画像化方法におけるノイズリダクション方法、メモリ媒体および断層撮影システム
【課題】実際にあまり頻繁には存在しない構造を処理の際に消去する。
【解決手段】少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットをそれぞれウェーブレット変換し、それぞれのレベルにおいて4つのグループのウェーブレット係数を算出し、少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応するウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換する際に、強く相関していないウェーブレット係数を、強く相関しているウェーブレット係数よりも強く重み付けせず、混合グループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けを、HPグループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは異ならせる。
【解決手段】少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットをそれぞれウェーブレット変換し、それぞれのレベルにおいて4つのグループのウェーブレット係数を算出し、少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応するウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換する際に、強く相関していないウェーブレット係数を、強く相関しているウェーブレット係数よりも強く重み付けせず、混合グループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けを、HPグループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは異ならせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの統計学的に無関係な、同じ次元でかつ同じ状況の画像データセットを作成し、かつ数jのレベルに関して低域フィルタリングおよび高域フィルタリングを用いてそれぞれウェーブレット変換を行い、かつ少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応のウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、かつ少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換の際に、あまり強く相関していないウェーブレット係数を、より強く相関しているウェーブレット係数よりも、あまり強く重み付けしない、画像化方法におけるノイズリダクション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理の範囲内でウェーブレット変換の原理は一般的である。ウェーブレット変換に関しては、例えばインターネットホームページhtTP://de.wikipedia.org/wiki/Waveletが参照される。このページでは、ウェーブレット変換の理論についての更なる参照事項が記載されている。
【0003】
特許文献1からは、請求項1の前文と同じようなノイズ抑制方法が知られている。この文献では、2つの統計学的に無関係な、同じ又は空間的に類似の画像の相関を、定められたウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定している。これは具体的に、j次のウェーブレットレベルの2つの「方向微分係数」から形成されたベクトルの正規化されたスカラ積κjに相当する。
【数3】
【0004】
もちろん、このような画像中には、使用されたウェーブレットに応じて、消去される方向微分係数を有しかつそれにもかかわらず相関されているパターンも存在する。相関にもかかわらず実際の構造と相違する成分のために、このパターンの形の画像アーチファクトがウェーブレット変換の観察されたレベルに応じて多様な長さで生じる。方向微分係数から形成されたベクトル基準が消失する又は小さい場合、特許文献1に示された形を用いても、相関された構造の存在に関する信頼できる情報は得られない。さらに、小さな相互相関関数にもかかわらず強い相関関係にある対角成分が存在することができる。
【特許文献1】独国特許公開第10305221号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、実際にあまり頻繁には存在しない構造を処理の際に消去する画像化において改善されたノイズ抑制方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴部により解決される。本発明の好ましい実施態様は従属請求項に記載されている。
【0007】
従って、本発明者は、少なくとも2つの統計学的に無関係な、同じ次元でかつ同じ状況の画像データセット(A,B)を作成し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセット(A,B)を、数jのレベルに関して低域フィルタリング(TP)および高域フィルタリング(HP)を用いてそれぞれウェーブレット変換し、
TP×TPオペレーション(operation)によってTPグループのウェーブレット係数を形成し、HP×HPオペレーションによってHPグループのウェーブレット係数を形成し、かつ一方ではTP×HPオペレーションによりかつ他方ではHP×TPオペレーションにより2つの混合グループのウェーブレット係数を形成することによって、それぞれのレベルにおいて4つのグループのウェーブレット係数を算出し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応するウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、
少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換する際に、強く相関していないウェーブレット係数を、強く相関しているウェーブレット係数よりも強く重み付けしない、画像化する方法におけるノイズリダクション方法を改善することを提案する。
【0008】
本発明によって、発明者は、混合グループ内のウェーブレット係数を逆変換する際のウェーブレット係数の相関の評価および重み付けを、HPグループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは異ならせることを提案する。
【0009】
この改善されたノイズ抑制方法により、相応の評価および重み付けにより実際にあまり頻繁に存在しない構造を処理の際に消去し、同時にノイズの最適な低減を生じさせることが可能である。
【0010】
補足的に指摘するに、「無関係な、同じ次元および同じ状況の画像データセット」とは、同じないし非常に類似する条件下において又は公知のようにわずかに変更された条件下において1つの対象物の統計学的に無関係な撮影データである。同様に、相互に対応するウェーブレット係数が変換の際に計算されかつ相互に比較できるようにするために、類似の画像データは同じ数の空間次元に存在しなければならない。
【0011】
