説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】処理量を増大させることなく、ユーザが視認しやすい平面マップを表示する画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】平面マップ生成装置103は、物体が撮像された画像であり、かつ、物体の三次元座標を算出可能な画像を取得する画像取得部301と、基準面上に存在する第1の物体の上面を画像から抽出し、抽出した上面の特徴点の座標を取得する座標取得部302と、取得した座標を用いて、基準面に対して垂直方向に相当する座標の値が基準面と同じ値になるように、上面の大きさ及び位置を調整して第1の平面マップを生成する第1の平面マップ生成部303とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間の様子を撮像した画像に透視変換を施して平面マップを生成する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両周辺の様子を、上方から見たときの状態でディスプレイ等の画面上に表示する技術が知られている。このような画像処理技術としては、他車両の大きさに基づいて合成した擬似他車両の画像を、撮像画像に重畳して表示する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図1は、特許文献1に開示された車両用表示装置11の構成を示す図である。図1において、車両用表示装置11は、カメラ群12、距離センサ群13、画像処理装置14、ディスプレイ15、撮像条件検出装置16及び障害物位置検出装置17を備えている。
【0004】
カメラ群12は、自車両の周囲を撮像するための装置である。カメラ群12は、自車両のボディ周縁部に取付けられる1つ以上のカメラを含んで構成されている。距離センサ群13は、周辺に存在する障害物を検出するための装置である。距離センサ群13は、自車両に取付けられる1つ以上のセンサを含んで構成されている。
【0005】
画像処理装置14は、ROM(Read Only Memory)に予め格納された種々のプログラムによって、周囲画像合成部41、車両検出部42、擬似車両描画部43、及び、画像合成部44として機能する。
【0006】
周囲画像合成部41は、カメラ群12によって得られた複数の周辺画像データを、それぞれ自車両の上方の視点から見た上視点画像に透視変換し、それらの画像を1枚に合成して、車両周囲画像を生成する。車両検出部42は、距離センサ群13の障害物の検出データ及び車両周囲画像を用いて、自車両の周囲に存在する他車両を検出する。
【0007】
擬似車両描画部43は、車両検出部42により検出された車両を上方から見たときの、擬似的な画像(擬似車両画像)を、検出された車輪及びボディに合わせて描画する。なお、擬似車両描画部43で利用される擬似車両画像は、ROM等のデータベースに登録されたものである。画像合成部44は、車両周囲画像と擬似車両画像とを合成して、自車両の周辺に存在する他車両を含む周囲画像を生成する。
【0008】
ディスプレイ15は、周囲画像の信号に基づいて、自車両周囲の画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−134961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の技術では、透視変換により平面マップを生成する際、データベースに登録されていない車両(物体)は、透視変換されたままの歪んだ状態で平面マップに表示される。このため、ユーザにとって視認しにくい画像が表示されるという問題がある。また、物体の擬似的な画像を登録するデータベースを逐次更新することも考えられるが、この更新作業には膨大な処理量を要する。
【0011】
本発明の目的は、処理量を増大させることなく、ユーザが視認しやすい平面マップを生成する画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像処理装置は、物体が撮像された画像であり、かつ、前記物体の三次元座標を算出可能な画像を取得する画像取得手段と、前記画像のうち、三次元空間での基準面(平面マップ上でユーザが基準としたい面)上に存在する物体(第一の物体)の上面を前記画像から抽出し、抽出した前記上面の特徴点の三次元座標を取得する座標取得手段と、前記基準面に対して垂直方向に相当する座標の値が前記基準面と同じ値になるように、前記上面の大きさ及び位置を調整して第1の平面マップを生成する第1の平面マップ生成手段と、を具備する構成を採る。
