説明

画像形成方法、画像形成装置

【課題】 印刷物の作成に用いる面積階調画像から、印刷物と同様の網点構造と色調を再現できる面積階調画像が得られ、網%の違いによる変化を反映でき、印刷物にはないモアレなどの画像ムラが生じることない画像形成方法等を提供する。
【解決手段】 画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aから面積階調画像Bが形成される画像形成方法で、Aの網点境界に位置する境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において網点が占める面積率が求められ、略中心となった境界画素の少なくとも一部について、2値データが面積率に従って変更されることにより、Bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の色校正に用いる面積階調画像を形成するための画像形成方法または画像形成装置に関する。より具体的には、RIP(Raster Image Processor)により生成された面積階調画像に基づいて、より正確な面積階調画像が得られる画像形成方法または画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、印刷物の作成では、印刷原稿の作成、校正、本印刷に至るまでフルデジタルで処理が行われる。印刷原稿がDTP(Desk Top Publishing)システムで作成されると、RIP(Raster Image Processor)により、本印刷のプロセスカラーであるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)等への分版と網点化を含む2値化がなされ、画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像が得られる。この面積階調画像から直接に刷版が作成されて、本印刷がなされる。
【0003】
本印刷前の色校正も同様にフルデジタルで形成される。具体的には、網点等を含めて印刷物を近似できるDDCP(Direct Digital Color Proofing)システムを用い、RIPとCMS(Color Management System)を使用して印刷原稿から印刷と同様な面積階調画像を生成し、出力装置にて印刷物に近い仕上がりの色校正を得ている。
【0004】
しかし、本印刷機とDDCPシステムとでは出力方式がまったく異なる。そのため、同じ面積階調画像を用いたのでは、それぞれの出力方式の違いに起因するドットゲイン等の違いが面積階調画像に反映できない。また、印刷物におけるドットゲイン等の影響は、各画像部分における網%によっても変化する。さらに、色材の違いに由来して色調も変化してしまう。そのため、DDCP出力用の面積階調画像は、印刷機用とは異なるRIP処理により別途生成されるのが通常である。
【0005】
ところが、その結果、面積階調画像の網点の角度、線数、形状等が、印刷物のそれらと異なる場合がある。また、DDCP出力用の面積階調画像を得るための処理時間を要するうえ、異なるRIPを使用することによる文字化け等の不具合が発生する場合もある。
【0006】
ここで、印刷機とプルーフとで極力同じ網点構造を持ち、かつ極力同じ色で表現された2値の面積階調画像を得るための画像変換方法等が、特許文献1に開示されている。この方法では、印刷で使用する2値面積階調画像を一旦多値画像に変換し、その多値画像の画素値を変換する。また、画素値が変換された後の多値画像と画素値が変換される前の多値画像の、対応する各画素の画素値どうしの差異を表わす値に応じて、元の2値面積階調画像の、多値画像の各画素に対応する各分割領域の面積率を増減する。しかし、この方法では、画面が4ドット×4ドットのブロックに規則正しく分割されて処理されるため、プルーフ画像にモアレなどのムラが生じやすい。これを低減するため、低空間周波数フィルタリング処理を合わせて行うことも同時に提案されているが、フィルタリング処理に大きな負荷がかかるうえ、ムラを完全に無くすのは困難であった。
【特許文献1】特開2002−290722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、印刷物の作成に用いる面積階調画像から、印刷物と同様の網点構造と色調を再現できる面積階調画像を得ることができ、その際、網%の違いを結果に反映でき、しかも、印刷物にはないモアレなどの画像ムラが生じることない画像形成方法等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の第1は、画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aを用いて、面積階調画像Bが形成される画像形成方法であって、前記面積階調画像Aの網点境界に位置する境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率が求められ、前記の略中心となった境界画素の少なくとも一部について、前記2値データが前記求められた面積率に従って変更されることにより、前記面積階調画像Bが形成されることを特徴とする画像形成方法である。
