説明

画像形成装置

【課題】表面電位計を利用することなく,現像装置の特性のばらつきを考慮して像担持体の表面電位を最適化することが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】カラープリンタ100は,電源投入直後などの非画像形成時,現像装置4の現像バイアスに,帯電装置3の帯電バイアスの中心値と現像バイアスのVdcとの電位差を断続的に変化させるノコギリ波の重畳バイアスを重畳させる。そして,その状態で露光を行わずにトナー像を形成する。そして,そのトナー像のトナー濃度を濃度センサ11により検出し,閾値濃度IDを通過した時点から高濃度のピーク値までの所要時間に相当する濃度幅Tを検出する。そして,この濃度幅Tをあらかじめ設定した基準幅T0に近づけることで,感光体ドラム2の表面電位を最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式にて画像を形成する画像形成装置に関する。さらに詳細には,非画像形成時に帯電バイアスあるいは現像バイアスを調節することにより,像担持体の表面電位の安定化を図る画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,電子写真方式の画像形成装置では,感光体ドラム等の像担持体の表面を帯電させ,露光により静電潜像を形成している。そして,画像に応じたトナー像を形成し,そのトナー像を用紙等の記録媒体上に転写することにより画像を形成している。
【0003】
そして,像担持体の表面を帯電する帯電装置には,回転する像担持体に接触(近接するものも含む)しつつ像担持体の表面を帯電させる接触帯電方式のものや,コロナ放電を利用した非接触帯電方式のものがある。接触帯電方式の帯電装置は,非接触方式の帯電装置等と比較して,オゾン発生量が軽微であり,低い印加電圧で作動できるといった利点を有している。
【0004】
一方,接触帯電装置は,像担持体との微小空隙での放電現象を利用しているため,帯電部材と像担持体との接触状態により帯電特性が変化し易い。また,接触帯電部材は,帯電部材の劣化や汚れなどによる表面状態の変化や抵抗の変化,あるいは湿度や温度などの環境条件の変化により,帯電特性が変化し易い。そのため,像担持体の表面電位が安定しない。
【0005】
この問題を解決するため,耐久状態や環境条件を基に帯電特性を予測し,その予測値にしたがって帯電バイアスを制御する方法がある(例えば,特許文献1)。すなわち,予測値に応じた帯電バイアスを印加することで,像担持体の表面電位を所望の値としている。また,実際の像担持体の表面電位を表面電位計などで測定し,表面電位が所望の値となるようにフィードバック制御を行うものが開示されている(例えば,特許文献2)。
【特許文献1】特許3200121号公報
【特許文献2】特公平6−8972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,帯電特性を予測する方法では,すべての変動要因を網羅して予測制御することは困難である。また,環境条件に合致したとしても必ずしも帯電特性が変化するとは限らない。また,表面電位計を配置する方法では,表面電位計を配置することで装置全体のコンパクト化の妨げとなる。さらには,コストアップを招く。
【0007】
また,像担持体の適正な表面電位とは,像担持体単体で決まるものではなく,現像装置の特性にも依存する。つまり,最適な表面電位とは,像担持体の表面電位と現像電位の中心値との電位差に基づいて求められる。よって,像担持体の表面電位の適正値を設定したとしても,現像装置の機体ばらつきやトナーの変化による現像条件のばらつきを吸収しきれないことがある。
【0008】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,表面電位計を利用することなく,現像装置の特性のばらつきを考慮して像担持体の表面電位を最適化することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた画像形成装置は,トナー像を担持する像担持体と,像担持体の表面を所定の帯電させる帯電部材と,像担持体上にトナーを付与する現像部材と,トナー濃度を検出するトナー濃度検出部材とを有する画像形成装置であって,非画像形成時の所定の期間に,帯電部材に印加する帯電バイアスと現像部材に印加する現像バイアスとの少なくとも一方に,帯電バイアスの中心値と現像バイアスの中心値との差を断続的に変化させるバイアスを重畳し,像担持体上に所定のパターンのトナー像を形成し,トナー濃度検出部材にてそのトナー像のトナー濃度を検出し,そのトナー濃度が所定の閾値以上となる間の所要時間を取得し,その所要時間とあらかじめ設定された目標時間との差を基に,帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方を制御することを特徴としている。