【0013】
本発明の画像処理方法は、物体が撮像された画像であり、かつ、前記物体の三次元座標を算出可能な画像を取得する画像取得工程と、前記画像のうち、三次元空間での基準面上に存在する第1の物体の上面を前記画像から抽出し、抽出した前記上面の特徴点の三次元座標を取得する座標取得工程と、前記基準面に対して垂直方向に相当する座標の値が前記基準面と同じ値になるように、前記上面の大きさ及び位置を調整して第1の平面マップを生成する第1の平面マップ生成工程と、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理量を増大させることなく、ユーザが視認しやすい平面マップを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】特許文献1に開示された車両用表示装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係る監視システムを示す図
【図3】本実施の形態1における監視対象エリアの外観およびディスプレイに表示したときの様子の具体例を示す図
【図4】本実施の形態1における図2に示した平面マップ生成装置の内部構成を示すブロック図
【図5】本実施の形態1における図4に示した平面マップ生成装置の処理手順を示すフロー図
【図6】本実施の形態1における図4に示した平面マップ生成装置の処理の様子を示す図
【図7】本実施の形態1における特徴点の抽出イメージを示す図
【図8】本実施の形態1における後処理の様子を示す図
【図9】本実施の形態1におけるオフィスに複数のカメラを配置した様子を示す図
【図10】本実施の形態1における図4に示した平面マップ生成装置により生成される平面マップを示す図
【図11】本発明の実施の形態1に係る他の平面マップ生成装置の内部構成を示すブロック図
【図12】本実施の形態1における平面マップ上に人の動きを示す動線を表示した様子を示す図
【図13】本発明の実施の形態2に係る平面マップ生成装置の内部構成を示すブロック図
【図14】本発明の実施の形態2に係る他の平面マップ生成装置の内部構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一の機能を有する部分には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る監視システム100を示した図である。図2の監視システム100は、カメラ群101、ネットワーク102、平面マップ(Plane Map)生成装置103、ディスプレイ104を備えている。
【0018】
カメラ群101は、工場又はオフィス等の監視対象エリアの空間を撮像するために配置される。カメラ群101は、監視対象エリア内の固定した場所に取り付けられる1つ以上のカメラから構成されている。以下、監視対象エリアがオフィスである場合について説明を行う。例えば、カメラは、CCDカメラ、CMOSカメラのステレオカメラ等を採用できる。各カメラは、オフィス全体において撮像されていない死角部分が少なくなるように、天井又は壁等に設置される。
【0019】
ネットワーク102は、カメラ群101と平面マップ生成装置103とを接続する。カメラ群101によって撮像された画像は、ネットワーク102を介して平面マップ生成装置103に送信される。
【0020】
平面マップ生成装置103は、取得した画像から平面マップを生成し、ディスプレイ104に出力する。平面マップ生成装置103は、PC(パーソナルコンピュータ)等の端末を採用できる。なお、平面マップ生成装置103の詳細については後述する。
【0021】
ディスプレイ104は、平面マップ生成装置103によって生成された平面マップを表示する。
【0022】
図4は、図2に示した平面マップ生成装置103の内部構成を示すブロック図である。平面マップ生成装置103は、画像取得部301、座標取得部302、第1の平面マップ生成部303、画像領域抽出部304、第2の平面マップ生成部305、重畳処理部306、及び貼り合わせ部307を備える。
【0023】
画像取得部301は、ネットワーク102から送信されたカメラ群101の画像を取得する。そして、画像取得部301は、取得した画像を、座標取得部302、第1の平面マップ生成部303及び画像領域抽出部304に出力する。ここで取得される画像は、三次元座標を算出可能な画像である。本実施の形態では、この画像がステレオ画像である場合について説明する。
【0024】
座標取得部302は、二つの処理を行う。
【0025】