実際に、ウェーブレット変換の際に第1のグループの画像データセットが次のレベルの計算のベースとして利用され、それぞれのレベルにおいて第1のグループのデータ量は出発データ量の1/4に減らされると特に好ましい。
【0012】
逆変換の際のウェーブレット係数の重み付けの場合に、HPグループは、混合グループ、つまりHP×TPグループおよびTP×HPグループのウェーブレット係数の重み付けよりもより高く重み付けされる。TPはウェーブレット変換に所属する低域フィルタを表し、HPはウェーブレット変換に所属する高域フィルタを表し、1つのレベルのウェーブレット解析の際に次のグループのウェーブレット係数が生じる(理由は上記参照)。
【表1】
このウェーブレット解析は好ましくはレベルjmaxまで計算される。というのは、ノイズ出力への主な寄与は高周波数に由来するからである。
【0013】
さらに、好ましくは、TP×HPグループ内の相関関数KjTP,HPとして、次の関数が使用される。
【数4】
但し、
WAjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
WAjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
P1=選択グレードを設定するための変数。
【0014】
同様に、具体的な事例では、HPグループ内の相関関数KjHP,HPとして、次の関数を使用すると好ましい。
【数5】
但し、
WAjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
P2=選択グレードを設定するための変数。
【0015】
特に、この関数は本発明による方法の場合に、特許文献1から公知の方法の簡単な一般的な普遍化ではないことが判る。このような普遍化の場合には、単に次のように拡張される相関関数であるだけであった。
【数6】
【0016】
しかしながら、相関関数の独立した評価は、相関関数の観察されたグループに応じて行われ、かつ付加的に逆変換の際に相関関数の独立した重み付けも行われる。
【0017】
特に迅速なデータ処理の観点で、ウェーブレット変換のためにハールウェーブレットを使用すると特に好ましい。しかしながら、基本的に、例えばhtTP://de.wikipedia.org/wiki/Waveletにおいて挙げられているような、例えばスプラインウェーブレット又はドベシィウェーブレットのような他の公知のウェーブレットを使用することもできる。本発明の具体的な実施形態はしかしながら例外なしにハールウェーブレットに関する。
【0018】
患者の走査または組織部分の位置測定に使用される、イオン化する特性を使用した放射線、例えばX線又は陽電子放出放射線に基づいて、およびそれに伴う細胞変質に関する危険に基づいて、この方法においては常に、できる限り少ない線量で検査を実施するように努力されている。というのは、患者の走査の際にわずかに使用される線量のために、存在する量子ノイズが画像品質にとって大きい重要性を含み、かつ画像品質が相応に強い画像ノイズにより不利に影響を受けるからである。従って、本発明の方法は、イオン化する放射線による画像化との関連で使用されると特に好ましい。これにより、同じ程度の画像品質で線量を節約することができる。
【0019】
従って、本発明による方法はX線コンピュータ断層撮影において使用されると特に好ましい。一方では、1つのスライス面における無関係の画像セットとして少なくとも2つの統計学的に無関係なスライス画像を使用することができる。他方では、少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットとして、2つの統計学的に無関係な投影データセットも使用することができ、このデータセットからノイズなし投影データセットを作り、このように求められたノイズなし投影データセットがスライス画像の再構成に使用される。この適用に関して、公開前の独国特許出願第102005012654.5号明細書が参照され、かつこの開示内容は、特にノイズリダクションのための相関解析の適用バリエーションに関しては、完全に援用される。
【0020】
最終的に、本発明による方法は透過X線画像に適用できる。対象物の統計学的に無関係に相互に作成された同じ画像が、その相関挙動に関して調査され、かつ上記の方法で処理される。
【0021】
陽電子放出断層撮影(PET)において又は例えば甲状腺のシンチグラムを作成する際でも、上記の方法は線量を節約して使用することができる。というのは、投与されるべき放射性物質の量も低減可能であるからである。
【0022】
NMR断層撮影(NMR=核磁気共鳴)、超音波反射画像化または超音波断層撮影の範囲内で、本発明による方法は画像品質の改善に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を、図によるCT画像化の具体的な実施例を用いて詳細に説明する。図には本発明の理解のために必要な特徴だけが示され、次の符号が使用されている。1:CTシステム、2:第1のX線管、3:第1の多列検出器、4:第2のX線管、5:第2の多列検出器、6:ガントリハウジング、7:患者、8:患者寝台、9:システム軸線、10:計算ユニット、11:メモリ、12:画像データセット、13:統計学的に無関係な部分画像データセット、14:ウェーブレット変換の計算、15:相互相関係数の計算、16:リフォーマッティング(reformatting)、17:新たな画像データセット、18:本発明による方法の表示、Prgn:コンピュータプログラム。
【0024】
特許文献1には、2つの統計学的に無関係な、同じ又は空間的に類似する撮影、つまり再構成された画像データまたは投影データの相関を、定められたウェーブレット係数の相互相関関数を用いて求めることが提案されている。これは具体的にj次のウェーブレットレベルの2つの「方向微分係数」から形成されたベクトルの正規化されたスカラ積κjに相当する。
【数7】
【0025】
本発明において、方向微分係数および方向項とは、1つの空間次元におけるウェーブレット変換の低域フィルタと他の空間次元におけるウェーブレット変換の高域フィルタとをそれぞれ用いるフィルタリングによって算出されたウェーブレット係数である。本発明において、対角誘導および対角項とは、全ての空間次元においてウェーブレット変換の高域フィルタを用いるフィルタリングにより算出されたウェーブレット係数である。
【0026】
ハールウェーブレットを使用する場合、このような方向微分係数は、例えば図1および2において図示されたカーネル(核)を用いて畳み込むことにより生じる。
【0027】
相関を決定するために両方の大きさが使用されるにもかかわらず、特許文献1においては、またこの特許文献1に影響されて後の文献においても、全ての高域成分を、つまり図3のカーネルを用いる畳み込みにより計算される対角項をも、より低く重み付けすることが提案されている。つまり、方向項(TP×HPグループおよびHP×TPグループに相当)および対角項(HP×HPグループに相当)の相関の評価および他の重み付けにおいて差異はなくなってしまう。しかしながらそれにも拘わらず、消失する方向微分係数を有する存在するパターンは相関関係にある。ハールウェーブレットに対して、このピクセルパターンは図4および図5に示されている形を有する。
【0028】
相関が存在するにもかかわらず実際の構造と相違する成分のために、このパターンの形の画像アーティファクトがウェーブレット変換の観察されたレベルに応じて種々の長さで生じる。