【0010】
すなわち,本発明の画像形成装置は,非画像形成時の所定の期間中に,次のようなバイアスの制御を行う。まず,帯電バイアスと現像バイアスとをともに印加した状態で,帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に,帯電バイアスの中心値(すなわち,直流成分Vdc)と現像バイアスの中心値(同じく,Vdc)との差を断続的に変化させる低周波数のバイアスを重畳する。
【0011】
そして,像担持体上にトナー像を形成する。トナー像のパターンとしては,非露光状態で現像することによって形成されたパターンであるとよりよい。つまり,非画像部に所定のトナー像を形成することで,非画像部での最適電位を制御することができる。このトナー像は,重畳させたバイアスの影響を受け,通紙方向に向かって徐々に濃度が変化する像となる。このトナー像のトナー濃度(所定の面積あたりのトナー量)をトナー濃度検出部材にて通紙方向に沿って検出する。
【0012】
そして,検出したトナー濃度を基に,そのトナー濃度が所定の閾値以上となる間の所要時間を取得する。すなわち,トナー濃度が所定の閾値以上となってからその閾値以下となるまでの所要時間を取得する。この所要時間は,トナー像の所定の濃度以上となる領域の通紙方法の幅に相当するとともに,像担持体の表面電位(帯電バイアス)と,現像部材の電位(現像バイアス)との電位差に換算することができる。
【0013】
ここで,あらかじめ,目標とする電位差,つまり目標時間を設定しておく。そして,取得した所要時間とその目標時間との差を求め,実際の所要時間が目標時間に近づくように帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に対してフィードバック制御を行う。これにより,像担持体の表面電位と現像部材の電位との電位差が最適となるように,帯電バイアスあるいは現像バイアスが設定される。
【0014】
本発明の画像形成装置では,トナー濃度検出部材の検出結果を基に像担持体の表面電位の最適化が図られる。そのため,表面電位計は不要である。また,トナー濃度検出部材は,従来の画像形成装置においても階調補正などの現像特性を調節するために付設されている。そのため,部品点数の増加は招かない。また,トナー濃度のばらつきを測定することで,現像条件を考慮して最適化を図ることができる。よって,像担持体の表面電位についてより一層の最適化が図られる。
【0015】
また,本発明の画像形成装置は,帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に重畳されるバイアスが三角波であることとするとよりよい。すなわち,重畳するバイアスについて,電圧値が直線的に変化する三角波(ノコギリ波などを含む)を適用することにより,電圧値と経過時間との対応付けが容易となるとともに,検知精度のばらつきが小さくなる。
【0016】
また,本発明の画像形成装置は,トナー像が1次転写される中間転写部材を備え,帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に重畳されるバイアスの上限ピーク値から下限ピーク値に達するまでの時間をθと,プロセス速度をvと,中間転写部材の周長をLとすると,次の式(A)を満たすこととするとよりよい。
v×θ<L (A)
【0017】
また,本発明の画像形成装置は,帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に重畳されるバイアスのピーク間電圧値が10Vから2000Vの範囲内であることとするとよりよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,トナー濃度を基に像担持体の表面電位と現像電位との電位差を推測していることから,表面電位計は不要である。また,像担持体の表面電位と現像部材の電位との電位差が反映されるトナー濃度を基に像担持体の表面電位を制御していることから,現像部材のばらつきを反映した最適化処理を行うことができる。よって,表面電位計を利用することなく,現像装置の特性のばらつきを考慮して像担持体の表面電位を最適化することが可能な画像形成装置が実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明にかかる画像形成装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,タンデム型のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0020】