一つ目の処理として、座標取得部302は、まず、画像取得部301から出力された画像に対して、透視変換(Perspective Transform)及び平滑処理を施す。続いて、座標取得部302は、対象となる物体(第1の物体)の上面領域を抽出し、抽出した上面領域における各特徴点(Features)の三次元座標を算出する。そして、座標取得部302は、算出結果を、第1の平面マップ生成部303に出力する。より具体的には、座標取得部302は、画像取得部301からのステレオ画像を用いた三角測量により、上面の各特徴点の三次元座標を算出する。
【0026】
ここで、図3(A)を具体例として、三次元座標軸を説明する。図3(A)に示すA面を基準面とした場合、基準面上において直角に交わる軸がx軸およびy軸になり、基準面の上向きの法線方向がz軸となる。なお、基準面は、平面マップ生成過程において、ユーザが基準として定義した面であり、例えば床面である。
【0027】
二つ目の処理として、座標取得部302は、まず、後述する画像領域抽出部304から第2の物体の画像領域の各特徴点を取得する。そして、座標取得部302は、取得した各特徴点の三次元座標を算出し、算出結果を、第2の平面マップ生成部305に出力する。座標取得部302は、領域の各特徴点の三次元座標を、上面領域の各特徴点算出と同様の方法を用いて求める。
【0028】
第1の平面マップ生成部303は、座標取得部302から上面領域における各特徴点の三次元座標を取得する。そして、第1の平面マップ生成部303は、取得した三次元座標のうちz座標の値が、基準面のz座標の値と同じ値になるように、第1の物体の画像領域の大きさを変換する。その後、第1の平面マップ生成部303は、変換した領域を基準面上に移動させて第1の平面マップを生成し、生成した第1の平面マップを、重畳処理部306に出力する。
【0029】
画像領域抽出部304は、座標取得部302から取得した各第1の物体の領域の座標を元に、第1の物体上に存在する物体(以下、第2の物体と称す)の画像中の領域を抽出する。画像領域抽出部304は、抽出した領域を、第2の平面マップ生成部305および座標取得部302にそれぞれ出力する。
【0030】
第2の平面マップ生成部305は、座標取得部302から出力された第2の物体の画像領域の各特徴点に対する三次元座標と、画像領域抽出部304から出力された画像領域とを取得する。第2の平面マップ生成部305は、座標取得部302から取得した三次元座標のうちz座標の値が基準面のz座標の値と同じ値になるように、画像領域抽出部304から取得した画像領域の大きさを変換する。その後、第2の平面マップ生成部305は、変換した領域を基準面上に移動させて第2の平面マップを生成し、生成した第2の平面マップを、重畳処理部306に出力する。
【0031】
重畳処理部306は、第1の平面マップ生成部303から出力された第1の平面マップと、第2の平面マップ生成部305から出力された第2の平面マップとを取得する。そして、重畳処理部306は、取得した第1の平面マップと第2の平面マップとを重ね合わせて、第3の平面マップを生成し、生成した第3の平面マップを、貼り合わせ部307に出力する。
【0032】
貼り合わせ部307は、オフィス内の異なる場所に配置された複数のカメラが撮像した画像を元にして生成された複数の第3の平面マップを取得する。そして、貼り合わせ部307は、取得した複数の第3の平面マップを貼り合わせて、室内全体を表す第4の平面マップを生成し、生成した第4の平面マップを、ディスプレイ104に出力する。
【0033】
貼り合わせ部307は、複数の平面マップを貼り合わせる際の重なり領域については、重なり領域に最も近いカメラが撮影したステレオ画像から生成された平面マップの画像を、優先して採用する。
【0034】
次に、図4に示した平面マップ生成装置103の動作について詳細に説明する。
【0035】
平面マップ生成装置103は、例えば、図3(A)に示すオフィス空間に対して、図3(B)に示す平面マップを生成する。平面マップは、オフィス空間を上方から見たときの状態を擬似的に示す画像である。本実施の形態に係る平面マップ生成装置103は、床面を基準面として、基準面上に存在する第1の物体と、第1の物体の上に置かれた第2の物体とを、それぞれ異なる方法で処理する。第1の物体は、例えば、図3(A)の机、脇棚、キャビネット等、高さの異なる物体である。また、第2の物体は、例えば、図3(A)のパソコン、本、ノート等である。第1の物体に対する処理は、第1の平面マップ生成部303によって行われる。第2の物体に対する処理は、第2の平面マップ生成部305によって行われる。
