説明

画像形成装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】変倍処理を行っても、ノイズ感や画像荒れの発生を抑えた再現性のよい画像を提供できるようにする。
【解決手段】画像形成装置1の変倍処理部142は、入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素レベルを変倍率に応じた分割数で分割し、当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、変倍率に応じた画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力されるデジタル画像信号に基づいて、複数の発光ダイオード素子(Light Emitting Diode:以下LEDという)がライン状に配置されたLEDヘッド書き込み光学系により感光体ドラムに静電潜像を形成し、その静電潜像にトナーを付着して形成されたトナー像を紙などの記録媒体に転写させて定着させることで画像を形成する画像形成装置がある。
【0003】
この画像形成装置においては、片面に画像を形成した際に、定着処理による熱収縮のため当該記録媒体が収縮することが知られている。この熱収縮による画像サイズの縮小率は、通常0.5%以下と小さい値であり、主走査方向においては画素単位レベルの微細なものである。
【0004】
このため、上述した画像形成装置においては、使用状況に応じて画素単位の微小な変倍処理を施す必要があった。特に両面に画像形成を行う場合は、熱収縮対策として微細な変倍処理を行い、表面に対して裏面の画像を微小縮小して画像形成する必要がある。
【0005】
そこで、例えば微小な拡大処理としては、図14(a)に示すように、従来、所定の画素間隔で隣接画素から信号値の補間を行って追加画素を生成することで、微小拡大を行う技術が知られている。また、微小な縮小処理としては、図14(b)に示すように、所定の画素間隔で画素を間引くことで、微小縮小を行う技術が知られている。
【0006】
また、図15(a)、(b)に示すように、画素を追加する位置や削除する位置をランダムにすることで、画素を追加又は削除した位置が線状に見えることを防止する技術も知られている。
【0007】
また、例えば、特許文献1には、LEDヘッド書き込み光学系を備えた画像形成装置で画素を間引いて縮小画像を形成する際に、画素を間引くだけでなくその隣接画素を中間調に調整することで再現性を良好にする技術が開示されている。
【0008】
また、例えば、特許文献2には、主走査方向に隣接する画素の平均を演算し、その演算結果と隣接する画素の多値データとを変換する密度に応じて出力することで画素数を増減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−207950号公報
【特許文献2】特開平10−28223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ライン状に配置されたLEDヘッド書き込み光学系を備えた画像形成装置においては、画像情報である多値デジタル画像信号に基づいて書き込み素子を駆動させることで、その多値デジタル画像信号に応じた濃さの画素を記録媒体に形成して画像形成を行う構成である。このため、レーザで書き込みを行う場合のように画素幅の調整を行うことはできず、微小変倍は画素を追加又は削除することでしか行うことはできない。
【0011】
しかし、上述の図14(a)、(b)に記載の技術では、画素を追加又は削除した位置が線状に見えてしまうという問題があった。図15(a)、(b)に記載の技術では、画素を追加又は削除した位置が線状に見えることは回避できるが、特定のパターンが出現することがあり、また、全体的にがさついたノイズがかった画像となってしまうという問題があった。
【0012】
また、特許文献1に記載の技術では、隣接画素の中間調に固定的に調整されてしまうため、微小変倍して画像形成した際などにおいて十分な再現性を得られるものではなかった
【0013】
本発明の課題は、変倍処理を行っても、ノイズ感や画像荒れの発生を抑えた再現性のよい画像を提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
入力された多値デジタル画像信号に基づいて画像形成を行う画像形成装置において、
前記入力された多値デジタル画像信号を走査ライン単位で変倍処理する変倍処理部であって、前記入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素信号値を変倍率に応じた分割数で分割し、当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、前記変倍率に応じた画像を生成する変倍処理部を備える。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記分割した画素信号値の一部のシフトにより増加又は減少した各画素の画素信号値のレベルを補正する補正処理部を備える。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
入力された多値デジタル画像信号に基づいて電子写真方式で画像形成を行う画像形成部を備え、
前記画像形成部は、前記変倍された画像に基づいて露光素子を発光させることにより感光体上に潜像を形成するプリントヘッドを備える。
【0017】
請求項4に記載の発明は、
入力された多値デジタル画像信号を走査ライン単位で画像処理する画像処理方法であって、
前記入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素信号値を変倍率に応じた分割数で分割する工程と、
当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、前記変倍率に応じた画像を生成する工程と、
