説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】用紙を傾け斜めから見た際の潜像画像パターンの視認性を改善する画像形成装置を提供する。
【解決手段】用紙上に複数色の色材によりプリント画像および潜像画像を転写し、定着部で定着するようにした電子写真方式の画像形成装置であって、潜像画像を複数の潜像画線により形成する潜像画像生成部と、潜像画線と平行に潜像画線の端から延び、潜像画線の線幅よりも狭い色ズレ画線を連続した点線で形成する色ズレ画線生成部と、色ズレ画線の静電像を像担持体に形成する際に、色材の付着量を制限する色材リミット部と、潜像画線の静電像を像担持体に形成する際に、色材リミット部を経ずに画像形成処理を行って色ズレ画線との画像合成を行う画像合成部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子写真方式によりプリント用紙に凹版潜像を形成する画像形成装置、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造防止技術として「凹版潜像」技術がある。凹版潜像とは、凹版印刷の特徴である凹版と特殊な製版方法により、色材を盛り上げて印刷することで、真正面からは何も見えないが、用紙を見る角度を変えて斜めから見ると、色材の盛り上がりにより下地が隠れるため、隠れていた文字や絵柄が浮かび上がる技術である。凹版潜像は、用紙を傾けるだけで真偽判定が容易にできるため、お札や、商品券等に用いられている。
【0003】
凹版潜像が印刷された商品券や証券等の印刷物は、印刷物を斜めから見ることで初めて凹版潜像が出現することが確認できれば、印刷物が本物であることの証となる。一方、正面から凹版潜像印刷箇所を見たときに、潜像が僅かでも見えた場合には疑念が生じるため、当該印刷物は本物として取り扱うことができなくなる。
【0004】
上述した凹版印刷は、特殊なインクを使用し、極めて高度な印刷技術を要し、凹版も非常に高価なものとなっている。そこで、凹版潜像を電子写真方式の画像形成装置を用いてトナー画像として形成することが提案されている。
【0005】
しかしながら、MFP等の画像形成装置によるコピーまたはプリントで潜像パターンを付加した印刷を行う際には、印刷時の色重ねズレにより潜像が浮き出てしまう欠点がある。また潜像パターンに色重ねズレを対策するパターンを付加する考えもあるが、用紙の白下地面積の減少により、用紙を傾け斜めから見ても潜像が浮かび上がって見え難くなることがあるため、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−291609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、画像形成装置による凹版潜像印刷において、用紙を傾け斜めから見た際の潜像画像パターンの視認性を改善する画像形成装置及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る画像形成装置は、用紙上に複数色の色材によりプリント画像および潜像画像を転写し、定着部で定着するようにした電子写真方式の画像形成装置であって、前記潜像画像を複数の潜像画線により形成する潜像画像生成部と、前記潜像画線と平行に前記潜像画線の端から延び、前記潜像画線の線幅よりも狭い色ズレ画線を連続した点線で形成する色ズレ画線生成部と、前記色ズレ画線の静電像を像担持体に形成する際に、色材の付着量を制限する色材リミット部と、前記潜像画線の静電像を前記像担持体に形成する際に、前記色材リミット部を経ずに画像形成処理を行って前記色ズレ画線との画像合成を行う画像合成部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る画像形成装置を示す全体構成図。
【図2】一実施形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図。
【図3】一実施形態における凹版潜像付きの用紙を示す説明図。
【図4】一実施形態における凹版潜像の部分拡大図。
【図5】図4における凹版潜像の部分拡大図。
【図6】色ズレ画線を削除した凹版潜像の部分拡大図。
【図7】一実施形態における色ズレ画線を示す拡大図。
【図8】色ズレ画線が実線と点線の場合のトナー付着による線太りを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、画像形成装置の一実施形態を示す正面図である。図1において、10は画像形成装置であり、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0012】
MFP10の本体11の上部には原稿台(document table)があり、原稿台上には自動原稿搬送部(ADF)12を開閉自在に設けている。また本体11の上部には操作パネル13を設けている。操作パネル13は、各種のキーから成る操作部14と、タッチパネル式の表示部15を有している。
【0013】
