説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム

【課題】被写界深度を変更して撮影された複数の画像ついて、色にじみの発生の有無を判断する。
【解決手段】画像処理装置は、画像取得部と、エッジ検出部と、差分算出部と、判断部と、を備える。画像取得部は、露出量が実質的に同一であり、絞りが異なる複数の撮影条件をそれぞれ用いて、連続して撮影された複数の画像を取得する。エッジ検出部は、複数の撮影条件を用いて撮影された複数の画像のうちの第1の画像におけるエッジ部分を検出する。差分算出部は、第1の画像におけるエッジ部分の色成分と、複数の画像のうちの第1の画像より絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された第2の画像におけるエッジ部分の色成分との差分を算出する。判断部は、算出された差分を用いて、第1の画像における色にじみの有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理に関し、色にじみの発生の有無の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、露出量を段階的に変化させて、複数回の撮影を連続して行う、いわゆる露出ブラケット撮影機能を備えたカメラが知られている(例えば、特許文献1)。また、合焦状態を段階的に変化させるフォーカスブラケット撮影機能、フラッシュの強度を段階的に変化させるフラッシュブラケット撮影機能を備えるカメラが知られている。さらに、デジタルカメラにおいては、露出ブラケット撮影機能の他に、ホワイトバランス(色温度)を段階的に変化させるホワイトバランスブラケット撮影機能、撮像素子の感度を段階的に変化させる感度ブラケット撮影機能など、を備えるものが知られている(例えば、特許文献2)。
【0003】
ここで、銀塩カメラや、デジタルカメラを用いた撮影において、絞りを変化させることにより、被写界深度を変更する撮影技術が知られている。例えば、絞りを比較的開放することにより、被写界深度を浅くして撮影を行うと、背景をぼかした画像を得ることができる。逆に、絞りを比較的絞り込むことにより、被写界深度を深くして撮影を行うと、カメラに近い被写体からカメラから遠い被写体まで、ピントが合った画像を得ることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−303130号公報
【特許文献2】特開平7−318785号公報
【特許文献3】特開2000−75371号公報
【特許文献4】特開2003−101869号公報
【特許文献5】特開2005−173169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被写界深度を浅くするために、絞りを開放側に設定すると、色にじみが発生しやすくなるという問題があった。このような場合、色にじみの発生の有無を容易に判断することができればユーザにとって便利である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、被写界深度を変更して撮影された複数の画像ついて、色にじみの発生の有無を判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の態様は、画像処理装置を提供する。第1の態様に係る画像処理装置は、画像取得部と、エッジ検出部と、差分算出部と、判断部と、を備える。前記画像取得部は、露出量が実質的に同一であり、絞りが異なる複数の撮影条件をそれぞれ用いて、連続して撮影された複数の画像を取得する。前記エッジ検出部は、前記複数の撮影条件を用いて撮影された複数の画像のうちの第1の画像におけるエッジ部分を検出する。前記差分算出部は、前記第1の画像におけるエッジ部分の色成分と、前記複数の画像のうちの前記第1の画像より絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された第2の画像における前記エッジ部分の色成分との差分を算出する。前記判断部は、前記差分を用いて、前記第1の画像における色にじみの有無を判断する。
【0008】
第1の態様に係る画像処理装置によれば、絞りが異なる複数の撮影条件をそれぞれ用いて、連続して撮影された複数の画像に、色にじみが発生しているか否かを自動的に判断することができる。
【0009】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第1の画像におけるエッジ部分の検出は、前記複数の画像に共通するエッジ部分を検出することにより行われても良い。かかる場合において、複数の画像に共通するエッジ部分は、前記複数の画像のうちの最も絞りが開放された撮影条件で撮影された画像のエッジ部分であっても良い。こうすれば、色にじみの有無を判断しようとする画像ごとにエッジ部分の検出を行う必要がなく、処理時間および処理負荷を低減することができる。
【0010】
発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第2の画像は、前記複数の画像のうちの最も絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された画像であっても良い。こうすれば、色にじみが最も発生しにくい画像を基準として色にじみの有無を判断するので、色にじみの有無の判断精度を向上することができる。
【0011】
発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第1の画像と前記第2の画像のそれぞれのエッジ部分に、人間の視覚フィルタを適用するフィルタ処理を実行するフィルタ処理部を備え、前記差分算出部は、前記フィルタ処理後の前記エッジ部分について、前記差分を算出しても良い。こうすれば、人間の視覚の特性を考慮して、色にじみの有無を判断できるので、色にじみの有無の判断を適切に行うことができる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記色にじみが有ると判断された前記第1の画像を削除しても良い。こうすれば、ユーザは、連続撮影された画像のうち、色にじみの発生していない好ましい画像のみを取得することができる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記色にじみが有ると判断された前記第1の画像に、色にじみが有る旨を示す情報を関連付けても良い。こうすれば、ユーザあるいは画像を取得する装置は、連続撮影された画像について、色にじみの有無を容易に認識することができる。