を含む。
【0018】
請求項5に記載の発明のプログラムは、
入力された多値デジタル画像信号を走査ライン単位で画像処理するコンピュータを、
前記入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素信号値を変倍率に応じた分割数で分割し、当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、前記変倍率に応じた画像を生成する変倍処理部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、変倍処理を行っても、ノイズ感や画像荒れの発生を抑えた再現性のよい画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態における画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】図1の画像処理部の要部構成を示す図である。
【図3】図1の画像形成部の断面構成を示す図である。
【図4】図3の書き込みユニットの要部構成を示す図である。
【図5】図2の変倍処理部により実行される変倍処理を示すフローチャートである。
【図6】図5のステップT3において実行される拡大処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の拡大処理の処理内容を模式的に示す図である。
【図8】図5のステップT4において実行される縮小処理を示すフローチャートである。
【図9】図8の縮小処理の処理内容を模式的に示す図である。
【図10】第2の実施の形態における拡大処理Bを示すフローチャートである。
【図11】図10のステップA103で実行される第2の拡大処理を示すフローチャートである。
【図12】図11の第2の拡大処理の処理内容を模式的に示す図である。
【図13】変倍処理の処理方向を示す図である。
【図14】(a)は、従来技術における拡大処理の内容を模式的に示す図であり、(b)は、従来技術における縮小処理の内容を模式的に示す図である。
【図15】(a)は、従来技術における他の拡大処理の内容を模式的に示す図であり、(b)は、従来技術における他の縮小処理の内容を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
以下、図を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
【0022】
図1に、本実施の形態における画像形成装置1内部の構成例を示す。図1に示すように、画像形成装置1は、CPU101、操作表示部102、画像読取部103、画像処理部104、画像形成部105、RAM106、記憶部107、通信制御部108等を備えて構成され、各部はバス109により接続されている。
【0023】
CPU(Central Processing Unit)は、操作表示部102の操作により、記憶部107に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、画像形成装置1各部の動作を集中制御する。
【0024】
操作表示部102は、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、CPU101から入力される表示信号の指示に従って、各種操作画面や状態表示等の各種画面の表示を行う。LCDの表示画面上は、透明電極を格子状に配置して構成された感圧式(抵抗膜圧式)のタッチパネルに覆われており、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号を操作信号としてCPU101に出力する。
【0025】
例えば、操作表示部102は、画像の変倍率X(拡大率、縮小率)を入力可能に構成されている。この変倍率Xは、例えば、定着時の熱収縮などによる表面と裏面とに形成する画像の大きさの微妙な相違を調整するために設定されるものであり、主として拡大率1%〜縮小率1%の範囲で設定される。設定された変倍率Xは、CPU101に出力され、CPU101により記憶部107に記憶される。
【0026】
画像読取部103は、光源、ミラー、CCD(Charge Coupled Device)、A/D変換器、シェーディング補正回路等により構成される。画像読取部103は、光源から原稿へ照明走査した光の反射光を結像して光電変換してアナログ画像信号を取得し、このアナログ信号をA/D変換及びシェーディング補正することによりR、G、Bの色成分のデジタル画像信号に変換し、走査ライン単位で画像処理部104に出力する。
【0027】
画像処理部104は、図2に示すように、色変換部141、変倍処理部142、画像メモリ143等を備えて構成される。
色変換部141は、R、G、Bの色成分の画像信号を3次元色情報変換テーブルによってY、M、C、Kの各色の多値デジタル画像信号Dy、Dm、Dc、Dkに変換する色変換処理を行い、画像メモリ143の入力画像メモリ143aに一時的に格納する。
変倍処理部142は、入力画像メモリ143aに格納された多値デジタル画像信号Dy、Dm、Dc、Dkに変倍処理を施して多値デジタル画像信号Dy´、Dm´、Dc´、Dk´を生成し、画像形成部105に出力する。具体的には、書込みユニット40YのLEDプリントヘッド401Y(図4参照)に走査ライン単位かつ画素単位に多値デジタル画像信号Dy´を供給する。同様に、書込みユニット40MのLEDプリントヘッド401Mに走査ライン単位かつ画素単位に多値デジタル画像信号Dm´を供給する。同様に、書込みユニット40CのLEDプリントヘッド401Cに走査ライン単位かつ画素単位に多値デジタル画像信号Dc´を供給する。同様に、書込みユニット40KのLEDプリントヘッド401Kに走査ライン単位かつ画素単位に多値デジタル画像信号Dk´を供給する。
