説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】記録品位を下げることなく、かつ広い色再現範囲を維持しつつ、各記録媒体に様々な環境下で最適な記録を可能にする記録システムを提供すること。
【解決手段】記録媒体に応じて、記録を行う周囲の環境に合わせたインク量が設定されたテーブルを選択して画像処理をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のカラー記録可能な記録装置はその用途が多岐にわたっており、様々な種類の記録媒体への記録が可能である。普通紙によるビジネス文書の記録をはじめ、光沢紙による写真のような自然画の記録や、トレーシングペーパーによるCAD等による図面文書や、コート紙などによるPOP・チラシの他、アート紙によるCG・モノクロ写真のようなアート作品も記録される。
【0003】
このように、記録装置は用途が多岐にわたることから、様々な環境で使用することが予想され、様々な環境下で様々な記録媒体に対して広い色再現範囲での高品位な記録が求められている。
【0004】
これに対し従来から、記録装置において出力される画像の品質を一定の水準に保つための様々な工夫がなされている。その一例として画像が記録時の環境などの影響を受けるのを極力防止する目的で、画像形成装置に環境パラメータを検出する手段を備え、これによって検出された環境パラメータを用いて演算することで画像形成条件を設定する方法が提案されている(特許文献1)。また、記録装置の周囲温度、湿度等に合わせて最適な記録動作をさせ、記録動作が要求されたとき記録装置内のセンサで温度・湿度等の周囲環境条件を測定し、その結果に基づいて最適な記録操作サブルーチンを選択して記録を行う構成のものがある(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−80626号公報
【特許文献2】特開平7−256876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
記録を行う場所の環境条件が異なることにより、記録媒体が受容可能なインク量は異なる。記録媒体に付与するインク量が多ければ色再現範囲を広くできるが、付与するインク量が記録媒体の受容量を超えた場合、滲みが発生して記録品位を損ねたり、記録媒体が波打ち現象を起こして記録ヘッドと擦ってしまい記録ヘッドを破損することがある。記録に用いるインクの量を少なくすることで滲みや記録媒体の波打ちを防ぐことは可能だが、その場合、色再現範囲は狭くなってしまう。
【0007】
以上のような問題は、記録データを作成する際の画像処理パラメータを変更することによって対処することはできる。しかし、記録データ作成に際して実行される一連の画像処理間の関連付けがされていない場合には、実際の記録における色再現範囲が十分に実現できないなどの問題を生じる。例えば、色分解処理において付与するインク量を多くし色再現範囲を広くしようとしても、その前段におけるカラーマッチング処理で十分に広い色再現域を得る処理が成されていないときは、実際に記録される画像の色再現域は意図した通りの広いものにはならない。
【0008】
本発明は、このような観点からなされたものであり、記録品位を下げることなく、かつ広い色再現範囲を維持しつつ、各記録媒体に様々な環境下で最適な記録を可能にする画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明の画像処理装置は、記録媒体に対して記録を行う画像信号出力部と、記録を行う周囲の環境情報を取得する環境取得手段と、後工程で処理可能な信号になるように、入力される各画像信号を変換するカラーマッチング処理部、色分解処理部、出力ガンマ補正部と、前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、前記出力ガンマ補正部において用いるテーブルを設定する画像処理手段と、を備えた記録システムにおいて、前記画像処理手段は、前記記録媒体の種類と前記環境取得手段によって取得した前記環境情報と、によって、前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、前記ガンマ補正部、で用いる各テーブルを選択して記録を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像処理方法は、記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録部で用いる記録データを作成する画像処理方法において、カラーマッチング処理