本体11内のADF12の下部にはスキャナ部16を設けている。スキャナ部16は、ADF12によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成する。さらに本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数のカセット18を有している。
【0014】
プリンタ部17は、感光体ドラムとレーザ等を含み、スキャナ部16で読み取った画像データや、PC(Personal Computer)などで作成された画像データを処理して用紙に画像を形成する。プリンタ部17によって画像が形成された用紙は、排紙ローラ37,38を介して排紙トレイ39に排出される。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、光走査装置(レーザユニット)19からのレーザビームによって感光体を走査して画像を生成する。
【0015】
プリンタ部17は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置している。
【0016】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、同じ構成であるため、画像形成部20Yを代表にして説明する。画像形成部20Yは、像担持体である感光体ドラム22Yを有し、感光体ドラム22Yの周囲に、帯電チャージャ23Y、現像器24Y、1次転写ローラ25Y、クリーナ26Y等を配置している。感光体ドラム22Yの露光位置には、光走査装置19からイエローのレーザビームを照射し、感光体ドラム22Y上に静電潜像を形成する。
【0017】
画像形成部20Yの帯電チャージャ23Yは、感光体ドラム22Yの表面を一様に全面帯電する。現像器24Yは、現像ローラによりトナー及びキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Yに供給する。クリーナ26Yは、ブレードを用いて感光体ドラム22Y表面の残留トナーを除去する。
【0018】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kの上部には、現像器24Y…にトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ28Y,28M,28C,28Kが隣接している。
【0019】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され循環的に移動する。中間転写ベルト21は感光体ドラム22Yに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Yに対向する位置には、1次転写ローラ25Yにより1次転写電圧が印加され、感光体ドラム22Y上のトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。
【0020】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、2次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と2次転写ローラ33間を用紙Sが通過する際に、2次転写ローラ33により2次転写電圧が印加され、中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Sに2次転写する。
【0021】
一方、光走査装置19は、各感光体ドラム22Y〜22Kに、画像情報に応じたレーザビームを照射し走査する。レーザビームによって、各感光体ドラム22Y・・・に現像すべき色に対応した静電潜像が形成される。
【0022】
また給紙カセット18から2次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18から用紙を取り出すローラ34と、取り出した用紙Sを搬送する搬送ローラ35を設けており、2次転写ローラ33の下流には定着装置36を設けている。また定着装置36の下流には排紙ローラ37,38を設けている。
【0023】
画像形成装置10は、スキャナ16やPC等から画像データが入力されると、各画像形成部20Y〜20Kにて、順次に画像が形成される。前述したイエロー(Y)のトナー像形成プロセスと同様にして、画像形成部20M〜20Kにより、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像が形成され、中間転写ベルト21上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を多重転写し、フルカラートナー像を得る。
【0024】
中間転写ベルト21は、フルカラートナー像を2次転写ローラ33の転写バイアスにより用紙S上に一括2次転写する。中間転写ベルト21上のフルカラートナー像が2次転写ローラ33に達するのと同期して、給紙カセット18から2次転写ローラ33へ用紙Sが給紙される。トナー像が2次転写された用紙Sは、定着装置36により加圧・加熱されトナー像を定着し、トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラ37,38を介して排紙トレイ39に排出される。
【0025】