【0029】
この問題は図6および7によってCT画像の実施例においても示されている。図6のアキシャルCT画像は、独国特許出願第102005012654.5号の特許出願からのノイズリダクション方法に応じてノイズ低減され、図7に示されている。ここで使用されたノイズリダクション方法は評価および重み付けにおいて方向項および対角項を同じに取り扱っている。従って円でマーキングされた箇所にアーティファクトが生じ、このアーティファクトは実際に存在する構造によって生じ、誤ってノイズとして解釈され、画像データセットのリフォーマッティング時に除去された。
【0030】
特に、これは図8において明らかに示されており、この図8は図7の画像から図6の画像を引いた差画像を表す。円のマーキングは前述の問題により生じるアーチファクトを示す。
【0031】
この示されたアーティファクトは、本発明の基本思想に応じて、相関の評価とウェーブレット係数の重み付けとが、方向項の場合の逆変換においても、相関の評価および対角項の重み付けと異なることによってのみ抑制される。
【0032】
方向微分係数から形成されたベクトルの基準が消失する又は小さい場合、特許文献1に示された形を用いても、相関された構造の存在に関する信頼できる情報は得られない。さらに、小さな相互相関関数にもかかわらず強い相関関係にある対角成分が存在することができる。相互相関関数の値に基づいて、従って、ノイズリダクションのためにまず方向微分係数だけを重み付けすると好ましい。
【0033】
対角成分WAjHP×HP,WBjHP×HPの重み付けはその相関分析に基づいて別々に実施される。具体的に、このためにWAjHP×HP,WBjTP×HPの適当な関数を観察することができ、この関数は好ましくはこの積に依存し、この値は正規化のために考慮される。j次のウェーブレットレベルにおいて相関の評価並びに対角係数の重み付けのために、例えば次の関数を使用することができる。
【数8】
指数P1を用いて選択性を設定することができ、WAjHP×HPは高域フィルタリングだけを行われたウェーブレット係数からなるグループのレベルjにおける画像データセットAのウェーブレット係数であり、かつWBjHP×HPは高域フィルタリングだけを行われたウェーブレット係数からなるグループのレベルjにおける画像データセットBのウェーブレット係数に相当する。TPはウェーブレット変換に所属する低域フィルタであり、HPはウェーブレット変換に所属する高域フィルタである。
【0034】
特別な事例として、同時に全ての方向微分係数および対角成分が消失するかもしくは安定な数値のために小さすぎる場合がある。これは、しかしながら、局所的に構造もたいしたノイズも存在しないことを意味しているため、問題なくウェーブレット係数を変化させることなく再使用することができる。
【0035】
図9には本発明によるノイズ抑制を行われた図6のCT画像が示され、図10には図9の画像から図6の画像を引いた差画像が示されている。この図10からは、図8の差画像のアーティファクトが著しく低減していることが認識できる。従って、本発明による方法を用いたこのノイズリダクションの結果は、この方法によりもたらされたアーティファクトに関して明らかに改善できる。それにより、関連する画像変換を損なうことなく多くのノイズを除去でき、逆の理論では同じ画像品質でより多くの線量を節約することができる。
【0036】
図11によって、さらに例示されたコンピュータ断層撮影(CT)システム1が模式的に示されており、CTシステム1の計算ユニット10中でプログラムPrgxの実施により本発明によるノイズリダクション法がCTスライス画像化に適用される。
【0037】
CTシステム1は、ここで具体的に示されている事例では、ガントリハウジング6を有し、ガントリハウジング6内では図示されていないガントリにX線管2と多列検出器3とが固定されている。運転時にX線管2と検出器3とはシステム軸線9を中心として回転し、一方患者7はシステム軸線9に沿って走行可能な患者寝台8を用いてX線管2と検出器3との間のスキャン領域を通って送り込まれる。患者に対して相対的にこのようにスパイラル走査が実施される。選択的に、複数のX線管−検出器組合せを走査のために使用することもできる。このように第2のX線管−検出器組合せは、第2のX線管4と第2の多列検出器5とにより破線で表示されている。第2のX線管−検出器組合せにより非常に簡単に第2の統計学的に無関係の画像データセットが作成され、画像データセットは量子ノイズに関して統計学的に無関係であることがわかる。
【0038】
CTシステムの制御、およびノイズリダクションによる画像処理を含めた画像再構成は、計算ユニット10により行われ、計算ユニット10は内部メモリ11にコンピュータプログラムPrg1−Prgnを有し、コンピュータプログラムは移動可能な記憶媒体で転送することもできる。このコンピュータプログラムは、CTコンピュータのその他の通常の作業の他に、画像処理時に本発明によるノイズリダクション方法も実行する。
【0039】
図11の模式的な図において、点線の枠18中に本発明によるノイズリダクションの変形例が示されている。これに従って、まず、計算プログラムを用いて患者7の画像データセット12を再構成する。そこから、同じスライス面(切断面)に関して2つの統計学的に無関係な画像データセット13.1,13.2を作り出し、引続いてこれらがそれぞれウェーブレット変換14.1,14.2を受ける。ここで、ステップ15で、計算されたウェーブレット係数に関して相互相関係数KjTP,HP,KjHp,HPを計算し、つまりは対角項および方向項の考察を相互に無関係に行う。引続いて、ステップ16でウェーブレット係数の求められた相関に基づいて、対角項および方向項に関して相互に別々に、画像データセットのリフォーマッティングの際にウェーブレット係数の重み付けが実施される。この場合、2つの画像データセットのうち一つの画像データセットの重み付けされたウェーブレット係数だけを、又は両画像データセットの重み付けされたウェーブレット係数の組合わせを使用することができる。このようにして、量子ノイズを除去された新しい画像データセット17が生じ、この新しいデータセット17はオペレータによって再度評価されるために計算ユニット10のディスプレーに表示することができるか又は医者による更なる評価のために外部コンピュータに、データ記録媒体に又は印刷物で伝達することができる。
【0040】
本発明による方法は、検査システムに直接接続された計算ユニット上で実行できると共に、独立して別個のユニット上でも実行できることを指摘することができる。
【0041】
本発明の上記の特徴は、本発明の範囲を超えることなしに、それぞれ記載された組合わせにおいてだけではなく、他の組合わせにおいても又は単独でも使用可能であると解釈される。
【0042】
全体として、本発明により、2つの統計学的に無関係な同じ状況の画像データセットを作成し、低域フィルタと高域フィルタとによって特徴付けられたウェーブレット変換を行い、無関係な画像データセット間の相関をそれぞれ相応のウェーブレット係数を用いて決定し、かつ逆変換の際にあまり強く相関していないウェーブレット係数をより強く相関しているウェーブレット係数よりもあまり強く重み付けせず、高域フィルタリングと低域フィルタリングの組合せにより生じているウェーブレット係数において逆変換の際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けが、高域フィルタリングだけによって生じたウェーブレット係数の逆変換の際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは無関係である、画像化法におけるノイズリダクションする方法が提案される。これにより、画像データセットに関して、従来の技術と比べて実際にあまり頻繁には存在しない構造を処理の際に消去するノイズリダクションが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の方向微分係数に対するハールウェーブレットの畳み込みカーネル、TP×HPグループを表す図