部、色分解処理部、および出力ガンマ補正部で入力する画像信号をそれぞれ処理する工程と、前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、および前記出力ガンマ補正部それぞれにおいて用いる変換パラメータを、記録に用いる記録媒体の種類毎に設定するとともに、前記色分解処理部で用いる変換パラメータをさらに、前記記録部の環境情報に対応させて設定するパラメータ設定工程と、前記記録媒体の種類と前記環境情報を取得し、該取得した記録媒体の種類と環境情報によって、前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、前記ガンマ補正部で用いるそれぞれのテーブルを選択し、当該カラーマッチング部、色分解処理部、ガンマ補正部による処理を実行する処理実行工程と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサにより自動的に取得した環境情報を基に記録媒体毎のインク打ち込み量が設定されたテーブルを選択して画像処理を行うことで、高記録品位を維持したまま、広い色再現範囲での記録を可能にする記録システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(全体構成)
本実施形態は、インクを吐出して記録を行う記録装置等において、RGB画像データを入力して、記録装置で使用できる色材色に色分解して記録を行う記録システムである。入力画像データRGBの色再現特性と記録装置の色を合わせるカラーマッチング処理と、入力される多値のR'G'B'画像データをN次元のルックアップテーブル(以下、LUTと記す)とを使用して色分解する処理と、記録装置の色再現特性に応じた色材色毎の一次元LUTを介して階調特性を補正する処理と、を適用して記録部にて記録を行う。
【0013】
また、カラーマッチング用パラメータと、色分解用N次元LUTと、諧調補正用一次元LUTとは、記録媒体の種類毎に用意され、さらに、色分解用N次元LUTは記録媒体の種類別に複数のインク最大量の異なるLUTが用意されている。そして、記録装置は温度湿度センサを備えており、周囲の環境によって最適な色分解用N次元LUTを選択可能になっている。
【0014】
図1は、本実施形態に係る画像形成システムのハードウエア構成の一例を示す図である。画像処理装置100は、パーソナルコンピュータなどである。CPU101は、オペレーティング・システム、アプリケーションプログラムおよびデバイスドライバなどを実行することにより、画像処理装置100の各部を統合的に制御する中央演算処理装置である。RAM102は、CPU100のワークエリアを提供するメモリである。ROM103は、BIOSなどの起動プログラムなどを格納するメモリである。HDD104は、ハードディスクドライブなどの固定記憶装置であり、アプリケーションプログラム、オペレーティング・システムおよび各種ドライバプログラムなどのコンピュータプログラムに加え、テストパターン画像などの画像データなども記憶する。通信IF105は、USB、IEEE1394、有線LANまたは無線LANなどの外部の装置とデータ通信を行うためのインターフェースである。表示IF106は、外部又は内部に接続される表示装置109に画像情報などを表示制御するための制御部である。操作部107は、ポインティングデバイスやキー入力デバイスなどの入力デバイスである。記録装置108は、インクジェット方式やレーザービーム方式により画像を記録媒体上に形成する画像形成装置である。表示装置109は、画像データなどを表示するための液晶ディスプレイなどである。温度湿度センサ110は、周囲環境の温度、湿度を測るセンサである。
【0015】
図2は、画像処理装置100のソフトウエア構成の一例を示す図である。図1および図2を用いて、記録する際の流れについて説明する。記録を行う記録装置108としては一般的に普及しているインクジェット記録装置等を用いることができる。出力画像データを記録するときには、アプリケーション202からオペレーティング・システム(以下、単にOSともいう)201に出力要求を行う。例えば、グラフィックスデータ部分はグラフィックス描画命令で構成され、イメージ画像データ部分はイメージ描画命令で構成される出力画像を示す描画命令群をOS201に発行する。
【0016】