なお、本実施の形態において、色変換部141、変倍処理部142は、それぞれCPU101と記憶部107に記憶されている色変換処理プログラム、変倍処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現されることとするが、専用のハードウエアにより実現されることとしてもよい。
【0028】
画像形成部105は、画像処理部104から入力された多値デジタル画像信号Dy´、Dm´、Dc´、Dk´に基づいて、電子写真プロセスにより転写紙上にトナー画像を形成して出力する。
図3に、画像形成部105の要部構成を示す。図3に示すように、画像形成部105は、感光体ドラムに画像の潜像を書込む書込みユニット40Y、40M、40C、40Kと、Y、M、C、Kの各色のトナー画像を形成する感光体ユニット50Y、50M、50C、50Kと、ローラ57の回転自在に感光体ユニット50Y、50M、50C、50Kで形成されたトナー画像を転写紙に搬送する中間転写体としての中間転写ベルト56と、転写紙を中間転写ベルト56に形成されたトナー画像と同期をとって2次転写ローラ59に搬送するレジストローラ58と、転写紙に中間転写ベルト56上に形成されたトナー画像を転写する2次転写ローラ59と、転写紙にトナー画像を定着させる定着ユニット60と、転写紙を排紙する排紙ローラ61と、を含んで構成されている。
【0029】
書込みユニット40Yは、図4に示すように、LEDプリントヘッド401Y、屈折率分布型ロッドレンズ402Y、図示しない駆動回路等を備えて構成されている。LEDプリントヘッド401Yは、感光体ユニット50Yの感光体ドラム51Yに対向するように配設されている。LEDプリントヘッド401Yは、感光体ドラム51Yの回転方向(副走査方向)と垂直方向、即ち、主走査方向に一列に配列された複数のLED素子41Yを有している。LEDプリントヘッド401Yは、変倍処理部142から供給される1ライン分の多値デジタル画像信号Dy´に基づいて、1ライン分のLED素子41Y群を一度に発光させ、この光を感光体ドラム51Yに照射することによって感光体ドラム51Yの表面に1ラインずつ潜像を書き込む。書込みユニット40M、40C、40Kも同様の構成である。
【0030】
感光体ユニット50Yは、感光体ドラム51Yと、現像器52Yと、帯電器53Yと、クリーナ54Yと、1次転写ローラ55Yとを備えて構成されている。感光体ユニット50M、50C、50Kも同様である。
【0031】
ここで、画像形成部105における画像形成について説明する。まず、感光体ユニット50Yにおいて、感光体ドラム51Yが回転し、その表面が帯電器53Yにより帯電される。その帯電部分には、書込みユニット40YのLED素子群41Yの発光により多値デジタル画像信号Dy´に基づく潜像が書き込まれる。その潜像部分に現像器52Yによりイエローのトナーが付着されると、イエローのトナー画像が形成される。このトナー画像は1次転写ローラ55Yの圧接により中間転写ベルト56に転写される(1次転写)。トナー画像は、出力対象の画像データに対応するイエローの画像となる。転写されなかったトナーは、クリーナ54Yにより除去される。
【0032】
感光体ユニット50M、50C、50Kについても同様に、マゼンダのトナー画像、シアンのトナー画像、黒のトナー画像がそれぞれ同様に形成及び転写される。ローラ57、1次転写ローラ55Y、55M、55C、55K、2次転写ローラ59の回転により、中間転写ベルト56も回動され、YMCKのトナー画像が中間転写ベルト56上に順に重ねられて転写される。また、給紙ローラ68A〜68Cの何れかの回動により給紙トレイ66A〜66Cの何れかから転写紙が1枚ずつ搬送され、レジストローラ58の回転により2次転写ローラ59に搬送される。
【0033】
2次転写ローラ59の圧接部を転写紙が通過することにより、中間転写ベルト56上のYMCKのトナー画像が転写紙に転写される(2次転写)。YMCKのトナー画像が転写された転写紙は、定着ユニット60を通過する。定着ユニット60の加圧及び加熱により、YMCKのトナー画像が転写紙上に定着されてカラーのトナー画像が形成される。画像形成された転写紙は、排紙ローラ61により排出される。
【0034】
転写紙への画像形成後、ベルトクリーニング62により、中間転写ベルト56上に付着したトナーが除去される。また、2次転写ローラ59に対して、図示しない電源からプラス極性の電流及びマイナス極性の電流を交互に切り換えて所定時間流すことにより、2次転写ローラ59に付着したトナーが中間転写ベルト56に転写され、2次転写ローラ59のクリーニングが行われる。
【0035】
上述した画像形成部105の各部は、CPU101からの制御により図示しない各種モータを介して駆動され、各部の動作タイミングは、CPU101により制御される。
【0036】
図1に戻り、RAM106は、CPU101により実行制御される各種処理において、記憶部107から読み出されたプログラム、入力、若しくは出力データ及びパラメータ等の一時的な格納領域となる。
【0037】
記憶部107は、不揮発性の半導体メモリ等により構成され、画像形成装置1に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な、画像形成装置1の動作を制御するための各種処理プログラム、例えば変倍処理プログラム等を記憶する。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU101は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。また、記憶部107は、CPU101からの指示に応じて、操作表示部102から入力された設定値(例えば、変倍率X(拡大率又は縮小率))等を記憶する。
【0038】