【図2】第1の方向微分係数に対するハールウェーブレットの畳み込みカーネル、HP×TPグループを表す図
【図3】対角誘導に対するハールウェーブレットの畳み込みカーネル、HP×HPグループを表す図
【図4】ハールウェーブレットを使用する場合に消去される方向微分係数を有する第1のピクセルモデルを表す図
【図5】ハールウェーブレットを使用する場合に消去される方向微分係数を有する第2のピクセルモデルを表す図
【図6】アキシャルCT画像を表す図
【図7】独国特許第102005012654.5号明細書の特許出願からの方法を用いてノイズ低減された図6からのCT画像を表す図
【図8】図7から図6を引いた差画像を表す図
【図9】本発明による方法を用いてノイズ低減された図6からのCT画像を表す図
【図10】図9から図6を引いた差画像を表す図
【図11】本発明による方法を模式的に示すCTシステムを表す図
【符号の説明】
【0044】
1 CTシステム
2 第1のX線管
3 第1の多列検出器
4 第2のX線管
5 第2の多列検出器
6 ガントリハウジング
7 患者
8 患者寝台
9 システム軸線
10 計算ユニット
11 メモリ
12 画像データセット
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの統計学的に無関係な、同じ次元でかつ同じ状況の画像データセットを作成し、かつ数jのレベルに関して低域フィルタリングおよび高域フィルタリングを用いてそれぞれウェーブレット変換を行い、かつ少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応のウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、かつ少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換の際に、あまり強く相関していないウェーブレット係数を、より強く相関しているウェーブレット係数よりも、あまり強く重み付けしない、画像化方法におけるノイズリダクション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理の範囲内でウェーブレット変換の原理は一般的である。ウェーブレット変換に関しては、例えばインターネットホームページhtTP://de.wikipedia.org/wiki/Waveletが参照される。このページでは、ウェーブレット変換の理論についての更なる参照事項が記載されている。
【0003】
特許文献1からは、請求項1の前文と同じようなノイズ抑制方法が知られている。この文献では、2つの統計学的に無関係な、同じ又は空間的に類似の画像の相関を、定められたウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定している。これは具体的に、j次のウェーブレットレベルの2つの「方向微分係数」から形成されたベクトルの正規化されたスカラ積κjに相当する。
【数3】
【0004】
もちろん、このような画像中には、使用されたウェーブレットに応じて、消去される方向微分係数を有しかつそれにもかかわらず相関されているパターンも存在する。相関にもかかわらず実際の構造と相違する成分のために、このパターンの形の画像アーチファクトがウェーブレット変換の観察されたレベルに応じて多様な長さで生じる。方向微分係数から形成されたベクトル基準が消失する又は小さい場合、特許文献1に示された形を用いても、相関された構造の存在に関する信頼できる情報は得られない。さらに、小さな相互相関関数にもかかわらず強い相関関係にある対角成分が存在することができる。
【特許文献1】独国特許公開第10305221号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、実際にあまり頻繁には存在しない構造を処理の際に消去する画像化において改善されたノイズ抑制方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴部により解決される。本発明の好ましい実施態様は従属請求項に記載されている。
【0007】
従って、本発明者は、少なくとも2つの統計学的に無関係な、同じ次元でかつ同じ状況の画像データセット(A,B)を作成し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセット(A,B)を、数jのレベルに関して低域フィルタリング(TP)および高域フィルタリング(HP)を用いてそれぞれウェーブレット変換し、
TP×TPオペレーション(operation)によってTPグループのウェーブレット係数を形成し、HP×HPオペレーションによってHPグループのウェーブレット係数を形成し、かつ一方ではTP×HPオペレーションによりかつ他方ではHP×TPオペレーションにより2つの混合グループのウェーブレット係数を形成することによって、それぞれのレベルにおいて4つのグループのウェーブレット係数を算出し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応するウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、
少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換する際に、強く相関していないウェーブレット係数を、強く相関しているウェーブレット係数よりも強く重み付けしない、画像化する方法におけるノイズリダクション方法を改善することを提案する。
【0008】
本発明によって、発明者は、混合グループ内のウェーブレット係数を逆変換する際のウェーブレット係数の相関の評価および重み付けを、HPグループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは異ならせることを提案する。
【0009】
この改善されたノイズ抑制方法により、相応の評価および重み付けにより実際にあまり頻繁に存在しない構造を処理の際に消去し、同時にノイズの最適な低減を生じさせることが可能である。
【0010】
補足的に指摘するに、「無関係な、同じ次元および同じ状況の画像データセット」とは、同じないし非常に類似する条件下において又は公知のようにわずかに変更された条件下において1つの対象物の統計学的に無関係な撮影データである。同様に、相互に対応するウェーブレット係数が変換の際に計算されかつ相互に比較できるようにするために、類似の画像データは同じ数の空間次元に存在しなければならない。
【0011】
実際に、ウェーブレット変換の際に第1のグループの画像データセットが次のレベルの計算のベースとして利用され、それぞれのレベルにおいて第1のグループのデータ量は出発データ量の1/4に減らされると特に好ましい。
【0012】
