説明

画像取込機能付き表示装置

【課題】面内傾斜の発生を防止可能な画像取込機能付き表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】偶数行のプリチャージ制御線3及び読出制御線4については右側に配置された第2駆動回路300が制御し、奇数行のプリチャージ制御線3及び読出制御線4については左側に配置された第3駆動回路400が制御するので、偶数行の各光センサ回路を左側から右側方向に向けて駆動制御すると共に、奇数行の各光センサ回路を右側から左側方向に向けて駆動制御することにより、各制御線が生来的に備えている配線負荷等による信号劣化が生じる場合であっても、撮像画像の左右方向における視覚的な面内傾斜の発生を緩和(防止)することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサ回路で検知した受光量に基づく画像を取り込み可能な画像取込機能付き表示装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光センサ素子を有する光センサ回路を表示領域の各画素に形成し、当該光センサ回路で反射光等を検知することにより、表示領域に近接した対象物の位置や形状等を撮像画像として取り込む機能を備えた画像取込機能付き表示装置に関する技術が開示されている(特許文献1、2参照)。以下、このような従来の画像取込機能付き表示装置の構成、機能等について簡単に説明する。
【0003】
従来の画像取込機能付き表示装置の全体構成を図5に示し、当該構成図において点線で囲まれた画素に関する構成を図6に示す。表示装置500は、複数の信号線1及び複数の走査線2を互いに交差させた格子状の表示領域100と、画像信号を信号線1に印加する第1駆動回路200と、各画素に形成されている画素ゲート10のオンオフを制御する駆動信号を走査線2に印加する第2駆動回路300とを備えている。このような表示装置500は、駆動信号の印加に応じて画素ゲート10をオンに制御し、当該タイミングで画像信号を画素電極11に供給することで画素電極11と対向電極(図示せず)との間に電位差を生じさせ、当該電位差に基づいて液晶層12の液晶分子の配向を変化させることで画像表示機能を実現している。
【0004】
そして、R領域、G領域、B領域により一つの画素が形成されるが、当該画素には、このような画像表示機能を実現している画素ゲート10や液晶層12等に加えて、走査線に対して略並行に形成されたプリチャージ制御線3と読出制御線4との間に、前述した画像取込機能として作用する光センサ回路が形成されている。なお、第2駆動回路300は、光センサ回路を構成するプリチャージゲート20のオンオフを制御するプリチャージゲート制御信号をプリチャージ制御線3に印加し、読出ゲート24のオンオフを制御する読出ゲート制御信号を読出制御線4に印加する機能も備えている。以下、光センサ回路の動作について簡単に説明する。
【0005】
最初のプリチャージ期間では、第1駆動回路200が、所定のプリチャージ電位をR領域用信号線1aに印加し、第2駆動回路300が、H(High)のプリチャージ制御信号をプリチャージ制御線3に印加すると共に、L(Low)の読出ゲート制御信号を読出制御線4に印加する。これにより、プリチャージゲート20がオンに制御されるため、R領域用信号線1aに印加されたプリチャージ電位が光センサ回路に供給され、センサ容量21の初期電位が増幅トランジスタ23の閾値と同等に初期設定される。これは、センサ容量21に供給された電位が高いと増幅トランジスタ23がオンに制御されて電荷が放電するため、増幅トランジスタ23の閾値で止まることに起因している。
【0006】
次の撮像期間では、第2駆動回路300が、Lのプリチャージ制御信号をプリチャージ制御線3に印加する。これにより、光センサ回路はプリチャージ期間で蓄積した電位を保持するが、ここで、表示領域100に人の指先が近接した場合には、当該指先の表面で反射した反射光(バックライト光を反射させた反射光)を光センサ素子22で受光するため、センサ容量21に蓄積された電荷が放電して初期電位が低下することになる。一方、そのような反射光がない場合には初期電位を継続的に保持した状態になる。
【0007】
最後の読出期間では、第2駆動回路300が、Hの読出ゲート制御信号を読出制御線4に印加する。これにより、読出ゲート24がオンに制御されるため、センサ容量21に蓄積されている電位がB領域用信号線1cに出力される。
【0008】
このような処理を行う光センサ回路によれば、近接した対象物との距離に応じた電流、換言すれば、光センサ素子22で受光した反射光の大きさに応じた電圧や電流を出力するため、表示領域100において指先が近接している位置やその形状等を認識可能な撮像画像を得ることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−093894号公報
【特許文献2】特開2006−244218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、プリチャージ制御線3や読出制御線4は表示領域100の大きさに応じた長さを有するため、各制御線が生来的に備えている配線負荷や寄生容量等の影響により、第2駆動回路300により印加されたプリチャージ制御信号や読出ゲート制御信号にディレイ、なまり、振幅減衰等の信号劣化が発生することが知られている。そして、この信号劣化の影響により、第2駆動回路300に近い側に配置された光センサ回路と、終端側に配置された光センサ回路との動作に差異が生じることになる。
【0011】
すなわち、従来の画像取込機能付き表示装置は、各行に配置された複数の光センサ回路を同一方向で駆動するため、同一行における光センサ回路の動作の上記差異が全ての行で同様に発生し、結果として撮像画像の面内傾斜が生じ、撮像画像性能を損なうという問題があった。具体的には、図7に示すように、全ての行における最右端の光センサ回路は、矩形波のプリチャージ制御信号や読出ゲート制御信号によって制御されるが、最左端の光センサ回路は、なまりのある波形で制御されるため、撮像画像の左右方向に面内傾斜が発生する(図8参照)。
