジタル画像を異種表示媒体である表示モニタに画像表示する機会も多くなってきた。例えば、スキャナ等で取り込んだデジタル画像やデジタルスチルカメラで撮影されたでデジタル画像を、NTSC方式のNTSC表示モニタやHDTV形式のHDTV(高品位テレビジョン)表示モニタ等に表示する機会も多く、同一画像信号の異種画像表示媒体への相互乗り入れが進んでいる。
【0003】これに伴い、今後、デジタル画像を画像表示する画像表示媒体を特定したり限定することは困難になることが予想される。例えば、現在市販されているデジタルスチルカメラでは、HDTV表示モニタを出力先の画像表示媒体と予め設定しているが、将来的には、家庭に広く普及しているNTSC表示モニタやsRGB色信号形式のsRGB表示モニタ等種々の表示モニタに画像表示をさせて画像を鑑賞するケースの増えることが予想される。また、デスクトップパブリッシングの分野では、現在スキャナ等で撮影されたデジタル画像をリスフィルムを介して印刷原稿を作成する方法が一般に用いられているが、リスフィルムを介することなくデジタル画像をCTP(Computer To Plate) 出力装置を用いて、レーザ光で直接印刷版に網点を作成する方法も始まっており、今後CTP出力装置もデジタル画像の出力装置の1つとして用いられることが予想され、例えば、デジタルスチルカメラで撮影された画像の出力画像データをCTP装置等に直接供給して製版を行なうことも考えられる。このように、今後デジタル画像データの出力先が広がることが予想される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、現在市販されるデジタルスチルカメラやスキャナ等の入力装置は、予め出力先が定められているため、画像を撮像して得られた画像信号は、予め定められている出力先の色信号に適した入力画像データを生成するように構成されている。例えば図6に太線で示されるように、被写体をデジタルスチルカメラ(DSC)で撮影する場合、CCD撮像素子によって得られた画像信号は、増幅されA/D変換されて10ビットのデジタル画像信号とされる。その後、規格ITU(International Telecomunicatiion Union )−R BT. 709で規定される色空間の信号(以降、BT709色信号という)に色変換され、信号の値が負の場合、負の値が0にクリップ(非負化)され、その後、8ビットの量子化信号にエンコードされてHDTV(高品位テレビジョン)に適した信号、すなわち、BT709色信号(画像データ)が生成される。一方、HDTV表示モニタでは、この出力画像データの供給を受けて画像表示(ソフトコピー)を行なう。
【0005】また、デスクトップパブリッシングの分野でも、図6に示されるように、原稿を製版用スキャナで取り込んだ場合、CCD撮像素子によって得られた画像信号は、増幅されA/D変換されて10ビットのデジタル画像信号とされ、その後、XYZ表色系の3刺激値XYZで規定される色空間の信号に変換され、線型のエンコード処理が施され、製版用出力装置等に適したXYZ色信号(画像データ)が生成される。製版用出力装置では、この出力画像データの供給を受けて、最終的な印刷物等のハードコピーを作成するための製版処理を行なう。
【0006】このように、デジタルスチルカメラや製版用スキャナでは、BT709の色信号やXYZ色信号に変換されるが、現在規格化されている色信号としては、この他に、家庭用テレビモニタとして広く普及しているNTSC表示モニタの定めるNTSC色信号やsRGB色信号も挙げられる。これらの色信号は、色信号で規定される3原色の色度が色信号の種類に応じて定まっており、エンコード処理の方法も色信号の種類に応じて定まっている。例えば、BT709色信号とsRGB色信号は、色信号で規定される3原色の色度は同じであり色変換は同じであるが、図4に示すように、エンコード処理が異なっており、また、NTSC色信号とBT709色信号では、色信号で規定される3原色の色度は異なり、色変換は異なるが、エンコード処理は、共に非線形的に8ビット信号に量子化するITU−R BT.709で定めるエンコード処理であり、同一である。このように規格化されている色信号では、色信号によって色空間とエンコード処理内容が定まっている。
【0007】そのため、デジタルスチルカメラによって撮影した画像をBT709色信号の色空間と同じ色空間を持つsRGB色信号を指定するsRGB表示モニタに画像表示(ソフトコピー)するには、BT709色信号の形式の出力画像データが生成されているので、色変換を施さず、図4に示すようなエンコードによる量子化方法の差異を補正する補正処理を行ない、sRGB表示モニタに送り、画像表示(ソフトコピー)する。一方、デジタルスチルカメラで撮影され、BT709色信号に色信号変換された画像を、HDTV表示モニタに画像表示(ソフトコピー)するには、8ビットで量子化された出力画像データをNTSCの定める色空間に色変換し、その際、負の値の信号を0にクリップするクリップ処理(非負化処理)を行い、D/A変換してHDTV表示モニタに伝送する。
【0008】このように入力装置から得られた出力画像データは、予め色信号の形式が定まっており、出力先が限定されるため、以下に示すような不都合が生じる。たとえば、デジタルスチルカメラの内部では、CCD撮像素子等から得られ10ビットに量子化された画像信号は、図2に示す分光感度分布で特徴付けられるBT709色信号に色変換される。このBT709色信号を特徴付ける分光感度分布は図2に示すように負の感度の領域を有するので、色変換された信号値が、本来、負になることもあるが、そのような場合、上述したように、色変換後の負の値を0にクリップして処理する。また、BT709色信号に変換する際、図4に示すように、非線形変換を行ないつつ、10ビットの画像信号を8ビットに量子化する。そのため、8ビットで量子化されたBT709色信号の出力画像データを他の色信号に変換する場合、例えば、製版装置等に適した10ビットのXYZ色信号に変換する場合、出力画像データが上記クリップ処理や8ビット量子化を行われているため、欠落した情報を復元できず、画像の画質が劣化してしまうといった問題がある。今後マルチメディアの発達により多種の色信号が規格化されることが予想され、上記問題は将来益々大きくなることが予想される。
【0009】そこで、本発明は、上記問題を解決すべく、デジタルスチルカメラやスキャナ等において、画像を撮像して出力画像データを生成する際、画質の劣化しない高品質な出力画像データを出力先に提供する画像入力装置、画像入力方法およびこれを用いた記録媒体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、撮像された画像の画像信号から出力画像データを生成する画像入力装置であって、前記出力画像データを出力する出力先の情報を取得する出力先情報取得手段と、この出力先情報取得手段によって取得された出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像信号に色変換する色変換係数を取得する色変換係数取得手段と、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうためのエンコード情報を取得するエンコード情報取得手段と、前記色変換係数を用いて前記画像信号に色変換を行い、さらに、前記エンコード情報に基づいてエンコードを行なう変換手段とを備えることを特徴とする画像入力装置を提供するものである。
【0011】ここで、上記画像入力装置は、前記出力先情報取得手段は、前記出力先の出力分光感度分布を取得し、前記色変換係数取得手段は、前記出力先情報取得手段で取得された前記出力分光感度分布とこの画像入力装置の持つ既知の入力分光感度分布とから前記色変換係数を導出することで前記色変換係数を取得するのが好ましい。
【0012】この場合、前記色変換係数は、前記入力分光感度分布をIi (λ)(i=1〜m)とし、前記出力分光感度分布をOj (λ)(j=1〜n)とする時、下記式(1)で表されるd1 (I,Oj )を最小にする係数aji(i=1〜m、j=1〜n)であるのが好ましい。
【数5】