【0009】
ここで、前記のあらかじめ定められた大きさが、前記網点が有する周期以下の大きさであることは好ましい。また、前記境界画素が、前記網点の外部で前記網点境界に隣接する画素であり、前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率が増加するものであることは好ましい。また、前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率ごとにあらかじめ定めた閾値と、前記閾値の全範囲と同じ範囲に発生せしめた乱数とを対比し、前記対比の結果に応じて、前記面積率を増加させるものであることは好ましい。また、前記境界画素が、前記網点の内部で前記網点境界に隣接する画素であり、前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率が減少するものであることは好ましい。また、前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率ごとにあらかじめ定めた閾値と、前記閾値の全範囲と同じ範囲に発生せしめた乱数とを対比し、前記対比の結果に応じて、前記面積率を減少させるものであることは好ましい。
【0010】
発明の第2は、画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aから面積階調画像Bを形成する画像形成装置であって、前記面積階調画像Aの網点境界に位置する境界画素を検出する境界画素検出部と、前記境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率を求める面積率演算部と、前記の略中心となった境界画素の前記2値データの少なくとも一部を前記面積率に従って変更して前記面積階調画像Bを形成する画像変更部とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0011】
発明の第3は、画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aを用いて、面積階調画像Bが形成される画像形成方法であって、前記面積階調画像Aの網点を構成する網点画素ごとに、各網点画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率が求められ、前記の略中心となった網点画素の少なくとも一部について、ルックアップテーブルを経由したRGB出力データが前記求められた面積率に従って変更されることにより、前記面積階調画像Bが形成されることを特徴とする画像形成方法である。
【0012】
発明の第4は、画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aを用いて、面積階調画像Bが形成される画像形成方法であって、前記面積階調画像Aの網点境界に位置する境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率が求められ、前記の略中心となった境界画素の少なくとも一部について、ルックアップテーブルを経由したRGB出力データが前記求められた面積率に従って変更されることにより、前記面積階調画像Bが形成されることを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
目標とする印刷物と色調や網点構造が近似した面積階調画像を得ることができる。網%の違いによる変化も反映できる。画像処理の際に網点周期との干渉が発生せず、印刷物にないモアレなどの画像ムラが生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、説明のために、RIPにより生成された本印刷用の面積階調画像を面積階調画像Aと言い、本発明によって面積階調画像Aから生成された面積階調画像を面積階調画像Bという。面積階調画像Aは2値画像であるが、面積階調画像Bは、2値画像であることもあるし、画素ごとに出力機に対応するBGR出力値が指定された多値画像である場合もある。
【0015】