次に図2を参照して、画像形成装置10のシステム構成について説明する。図2において、画像形成装置10は、画像読取部16(スキャナ部)、第1の画像処理部41、メモリ制御部42、ストレージ部43を有する。メモリ制御部42は、第1のメモリ制御部421と第2のメモリ制御部422を含み、ストレージ部43は第1のメモリ431と第2のメモリ432を含む。第1の画像処理部41は、画像読取部16で読み取った原稿情報(画像データ)を処理してRGBの画像データを生成し、画像データを第1のメモリ制御部421を介して第1のメモリ431に保存する。
【0026】
またPC(Personal Computer)等の外部情報端末44、外部インターフェース部45(I/F)及びプリンタコントロール部46を有し、PC44からの画像情報が、I/F45及びプリンタコントロール部46を介してストレージ部43に保存される。ストレージ部43の第1のメモリ431には、プリント画像である原稿情報を保存し、第2のメモリ432には、後述する潜像画像を形成する元データとして凹版潜像情報、色ズレ画線及びカモフラージュ画線の情報が保存される。
【0027】
メモリ制御部42には、第2の画像処理部47が接続されており、第2の画像処理部47の出力は画像形成部17(プリンタ部)に出力される。第2の画像処理部47は色材リミット部48を含む処理部49と、画像合成部50を有する。第2の画像処理部47は、処理部49においてRGBの原稿情報をY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の画像データに変換する。
【0028】
メモリ制御部42、ストレージ部43、プリンタコントロール部46、第2の画像処理部47及びプリンタ部17は制御部51によって制御される。制御部51には、選択スイッチ52及びスタートスイッチ53が接続されている。尚、制御部51は、画像合成部50を制御するため重み係数(%)を指示する制御信号C1と合成用画像のオン/オフを指示する制御信号C2を生成する。図2において太い実線はデータ信号線を示し、点線は制御信号線を示す。
【0029】
以下、図2の画像形成装置の動作を説明する。画像読取部16は、ADF12からの原稿又は原稿台に載置した原稿を読み取り、読取った原稿情報(スキャンデータ)を第1の画像処理部41に供給する。第1の画像処理部41では、原稿情報をRGBのスキャンデータに処理し、第1のメモリ制御部421を介してストレージ部43の第1のメモリ431に入力する。
【0030】
また、PC44からの原稿情報は、I/F45を介してプリンタコントロール部46に入力し、プリント画像である原稿情報を一旦ストレージ部43の第1のメモリ431に入力する。通常のプリントモードでは、第1メモリ431の原稿情報が第1のメモリ制御部421によって読み出され、第2画像処理部47に入力される。第2の画像処理部47は、処理部49において原稿情報をY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の画像データに変換する。
【0031】
原稿情報のみを印字する場合には、処理部49から各色の画像データが画像形成部17(プリンタ部)に出力される。処理部49では、トナーである色材の付着量を制限するための色材リミット部48を有し、画像形成部17において像担持体である感光体ドラム22に付着するトナーの付着量を制限する。つまり、用紙に転写された未定着のトナー画像の付着量(高さ)が多いと定着不良を招き、また色材の散りが発生するので、これらの現象を防止するために色材の付着量を制限する。色材の付着量の制限方法としては、例えば、感光体ドラムの帯電電位、レーザ露光の出力等の静電像の成形処理を制限する方法がある。
【0032】
次に、潜像印字モードでの画像形成動作を説明する。操作パネル13には、図2で示す潜像印字の選択スイッチ52とスタートスイッチ53を設けている。またストレージ部43の第2のメモリ432には、例えばPC44で形成した潜像画像のデータと、後述する色ズレ画線及びカモフラージュ画線の情報が保存されている。第2のメモリ432に保存される潜像画像のデータは、文字,図形,記号、画像データあるいはこれらを組み合わせ情報で構成されている。
【0033】
選択スイッチ52がオンされると、制御部51の制御のもとに画像合成部50には第2のメモリ432からの潜像画像データが出力される。潜像画像データは、色材リミット部48の制限を受けることなく色材の盛り上げを許容した潜像画像の形成を可能とし、スタートスイッチ53がオンされるのを待つ。また選択スイッチ52がオンされると、第2のメモリ432から色ズレ画線およびカモフラージュ細線の情報が第2画像処理部47の色材リミット部48に出力され、スタートスイッチ53がオンされるのを待つ。
【0034】
図3は、プリント用の用紙Sにプリント画像S1と凹版潜像S2を印字する状態を示している。プリント画像S1は、色材リミット部48により色材量が制限されて、予め設定した量(設定高さ)以上にならないようにしている。
【0035】