本形態の画像形成装置は,タンデム方式のフルカラープリンタであり,図1に示すように並列に配置された4つの画像形成ユニットを有するものである。具体的に,本形態のカラープリンタ100は,4色の画像形成ユニット1K,1C,1M,1Yを有している。また,その他に中間転写ベルト8,2次転写ローラ9,クリーニングブレード10等を有している。また,中間転写ベルト8上には,転写されたトナー像のトナー濃度を検出するための濃度センサ11が設けられている。各画像形成ユニットは,中間転写ベルト8上に各色の画像を形成するものである。各画像形成ユニットは,画像形成ユニット1Kがブラック(K),画像形成ユニット1Cがシアン(C),画像形成ユニット1Mがマゼンタ(M),画像形成ユニット1Yがイエロー(Y)の各色に対応している。なお,各画像形成ユニットの配置は上記の順序に限定されるものではない。
【0021】
また,画像形成ユニット1Kは,図2に示すようにトナー像を担持する感光体ドラム2を有している。感光体ドラム2は,図2中の矢印方向に一定の速度で回転するようになっている。また,感光体ドラム2の周囲には,その回転方向に沿って,帯電装置3,現像器4,転写装置5,クリーニングブレード7が順次配置されている。なお,帯電装置3と現像器4との間には,潜像が形成される露光部が設けられている。その他の画像形成ユニットについても同様の構成となっている。
【0022】
帯電装置3は,感光体ドラム2の表面を均一に帯電させるものである。帯電装置3としては,コロナ放電により帯電させる非接触型のコロナ帯電装置の他,導電性の接触帯電部材を感光体ドラム2の表面に接触させて帯電させる接触型の帯電装置が適用可能である。接触型の帯電装置としては,ローラ型,ブレード型,ブラシ型,シート型など各種のものがある。また,帯電装置3への印加バイアス(帯電バイアス)の形態は,感光体ドラム2の表面電位を所定の値に設定できるものであればどのようなものであってもよい。例えば,直流電圧や交流電圧であってもよいし,直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧であってもよい。また,パルス電圧,その他の波形の電圧でもよい。また,感光体ドラム2の表面電位は,マイナス側に限るものではなく,プラス側であってもよい。本形態では,サイン波(直流成分(Vdc):−550V,ピーク間電圧(Vpp):1200V,周波数:3kHz)の帯電バイアスが印加される。
【0023】
また,帯電装置3は,帯電バイアスのVdcと感光体ドラム2の表面電位とが比例関係にある。すなわち,感光体ドラム2の表面電位を帯電バイアスによって制御することができる。本形態の帯電装置3の帯電特性を図3に示す。図3では,帯電バイアスとして,DCバイアスおよびDCとACとの重畳バイアス(Vpp:1500V,周波数:2kHz)をそれぞれ用いた際の,帯電バイアスのVdcと感光体ドラムの表面電位との関係を示している。図3に示すように,帯電バイアスのVppの値によってy切片は異なるが,いずれも感光体ドラムの表面電位は帯電バイアスのVdcに対して傾き1の比例関係にあることがわかる。
【0024】
現像器4は,潜像上にトナーを付与する機能を有している。現像器4としては,接触型であっても非接触型であってもよい。また,現像方式は,トナーとキャリアとからなる二成分現像方式であっても,キャリアを含まない一成分現像方式であってもよい。また,本形態では,マイナス帯電トナーを使用するが,トナー像の現像が可能であれば,プラス帯電トナーであってもよい。本形態では,矩形波(Vdc:−420V,Vpp:1600V,周波数:2kHz,マイナス側のデューティ比:35%)の現像バイアスが印加される。
【0025】
続いて,本形態のカラープリンタ100にて画像を形成する場合の動作について説明する。まず,帯電装置3の負極性バイアスにより,感光体ドラム2の表面が所定の電位に帯電される。次に,露光部にて1ページ目の潜像が形成される。露光手段としては,静電潜像を形成可能なものであればよく,例えばレーザ露光が適用可能である。
【0026】