図1は、RIP処理によって得られた印刷用の面積階調画像Aの一部を模式的に示した図である。面積階調画像Aは画素2の集合体として表現でき、画素ごとに、「1(発色)」か、「0(非発色)」の2値データが貼り付けられて構成されている。図1では、2値データが「1(発色)」の画素(図では斜線が付されている)が、略正方形に集合して網点3を構成している。
【0016】
なお、印刷物は、YMCKの各版及び必要により用いられる特色版の各面積階調画像Aから構成されるが、ここでは簡単のため、いずれか1版の面積階調画像Aについて説明する。また、網点構造はAMスクリーニングを例として説明するが、これに限定する必要はない。また、印刷物のスクリーン線数は、標準的な175線程度(網点の周期は13〜15画素程度)を想定して以下の説明を行っているが、スクリーン線数を限定する必要はない。また、出力機は、BGR出力により例えば各色について256段階のほぼ連続階調で出力可能な出力機を想定して説明するが、これに限定しなくとも良い。
【0017】
まず、図2〜6を用いて、新たなモアレなどを生じないようにしながら、本印刷機の特性に合わせて面積階調画像Aの網点を大きくする画像形成方法について説明する。これにより画像の色調も変化することになる。本印刷機のドットゲインが面積階調画像Aの網%により変化することから、網%を面積階調画像Aから推定する。図2は、面積階調画像Aの網%にほぼ対応する面積率のデータを得る方法を示した図である。
【0018】
網点3の境界に網点3の外部から隣接するある境界画素10を考える。この境界画素10の2値データは「0(非発色)」である。この境界画素10を中心とする9画素×9画素=81画素の正方形の領域11を想定し、この領域内で2値データが「1(発色)」となっている画素の数をカウントする。図2(a)では、領域内の網点は網点3だけであるから、カウント値は4×5=20となる。なお、領域の大きさの選択に関しては後述する。
【0019】
次に、図2(b)では、(a)とは別の境界画素10に着目し、これを中心とした同じ大きさの領域11内で、(a)と同様に2値データが「1(発色)」となっている画素の数をカウントする。するとカウント値は4×6=24となる。同様に(c)で、さらに他の境界画素10に着目して2値データが「1(発色)」となっている画素の数をカウントすると、カウント値は6×4=24となる。
【0020】
このようにして、網点3に外部から隣接する境界画素10の各々に関して、カウント値を求める。なお、ある画素が境界画素10であるか否かは、図3に示すフィルタを用いて判定する。このフィルタでは、2値データが「0(非発色)」である注目画素21について、その8近傍に位置する検査画素22の2値データを調べ、いずれかの検査画素22の2値データが「1(発色)」であれば、その注目画素21を境界画素10と判定する。なお、8近傍の検査画素22に基づくのではなく、4近傍の検査画素に基づいて境界画素を判断しても良い。図1に示した網点3について、境界画素10のカウント値を求めた結果を図4に示す。
【0021】
図4では、斜線を付して示した網点画素5の集合体として網点が示されており、網点境界4をはさんで網点に外部から隣接する境界画素10の各々について、カウント値が境界画素10内に記載されている。カウント値は16から24の範囲にバラついているが、それぞれのカウント値を領域11の大きさ(81画素)で割った値を、境界画素10ごとの面積率とし、これが注目している網点の網%と相関すると考える。例えば、図2(a)の境界画素10に関する網点の面積率は20/81となる。この面積率は、一つの網点に対して境界画素10の位置により異なる複数の値が得られるが、それらの平均値が本来の網%と相関すると考えられる。これにより印刷物における網%を推定する。なお、領域11の大きさをあらかじめ定めておけば、面積率の相対的な評価に関しては、直接カウント値を面積率として用いても良い。以下では、カウント値をそのまま面積率として用いて説明する。
【0022】
次に、カウント値(面積率)ごとにある閾値を定めた閾値テーブルを用意する。これの例を図5に示す。この閾値は、網点の各境界画素10に関して、それらの2値データを、「0(非発色)」から「1(発色)」に変更する確率を定めている。図5では、面積率をカウント値で表示しているが、対応する閾値はパーセントで表示されている。例えば、ある境界画素10についてのカウント値が0から6のいずれかの場合、その境界画素の2値データが変更される確率は30%となる。このような閾値テーブルは、標準パターンの印刷物について、本印刷機の印刷結果とDDCPシステムの出力機の出力結果とを対比したデータに基づいて、あらかじめ用意されている。図5のテーブルは、カウント値の小さい網点、つまり比較的小さい網点の境界画素について、比較的高い確率で2値データを変更し、一方、比較的大きい網点の境界画素に関しては、2値データを変更しない旨の内容となっている。