一方、凹版潜像S2は、用紙Sの例えば上方部に形成される。凹版潜像S2は、中心部の四角形枠部61を右上がり傾斜の複数の潜像画線で形成し、四角形枠部61の外側の四角形枠部62を右下がり傾斜の複数の潜像画線で形成し、右上がり傾斜及び右下がり傾斜の潜像画線をトナーの盛り上げにより形成する。また凹版潜像S2の四角形枠部62の外周部分63には、カモフラージュパターンとして右上がり傾斜の複数のカモフラージュ画線73を形成している。カモフラージュ画線73は色材リミット部48により色材高さの制限を受けた画像とする。
【0036】
スタートスイッチ53がオンされると、プリント画像S1、色ズレ画線及びカモフラージュ細線の画像信号が色材リミット部48で色材の付着量が制限されて画像形成部17に出力される。また、画像合成部50から色材リミットが解除された各色の潜像画像の信号が画像形成部17に出力される。
【0037】
具体的には、各色の画像形成部(20Y,20M,20C,20K)の感光体ドラム22Y…にレーザ露光装置19により主走査方向に画像光がスキャンされ、現像器24Y…によって現像される。現像器24Y…により現像して用紙Sに付着するトナー量は、色材リミット部48で制限を受けた画像については最大量が規定される。
【0038】
色材リミット部48を経ずに画像合成部50に出力された潜像画像61,62については凹版潜像としての効果が得られる高さとなるようにトナー付着量の制限値を超えて現像される。なお、凹版潜像S2に印字する複数の潜像画線61,62はそれぞれ等間隔に形成される。また、カモフラージュ画線73の間隔は潜像画線61,62の間隔と等しくしている。現像後は、1次転写ローラ25Y…、中間転写ベルト21、2次転写ローラ33、定着装置36等を経てトナー像を用紙Sに定着し、トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラ37,38を介して排紙トレイ39に排出される。
【0039】
図4は、凹版潜像S2の四角形枠部61及び四角形枠部62を拡大して示す説明図であり、図5は、図4の点線領域Aを拡大して示す説明図である。尚、図4において、横方向は光走査装置19による主走査方向を示し、縦方向は副走査方向を示している。
【0040】
図4に示すように、四角形枠部61は、右上がり傾斜の複数の潜像画線71で構成し、四角形枠部62は、右下がり傾斜の複数の潜像画線72で構成している。また図5に示すように、複数の潜像画線71は、潜像画線本線部71Aに対してマゼンダの色部分であるM色部分71Mがずれて形成されている。また複数の潜像画線72は、潜像画線本線部72Aに対してシアンの色部分であるC色部分72Cがずれて形成されている。尚、色材を盛り上げるために色信号に重み付け係数(制御信号線C1による)を掛け合わせてデータを生成する。
【0041】
また各潜像画線71と72の端からそれぞれ平行に延びて色ズレ画線81,82を形成している。色ズレ画線81,82は、例えば四角形枠部62の外周縁まで延長して形成している。色ズレ画線81,82は、各潜像画線71,72の画線幅よりも狭い。図5に示すように、色ズレ画線81は、色ズレ画線本線部81Aに対してマゼンダの色部分であるM色部分81Mがずれて形成され、色ズレ画線82は、色ズレ画線本線部82Aに対してシアンの色部分であるC色部分82Cがずれて形成されている。尚、色ズレ画線81,82は凹版潜像S2の形成領域の外周縁まで延長してもよい。
【0042】
また、潜像画線71に対して色ズレ画線82が交叉し、潜像画線72に対して色ズレ画線81が交叉してそれぞれ重なるように形成する。その際、色ズレ画線81Aを潜像画線71の線幅内に収まるように形成する。尚、色ズレ画線81は、色ズレ画線本線部81AとM色部分81Mとを別々にレーザ光の露光により像担持体上に形成する。同様に、色ズレ画線82は、色ズレ画線本線部82AとC色部分82Cとを別々にレーザ光の露光により像担持体上に形成する。
【0043】
こうして、図3に示す凹版潜像S2は、用紙Sを左回りに45度回した状態で斜め上方から見ると四角形枠部62の凹版潜像が視認でき、逆に用紙Sを右回りに45度回した状態で斜め上方から見ると中抜きの四角形枠部61の凹版潜像が視認できる。
【0044】
色ズレ画線81,82およびカモフラージュ画線73は、第2のメモリ432に潜像画像のデータと共に保存され、選択スイッチ52のオンにより、潜像画像データとは別に第1のメモリ制御部421を介して第2の画像処理部47の色材リミット部48に供給される。つまり、色ズレ画線81,82およびカモフラージュ画線73は原稿画像と同様にトナーを高く盛り上げないので、色材リミット部48を通して色材量を制限する。
【0045】
一方、潜像画線71,72は、ある程度の高さを必要とするため、潜像画像データは、第2のメモリ制御部422から画像合成部50に供給する。したがって、色材リミット部48による制限を受けずにトナーを盛り上げることができる。
【0046】
また制御部51は、制御信号線C2を介して画像合成のオン・オフを指示する信号を画像合成部50に送る。選択スイッチ52がオンされると、画像合成部50に制御信号線C2を介して画像合成の指示(例えば「1」)を出す。したがって、画像合成部50は第2のメモリ制御部422からの潜像画像データに、色材リミット部48からの色ズレ画線81,82およびカモフラージュ画線73を合成して出力する。また選択スイッチ52がオフのときは画像合成なしの指示(例えば「0」)を画像合成部50に出す。したがって、第2の画像処理部47からは、色材リミット部48からの原稿画像データが出力される。