逆変換の際のウェーブレット係数の重み付けの場合に、HPグループは、混合グループ、つまりHP×TPグループおよびTP×HPグループのウェーブレット係数の重み付けよりもより高く重み付けされる。TPはウェーブレット変換に所属する低域フィルタを表し、HPはウェーブレット変換に所属する高域フィルタを表し、1つのレベルのウェーブレット解析の際に次のグループのウェーブレット係数が生じる(理由は上記参照)。
【表1】
このウェーブレット解析は好ましくはレベルjmaxまで計算される。というのは、ノイズ出力への主な寄与は高周波数に由来するからである。
【0013】
さらに、好ましくは、TP×HPグループ内の相関関数KjTP,HPとして、次の関数が使用される。
【数4】
但し、
WAjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
WAjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
P1=選択グレードを設定するための変数。
【0014】
同様に、具体的な事例では、HPグループ内の相関関数KjHP,HPとして、次の関数を使用すると好ましい。
【数5】
但し、
WAjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
P2=選択グレードを設定するための変数。
【0015】
特に、この関数は本発明による方法の場合に、特許文献1から公知の方法の簡単な一般的な普遍化ではないことが判る。このような普遍化の場合には、単に次のように拡張される相関関数であるだけであった。
【数6】
【0016】
しかしながら、相関関数の独立した評価は、相関関数の観察されたグループに応じて行われ、かつ付加的に逆変換の際に相関関数の独立した重み付けも行われる。
【0017】
特に迅速なデータ処理の観点で、ウェーブレット変換のためにハールウェーブレットを使用すると特に好ましい。しかしながら、基本的に、例えばhtTP://de.wikipedia.org/wiki/Waveletにおいて挙げられているような、例えばスプラインウェーブレット又はドベシィウェーブレットのような他の公知のウェーブレットを使用することもできる。本発明の具体的な実施形態はしかしながら例外なしにハールウェーブレットに関する。
【0018】
患者の走査または組織部分の位置測定に使用される、イオン化する特性を使用した放射線、例えばX線又は陽電子放出放射線に基づいて、およびそれに伴う細胞変質に関する危険に基づいて、この方法においては常に、できる限り少ない線量で検査を実施するように努力されている。というのは、患者の走査の際にわずかに使用される線量のために、存在する量子ノイズが画像品質にとって大きい重要性を含み、かつ画像品質が相応に強い画像ノイズにより不利に影響を受けるからである。従って、本発明の方法は、イオン化する放射線による画像化との関連で使用されると特に好ましい。これにより、同じ程度の画像品質で線量を節約することができる。
【0019】
従って、本発明による方法はX線コンピュータ断層撮影において使用されると特に好ましい。一方では、1つのスライス面における無関係の画像セットとして少なくとも2つの統計学的に無関係なスライス画像を使用することができる。他方では、少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットとして、2つの統計学的に無関係な投影データセットも使用することができ、このデータセットからノイズなし投影データセットを作り、このように求められたノイズなし投影データセットがスライス画像の再構成に使用される。この適用に関して、公開前の独国特許出願第102005012654.5号明細書が参照され、かつこの開示内容は、特にノイズリダクションのための相関解析の適用バリエーションに関しては、完全に援用される。
【0020】
最終的に、本発明による方法は透過X線画像に適用できる。対象物の統計学的に無関係に相互に作成された同じ画像が、その相関挙動に関して調査され、かつ上記の方法で処理される。
【0021】
陽電子放出断層撮影(PET)において又は例えば甲状腺のシンチグラムを作成する際でも、上記の方法は線量を節約して使用することができる。というのは、投与されるべき放射性物質の量も低減可能であるからである。
【0022】
NMR断層撮影(NMR=核磁気共鳴)、超音波反射画像化または超音波断層撮影の範囲内で、本発明による方法は画像品質の改善に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を、図によるCT画像化の具体的な実施例を用いて詳細に説明する。図には本発明の理解のために必要な特徴だけが示され、次の符号が使用されている。1:CTシステム、2:第1のX線管、3:第1の多列検出器、4:第2のX線管、5:第2の多列検出器、6:ガントリハウジング、7:患者、8:患者寝台、9:システム軸線、10:計算ユニット、11:メモリ、12:画像データセット、13:統計学的に無関係な部分画像データセット、14:ウェーブレット変換の計算、15:相互相関係数の計算、16:リフォーマッティング(reformatting)、17:新たな画像データセット、18:本発明による方法の表示、Prgn:コンピュータプログラム。
【0024】
特許文献1には、2つの統計学的に無関係な、同じ又は空間的に類似する撮影、つまり再構成された画像データまたは投影データの相関を、定められたウェーブレット係数の相互相関関数を用いて求めることが提案されている。これは具体的にj次のウェーブレットレベルの2つの「方向微分係数」から形成されたベクトルの正規化されたスカラ積κjに相当する。
【数7】
【0025】
本発明において、方向微分係数および方向項とは、1つの空間次元におけるウェーブレット変換の低域フィルタと他の空間次元におけるウェーブレット変換の高域フィルタとをそれぞれ用いるフィルタリングによって算出されたウェーブレット係数である。本発明において、対角誘導および対角項とは、全ての空間次元においてウェーブレット変換の高域フィルタを用いるフィルタリングにより算出されたウェーブレット係数である。
【0026】
ハールウェーブレットを使用する場合、このような方向微分係数は、例えば図1および2において図示されたカーネル(核)を用いて畳み込むことにより生じる。
【0027】
相関を決定するために両方の大きさが使用されるにもかかわらず、特許文献1においては、またこの特許文献1に影響されて後の文献においても、全ての高域成分を、つまり図3のカーネルを用いる畳み込みにより計算される対角項をも、より低く重み付けすることが提案されている。つまり、方向項(TP×HPグループおよびHP×TPグループに相当)および対角項(HP×HPグループに相当)の相関の評価および他の重み付けにおいて差異はなくなってしまう。しかしながらそれにも拘わらず、消失する方向微分係数を有する存在するパターンは相関関係にある。ハールウェーブレットに対して、このピクセルパターンは図4および図5に示されている形を有する。
【0028】
相関が存在するにもかかわらず実際の構造と相違する成分のために、このパターンの形の画像アーティファクトがウェーブレット変換の観察されたレベルに応じて種々の長さで生じる。
【0029】