OS201はアプリケーションの出力要求を受け、出力する記録装置に対応するプリンタドライバ208に描画命令群を発行する。プリンタドライバ208はOS201から入力した記録要求と描画命令群を処理し記録装置108で記録可能な記録データを作成して記録装置108に転送する。記録装置108が、いわゆるラスタープリンタである場合は、プリンタドライバ208では、OS201からの描画命令に対して順次画像補正処理を実行する。そして、順次RGB24ビットページメモリに描画命令をラスタライズし、全ての描画命令をラスタライズした後にRGB24ビットページメモリの内容を記録装置108が記録可能なデータ形式、例えばCMYKデータへと変換して、記録装置108に転送する。
【0017】
次に、プリンタドライバ208で行われる処理を図3を用いて説明する。画像補正処理部301は、OS201から入力した描画命令群に含まれる色情報に対して、画像補正処理を行う。この画像補正処理としては例えば、RGB色情報を輝度・色差信号に変換し、輝度信号に対して露出補正処理を行い、補正された輝度・色差信号をRGB色情報に逆変換する。
【0018】
記録装置用補正処理部302は、まず画像補正処理されたRGB色情報によって描画命令をラスタライズし、RGB24ビットページメモリ上にラスター画像を生成する。そして色再現空間マッピングを行うカラーマッチング処理、色材色データへの色分解処理、ガンマ補正処理、ハーフトーン処理を行う。これによって各画素に対して記録装置の色再現性に依存した色材色データ(CMYK,CMYKcmもしくはCMYKcmRGB)を生成し、印刷可能となった画像データを記録装置108に転送する。
【0019】
(記録装置用補正処理)
図3は、プリンタドライバ208の内部処理構成を模式化した図である。記録装置用補正処理部302における処理ついて詳細に説明する。図4は、記録装置用補正処理部302の詳細ブロック構成の一例を示す図である。また、図5は、色空間を模式的に2次元で表現した図である。これは、以下において説明の簡単にするために、通常3次元で表される色空間を模式的に2次元で表現したものである。
【0020】
まず、画像補正処理部301により、明るさ、コントラストおよび色調などを整えられたRGB各8ビットの画像データが、記録装置用補正処理部302内の画像信号入力部401に入力される。画像信号入力部401に入力されたRGB各8ビットの画像データは、表示装置109上で再現される色に対応している。例えば、均等色空間であるCIEL*a*b*表色系の座標値においては、(L_Monitor,a_Monitor,b_Monitor)という色を画像データは表している。
【0021】
ところが、図5からも分かるように、表示装置109の色再現空間と記録装置108の色再現空間とは、例えばL*a*b*空間等の均等色空間上において一致してはいない。これは、図5に示される記録装置の色再現空間外、かつ、表示装置の色再現空間内の領域(斜線部)は記録装置において画像形成できないことになる。より具体的には、表示装置109上に表現された画像データに対して、後段の色分解処理部403でRGBから色材色データへの変換を実行し、出力γ補正処理部404で階調補正処理を施し、ハーフトーン処理部405で二値化処理を実行した後、画像出力部406に出力したとしても、画像形成の不可能な領域、即ち記録装置108において表現不可能な色空間上の領域(斜線部)が発生してしまう。
【0022】
従って記録装置108側においては、表示装置109で再現可能で、且つ記録装置108で再現不可能な色空間上の領域(斜線部)について、擬似的な色(L*a*b*値)、即ち表示装置109の発色とは異なる擬似的な色を生成して記録を行う必要がある。
【0023】
以下、均等色空間としてL*a*b*空間を、円筒座標H(=atan(b/a)),S(=sqrt(a*+b*)),V(=L*)に写したHSV空間を考え、この全空間について色空間圧縮を行う場合について説明する。ここで、atan(x)はxのアークタンジェントを求めるための関数である。また、sqrt(x)は、√xを求めるための関数である。
【0024】
(カラーマッチング処理部)
記録装置用補正処理部302内のカラーマッチング処理部402では、表示装置109の色再現空間(モニタガマット)において、記録装置108で再現不可能な領域に圧縮を施すことにより、記録装置108の色再現空間(プリンタガマット)内の点と対応付ける。即ち、カラーマッチング処理部402によって処理されたRGB各8ビットのデータは、色再現空間上の点に対応したR'G'B'各8ビットのデータに変換される。
【0025】
具体的には、カラーマッチング処理部402においては、以下の手順に従って表示装置109のRGB色信号空間から記録装置108のR'G'B'色信号空間への変換を行う。
【0026】