通信制御部108は、LANアダプタやルータ等によって構成され、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して外部の情報端末を始めとする各装置とのデータ送受信を行う。
【0039】
次に、変倍処理部142により実行される変倍処理について詳細に説明する。
変倍処理部142は、1ライン分のデジタル画像信号Dy、Dm、Dc、Dkのそれぞれを入力画像として図5に示す変倍処理を行う。この変倍処理は、主として画素単位の微小な変倍を行う処理である。
変倍処理では、図7、図9に示すように、入力画像の各画素の画素信号値(画素レベルと呼ぶ)を変倍率Xに応じた分割数N(図7、図9では10)で分割し、分割された画素レベルの一部を順次一定方向隣の画素(隣接画素)にシフトする処理を、入力画像の一端である第1画素から他端に向かって行う。このように分割された画素レベルの一部を隣の画素にシフトしていくと、分割数に応じた周期で1画素が追加又は削除され、他端に達したところで略変倍率Xに応じた出力画像が得られる。
【0040】
まず、記憶部107に記憶されている変倍率X(拡大率又は縮小率)が取得され(ステップT1)、取得された変倍率Xが拡大率であるか縮小率であるかが判断される(ステップT2)。拡大率であると判断されると(ステップT2:YES)、拡大処理が実行される(ステップT3)。縮小率であると判断されると(ステップT2;NO)、縮小処理が実行される(ステップT4)。
【0041】
図6は、ステップT3において変倍処理部142により実行される拡大処理を示すフローチャートである。
拡大処理においては、変倍率Xに基づいて算出される分割数Nに応じた所定の画素数(K)毎のループ処理(ステップT103〜T110)が実行され、順次一定方向隣の画素に画素レベルの一部が追加(シフト)される。シフトされる画素レベルが1画素分となったところで追加画素を追加するための例外処理が行われる(ステップT112〜T116)。そして、次のループが実行される。この処理が、入力画像の一端から他端に向かって順次注目画素Pを移動させながら実行される。以下、拡大処理の流れについて詳細に説明する。
【0042】
まず、取得された変倍率Xに基づいて、画素レベルの分割数Nが算出される(ステップT101)。具体的には、(式1)により算出される。
N=100/X (式1)
(式1)は、分割数Nの画素周期毎に1画素を追加すると変倍率Xの拡大が行えるようにNを求めるための算出式である。例えば、10%の拡大を行う場合、100/10=10画素周期で1画素を追加すれば、10%の拡大ができる。
【0043】
次いで、変倍処理で使用される各値の初期設定が行われる(ステップT102)。即ち、一時メモリ143bの変数Yに1が設定され、変数M及びシフト量Psに0が設定され、変数KにNが設定される。
【0044】
次いで、入力画像メモリ143aに格納されている入力画像の同一ライン上に未処理の画素があるか否かが判断され、未処理の画素があると判断されると(ステップT103;YES)、直前に注目画素Pとして処理された画素の処理方向側隣にある未処理の画素(処理開始時は開始地点の画素)が注目画素Pとして設定され、その画素レベルPi(入力画素レベルPi)が画像メモリ143の入力画像メモリ143aから読み出される(ステップT104)。
【0045】
次いで、シフト量Psが一時メモリ143bから読み出され(ステップT105)、注目画素Pの入力画素レベルPiにシフト量Psが加算され、シフト後の画素レベル(中間生成画素レベルとよぶ)Prが取得される(ステップT106)。中間生成画素レベルPrは一時メモリ143bに格納される。
【0046】
次いで、中間生成画素レベルPrが一時メモリ領域143bから読み出され、下記の(式2)により注目画素Pの出力画素レベルPoが算出される(ステップT107)。
Po=Pr×{(N−1)/(N+M)} (式2)
算出された出力画素レベルPoは、出力画像メモリ143cの所定のアドレスに格納される(ステップT108)。所定のアドレスとは、直前に画素レベルが格納されたアドレスの次のアドレスである。
【0047】
次いで、注目画素Pから処理方向側隣の画素にシフトする画素レベル、即ち、シフト量Psが下記の(式3)により算出される(ステップT109)。
Ps=Pr×{Y/(N+M)} (式3)
算出されたシフト量Psは、一時メモリ143bに格納される。
【0048】
次いで、変数Kが1デクリメントされ、変数Y、Mが1インクリメントされる(ステップT110)。そして、K=0であるか否かが判断される(ステップT111)。K=0ではないと判断されると(ステップT111;NO)、処理はステップT103に戻る。
【0049】
K=0であると判断されると(ステップT111;YES)、シフト量Psが一時メモリ143bから読み出される(ステップT112)。ここで読み出されるシフト量Psは、入力画像の一画素分の画素レベルに相当するので、下記の(式4)により追加する画素の出力画素レベルPoが算出される(ステップT113)。
Po=Ps×{(N−1)/N} (式4)
算出された出力画素レベルPoは、追加画素の出力画素レベルPoとして、出力画像メモリ143cの所定のアドレスに格納される(ステップT114)。所定のアドレスとは、直前に画素レベルが格納されたアドレスの次のアドレスである。
【0050】
次いで、追加画素から処理方向側隣の画素にシフトするシフト量Ps=Ps×(1/N)が算出され、一時メモリ143bに格納される(ステップT115)。そして、変数Y=2、変数M=1、変数K=N−1が設定され(ステップT116)、処理はステップT103に戻る。
【0051】