【0047】
実際には、スタートスイッチ53がオンされると、色ズレ画線71,72及びカモフラージュ細線63の画像信号が色材リミット部48で色材付着量を制限されて画像形成部17に出力される。また、画像合成部50から色材リミットが解除された各色の潜像画像71,72の信号が画像形成部17に出力される。
【0048】
色ズレ画線81,82は、潜像画線71,72に生じる色ズレに合わせて、同様の色ズレを有するように制御して形成している。図6に示すように、仮に色ズレ画線81,82が存在しないとすると、潜像画線71,72に生じる色ズレは目立つ。これに対し、図4に示すように、色ズレ画線81,82が存在するとカモフラージュ効果が生じ潜像画線71,72の色ズレが目立たなくなる。
【0049】
さらに、色ズレ画線81,82自体も潜像画線71,72の色ズレに合わせた同様の色ズレパターンで形成している。このため、潜像画線71,72は同じ色ズレを有する複数本の色ズレ画線81,82の中に溶け込んだように存在することになり、色ズレのカモフラージュ効果が生じ、複数本の潜像画線71,72を上方から見ても単なる画線と認識するだけで、その箇所に凹版潜像が潜んでいるとの認識がし難くなる。
【0050】
また本実施形態では、色ズレ画線81,82を図7に示すように点線で印字するようにしている。図7において、色ズレ画線81,82が印字される部分を黒いドットで示し、印字されない部分を白ドットで示す。例えば印字部を2ドットとし、非印字部を1ドットとして繰り返すドットパターンにて印字する。また印字部を1ドットとし、非印字部を1ドットとしても良い。
【0051】
色ズレ画線81,82が連続した線で構成されると、図4の点線Bで示す白下地領域にトナーが散って線太りを生じる可能性があり、用紙Sを斜めにしても凹版潜像が見えにくくなる。一方、色ズレ画線81,82を実線から点線にすると、印刷時のトナー付着による線太りを低減し、白下地領域の面積を拡げることができる。したがって、色ズレ画線81,82を実線から点線にした場合、用紙Sを傾けて斜めから見たときに潜像画像パターンの視認性を改善することができる。
【0052】
図8(a)は、色ズレ画線81,82が実線のときのトナー散りの状態を示す実験データである。実線のときは、トナー散りによって線太り(幅W1)を生じ白下地領域の面積Bが減少していることが分かる。
【0053】
図8(b)は、色ズレ画線81,82が点線のときのトナー散りの状態を示す実験データである。点線にすることでトナー散りが減少し、線太りが低減(幅W2:W1>W2)する。したがって白下地領域Bの面積を拡げることができる。図8(b)の実験結果では、色ズレ画線81,82の点線を、印字部を2ドットとし、非印字部を1ドットとしたときに良好な結果が得られた。
【0054】
以上述べた実施形態によれば、潜像画像の部分のみ色材の盛り上がった印刷物を出力することができ、用紙を傾けて斜めから見た際の潜像画像パターンの視認性を改善することができる。また潜像画像は細線パターンで形成されるため、色材を盛り上げても定着不良が発生することがない。
【0055】
尚、本実施形態においては、四角形枠部62に形成する潜像画線72と、潜像画線62を取り囲む外周部分63に形成するカモフラージュパターンの画線との端を合わせずに離して形成している。即ち、トナーの盛り上がった潜像画線72と、色材量が制限されて低いカモフラージュパターンの画線73の端がつながっていると、定着部で定着の際に、潜像画線72の盛り上がったトナーがカモフラージュパターンの画線73側に流れ、両者が繋がって例えば傾斜面をなすので、凹版潜像の境界が目立つ。しかし、潜像画線72の端とカモフラージュパターンの画線73との端を離して形成しているので、凹版潜像の境界が目立つことはない。
【0056】
また本実施形態では、潜像画線72の外周にカモフラージュ画線73を形成しているが、潜像画線71,72を原稿画像に隣接して形成することもできる。その際、潜像画線の端は原稿画像と離して形成する。したがって、真上から潜像画像を見たときの潜像パターンと非潜像パターンのつなぎ目の目立ちを低減させることができる。
【0057】
また、凹版潜像S2を用紙Sの上部に印字する例を述べたが、これに限定されることはなく、用紙S上における印字可能な領域であればどのような領域に潜像表示部を設定することができる。
【0058】
また本実施形態で説明した処理は、制御部51に設けられた記憶領域に予め記憶されているプログラムに基づいてメモリ制御部42、第2画像処理部47に実行させる場合を例示したが、プログラムをネットワークからMFPにダウンロードしても良く、プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶させたものをMFPにインストールしても良い。記録媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば良い。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