但し、O* j (λ)は、下記式(2)で表されるものである。
【数6】


【0013】より好ましくは、前記色変換係数は、前記入力分光感度分布をIi (λ)(i=1〜m)とし、前記出力分光感度分布をOj (λ)(j=1〜n)とする時、下記式(3)で表されるd2 (I,Oj )を最小にする係数aji(i=1〜m、j=1〜n)であるのがよい。
【数7】


但し、O* j (λ)は、下記式(4)で表されるものである。
【数8】


【0014】また、前記エンコード情報取得手段が取得するエンコード情報は、IEC/4WD 61966−2−1に記載のエンコード情報であるのが好ましく、また、前記エンコード情報取得手段が取得するエンコード情報は、ITU−R BT.709に記載のエンコード情報であるのが好ましい。
【0015】また、本発明は、撮像された画像信号から出力先に出力する出力画像データを生成する際、前記出力画像データを出力する出力先の情報を取得し、前記出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像信号に色変換する色変換係数を取得するとともに、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうためのエンコード情報を取得し、前記画像信号に対して、前記色変換係数を用いて色変換を施し、さらに前記エンコード情報に基づいてエンコードを行なうことで出力画像データを生成することを特徴とする画像入力方法を提供するものである。
【0016】さらに、本発明は、画像信号から出力先に出力する出力画像データを生成する際、前記出力画像データを出力する出力先の情報を取得する手順と、前記出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像信号に色変換する色変換係数を取得する手順と、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうためのエンコード情報を取得する手順と、取得した前記色変換係数を用いて前記画像信号に色変換を施し、さらに取得した前記エンコード情報に基づいてエンコードを行なう手順とをコンピュータに実行させて、画像信号から出力先に適した出力画像データを生成することを特徴とするプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の画像入力装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0018】図1には、本発明の画像入力装置の好適実施例である画像入力装置10が示される。画像入力装置10は、画像を撮像して得られた画像信号を色信号変換し、選択された出力装置に適した出力画像データを生成する画像入力装置であり、デジタルスチルカメラやスキャナが例として挙げられる。画像入力装置10は、撮像系12、色信号情報取得部14、色変換係数導出部16、色信号変換部18、メモリ部20および記録メディア書込・読込部22と、これら撮像系12、色信号情報取得部14、色変換係数導出部16、色信号変換部18および記録メディア書込・読込部22の動作を制御し管理する図示されないCPUとを備える。
【0019】撮像系12は、CCDやMOS型撮像素子等を用いて画像や原稿を撮像して画像信号を得、この画像信号を増幅して10ビットのA/D変換を行ない、必要に応じて傷欠陥補正等の信号処理を行なう部分であって、公知の撮像系が用いられる。
【0020】色信号情報取得部14は、撮像系12から送られた画像信号を色信号変換して所望の出力画像データとするための色信号情報を、オペレータのキー入力等によって受ける出力先情報を取得する手段を形成する部分である。出力先情報とは出力先の出力装置に適した色信号に関する色信号情報であり、例えば、出力装置で定める色信号情報、例えば、NTSC色信号やBT709色信号やsRGB色信号やXYZ色信号等の色信号情報が入力される。色信号情報が入力されると、色信号情報毎に予め記録されている出力分光感度分布およびエンコード情報の中から、入力された色信号情報の出力分光感度分布およびエンコード情報を呼びだし、色変換係数導出部16および色信号変換部18に送るように構成されている。あるいは、出力先情報とは出力装置の名称や型式等の識別情報であり、出力装置の名称や型式等の識別情報がオペレータによりキー入力されると、メモリー部20に予め出力装置の名称や型式毎に記録された出力分光感度分布およびエンコード情報を呼び出し、色変換係数導出部16および色信号変換部18に送る。
