説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】低消費電力で省エネ対策として優れ、かつ形成された画像の濃度低下や白抜けなどの異常画像が生じることを確実に防止する。
【解決手段】感光体ドラム10に形成された潜像を現像装置12で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録紙5に転写し、記録紙5に転写した未定着トナーに定着装置3でトナー定着液31の液滴31aを付着させて膨潤・軟化して記録紙5に定着した後の非作像時に、現像装置12のトナーを感光体ドラム10に供給する現像スリーブ26を回転させて現像スリーブ26表面のトナーに定着液の液滴が接触する時間を短くして現像スリーブ26表面のトナーが凝集することを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式により記録媒体に転写した画像を定着する画像形成装置及び画像形成方法、特に画像濃度低下や白抜け異常画像の解消に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ装置やファクシミリ装置、複写装置等に用いられる画像形成装置は、画像情報に基づいて紙や布、OHP用シート等の記録媒体に文字や記号等を含む画像を記録する。このような画像形成装置には種々の方式があるが、そのうち電子写真方式の画像形成装置が普通紙に高精細な画像を高速で記録することができる点から広くオフィスで使用されている。この電子写真方式の画像形成装置では感光体に形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナーを膨潤・軟化し、これを加圧することでトナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が主流である。
【0003】
この熱定着方式を使用した画像形成装置では消費電力の約半分以上は記録媒体に転写したトナーを加熱するために消費されており、近年の環境負荷軽減の観点から低消費電力(省エネ)の定着装置が望まれている。すなわち、定着時の加熱温度を今までよりも極端に下げるか、あるいは加熱を必要としない定着方式が望まれている。省エネの観点からは、全く加熱せずにトナーを定着させることが理想である。
【0004】
この非加熱定着方法として、トナー樹脂を膨潤・軟化する溶剤を未定着トナーに付与する、いわゆる溶剤定着が知られている。例えば特許文献1や特許文献2、特許文献3には、トナーを膨潤・軟化可能で、水に不溶または難溶な有機化合物、例えば有機エステル化合物や有機炭化水素化合物等の軟化剤を水に分散混合した定着液をトナーに付与してトナーを膨潤・軟化させ、この定着液を乾燥させてトナーを記録媒体に定着させる方法が開示されている。この定着方式は、熱定着方式の場合のようにトナーを膨潤・軟化するための加熱処理が不要であることから、低消費電力で省エネ対策として優れた定着方式といえる。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に示された定着方法では、軟化剤の分散媒である水はVOC(揮発性有機化合物)に該当しなく問題ないが、軟化剤中のその他の有機化合物に関しては、臭気(不快臭や刺激臭)や安全性(PRTR法該当品種やProposition65該当品種)の観点からは問題視される材料が使用されており、オフィス環境で使用する場合、人体に対し悪影響を及ぼす成分や不快な臭気がオフィス内に充満してしまいオフィス環境への使用は問題である。また、定着剤を多量に未定着トナー画像に付与した場合、水分の吸収により記録媒体に皺やカールが発生し、画像形成装置として必要な安定かつ高速な記録媒体(転写紙)搬送を著しく損なうこととなる。さらに、この多量の水は乾燥装置を用いて蒸発により除去しようとすると、前記熱定着方式に匹敵する電力を必要とすることになる。また、大気中水分の影響でトナー粒子どうしの流動性を損なわないようにするため、トナー微粒子表面は撥水性処理されており、水を溶媒とする定着液の場合、未定着トナー画像に定着液を付与すると、トナー微粒子が定着液に弾かれてしまい、画像が乱れるという重大な不具合がある。
【0006】
これに対して特許文献4には、トナーを溶解し、シリコーンオイルと相溶性を示す溶剤をシリコーンオイルに混合した定着用溶液を使用し、トナーの軟化による画像の乱れを防止している。すなわち、比較的粘度の高いシリコーンオイルにより、軟化したトナーの流動を抑えているものである。しかしながら溶剤としてベンゼン等の芳香族系溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しており、これらの溶剤は揮発性を有し、かつ、臭いもきつく、VOC問題の観点からも問題が多い。
【0007】
これらの問題を解消するため、特許文献5や特許文献6、特許文献7、特許文献8には、トナーを構成する樹脂成分を膨潤・軟化させる材料として人体に対して無害な溶液、例えば高級グリコールエーテルや脂肪族二塩基酸エステル等を成分とした定着液を使用し、さらに,転写紙などの記録媒体上の付着量を減らし転写紙などのカールや皺が発生しないように、記録媒体に転写する前の中間転写ベルトに転写されたトナーに対して定着液を供給して、記録媒体の非画像部に定着液が付着する量を軽減するようにしている。
【0008】
また、特許文献9には、定着装置にトナー定着液を液滴として噴霧する噴霧器と、噴霧された液滴に電荷を付加する電極を有する噴霧室を設け、記録媒体に転写したトナーに対して未定着トナーが有する電荷と逆極性の電荷を付加してトナー定着液の液滴を噴霧してトナーのある場所のみにトナー定着液が付着するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように記録媒体に転写する前の中間転写ベルトに転写されたトナーに対して定着液を供給する場合、外装や作像ユニットを構成する部材などを定着液に溶融しない材料で構成しているが、作像ユニットの現像ユニットに設けられ、感光体の形成された静電潜像にトナーを付着させて可視化する現像スリーブ表面のトナーに定着液のミスト等が付着する。また、定着装置に噴霧室を設けて記録媒体に転写したトナーにトナー定着液の液滴を噴霧して定着する場合、噴霧室から作像ユニットに漏れ出したトナー定着液の液滴が現像スリーブ表面のトナーに付着する。このようにトナー定着液の液滴が現像ユニットの現像スリーブ表面のトナーに付着すると、その部分のトナーが溶融し、溶融したトナーが現像スリーブ上にこびり付き、感光体に形成された潜像を現像するとき、現像スリーブのその部分でトナーの穂が立たなくなり、局部的に現像されず、画像の濃度低下や白抜けなどの異常画像を引き起こす原因となる。