【0014】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第2の画像と、色にじみが無いと判断された前記第1の画像のうちの最も絞りが開放された撮影条件で撮影された画像のみを記憶しても良い。こうすれば、色にじみが発生しない範囲で、被写界深度の大きく異なる画像を容易に取得することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、上述した画像処理装置のような装置発明に加えて、例えば、画像処理方法のような方法発明として実現することができる。あるいは、かかる装置または方法を構築するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
A.第1実施例:
・装置の構成:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、第1実施例に係る画像処理装置としてのデジタルカメラの概略構成図である。
【0017】
デジタルカメラ100は、撮影部10と、制御部20と、被写体の明るさを測定するための測光回路30と、操作部40と、液晶パネルなどの表示部50と、外部記憶装置60と、を備えている。
【0018】
撮影部10は、実際に撮影を行う機構部分であり、撮影結果として生成される画像データを後述する制御部20に出力する。撮影部10は、レンズ11と、絞り機構12と、シャッター13と、撮像素子14と、画像取得回路15を備えている。レンズ11は、被写体からの光を撮像素子14の受光面に集めることにより、被写体の像を撮像素子14の受光面上に形成する。絞り機構12は、レンズを通過する光の量を調整する機構である。シャッター13は、撮像素子14の受光面に被写体からの光が当たる時間(露光時間)を調整する機構である。撮像素子14は、受光面に結像した被写体の像の明暗を電気信号に変換する。撮像素子14には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)や、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)が用いられる。画像取得回路15は、A/D変換器を含み、撮像素子14により出力される電気信号をデジタル信号に変換し、撮像素子14の受光面に結像した画像を表す画像データを生成する。
【0019】
制御部20は、中央演算装置(CPU)と、ROMやRAMなどの内部記憶装置とを含む、周知のコンピュータである。制御部20は、制御プログラムを実行することにより、デジタルカメラ100全体を制御する種々の機能を実現する。図1には、制御部20により実現される機能部のうち、本実施例の説明に必要な機能部が選択的に図示されている。制御部20は、機能部として、撮影条件設定部21と、撮影実行部23と、画像記録部24と、画像処理部25とを備えている。撮影条件設定部21は、各種の撮影条件、例えば、シャッター速度(露光時間)、絞り値、フラッシュの発光の有無、撮像素子14の感度を設定する。撮影条件設定部21は、測光回路30により測定された被写体の明るさに基づいて、適正な露出量を実現する撮影条件を出力する自動露出調整部22を含んでいる。撮影条件設定部21は、撮影条件の設定のために自動露出調整部22を用いる。撮影実行部23は、撮影条件設定部21により設定された撮影条件を用いて、撮影部10を制御し、撮影部10に撮影を行わせる。画像記録部24は、後述する画像処理部25により処理された画像データを、外部記憶装置60に記憶させる。
【0020】
画像処理部25は、撮影部10から出力された画像データに対して、各種の画像処理を施す。図1には、画像処理部25の備える機能部のうち、後述する画像の色にじみを判断するための処理(色にじみ判断処理)に必要な機能部のみを選択的に図示している。画像処理部25は、機能部として、エッジ検出部251と、フィルタ処理部252と、差分算出部253と、色にじみ判断部254とを含んでいる。これらの画像処理部25の機能部については、後述する。
【0021】
操作部40は、ユーザからの要求を入力するための操作ボタンを含み、入力された要求を制御部20に対して送信する。操作部40は、操作ボタンの一つとして、撮影指示を入力するための撮影指示入力部であるシャッターボタン41を含んでいる。操作部40は、撮影モードなどの選択・決定ボタンを始めとする各種操作ボタンを含んでいる(図示省略)。
【0022】
外部記憶装置60は、生成された画像データを保存しておくための記憶装置であり、メモリカードなどの脱着可能な記録媒体を用いる装置であっても良いし、内蔵HDD(ハードディスクドライブ)装置であっても良い。画像データは、画像データに関連付けられた付属情報と共に、所定の規格に従った画像ファイルに格納されて、外部記憶装置60に記憶される。画像ファイルの規格には、例えば、デジタルカメラ用画像ファイルフォーマット規格(Exif)が用いられる。画像データは、例えば、JPEG形式、TIFF形式、GIF形式、BMP形式などの保存形式で、画像ファイルに格納される
【0023】
・デジタルカメラ100の動作:
図2〜図5を参照して、被写界深度ブラケットモードにおけるデジタルカメラ100の動作について説明する。図2は、被写界深度ブラケットモードにおけるデジタルカメラ100の動作を示すフローチャートである。図3は、絞り限界値検出処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図4は、被写界深度ブラケットモードにおける撮影条件を説明する図である。図5は、被写界震度ブラケットモードを用いて撮影された画像の一例を示す説明図である。
【0024】
ユーザが操作部40を操作して、被写界深度ブラケットモードを選択すると、制御部20の撮影条件設定部21により絞り限界値検出処理が行われる(ステップS102)。絞り限界値検出処理は、例えば、ユーザがシャッターボタン41を半押し状態にした場合に実行されても良いし、デジタルカメラ100が撮影可能な状態にある時に、常にデジタルカメラ100が捉えている被写体について繰り返し実行されても良い。
【0025】
絞り限界値検出処理が開始されると、撮影条件設定部21は、まず、ISO感度を最低値に設定すると共に、絞りを最も開放側に設定する。ISO感度は、フィルムの感度を示す数値として定められたもので、デジタルカメラでは、撮像素子14の感度を表す値として用いられている。本実施例におけるデジタルカメラ100は、ISO感度を、100、200、400、800の4段階に設定可能である。ISO感度の数値が大きい程、撮像素子14の感度が高いことを示している。本ステップでは、ISO感度は、最低値である100に設定される。絞り機構12の状態は、F値と呼ばれる数値を用いて表される。本実施例におけるデジタルカメラ100は、F値を、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22、32の10段階に設定可能である。以下では、絞り機構12をF値が1.4である状態に設定することを、絞りをF1.4に設定する、と表現することとする。F値が小さい側が、絞りの開放側であり、F値の大きい側が絞りの絞り込み側である。絞りを一段階絞ると、例えば、絞りをF1.4からF2に変更すると、露出量は、約半分になる。本ステップでは、絞りは、最も開放側であるF1.4に設定される。
【0026】