ステップT103において、入力画像の同一ライン上に未処理の画素がないと判断されると(ステップT103;NO)、変倍率Xに応じたレベル補正が行われる(ステップT116)。拡大処理では、隣接画素間の画像の連続性を保ったまま拡大を行うことができるが、出力画素レベルPoのレンジ(とり得る最小値〜最大値の範囲)は入力画像の画素レベルPiのレンジより変倍率Xに応じて低くなる。例えば、10%の拡大処理では、出力画素レベルPoが入力画素レベルPiと比べて90%に減少する。そこで、変倍率Xに応じたレベル補正を行うことによりこの画素レベルの減少分をもとに戻す。具体的には、各画素の出力画素レベルPoに{N/(N−1)}が乗算される。
【0052】
なお、一般的に、熱収縮対策としての変倍処理であれば拡大率は1%以下であるので、補正量も1%以下となる。そのため、この場合は、画質への影響がわずかであるので、プリント物の用途にもよるがレベル補正を行う必要はない場合が多い。そこで、操作表示部102により、レベル補正を行うか否かをユーザが設定可能な構成としてもよい。
レベル補正が終了すると、拡大処理は終了する。
【0053】
図7は、変倍率X(拡大率)が10%、1ラインの画素数が100である場合の拡大処理を模式的に示す図である。図7の説明においては、第n画素をPn、第n画素の入力画素レベルをPin、中間生成画素レベルをPrn、出力画素レベルをPonとして説明する。
1ラインの画素数が100で変倍率が10%の場合、10画素周期で画素を追加すると10%の拡大となるので分割数は10とされる。
まず、第1画素P1の入力画素レベルPi1が分割され、その1/10が第2画素P2にシフトされる。第1画素P1の出力画素レベルPo1は、入力画素レベルPi1からシフト分を差し引いた9/10に変換される。
第2画素P2の画素レベルは、第1画素P1からのシフト量1/10を加えるとPi2+Pi1×1/10(中間生成画素レベルPr2)となる。この中間生成画素レベルPr2は第1画素P1から1/10分の画素レベルを受け取っているので、分割数は11とされ、Pr2×9/11が第2画素P2の出力画素レベルPo2とされる。これにより、画素間で画素レベルのレンジ(とり得る最小値〜最大値の範囲)を揃えることができる。Pr2×2/11分のレベルは、第3画素にシフトされる。
以上の処理を注目画素を順次隣にずらしながら行うと、第10画素P10からのシフト量Pr10×10/19は1画素分となる。そこで、Pr10×10/19の画素が第10+1番目に追加される。この10+1番目の画素の追加によって、10%の変倍が完成する。
次いで、第10+1画素の入力画像レベルPi10+1が10で分割され、その1/10が第11画素P11にシフトされる。第11画素P11の出力画素レベルPo11は、入力画素レベルPi11からシフト分を差し引いた9/10に変換される。
以下、入力画像の他端に達するまで上記処理を繰り返すと、走査ライン方向に約10%拡大された出力画像が得られることとなる。
【0054】
上記拡大処理では、変倍率Xに応じた分割数で画素レベルを分割し、分割した画素レベルの一部を一定方向に隣の画素にシフトしていくことで、変倍率Xに応じた画素周期で追加画素を生成し、この追加画素により略指定された変倍率Xで入力画像が拡大される。従って、隣接画素間のデータの連続性を確保して変倍を行うことができるため、追加箇所へのパターンの発生やノイズ感、画像荒れの発生を抑えた再現性のよい画像を出力することが可能となる。
【0055】
図8は、図5のステップT4において変倍処理部142により実行される縮小処理を示すフローチャートである。
縮小処理においては、変倍率Xに基づいて算出される分割数Nに応じた所定の画素数(K)毎のループ処理(ステップT203〜T210)が実行され、順次一定方向側の隣にある画素から画素レベルの一部がシフトされる。シフト量が1画素分となったところで、シフト元の画素が削除される(ステップT212)。そして、次のループが実行される。この処理が、入力画像の一端から他端に向かって順次注目画素を移動させながら実行される。以下、縮小処理の流れについて詳細に説明する。
【0056】
まず、取得された変倍率Xに基づいて、画素レベルの分割数Nが算出される(ステップT201)。具体的には、下記の(式11)により算出される。
N=100/X (式11)
(式11)によれば、分割数Nの画素周期毎に1画素を削除すると変倍率Xの縮小が行えるようにNを算出することができる。例えば、10%の縮小を行う場合、100/10=10画素周期で1画素を追加すれば、10%の縮小を行うことができる。
【0057】
次いで、縮小処理で使用される変数の初期設定が行われる(ステップT202)。具体的には、変数Yに1が設定され、変数Mに2が設定され、変数KにN−1が設定される。
【0058】
次いで、入力画像メモリ143aに格納されている入力画像の同一ライン上に未処理の画素があるか否かが判断され、未処理の画素があると判断されると(ステップT203;YES)、直前に処理された注目画素Pの処理方向側隣にある未処理の画素(処理開始時は開始地点の画素)が注目画素Pとして設定され、その画素レベル(入力画素レベルPi)が画像メモリ143の入力画像メモリ143aから読み出される(ステップT204)。
【0059】
次いで、注目画素Pの中間生成画素レベルPrが(式12)により算出される(ステップT205)。
Pr=Pi×{(N−Y)/N} (式12)
中間生成画素レベルPrは一時メモリ143bに格納される。
【0060】
次いで、注目画素Pの隣の画素P+(処理方向側隣の画素。隣接画素P+と呼ぶ)の画素レベルPi+が画像メモリ143の入力画像メモリ143aから読み出される(ステップT206)。そして、下記の(式13)により、隣接画素P+から注目画素Pへの画素レベルのシフト量Psが算出される(ステップT207)。
Ps=(Pi+)×(M/N) (式13)
算出されたシフト量Psは、一時メモリ143bに格納される。
【0061】
次いで、中間生成画素レベルPrとシフト量Psが一時メモリ143bから読み出され、注目画素Pの出力画素レベルPoが下記の(式14)により算出される(ステップT208)。
Po=Pr+Ps (式14)