【0010】
この発明は、このような問題を解消し、低消費電力で省エネ対策として優れ、かつ形成された画像の濃度低下や白抜けなどの異常画像が生じることを確実に防止できる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の画像形成装置は、像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写する作像ユニットと、記録媒体に転写した未定着トナーに、定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを、画像形成処理が終了した後の非作像時に回転させることを特徴とする。
【0012】
この発明の第2の画像形成装置は、像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写する作像ユニットと、未定着トナーが有する電荷極性と逆の極性の電荷を付与した定着液の液滴を発生する液滴発生部と、該液滴発生部と大気を連通し、大気側の排気口に排気ファンが設けられ、前記液滴発生部で発生した液滴を回収する排気ダクトを有し、記録媒体上に転写した未定着トナーに定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着し、記録媒体にトナーを定着したのち前記排気ファンを駆動して前記液滴発生部で発生した液滴を回収する定着装置を有する画像形成装置であって、前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを、画像形成処理が終了した後の非作像時に回転させることを特徴とする。
【0013】
前記作像ユニットには前記現像スリーブを、前記作像ユニットを構成する他のユニットと独立して駆動させるスリーブ駆動手段を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記現像スリーブを、画像形成処理が終了した後の非作像時にあらかじめ設定されたタイミングをおいて定期的に所定時間ずつ回転させても良い。
【0015】
さらに、前記現像スリーブを回転しているとき、前記現像スリーブ表面のトナーを前記現像装置内に回収することが望ましい。
【0016】
また、前記第2の画像形成装置において、画像形成処理が終了した後に、前記定着装置の排気ファンの駆動と同期して前記現像スリーブを回転させることを特徴とする。
【0017】
さらに、前記定着装置の排気ファンの駆動と同期して前記現像スリーブを回転させるとき、前記定着装置近傍における定着液の液滴の分散濃度を濃度センサで検出し、前記濃度センサで検出している液滴の分散濃度が所定濃度を超えたとき、前記定着装置の排気ファンの駆動と同期して回転する前記現像スリーブの回転速度を高めることを特徴とする。
【0018】
また、前記現像スリーブの回転速度を高めてから前記定着装置の排気ファンの駆動が終了した後、前記現像スリーブを定期的に所定時間ずつ回転させることを特徴とする。
【0019】
この発明の画像形成方法は、像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーに定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着した後の非作像時に、前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを回転させることを特徴とする。
【0020】
この発明の第2の画像形成方法は、像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーが有する電荷極性と逆の極性の電荷を付与した定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着し、残留している定着液の液滴を回収して画像形成処理が終了した後の非作像時に、前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを回転させることを特徴とする。
【0021】
この発明の第3の画像形成方法は、像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーが有する電荷極性と逆の極性の電荷を付与した定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着した後、残留している定着液の液滴の回収と同期して前記現像スリーブを回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーに定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着した後の非作像時に、現像装置のトナーを像担持体に供給する現像スリーブを回転させて現像スリーブ表面のトナーに定着液の液滴が接触する時間を短くして現像スリーブ表面のトナーが凝集することを防ぐから、像担持体に形成された潜像を現像するとき、現像スリーブ上にトナーの穂が立たなくなって局部的に現像されずに画像の濃度低下や白抜けなどの異常画像を引き起こすことを防いで良質な画像を安定して形成することができる。
【0023】
また、残留している定着液の液滴の回収と同期して現像スリーブを回転させることにより、現像スリーブ表面のトナーに定着液の液滴が接触する機会をより少なくでき、現像スリーブ表面のトナーが凝集することを確実に防ぐことができる。
【0024】
さらに、現像スリーブを回転しているとき、現像スリーブ表面のトナーを現像装置内に回収することにより、現像スリーブ表面にトナーが凝集することをより確実に防ぐことができ、良質な画像を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の画像形成装置の主要部を示す構成図である。
【図2】画像形成部の構成図である。
【図3】現像装置の構成図である。
【図4】現像スリーブとスリーブ駆動モータの構成図である。
【図5】定着装置の構成図である。
【図6】噴霧器の主要部の構成を示す斜視図である。
【図7】画像形成装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】画像形成動作を示すフローチャートである。
【図9】画像形成装置の制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の第2の画像形成装置の主要部を示す構成図である。
【図11】濃度センサの構成図である。
【図12】濃度センサの動作を示す斜視図である。