続いて、撮影条件設定部21の自動露出調整部22は、先のステップにおいて設定されたISO感度とF値を固定して、自動露出調整を行うことにより、シャッター速度を決定する(ステップS204)。具体的には、自動露出調整部22は、測光回路30を用いて被写体の明るさを測定し、被写体の明るさに応じて適正な露出量を算出する。露出量は、EV(Exposure Value)と呼ばれる数値を用いて表され、被写体が明るいほど大きな値が適正な露出量とされる。自動露出調整部22は、適正な露出量が得られるように、シャッター速度を決定する。シャッター速度は、露光時間(秒)を用いて表される。本実施例におけるデジタルカメラ100のシャッター速度は、図4の横軸に示されるように最速値1/4000から最も遅い値1/4まで、11段階に設定することができる。シャッター速度を、一段階速くすると、例えば、1/30から1/60に変更すると、露出量は、約半分になる。図4には、露出量(EV)と、絞り(F値)と、シャッター速度(露光時間)との関係が示されている。ISO感度が100である場合に露出量が10EVになる絞りとシャッター速度の組み合わせは、図4において、太い実線L10上になる。従って、適正な露出量が10EV、絞りがF1.4、ISO感度が100である場合、自動露出調整部22は、シャッター速度を1/500に決定する(図4:実線L10上の点SO10参照)。一方、ISO感度が100である場合に露出量が16EVになる絞りとシャッター速度の組み合わせは、図4において、太い実線L16上になる。従って、適正な露出量が16EV、絞りがF1.4、ISO感度が100である場合、シャッター速度の適切な値は、1/4000より速い(露光時間が短い)値となるので、自動露出調整部22は、シャッター速度を決定できない。
【0027】
続いて、撮影条件設定部21は、適正な露出量を設定できたか否かを判断する(ステップS206)。撮影条件設定部21は、先のステップにおいて、適正な露出量を実現できるように、シャッター速度を決定できた場合には、適正な露出量を設定できたと判断し、シャッター速度を決定できなかった場合には、適正な露出量を設定できないと判断する。
【0028】
撮影条件設定部21は、適正な露出量を設定できないと判断すると(ステップS206:NO)、絞りを現在の状態から一段階絞り込み側に設定する(ステップS208)。例えば、現在の絞りがF1.4であれば、絞りをF2に設定する。撮影条件設定部21は、絞りを変更すると、ステップS204に戻り、新たに設定された絞りにて、再度シャッター速度を決定する。
【0029】
一方、撮影条件設定部21は、適正な露出量を設定できたと判断すると(ステップS206:YES)、現在の絞りを開放側の限界値として保存しておく(ステップS210)。例えば、適正な露出量が10EVである場合には、F1.4が開放側の限界値とされる(図4:実線L10上の点SO10参照)。また、適正な露出量が16EVである場合には、F4が開放側の限界値とされる(図4:実線L16上の点SO16参照)。
【0030】
続いて、撮影条件設定部21は、絞りを最も絞り込み側に設定する(ステップS212)。本実施例におけるデジタルカメラ100では、絞りはF32に設定される。自動露出調整部22は、ステップS204と同様に、ISO感度とF値を固定して、自動露出調整を行うことにより、シャッター速度を決定する(ステップS214)。シャッター速度は、手ぶれが発生しない範囲で決定される。図4において一点破線A−Aは、手ぶれが発生する限界の例を示している。すなわち、本実施例におけるデジタルカメラ100では、シャッター速度が1/8より遅くなると手ぶれが発生すると判断され、自動露出調整部22は、シャッター速度を1/15もしくは1/15より速く設定する。自動露出調整部22は、適正な露出量が16EV、絞りがF32、ISO感度が100である場合、自動露出調整部22は、シャッター速度を1/60に決定する(図4:実線L16上の点SC16参照)。一方、適正な露出量が10EV、絞りがF32、ISO感度が100である場合、シャッター速度の適切な値は、1/15より遅い(露光時間が長い)値となるので、自動露出調整部22は、シャッター速度を決定できない。
【0031】
続いて、撮影条件設定部21は、適正な露出量を設定できたか否かを判断する(ステップS216)。撮影条件設定部21は、先のステップにおいて、適正な露出量を実現できるように、シャッター速度を決定できた場合には、適正な露出量を設定できたと判断し、シャッター速度を決定できなかった場合には、適正な露出量を設定できないと判断する。
【0032】
撮影条件設定部21は、適正な露出量を設定できないと判断すると(ステップS216:NO)、現在のISO感度が設定できる最高値(本実施例では、800)であるか否かを判断する(ステップS218)。撮影条件設定部21は、ISO感度が最高値でないと判断すると(ステップS218:NO)、ISO感度を一段階上げる(ステップS220)。一方、撮影条件設定部21は、ISO感度が最高値であると判断すると(ステップS218:YES)、絞りを現在の状態から一段階開放側に設定する(ステップS222)。例えば、現在の絞りがF1.4であれば、絞りをF2に設定する。撮影条件設定部21は、ISO感度または絞りを変更すると、ステップS214に戻り、新たに設定された絞りまたはISO感度にて、再度シャッター速度を決定する。
【0033】
一方、撮影条件設定部21は、適正な露出量を設定できたと判断すると(ステップS216:YES)、現在の絞りを絞り込み側の限界値として保存しておく(ステップS224)。例えば、適正な露出量が10EVである場合には、F22が絞り込み側の限界値とされる(図4:破線M10上の点SC10参照)。また、適正な露出量が16EVである場合には、F32が絞り込み側の限界値とされる(図4:実線L16上の点SC16参照)。こうして、絞りの開放側および絞り込み側の限界値がそれぞれ保存されると、絞り限界値検出処理は終了される。
【0034】
図3に戻って説明を続ける。絞り限界値検出処理を終えると、撮影条件設定部21は、絞り限界値検出処理において保存された開放側の限界値に、絞りを設定し(ステップS104)、ユーザからの撮影指示を待つ。ユーザがシャッターボタン41を押下することにより、撮影指示を入力すると(ステップS106:YES)、自動露出調整部22は、設定された絞りにて、自動露出調整を実行する(ステップS108)。これにより、設定された絞りにて適正露出が得られるように、ISO感度およびシャッター速度が決定される。自動露出調整がなされると、撮影実行部23は、決定された撮影条件(絞り、ISO感度、シャッター速度)にて、撮影部10に撮影を実行させる(ステップS110)。撮影が終了すると、撮影条件設定部21は、現在の絞りが、上述した絞り限界値検出処理により保存された絞り込み側の限界値であるか否かを判断する(ステップS112)。絞り込み側の限界値ではないと判断されると(ステップS112:NO)、撮影条件設定部21は、絞りを一段階絞り込み側に設定する(ステップS114)。絞りが変更されると、ステップS108に戻って、次の撮影が実行される。一方、絞り込み側の限界値であると判断されると(ステップS112:YES)、撮影条件設定部21は、撮影を終了し、色にじみ判断処理に移る(ステップS116)。