【0012】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、面内傾斜の発生を防止可能な画像取込機能付き表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明は、光センサ回路で検知した受光量に基づく画像を取り込み可能な画像取込機能付き表示装置において、表示領域に行列状に形成された複数の光センサ回路と、前記複数の光センサ回路を行単位で駆動する制御回路と、を備え、前記制御回路は、任意の複数行については左側に位置する光センサ回路から駆動し、他の複数行については右側に位置する光センサ回路から駆動することを要旨とする。
【0014】
本発明にあっては、任意の複数行については左側に位置する光センサ回路から駆動し、他の複数行については右側に位置する光センサ回路から駆動するため、面内傾斜の発生を防止することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の本発明は、前記制御回路が、画像フレームが更新された場合に、前記任意の複数行については右側に位置する光センサ回路から駆動し、前記他の複数行については左側に位置する光センサ回路から駆動することを要旨とする。
【0016】
本発明にあっては、画像フレームが更新された場合に、任意の複数行については右側に位置する光センサ回路から駆動し、他の複数行については左側に位置する光センサ回路から駆動するため、より確実に面内傾斜の発生を防止することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の本発明は、前記制御回路は、前記表示領域の左側に配置された第1制御回路と右側に配置された第2制御回路であって、前記左側に位置する光センサ回路からの駆動は当該第1制御回路が行い、前記右側に位置する光センサ回路からの駆動は当該第2制御回路が行うことを要旨とする。
【0018】
請求項4に記載の本発明は、前記任意の複数行が、奇数行又は偶数行であることを要旨とする。
【0019】
本発明にあっては、任意の複数行が奇数行又は偶数行であるため、より確実に面内傾斜の発生を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、撮像性能の一つである面内傾斜の発生を防止可能な画像取込機能付き表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態における画像取込機能付き表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】各行に印加されるプリチャージ制御信号や読出ゲート制御信号を示す図である。
【図3】本実施の形態の画像取込機能付き表示装置で取り込まれた撮像画像を示す図である。
【図4】画像フレーム間において各行に印加されるプリチャージ制御信号や読出ゲート制御信号を示す図である。
【図5】従来の画像取込機能付き表示装置の全体構成を示す図である。
【図6】図5の構成図において点線で囲まれた画素の構成を示す図である。
【図7】従来の画像取込機能付き表示装置において、各行に印加されるプリチャージ制御信号や読出ゲート制御信号を示す図である。
【図8】従来の画像取込機能付き表示装置で取り込まれた撮像画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施の形態について図面を用いて説明する。
【0023】
本実施の形態に係る画像取込機能付き表示装置の全体構成を図1に示す。この画像取込機能付き表示装置500は、表示領域100と、第1駆動回路200〜第3駆動回路400とを備えている。
【0024】
表示領域100には、複数の信号線1及び複数の走査線2が格子状に形成されており、R領域、G領域、B領域にそれぞれ対応するR領域用信号線1a、G領域用信号線1b、B領域用信号線1cと1つの走査線2aとで区画的に構成される画素が複数形成されている。具体的には、図1に示す点線で囲まれた領域が1画素であり、このような画素が行列状に形成されることにより表示領域100が形成されている。また、各画素には、表示領域100に近接した対象物によって反射された反射光(バックライト光(図示せず)を反射させた反射光)を検知する光センサ回路が形成されている。この光センサ回路は、既に図6を用いて説明したように、走査線2aに対して略並行に形成されるプリチャージ制御線3aと読出制御線4aとの間に形成され、従来の光センサ回路が有する機能と同様の機能を備えている。
【0025】
第1駆動回路200は、画像を表示する期間において、画像信号をR領域用信号線1a〜B領域用信号線1cにそれぞれ印加する機能を備えている。また、撮像する期間において、プリチャージ期間の場合に、プリチャージ電位をR領域用信号線1aに印加し、読出期間の場合に、光センサ回路から出力された電圧・電流を入力し、表示領域100に近接した対象物の位置や形状等を認識する機能を備えている。なお、このような第1駆動回路200は、一般的に信号線駆動回路と称されており、画像信号を印加する機能と対象物の位置や形状等を認識する機能とで2つに分けることも可能である。
【0026】
第2駆動回路300(第2制御回路に相当)は、表示領域100の右側に配置されており、表示領域100に行列状に形成された複数の光センサ回路のうち偶数行(図2に示す2n行目、2n+2行目)に位置している各光センサ回路を右側から左側へ順次駆動制御する機能を備えている。具体的には、偶数行のプリチャージ制御線3及び読出制御線4(例えば、3aや3cで図示されたプリチャージ制御線や、4aや4cで図示された読出制御線)に対してのみ、プリチャージゲート制御信号及び読出ゲート制御信号を図2の右側からそれぞれ印加する。
【0027】