【図13】第2の画像形成装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図14】第2の画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の第3の画像形成装置の主要部を示す構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、この発明の画像形成装置の主要部を示す構成図である。図に示すように、画像形成装置1は、作像ユニット2と定着装置3を有する。作像ユニット2はブラック(BK)とマゼンタ(M)とイエロー(Y)及びシアン(C)の画像を形成する画像形成部4BK,4M,4Y,4Cを有し、画像形成部4BK,4M,4Y,4Cは記録媒体5を搬送する搬送ベルト6に沿って一列に配置されている。搬送ベルト6は駆動ローラ7と従動ローラ8に巻回された無端ベルトからなり、駆動ローラ7の回転により反時計方向に回転する。搬送ベルト6の下部には記録媒体5が収納された給紙トレイ9が設けられている。各画像形成部4BK,4M,4Y,4Cは、図2の構成図に示すように、感光体ドラム10と、感光体ドラム10の周囲に配置された帯電器11と現像装置12とクリーニングブラシ13とクリーニングブレード14及び除電ランプ15を有する。そして帯電器11で一様にマイナス帯電された感光体ドラム10の表面を露光装置16により各色の画像に対応したレーザー光17で露光して感光体ドラム10に静電潜像を形成する。この静電潜像は現像装置12で現像して感光体ドラム10上に各色のトナー像18を形成する。感光体ドラム10のトナー像18は転写器19によって記録媒体5に転写される。感光体ドラム10に残留しているトナーはクリーニングブラシ13とクリーニングブレード14により掻き取られ、感光体ドラム10の電荷は除電ランプ15により除去され、次の画像形成動作に入る。
【0027】
感光体ドラム10に形成された静電潜像を可視化する現像装置12は、図3の構成図に示すように、トナーアジテータ20を有するトナーホッパー21に連結され、内部に撹拌ローラ22とセパレータフィン23と搬送スクリュー24とドクターブレード25及び現像スリーブ26を有する。現像スリーブ26は複数のマグネット27を内蔵し、このマグネット27により現像スリーブ26の表面にトナー18の穂を立てて感光体ドラム10に形成された静電潜像を可視化する。この現像スリーブ26は、図4の構成図に示すように、スリーブ駆動モータ28により独立して回転駆動する。
【0028】
この画像形成装置1で記録媒体5に画像を形成するとき、給紙トレイ9に収納された記録媒体5のうち最も上の位置にある記録媒体5が供給され、搬送ベルト6に静電吸着によって吸着し、吸着された記録媒体5は第1の画像形成部4BKに搬送されブラックのトナー像が転写される。ブラックの画像が転写された記録媒体5は搬送ベルト6によって第2の画像形成部4Mに搬送されマゼンタのトナーが記録媒体5上に重ねて転写される。この記録媒体5は第3の画像形成部4Y、第4の画像形成部4Cに順次搬送されてイエローのトナー像とシアンのトナー像が重ねて転写されてカラー画像を形成する。第4の画像形成部4Cを通過した記録媒体5は搬送ベルト5から剥離されて定着ユニット3で定着された後に排出される。
【0029】
定着装置3は作像ユニット2の後段に記録媒体搬送手段30を介して設けられている。この定着装置3は、図5の構成図に示すように、記録媒体5上に載せた未定着トナー18にトナー定着液を適量付着させて膨潤・軟化して記録媒体5に定着させるものであり、トナー定着液31を収納した定着液ボトル32と噴霧室33と排気ダクト33とトナー定着液回収部35と噴霧室33の下部に対向して設けられたガイド部材36及び加圧部37を有する。
【0030】
噴霧室33は、下部が開口した箱状に形成され、上部に噴霧器38が設けられ、未定着トナー18を載せた記録媒体5の搬送方向の両側壁に記録媒体5を通す開口39を有し、一方の側壁には排気ダクト34が連結されている。噴霧器38は、図6の斜視図に示すように、先端部が先細のホーン形状の振動部40と、振動部40の後端部に固定された圧電素子41と、一方の端部が振動部40の先端部に連結され、他方の端部が定着液ボトル32内のトナー定着液31内に挿入された多孔質材料、例えばスポンジからなる定着液導入材42及び図5に示すように振動部45と定着液導入材42の先端部を挟んで配置された1対の電極43を有する。圧電素子41は交流電源44から供給される交流電圧により駆動して振動を発生する。1対の電極43は直流電源45に接続されプラスに帯電する。
【0031】
排気ダクト34は、噴霧室33と大気を連通し、大気側の排気口に排気ファン46が設けられている。トナー定着液回収部35は、排気ダクト34の排気ファン46の近傍の噴霧室33側に設けられたトナー定着液回収フィルタ47と、トナー定着液回収フィルタ47の下部に設けられ、トナー定着液回収フィルタ47で回収したトナー定着液31を集めて定着液ボトル32に導入する定着液導入手段48を有する。ガイド部材36は噴霧室33の下部に設けられ、噴霧室33内に搬送される未定着トナー18を載せた記録媒体5を案内する。加圧部37は加圧ローラ49と対向ローラ50を有し、噴霧室33から排出される記録媒体5上のトナー18を加圧して平坦化する。
【0032】
記録媒体搬送手段30は、駆動ローラ51と従動ローラ52に巻き回された搬送ベルト53を有する。
【0033】
この定着装置3で定着する定着するトナー18は、結着樹脂と離型剤などのような樹脂で構成されている。トナー18に含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えば、ポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナー18は、メチル基を有する疎水性シリカおよび疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナー18の粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。
【0034】
また、記録媒体5は特に限定されず、例えば、紙、布及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0035】
トナー定着液31は、トナー18に含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させる成分(以下、A材という)とA材を分散させる水系分散媒(以下、B1材という)と、A材を膨潤・軟化する非水系分散媒(以下、B2材という)からなり、A材をB1材に分散させて調整した水系の分散媒をB2材に分散して形成され、トナー18に含まれる樹脂の少なくとも一部を膨潤・軟化させてトナー18を記録媒体5に定着させる。