【0023】
次に、境界画素10ごとに乱数を発生させる。乱数は、上記の確率の範囲である0〜100%に合わせて、同じ範囲0〜100内で発生させる。この乱数と、カウント値により定まる閾値とを比較する。この乱数が、対応する閾値に等しいか閾値より小さければ、その境界画素10の2値データを、元の「0(非発色)」から「1(発色)」に変更する。また、乱数が、対応する閾値より大きければ、その境界画素10の2値データを、元の「0(非発色)」のままとする。なお、閾値が「0」の場合は、乱数の値によらずに、その境界画素10の2値データを元の「0(非発色)」のままとする。
【0024】
この結果、例えば、あるカウント値に対する閾値が50%であれば、そのようなカウント値の境界画素の半分について、2値データが元の「0(非発色)」から「1(発色)」に変更される。いずれの境界画素の2値データが変更されるかはランダムに決定される。また、他のカウント値に対する閾値が0%であれば、そのようなカウント値の境界画素については、いずれも2値データが変更されない。また、あるカウント値に対する閾値が100%であれば、そのようなカウント値の境界画素の全部について、2値データが変更される。
【0025】
このようにして得られた画像を面積階調画像Bとし、図1に対応する面積階調画像Bを図6に示す。この面積階調画像Bを、変更前の図1の面積階調画像Aと比較すると、閾値に対応する確率で境界画素10の一部が発色して増加画素31となっている。その結果、修正された網点30は、元の網点3より大きくなってドットゲインが表現される。
【0026】
なお、ここでは、面積率をカウントする領域11として、9×9=81画素の領域を設定したが、これは、処理負荷(ソフトウェア処理では処理速度、ハードウェア処理では回路規模)と、画像の線数、画像の解像度、画像を補正する際に求められる網%の段階数、画像の鮮鋭性等を考慮して定めている。
【0027】
まず、領域11の大きさは、面積率から面積階調画像の網%を推定する処理の分解能に影響する。例えば、実際に線数が175線の画像を用いて面積率を測定してみると、領域11が3×3では、網%がおよそ0〜50%と50〜100%の2段階に網%を判別可能であることがわかる。領域11が5×5では、網%がおよそ0〜30%、30〜70%、70〜100%の3段階に判別可能となる。7×7では、網%が20%刻みの5段階に判別可能であり、9×9では、網%が10%刻みの10段階に判別可能となる。従って、好ましい領域11の大きさは、網%に関する分解能の観点からは大きい方が好ましく、下限としては3×3=9画素以上であることが好ましい。
【0028】
一方、領域11が大きくなると処理負荷が増大するから、処理負荷の観点からは領域11は小さい方が好ましい。さらに、領域11の大きさは、網点の周期からやや小さい程度とするのが、面積率の演算に網点の周辺部分からの余計な影響を受けにくく好ましい。
【0029】
結局これらから、領域11の大きさは、網点の周期と同程度か、またはそれをやや下回るのが好ましい。ここで説明に用いているスクリーン線数175線の画像では、網点の周期は13画素〜15画素程度の範囲となる。そのため、上記の説明では、領域11の大きさとして、175線の場合に9×9=81画素を選択している。なお、領域11は、奇数画素×奇数画素に限らず、偶数画素×偶数画素とすることもできる。この場合、注目している画素は領域の中心から若干ずれることになるが、それでも良い。つまり、境界画素は領域の略中心であればよい。
【0030】
このようにすることにより、閾値に従って、各境界画素10の2値データが変更または維持されるから、本印刷機に対応したドットゲインを表現することが可能となる。また、カウント値または面積率により閾値を変えることができるから、網点の網%に対応してドットゲインを変えることが可能となる。また、境界画素ごとに確率的に2値データを変更するか否かを決めることができるから、印刷物で現れないモアレ等のムラが色校正で生じてしまうなどの問題が生じない。この場合、網点ごとに増加する画素数は、同じ網%の網点であっても必ずしも同じにはならないが、画像全体では平均化されるから特に問題は生じない。さらに、CPUの演算負荷が比較的小さい範囲内に留まり、画像形成がユーザーの許容時間内で可能となる。
【0031】
上記では、本印刷機で網点が大きくなるドットゲインがプラスの場合について説明したが、ドットゲインがマイナスの場合も同様にして表現することができる。この場合について、図7〜8を用いて説明する。なお、ドットゲインをプラスにするかマイナスにするかに関しては、本印刷機とDDCPシステムとで標準印刷物を用いた対比をあらかじめ行って決定し、面積階調画像Bを形成する際に、印刷条件に従って選択可能であればよい。例えば、以下に説明するように、閾値テーブルを介して自動的に選択されるようにしてもよい。