【0036】
図5、図6及び図7を用いて、平面マップ生成装置103の主要機能の処理手順についての説明は、図3(A)のようなオフィス空間に存在する物体一つに着目して説明する。
【0037】
ステップS401において、座標取得部302は、画像取得部301によって取得された画像に対して、透視変換を施す。透視変換とは、3次元空間内に置かれた3次元物体を任意の視点から見て2次元平面に投影する変換する処理のことである。本実施の形態の透視変換は、2次元平面をユーザが任意に設定した基準面(例えば、床面等)として変換処理を行う。この変換処理の際、物体の高さについては考慮されていないため、図6(A)に示す撮像された画像に対してそのまま透視変換を施すと、図6(B)に示すような状態となり、ディスプレイ等の高さのある物体は形状が歪んでしまう。
【0038】
透視変換処理は、例えば、式(1)に示す透視変換行列を用いて、基準面への変換を行う。透視変換行列は、3行3列の行列Pである。(x,y)は監視領域に設定された空間座標の値であり、(x’,y’)は上記2次元平面上の座標の値であり、wは視点によって異なる画像の遠近感を表す変数である。
【数1】

【0039】
ステップS402において、座標取得部302は、平滑処理を行う。平滑処理は、例えば、画像全体に対して、ノイズ等の小さな画像成分を除去し、滑らかな画像を作る処理である。本実施の形態における平滑処理は、画像中で占める面積が小さな物体の画像を除去する処理である。続いて、座標取得部302は、第1の物体の領域を抽出する。本実施の形態における領域抽出処理は、図6(C)に示すように、三次元空間上の基準面上に存在する、例えば机等の第1の物体の、画像上での領域を求める処理である。以下、この領域を、「第1の物体の画像領域」という。座標取得部302は、例えば、色情報を利用して、この領域抽出を行う。具体的には、座標取得部302は、例えば、色の濃淡の変化が激しい部分に基づいて、第1の物体の画像領域を抽出する。なお、座標取得部302は、HSV系、RGB系を利用して、色の変化が激しい部分に基づいて、第1の物体の画像領域を抽出してもよい。なお、HSV系とは、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Brightness・Value)の三つの成分からなる色空間である。以降の処理は、ステップS402で得られた第1の物体の画像領域の数の分だけ繰り返される。図10においては、第1の物体である机、脇棚、キャビネットの数の分だけ繰り返されることとなる。
【0040】
ステップS403では、座標取得部302は、ステップS402で得られた第1の物体の数の分だけ、以下にステップS404〜S410として説明する処理を行ったか否かを判断する。終わっていない場合は、ステップS404へ移行し、終わった場合は、処理を終了する。
【0041】
ステップS404において、座標取得部302は、第1の物体の画像領域に対して、物体の上面部分の抽出を行う。本実施の形態における上面抽出処理を施した結果は、図6(D)に示すようになる。
【0042】
上面抽出では、まず、座標取得部302において、抽出された第1の物体の画像領域に対して、ステレオ画像を用いて特徴点を求め、各特徴点の三次元座標を算出する。ここで特徴点は、ステレオ画像において、それぞれの画像中で周辺の画素との濃淡の変化が激しい等、特定の変化がある点とする。座標取得部302は、特徴点を、ステレオ画像中のxy座標値を用いて保持する。
【0043】
図7は、特徴点の抽出イメージを示すものである。図中の四角のマークは、特徴点の例を示す。
【0044】
次に、座標取得部302は、画像中の同じ第1物体の画像領域内に存在する特徴点の中から、同じ高さを持ち、かつ、それらの点で囲まれた領域の色情報が同じとなる複数の特徴点を抽出する。そして、座標取得部302は、抽出した複数の特徴点によって囲まれた領域を、第1の物体の上面領域として抽出する。最後に、座標取得部302は、第1の物体の画像領域を、上面領域と上面領域以外の領域とに分割する。図6(D)の特徴点t1(tx1,ty1)、t2(tx2,ty2)、t3(tx3,ty3)、t4(tx4,ty4)で囲まれた、斜線で示す領域は、上面領域の例である。
【0045】
上面領域は、画像中の特徴点で囲まれた領域として定義されるため、その形状は特徴点の数により変化する。例えば、特徴点が4点であれば上面領域は四角形となり、特徴点が5点であれば上面領域は五角形となる。
【0046】