【0036】
トナー定着液31については、A材としては特に限定されないが、具体例としては脂肪族エステルを使用する。この脂肪族エステルは飽和脂肪族エステルを含む。脂肪族エステルが飽和脂肪族エステルを含む場合には、A材の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナー18に含まれる樹脂を1秒以内で膨潤・軟化させることができる。さらに、飽和脂肪族エステルは、記録媒体5上でB1材またはB2材が記録媒体5内に浸透もしくは蒸発した後、記録媒体5に載せたトナー18の粘着度を低下させることができる。これは飽和脂肪族エステルが膨潤・軟化したトナー18の表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0037】
前記飽和脂肪族エステルは、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は炭素数が1以上3以下のアルキル基である。この飽和脂肪族エステルが、一般式R1COOR2で表される化合物を含み、R1は炭素数が11以上14以下のアルキル基であり、R2は炭素数が1以上3以下のアルキル基である場合には、トナー18に含まれる樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0038】
前記化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。これらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くはB2材に溶解するが、B1材には溶解しない。したがって脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについてはB1材に分散させてトナー定着液36を得ることができる。
【0039】
また、脂肪族エステルは脂肪族ジカルボン酸エステルを含むことが好ましい。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナー18に含まれる樹脂を溶解または膨潤させることができる。例えば、60ppm程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナー18にトナー定着液36を付与し、トナー18が記録媒体5に定着するまでの時間は1秒以内であることが望ましい。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体5における未定着のトナー18にトナー定着液36を付与し、トナー18が記録媒体5に定着するのに要する時間を1秒以内にすることが可能となる。さらに、より少量のA材の添加によって、トナー18に含まれる樹脂を膨潤・軟化させることができるため、トナー定着液36に含まれるA材の含有量を低減することができる。
【0040】
また、脂肪族ジカルボン酸エステルは、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含むことが好ましい。ここでR3は炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は炭素数が2以上5以下のアルキル基である。脂肪族ジカルボン酸エステルが、一般式R3(COOR4)2で表される化合物を含み、R3は炭素数が3以上8以下のアルキレン基であり、R4は炭素数が2以上5以下のアルキル基である場合には、トナー18に含まれる樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。また、前記化合物の臭気指数は10以下であり、不快臭および刺激臭を有さない。
【0041】
前記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。前記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くはB2材に溶解するが、B1材には溶解しない。したがって脂肪族ジカルボン酸エステルの多くについては、B1材に分散させてトナー定着液36を得ることができる。
【0042】
さらに、トナー定着液31を形成する脂肪族エステルは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含んでも良い。脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体5に対するトナー18の定着性を向上させることができる。前記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。
【0043】
前記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナー3に含まれる樹脂に対する膨潤・軟化性を向上させることができる。また、前記化合物の臭気指数は10以下であり、不快臭および刺激臭を有さない。
【0044】
前記化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えばコハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。前記化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの多くは水に若干溶解する(若干水性である)。したがって前記化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの多くについては、直接、粒子として非水系媒体に分散させることによってトナー定着液31を得ることができる。
【0045】
また、トナー定着液31においては、好ましくは、B1材は単価又は多価のアルコール類、例えばエタノール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、グリセリン等を含んでいても構わない。B1材がエタノールを含む場合は、エタノールは人体に対して極めて安全な材料であり、揮発性有機物の中で唯一、オフィス環境でも使用が可能となる材料である。しかも各種の多孔質部材に対して優れた浸透性を示す材料であり、分散媒として記録媒体5への優れた浸透性が得られ、定着応答性の向上が図れる。
【0046】