【0032】
ドットゲインをマイナスにする場合、網点3の外部に隣接する境界画素10ではなく、図7に示したように、網点3内部の境界画素12に着目する。この境界画素12を中心として、9×9=81画素の領域13を設定し、この領域内で2値データが「1(発色)」となっている画素数をカウントする。例えば、図7(a)では、カウント値は5×5=25となる。また、(b)では、カウント値は5×6=30となる。(c)では、6×5=30となる。
【0033】
なお、境界画素12を判定するフィルタは、図3と同様のものを用い、2値データが「1(発色)」である注目画素21について、その8近傍に位置する検査画素22の2値データを調べ、いずれかの検査画素22の2値データが「0(非発色)」であれば、その注目画素21を網点内部の境界画素12と判定する。
【0034】
また、閾値テーブルとしては、図5の閾値テーブルと同じものを用いている。この閾値テーブルからの出力値の符号ビットを用いて、ドットゲインをプラスにするかマイナスにするかを切り替える。この切り替えは、印刷条件ごとに行えばよい。次に、境界画素12ごとに乱数を発生して、乱数と、それに対応する閾値とを比較し、乱数が閾値より小さければ、境界画素12の2値データを、元の「1(発色)」から「0(非発色)」に変更する。一方、乱数が閾値より大きいか等しければ、2値データを元の「1(発色)」のままとする。このようにして得た面積階調画像Bの例を、図8に示す。
【0035】
図8では、図1の網点3と比較して、網点内部の一部の境界画素12の2値データが「0(非発色)」に変更されて減少画素33となっており、その結果、網点3は修正された網点32となっている。このようにすることで、本印刷の網点が小さくなるマイナスのドットゲインも表現することができる。
【0036】
次に、上記で説明した画像形成方法を実行できる画像形成装置について説明する。ここで説明する画像形成装置は、RIPで生成された印刷用の面積階調画像Aを画像メモリにストアし、これを用いて、上記で説明した面積階調画像Bを生成する機能を有する。この面積階調画像Bは、B(Blue)、G(Green)、R(Red)出力等を備えた出力装置に送られ、色校正が実際に作成される。なお、出力装置の例としては、網点構造を表現でき、色調調整ができる装置であれば、特に制限されないが、例えば、ハロゲン化銀感光材料を露光・現像して色校正を作成する出力装置をあげることができる。
【0037】
図9は、上記のプラスまたはマイナスのドットゲインに対応して、面積階調画像Aを変更して面積階調画像Bを得ることができる画像形成装置の概略ハードウェア構成を示したブロック図である。以下、これに従って説明する。
【0038】
RIPで生成された本印刷用の面積階調画像Aが、画像形成装置の画像メモリ41に取り込まれて画像形成処理がスタートする。まず、面積率演算部50において、面積階調画像Aの全画素に対して、各画素を中心とした9×9=81画素の領域内において、2値データが「1(発色)」となっている画素数がカウントされる。これにより、すべての画素について画素ごとの面積率のデータが得られる。カウント値S1は、画素の順番に従って閾値テーブル51に送られる。ここで、閾値テーブル51は印刷物の印刷条件に従ってあらかじめ選択されている。
【0039】
閾値テーブル51では、面積率演算部50から送られた各カウント値に対応する閾値をそれぞれ読み出し、読み出した閾値S2を順次比較器53に送る。これにより、全画素に関して、順次面積率に対応する閾値が得られる。また、閾値テーブル51の符号ビットS3を、セレクタ44に送る。これにより、ドットゲインをプラスにするか、マイナスにするかが決定される。
【0040】
乱数発生器52では、閾値S2の全範囲と同じ範囲の乱数S4を常に発生して比較器53に送る。比較器53では、閾値S2と乱数S4とを比較して、乱数S4が閾値S2より小さいか同じ場合には「1」、乱数S4が閾値S2より大きい場合には「0」の制御信号S6を、AND回路60に送る。これにより、全画素に関して、画素ごとにその2値データを変更するか維持するが決定される。
【0041】
一方、外境界画素検出部42では、面積階調画像Aの各画素に対して、順次図3に示したフィルタを用いて網点境界に外部から隣接する境界画素であるか否かを検出した制御信号S7をセレクタ44に送る。これにより、図2に示したごとき境界画素10が特定される。また、内境界画素検出部43は、42と同様に、面積階調画像Aの各画素に対して順次、上記で説明した図3に類似のフィルタを用いて網点の内部から網点境界に隣接する境界画素であるか否かを検出し、その制御信号S8をセレクタ44に送る。これにより、図7に示したごとき境界画素12が特定される。