【0021】色変換係数導出部16は、メモリ部20から送られた出力装置の出力分光感度分布と撮像系12が有する既知の入力分光感度分布とから、後述する色変換係数の導出方法によって色変換係数を導出する部分であり、色変換係数取得手段を形成する。メモリ部20から送られる出力装置の出力分光感度分布は、例えば、BT709色信号が色信号情報取得部14で入力された場合、あるいは、出力装置としてHDTV表示モニタが指定された場合、色変換係数導出部16は図2に示されるような分光感度分布を得、また、NTSC色信号が入力された場合、あるいは、出力装置としてNTSC表示モニタが指定された場合、図3に示されるような分光感度分布を得る。色変換係数導出部16は、導出された色変換係数を、色信号変換処理部18に送る。
【0022】また、画像入力装置10には、色信号情報取得部14から得られる出力先情報に基づいてメモリ部20からエンコード情報を取得するエンコード情報取得手段が、色信号情報取得部14およびメモリ部20によって形成される。図4には、メモリ部20からエンコード情報が呼びだされ色信号変換部18に送られる、BT709色信号とsRGB色信号におけるエンコード情報が示されており、非線形の変換を受けて8ビットの量子化された信号に処理される。このようなエンコード情報は、例えば、IEC/4WD 61966−2−1(IEC(International Electotechnical Commission))やITU−R BT.709(ITU( International Telecomunication Union))に記載されるエンコード情報が挙げられる。
【0023】色信号変換部18は、色信号変換手段を形成する部分であり、色変換係数導出部16から送られた係数を色変換マトリクスの係数として用いて、撮像系12から送られてきた画像信号を色変換し、メモリ部20から送られたエンコード情報を用いて量子化し、例えばBT709色信号やsRGB色信号の場合、8ビット信号に非線形的に量子化し、所望の出力画像データを生成する。
【0024】生成された出力画像データは、入力設定された色信号の形式を指定する出力装置、あるいは、入力設定された出力先の出力装置、例えばNTSC表示モニタ、HDTVモニタ、sRGBモニタ等やCTP装置等の製版装置に送られる。また、生成された出力画像データは、記録メディア書込・読込部22を介して、スマートメディア、PCカード、DVD、メモリステック等の公知の記録メディアに記録されてもよい。その際、出力画像データとともに色信号情報を記録することが望ましい。出力画像データを呼び出す際、出力装置の色信号に合う出力画像データを呼び出すためである。また、記録メディアに色信号情報とともに記録された出力画像データを記録メディア書込・読込部22を介して、読み出して色信号変換部18で色信号変換を行い、所望の出力装置に転送するように構成してもよい。また、色信号に応じて定まる出力分光感度分布が得られると、色変換係数導出部16において色変換係数が一意的に導出されるので、この係数を予め導出してメモリ部20に記録しておき、色信号情報や色信号を規定する出力装置の名称や型式等の識別情報が入力されると、これに基づいて色変換係数を、メモリ部20から呼出し、色信号変換部18に直接送るように構成してもよい。
【0025】次に、本発明の画像入力方法について、画像入力装置10に基づいて説明する。
【0026】まず、色信号情報取得部14において、NTSC色信号やBT709色信号等の色信号情報がキー入力され、この色信号情報に基づいて、メモリ部20から、この色信号で定まる出力分光感度分布とエンコード情報が呼びだされる。出力分光感度分布は色変換係数導出部16に送られ、エンコード情報は色信号変換部18に送られる。
【0027】色変換係数導出部16では、送られてきた出力分光感度分布と撮像系12の有する既知の入力分光感度分布とから、画像信号に所望の色変換を施すための色変換マトリクスの係数(色変換係数)を導出する。例えば、撮像系12の有するm個の分光感度分布から成る入力分光感度分布Ii (λ)(i=1〜m)と、キー入力された色信号情報によって定まる、あるいはキー入力された出力装置等の識別情報によって定まる、n個の分光感度分布から成る出力分光感度分布Oj (λ)(j=1〜n)を得ると、下記式(1)で示されるd1 (I,Oj )を最小にする係数ajiを求める。ここで、O*j (λ)は、式(2)で示されるように、係数ajiを係数とするIi (λ)の線型和で表される。
【0028】
【数9】