【0035】
このようにして、絞りを開放側の限界値から絞り込み側の限界値まで、段階的に変更しながら、連続して撮影が行われることにより、制御部20は、被写体および露出量が実質的に同一であり、被写界深度が段階的に変化していく複数の画像をデジタルデータとして取得する。例えば、適正な露出量が16EVである被写体を撮影した場合、図4の実線L16上の7つの点に対応する撮影条件をそれぞれ用いて、7回の撮影が連続して実行される。この結果、制御部20は、露出量が実質的に同一に、絞りがF4からF32までの各段階に、それぞれ設定して撮影された、同一被写体を有する7枚の画像のデジタルデータを取得する。図5(a)〜(c)は、これらの7枚の画像のうちの3枚の画像の一例を示している。
【0036】
図5(a)は、図4における実線L16上の点SC16に対応する撮影条件(絞り込み側の限界値)で撮影された画像を示す。図5(b)は、図4における実線L16上の点SM16に対応する撮影条件で撮影された画像を示す。図5(c)は、図4における実線L16上の点SO16に対応する撮影条件(開放側の限界値)で撮影された画像を示す。絞りを限界まで絞り込んで撮影された画像は、被写界深度が深い画像となり、例えば、図5(a)に示すように、主要被写体Fのみならず、主要被写体Fの後方にある非主要被写体Hにもピントが合った画像となる。一方、絞りを限界まで開放して撮影された画像は、非写界深度が浅い画像となり、例えば、図5(c)に示すように、主要被写体Fの前面部分にのみピントが合い、主要被写体Fの側面部分は少しぼけ、後方の非主要被写体Hは完全にぼけた画像になる。そして、絞りを、開放側の限界と絞り込み側の限界との中間に設定して撮影された画像は、非写界深度が中程度の画像となり、例えば、図5(b)に示すように、主要被写体Fは全体にピントが合っているが、後方の非主要被写体Hはぼけている画像になる。
【0037】
また、適正な露出量が10EVである被写体を撮影した場合、図4の実線L10上の6つの点(黒丸)に対応する撮影条件をそれぞれ用いて、6回の撮影が連続して実行される。さらに、シャッター速度を固定し、絞りとISO感度を段階的に変更しながら図4の破線M10上の3つの点(四角、三角、バツ型の各点)に対応する撮影条件をそれぞれ用いて3回の撮影が連続して実行される。この結果、制御部20は、露出量が実質的に同一に、絞りがF1.4からF22までの各段階に、それぞれ設定して撮影された、同一被写体を有する9枚の画像のデジタルデータを取得する。
【0038】
図6および図7を参照して、撮影後に行われる色にじみ判断処理(ステップS116)について説明する。図6は、色にじみ判断処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図7は、エッジの検出に用いられるラプラシアンフィルタの一例を示す図である。
【0039】
色にじみ判断処理は、制御部20の画像処理部25により実行される。色にじみ判断処理が開始されると、画像処理部25のエッジ検出部251は、上述した連続撮影により撮影された複数の画像(連続撮影画像)のうち、絞りを開放側の限界値に設定して撮影された画像(最開放側画像)のエッジ部分を検出する(ステップS302)。エッジ部分は、画像中の被写体の輪郭部分などに現れる隣接する画素間の階調値の差が大きい部分である。エッジ検出部251は、例えば、エッジ量が所定の閾値より大きいエッジ画素を検出し、当該エッジ画素により構成される部分をエッジ部分とする。画素のエッジ量は、例えば、各画素に対して、図7に示す8近傍ラプラシアンフィルタを適用することにより算出される。具体的には、エッジ検出部251は、注目している画素と周囲の8つの画素の輝度値のそれぞれに、8近傍ラプラシアンフィルタに設定された係数を乗じて得られる値の合計値の絶対値をエッジ量として採用する。輝度値は、例えば、YCbCr色空間における輝度値Yや、L*a*b*色空間における明度値Lを用いることができる。画素データがsRGB色空間で与えられている場合は、輝度値Yは、式(1)によって算出される。
Y = 0.29891 × R + 0.58661 × G + 0.11448 × B …(1)
【0040】
ピントが合っている領域では、被写体の輪郭や細部がはっきり描写されるため、エッジ部分が多くなり、ピントがぼけている領域では、被写体の輪郭や細部が曖昧になるためエッジ部分が少なくなる。従って、絞りが絞り込まれた(F値が大きい)画像ほど、ピントが合っている領域が大きいためエッジ部分が多くなり、絞りが開放された(F値が小さい)画像ほど、ピントが合っている領域が小さいためエッジ部分は少なくなる。この結果、連続撮影画像のうち、最開放側画像(例えば、図5(c)の画像)のエッジ部分は、他の画像においてもエッジ部分となる。本ステップにおいて、最開放側画像を用いてエッジ部分を検出するのは、連続撮影画像に共通するエッジ部分を検出するためである。
【0041】
次に、画像処理部25は、連続撮影画像のうち、絞りを絞り込み側の限界値に設定して撮影された画像(最絞り込み側画像)の画素データの色空間を、いわゆる反対色空間に変換する(ステップS304)。反対色空間は、輝度成分O1と、2つの色差成分O2(赤−緑成分)、O3(青−黄成分)とから成る色空間であり、各成分が、人間の脳が認識する視覚の3つの感覚に対応していると考えられている。画素データがsRGB色空間で与えられている場合は、反対色空間の各成分値(O1、O2、O3)は、CIEXYZ色空間を介して、以下の式(2)および(3)によって算出される。
【0042】
【数1】

【0043】
画像処理部25のフィルタ処理部252は、画素データを反対色空間に変換された最絞り込み側画像に対して人間の視覚フィルタを適用する(ステップS306)。人間の視覚フィルタは、輝度に対する空間分解能に比較して、色差に対する空間分解能が大幅に低いという人間の視覚特性を考慮して、画像の各画素データを、画像を人間が見た場合に認識される値に変換するフィルタである。変換後の画素データの各成分値(Ot1、Ot2、Ot3)は、以下の式(4)〜(6)によって算出される。
【0044】
【数2】

【0045】
上記の式において、「*」は、畳み込み積分を表す。上記の式において、(x,y)は、画像における画素の座標を表す。上記の式において、kiおよびkijは、正規化係数であり、kiはfjの和が1になるように設定され、kijは、Eijの和が1になるように設定される。上記の式におけるパラメータwijおよびσijは、以下の表に示すとおりである。
【0046】
【表1】

【0047】
続いて、画像処理部25は、後述する色にじみの発生の有無が未判断の画像のうち、最も絞りが開放側で撮影された画像(最もF値が小さい撮影条件の画像)を、注目画像に設定する(ステップS308)。最初は、最開放側画像が注目画像に設定されることになる。