このとき、図6(D)に示すように、抽出された上面領域(t1−t4)は、第1の物体の上面の画像を基準面に対して透視変換した結果である。このため、変換された上面領域は、基準面から机の高さ分だけ、本来あるべき大きさから異なりが生じている。
【0047】
そこで、ステップS405において、第1の平面マップ生成部303は、ステップS404で求められた三次元座標のうちz座標の値が基準面のz座標の値と同じ値になるように、上面領域を移動させる。すなわち、第1の平面マップ生成部303は、上面領域を、基準面上に移動させる。その際、第1の平面マップ生成部303は、領域が実際の大きさと等しくなるように、領域の大きさを縮小又は拡大する(図6(E)参照)。以下、ステップS405の処理が施された第1の物体の画像を、「第1の物体の変換後領域」という。
【0048】
ステップS406において、画像領域抽出部304は、ステップS404で抽出された画像から、第1の物体の上面領域に存在する、パソコン、本、ノート等の第2の物体(図6(F)参照)の画像領域を抽出する。以下、この領域を、「第2の物体の画像領域」という。第2の物体の画像領域の抽出は、例えば、第1の物体の上面領域に相当する画像において、ここでも濃淡情報を利用した領域抽出を行い、第2の物体に相当する画像領域を分離することによって行われる(図6(G)参照)。この処理は、画像中の第1の物体の画像中の領域の数の分だけ繰り返される。次に、画像領域抽出部304は、抽出した各第2の物体の画像領域の座標を、座標取得部302に出力する。
【0049】
ステップS407において、座標取得部302は、ステップS406で抽出された第2の物体の画像領域の三次元座標をそれぞれ算出する。
【0050】
ここで、図6(G)に示す画像中の代表点o1(ox1,oy1)、o2(ox2,oy2)等が存在する第2の物体の画像領域は、第2の物体が存在する机の高さ分、位置が上面領域と異なる。また、第2の物体の画像領域は、高さが基準面と異なることにより、大きさも異なる。なお、これは、図6(D)に示した第1の平面マップ生成部303と同様である。
【0051】
そのため、ステップS408において、第2の平面マップ生成部305は、ステップS407で取得した三次元座標のうち、z座標の値が基準面のz座標の値と同じ値になるようにする。具体的には、第2の平面マップ生成部305は、第2の物体の画像領域を、画像中での領域の大きさを調節し、抽出した画像のまま(つまり同じ形状で)移動させる。例えば、領域の代表点o1(ox1,oy1)はO1(Ox1,Oy1)へ、o2(ox2,oy2)はO2(Ox2,Oy2)へそれぞれ移動する(図6(H)参照)。以下、ステップS408の処理が施された第2の物体の画像を、「第2の物体の変換後領域」という。
【0052】
このように、平面マップ生成装置103は、第1の物体に対しては、入力画像に対して透視変換を施した後、物体の上面領域を取得して三次元座標中の適した位置、領域の大きさに変換する。一方で、平面マップ生成装置103は、第2の物体に対しては、入力画像のまま、位置、領域の大きさの変換をする。平面マップ生成装置103は、このように第1の物体と第2の物体とで異なった処理を行うことにより、ディスプレイのような高さのある第2の物体が歪みなく表示される平面マップを生成することができる。なお、第2の物体については、第1の物体に対する処理と同様の処理を行い、上方から見たときの状態に変換してもよい。
【0053】
ステップS409において、第1の平面マップ生成部303は、後処理として、第1の物体の上面領域以外の領域等、カメラから死角となっている領域(以下「死角領域」と総称する)に対して、色情報を用いて塗りつぶす処理を行う。死角領域は、第1の物体の側面領域や、第1の物体によって発生するオクルージョン(Occlusion)領域、ステップS405の処理を施される前の上面領域等が相当する。ここで、図8(A)には、撮像した画像を透視変換した結果を示す。また、図8(B)は、図8(A)に示す透視変換結果に対して、ステップS402からステップS408までの処理を施した結果である。すなわち、図8(B)は、抽出された第1の物体の上面領域を、三次元座標の適した位置、大きさに変更したものである。図8(C)は、図8(A)における死角領域と図8(B)とを重ね合わせたものである。死角領域に該当する部分は、黒色で表示した。第1の平面マップ生成部303は、平面マップ上に表示する際に、他の領域と見分けがつくように、オフィス内に存在しない色で死角領域を塗りつぶしてもよい(図8(C)参照)。また、第1の平面マップ生成部303は、周囲の色(例えば、基準面である床の濃淡情報)を利用して、死角領域を塗りつぶしてもよい。