【0042】
セレクタ44では、閾値テーブル51から送られた符号ビットS3に従って、制御信号S7またはS8を選択して、いずれかを制御信号S9としてAND回路60に送る。これにより、プラスのドットゲインに対応して網点境界の外部に隣接して2値データが「1」となる画素を設けるか、または、マイナスのドットゲインに対応して網点境界の内部に隣接して2値データを「0」とする画素を設けるかが選択される。これにより、ドットゲインがマイナスでも対応可能となる。
【0043】
AND回路60では、セレクタ44から送られた制御信号S9と、比較器から送られた制御信号S6との論理和を求め、結果を制御信号S10としてEXOR回路61に送る。これにより、2値データを変更すべき境界画素が特定される。
【0044】
EXOR回路61では、面積階調画像Aの画素ごとの2値データと、AND回路60から送られた同じ画素に関する制御信号S10とから、図10に示した真理値表に従って排他的論理和を順次求める。これにより、網点境界の画素が増減された2値データの集合体70である面積階調画像Bが出力される。これで画像形成装置における処理が終了する。
【0045】
なお、閾値テーブル51、乱数発生器52、比較器53、AND回路60、EXOR回路61は、対象である境界画素の前記2値データの少なくとも一部を前記面積率に従って変更することで面積階調画像Bを形成する画像変更部を構成している。
【0046】
この2値データ70は、図示されない出力装置に送られ、他の色版の2値データと合わせることで、所定のルックアップテーブルからBGR出力が求められて色校正が作成される。なお、ルックアップテーブルは、印刷条件に応じて印刷版の単独刷りまたは複数の重ね刷りにより表現される網100%の色調ごとに、各色調を色校正で再現できるBGR出力のデータを格納したテーブルである。これらのBGR出力のデータがドットゲインの増減に対応して、印刷物の色調を再現できるように設定されていることは言うまでもない。
【0047】
このように画像形成装置を構成することで、本印刷機と同じ面積階調画像Aを用いて得た面積階調画像Bは、網点構造の変化が、本印刷機において印刷物の網%に応じて変化するドットゲインの場合と同様になり、その結果、色調も近似したものになる。また、CPUの処理負荷も問題ない範囲に収まり、印刷物では生じていないモアレが生じたりすることもない。
【0048】
次に、本印刷機と同じ面積階調画像Aを用いて、ドットゲインによる網点の大きさの変化は印刷物に合わせていないが、画素ごとのBGR出力を変更することにより、印刷物と同様な網点構造を有しながら、色調調整できる画像形成方法について説明する。考え方は上記の2値データを変更する方法と類似している。そのような画像形成装置の概略構造のブロック図を図11に示した。ここでは画像形成装置について、図9の装置との相違点を中心にして説明しながら、合わせて画像形成方法についても説明する。
【0049】
図11の装置構成は、図9の装置構成と比較すると、外境界画素検出部42とセレクタ44がなく、さらにEXOR回路61に代わってルックアップテーブル(LUT)62が設けられている点が異なる。その他の部分は、図9の画像形成装置と同様なので、ここでは、ルックアップテーブル62に関して主に説明する。なお、簡単のため面積階調画像Aがいずれか1版として説明するが、実際には複数版の面積階調画像Aを用いて、多値の面積階調画像Bを構成することになる。
【0050】
ところで、図11に外境界画素検出部42が無いのは、本印刷におけるドットゲインによる網点の大きさの変化を考慮せずに、色調を調整することでドットゲインによる色調変化に対応することにしたからである。そのため、境界画素を網点内部の境界画素だけとした。網点外部に隣接する境界画素の色調を調整して、網点の大きさの変化を考慮できるようにしても良いのは言うまでもない。
【0051】
ルックアップテーブル62は、通常のルックアップテーブルと同様に、印刷版の単独刷りまたは複数の重ね刷りにより表現される網100%の色調ごとに、BGR出力の標準的な出力データを格納している。さらに、ルックアップテーブル62は、境界画素について標準的な出力データからずれた色調整用のBGR出力データを合わせて格納している。この点が通常のルックアップテーブルと異なる。ここで、ルックアップテーブル62には、ドットゲインがプラスの場合に対応して、標準的なデータより画素の色調が濃くなるBGR出力データが調整用出力データとして格納されているものとする。なお、ドットゲインがマイナスの場合も含めるには、標準的なデータより画素の色調が薄くなるBGR出力データもルックアップテーブル62に格納し、閾値テーブルからの制御信号に基づいていずれかを切り替えて出力するようにすればよい。