また、トナー定着液31において、好ましくは、B2材はn−アルカンを含む。B2材がn−アルカンを含む場合には、特に撥水性処理されたトナー18に対して高い親和性を有し、撥水性処理されたトナー18を顕著に濡らすことができる。すなわち、パラフィン系溶剤であるn−アルカンは25mN/m以下の低い表面張力を有し、撥水性処理されたトナー18に対して高い親和性を有する。その結果、トナー定着液31を記録媒体5に載せた撥水性処理されたトナー18に付与するとき、撥水性処理されたトナー18によって形成される画像の乱れを低減することができる。例えば、n−アルカンのうちデカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカンは低い揮発性を有し、これらのn−アルカンのいずれかをB2材として含むトナー定着液31の液滴を撥水性処理されたトナー18の層へ付与したとき、トナー層の乱れがほとんど発生しないことを確認した。
【0047】
また、トナー定着液31において、好ましくは、B2材はジメチルシリコーンを含む。B2材がジメチルシリコーンを含む場合には、特に撥水性処理されたトナー18に対して高い親和性を有し、撥水性処理されたトナー18を、顕著に濡らすことができる。すなわち、シリコーン系溶剤であるジメチルシリコーンは20mN/m程度の低い表面張力を有し、撥水性処理されたトナー18に対して高い親和性を有する。その結果、トナー定着液31を記録媒体5に載せた撥水性処理されたトナー18に付与するとき、撥水性処理されたトナー18によって形成される画像の乱れを低減することができる。また、ジメチルシリコーンは無臭であり、人体に対する安全性が高い。このためB2材としてジメチルシリコーンを含むトナー定着液31は人体に対して安全且つ無臭な定着液にすることが可能となる。例えば、3mPa・秒以上の粘度を有するジメチルシリコーンは低い揮発性を有し、ジメチルシリコーンをB2材として含むトナー定着液31の液滴を撥水性処理されたトナー18の層へ付与したとき、トナー層の乱れがほとんど発生しないことを確認した。
【0048】
前記の材料を使用することによりトナー定着液31は改善されて定着性は優れた効果をもたらすに至った。
【0049】
このトナー定着液31を使用した定着装置3により、搬送ベルト53により搬送された未定着トナー18を載せた記録媒体、例えば記録紙5に定着させるときの処理を説明する。
【0050】
作像ユニット2によって形成された未定着トナー18を載せた記録紙5は搬送ベルト53によって定着装置3に搬送される。このとき未定着トナー18は作像ユニット2の最終工程でマイナスに帯電している。この記録紙5は定着装置3の噴霧室33に入る。このとき噴霧室33に設けた噴霧器38の圧電素子41には交流電源44から交流電圧が印加され、圧電素子41の両端に微少な振動変位が発生し、振動部40のホーン形状により振動変位が拡大され先端部で最大となる。一方、先端部が振動部40の先端部に連結された定着液導入材42は他方の端部が定着液ボトル32内のトナー定着液31に浸され、全体が毛細管現象によりトナー定着液31で濡れた状態になっている。この定着液導入材42の先端部が振動部40の先端に接触しているから、定着液導入材42に含浸したトナー定着液31は、振動部40の先端部の振動変位により液滴31aとなって噴霧室33内に噴霧される。このように振動部40は圧電素子41を振動させて定着液導入材42に含浸したトナー定着液31を液滴31aとして飛散させることにより、液滴31aを低速度で飛散させることができ、噴霧した液滴31aにより記録紙5に載せた未定着のトナー18に変形等が生じることを防ぐことができる。
【0051】
このトナー定着液31の液滴31aを噴霧するとき、1対の電極43は直流電源45から直流電圧が印加されてプラスに帯電している。この電極43の近傍を、噴霧されたトナー定着液31の液滴31aが通過するとき液滴31aはプラスに帯電する。この噴霧されてプラスに帯電した液滴31aは落下せずに気流によって噴霧室33中に漂う。この噴霧室33に未定着トナー18を載せた記録紙5が入ると、マイナスに帯電したトナー18に液滴31aがクーロン力によって引き寄せられて付着する。このとき記録紙5はマイナスに帯電していないので、トナー18が無い部分には液滴31aが付着せず、トナー18の部分のみにトナー定着液31の液滴31aが付着し、自動的にオンデマンド塗布が行われる。したがって使用するトナー定着液31の液量は少なくて済む。また、記録紙5には液滴31aが付着しないから、記録紙5のカールやコックリングも少なく記録紙5の品位を落とさないで済む。さらに、記録紙5上の画像位置情報を記憶し、狙って付着させる方式と異なり、構成も簡単であり、仮に地肌汚れ等の画像位置情報でないトナー18があっても液滴31aが付着して定着されるため、トナー18が未定着のままで記録紙5が排紙されてユーザーや周囲の環境を汚してしまうことはなく、優れたオンデマンド塗布方式である。
【0052】
ここでトナー定着液31の液滴31aの滴径が大きいと落下してしまい記録紙5に全て付着して記録紙5を汚濁してしまう。また、液滴31aの滴径が小さ過ぎるとトナー18を溶かすのに必要な量を付着させるのに時間が掛かってしまう。実験的には、液滴31aの径は4〜10μmが良い。この液滴31aの平均液滴径は、噴霧器38の圧電素子41を駆動する周波数により変化し、圧電素子41の駆動周波数は、300〜1000kHz(1MHz)が最も良いことが判った。
【0053】
一般的に、液滴径d(m)と周波数f(Hz)には下記式が成り立つことが知られている。
d=0.34(8πT/ρf1/3
ここでTは液体の表面張力(水の場合0.0721N/m(摂氏24度)、ρは液体の密度(水の場合1000kg/m))。
この式は実験と良く一致する。
【0054】
噴霧器38に圧電素子41を利用した霧化器を用いたとき、その駆動周波数fを300kHz〜1MHzの範囲とすると、噴霧する液滴径dは4〜10μmとなり、空中を浮遊するに最適な液滴径とすることができ、すぐに落下して記録紙5全体に多量に付着する不具合を防ぐことができる。
【0055】
このように記録紙5上のトナー18のみに選択的にトナー定着液31が載った状態でもトナー18は軟化し、液滴31aが乾燥するか又は記録紙5の繊維内やトナー内部に浸透することにより、直ちに硬化して定着が行われる。また、塗布直後のトナー18が軟化した状態の時に加圧部37で加圧すると、定着力が増し、また、トナー18が平坦化されて色の再現性を良くすることができる。
【0056】
また、トナー18の部分のみにトナー定着液31が付着して自動的にオンデマンド塗布を行うと、噴霧した液滴31aの全てがトナー18に付着するのではないため、記録紙5が噴霧室33を通過後も噴霧室33内には多くの噴霧された液滴31a、すなわちトナー定着液31が浮遊し続けることになり、最終的には噴霧室33の内壁やガイド部材36に落下し、かつ付着して周囲を汚染する可能性がある。