【0054】
ステップS410において、重畳処理部306は、ステップS405で得られた第1の物体の変換後領域と、ステップS408で得られた第2の物体の変換後領域とを、平面マップ上へ重畳する処理を行う(図6(I)参照)。また、重畳処理部306は、ステップS409で得られた死角領域(塗りつぶしが行われた死角領域)を、平面マップ上へ重畳する処理も行う。重畳処理の手順は、次の通りである。まず、重畳処理部306は、第1の平面マップである第1の物体の領域を配置し、第2の平面マップである第2の物体の領域を合成する。そして、重畳処理部306は、ステップS409で得られた死角領域のうち、第1、第2の物体の変換後領域で埋められない領域を、所定の色で塗りつぶす。なお、重畳処理部306は、ステップS410で死角領域抽出に関して、他のカメラから得られた情報で補完することによって、第1の物体の側面部分、オクルージョン部分等を周囲の領域の画像情報を用いて塗りつぶしてもよい。
【0055】
平面マップ生成装置103は、ステップS410の処理の後、ステップS403へ移行する。
【0056】
図9は、オフィスに複数のカメラを配置した様子を示す図である。この図に示すように、オフィスにおいて、撮像されていない死角部分が少なくなるように、複数台のカメラを適した位置に設置する。図10(A)は、カメラから取得したカメラ画像(イメージ図)である。図10(B)は、図10(A)の画像に対して透視変換を施した平面マップであり、図10(C)は、図10(A)の画像を平面マップ生成装置103によって処理した平面マップである。
【0057】
図10(B)では、物体が原型の形状をとどめておらず、非常に歪んでおり、大変視認しにくい平面マップである。これに対して、図10(C)では、視認しやすい平面マップが表示されている。
【0058】
このように実施の形態1に係る監視システム100は、基準面に存在する第1の物体の画像領域と、第1の物体の上部に存在する第2の物体の画像領域を分離する。そして、監視システム100は、第1の物体の上面領域と第2の物体の画像領域とを、それぞれ大きさ及び位置を調整して合成表示する。これにより、実施の形態1では、物体の歪みの少ない平面マップを生成することができ、ユーザの視認性を向上させることができる。したがって、実施の形態1に係る監視システム100を用いることにより、工場、オフィス等の監視対象エリアの空間の様子全体を容易に把握することができる。
【0059】
なお、本実施の形態に係る平面マップ生成装置は、上述の構成以外の構成とすることもできる。
【0060】
図11は、実施の形態1に係る他の平面マップ生成装置500の内部構成を示すブロック図である。図11において、人物検出部501は、画像取得部301から画像を取得し、取得した画像から人物の特徴を利用して人物を検出する。検出結果は、動線表示部502に出力される。また、動線表示部502は、人物検出部501から出力された検出結果に基づいて、人物が移動した軌跡を解析する。そして、動線表示部502は、解析した軌跡を、人物の動線として平面マップに埋め込み、ディスプレイ104に表示させる。
【0061】
これにより、実施の形態1に係る他の平面マップ生成装置500は、平面マップ上に人の動きを示す動線を表示することが可能となり、監視対象エリア全体の物体の位置関係の把握を容易にする。また、他の平面マップ生成装置500からは、室内を移動している人物と、人物の移動と物体との関連性を、ディスプレイ104上で容易に確認することができる。例えば、図12に示すように、オフィス等において、入り口から入ってきた人物がある特定の場所を経由して各人の席に着く場合、その動線から人の行動を判断することができる。すなわち、他の平面マップ生成装置500を用いることにより、平面マップ上の物体と人物の動きとの関係の分析が可能となる。これにより、他の平面マップ生成装置500では、物体に関連付けて人の動きを見ることができ、更に、その物体が何であるかを特定することができる。例えば、人物に関連している物体としてその場所Aに在席管理ボードがあると解析した場合は、「Aに在席管理ボードがあります」等の情報を平面マップ上の端等に表示することができる。
【0062】
なお、平面マップ生成装置は、平面マップ生成の処理を一定時間間隔で実行することにより、監視対象エリアにおいて、机や備品等が移動した場合でもより最新に近い状態を表示することが可能となる。平面マップ生成装置は、監視対象エリア内の様子が変化しない場合は、設置時のみ実行するようにしてもよい(変化するまで処理を実行しないようにしてもよい)。