図4に示すカラーマッチング処理部402では、L*a*b*空間上でモニタRGBによるガマットがプリンタR'G'B'ガマットの内側に入るように、明度L*を保持したまま彩度S(=sqrt(a*+b*))を下げる等の処理を行うことで圧縮する。この圧縮処理の例を図6に示す。
【0027】
図6は、彩度(S)方向へのガマット圧縮をSV平面において概念的に示す図である。該処理によって即ち、モニタRGB値に対応するプリンタガマット内のL*a*b*値の組が得られる。圧縮後のモニタガマットがプリンタガマットに収まったら、色差ΔE(=sqrt((L*'−L*)+(a*'−a*)+(b*'−b*)))を最小とするL*a*b*値をキーとしてモニタ(R,G,B)とプリンタ(R',G',B')の組を決定する。これによって、モニタRGB値に対応するプリンタR'G'B'値を求めることができる。尚、カラーマッチング処理部402を、LUT(ルックアップテーブル)を使用して実現することももちろん可能である。
【0028】
本実施形態では記録媒体の種類によりプリンタガマットの大きさが異なるためマッチングテーブル部407に記録媒体毎のLUTとして複数のマッチングテーブルを補間演算による3D−LUTの形式で保持している。
【0029】
(色分解処理部)
次に、記録装置用補正処理部302内の色分解処理部403における処理について説明する。
【0030】
色分解処理部403においては、カラーマッチング処理部402で記録装置用のR'G'B'に変換された各色8ビットの信号を記録装置の色材色に対応した色材色データ(CMYK,CMYKcmもしくはCMYKcmRGB)各8ビットの信号値へ変換する。色分解処理の例としてR'G'B'からCMYKへの色信号の変換方法としては、例えばカラーマスキングによる方法が知られている。このカラーマスキングによる色変換方法を下式に示す。光学濃度D、D、Dは夫々以下のように表わすことができる。
Dr=-log(R/255)
Dg=-log(G/255)
Db=-log(B/255)
そして、主濃度は以下のように表わすことができる。
【0031】
【数1】

【0032】
これら数式を演算することにより、CMY値が得られる。尚、K(ブラック)の信号値の決定方法としては様々な方法がある。上記行列式における最右辺をそのベクトル要素からK値を引いたベクトル[Dr−KDg−K Db−K]tに置き換えインク量に対応する各色信号値CMYが常に正または0である条件を利用してK値を拘束しつつ、試行鎖誤的にマスキングマトリクスを求める。こうすることで、K値を決定することができる。尚、色分解処理部403を、LUTを使用して実現することももちろん可能である。
【0033】
CMYKcmもしくはCMYKcmRGBの色分解テーブルは、RGB−CMYK変換テーブルをベースに、色を置き換えていくことで作成可能である。たとえば(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)の値を(C,M,Y,K,c,m,R,G,B)=(0,0,0,0,0,0,255,0,0)のように置き換える。
【0034】
本実施形態では色分解テーブル部408に、記録媒体の種類ごとに最大インク量が異なる複数の色分解テーブルを、補間演算による3D−LUTの形式で保持している。
【0035】
(出力ガンマ補正処理部)
次に、記録装置用補正処理部302内の出力ガンマ補正処理部404における処理について説明する。
【0036】
出力ガンマ補正処理部404では、入力画像の色信号をカラーマッチング処理部402および色分解処理部403で順次変換して出力する。この出力されたN色材色データ(CMYK,CMYKcmもしくはCMYKcmRGB)の各8ビットデータを、後段のハーフトーン処理部405において処理可能なデータへと変換する。そして、N’色材色データ各8ビットデータを出力する。出力ガンマ補正処理部404は、明度に対する非線形特性を補償すべく、インク別に一次元のLUTを用いた調整を行う。
【0037】
本実施形態では、記録媒体の種類により明度の非線形特性が異なるため、ガンマ補正テーブル部409に記録媒体毎のLUTとして複数のガンマ補正テーブルを各色別の1次元LUTの形式で保持している。
【0038】
(ハーフトーン処理部)
次に、記録用補正処理部302内のハーフトーン処理部405における処理について説明する。
【0039】
ハーフトーン処理部405では、N’色材色データ各8ビットデータを、入力画像の色信号をカラーマッチング処理部402、色分解処理部403および出力ガンマ補正処理部404で順次変換され出力する。そのN’色材色データ各8ビットデータを、記録装置108で記録可能なN”色材色データ各1ビットデータへと変換する。
【0040】