算出された出力画素レベルPoは、出力画像メモリ143cの所定のアドレスに格納される(ステップT209)。所定のアドレスとは、直前に画素レベルが格納されたアドレスの次のアドレスである。
【0062】
次いで、変数Kが1デクリメントされ、変数Y、Mが1インクリメントされる(ステップT210)。そして、K=0であるか否かが判断される(ステップT211)。K=0であると判断されると(ステップT211;YES)、隣接画素P+の画素が削除される(ステップT212)。ここで、ステップT211における判断においてK=0のとき、ステップT207で算出されたシフト量Psは隣接画素P+の1画素分に相当する。即ち、隣接画素P+の画素レベルPi+は、全て注目画素Pにシフトされている。そこで、隣接画素P+の画素は削除される。削除後、処理はステップT202に戻る。
【0063】
一方、ステップT211において、K=0ではないと判断されると(ステップT211;NO)、処理はステップT203に移行し、ステップT203〜ステップT211の処理が繰り返し実行される。ステップT203において、入力画像の同一ライン上に未処理の画素がないと判断されると(ステップT203;NO)、変倍率Xに応じたレベル補正が行われる(ステップT204)。上述の縮小処理では、隣接画素間の画像の連続性を保ったまま縮小を行うことができるが、変倍率Xに応じて出力画素レベルPoのレンジが入力画素レベルPiのレンジより高くなる。例えば、10%の縮小処理では、110%に増加する。そこで、変倍率Xに応じたレベル補正を行うことによりこの画素レベルの増加分をもとに戻す。具体的には、各画素の出力画素レベルPoにN/(N+1)が乗算される。また、最後に処理される画素(終端画素)についてはシフトされる画素レベルがないため、必要なレベルシフト分が補充される。
なお、一般的に、熱収縮対策としての変倍処理であれば縮小率は1%以下であるので、補正量も1%以下となる。そのため、この場合は、画質への影響はわずかであるので、プリント物の用途にもよるが、終端画素を除きレベル補正を行う必要はない場合が多い。そこで、操作表示部102により、レベル補正を行うか否かをユーザが設定可能な構成としてもよい。
レベル補正が終了すると、縮小処理は終了する。
【0064】
図9は、変倍率X(縮小率)が10%、1ラインの画素数が100である場合の拡大処理を模式的に示す図である。図9の説明においては、第n画素をPn、第n画素の入力画素レベルをPin、中間生成画素レベルをPrn、出力画素レベルをPonとして説明する。
1ラインの画素数が100で変倍率が10%の場合、10画素周期で画素を削除すると10%の縮小となるので分割数は10とされる。
まず、第1画素P1の入力画素レベルPi1が分割数10で分割され、その9/10に、第2画素P2からのシフト量(第2画素P2の入力画素レベルPi2×2/10)が加算される。この第2画素P2からのシフト量が加算された画素レベルが第1画素P1の出力画素レベルPo1とされる。
第2画素P2の画素レベルは、第1画素P1にその2/10をシフトしているので、Pi2×8/10となる(中間生成画素レベルPr2)。この中間生成画素レベルPr2に、第3画素P3からのシフト量(第3画素P3の入力画素レベルPi3×3/10)が加算され、第2画素の出力画素レベルPo2とされる。
以上の処理を注目画素を順次隣にずらしながら行うと、第9画素P9には第10画素P10の10/10、即ち、全ての画素レベルがシフトされる。そこで、第10画素P10は削除される。この第10画素の削除によって、10%の縮小が完成する。
入力画像の他端に達するまで上記処理を繰り返すと、走査ライン方向に10%縮小された出力画像が得られることとなる。
【0065】
上記縮小処理では、変倍率Xに応じた分割数で画素レベルを分割し、分割した画素レベルの一部を順次一定方向に隣の画素にシフトしていく。これを繰り返すと、隣の画素へのシフト量が1画素分となる画素が分割数毎に現れる。そこで、この画素を削除することで、変倍率Xで入力画像を縮小することができる。この縮小処理では、分割した画素レベルの一部を一定方向に隣の画素にシフトしていくことで、隣接画素間のデータの連続性が確保される。削除される画素の画素レベルは隣の画素へ移行されているので、削除によるパターンの発生やノイズ感、画像荒れの発生を抑えた再現性のよい画像を出力することが可能となる。
なお、削除された画素の一方の隣の画素と他方の隣の画素の間では、画素レベルのシフトが行われないが、削除された画素の画素レベルは一方の隣の画素に移行されているため、他方の隣の画素とのデータの連続性は保たれる。
【0066】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態における画像形成装置1の構成は、第1の実施の形態と同様であるので説明を援用する。
【0067】
第2の実施の形態においては、画像処理部104の変倍処理部142において実行される変倍処理のうち、拡大処理のフローが異なる。ここで、第1の実施の形態で説明した拡大処理(第1の拡大処理とする)においては、倍率に誤差が生じる。この誤差は、拡大率が微小であれば問題はないが、拡大率が一定以上大きくなると、その誤差は無視できないものとなる。そこで、第2の実施の形態においては、変倍率Xが予め定められた閾値(ここでは1%とする)以上である場合、第1の実施の形態の拡大処理とは異なる処理(第2の拡大処理)を実行し、拡大率の誤差ない出力画像を生成する。
【0068】
図10に、第2の実施の形態における変倍処理部142における拡大処理(拡大処理Bとする)のフローチャートを示す。
まず、変倍率X(拡大率)が1%以上であるか否かが判断される(ステップA101)。変倍率Xが1%以上ではないと判断されると(ステップA101;NO)、第1の拡大処理が実行される(ステップA102)。第1の拡大処理は、第1の実施の形態において図6を用いて説明したものと同じ処理であるので説明を援用する。変倍率Xが1%以上であると判断されると(ステップA101;YES)、第2の拡大処理が実行される(ステップA102)。