【0048】
注目画像が設定されると、画像処理部25は、注目画像の画素データの色空間を、反対色空間に変換する(ステップS310)。そして、画像処理部25は、画素データを反対色空間に変換された注目画像に対して人間の視覚フィルタを適用する(ステップS312)。色空間の変換、および、人間の視覚フィルタの適用の手法は、上述したとおりである。
【0049】
続いて、画像処理部25の差分算出部253は、注目画像と最絞り込み側画像とのエッジ部分における色成分の差分を算出する。具体的には、ステップS302において検出されたエッジ部分を構成するエッジ画素の座標を(xn,yn)(n=1,2,3…)とすると、差分算出部253は、各エッジ画素の色成分差分値ΔC(xn,yn)(n=1,2,3…)を、以下の式(7)を用いて算出する。
ΔC(xn,yn)=〔{Os2(xn,yn)−Or2(xn,yn)}2
+{Os3(xn,yn)−Or3(xn,yn)}21/2…(7)
【0050】
式(7)において、Os2(xn,yn)は、注目画像における座標(xn,yn)の画素の色成分値O2を表し、Or2(xn,yn)は、最絞り込み側画像における座標(xn,yn)の画素の色成分値O2を表す。同様にして、Os3(xn,yn)は、注目画像における座標(xn,yn)の画素の色成分値O3を表し、Or3(xn,yn)は、最絞り込み側画像における座標(xn,yn)の画素の色成分値O3を表す。
【0051】
画像処理部25は、差分平均値ΔCaveを算出する(ステップS316)。差分平均値ΔCaveは、上述した各エッジ画素の色成分差分値ΔC(xn,yn)の平均値である。
【0052】
差分平均値ΔCaveが算出されると、画像処理部25の色にじみ判断部254は、差分平均値ΔCaveを所定の閾値と比較する(ステップS318)。
【0053】
差分平均値ΔCaveが閾値以上である場合には(ステップS318:YES)、色にじみ判断部254は、注目画像に色にじみが発生していると判断する(ステップS320)。差分平均値ΔCaveが閾値未満である場合には(ステップS318:NO)、色にじみ判断部254は、色にじみが発生していないと判断する(ステップS322)。ここで、エッジ部分における色成分差分値を用いて色にじみの有無を判断するのは、色にじみは、画像のエッジ部分において発生しやすいからである。
【0054】
注目画像における色にじみの発生の有無が判断されると、画像処理部25は、連続撮影画像のうち、最絞り込み側画像を除く全ての画像について、色にじみの発生の有無の判断が終了したかを判断する(ステップS324)。未判断の画像がある場合には(ステップS324:NO)、ステップS308に戻って、新たな注目画像を設定する。未判断の画像がない場合には(ステップS324:YES)、色にじみ判断処理を終了する。
【0055】
図2に戻って説明を続ける。色にじみ判断処理が終了すると、画像記録部24は、連続撮影画像のうち、色にじみが発生していないと判断された画像の画像ファイルを作成して、外部記憶装置60に記憶する(ステップS118)。一方、画像記録部24は、連続撮影画像のうち、色にじみが発生していると判断された画像を削除する(ステップS118)。
【0056】
以上説明した本実施例におけるデジタルカメラ100によれば、明るさがほぼ等しく、被写界深度が異なる複数の画像を、シャッターボタン41を一度押すだけで、容易に撮影することができる。この結果、ユーザは、煩わしい操作や、撮影条件の設定のための知識を要することなく、容易に被写界深度が異なる画像を取得・利用することができる。
【0057】
さらに、手ぶれの発生による画質の劣化が生じない範囲で、撮影条件を設定するので、取得された連続撮影画像に手ぶれ画像が混入することを防止または抑制することができる。
【0058】
さらに、絞りの段階的な変更に応じて、画像の明るさをほぼ一定に保つために、シャッター速度に加えて、撮像素子14の感度(ISO感度)の変更を行うので、被写界深度を、より大きく変更することができる。
【0059】
また、手ぶれの発生しない範囲で設定可能な全ての撮影条件で撮影するので、ユーザは、多様な非写界深度を有する画像を取得することが容易にできる。
【0060】
さらに、連続撮影された画像のうち、色にじみが発生している画像は、自動的に削除されるので、ユーザが取得する連続撮影画像に、色にじみが発生している画像が混入することを防止または抑制することができる。
【0061】
また、色にじみ判断処理は、連続撮影画像に共通するエッジ部分における色成分差を比較することにより行われる。色にじみが発生しやすいエッジ部分に着目して色にじみの有無を判断するため、精度良く色にじみの有無を判断することができる。また、各注目画像についてエッジ検出処理を行う必要がないので、色にじみ判断処理の処理負荷および処理時間を低減することができる。
【0062】
また、色にじみ判断処理は、人間の視覚フィルタを適用した後の画素データを用いて行われるので、人間の視覚特性を考慮して、精度良く色にじみの有無を判断することができる。
【0063】
B.第2実施例:
第1実施例において、色にじみ判断処理は、デジタルカメラ100において実行されているが、これに限られない。例えば、色にじみ判断処理を実行する画像処理部25は、パーソナルコンピュータに実装されても良いし、あるいは、インクジェットプリンタなどの印刷装置に実装されても良い。図8〜図10を参照して、色にじみ判断処理を実行する画像処理部25をパーソナルコンピュータに実装する態様を、第2実施例として説明する。図8は、第2実施例におけるシステムの概略構成図である。図9は、第2実施例におけるデジタルカメラの動作を示すフローチャートである。図10は、第2実施例におけるパーソナルコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【0064】
・システムの構成:
第2実施例におけるシステムは、デジタルカメラ100bと、パーソナルコンピュータ200を備えている。第2実施例におけるデジタルカメラ100bの制御部20は、第1実施例(図1)と異なり、色にじみ判断処理を行うための画像処理部25を備えていない。第2実施例におけるデジタルカメラ100bのその他の構成は、第1実施例におけるデジタルカメラ100(図1)と同一であるので、同一の構成要素については図1と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第2実施例におけるパーソナルコンピュータ200は、CPU210と、ROMやRAMなどの内部記憶装置220と、ハードディスク装置などの外部記憶装置240と、表示部260と、マウスやキーボードなどの操作部270と、インタフェース部(I/F部)290と、を備えている。I/F部290は、外部に設けられた種々の機器との間でデータ通信を行う。例えば、I/F部290は、デジタルカメラ100bから画像データを受け取る。
【0066】