次に,現像器4により,負極性のトナーによる現像が行われ,感光体ドラム2上に1ページ目のトナー像が形成される。次に,転写装置5により,1ページ目のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される。すなわち,感光体ドラム2上のトナーは,転写装置5の正極性バイアスにより中間転写ベルト8に転写される。このとき,一部のトナーは,転写されずに感光体ドラム2上に残留する。
【0027】
次に,クリーニングブレード7により,感光体ドラム2上に残留したトナーが掻き取られる。その後,再び帯電装置3により感光体ドラム2の表面が帯電される。次に,露光部で2ページ目の静電潜像が形成される。次に,再び現像器4により現像が行われ,トナー像が形成される。
【0028】
このような動作を画像形成ユニットごとに繰り返し,中間転写ベルト8上にそれぞれの色のトナー画像を重ねる。そして,4色のトナー像が重ね合わせられることにより,中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。このカラー画像が2次転写ローラ9にて記録紙に転写される。そして,その記録紙が定着装置を介して排出トレイに出力される。
【0029】
さらに,1つのプリントジョブが終了した後,所定の枚数を出力した後,電源投入直後などの非画像形成時に,帯電バイアスの調節が行われる。本形態では,帯電バイアス(すなわち,感光体ドラム2の表面電位)と現像バイアス(すなわち,現像ローラの電位)との差を変化させ,露光を行わずに現像を行う。そして,現像されたトナー像のトナー濃度を基に電位差を推定し,あらかじめ記憶された所定の電位差となるようにフィードバック制御を行う。このような動作を画像形成ユニットごとに行う。帯電バイアスの調節の詳細は後述する。
【0030】
続いて,帯電バイアスの調節方法について,図4に示すフローチャートを基に詳説する。なお,帯電バイアスの調節は,非画像形成時に行う。
【0031】
まず,帯電バイアスと現像バイアスとをともに印加した状態で,帯電バイアスのVdcと現像バイアスのVdcとの差を断続的に変化させるバイアスを現像バイアスに重畳する(S1)。すなわち,感光体ドラム2の表面電位と現像電位との差を断続的に変化させるバイアスを現像バイアスに重畳する。本形態では,ノコギリ波(Vdc:−400V,Vpp:400V,周波数:1kHz)を現像バイアスに重畳させる。なお,この現像バイアスに重畳させるバイアス(重畳バイアス)の,波形,周波数,Vpp,Vdcなどは,使用する現像器のシステム速度によって変化させてもよい。
【0032】
また,重畳バイアスは,ノコギリ波に限らず,サイン波などでもよい。しかし,バイアスの印加後の経過時間と,そのときに印加されている電圧値が1対1で対応している波形が望ましい。また,サイン波のように電圧値が曲線的に変化する波形よりも,三角波のように電圧値が直線的に変化する波形の方が制御が容易である。そのため,本実施の形態では,マイナス側からプラス側に変化するノコギリ波を利用する。もちろん,ノコギリ波はプラス側からマイナス側に変化するものであってもよい。
【0033】
重畳バイアスのVppは,表面電位が測定できる幅に相当する。Vppが大きいとトナー像の濃淡の差が大きくなり,測定精度が向上する。Vppを小さくすると測定できる範囲が狭くなる。一方,Vppを大きくすると表面電位の変化が大きくなる。そのため,感光体ドラムの表面と現像器との間にリーク等の不具合が生じる。それらを考慮すると,重畳バイアスのVppをVdとし,次の条件(1)を満たすことが望ましい。
10<Vd<2000 (1)
【0034】
重畳バイアスの周波数は,表面電位の測定時間に相当する。周波数が低いと測定時間が長くなり,測定精度が向上する。しかし,測定に時間がかかることや,表面電位の測定時のトナー消費量が多くなる。重畳バイアスの周波数は,ノコギリ波の最大値から最小値に変化するまでの時間をθ(s),プロセス速度v(mm/s),中間転写ベルトの周長L(mm)として,次の条件(2)を満たすように設定することが望ましい。
v×θ<L (2)
この条件を満たすことにより,中間転写ベルト8上に重ね合わせられることなく,確実にトナー像全体を転写することができる。
【0035】
なお,重畳バイアスは,帯電バイアスに重畳させてもよい。あるいは,帯電バイアスと現像バイアスとの双方に重畳させてもよい。
【0036】
次に,S1の処理の重畳バイアスを印加した状態で,露光を行わずに現像を行う(S2)。そして,感光体ドラム2上に現像されたトナー像を中間転写ベルト8上に転写する(S3)。
【0037】