【0069】
図11に、第2の拡大処理のフローチャートを示す。以下、第2の拡大処理について説明する。
第2の拡大処理においては、変倍率Xに基づいて算出される分割数Nの画素数(K)毎のループ処理(ステップT303〜T310)が実行され、順次一定方向隣の画素に画素レベルの一部がシフトされる。シフトされる画素が1画素分となったところで追加画素を追加するための例外処理が行われる(ステップT312〜T314)。そして、次のループが実行される。この処理が、入力画像の一端から他端に向かって順次注目画素を移動させながら実行される。以下、第2の拡大処理の流れについて詳細に説明する。
【0070】
まず、取得された変倍率Xに基づいて、画素レベルの分割数Nが算出される(ステップT301)。具体的には、(式21)により算出される。
N=100/X (式21)
(式21)によれば、分割数Nの画素周期毎に1画素を追加すると変倍率Xの拡大が行えるようにNを算出することができる。例えば、10%の拡大を行う場合、100/10=10画素周期で1画素を追加すれば、10%の拡大ができる。
【0071】
次いで、拡大処理で使用される各値の初期設定が行われる(ステップT302)。即ち、一時メモリ143bの変数Yに1が設定され、変数Mに0が設定され、変数KにNが設定され、シフト量Psに0が設定される。
【0072】
次いで、入力画像メモリ143aに格納されている入力画像の同一ライン上に未処理の画素があるか否かが判断され、未処理の画素があると判断されると(ステップT303;YES)、直前に注目画素Pとして処理された画素の処理方向側隣にある未処理の画素(処理開始地点の画素)が注目画素Pとして設定され、その画素レベルPi(入力画素レベルPi)が画像メモリ143の入力画像メモリ143aから読み出される(ステップT304)。
【0073】
次いで、シフト量Psが一時メモリ143bから読み出され(ステップT305)、注目画素Pの入力画素レベルPiにシフト量Psが加算され、シフト後の画素レベル(中間生成画素レベルとよぶ)Prが取得される(ステップT306)。中間生成画素レベルPrは一時メモリ143bに格納される。
【0074】
次いで、中間生成画素レベルPrが一時メモリ143bから読み出され、下記の(式22)により注目画素Pの出力画素レベルPoが算出される(ステップT307)。
Po=Pr×{(N−1)/(N+M)} (式22)
算出された出力画素レベルPoは、出力画像メモリ143cの所定のアドレスに格納される(ステップT308)。所定のアドレスとは、直前に画素レベルが格納されたアドレスの次のアドレスである。
【0075】
次いで、注目画像Pから処理方向側隣の画素にシフトする画素レベル、即ち、シフト量Psが下記の(式23)により算出される(ステップT309)。
Ps=Pr×{Y/(N+M)} (式23)
算出されたシフト量Psは、一時メモリ143bに格納される。
【0076】
次いで、変数Kが1デクリメントされ、変数Y、Mが1インクリメントされる(ステップT310)。そして、K=0であるか否かが判断される(ステップT311)。K=0ではないと判断されると(ステップT311;NO)、処理はステップT302に戻る。
【0077】
K=0であると判断されると(ステップT311;YES)、シフト量Psが一時メモリ143bから読み出され(ステップT312)、下記の(式24)により追加する画素の出力画素レベルPoが算出される(ステップT313)。
Po=Ps×{(N−1)/N} (式24)
算出された出力画素レベルPoは、追加画素の出力画素レベルとして、出力画像メモリ143cの所定のアドレスに格納され(ステップT314)、処理はステップT302に戻る。所定のアドレスとは、直前に画素レベルが格納されたアドレスの次のアドレスである。
【0078】
入力画像の他端の画素までの処理が終了し、ステップT303において、同一ライン上に未処理の画素がないと判断されると(ステップT303;NO)、変倍率Xに応じたレベル補正が行われる(ステップT315)。ここで、上述の第2の拡大処理では、変倍率Xに応じて出力画素レベルのレンジは入力画素レベルのレンジより低くなる。例えば、10%の拡大処理では、90%に減少する。そこで、変倍率Xに応じたレベル補正を行うことによりこの画素レベルの低減分をもとに戻す。具体的には、各画素の出力画素レベルにN/(N−1)が乗算される。
レベル補正が終了すると、第2の拡大処理は終了する。
【0079】
図12は、変倍率Xが10%、主走査方向の画素数が100である場合の第2の拡大処理を模式的に示す図である。図11の説明においては、第n画素をPn、第n画素の入力画素レベルをPin、中間生成画素レベルをPrn、出力画素レベルをPonとして説明する。
1ラインの画素数が100で変倍率Xが10%の場合、10画素周期で追加画素が現れると10%の拡大処理となるので分割数Nは10とされる。
まず、第1画素P1の入力画素レベルPi1が分割数10で分割され、その1/10が第2画素P2にシフトされる。第1画素P1の出力画素レベルPo1は、入力画素レベルPi1からシフト分を差し引いた9/10に変換される。
第2画素P2の画素レベルは、第1画素P1からのシフト量1/10を加えるとPi2+Pi1×1/10(中間生成画素レベルPr2)となる。この中間生成画素レベルPr2は第1画素P1から1/10分の画素レベルを受け取っているので、分割数は11とされ、Pr2×9/11が第2画素P2の出力画素レベルPo2とされる。これにより、画素間で画素レベルのレンジ(とり得る最小値〜最大値の範囲)を揃えることができる。Pr2×2/11分のレベルは、第3画素にシフトされる。
以上の処理を注目画素を順次隣にずらしながら行うと、第10画素P10においてシフト量Pr10×10/19が1画素分となる。そこで、Pr10×10/19の画素が第10+1番目に追加される。この10+1番目の画素の追加によって、10%の変倍が完成する。