この問題は図6および7によってCT画像の実施例においても示されている。図6のアキシャルCT画像は、独国特許出願第102005012654.5号の特許出願からのノイズリダクション方法に応じてノイズ低減され、図7に示されている。ここで使用されたノイズリダクション方法は評価および重み付けにおいて方向項および対角項を同じに取り扱っている。従って円でマーキングされた箇所にアーティファクトが生じ、このアーティファクトは実際に存在する構造によって生じ、誤ってノイズとして解釈され、画像データセットのリフォーマッティング時に除去された。
【0030】
特に、これは図8において明らかに示されており、この図8は図7の画像から図6の画像を引いた差画像を表す。円のマーキングは前述の問題により生じるアーチファクトを示す。
【0031】
この示されたアーティファクトは、本発明の基本思想に応じて、相関の評価とウェーブレット係数の重み付けとが、方向項の場合の逆変換においても、相関の評価および対角項の重み付けと異なることによってのみ抑制される。
【0032】
方向微分係数から形成されたベクトルの基準が消失する又は小さい場合、特許文献1に示された形を用いても、相関された構造の存在に関する信頼できる情報は得られない。さらに、小さな相互相関関数にもかかわらず強い相関関係にある対角成分が存在することができる。相互相関関数の値に基づいて、従って、ノイズリダクションのためにまず方向微分係数だけを重み付けすると好ましい。
【0033】
対角成分WAjHP×HP,WBjHP×HPの重み付けはその相関分析に基づいて別々に実施される。具体的に、このためにWAjHP×HP,WBjTP×HPの適当な関数を観察することができ、この関数は好ましくはこの積に依存し、この値は正規化のために考慮される。j次のウェーブレットレベルにおいて相関の評価並びに対角係数の重み付けのために、例えば次の関数を使用することができる。
【数8】
指数P1を用いて選択性を設定することができ、WAjHP×HPは高域フィルタリングだけを行われたウェーブレット係数からなるグループのレベルjにおける画像データセットAのウェーブレット係数であり、かつWBjHP×HPは高域フィルタリングだけを行われたウェーブレット係数からなるグループのレベルjにおける画像データセットBのウェーブレット係数に相当する。TPはウェーブレット変換に所属する低域フィルタであり、HPはウェーブレット変換に所属する高域フィルタである。
【0034】
特別な事例として、同時に全ての方向微分係数および対角成分が消失するかもしくは安定な数値のために小さすぎる場合がある。これは、しかしながら、局所的に構造もたいしたノイズも存在しないことを意味しているため、問題なくウェーブレット係数を変化させることなく再使用することができる。
【0035】
図9には本発明によるノイズ抑制を行われた図6のCT画像が示され、図10には図9の画像から図6の画像を引いた差画像が示されている。この図10からは、図8の差画像のアーティファクトが著しく低減していることが認識できる。従って、本発明による方法を用いたこのノイズリダクションの結果は、この方法によりもたらされたアーティファクトに関して明らかに改善できる。それにより、関連する画像変換を損なうことなく多くのノイズを除去でき、逆の理論では同じ画像品質でより多くの線量を節約することができる。
【0036】
図11によって、さらに例示されたコンピュータ断層撮影(CT)システム1が模式的に示されており、CTシステム1の計算ユニット10中でプログラムPrgxの実施により本発明によるノイズリダクション法がCTスライス画像化に適用される。
【0037】
CTシステム1は、ここで具体的に示されている事例では、ガントリハウジング6を有し、ガントリハウジング6内では図示されていないガントリにX線管2と多列検出器3とが固定されている。運転時にX線管2と検出器3とはシステム軸線9を中心として回転し、一方患者7はシステム軸線9に沿って走行可能な患者寝台8を用いてX線管2と検出器3との間のスキャン領域を通って送り込まれる。患者に対して相対的にこのようにスパイラル走査が実施される。選択的に、複数のX線管−検出器組合せを走査のために使用することもできる。このように第2のX線管−検出器組合せは、第2のX線管4と第2の多列検出器5とにより破線で表示されている。第2のX線管−検出器組合せにより非常に簡単に第2の統計学的に無関係の画像データセットが作成され、画像データセットは量子ノイズに関して統計学的に無関係であることがわかる。
【0038】
CTシステムの制御、およびノイズリダクションによる画像処理を含めた画像再構成は、計算ユニット10により行われ、計算ユニット10は内部メモリ11にコンピュータプログラムPrg1−Prgnを有し、コンピュータプログラムは移動可能な記憶媒体で転送することもできる。このコンピュータプログラムは、CTコンピュータのその他の通常の作業の他に、画像処理時に本発明によるノイズリダクション方法も実行する。
【0039】
図11の模式的な図において、点線の枠18中に本発明によるノイズリダクションの変形例が示されている。これに従って、まず、計算プログラムを用いて患者7の画像データセット12を再構成する。そこから、同じスライス面(切断面)に関して2つの統計学的に無関係な画像データセット13.1,13.2を作り出し、引続いてこれらがそれぞれウェーブレット変換14.1,14.2を受ける。ここで、ステップ15で、計算されたウェーブレット係数に関して相互相関係数KjTP,HP,KjHp,HPを計算し、つまりは対角項および方向項の考察を相互に無関係に行う。引続いて、ステップ16でウェーブレット係数の求められた相関に基づいて、対角項および方向項に関して相互に別々に、画像データセットのリフォーマッティングの際にウェーブレット係数の重み付けが実施される。この場合、2つの画像データセットのうち一つの画像データセットの重み付けされたウェーブレット係数だけを、又は両画像データセットの重み付けされたウェーブレット係数の組合わせを使用することができる。このようにして、量子ノイズを除去された新しい画像データセット17が生じ、この新しいデータセット17はオペレータによって再度評価されるために計算ユニット10のディスプレーに表示することができるか又は医者による更なる評価のために外部コンピュータに、データ記録媒体に又は印刷物で伝達することができる。
【0040】
本発明による方法は、検査システムに直接接続された計算ユニット上で実行できると共に、独立して別個のユニット上でも実行できることを指摘することができる。
【0041】
本発明の上記の特徴は、本発明の範囲を超えることなしに、それぞれ記載された組合わせにおいてだけではなく、他の組合わせにおいても又は単独でも使用可能であると解釈される。
【0042】
全体として、本発明により、2つの統計学的に無関係な同じ状況の画像データセットを作成し、低域フィルタと高域フィルタとによって特徴付けられたウェーブレット変換を行い、無関係な画像データセット間の相関をそれぞれ相応のウェーブレット係数を用いて決定し、かつ逆変換の際にあまり強く相関していないウェーブレット係数をより強く相関しているウェーブレット係数よりもあまり強く重み付けせず、高域フィルタリングと低域フィルタリングの組合せにより生じているウェーブレット係数において逆変換の際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けが、高域フィルタリングだけによって生じたウェーブレット係数の逆変換の際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは無関係である、画像化法におけるノイズリダクションする方法が提案される。これにより、画像データセットに関して、従来の技術と比べて実際にあまり頻繁には存在しない構造を処理の際に消去するノイズリダクションが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の方向微分係数に対するハールウェーブレットの畳み込みカーネル、TP×HPグループを表す図