内部記憶装置220には、画像処理部250として機能するコンピュータプログラムが格納されている。なお、画像処理部230の機能は、CPU210がコンピュータプログラムを実行することによって実現される。コンピュータプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。
【0067】
画像処理部250は、画像取得部2501と、エッジ検出部2502と、フィルタ処理部2503と、差分算出部2504と、色にじみ判断部2505と、を備えている。画像取得部2501は、デジタルカメラ100bにより撮影された連続撮影画像を取得する。エッジ検出部2502と、フィルタ処理部2503と、差分算出部2504と、色にじみ判断部2505は、第1実施例における同名の構成要素と同一であるので、その説明を省略する。
【0068】
・デジタルカメラ100bの動作:
図9に示すデジタルカメラ100bの動作のうち、ステップS602〜ステップS614までのステップは、図2を参照して説明した第1実施例におけるデジタルカメラ100の動作と同一であるので、その説明を省略する。第2実施例におけるデジタルカメラ100bでは、上述のとおり色にじみ判断処理を実行する機能部を備えていないので、連続撮影が終了すると(ステップS612:YES)、画像記録部24は、連続撮影された全ての画像を外部記憶装置60に画像ファイルとして記録し(ステップS616)、本処理を終了する。
【0069】
デジタルカメラ100bにおいて撮影された連続撮影画像は、例えば、I/F部290を介して、パーソナルコンピュータ200の外部記憶装置240に記憶される。
【0070】
・パーソナルコンピュータ200の動作:
続いて、図10を参照して、パーソナルコンピュータ200の画像処理部250の動作を説明する。画像処理部250による処理が開始されると、画像処理部250の画像取得部2501は、外部記憶装置240から連続撮影画像を取得する(ステップS702)。画像処理部250は、取得された連続撮影画像を対象として色にじみ判断処理を実行する(ステップS704)。本ステップにおける色にじみ判断処理の内容は、第1実施例において説明した色にじみ判断処理(図2:ステップS116)と同一であるので、その説明を省略する。色にじみ判断処理が終了すると、画像処理部250は、第1実施例におけるステップS118(図2)と同様に、連続撮影画像のうち、色にじみが発生していないと判断された画像のみを記憶し、色にじみが発生していると判断された画像を削除する(ステップS706)。
【0071】
以上説明した第2実施例におけるシステムによれば、第1実施例におけるデジタルカメラ100と同一の作用・効果を実現することができる。以上の説明から解るように、第1実施例においては、デジタルカメラ100が、特許請求の範囲における画像処理装置に相当し、第2実施例においては、パーソナルコンピュータ200が、特許請求の範囲における画像処理装置に相当する。
【0072】
C.変形例:
被写界深度ブラケットモードにおけるデジタルカメラ100の動作は、上記実施例に限られない。以下、第1変形例および第2変形例として、被写界深度ブラケットモードにおけるデジタルカメラ100の動作の他の態様を説明する。
【0073】
・第1変形例:
図11を参照して、第1変形例におけるデジタルカメラ100の動作について説明する。図11は、本変形例におけるデジタルカメラ100の動作を示すフローチャートである。本変形例におけるステップS402〜ステップS406は、上記第1実施例におけるステップS102〜ステップS106(図2)と同一であるので、説明を省略する。ステップS406において、ユーザがシャッターボタン41を押下することにより、撮影指示を入力すると(ステップS106:YES)、自動露出調整部22は、開放側の限界値に設定された絞りにて、自動露出調整を実行する(ステップS408)。これにより、開放側の限界値に設定された絞りにて適正露出が得られるように、ISO感度およびシャッター速度が決定される。自動露出調整が終了すると、撮影実行部23は、決定された撮影条件(絞り、ISO感度、シャッター速度)にて、撮影部10に撮影を実行させる(ステップS410)。
【0074】
開放側の限界値に設定された絞りにて、撮影が終了すると、撮影条件設定部21は、絞りを絞り込み側の限界値に設定する(ステップS412)。続いて、自動露出調整部22は、絞り込み側の限界値に設定された絞りにて、自動露出調整を実行する(ステップS414)。これにより、絞り込み側の限界値に設定された絞りにて適正露出が得られるように、ISO感度およびシャッター速度が決定される。自動露出調整が終了すると、撮影実行部23は、決定された撮影条件(絞り、ISO感度、シャッター速度)にて、撮影部10に撮影を実行させる(ステップS416)。
【0075】
制御部20の画像記録部24は、絞りを開放側の限界値に設定した撮影により生成された画像と、絞りを絞り込み側の限界値に設定した撮影により生成された画像とを、それぞれ画像ファイルとして外部記憶装置60に記録し(ステップS418)、本処理を終了する。
【0076】
第1変形例によれば、デジタルカメラ100は、撮影可能な画像のうち、最も被写界深度の深い画像と、最も被写界深度の浅い画像とを、一の操作で取得することができる。例えば、適正な露出量が10EVである被写体を撮影した場合、図4における点SO10に対応する撮影条件で撮影された画像と、点SC10に対応する撮影条件で撮影された画像とを取得することができる。この結果、ユーザは、被写界深度を変更する撮影技術を容易に利用することができる。
【0077】
本変形例では、色にじみ判断処理は実行されないので、本変形例における動作のみをおこなうデジタルカメラでは、図1に示す構成要素のうち、色にじみ判断処理を行うための機能部251〜254を備えていなくても良い。
【0078】
・第2変形例:
図12〜図13を参照して、第2変形例におけるデジタルカメラ100の動作について、説明する。図12は、本変形例におけるデジタルカメラ100の動作を示すフローチャートである。図13は、撮影条件設定部21に記憶されている撮影条件を示すプログラム線図である。
【0079】
第2変形例に係るデジタルカメラ100では、被写体の明るさに対する適正な露出量ごとに、絞りが異なる複数の撮影条件が予め、撮影条件設定部21にプログラムされている。撮影条件設定部21は、適正な露出量を認識すると、プログラムに従って、用いる複数の撮影条件を決定する。以下、より具体的に説明する。
【0080】
被写界深度ブラケットモードが選択されている場合、撮影条件設定部21は、測光回路30を用いて被写体の明るさを測定し、被写体の明るさに応じて適正な露出量を算出する(ステップS502)。露出量の算出は、例えば、ユーザがシャッターボタン41を半押し状態にした場合に実行されても良い。また、露出量の算出を、常にデジタルカメラ100が捉えている被写体について繰り返し実行しながら、シャッターボタン41が押下されるのを待機しても良い。
【0081】