以下、第11画素P1から入力画像の他端に達するまで上記処理を繰り返すと、走査ライン方向に10%拡大された出力画像が得られることとなる。
【0080】
上記第2の拡大処理では、変倍率Xの誤差なく拡大を行うことができる。ここで、第2の拡大処理においては、追加画素から隣の画素への画素レベルのシフトは行われない。しかしながら、追加画素は処理方向側隣の画素へシフトすべき画素レベルが最も少ない(即ち、次の追加画素の生成にほとんど影響を与えない)画素であるため、画質への影響は最小限に抑えられる。
【0081】
以上説明したように、第1及び第2の実施の形態における画像形成装置1によれば、 変倍処理部142は、入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素レベルを変倍率に応じた分割数で分割し、当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、変倍率に応じた画像を生成する。
【0082】
従って、隣接画素間のデータの連続性を確保して変倍を行うことができるため、変倍処理を行っても、ノイズ感や画像荒れの発生を抑えた再現性のよい画像を提供することができる。
【0083】
また、分割した画素レベルの一部のシフトにより増加又は減少した各画素の画素レベルを補正することで、入力画素レベルと出力画素レベルのレンジを揃えることができる。
【0084】
特に、画素毎に感光体への書き込みを行うLEDプリントヘッド方式の画像形成装置では変倍処理によるノイズや画像荒れが問題であったが、上記変倍処理を実行することにより、ノイズ感や画像荒れのない変倍画像を出力することが可能となる。
【0085】
なお、上記第1及び第2の実施の形態における記述は、本発明に係る画像形成装置1の好適な一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0086】
例えば、拡大処理及び縮小処理は図13(a)、(b)に示すように、入力画像のいずれの一端を処理の開始地点としてもよい。また、図13(c)に示すように、画像端部に向かって処理を進めるのであれば、任意の画素から処理を開始することも可能である。ただし、図13(d)に示すように、両端から処理を開始してしまうと、双方の処理の終了地点間でデータの連続性が保たれず画素レベルに差が生じる場合があるので好ましくない。
【0087】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として、不揮発性メモリ、ハードディスク等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0088】
その他、各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 画像形成装置
101 CPU
102 操作表示部
103 画像読取部
104 画像処理部
141 色変換部
142 変倍処理部
143 画像メモリ
143a 入力画像メモリ
143b 一時メモリ
143c 出力画像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された多値デジタル画像信号に基づいて画像形成を行う画像形成装置において、
前記入力された多値デジタル画像信号を走査ライン単位で変倍処理する変倍処理部であって、前記入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素信号値を変倍率に応じた分割数で分割し、当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、前記変倍率に応じた画像を生成する変倍処理部を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記分割した画素信号値の一部のシフトにより増加又は減少した各画素の画素信号値のレベルを補正する補正処理部を備えた請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
入力された多値デジタル画像信号に基づいて電子写真方式で画像形成を行う画像形成部を備え、
前記画像形成部は、前記変倍された画像に基づいて露光素子を発光させることにより感光体上に潜像を形成するプリントヘッドを備えた請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
入力された多値デジタル画像信号を走査ライン単位で画像処理する画像処理方法であって、
前記入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素信号値を変倍率に応じた分割数で分割する工程と、
当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、前記変倍率に応じた画像を生成する工程と、
を含む画像処理方法。
【請求項5】
入力された多値デジタル画像信号を走査ライン単位で画像処理するコンピュータを、
前記入力された多値デジタル画像信号の各画素の画素信号値を変倍率に応じた分割数で分割し、当該分割した画素信号値の一部を順次一定方向に隣接画素にシフトしていくことで画素を追加又は削除し、前記変倍率に応じた画像を生成する変倍処理部、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−259189(P2011−259189A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131626(P2010−131626)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】