【0063】
また、本実施の形態においては、カメラ群を、ステレオカメラとして説明したが、2台以上の複数カメラとしてもかまわない。
【0064】
また、本実施の形態では、座標の算出にステレオ画像によるステレオマッチングを用いたが、測距センサ等を用いてもよい。
【0065】
また、生成された平面マップ上の死角領域の塗りつぶし色は、黒色に対応する値等、色情報を統一した値で設定を行ってもよい。
【0066】
また、基準面上に存在する第1の物体の上面抽出方法として、本実施の形態に係る監視装置100は、画像中の特徴点を求め、その特徴点の三次元座標を算出する。次に、監視装置100は、それらが同じ高さを持ち、かつ、それらで囲まれた領域内の色が同じ場合に、その囲まれた領域を、上面領域として取得していた。しかし、高さの条件は、特徴点の高さが完全に一致している必要はなく、ほぼ同じであることとしてもよい。また、色の条件は、領域内の色が似ていることとしてもよい。また、上面領域の取得の条件を、高さの条件と色の条件のいずれか一方が成り立つこととしてもよい。
【0067】
また、貼り合わせ部307は、複数の平面マップを貼り合わせる際、重なり領域が存在しない部分を、周囲の領域の画像情報や基準面の画像情報によって埋め合わせてもよい。
【0068】
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2に係る平面マップ生成装置600の内部構成を示すブロック図である。図13の図4と異なる点は、差分検知部601及び差分判定部602を追加した点である。差分検知部601は、貼り合わせ部307から出力された平面マップを保持し、前回出力された平面マップと今回出力された平面マップとの差分を検知する。そして、差分検知部601は、差分を検知したとき、差分の内容を示す差分情報を、差分判定部602に出力する。
【0069】
差分判定部602は、オフィス内に存在する物体を予め登録しておき、差分検知部601から出力された差分情報に相当する物体が登録されているか否かを判定する。そして、差分判定部602は、当該物体が登録されている場合には、オフィス内に存在する物体が紛失しているとして、警報を発する等、その旨をディスプレイ104に表示する。
【0070】
なお、平面マップ生成装置600は、警報を発する方法として、平面マップ上に色又は文字等で知らせてもよいし、ディスプレイ104とは別に警告用のライトを用意しておき、ライトを点滅させてもよい。また、平面マップ生成装備600は、これらの警報と併せて、またはこれらの警報に代えて、オフィス管理部署等に直接連絡を行うようにしてもよい。
【0071】
このように、実施の形態2に係る平面マップ生成装置600は、前回出力された平面マップと今回出力された平面マップとの差分を検知し、差分情報に相当する物体が登録されているか判定する。これにより、平面マップ生成装置600は、オフィス内に存在する物体の状況管理を行うことができる。
【0072】
なお、本実施の形態に係る平面マップ生成装置は、上述の構成以外の構成とすることもできる。
【0073】
図14は、実施の形態2に係る他の平面マップ生成装置700の内部構成を示すブロック図である。図14において、人物検出部501は、画像取得部301から画像を取得し、取得した画像から人物の特徴を抽出して、人物を検出する。検出結果は、動線表示部502に出力される。動線表示部502は、人物検出部501から出力された検出結果に基づいて、人物が移動した軌跡を解析する。そして、動線表示部502は、解析した軌跡を、人物の動線として平面マップ上に埋め込み、ディスプレイ104に表示させる。
【0074】
これにより、実施の形態2に係る他の平面マップ生成装置700は、平面マップ上に人の動きを示す動線を表示することが可能となる。更に、他の平面マップ生成装置700は、室内で物体が紛失した場合に、いつ誰が物体を紛失させたか等、人と物体との関係を把握することができ、物体が紛失した原因を特定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかる画像処理装置及び画像処理方法は、セキュリティ管理システム、安全管理システム等に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
101 カメラ群
102 ネットワーク
103、500、600、700 平面マップ生成装置
104 ディスプレイ
301 画像取得部
302 座標取得部
303 第1の平面マップ生成部
304 画像領域抽出部
305 第2の平面マップ生成部
306 重畳処理部