このハーフトーン処理方法は、入力されたN’色材色データの画像に、例えばベイヤー型の16×16のディザマトリクスを用いる。このマトリクスにおける閾値よりも対応する画像上の画素値が大きい場合には1、画素値が上記閾値以下の場合には0とすることによって実現される。また、別のハーフトーン処理方法として誤差拡散法などを用いることもできる。
【0041】
このようにして得られた記録装置で記録可能なN”色材色データ各1ビットデータは記録装置108に送られ、記録媒体上に画像形成される。
【0042】
(特徴的構成)
(記録媒体別およびインク量別のテーブル)
マッチングテーブル部407、色分解テーブル部408およびガンマ補正テーブル部(ガンマ補正部)409には、それぞれ記録媒体の種類毎の複数のテーブルが格納されている。詳しくは、マッチングテーブル部407には、記録媒体の種類毎に色再現空間(ガマット)の大きさや形状が異なるテーブルが用意される。また、色分解テーブル部408には、記録媒体の種類毎で、さらに付与インク量が環境の温度および湿度によって異なる複数のテーブルが格納用意されている。そして、ガンマ補正テーブル部409には記録媒体の種類に応じた補正特性毎のテーブルが格納されている。
【0043】
このように、カラーマッチング、色分解およびガンマ補正の各処理を、記録媒体の種類毎に統一して設定することができる。例えば、色分解処理が付与インク量を多くするテーブルを用いるものであるときは、それに関連付けて、カラーマッチング処理で得られるプリンタの色再現域を広いものとする。これにより、実際の記録において十分に広い色再現域の記録を行うことができる。
【0044】
図7は、本実施形態における記録媒体別毎で、さらに環境温度および湿度毎に用意される色分解テーブルを示す図であり、具体的には付与インク量を示している。図に示すように「100%」のテーブル(「普通紙」、「低温」、「高湿度」)を基本付与量のテーブルとするとき、例えば、220%のテーブルは同じ入力信号に対して基本テーブルの2.2倍のインク量に対応した色分解信号を出力する。このように各記録媒体毎で、かつ温度および湿度毎に付与インク量を変化させることによってカラーマッチング処理などに適合した色分解(付与インク量の決定)を行うことができる。これにより、インク滲みが無く、色再現範囲を十分に発揮した記録を行うことができる。
【0045】
図8は、本実施形態における色分解テーブル選択処理のフローチャートである。色分解テーブル選択処理が実行されると、まずステップS701において、記録媒体種入力部410からの情報によって記録に使用される記録媒体の種類を設定する。次に、ステップS702へ移行して温度湿度センサ110から周囲の温度湿度データを取得する。次に、ステップS703へ移行してステップS701で設定した記録媒体の種類に応じて処理を切り替える。
【0046】
ステップS701で記録媒体に普通紙が設定された場合、ステップS703からステップS704に移行する。ステップS704では、ステップS702で取得した温度湿度データに応じて普通紙用の色分解テーブルのインク量を選択する。その後、ステップS707に移行して、普通紙に応じたテーブルを画像処理パラメータ設定部411によりカラーマッチング処理部402、色分解処理部403、出力ガンマ補正処理部404に設定する。
【0047】
ステップS701でコート紙が設定された場合、ステップS703からステップS705に移行する。ステップS705では、ステップS702で取得した温度湿度データに応じてコート紙の色分解テーブルのインク量を選択する。その後、ステップS708へ移行して、コート紙に応じたテーブルを、画像処理パラメータ設定部411によりカラーマッチング処理部402、色分解処理部403、出力ガンマ補正処理部404に設定する。
【0048】
ステップS701で光沢紙が設定された場合、ステップS703からステップS706に移行する。ステップS706では、ステップS702で取得した温度湿度データに応じて光沢紙の色分解テーブルのインク量を選択する。その後、ステップS709へ移行して、光沢紙に応じたテーブルを、画像処理パラメータ設定部411によりカラーマッチング処理部402、色分解処理部403、出力ガンマ補正処理部404に設定する。
【0049】
ステップS707、ステップS708、ステップS709でそれぞれの記録媒体に応じたテーブルを設定した後は、ステップS710に移行して画像信号出力部406によって記録媒体上に記録を行う。
【0050】
このように、記録媒体に応じて、記録を行う周囲の環境に合わせて環境情報を取得して、各処理実行部で環境に合わせたインク打ち込み量が設定されたテーブルを選択して画像処理をおこなう。これによって、高記録品位を維持したまま、広い色再現範囲での記録を可能にする記録システムを実現することができた。