【図2】第1の方向微分係数に対するハールウェーブレットの畳み込みカーネル、HP×TPグループを表す図
【図3】対角誘導に対するハールウェーブレットの畳み込みカーネル、HP×HPグループを表す図
【図4】ハールウェーブレットを使用する場合に消去される方向微分係数を有する第1のピクセルモデルを表す図
【図5】ハールウェーブレットを使用する場合に消去される方向微分係数を有する第2のピクセルモデルを表す図
【図6】アキシャルCT画像を表す図
【図7】独国特許第102005012654.5号明細書の特許出願からの方法を用いてノイズ低減された図6からのCT画像を表す図
【図8】図7から図6を引いた差画像を表す図
【図9】本発明による方法を用いてノイズ低減された図6からのCT画像を表す図
【図10】図9から図6を引いた差画像を表す図
【図11】本発明による方法を模式的に示すCTシステムを表す図
【符号の説明】
【0044】
1 CTシステム
2 第1のX線管
3 第1の多列検出器
4 第2のX線管
5 第2の多列検出器
6 ガントリハウジング
7 患者
8 患者寝台
9 システム軸線
10 計算ユニット
11 メモリ
12 画像データセット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの統計学的に無関係な、同じ次元でかつ同じ状況の画像データセット(A,B)を作成し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセット(A,B)を、数jのレベルに関して低域フィルタリング(TP)および高域フィルタリング(HP)を用いてそれぞれウェーブレット変換し、
TP×TPオペレーションによってTPグループのウェーブレット係数を形成し、HP×HPオペレーションによってHPグループのウェーブレット係数を形成し、一方ではTP×HPオペレーションによりかつ他方ではHP×TPオペレーションにより2つの混合グループのウェーブレット係数を形成することによって、それぞれのレベルにおいて4つのグループのウェーブレット係数を算出し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応するウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、
少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換する際に、強く相関していないウェーブレット係数を、強く相関しているウェーブレット係数よりも強く重み付けしない、画像化方法におけるノイズリダクション方法において、
混合グループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けを、HPグループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは異ならせる
ことを特徴とする画像化方法におけるノイズリダクション方法。
【請求項2】
ウェーブレット変換の際に第1のグループの画像データセットが次のレベルの計算のためのベースとして利用され、それぞれのレベルにおいて第1のグループのデータ量は出発データ量の1/4に減らされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HPグループの逆変換の際のウェーブレット係数の重み付けは、混合グループのウェーブレット係数の重み付けよりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
HPグループ内の相関関数KjTP,HPとして、次の関数を使用することを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【数1】
(但し、
WAjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
WAjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
P1=選択グレードを設定するための変数)
【請求項5】
HPグループ内の相関関数KjHP,HPとして、次の関数を使用することを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の方法。
【数2】
(但し、
WAjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
P2=選択グレードを設定するための変数)
【請求項6】
ウェーブレット変換のためにハールウェーブレットを使用することを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の方法。
【請求項7】
X線コンピュータ断層撮影に適用され、1つのスライス面において少なくとも2つの統計学的に無関係なスライス画像を画像データセット(A,B)として使用することを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項8】
X線コンピュータ断層撮影に適用され、少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセット(A,B)として2つの統計学的に無関係な投影データセットを使用し、この2つの統計学的に無関係な投影データセットから、ノイズ除去された投影データセットを作成し、このようにして算出されたノイズ除去された投影データセットをスライス画像の再構成に使用することを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項9】
X線コンピュータ断層撮影において、スライス画像に同じスライス面が適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項10】
透過X線画像に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項11】
核磁気共鳴断層撮影に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つ記載の方法。
【請求項12】
陽電子放出断層撮影に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項13】
超音波画像化に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項14】
超音波断層撮影に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項15】
断層撮影システムの計算ユニット中に組み込まれたメモリ媒体または計算ユニットのためのメモリ媒体において、メモリ媒体に少なくとも1つのコンピュータプログラム又はプログラムモジュールが記憶され、コンピュータプログラム又はプログラムモジュールは、断層撮影システムの計算ユニットでの実行の際に請求項1乃至14の1つに記載の方法を実行することを特徴とするメモリ媒体。