次に,中間転写ベルト8上のトナー像のトナー濃度を濃度センサ11にて測定する(S4)。本形態では,現像バイアスに対して,マイナス側からプラス側に変化するノコギリ波を重畳しているため,図5に示すように通紙方向に向かって濃度が徐々に大きくなる,すなわち徐々に濃くなるようなトナー像が形成される。そして,図5では省略してあるが,このようなトナー像が通紙方向に繰り返し形成される。
【0038】
次に,あらかじめ設定された閾値濃度ID以上となる通紙方向の濃度幅Tを測定する(S5:図6参照)。具体的に本形態では,閾値濃度IDとなってから高濃度側のピーク値,すなわちトナー像の切れ目となるときまでの所要時間を計測する。この所要時間を基に,濃度幅Tを算出する。
【0039】
濃度幅Tは,感光体ドラム2の表面電位と現像バイアスのVdcとの電位差に比例することが知られている。図7は,トナー濃度の濃度幅とその電位差との関係を示しており,濃度幅Tとその電位差とが比例関係にあることがわかる。また,その傾きは,重畳バイアスのVppをVd,重畳バイアスの最大値から最小値に変化するまでの時間をθ(s),プロセス速度v(mm/s)として,Vd/vθと等価である。
【0040】
つまり,濃度幅Tを測定することは,感光体ドラム2の表面電位と現像バイアスのVdcとの電位差を測定することと等価である。そのため,あらかじめ所定の電位差での濃度幅(基準幅)T0を規定することにより,測定された濃度幅Tからその電位差のずれ分を検出することができる。
【0041】
なお,現像器4側の電位が一定であるとすると,濃度幅Tから感光体ドラム2の表面電位が得られる。すなわち,現像器4側の電位が一定であるとすると,図8に示すように,濃度幅Tと,感光体ドラム2の表面電位とが比例関係にある。そのため,つまり,濃度幅Tを測定することで,感光体ドラム2の表面電位を推測することができる。
【0042】
次に,測定した濃度幅Tと基準幅T0とのずれ分を基に,帯電バイアスに対してフィードバック制御を行う(S6)。すなわち,感光体ドラムの表面電位(濃度幅T)を所望の値とするため,帯電バイアスを調節する。
【0043】
本形態では,帯電バイアスと感光体ドラム2の表面電位とが比例関係にあるため,表面電位のずれ分だけ電位を加算あるいは減算すればよい。具体的に,本形態では,感光体ドラム2の表面電位が−500Vのときの濃度幅50mmを基準幅T0とした。測定された濃度幅TがT0より小さい場合には,感光体ドラム2の表面電位が−500Vよりマイナス側である。一方,測定された濃度幅TがT0より大きい場合には,感光体ドラム2の表面電位が−500Vよりプラス側である。そして,ずれ分となる電位差△V(V)は,次の式(3)で表される。
△V=((T−T0)/vθ)×Vpp (3)
【0044】
帯電バイアスの調節では,このずれ分△Vを補正する。本形態では,図3に示したように感光体ドラム2の表面電位と帯電バイアスのVdcとが傾き1の比例関係にあるため,帯電バイアスのVdcを設定値から△Vだけマイナス側に補正する。これにより,現像バイアスが調節される。
【0045】
以上詳細に説明したように本形態のカラープリンタ100では,電源投入直後などの非画像形成時に,帯電バイアスの制御を行うこととしている。具体的には,現像バイアスに帯電バイアスのVdcと現像バイアスのVdcとの電位差を断続的に変化させるノコギリ波の重畳バイアスを重畳させ,その状態で露光を行わずにトナー像を形成することとしている。そして,そのトナー像のトナー濃度を検出し,通紙方向の濃度幅Tを算出することとしている。詳細には,閾値濃度IDを通過した時点から高濃度のピーク値までの経過時間から算出される。この濃度幅Tは,感光体ドラム2の表面電位と現像バイアスのVdcとの電位差に比例する。そのため,濃度幅Tをあらかじめ設定した基準幅T0に近づけることで,表面電位計を利用せずに感光体ドラム2の表面電位を最適化することができる。そのため,コンパクト化の妨げとなったり,コストアップを招くことはない。なお,濃度センサ11は,階調補正などの現像特性を制御するために従来の画像形成装置でも付設されているものであり,部品点数の増加を招くものではない。
【0046】
また,表面電位の最適化を,実際にトナー像を形成して行っていることから,現像器4やトナーの変化による現像条件のばらつきも反映することができている。つまり,より精度が高い最適化処理を行うことができている。よって,表面電位計を利用することなく,現像装置の特性のばらつきを考慮して像担持体の表面電位を最適化することが可能な画像形成装置が実現している。
【0047】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置としては,プリンタ,複写機,スキャナ,FAX等であって電子写真方式にて画像を形成するものであれば適用可能である。また,カラー画像を形成するものであってもモノクロ画像専用のものであってもよい。また,タンデム方式であっても4サイクル方式であってもよい。