ユーザが、シャッターボタン41を押下することにより、撮影指示を入力すると(ステップS504:YES)、撮影条件設定部21は、適正な露出量に応じて、予めプログラムされた複数の撮影条件を決定する(ステップS506)。図13のプログラム線図に示すように、例えば、被写体の明るさに対する適切な露出量が6EVである場合には、太い実線L6上の5つの点にそれぞれ対応する5つの撮影条件が決定される。また、被写体の明るさに対する適切な露出量が18EVである場合には、太い実線L18上の5つの点にそれぞれ対応する5つの撮影条件が決定される。撮影条件設定部21には、設定可能な全ての露出量について、複数の撮影条件がプログラムされているが、図13のプログラム線図では、図の煩雑を避けるため、適切な露出量が6EV、10EV、18EVである場合の撮影条件のみを図示している。図13から解るように、露出量ごとに定められた複数の撮影条件は、上記実施例と同様に、手ぶれが発生しない範囲で設定されると共に、シャッター速度とISO感度とを変更することにより絞りを極力広い範囲で変更するように設定される。
【0082】
複数の撮影条件が決定されると、撮影条件設定部21は、複数の撮影条件を順次に設定する(ステップS508)。撮影実行部23は、撮影条件が設定されると、その撮影条件にて、撮影部10に撮影を実行させる。次に、先のステップS506において決定された複数の設定条件の全てについて撮影が終了されたが判断される(ステップS512)。全ての撮影条件で撮影されるまでステップS508およびS510が繰り返される。全ての撮影条件で撮影されると(ステップS512:YES)、ステップS514に移行する。
【0083】
ステップS514およびステップS516は、上記第1実施例におけるステップS116およびS118(図2)と同一であるので、説明を省略する。
【0084】
本変形例によれば、上記実施例と同様の作用・効果を実現することができる。また、本変形例によれば、露出量に応じて、予め被写界深度ブラケットモードに用いる複数の撮影条件がプログラムされている。上記実施例のように絞り限界値検出処理を実行することなく、適正な露出量を決定するだけで、容易に複数の撮影条件を決定できる。
【0085】
・第3変形例:
上記実施例では、色にじみ判断処理の結果、色にじみが発生していないと判断された画像のみを画像ファイルとして記憶し、色にじみが発生していると判断された画像は削除している(ステップS118:図2)。これに代えて、画像記録部24は、色にじみ判断処理の結果、すなわち、色にじみの発生の有無を示す情報を、各画像に関連付けて、全ての画像を画像ファイルとして記憶しても良い。色にじみの発生の有無を示す情報は、例えば、画像ファイルにおける付属情報格納領域に格納される。例えば、Exif規格に従ったファイル構造を有する画像ファイルの付属情報格納領域には、デジタルカメラの製造者が自由に使用できるMakernote領域が定義されている。色にじみの発生の有無を示す情報は、例えば、Makernote領域に記録される。
【0086】
第3変形例によれば、被写界深度ブラケットモードで撮影された複数の画像にそれぞれ、色にじみの発生の有無を示す情報が関連付けられる。この結果、これらの画像を取得したユーザや、パーソナルコンピュータなどの画像処理装置は、容易にこれらの画像における色にじみの発生の有無を認識することができる。例えば、ユーザは、印刷する画像や、保存しておく画像を選択する際に、色にじみの発生の有無を示す情報を参考にすることができる。
【0087】
・第4変形例:
上記実施例において、画像記録部24は、色にじみが発生していないと判断された全ての画像を、画像ファイルとして記憶しているが、色にじみが発生していないと判断された画像の一部を選択的に、画像ファイルとして記憶しても良い。例えば、画像記録部24は、最絞り込み画像と、色にじみが発生していないと判断された画像のうち、最も絞りが開放された条件で撮影された画像の2枚を、画像ファイルとして記憶しても良い。
【0088】
・第5変形例:
上記実施例では、エッジ量の算出に8近傍ラプラシアンフィルタを用いているが、この代わりに、4近傍ラプラシアンフィルタやプレウィットフィルタ、ソーベルフィルタといった、注目の画素位置における階調値の変化の大きさを算出可能なフィルタを用いてもよい。また、注目画素とその周辺の画素とにおける「最大輝度値−最小輝度値」をエッジ量として用いてもよい。輝度値を比較する画素の範囲としては、注目画素を中心とした3×3画素範囲や5×5画素範囲といった矩形範囲を採用してもよく、また、他の種類の範囲を採用してもよい。
【0089】
また、色にじみは、輝度値Yに限らず種々の色成分の変化の大きな部分で生じる可能性もある。従って、エッジ量は、注目の画素位置における種々の色成分(例えば、RGBの各色成分や、YCbCrの各色成分)の階調値の変化の大きさを表す指標であってもよい。例えば、RGB色成分のG成分に上述のフィルタを用いて算出した値をエッジ量として用いてもよく、また、RGB各色成分毎に算出した色別エッジ量の合計値をエッジ量として用いてもよい。
【0090】
・第6変形例:
上記実施例では、色成分差分値ΔCの算出を、反対色空間(O1、O2、O3)における色成分(O2、O3)を用いて算出しているが、これに限られない。例えば、色成分差分値ΔCの算出は、CIEL*a*b*色空間における色成分(a*、b*)を用いても良いし、YCbCr色空間における色成分(Cb、Cr)を用いても良い。
【0091】
また、上記実施例において、色にじみの発生の有無の検出は、色成分差分値ΔCの平均値を用いて行われているが、これに限られない。例えば、色にじみ判断部254は、色成分差分値ΔCが所定値以上であるエッジ画素が、所定数以上存在する場合に色にじみが発生していると判断しても良い。
【0092】
・第7変形例:
上記実施例において、色にじみの発生の有無の検出を、人間の視覚フィルタを適用後の画素値を用いて行っているが、人間の視覚フィルタの適用は、省略することができる。ただし、人間の視覚フィルタを適用すると、人間の視覚特性を考慮し、より色にじみの発生の有無を精度良く検出できる利点がある。
【0093】
・第8変形例:
上記実施例において、エッジ部分の検出は、最開放側画像を用いて実行している。そして、最開放側画像において検出されたエッジ部分を、連続撮影画像に共通するエッジ部分として、色にじみの有無の判断に用いている。これに代えて、色にじみの判断の対象である注目画像のそれぞれについてエッジ部分を検出しても良い。そして、各注目画像について、各注目画像において検出されたエッジ部分を用いて、色にじみの有無を判断しても良い。ただし、実施例のように、最開放側画像を用いてエッジ検出をする場合には、エッジ検出処理は、一度で済むため、色にじみ判定処理における処理時間や処理負荷を軽減することができる利点がある。
【0094】
・第9変形例:
上記実施例における色にじみ判断処理は、最絞り込み側画像を基準として、注目画像と最絞り込み側画像の色成分差分値ΔCを算出している。これは、最絞り込み側画像は、一般的に、最も色にじみが発生しにくいため、色にじみが発生していないと推定できるからである。色にじみが発生していないと推定できる画像であれば、基準とする画像は最絞り込み側画像でなくても良い。例えば、デジタルカメラ100の特性などから、2番目に絞り込まれた絞りにて撮影された画像でも色にじみが発生していないと考えられる場合は、当該画像を基準としても良い。