【数10】


【0029】すなわち、式(1)で示されるd1 (I,Oj )を最小にする係数ajiを求めることによって、色変換マトリクスの色変換係数を導出する。ここで、式(1)の右辺は、Oj (λ)とO*j (λ)の差の絶対値を可視領域の波長を積分範囲として積分を求めることを示し、この積分の値を最小にすることによって、入力分光感度分布Ii (λ)の線型和で表されるO*j (λ)を出力分光感度分布O(λ)に最もよく近似させる。すなわち、分光波形において、出力分光感度分布O(λ)を入力感度分布Ii (λ)の線型和で最良に近似させる。
【0030】従来、マクベスチャート等の複数の色見本を所定の光源下、被写体として撮影し、この被写体の出力画像データが出力装置で定められた出力画像データの値に一致するように、色変換マトリクスの色変換係数を求めていた。そのため、比較的適切な色変換を行なうことのできる範囲は、マクベスチャート等の色見本の持つ分光分布で表現される範囲付近に限られ、マクベスチャート等の色見本で表現できない分光分布を持つ被写体等は、適切に色変換できなかった。また、導出される色変換係数は、マクベスチャート等の色見本の撮影の際の照明光源の分光強度分布にも影響されるため、照明光源の種類によっては適切に色変換できない場合もあった。
【0031】しかし、式(1)で示される導出方法では、可視領域全体において出力分光感度分布O(λ)を入力分光感度分布Ii (λ)の線型和を用いて最もよく近似すして表すので、撮影するマクベスチャート等の色見本や撮影の際の照明光の分光強度分布に影響されない安定した色変換を行なうことができる。
【0032】また、上記式(1)の替わりに、下記式(3)で示されるd2 (I,Oj )を最小にすることによって色変換係数を求めてもよい。ここで、O*j (λ)は、下記式(4)で示されるように、数ajiを係数とするIi (λ)の線型和で表される。
【数11】