【0057】
そこで記録紙5の後端が噴霧室33から抜けた後に、排気ダクト34の排気口に設けた排気ファン46を駆動して排気ダクト34内に噴霧室33から大気方向に強制的な空気流を作り、噴霧室33内に浮遊している残余のトナー定着液31(液滴31a)を排気口側に吸引してトナー定着液回収部35のトナー定着液回収フィルタ47に付着させて再度液体化する。液化したトナー定着液31は定着液導入手段48により定着液ボトル32に導かれて再利用される。この排気ファン46の吸気は記録紙5を噴霧室33へ出し入れする開口39から行われる。
【0058】
この噴霧室33からのトナー定着液31(液滴31a)の回収処理は、連続して定着すべき記録紙5が定着装置3に送られているときには噴霧室33内を噴霧したトナー定着液31の液滴31aで満たし、記録紙5が定着装置3にしばらく送られない状態が続いたとき、例えば、機械がスタンバイ状態のときなどに排気を行い、噴霧室33内の液滴31aを回収しておく。
【0059】
このように噴霧器38で圧電素子40を利用して空中を浮遊するに最適な液滴径の液滴31aを噴出して、すぐに落下して記録紙5全体に多量に付着する不具合を防ぐとともに、記録紙5が定着装置3に送られていないとき、噴霧室33内の液滴31aを回収するから、トナー定着液31で記録紙5や噴霧室33の内壁あるいはガイド部材36を汚染することを防ぐことができる。
【0060】
この画像形成装置1の制御装置100は、図7のブロック図に示すように、システム制御部101と作像ユニット駆動制御部102及び定着ユニット駆動制御部103を有する。システム制御部101は操作表示部104からの操作信号により作像ユニット駆動制御部102及び定着ユニット駆動制御部103の処理を制御し、作像ユニット駆動制御部102及び定着ユニット駆動制御部103からの動作状態を示す信号を入力して画像形成装置1の動作状態等を操作表示部104に表示する。作像ユニット駆動制御部102はシステム制御部101からの信号により作像ユニット2の動作を制御して記録紙5にトナー像18を形成させる。また、システム制御部101は画像形成処理を行なっていないとき、作像ユニット駆動制御部102に対して現像スリーブ駆動信号を出力する。作像ユニット駆動制御部102は現像スリーブ駆動信号が入力するとスリーブ駆動部105の駆動を制御してスリーブ駆動モータ28を駆動させて現像装置12の現像スリーブ26を回転させる。定着ユニット駆動制御部103はシステム制御部101からの信号により噴霧器駆動部106と排気ファン駆動部107の駆動を制御する。
【0061】
この画像形成装置1で記録紙5に画像を形成するときの動作を図8のフローチャートを参照して説明する。
【0062】
画像形成装置1の操作表示部104から画像形成開始指示が入力すると、システム制御部101は作像ユニット駆動制御部102と定着ユニット駆動制御部103に画像形成開始信号を送る。作像ユニット駆動制御部102は画像形成開始信号が送られると、各画像形成部4BK,4M,4Y,4Cを駆動して作像処理を開始して感光体ドラム10に静電潜像を形成し、スリーブ駆動モータ28を駆動して現像スリーブ26を回転し、現像スリーブ26の表面に穂を立てたトナー18で感光体ドラム10に形成された静電潜像を可視化してトナー像18を形成し、形成したトナー像18を記録紙5に転写する(ステップS1)。
【0063】
一方、定着ユニット駆動制御部103は画像形成開始信号が送られると、噴霧器駆動部106を駆動して定着装置3の噴霧器38の圧電素子41に交流電源44から交流電圧を供給するとともに1対の電極43に直流電源45から直流電圧を供給してプラスに帯電したトナー定着液31の液滴31aを噴霧室33に噴霧させて、噴霧室33内をトナー定着液31の液滴31aで満たす(ステップS2)。この状態で作像ユニット2によって形成された未定着トナー18を載せた記録紙5は搬送ベルト53によって定着装置3に搬送され、記録紙5上のトナー18のみに選択的にトナー定着液31の液滴3aが載ってトナー18を軟化させて記録紙5に定着し、加圧部37で加圧してトナー18を平坦化して排紙する。この定着処理を行っているとき噴霧室33に充満したトナー定着液31の液滴31aの一部は噴霧室33の両側壁に設けた開口39から漏れ出す。この漏れ出した液滴31aの一部は作像ユニット2に漏れ出して現像スリーブ26表面のトナー18に付着するが、スリーブ駆動モータ28により現像スリーブ26が回転しているから現像スリーブ26の表面にあるトナー18にトナー定着液31の液滴31aが付着する時間を短くしてトナー18が凝集することを防ぐ。したがって感光体ドラム10に形成された潜像を現像するとき、現像スリーブ26上にトナーの穂が立たなくなり、局部的に現像されず、画像の濃度低下や白抜けなどの異常画像を引き起こすことを防いで良質な画像を安定して形成することができる。
【0064】
システム制御部101は一連の画像形成処理が終了すると(ステップS3)、トナー像18を定着した記録紙5の後端部が定着装置3を抜けたタイミングで噴霧器駆動部106の駆動を停止して排気ファン駆動部107により排気ファン46を駆動して排気ダクト34を介して噴霧室33内を排気する(ステップS4,S5)。この排気により噴霧室33内の液滴31a及び作像ユニット2に漏れ出した液滴31aが吸引されて排気ファン46の直前に設けたトナー定着液回収部35のトナー定着液回収フィルタ47で回収され、回収されたトナー定着液31は定着液ボトル32に戻される。この排気をあらかじめ定めた所定時間行った後、排気ファン駆動部106により排気ファン46の駆動を停止して画像形成処理を終了する(ステップS6,S7)。
【0065】
画像形成処理が終了すると、システム制御部101は作像ユニット駆動制御部102に対して現像スリーブ駆動信号を出力し、作像ユニット駆動制御部102でスリーブ駆動モータ28を駆動させて現像装置12の現像スリーブ26を回転させる(ステップS8)。このように画像形成処理を行っていないとき、現像スリーブ26をスリーブ駆動モータ28で回転するから、定着装置3から漏れ出したトナー定着液31の液滴31aの一部が回収されずに作像ユニット2の周囲に残存していても現像スリーブ26の表面の一部にだけ大量の液滴31aが付着して凝集することを防ぐことができ、感光体ドラム10に形成された潜像を現像するとき、現像スリーブ26表面全体にトナーの穂を立てることができ、局部的に現像されずに画像の濃度低下や白抜けなどの異常画像を引き起こすことを防いで良質な画像を安定して形成することができる。また、画像形成処理を行っていないとき、現像スリーブ26を独立して回転制御されるスリーブ駆動モータ28で回転するから、作像ユニット2の他の部分を回転させないで済み、省エネルギを図ることができる。