100…画像形成装置(MFP)
11…画像形成装置本体
12…ADF
13…操作パネル
16…スキャナ部
17…プリンタ部
20Y,20M,20C,20K…画像形成部
41…第1の画像処理部
42…メモリ制御部
43…ストレージ部
44…PC(外部情報端末)
45…外部インターフェース部(I/F)
46…プリンタコントローラ部
47…第2の画像処理部
48…色材リミット部
49…処理部
50…画像合成部
51…制御部
52…選択スイッチ
53…スタートスイッチ
S1…画像印字部
S2…潜像印字部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に複数色の色材によりプリント画像および潜像画像を転写し、定着部で定着するようにした電子写真方式の画像形成装置であって、
前記潜像画像を複数の潜像画線により形成する潜像画像生成部と、
前記潜像画線と平行に前記潜像画線の端から延び、前記潜像画線の線幅よりも狭い色ズレ画線を連続した点線で形成する色ズレ画線生成部と、
前記色ズレ画線の静電像を像担持体に形成する際に、色材の付着量を制限する色材リミット部と、
前記潜像画線の静電像を前記像担持体に形成する際に、前記色材リミット部を経ずに画像形成処理を行って前記色ズレ画線との画像合成を行う画像合成部と、
を具備する画像形成装置。
【請求項2】
前記色ズレ画線生成部は、前記色ズレ画線を、印字ドットと非印字ドットの比率がn:1(nは正の整数)となる点線で形成する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記色ズレ画線生成部は、前記色ズレ画線を、印字ドットと非印字ドットの比率が2:1となる点線で形成する請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記潜像画像生成部は、主走査方向に対して傾斜した複数の第1潜像画線で構成した第1の潜像画像と、前記第1の潜像画像の領域外に前記第1潜像画線と直交するように傾斜した複数の第2潜像画線で構成した第2の潜像画像を形成し、
前記色ズレ画線生成部は、前記第1の潜像画線と平行に前記第1の潜像画線の端から延び、前記第1の潜像画線の線幅よりも狭い第1の色ズレ画線を形成し、前記第2の潜像画線と平行に前記第2の潜像画線の端から延び、前記第2の潜像画線の線幅よりも狭い第2の色ズレ画線を形成する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の色ズレ画線は、色ズレ画線本線部に対して第1の色部分をずらして形成し、前記第2の色ズレ画線は、色ズレ画線本線部に対して第2の色部分をずらして形成する請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
用紙上に複数色の色材によりプリント画像および潜像画像を転写し、定着部で定着するようにした電子写真方式の画像形成方法であって、
前記潜像画像を複数の潜像画線により形成し、
前記潜像画線と平行に前記潜像画線の端から延び、前記潜像画線の線幅よりも狭い色ズレ画線を連続した点線で形成し、
前記色ズレ画線の静電像を像担持体に形成する際に、色材リミット部によって色材の付着量を制限し、
前記潜像画線の静電像を前記像担持体に形成する際に、前記色材リミット部を経ずに画像形成処理を行って前記色ズレ画線との画像合成を行う画像形成方法。
【請求項7】
前記色ズレ画線の生成は、前記色ズレ画線を、印字ドットと非印字ドットの比率がn:1(nは正の整数)となる点線で形成する請求項6記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記色ズレ画線の生成は、前記色ズレ画線を、印字ドットと非印字ドットの比率が2:1となる点線で形成する請求項7記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記潜像画像の生成は、主走査方向に対して傾斜した複数の第1潜像画線で構成した第1の潜像画像と、前記第1の潜像画像の領域外に前記第1潜像画線と直交するように傾斜した複数の第2潜像画線で構成した第2の潜像画像を形成し、
前記色ズレ画線の生成は、前記第1の潜像画線と平行に前記第1の潜像画線の端から延び、前記第1の潜像画線の線幅よりも狭い第1の色ズレ画線を形成し、前記第2の潜像画線と平行に前記第2の潜像画線の端から延び、前記第2の潜像画線の線幅よりも狭い第2の色ズレ画線を形成する請求項6記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記第1の色ズレ画線は、色ズレ画線本線部に対して第1の色部分をずらして形成し、前記第2の色ズレ画線は、色ズレ画線本線部に対して第2の色部分をずらして形成する請求項9記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−186463(P2011−186463A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47602(P2011−47602)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】