【数12】


ここで、内積( ,)は、下記式(5)を表す。
【数13】


【0033】上記式(1)で色変換係数を導出する方法は、入力分光感度分布Ii (λ)の線型和で表したO*j (λ)を用いて、可視領域全体において出力分光波形Oj(λ)を最良に近似するものであるが、上記式(3)で色変換係数を導出する方法は,上記式(1)の方法と異なり、人間の色味を認知する視覚特性を考慮して色変換係数を導出するものである。
【0034】すなわち、本来人間は、分光波形に比例した形で光の色を認知するわけではなく、基準色、例えば完全な白色を基準にした相対比較で色味を認知するものである。しかも、色味の認知の度合いは、線型でなく非線形である。このことは、人間の知覚する色味を最適に定量化する均等色空間におけるL* 、a* およびb*の値が、XYZ表色系における3刺激値X,YおよびZの値を完全拡散反射面における基準3刺激値X0 、Y0 およびZ0 を基準にした相対比、すなわちX/X0 やY/Y0 やZ/Z0 を3分の1乗した値の線型結合によって表されることからもわかる。
【0035】上記式(3)で表される色変換係数の導出方法は、上記人間の色味の知覚特性を考慮して導出されるものであり、例えば、人間の色味の知覚特性を考慮した均等色空間L* * * で考えると、均等色空間L* * * において、入力装置の画像データから得られるL* 、a* およびb* の値を、出力装置において表示する色味のL* 、a* およびb* の値に最も近似させる変換係数を求めるものである。
【0036】入力装置におけるL* 、a* およびb* の値をそれぞれL1 * 、a1 * およびb1 * とし、出力装置におけるL* 、a* およびb* の値をそれぞれL2 * 、a2 * およびb2 * とした場合、入力装置におけるL1 * 、a1 * およびb1 * の値と、出力装置におけるL2 * 、a2 * およびb2 * の値との差ΔL* 、Δa*およびΔb* を考え、下記式(6)〜(8)のように期待値を評価する。ここで、E[ ]は、被写体の分光反射率分布ρl (λ)を統計上理想的に分散させた際の期待値を表す演算子である。なお、Δ(X/X0 1/3 、Δ(Y/Y0 1/3 およびΔ(Z/Z0 1/3 は、入力装置におけるL1 * 、a1 * およびb1 *で表される色味の3刺激値X1 、Y1 およびZ1 とし、出力装置におけるL2 *、a2 * およびb2 * で表される色味の3刺激値X2 、Y2 およびZ2 とする時、各々(X1 /X011/3 −(X2 /X021/3 、(Y1 /Y011/3 −(Y2/Y021/3 および(Z1 /Z011/3 −(Z2 /Z021/3 である。ここで、X01、、Y01およびZ01は、入力装置の色空間における基準3刺激値であり、X02、、Y02およびZ02は、出力装置の色空間における基準3刺激値である。
【0037】
E[ΔL* ]= 116・E[Δ(Y/Y0 1/3 ] (6)
E[Δa* ]≦ 500・E[Δ(X/X0 1/3
+500・E[Δ(Y/Y0 1/3 ] (7)
E[Δb* ]≦ 500・E[Δ(Y/Y0 1/3
+500・E[Δ(Z/Z0 1/3 ] (8)
上式(6)〜(8)から判るように、期待値E[ΔL* ]、E[Δa* ]およびE[Δb* ]を最小化するには、E[Δ(X/X0 1/3 ]、E[Δ(Y/Y0 1/3 ]E[Δ(Z/Z0 1/3 ]の各々を最小にするとよい。すなわち、入力装置におけるL* 、a* およびb* の値を、色変換によって出入力装置におけるL* 、a* およびb* の値に最も近似させるには、E[Δ(X/X0 1/3 ]、E[Δ(Y/Y0 1/3 ]およびE[Δ(Z/Z0 1/3 ]を最小化する色変換を行なうことによって達成される。
【0038】そこで、期待値E[Δ(X/X0 1/3 ]を最小化するために必要な条件を求める。例えば、O1 (λ)、O2 (λ)およびO3 (λ)を下記のような等色関数として考える。
【数14】