【0048】
また,本実施の形態では,中間転写ベルト上に転写されたトナー像のトナー濃度を測定しているが,これに限るものではない。例えば,現像された直後の感光体ドラム上に位置するトナー像のトナー濃度を測定してもよい。
【0049】
また,本実施の形態では,重畳バイアスを現像バイアスに重畳させているが,これに限るものではない。すなわち,帯電バイアスに重畳させてもよい。また,本実施の形態では,帯電バイアスに対してフィードバック制御を行うことで濃度幅Tを調節しているが,これに限るものではない。すなわち,現像バイアスに対してフィードバック制御を行うこととしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態に係るカラープリンタの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成ユニットの構成を示す概略図である。
【図3】帯電バイアスのVdcと感光体ドラムの表面電位との関係を示すグラフである。
【図4】帯電バイアスの調節手順を示すフローチャートである。
【図5】1次転写後のトナー像のイメージを示す図である。
【図6】トナー像のトナー濃度のパターンを示す図である。
【図7】トナー濃度の濃度幅と,感光体ドラムの表面電位と現像バイアスのVdcとの電位差との関係を示すグラフである。
【図8】トナー濃度の濃度幅と,感光体ドラムの表面電位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1K 画像形成ユニット
2 感光体ドラム(像担持体)
3 帯電装置(帯電部材)
4 現像装置(現像部材)
5 転写装置
7 クリーニングブレード
8 中間転写ベルト(中間転写部材)
11 濃度センサ(トナー濃度検出部材)
100 カラープリンタ(画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と,前記像担持体の表面を所定の帯電させる帯電部材と,前記像担持体上にトナーを付与する現像部材と,トナー濃度を検出するトナー濃度検出部材とを有する画像形成装置において,
非画像形成時の所定の期間に,
前記帯電部材に印加する帯電バイアスと前記現像部材に印加する現像バイアスとの少なくとも一方に,帯電バイアスの中心値と現像バイアスの中心値との差を断続的に変化させるバイアスを重畳し,
前記像担持体上に所定のパターンのトナー像を形成し,
前記トナー濃度検出部材にてそのトナー像のトナー濃度を検出し,そのトナー濃度が所定の閾値以上となる間の所要時間を取得し,
その所要時間とあらかじめ設定された目標時間との差を基に,帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像形成装置において,
帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に重畳されるバイアスは,三角波であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像形成装置において,
前記トナー像は,非露光状態で現像することによって形成されたパターンを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像形成装置において,
前記トナー像が1次転写される中間転写部材を備え,
帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に重畳されるバイアスの上限ピーク値から下限ピーク値に達するまでの時間をθと,プロセス速度をvと,中間転写部材の周長をLとすると,次の式(A)を満たすことを特徴とする画像形成装置。
v×θ<L (A)
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像形成装置において,
帯電バイアスと現像バイアスとの少なくとも一方に重畳されるバイアスのピーク間電圧値は,10Vから2000Vの範囲内であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−337685(P2006−337685A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161818(P2005−161818)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】