307 貼り合わせ部
501 人物検出部
502 動線表示部
601 差分検知部
602 差分判定部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体が撮像された画像であり、かつ、前記物体の三次元座標を算出可能な画像を取得する画像取得部と、
基準面上に存在する第1の物体の上面を前記画像から抽出し、抽出した前記上面の特徴点の座標を取得する座標取得部と、
取得した前記座標を用いて、前記基準面に対して垂直方向に相当する座標の値が前記基準面と同じ値になるように、前記上面の大きさ及び位置を調整して第1の平面マップを生成する第1の平面マップ生成部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の物体の上に存在する第2の物体の位置に対応する画像領域を前記画像から抽出する画像領域抽出部と、
前記画像領域の代表点の座標を取得し、取得した前記代表点の座標を用いて、前記基準面に対して垂直方向に相当する座標の値が基準面と同じ値になるように、前記画像領域の大きさ及び位置を調整して第2の平面マップを生成する第2の平面マップ生成部と、
前記第1の平面マップと前記第2の平面マップとを重ね合わせて第3の平面マップを生成する重畳部と、を更に具備する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
複数の異なる位置で撮像された画像から生成された複数の前記第3の平面マップを貼り合わせる貼り合わせ部、を更に具備する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記重畳部は、
前記第1の平面マップと前記第2の平面マップとを重ね合わせる際、重なり領域が存在しない部分を、周囲の領域の画像情報によって埋め合わせる、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記重畳部は、
前記第1の平面マップと前記第2の平面マップとを重ね合わせる際、重なり領域が存在しない部分を、基準面の画像情報によって埋め合わせる、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記貼り合わせ部は、
複数の前記第3の平面マップを貼り合わせる際、重なり領域が存在する部分において、カメラまでの距離が近い前記第3の平面マップを優先して貼り合わせる、
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記貼り合わせ部は、
複数の前記第3の平面マップを貼り合わせる際、重なり領域が存在しない部分を、周囲の領域の画像情報によって埋め合わせる、
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記貼り合わせ部は、
複数の前記第3の平面マップを貼り合わせる際、重なり領域が存在しない部分を、基準面の画像情報によって埋め合わせる、
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前回生成された前記第3の平面マップと今回生成された前記第3の平面マップとの差分を検知する差分検知部、を更に具備する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項10】
人物を検出する人物検出部と、
検出された前記人物が移動した軌跡を動線で前記第3の平面マップに表す動線表示部と、を更に具備する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項11】
物体が撮像された画像であり、かつ、前記物体の三次元座標を算出可能な画像を取得する画像取得工程と、
基準面上に存在する第1の物体の上面を前記画像から抽出し、抽出した前記上面の特徴点の座標を取得する座標取得工程と、
取得した前記座標を用いて、前記基準面に対して垂直方向に相当する座標の値が基準面と同じ値になるように、前記上面の大きさ及び位置を調整して第1の平面マップを生成する第1の平面マップ生成工程と、
を具備する画像処理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−160785(P2010−160785A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209304(P2009−209304)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】