【0052】
これら標準用のBGR出力データを出力するか、調整用のBGR出力データを出力するかの選択は、AND回路60からルックアップテーブル62に送られる制御信号S11に従って行う。つまり、注目画素が網点内部で網点境界に隣接する境界画素であり、かつ乱数発生器52で発生した乱数が、閾値テーブル51で読み出された閾値より小さいか等しい場合に、AND回路60を経由してルックアップテーブル62に、調整用データを読み出す旨の制御信号S11が送られる。これ以外の場合は、標準データを読み出す旨の制御信号S11が送られる。この制御信号に応じて、ルックアップテーブル62は、画素ごとに標準用と調整用とを切り分けて、対応するBGR出力データ71〜73を出力する。これらの出力データが、多値の面積階調画像Bの例である。このBGR出力データが図示されない出力装置に送られて色校正が作成される。
【0053】
なお、このような装置では、閾値テーブル51からルックアップテーブル62までが、境界画素の少なくとも一部について、前記2値データと前記求められた面積率とに従って多値の修正された面積階調画像Bを構成する画像変更部を構成することになる。画像変更部の構成は、これに限定されるものではなく、各種の変型が可能である。
【0054】
このような画像形成装置とすることで、印刷物と網点構造が近似し、しかも印刷物の網%に応じて色調が変わる面積階調画像Bが得られる。これにより得られる色校正は、印刷物のドットゲインと網%に対応して色調が変化するため、印刷物にきわめて近似した色校正となる。また、CPUの処理負荷も問題ない範囲に収まり、印刷物では生じていないモアレが生じたりすることもない。
【0055】
次に、図12は、色調を調整する画素を網点の境界画素に限定せず、網点内部の全部の画素を対象としてランダムに色調調整できるようにした画像形成装置の概略構成を示したブロック図である。この方法では網点の大きさそのものは、面積階調画像Aの網点の大きさから変化しないが、画像形成装置の構造が簡略化され、しかもドットゲインや網%の違いによる色調変化に対応した面積階調画像Bを得ることが可能となる。
【0056】
この画像形成装置では、図11の画像形成装置と比較して、内境界画素検出部43とAND回路60が無く、比較器53の出力が直接ルックアップテーブル62に送られる点が異なる。その他は図11の画像形成装置と同じである。比較器53の出力が直接ルックアップテーブル62に送られるようにすることで、網点内部の画素全部が、閾値と乱数による調整用と標準用のBGR出力データの切り替えの対象となる。
【0057】
この場合、網点の大きさは変化しないが、印刷物と同じ面積階調画像Aを用いて、類似した網点構造と色調の面積階調画像Bを得ることができる。その際、印刷物のドットゲインや網%に応じて画素の色調を変えることができるから、印刷物に近似した色校正を得ることができる。また、比較的簡単な装置構成とすることができ、CPUの処理負荷も問題ない範囲に収まる。また、印刷物では生じていないモアレが生じたりすることもない。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は以上に示された発明の具体的態様に限定されるものではない。例えば、画像形成装置は、各処理部がハードウェアで構成されたものには限定されず、各部に対応する処理ステップを有するコンピュータプログラムにより、ソフトウェアとして構成されたものでも良い。また、上記の画像形成装置の例では、すべての画素について面積率(カウント値)を求めているが、注目する境界画素をあらかじめ特定し、特定された境界画素についてのみ面積率(カウント値)を求めるようにしても良い。
【0059】
また、面積率は、上記のように各画素ごとのカウント値から求めた値をそのまま面積率として使用しても良いし、領域から得たカウント値に一定の演算を加えて修飾しても良い。例えば、各画素について得たカウント値を、一定範囲の周辺画素のカウント値を用いた一定の方式で平均化し、その平均化された値から求めた値を面積率としても良い。また、境界画素は、網点境界に直接隣接した画素の1列めだけを対象とするのではなく、2列めや3列めまでを対象としても良い。また、上記では、色調の変化は、標準用と調整用の二段階としているが、三段階以上としても良い。出力機はBGR出力ではなく、インクジェットなどの出力方式に応じてYMCK出力などでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】面積階調画像Aの一部を模式的に示した図である。
【図2】面積率のカウント方法を説明するための概念図である。
【図3】境界画素を検出するフィルタの概念図である。
【図4】境界画素ごとの面積率の状態を示した概念図である。