【0095】
・第10変形例:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えてもよい。例えば、画像処理部25の各機能部のうちの一部、例えば、フィルタ処理部252や、エッジ検出部251を、ソフトウェアに代えて専用のハードウェアにより構成しても良い。
【0096】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施例に係る撮像装置としてのデジタルカメラの概略構成図。
【図2】被写界深度ブラケットモードにおけるデジタルカメラの動作を示すフローチャートである。
【図3】絞り限界値検出処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】被写界深度ブラケットモードにおける撮影条件を説明する図。
【図5】被写界震度ブラケットモードを用いて撮影された画像の一例を示す説明図。
【図6】色にじみ判断処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】エッジの検出に用いられるラプラシアンフィルタの一例を示す図。
【図8】第2実施例におけるシステムの概略構成図。
【図9】第2実施例におけるデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
【図10】第2実施例におけるパーソナルコンピュータの動作を示すフローチャート。
【図11】第1変形例におけるデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
【図12】第2変形例におけるデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
【図13】撮影条件設定部に記憶されている撮影条件を示すプログラム線図。
【符号の説明】
【0098】
10…撮影部
11…レンズ
12…絞り機構
13…シャッター
14…撮像素子
15…画像取得回路
20…制御部
21…撮影条件設定部
22…自動露出調整部
23…撮影実行部
24…画像記録部
25…画像処理部
251…エッジ検出部
251…機能部
252…フィルタ処理部
253…差分算出部
254…色にじみ判断部
30…測光回路
40…操作部
41…シャッターボタン
50…表示部
60…外部記憶装置
100…デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
露出量が実質的に同一であり、絞りが異なる複数の撮影条件をそれぞれ用いて、連続して撮影された複数の画像を取得する画像取得部と、
前記複数の撮影条件を用いて撮影された複数の画像のうちの第1の画像におけるエッジ部分を検出するエッジ検出部と、
前記第1の画像におけるエッジ部分の色成分と、前記複数の画像のうちの前記第1の画像より絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された第2の画像における前記エッジ部分の色成分との差分を算出する差分算出部と、
前記差分を用いて、前記第1の画像における色にじみの有無を判断する判断部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第1の画像におけるエッジ部分の検出は、前記複数の画像に共通するエッジ部分を検出することにより行われる、画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記複数の画像に共通するエッジ部分は、前記複数の画像のうちの最も絞りが開放された撮影条件で撮影された画像のエッジ部分である、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記第2の画像は、前記複数の画像のうち、最も絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された画像である、画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像処理装置は、さらに、
前記第1の画像と前記第2の画像のそれぞれのエッジ部分に、人間の視覚フィルタを適用するフィルタ処理を実行するフィルタ処理部を備え、
前記差分算出部は、前記フィルタ処理後の前記エッジ部分について、前記差分を算出する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記色にじみが有ると判断された前記第1の画像を削除する、画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記色にじみが有ると判断された前記第1の画像に、色にじみが有る旨を示す情報を関連付ける、画像処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記第2の画像と、色にじみが無いと判断された前記第1の画像のうち、最も絞りが開放された撮影条件で撮影された画像のみを保存する、画像処理装置。
【請求項9】
画像処理方法であって、
露出量が実質的に同一であり、絞りが異なる複数の撮影条件をそれぞれ用いて、連続して撮影された複数の画像を取得し、
前記複数の撮影条件を用いて撮影された複数の画像のうちの第1の画像におけるエッジ部分を検出し、
前記第1の画像におけるエッジ部分の色成分と、前記複数の画像のうちの前記第1の画像より絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された第2の画像における前記エッジ部分の色成分との差分を算出し、
前記差分を用いて、前記第1の画像における色にじみの有無を判断する、画像処理方法。
【請求項10】
画像処理を実行するためのコンピュータプログラムであって、
露出量が実質的に同一であり、絞りが異なる複数の撮影条件をそれぞれ用いて、連続して撮影された複数の画像を取得する機能と、
前記複数の撮影条件を用いて撮影された複数の画像のうちの第1の画像におけるエッジ部分を検出する機能と、
前記第1の画像におけるエッジ部分の色成分と、前記複数の画像のうちの前記第1の画像より絞りが絞り込まれた撮影条件で撮影された第2の画像における前記エッジ部分の色成分との差分を算出する機能と、
前記差分を用いて、前記第1の画像における色にじみの有無を判断する機能と、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−258923(P2007−258923A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78973(P2006−78973)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】