一方、第3駆動回路400(第1制御回路に相当)は、表示領域100の左側に配置されており、表示領域100に行列状に形成された複数の光センサ回路のうち奇数行(図2に示す2n+1行目、2n+3行目)に位置している各光センサ回路を左側から右側へ順次駆動制御する機能を備えている。具体的には、奇数行のプリチャージ制御線3及び読出制御線4(例えば、3bや3dで図示されたプリチャージ制御線や、4bや4dで図示された読出制御線)に対してのみ、プリチャージゲート制御信号及び読出ゲート制御信号を図2の左側からそれぞれ印加する。
【0028】
なお、第2駆動回路300及び第3駆動回路400は、前述したように走査線2に駆動信号を印加して画像を表示する機能も兼ねることも可能であるが、光センサ回路のみを専用的に制御する制御回路であってもよい。
【0029】
本実施の形態によれば、偶数行のプリチャージ制御線3及び読出制御線4については右側に配置された第2駆動回路300が制御し、奇数行のプリチャージ制御線3及び読出制御線4については左側に配置された第3駆動回路400が制御するので、偶数行の各光センサ回路を左側から右側方向に向けて駆動制御すると共に、奇数行の各光センサ回路を右側から左側方向に向けて駆動制御することにより、各制御線が生来的に備えている配線負荷等による信号劣化が生じる場合であっても、撮像画像の左右方向における視覚的な面内傾斜の発生を緩和(防止)することが可能となる(図3参照)。
【0030】
また、図4に示すように、例えばm番目の画像フレームからm+1番目の画像フレームに変化した場合には、第2駆動回路300は、奇数行に位置している各光センサ回路を右側から左側へ順次駆動制御し、第3駆動回路400は、偶数行に位置している各光センサ回路を左側から右側へ順次駆動制御することも可能である。すなわち、画像フレームが変化する毎に、各行の各光センサ回路を駆動制御する方向を変化させるので、撮像画像の左右方向における視覚的な面内傾斜の発生をより確実に緩和(防止)することが可能となる。
【0031】
なお、本実施の形態では、第2駆動回路300及び第3駆動回路400が駆動制御する行の単位を奇数行及び偶数行として説明したが、例えば、上から2行を第2駆動回路300が制御し、その次の3行を第3駆動回路400が制御するよう(6行目以降同様に制御)にしても、同様の効果を得ることが可能である。
【0032】
また、本実施の形態では、第2駆動回路300は表示領域100の右側に形成され、第3駆動回路400は表示領域100の左側に形成されるとして説明したが、本発明の特徴は、プリチャージゲート制御信号及び読出ゲート制御信号をそれぞれ印加するプリチャージ制御線3及び読出制御線4の印加端を行単位で異なるものとし、各行の光センサ回路を異なる側から駆動することで面内傾斜の発生を緩和することにあるため、第2駆動回路300及び第3駆動回路400を表示領域の上側に配置した場合であっても、プリチャージ制御線3及び読出制御線4への接続線を用いて接続させることで同様の効果を得ることが可能であり、発明の概念的には1つの駆動回路(制御回路)であってもよい。
【0033】
さらに、本実施の形態では、光センサ回路が画素毎に形成されるとして説明したが、これに限定されるものではなく、2〜3つの画素に対して1つの光センサ回路が形成されている場合であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…信号線
1a…R領域用信号線
1b…G領域用信号線
1c…B領域用信号線
2…走査線
3…プリチャージ制御線
4…読出制御線
10…画素ゲート
11…画素電極
12…液晶層
20…プリチャージゲート
21…センサ容量
22…光センサ素子
23…増幅トランジスタ
24…読出ゲート
100…表示領域
200…第1駆動回路
300…第2駆動回路
400…第3駆動回路
500…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサ回路で検知した受光量に基づく画像を取り込み可能な画像取込機能付き表示装置において、
表示領域に行列状に形成された複数の光センサ回路と、
前記複数の光センサ回路を行単位で駆動する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
任意の複数行については左側に位置する光センサ回路から駆動し、他の複数行については右側に位置する光センサ回路から駆動することを特徴とする画像取込機能付き表示装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
画像フレームが更新された場合に、前記任意の複数行については右側に位置する光センサ回路から駆動し、前記他の複数行については左側に位置する光センサ回路から駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像取込機能付き表示装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記表示領域の左側に配置された第1制御回路と右側に配置された第2制御回路であって、
前記左側に位置する光センサ回路からの駆動は当該第1制御回路が行い、前記右側に位置する光センサ回路からの駆動は当該第2制御回路が行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像取込機能付き表示装置。
【請求項4】
前記任意の複数行は、
奇数行又は偶数行であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像取込機能付き表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−176624(P2010−176624A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21588(P2009−21588)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】