ここで、Δ(X/X0 1/3 を整理すると、下記式(9)で表される。式(9)におけるCは定数である。ここで、式(9)の右辺には、式(3)の右辺を等色関数で表した項が含まれており、この項を0に近づけることで、期待値E[Δ(X/X0 1/3 ]を最小化することができる。
【数15】


【数16】


【0039】また、上記式(9)に示されるように、被写体の分光反射率分布ρl (λ)が式(3)の右辺に該当する項と分離されているので、被写体の分光反射率分布ρl (λ)に依存しない形で、期待値E[Δ(X/X0 1/3 ]を最小化することができる。同様な方法により、期待値E[Δ(Y/Y0 1/3 ]および期待値E[Δ(Z/Z0 1/3 ]を最小化することができる。すなわち、まとめると、期待値E[Δ(X/X0 1/3 ]、期待値E[Δ(Y/Y0 1/3 ]および期待値E[Δ(Z/Z0 1/3 ]を最小化するには、式(3)のd2 (I, j )を最小化することが必要であるが、この最小化は、d2(I, j )を最小化する係数ajiを導出することによって達成できる。このようにして、期待値E[Δ(X/X0 1/3 ]、期待値E[Δ(Y/Y01/3 ]および期待値E[Δ(Z/Z0 1/3 ]を最小化するための係数ajiを導出することができる。なお、期待値E[Δ(X/X0 1/3 ]、期待値E[Δ(Y/Y0 1/3 ]および期待値E[Δ(Z/Z0 1/3 ]を最小化するための係数ajiの導出は、一般に非線形方程式となるが、公知の解法によって係数ajiを求めることができる。
【0040】例えば、図5(a)に示す入力分光感度分布を有するデジタルスチルカメラと、図5(b)に示す入力分光感度分布を有するスキャナからの画像信号を、BT709色信号、NTSC色信号およびXYZ色信号に色変換する場合、式(1)による色変換導出方法の場合、表1に示す係数aji(i=1〜3,j=1〜3)が導出される。また、式(3)による色変換導出方法の場合、表2に示す係数aji(i=1〜3,j=1〜3)が導出される。こうして導出された係数ajiは、色変換係数として、色信号変換部18に送られ、色信号変換部18において、係数ajiおよびエンコード情報が設定される。
【0041】
【表1】


【表2】


【0042】一方、撮像系12で撮像された画像の画像信号は増幅されて10ビットのA/D変換を施され、さらに傷欠陥補正等の信号処理が施され、色信号変換部18に送られる。色信号変換部18では、撮像系12から送られた画像信号、例えばSi (i=1〜m)を下記式(10)に示す係数aji(i=1〜m,j=1〜n)から構成される色変換マトリクスMを用いて画像データDj (j=1〜n)に色変換する。
【数17】