【図5】閾値テーブルの例を示した概念図である。
【図6】面積階調画像Bの一部を模式的に示した図である。
【図7】面積率の他のカウント方法を説明するための概念図である。
【図8】他の面積階調画像Bの一部を模式的に示した図である。
【図9】画像形成装置の概略構成例を示したブロック図である。
【図10】EXOR回路の真理値表である。
【図11】画像形成装置の他の概略構成例を示したブロック図である。
【図12】画像形成装置のさらに他の概略構成例を示したブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aを用いて、面積階調画像Bが形成される画像形成方法であって、前記面積階調画像Aの網点境界に位置する境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率が求められ、前記の略中心となった境界画素の少なくとも一部について、前記2値データが前記求められた面積率に従って変更されることにより、前記面積階調画像Bが形成されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記のあらかじめ定められた大きさが、前記網点が有する周期以下の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記境界画素が、前記網点の外部で前記網点境界に隣接する画素であり、前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率が増加するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率ごとにあらかじめ定めた閾値と、前記閾値の全範囲と同じ範囲に発生せしめた乱数とを対比し、前記対比の結果に応じて、前記面積率を増加させるものであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記境界画素が、前記網点の内部で前記網点境界に隣接する画素であり、前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率が減少するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記2値データの少なくとも一部の変更が、前記面積率ごとにあらかじめ定めた閾値と、前記閾値の全範囲と同じ範囲に発生せしめた乱数とを対比し、前記対比の結果に応じて、前記面積率を減少させるものであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aから面積階調画像Bを形成する画像形成装置であって、前記面積階調画像Aの網点境界に位置する境界画素を検出する境界画素検出部と、前記境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率を求める面積率演算部と、前記の略中心となった境界画素の前記2値データの少なくとも一部を前記面積率に従って変更して前記面積階調画像Bを形成する画像変更部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aを用いて、面積階調画像Bが形成される画像形成方法であって、前記面積階調画像Aの網点を構成する網点画素ごとに、各網点画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率が求められ、前記の略中心となった網点画素の少なくとも一部について、ルックアップテーブルを経由したRGB出力データが前記求められた面積率に従って変更されることにより、前記面積階調画像Bが形成されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
画素ごとの2値データの集合体である面積階調画像Aを用いて、面積階調画像Bが形成される画像形成方法であって、前記面積階調画像Aの網点境界に位置する境界画素ごとに、各境界画素を略中心とするあらかじめ定められた大きさの領域内において前記網点が占める面積率が求められ、前記の略中心となった境界画素の少なくとも一部について、ルックアップテーブルを経由したRGB出力データが前記求められた面積率に従って変更されることにより、前記面積階調画像Bが形成されることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−33064(P2006−33064A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204750(P2004−204750)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】