【0066】
前記説明では画像形成処理が終了するとスリーブ駆動モータ28で現像スリーブ26を連続して回転する場合について説明したが、画像形成処理が終了してから現像スリーブ26を所定時間連続して回転した後、現像スリーブ26の表面のトナー18がトナー定着液31の液滴31aにより軟化しない所定のタイミングで定期的に所定時間ずつ回転しても良い。また、画像形成処理が終了してから所定のタイミングをおいて現像スリーブ26を定期的に所定時間ずつ回転しても良い。
【0067】
また、前記説明では画像形成処理が終了してから表面にトナー18が付着した現像スリーブ26を連続又は定期的に回転して現像スリーブ26の表面のトナー18にトナー定着液31の液滴31aが接触する時間を短くして現像スリーブ26の表面のトナー18が凝集することを防ぐ場合について説明したが、図3の現像装置12の構成図に示す現像スリーブ26の近傍に設けたドクターブレード25を移動自在とし、図9のブロック図に示すように、画像形成処理が終了して現像スリーブ26を回転するとき、作像ユニット駆動制御部102でブレード可変部108を駆動してドクターブレード25の先端を現像スリーブ26の表面に接触させて現像スリーブ26の表面にあるキャリアーとトナー18を現像装置12内に回収すると良い。
【0068】
このように画像形成処理が終了して現像スリーブ26を回転するとき、現像スリーブ26の表面にあるトナー18を現像装置12内に回収することにより、現像スリーブ26の表面でトナー定着液31の液滴31aによりトナー18が凝集することをより確実に防ぐことができる。
【0069】
また、前記説明では作像ユニット2の後段に定着装置3を直接配置した場合について説明したが、図10の画像形成装置1の構成図に示すように、定着装置3を、作像ユニット2側の側壁に記録紙5を通す幅の狭い記録媒体導入口312を有し、作像ユニット2の反対側の側壁に記録媒体排出口313を有する外装ケース311に収容し、外装ケース311内の定着装置3の近傍にトナー定着液31の液滴31aの分散濃度を検出する濃度センサ60を設け、濃度センサ60で検出した液滴31aの濃度分布が所定値に達しているかどうかを検出し、液滴31aの濃度分布に応じて現像スリーブ26を回転する時間と回転数を可変制御しても良い。
【0070】
濃度センサ60としては、例えば図11に示すように、ポリアミドを使用した無端の樹脂ベルト61の一方の端部に固定され、例えば厚さが0.5mmで幅が10mmのウレタンシート62からなるセンサベルト63と、発光部64と受光部65を有するホトセンサ66で構成する。センサベルト63は駆動モータ67に連結された駆動ローラ68と従動ローラ69に巻き回され、巻き回した一方のベルト部分が外装ケース311内に露出している。このセンサベルト63のウレタンシート62はトナー定着液31を吸着する前は、図12(a)に示すように平坦になっているが、所定量のトナー定着液31を吸着すると、図12(b)に示すように、波打ったように変形する。この変形量はウレタンの分子量によっても異なり、例えば厚さが0.5mmで幅が10mmのウレタンシート62の場合は波打ちの凹凸の最大値は4mm程度であった。このウレタンシート62の変形によりホトセンサ66の光路が遮断されて作像ユニット2周囲の液滴31aの濃度分布が所定値に達していることを検出することができる。
【0071】
この濃度センサ60のウレタンシート62は所定量のトナー定着液31を吸着して変形すると、波打ちは直ぐには回復しなく、元の状態に回復するには約1日から2日かかることもある。そこで図13の制御装置100の構成を示すブロック図に示すように、作像ユニット駆動制御部102で濃度センサ再生駆動部109を駆動制御して濃度センサ60を再生させる。
【0072】
この濃度センサ26を設けた場合の画像形成処理が終了してからの処理を図14のフローチャートを参照して説明する。
【0073】
開始している一連の画像形成処理が終了すると(ステップS11,S12)、システム制御部101は濃度センサ60から定着装置3を収容した外装ケース311内の液滴31aの濃度分布が所定値に達していることを示す警報信号が入力しているかどうかを判定し(ステップS13)、警報処理が入力されていない場合は、作像ユニット駆動制御部102に対して現像スリーブ駆動信号を定期的に出力してスリーブ駆動部105を駆動制御させて現像スリーブ26をあらかじめ設定された所定の回転数で一定時間ずつ回転させる(ステップS14)。
【0074】
一方、警報信号が入力されている場合は、定着ユニット駆動制御部103に排気ファン駆動信号を出力し、作像ユニット駆動制御部102に対して警報信号が入力されていることを示す現像スリーブ駆動信号を出力する。定着ユニット駆動制御部103は画像形成処理が終了してから排気ファン駆動信号が入力すると、排気ファン駆動部107により排気ファン46を駆動して排気ダクト34を介して噴霧室33内を排気して外装ケース311と作像ユニット2に漏れ出した液滴31aを吸引して回収させる(ステップS15)。一方、作像ユニット駆動制御部102は警報信号が入力されていることを示す現像スリーブ駆動信号が入力するとスリーブ駆動部105を直ちに駆動制御して現像スリーブ26を高速回転させるとともに現像スリーブ26の表面にあるキャリアーとトナー18をドクターブレード25で現像装置12内に回収する(ステップS16)。この排気ファン46の駆動と現像スリーブ26の高速回転をあらかじめ定めた所定時間行って作像ユニット2の周囲の液滴31aの分散濃度を低下させる(ステップS17)。その後、システム制御部3は現像スリーブ26の高速回転と排気ファン46の駆動を停止させ、作像ユニット駆動制御部102に対して定期的に現像スリーブ駆動信号を出力してスリーブ駆動部105を駆動制御させて現像スリーブ26をあらかじめ設定された所定の回転数で所定時間ずつ定期的に回転させる(ステップS18)。そして作像ユニット駆動制御部102で濃度センサ再生駆動部109を駆動制御して濃度センサ60の駆動モータ67を駆動させてセンサベルト63を半回転させて変形が生じていない部分を外装ケース311内に露出させて再生する(ステップS19)。この濃度センサ20が動作するのは極まれであるから、ウレタンシート22が元の状態に回復するには十分な余裕がある。
【0075】
このようにして定着装置3から漏れ出した液滴31aの分散濃度に応じて現像スリーブ26の回転周期と回転速度を可変するとともに漏れ出した液滴31aを回収するから現像スリーブ26の表面に局部的に液滴31aが付着して凝集することを防ぐことができ、良質な画像を安定して形成することができる。