【0051】
なお、本実施形態では、記録媒体として普通紙、コート紙、光沢紙用のテーブル(温度湿度に対応する色分解テーブルのインク量)を用意したが、これに限定するものではなく、トレーシングペーパーやOHPシートなどの記録媒体のテーブルを用意してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】画像形成システムのハードウエア構成の一例を示す図である。
【図2】画像処理装置のソフトウエア構成の一例を示す図である。
【図3】プリンタドライバの内部処理構成を模式化した図である。
【図4】記録装置用補正処理部の詳細ブロック構成の一例を示す図である。
【図5】色空間を模式的に2次元で表現した図である。
【図6】彩度(S)方向へのガマット圧縮をSV平面において概念的に示す図である。
【図7】記録媒体別の温度湿度に対する色分解テーブルの受容可能なインク量を表で表わした図である。
【図8】色分解テーブル選択処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1000 ホスト装置(コンピュータ)
100 画像処理装置
101 中央演算処理装置
102 RAM
103 ROM
104 固定記憶装置
105 通信インターフェース
106 表示インターフェース
107 入力デバイス
108 画像形成装置
109 表示装置
110 温度湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録部で用いる記録データを作成する画像処理装置において、
入力する画像信号をそれぞれ処理するカラーマッチング処理部、色分解処理部、および出力ガンマ補正部と、
前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、および前記出力ガンマ補正部それぞれにおいて用いる変換パラメータを、記録に用いる記録媒体の種類毎に設定するとともに、前記色分解処理部で用いる変換パラメータをさらに、前記記録部の環境情報に対応させて設定するパラメータ設定手段と、
前記記録媒体の種類と前記環境情報を取得し、該取得した記録媒体の種類と環境情報によって、前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、前記ガンマ補正部で用いるそれぞれのテーブルを選択し、当該カラーマッチング部、色分解処理部、ガンマ補正部による処理を実行する処理実行手段と、を具えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記テーブルによって、記録に用いられるインクの最大量が変化することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記環境情報は、温度と湿度からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
入力される前記各画像信号のうち、前記カラーマッチング処理部に入力されるのはRGBの3つの要素の色信号からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録部で用いる記録データを作成する画像処理方法において、
カラーマッチング処理部、色分解処理部、および出力ガンマ補正部で入力する画像信号をそれぞれ処理する工程と、
前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、および前記出力ガンマ補正部それぞれにおいて用いる変換パラメータを、記録に用いる記録媒体の種類毎に設定するとともに、前記色分解処理部で用いる変換パラメータをさらに、前記記録部の環境情報に対応させて設定するパラメータ設定工程と、
前記記録媒体の種類と前記環境情報を取得し、該取得した記録媒体の種類と環境情報によって、前記カラーマッチング処理部、前記色分解処理部、前記ガンマ補正部で用いるそれぞれのテーブルを選択し、当該カラーマッチング部、色分解処理部、ガンマ補正部による処理を実行する処理実行工程と、を具えたことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−147937(P2008−147937A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332107(P2006−332107)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】