【請求項16】
計算ユニットを備えた断層撮影システムにおいて、断層撮影システムに少なくとも1つのコンピュータプログラム又はプログラムモジュールが記憶され、コンピュータプログラム又はプログラムモジュールは断層撮影システムの計算ユニットでの実行の際に請求項1乃至14の1つに記載の方法を実行することを特徴とする断層撮影システム。
【請求項1】
少なくとも2つの統計学的に無関係な、同じ次元でかつ同じ状況の画像データセット(A,B)を作成し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセット(A,B)を、数jのレベルに関して低域フィルタリング(TP)および高域フィルタリング(HP)を用いてそれぞれウェーブレット変換し、
TP×TPオペレーションによってTPグループのウェーブレット係数を形成し、HP×HPオペレーションによってHPグループのウェーブレット係数を形成し、一方ではTP×HPオペレーションによりかつ他方ではHP×TPオペレーションにより2つの混合グループのウェーブレット係数を形成することによって、それぞれのレベルにおいて4つのグループのウェーブレット係数を算出し、
少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセットの相関を、少なくとも2つの画像データセットのそれぞれ相応するウェーブレット係数の相互相関関数を用いて決定し、
少なくとも1つのウェーブレットデータセットから画像データセットを逆変換する際に、強く相関していないウェーブレット係数を、強く相関しているウェーブレット係数よりも強く重み付けしない、画像化方法におけるノイズリダクション方法において、
混合グループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けを、HPグループ内のウェーブレット係数を逆変換する際の相関の評価およびウェーブレット係数の重み付けとは異ならせる
ことを特徴とする画像化方法におけるノイズリダクション方法。
【請求項2】
ウェーブレット変換の際に第1のグループの画像データセットが次のレベルの計算のためのベースとして利用され、それぞれのレベルにおいて第1のグループのデータ量は出発データ量の1/4に減らされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HPグループの逆変換の際のウェーブレット係数の重み付けは、混合グループのウェーブレット係数の重み付けよりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
HPグループ内の相関関数KjTP,HPとして、次の関数を使用することを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【数1】
(但し、
WAjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjTP×HP=混合グループTP×HPのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
WAjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×TP=混合グループHP×TPのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
P1=選択グレードを設定するための変数)
【請求項5】
HPグループ内の相関関数KjHP,HPとして、次の関数を使用することを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の方法。
【数2】
(但し、
WAjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットAのウェーブレット係数、
WBjHP×HP=HPグループのレベルjでの画像データセットBのウェーブレット係数、
P2=選択グレードを設定するための変数)
【請求項6】
ウェーブレット変換のためにハールウェーブレットを使用することを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の方法。
【請求項7】
X線コンピュータ断層撮影に適用され、1つのスライス面において少なくとも2つの統計学的に無関係なスライス画像を画像データセット(A,B)として使用することを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項8】
X線コンピュータ断層撮影に適用され、少なくとも2つの統計学的に無関係な画像データセット(A,B)として2つの統計学的に無関係な投影データセットを使用し、この2つの統計学的に無関係な投影データセットから、ノイズ除去された投影データセットを作成し、このようにして算出されたノイズ除去された投影データセットをスライス画像の再構成に使用することを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項9】
X線コンピュータ断層撮影において、スライス画像に同じスライス面が適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項10】
透過X線画像に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項11】
核磁気共鳴断層撮影に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つ記載の方法。
【請求項12】
陽電子放出断層撮影に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項13】
超音波画像化に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項14】
超音波断層撮影に適用されることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項15】
断層撮影システムの計算ユニット中に組み込まれたメモリ媒体または計算ユニットのためのメモリ媒体において、メモリ媒体に少なくとも1つのコンピュータプログラム又はプログラムモジュールが記憶され、コンピュータプログラム又はプログラムモジュールは、断層撮影システムの計算ユニットでの実行の際に請求項1乃至14の1つに記載の方法を実行することを特徴とするメモリ媒体。
【請求項16】
計算ユニットを備えた断層撮影システムにおいて、断層撮影システムに少なくとも1つのコンピュータプログラム又はプログラムモジュールが記憶され、コンピュータプログラム又はプログラムモジュールは断層撮影システムの計算ユニットでの実行の際に請求項1乃至14の1つに記載の方法を実行することを特徴とする断層撮影システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−209755(P2007−209755A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26963(P2007−26963)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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