【0076】
前記説明では作像ユニット2の周囲の液滴31aの分散濃度を低下させてから現像スリーブ26を定期的に一定時間ずつ回転させる場合について示したが、この現像スリーブ26の回転に同期して排気ファン46を再度回転すると、作像ユニット2の周囲の液滴31aの分散濃度をより低下させることができ、現像スリーブ26の表面に局部的に液滴31aが付着して凝集することをより確実に防ぐことができる。
【0077】
また、外装ケース311の記録媒体導入口312に、図15の構成図に示すように、開閉板314を設け、開閉板314を開いた状態で現像スリーブ26の高速回転と排気ファン46の駆動をあらかじめ定めた所定時間行って作像ユニット2の周囲の液滴31aの分散濃度を低下させてから開閉板314を閉じて現像スリーブ26を定期的に所定の回転数で所定時間ずつ回転させても良い。
【符号の説明】
【0078】
1;画像形成装置、2;作像ユニット、3;定着装置、4;画像形成部、
5;記録紙、6;搬送ベルト、10;感光体ドラム、12;現像装置、
18;トナー像、25;ドクターブレード、26;現像スリーブ、
31;トナー定着液、31a;液滴、32;定着液ボトル、33;噴霧室、
34;排気ダクト、40;振動部、41;圧電素子、43;電極、44;交流電源、
45;直流電源、60;濃度センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特公昭49−26591号公報
【特許文献2】特許第3290513号公報
【特許文献3】特開昭53−118139号公報
【特許文献4】特開昭59−119364号公報
【特許文献5】特開2004−109747号公報
【特許文献6】特開2004−109749号公報
【特許文献7】特開2004−109750号公報
【特許文献8】特開2004−109751号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写する作像ユニットと、記録媒体に転写した未定着トナーに、定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、
前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを、画像形成処理が終了した後の非作像時に回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写する作像ユニットと、未定着トナーが有する電荷極性と逆の極性の電荷を付与した定着液の液滴を発生する液滴発生部と、該液滴発生部と大気を連通し、大気側の排気口に排気ファンが設けられ、前記液滴発生部で発生した液滴を回収する排気ダクトを有し、記録媒体上に転写した未定着トナーに定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着し、記録媒体にトナーを定着したのち前記排気ファンを駆動して前記液滴発生部で発生した液滴を回収する定着装置を有する画像形成装置であって、
前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを、画像形成処理が終了した後の非作像時に回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記作像ユニットには前記現像スリーブを、前記作像ユニットを構成する他のユニットと独立して駆動させるスリーブ駆動手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記現像スリーブを、画像形成処理が終了した後の非作像時にあらかじめ設定されたタイミングをおいて定期的に所定時間ずつ回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記現像スリーブを回転しているとき、前記現像スリーブ表面のトナーを前記現像装置内に回収することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項2記載の画像形成装置において、
画像形成処理が終了した後に、前記定着装置の排気ファンの駆動と同期して前記現像スリーブを回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記定着装置近傍における定着液の液滴の分散濃度を濃度センサで検出し、前記濃度センサで検出している液滴の分散濃度が所定濃度を超えたとき、前記定着装置の排気ファンの駆動と同期して回転する前記現像スリーブの回転速度を高めることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の画像形成装置において、
前記定着装置の排気ファンの駆動が終了した後、前記現像スリーブを定期的に所定時間ずつ回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーに、定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着した後の非作像時に、前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを回転させることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーが有する電荷極性と逆の極性の電荷を付与した定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着し、残留している定着液の液滴を回収して画像形成処理が終了した後の非作像時に、前記現像装置のトナーを前記像担持体に供給する現像スリーブを回転させることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
像担持体に形成された潜像を現像装置で可視化してトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写した未定着トナーが有する電荷極性と逆の極性の電荷を付与した定着液の液滴を付着させて膨潤・軟化して記録媒体に定着した後、残留している定着液の液滴の回収と同期して前記現像スリーブを回転させることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−204395(P2010−204395A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50016(P2009−50016)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】