【0043】その後、エンコード情報にしたがって、画像信号である画像データDj (j=1〜n)は、量子化され、例えばsRGB色信号の場合は、図4に示される破線のような非線形な処理により8ビット信号に変換される。このようにして、入力された色信号情報等によって所望の色信号の出力画像データが、また、入力された出力装置等の識別情報によって所望の出力装置が指定する色信号の出力画像データを生成することができる。
【0044】なお、上記画像入力方法は、画像入力装置10の中の専用回路によって実行されてもよいし、コンピュータの機能を備える画像入力装置において上述した作用を発揮するソフトウェアによって処理されてもよい。ソフトウェア処理される場合、上述したような各工程(手順)を含むプログラムが、CD−ROM等の記録媒体に記録され、コンピュータの機能を備える画像入力装置に読み込まれることで随時実行される。本発明は、このようなプログラムが記録された記録媒体を提供する。
【0045】以上、本発明の画像処理装置および画像処理方法およびこれを用いた記録媒体について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0046】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、出力装置の色信号情報や出力装置の識別情報等の出力先情報を取得し、この情報に基づいて色信号変換を行なうので、デジタルスチルカメラやスキャナ等の画像入力装置において、画質の劣化しない高品質な出力画像データを出力先に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像入力装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明の画像入力方法で用いる出力分光感度分布の一例を示す図である。
【図3】 本発明の画像入力方法で用いる出力分光感度分布の他の例を示す図である。
【図4】 本発明の画像入力方法で用いるエンコード情報の一例を示す図である。
【図5】 (a)および(b)は、本発明の画像入力方法で用いる入力分光感度分布の一例を示す図である。
【図6】 従来の入力装置で作成される出力画像データの流れを説明する説明図である。
【符号の説明】
10 画像入力装置
12 撮像系
14 色信号情報取得部
16 色変換係数導出部
18 色信号変換部
20 メモリ部
22 記録メディア書込・読込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】撮像された画像の画像信号から出力画像データを生成する画像入力装置であって、前記出力画像データを出力する出力先の情報を取得する出力先情報取得手段と、この出力先情報取得手段によって取得された出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像信号に色変換する色変換係数を取得する色変換係数取得手段と、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうためのエンコード情報を取得するエンコード情報取得手段と、前記色変換係数を用いて前記画像信号に色変換を行い、さらに前記エンコード情報に基づいてエンコードを行なう変換手段とを備えることを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】請求項1に記載の画像入力装置であって、前記出力先情報取得手段は、前記出力先の出力分光感度分布を取得し、前記色変換係数取得手段は、前記出力先情報取得手段で取得された前記出力分光感度分布とこの画像入力装置の持つ既知の入力分光感度分布とから前記色変換係数を導出することで前記色変換係数を取得する請求項1に記載の画像入力装置。
【請求項3】前記色変換係数は、前記入力分光感度分布をIi (λ)(i=1〜m)とし、前記出力分光感度分布をOj (λ)(j=1〜n)とする時、下記式(1)で表されるd1 (I,Oj )を最小にする係数aji(i=1〜m、j=1〜n)である請求項2に記載の画像入力装置。
【数1】


但し、O* j (λ)は、下記式(2)で表されるものである。
【数2】


【請求項4】前記色変換係数は、前記入力分光感度分布をIi (λ)(i=1〜m)とし、前記出力分光感度分布をOj (λ)(j=1〜n)とする時、下記式(3)で表されるd2 (I,Oj )を最小にする係数aji(i=1〜m、j=1〜n)である請求項2に記載の画像入力装置。
【数3】


但し、O* j (λ)は、下記式(4)で表されるものである。
【数4】


【請求項5】前記エンコード情報取得手段が取得するエンコード情報は、IEC/4WD61966−2−1に記載のエンコード情報である請求項1〜4のいずれかに記載の画像入力装置。
【請求項6】前記エンコード情報取得手段が取得するエンコード情報は、ITU−R BT.709に記載のエンコード情報である請求項1〜5のいずれかに記載の画像入力装置。
【請求項7】撮像された画像信号から出力先に出力する出力画像データを生成する際、前記出力画像データを出力する出力先の情報を取得し、前記出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像信号に色変換する色変換係数を取得するとともに、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうためのエンコード情報を取得し、前記画像信号に対して、前記色変換係数を用いて色変換を施し、さらに前記エンコード情報に基づいてエンコードを行なうことで出力画像データを生成することを特徴とする画像入力方法。
【請求項8】画像信号から出力先に出力する出力画像データを生成する際、前記出力画像データを出力する出力先の情報を取得する手順と、前記出力先の情報に応じて、この出力先に適した画像信号に色変換する色変換係数を取得する手順と、前記出力先の情報に応じて、前記出力先に適したエンコードを画像信号に対して行なうためのエンコード情報を取得する手順と、取得した前記色変換係数を用いて前記画像信号に色変換を施し、さらに取得した前記エンコード情報に基づいてエンコードを行なう手順とをコンピュータに実行させて、画像信号から出力先に適した出力画像データを生成することを特徴とするプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−298750(P2001−298750A)
【公開日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−113804(P2000−113804)
【出願日】平成12年4月14日(2000.4.14)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】